JP6241564B1 - 糖鎖捕捉性ポリマー粒子 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に記載の技術は、シリカ粒子からタンパク質までのスペーサーが短いため、タンパク質の運動性が確保できず、運動性確保のための改善の余地があった。
糖鎖捕捉基を有するポリマー層、を備える糖鎖捕捉性ポリマー粒子であって、
水分散時における前記ポリマー層の体積をV1(μm3)とし、
乾燥時における前記ポリマー層の体積をV2(μm3)としたとき、
V1/V2が1.7以上12.2以下であり、
前記糖鎖捕捉基が、ヒドラジド基またはオキシルアミノ基のいずれかである、糖鎖捕捉性ポリマー粒子が提供される。
まず、本実施形態の糖鎖捕捉性ポリマー粒子の概要について説明する。
この点については、本発明者により見出された。具体的には次の通りである。すなわち、ポリマー層を用いた場合、乾燥時と水分散時においてポリマー層の膨潤度合いが変化する。この変化の度合いが大きすぎると様々な不具合があることが分かってきた。例えば、水分散時にポリマー層が過剰に膨潤した場合、糖鎖捕捉性ポリマー粒子のハンドリング性が低下してしまうことが分かった。このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、水分散時と乾燥時におけるポリマー層の体積比率に着眼し、この体積比率の変化率がハンドリング性の指標となることが判明した。
また「試料中の糖鎖」とは、試料に含まれる複合糖質に結合した糖鎖、複合糖質から遊離させた糖鎖、及び試料に含まれる糖鎖を含む。試料が複合糖質を含む場合、必要に応じて、公知の糖鎖遊離方法を用いて複合糖質から糖鎖を遊離させてもよく、複合糖質から糖鎖を遊離させた後の試料を、本明細書における試料とすることもできる。「複合糖質から遊離させた糖鎖」とは、複合糖質を酵素又は化学処理することによって複合糖質から遊離させた糖鎖の一部又は全部(以下、「遊離糖鎖」ともいう)、及び複合糖質を切断して得られた単糖、及び遊離糖鎖を分解して得られた単糖を含む。
本明細書において「糖鎖を遊離させる」とは、糖鎖捕捉性ポリマー粒子に結合させた糖鎖を単糖に分解すること、また結合させた糖鎖を糖鎖捕捉性ポリマー粒子から切り出すことを含む。
なお、下記構造式A1〜A3中、a、b、dは1から5の整数を表し、cは1から10の整数を表す。下記構造式A4中、R1は、―O―、―S―、―NH―、―CO―、及び―CONH―からなる群から選択される少なくとも1つで中断されてもよい炭素数0〜30の炭化水素鎖を示し、R2はH、CH3又は炭素数2〜5の炭化水素鎖を示す。また、下記構造式A5中、R2はH、CH3又は炭素数2〜5の炭化水素鎖、nは0から30の整数を示す。
このようなポリマー層は、下記のような構造をとるものを用いることができる。
−(ヒドラジド基等の糖鎖捕捉基含有化合物成分)m−(架橋剤成分)n−
本明細書において、(メタ)アクリレートモノマー((メタ)アクリル酸エステル類)とは、アクリレート、メタクリレートまたはこれらの混合物を表し、アクリル基を1以上有する、またはメタクリル基を1以上有するモノマーを用いることができる。本実施形態において、(メタ)アクリレートモノマーは、単官能モノマーまたは多官能モノマーのいずれでもよいが、2以上の多官能モノマーを少なくとも含有することができる。
本実施形態の糖鎖捕捉性ポリマー粒子において、水分散時におけるポリマー層の体積をV1(μm3)とし、乾燥時におけるポリマー層の体積をV2(μm3)としたとき、乾燥時に対する水分散時のポリマー層の体積比率であるV1/V2が以下の所定の範囲内となることが好ましい。
糖鎖捕捉性ポリマー粒子が糖鎖捕捉基を有するポリマー層からなる樹脂粒子である場合、当該樹脂粒子の半径をポリマー層の膜厚とみなす。
水分散時や乾燥時における糖鎖捕捉性ポリマー粒子の直径は、顕微鏡観察による数平均直径から算出する。すなわち、樹脂粒子を液温25℃の純水中に分散させた状態で、水分散時の数平均膜厚D1を測定し、その後、真空乾燥を行い、乾燥時の数平均膜厚D2を測定する。V1/V2は、(D1/D2)の3乗の値として算出できる。
