JP2009031130A - 選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】入手容易な汎用樹脂製マイクロビーズを基材として、簡便な工程で、選択結合性物質がスペーサー分子を介して共有結合したマイクロビーズを製造する方法を提供することである。
【解決手段】ポリアルキル(メタ)アクリレートからなるマイクロビーズの表面を加水分解する工程、加水分解により前記マイクロビーズの表面に生成したカルボキシル基にスペーサー分子を結合させる工程、スペーサー分子の官能基に選択結合性物質を結合させる工程からなる選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】ポリアルキル(メタ)アクリレートからなるマイクロビーズの表面を加水分解する工程、加水分解により前記マイクロビーズの表面に生成したカルボキシル基にスペーサー分子を結合させる工程、スペーサー分子の官能基に選択結合性物質を結合させる工程からなる選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法を提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、被検物質と選択的に結合する物質、すなわち選択結合性物質を固定化したマイクロビーズの製造方法に関する。
疾病の診断などには、抗原抗体反応に代表される生体分子同士の親和力に基づく特異的な結合が広く利用されている。中でも、救急医療の現場では診断時間の短縮が患者の生存率向上につながることから、診断の所要時間短縮化が重要となっている。このような観点から、診断ツールとしては従来のようなマイクロプレート型に比べ、より速く結果が得られるチップ型診断ツールが注目を集めている。ここでいう、チップ型診断ツールとは、その形状、送液原理などによって限定されるものではなく、送液により検体が微細流路を通過し、該微細流路内である種の生体分子の捕捉、検出を行うものである。ここでいう微細流路とは、1μm〜10mm程度の幅、深さを有する流路である。
チップ型診断ツールにおいては、選択結合性物質はマイクロビーズ上に固定化され微細流路に充填されるのが一般的である。マイクロビーズとは、粒径1〜1000μm程度の微細な球状又は略球状の粒子である。マイクロビーズの材質は樹脂またはゲルが主に用いられる。ゲルのような柔軟な材料を用いると、ビーズを充填した際にビーズが変形して流路を狭める恐れがあるので、マイクロビーズ材質は樹脂であることが好ましい。
マイクロプレート型診断ツールと異なり、チップ型診断ツールでは微細流路を検体が通過する速度が非常に速いため、マイクロプレート型でよく用いられている疎水吸着による選択結合性物質の固定化法では、固定化された選択結合性物質が剥離してしまう可能性がある。選択結合性物質の剥離は測定感度の低下、測定結果のばらつきなどに直結するので、正しい測定結果を得るためには極力抑える必要がある。
選択結合性物質が剥離する問題は、それを共有結合にてマイクロビーズに結合させることで解決できると考えられる。選択結合性物質を共有結合にてマイクロビーズに固定化する技術はすでにいくつか知られている(特許文献1,2)。
また、マイクロプレート型ツールへの共有結合による選択結合性物質の固定化についての論文(非特許文献1)では、基材と選択結合性物質とをつなぐスペーサーの長さや主鎖構造によって選択結合活性が変化するとの報告がなされており、スペーサーが親水性で、かつ長いものがより高い選択結合活性を示すとされている。ここでスペーサーとは、基材と選択結合性物質をつなぐ分子鎖である。また、選択結合活性とは、選択結合性物質がもつ被検物質との特異的な親和力を指す。
これらの背景から、チップ型診断ツールには、選択結合性物質が親水性スペーサーを介して共有結合したマイクロビーズが適していると考えられる。
特許文献1には、磁性体を内包する樹脂製マイクロビーズを乳化重合法により作成し、マイクロビーズ表面の官能基にエチレングリコールジグリシジルエーテルを反応させ、さらにモノクローナル抗体(選択結合性物質)を結合させる方法が開示されている。ここでエチレングリコールジグリシジルエーテルに代えて親水性の分子鎖を有する適切な分子を用いれば、選択結合性物質が親水性スペーサーを介して共有結合した樹脂製マイクロビーズを作成することが可能と考えられる。
しかし、この方法では官能基を有するモノマーを共重合させて樹脂製マイクロビーズを作成する工程を必要とするため煩雑であり、所望の粒径や粒度分布を持つ樹脂製マイクロビーズを作成することは難度が高い。
一方、ポリスチレンやポリメチルメタクリレートなどの汎用樹脂からなるマイクロビーズは工業的製法が確立され、粒径、粒度分布の制御された製品を容易に入手することができる。このような汎用樹脂からなるマイクロビーズを基材として簡便な方法で選択結合性物質が親水性スペーサーを介して共有結合した樹脂製マイクロビーズを作成する方法が望まれるが、これを満足するよい方法は知られていなかった。
特開2005−241547号公報
特開平05−172817号公報
ラングミュア,21巻,7号,3054−3060頁、2005年
本発明が解決しようとする課題は、入手容易な汎用樹脂製マイクロビーズを基材として、簡便な工程で、選択結合性物質がスペーサー分子を介して共有結合した樹脂製マイクロビーズの製造方法を提供することである。
このような課題を解決するために、発明者らは多様な粒径のマイクロビーズが広く工業的に生産されているポリアルキル(メタ)アクリレートからなる樹脂製マイクロビーズを基材とした選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法を見出した。
本発明の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法は、ポリアルキル(メタ)アクリレートからなるマイクロビーズの表面を加水分解する工程(第一工程)、加水分解した前記マイクロビーズの表面にスペーサー分子を結合する工程(第二工程)、第二工程でマイクロビーズの表面に結合したスペーサー分子に選択結合性物質を結合する工程(第三工程)を含む。
本発明によれば、多様な粒径の選択結合性物質固定化マイクロビーズを簡便な方法にて製造することが可能となる。
本発明の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法は、ポリアルキル(メタ)アクリレートからなるマイクロビーズを基材として用いる。本発明において、マイクロビーズは、微細な球状又は略球状の粒子であって、少なくともその表面はポリアルキル(メタ)アクリレートからなる。
ポリアルキル(メタ)アクリレートとは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルをモノマーの主成分とする重合体からなる樹脂で、一般式(1)で示される構造を主な構造として有する。
(式中のR1はアルキル基またはアリール基を、R2はメチル基または水素基を表す。)
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルは単一種のモノマーを用いてもよいし、複数のモノマーを共重合させてもよい。またこれら以外のモノマーを共重合させてもよい。アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル以外のモノマーを共重合する場合、その含有量50重量%以下とすることが好ましい。
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルは単一種のモノマーを用いてもよいし、複数のモノマーを共重合させてもよい。またこれら以外のモノマーを共重合させてもよい。アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル以外のモノマーを共重合する場合、その含有量50重量%以下とすることが好ましい。
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル以外に含まれていてもよいモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、スチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
ポリアルキル(メタ)アクリレートからなるマイクロビーズは、非架橋であっても架橋されていてもよい。架橋の方法は、ジビニルベンゼンなどの多官能モノマーの共重合による方法であっても、電子線照射などの物理的方法であってもよい。
ポリメチルメタクリレートからなるマイクロビーズは、化粧品や塗料の原料として工業的に生産され、粒径や架橋の有無について様々な仕様の製品が容易に入手することが可能であり、本発明の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法に用いるには最も好ましい。
ポリアルキル(メタ)アクリレートからなるマイクロビーズは、粒径が1〜1000μmであるものが好ましく、10〜200μmの範囲であることがより好ましい。10μm以下では圧力損失が大きくなるために送液に支障が生じる恐れがあり、200μm以上では表面積が小さくなるために測定感度が低下する恐れがあるためである。
本発明の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法では、第一工程としてマイクロビーズ表面のポリアルキル(メタ)アクリレートのエステル基の加水分解を行う。加水分解反応には触媒を用いることができるが、この触媒としては酸、塩基、また結城スズ化合物や酵素などその他の触媒のいずれを用いてもよい。加水分解反応は水中で行っても有機溶剤中で行っても良い。
選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法の第二工程は、第一工程で加水分解した前記マイクロビーズの表面にスペーサー分子を結合させる工程である。
ここでスペーサー分子とは、基材と選択結合性物質とをある程度距離をおいて結合するためのスペーサーとして働く、主鎖の少なくとも2つの末端に反応性官能基を有する分子を意味する。スペーサーとは、基材と選択結合性物質とをある程度距離をおいて結合するする分子鎖を意味する。基材に直接選択結合性物質を結合した場合、選択結合性物質と被検物質の結合が立体障害などの要因で妨げられる恐れがあるが、適切なスペーサーを介して基材に結合するとそのような恐れがなくなる。