糖鎖捕捉性ポリマー粒子が糖鎖捕捉基を有するポリマー層を表面に有する無機粒子である場合、シリカ粒子などの無機粒子は、水分散時と乾燥時とで体積や半径が変更しないものとみなす。このとき、無機粒子の表面におけるポリマー層の体積の算出方法としては、ポリマー層が存在する状態で無機粒子の体積を測定し、当該ポリマー層を焼いた後の無機粒子の体積を測定し、これらの体積の差分をポリマー層の体積とする。この測定は、例えば示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)等で測定することが出来る。
本実施形態の糖鎖試料の調製方法としては、具体的には(a)糖鎖を含む試料を糖鎖捕捉性ポリマー粒子に接触させ、当該糖鎖を当該糖鎖捕捉性ポリマー粒子に捕捉する工程と、(b)糖鎖を捕捉した糖鎖捕捉性ポリマー粒子を洗浄する工程と、(c)糖鎖を捕捉した糖鎖捕捉性ポリマー粒子から糖鎖を遊離させる工程とを含むことができる。また、必要に応じて任意のラベル化試薬で糖鎖の標識化を行ってもよい。
本実施形態の糖鎖捕捉性ポリマー粒子を用いて調製した試料は、液体クロマトグラフィーやマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−TOFMS)等の各種分析方法に好適に用いることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 糖鎖捕捉基を有するポリマー層、を備える糖鎖捕捉性ポリマー粒子であって、
水分散時における前記ポリマー層の体積をV1(μm 3 )とし、
乾燥時における前記ポリマー層の体積をV2(μm 3 )としたとき、
V1/V2が1.7以上12.2以下である、糖鎖捕捉性ポリマー粒子。
2. 1.に記載の糖鎖捕捉性ポリマー粒子であって、
水分散時における前記ポリマー層の膜厚をD1(μm)とし、
乾燥時における前記ポリマー層の膜厚をD2(μm)としたとき、
D1/D2が1.2以上2.3以下である、糖鎖捕捉性ポリマー粒子。
3. 1.または2.に記載の糖鎖捕捉性ポリマー粒子であって、
前記ポリマー層は、(メタ)アクリルモノマー、ビニルモノマー、アリルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、またはビニルアミドモノマーのいずれかに由来する構成単位を含有する、糖鎖捕捉性ポリマー粒子。
4. 1.から3.のいずれか1つに記載の糖鎖捕捉性ポリマー粒子であって、
乾燥時における前記糖鎖捕捉基の密度が、1nmol/mg以上4000nmol/mg以下である、糖鎖捕捉性ポリマー粒子。
5. 1.から4.のいずれか1つに記載の糖鎖捕捉性ポリマー粒子であって、
前記糖鎖捕捉基が、ヒドラジド基またはオキシルアミノ基のいずれかである、糖鎖捕捉性ポリマー粒子。
[カルボキシル基を有する粒子の合成]
メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)4.3g(50mmol)、エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)0.2g(1mmol)、純水1mLを混合し、さらにペルオキソ二硫酸カリウム27mg(0.1mmol)を加えモノマー溶液を作製した。0.1wt%ソルビタンモノステアレートのシクロヘキサン溶液100mLにモノマー溶液を添加し、撹拌しながら20分間窒素ガスでバブリングした。撹拌とバブリングを継続しながら60℃で16時間加熱した後、純水で洗浄し、カルボキシル基を有する粒子を得た。
50μL/mLのヒドラジン一水和物溶液(PBSバッファにヒドラジン一水和物を溶解しHClでpH5.8に調製)10mLに水溶性カルボジイミド0.1gを溶解した。この溶液に前記カルボキシル基を有する粒子を1g添加し、37℃で2時間転倒混和した。水洗後、粒子を1N HClに分散した。遠心分離して上清を除去し、さらに水洗を繰り返した。凍結乾燥してヒドラジド化したポリマー粒子を得た。
エチレングリコールジメタクリレートを0.4g(2mmol)にした以外は実施例1と同様に実施例2のポリマー粒子を作製した。
エチレングリコールジメタクリレートを0.16g(0.8mmol)にした以外は実施例1と同様に実施例3のポリマー粒子を作製した。
エチレングリコールジメタクリレートを1.0g(5mmol)にした以外は実施例1と同様に実施例4のポリマー粒子を作製した。
(担体表面への連鎖移動基の導入)
メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン(東京化成工業株式会社製、M0928)0.5mLをpH3.0の酢酸水溶液25mLとエタノール25mLとの混合液に添加し、シランカップリング剤を加水分解した後に、シリカ粒子(平均粒径5μm、細孔径1000Å、富士シリシア化学株式会社製SMB1000−5)5gを投入し70℃で2時間攪拌した後、吸引ろ過により反応溶液からシリカ粒子を回収し、100℃で1時間加熱した。その後、エタノールで分散させてよく振盪した後、遠心分離により上清を除去し乾燥させた。
メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)モノマー濃度は0.5mol/Lになるように純水に溶解させ、モノマー混合溶液を作製した。そこに過硫酸カリウムを0.01mol/Lになるように添加し、均一になるまで撹拌した。その後、上記の連鎖移動基を導入したシリカ粒子0.5gを投入し、アルゴンガス雰囲気下、70℃で22時間反応させた。次いで、遠心分離により反応溶液からシリカ粒子を回収し、純水に分散させ、よく振盪した後、吸引ろ過により粒子を回収し、乾燥させた。
得られた粒子全量を容器にとり、ヒドラジン一水和物(原液、98体積%以上)3mLを加えて撹拌し、室温で2時間静置した。反応後、ヒドラジン一水和物を除去し、メタノールで洗浄したのち、1M塩酸でリンスした。その後さらに純水で洗浄・乾燥し、実施例5の粒子を得た。
エチレングリコールジメタクリレートを0.08g(0.4mmol)にした以外は実施例1と同様に比較例1のポリマー粒子を作製した。
メタクリル酸メチル(和光純薬工業株式会社製)4.3g(50mmol)、メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)0.17g(2mmol)、エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)0.2g(1mmol)、クロロホルム5mLを混合し、さらに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)16mg(0.1mmol)を加えモノマー溶液を作製した。0.1wt%ポリビニルアルコール水溶液100mLにモノマー溶液を添加し、撹拌しながら20分間窒素ガスでバブリングした。撹拌とバブリングを継続しながら60℃で16時間加熱した後、純水で洗浄し、カルボキシル基を有する粒子を得た。
50μL/mLのヒドラジン一水和物溶液(PBSバッファにヒドラジン一水和物を溶解しHClでpH5.8に調製)10mLに水溶性カルボジイミド0.1gを溶解した。この溶液に前記カルボキシル基を有する粒子を1g添加し、37℃で2時間転倒混和した。水洗後、粒子を1N HClに分散した。遠心分離して上清を除去し、さらに水洗を繰り返した。凍結乾燥してヒドラジド化したポリマー粒子を得た。
ポリマー層からなる樹脂粒子の場合、樹脂粒子の半径をポリマー層の膜厚とした。数平均膜厚は、顕微鏡観察により算出した。すなわち、得られた樹脂粒子を液温25℃の純水中に分散させた状態で、水分散時の数平均膜厚D1を測定し、その後、真空乾燥を行い、乾燥時の数平均膜厚D2を測定した。また、シリカ粒子は、水分散時と乾燥時とで体積や半径が変更しないものとみなした。シリカ粒子の表面におけるポリマー層の体積の算出方法は、ポリマー層が存在する状態でシリカ粒子の体積を測定し、当該ポリマー層を焼いた後のシリカ粒子の体積を測定し、これらの体積の差分をポリマー層の体積とした。
以上により、D1,D2を測定した。V1/V2は(D1/D2)の3乗の値として算出した。結果を表1に示す。
得られた粒子50mgを純水500μLに分散させたところ、実施例1〜5および比較例2の粒子は均一に分散させることができたが、比較例1の粒子は粒子同士が凝集していた。
また、得られた粒子50mgを純水500μLに分散させて分散液を調製し、2μL〜200μL用ピペットチップを用いて、分散液中のポリマー粒子に対する吸引操作について評価を行った。糖鎖捕捉実験には粒子を5mg使用することから、吸引量は50μLとした。
実施例1〜5および比較例2の粒子については、2μL〜200μL用のピペットチップを用いて、分散液中のポリマー粒子を吸引することができ、ディスポカラムに分注できた。しかし、比較例1の粒子については、2μL〜200μL用ピペットチップを用いて、分散液中のポリマー粒子を吸引することができなかった。したがって、比較例1の粒子については、分注の後の実験を遂行することができなかった。評価結果を表1に示す。表1中、ハンドリング性が良好な場合を○とし、ハンドリング性が十分ではない場合を×とした。
[ウシ血清由来IgGの糖鎖分析]
1.生体試料の予備処理
ウシ血清由来IgG1mgを100mM重炭酸アンモニウム50μLに溶解させた後、120mM DTT(ジチオスレイトール)を5μL加え、60℃で30分間反応させた。反応終了後、123mM IAA(ヨードアセトアミド)10μLを加えて遮光下、室温で1時間反応させた。続いて400Uのトリプシンによってプロテアーゼ処理をし、タンパク質部分をペプチド断片化した。反応溶液を90℃で5分処理した後、5UのグリコシダーゼFによる処理を行って糖鎖をペプチドから遊離させ、予備処理済の生体試料を得た。
実施例1、2の粒子各5mgが入ったディスポカラムおよび実施例3の粒子10mgが入ったディスポカラムに予備処理済の生体試料の懸濁物20μL及び180μLの2%酢酸/アセトニトリル溶液を加え、80℃で1時間反応させた。反応は開放系で行い、溶媒が完全に蒸発し組成物が乾固した状態であることを目視で確認した。続いて、グアニジン溶液、純水、メタノール、トリエチルアミン溶液にてポリマー粒子を洗浄後、10%無水酢酸/メタノールを添加し、室温で30分間反応させ、未反応のヒドラジド基をキャッピングした。キャッピング後、純水にて組成物を洗浄した。
次に該ディスポカラムに純水20μL及び2%酢酸/アセトニトリル溶液180μLを加え、70℃で1.5時間反応させた。反応は開放系で行い、溶媒が完全に蒸発し組成物が乾固した状態であることを目視で確認した。
さらに、2−aminobenzamide(2−AB)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムの終濃度がそれぞれ0.35M、1Mになるように30%酢酸/DMSO混合溶媒に溶解させて調整した溶液50μLを添加し、60℃で2時間反応させた。
反応溶液50μLを回収し、アセトニトリルで10倍に希釈した後、シリカゲル (Iatrobeads、6RS−8060、三菱化学ヤトロン社製)を詰めたカラムに添加してシリカゲルに標識糖鎖を吸着させた。アセトニトリル、アセトニトリル/水混合溶液(95:5)にてカラムを洗浄後、純水50μLにて標識糖鎖を回収した。
得られた標識糖鎖をHPLCにて測定した。アミノカラム(Shodex Asahipak NH2P−50)を用いて励起波長330nm、蛍光波長420nmにて測定した。その結果、実施例1〜5いずれの場合も、2ABにより標識化された糖鎖が検出された。一方、比較例1については、ピペットで吸引することができず、分注不可であったため、糖鎖捕捉性の評価試験を実施することができなかった。結果を表1に示す。表1中、標識化糖鎖が十分に検出され、良好な糖鎖捕捉性を示す場合を○とし、標識化糖鎖の検出が十分ではない場合を×とし、分注不可により糖鎖捕捉性の評価試験が実施できなかった場合を−とした。
Claims (4)
- 糖鎖捕捉基を有するポリマー層、を備える糖鎖捕捉性ポリマー粒子であって、
水分散時における前記ポリマー層の体積をV1(μm3)とし、
乾燥時における前記ポリマー層の体積をV2(μm3)としたとき、
V1/V2が1.7以上12.2以下であり、
前記糖鎖捕捉基が、ヒドラジド基またはオキシルアミノ基のいずれかである、糖鎖捕捉性ポリマー粒子。 - 請求項1に記載の糖鎖捕捉性ポリマー粒子であって、
水分散時における前記ポリマー層の膜厚をD1(μm)とし、
乾燥時における前記ポリマー層の膜厚をD2(μm)としたとき、
D1/D2が1.2以上2.3以下である、糖鎖捕捉性ポリマー粒子。 - 請求項1または2に記載の糖鎖捕捉性ポリマー粒子であって、
前記ポリマー層は、(メタ)アクリルモノマー、ビニルモノマー、アリルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、またはビニルアミドモノマーのいずれかに由来する構成単位を含有する、糖鎖捕捉性ポリマー粒子。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の糖鎖捕捉性ポリマー粒子であって、
乾燥時における前記糖鎖捕捉基の密度が、1nmol/mg以上4000nmol/mg以下である、糖鎖捕捉性ポリマー粒子。
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