スペーサー分子の主鎖としては、親水性高分子鎖を用いることが好ましい。親水性高分子が好ましい理由は、本発明の選択結合性物質固定化マイクロビーズと被検物質を結合させる操作は、通常水中で行うことが好ましいが、スペーサーが親水性高分子鎖であると、分子鎖が伸びたコンフォメーションをとりやすく、スペーサーの機能を発揮しやすいためである。さらに、検体に含まれるタンパク質の非特異的な吸着を抑制する効果があることも挙げられる。
スペーサー分子の主鎖として好ましい親水性高分子鎖の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(部分鹸化ポリ酢酸ビニルを含む)、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドまたはアクリルアミド誘導体のポリマー、ポリビニルアセトアミド、ポリビニルホルムアミド、多糖類、親水性ポリペプチドなどが挙げられる。これらのうち、特にポリエチレングリコールが、親水性が高く、反応性官能基を有する誘導体の入手や合成も容易であるため、最も好ましい。スペーサー分子の主鎖の構造としては、直鎖構造でもよく、星型、櫛型、樹状などの枝分かれ構造であってもよい。
スペーサー分子は、マイクロビーズの表面と結合する反応性官能基Aおよび選択結合性物質と結合する反応性官能基Bを有することが好ましい。反応性官能基Aおよび反応性官能基Bは、スペーサー分子の主鎖の少なくとも2つの末端に存在することが好ましい。反応性官能基Aは、第一工程でポリアルキル(メタ)アクリレートの加水分解によりマイクロビーズの表面に生成したカルボキシル基または該カルボキシル基に結合したポリアミンのアミノ基と反応してスペーサー分子が結合するために用いられる。反応性官能基Bは、第三工程において選択結合性物質中の官能基と反応してスペーサー分子と結合するために用いられる。スペーサー分子が有する反応性官能基Aと反応性官能基Bは同一であっても、異なっていても良い。スペーサー分子の主鎖が直鎖状である場合は、それぞれの末端に反応性官能基Aと反応性官能基Bを有することが好ましい。スペーサー分子の主鎖が枝分かれ構造を持ち複数の末端を有する場合には、少なくとも2個以上の末端が反応性官能基Aおよび反応性官能基Bを有していればよく、反応性官能基を持たない末端があってもよい。
スペーサー分子の末端の反応性官能基の好ましい例としては、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基などを挙げることができる。このうち、反応性官能基Aはエポキシ基、アミノ基、水酸基のいずれかであることが好ましく、反応性官能基Bはエポキシ基またはカルボキシル基であることが好ましい。スペーサー分子の主鎖が水酸基を含む親水性高分子鎖(ポリビニルアルコール、多糖類など)である場合は、スペーサー分子の反応性官能基として、水酸基以外の官能基を用いることが好ましい。スペーサー分子の末端の反応性官能基の数は2個以上であれば制限はないが、多くなりすぎると結合した選択結合性物質間の距離が近くなり、立体障害による運動性の低下、それに伴う選択結合活性が低下する恐れがある。そのため、スペーサー分子あたり2〜16個の反応性官能基を有することが好ましい。
スペーサー分子の分子量は、選択結合性物質と基材が十分な距離をおいて結合される分子量であればよく、200〜100000程度であることが好ましく、1000〜100000であれば更に好ましい。
好ましいスペーサー分子の具体例としては、以下に示すような構造の分子が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記の式中のm、n、p、qは、3以上の任意の整数を意味する。
加水分解したマイクロビーズ表面にスペーサー分子を結合する第二工程には、マイクロビーズ表面のカルボキシル基とスペーサー分子の反応性官能基Aとを縮合して結合する公知の反応が適用可能である。第二工程の結合反応は、1段階反応であってもよく、多段階反応であってもよい。第二工程における加水分解したマイクロビーズ表面とスペーサー分子の結合に用いる反応の好ましい具体例を以下に示す。
1)反応性官能基Aがエポキシ基の場合
加水分解によりマイクロビーズ表面に生成したカルボキシル基のエポキシ基への付加反応を適用することができ、これによりエステル結合が生成する。反応は、無触媒でも進行するが、塩基や有機リン化合物を触媒として用いても良い。
加水分解によりマイクロビーズ表面に生成したカルボキシル基のエポキシ基への付加反応を適用することができ、これによりエステル結合が生成する。反応は、無触媒でも進行するが、塩基や有機リン化合物を触媒として用いても良い。
2)反応性官能基Aがアミノ基または水酸基の場合
加水分解によりマイクロビーズ表面に生成したカルボキシル基とアミノ基または水酸基との縮合反応を適用することができ、これによりアミド結合またはエステル結合が生成する。この反応にはカルボジイミド誘導体などの縮合剤やハフニウム化合物のような触媒を用いることができる。
加水分解によりマイクロビーズ表面に生成したカルボキシル基とアミノ基または水酸基との縮合反応を適用することができ、これによりアミド結合またはエステル結合が生成する。この反応にはカルボジイミド誘導体などの縮合剤やハフニウム化合物のような触媒を用いることができる。
あるいは、マイクロビーズ表面のカルボキシル基を混合酸無水物、カルボン酸塩化物、活性エステル等に誘導した後、アミノ基または水酸基と反応させることもできる。
マイクロビーズ表面のカルボキシル基を混合酸無水物に誘導するには、2,4,6−トリクロロ安息香酸塩化物などの試薬を用いることができる。
マイクロビーズ表面のカルボキシル基をカルボン酸塩化物に誘導するには、塩化チオニル、塩化オキサリルなどの試薬を用いることができる。
活性エステルとは、p−ニトロフェノールやN−ヒドロキシコハク酸イミドとのエステルなど、反応性の高いエステルのことである。カルボジイミド誘導体などの縮合剤を用いて誘導することができる。
マイクロビーズ表面の混合酸無水物、カルボン酸塩化物または活性エステルを、スペーサー分子のアミノ基または水酸基と縮合反応させる場合、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどの塩基触媒を用いることができる。
3)反応性官能基Aがカルボキシル基またはエポキシ基である場合(エポキシ基の場合には、以下に示す方法と上記1)の方法のいずれでもよい。)
まず、マイクロビーズ表面のカルボキシル基とポリアミンを縮合させてアミノ基を導入し、続いて、このアミノ基をスペーサー分子のエポキシ基またはカルボキシル基と反応させる方法を適用することができる。カルボキシル基との反応では、アミド結合が生成する。ここで、ポリアミンは、複数のアミノ基を有する化合物であって、具体的にはエチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン等を用いることができる。ここで、ポリアミンのアミノ基とスペーサー分子のカルボキシル基との反応は、カルボジイミド誘導体などの縮合剤を用いて一段階で縮合してもよく、カルボキシル基を一旦、混合酸無水物、カルボン酸塩化物、活性エステルなどに変換した後、ポリアミンのアミノ基と反応させてもよい。
まず、マイクロビーズ表面のカルボキシル基とポリアミンを縮合させてアミノ基を導入し、続いて、このアミノ基をスペーサー分子のエポキシ基またはカルボキシル基と反応させる方法を適用することができる。カルボキシル基との反応では、アミド結合が生成する。ここで、ポリアミンは、複数のアミノ基を有する化合物であって、具体的にはエチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン等を用いることができる。ここで、ポリアミンのアミノ基とスペーサー分子のカルボキシル基との反応は、カルボジイミド誘導体などの縮合剤を用いて一段階で縮合してもよく、カルボキシル基を一旦、混合酸無水物、カルボン酸塩化物、活性エステルなどに変換した後、ポリアミンのアミノ基と反応させてもよい。
本発明の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法における第三工程は、マイクロビーズ表面に結合したスペーサー分子に選択結合性物質を結合する工程である。具体的には、スペーサー分子の反応性官能基Bと、選択結合性物質が有する官能基とを反応させて結合させる工程である。スペーサー分子が有する反応性官能基Bとしては、エポキシ基またはカルボキシル基を好ましく用いることができる。
本発明において選択結合性物質とは、特定の被検物質と特異的な親和力によって結合する物質を意味する。選択結合性物質と被検物質の組合せの具体例としては、抗体−抗原タンパク質、抗体−ハプテン、抗原タンパク質−抗体、ハプテン−抗体、アビジン−ビオチン、ビオチン−アビジン、レクチン−糖、核酸−核酸、アプタマー−タンパク質などを挙げることができる。
選択結合性物質としては、さまざまな天然あるいは人工の化合物が使用できる。化学構造上は、タンパク質、ペプチド、核酸に分類されるものが多いが、実用上、最も重要なのは抗体、抗原タンパク質、レクチンなどのタンパク質、やビオチンなどの補酵素である。
また、診断ツールとしての応用面では、抗原抗体反応を利用した診断や分析の重要度が高いため、選択結合性物質としては、抗体および抗原(抗原タンパク質およびハプテン)が重要である。
スペーサー分子と選択結合性物質との結合には、あらゆる公知の反応が適用可能で、1段階反応であってもよく、多段階反応であってもよい。スペーサー分子と選択結合性物質との結合に用いる反応の好ましい具体例を以下にしめすが、これらに限定されるものではない。
1)反応性官能基Bがエポキシ基の場合
反応性官能基Bがエポキシ基と、選択結合性物質のカルボキシル基またはアミノ基との反応を適用することができる。この反応は、塩基や有機リン化合物を触媒として用いても良い。
反応性官能基Bがエポキシ基と、選択結合性物質のカルボキシル基またはアミノ基との反応を適用することができる。この反応は、塩基や有機リン化合物を触媒として用いても良い。
2)反応性官能基Bがカルボキシル基の場合
反応性官能基Bがカルボキシル基の場合は、選択結合性物質のアミノ基または水酸基と縮合反応を適用することができる。この反応はカルボジイミド化合物のような縮合剤やハフニウム化合物のような触媒を用いて直接行っても良く、あるいはスペーサー分子のカルボキシル基を一旦、混合酸無水物、カルボン酸誘導体または活性エステルに誘導した後、選択結合性物質のアミノ基または水酸基と縮合反応させてもよい。
反応性官能基Bがカルボキシル基の場合は、選択結合性物質のアミノ基または水酸基と縮合反応を適用することができる。この反応はカルボジイミド化合物のような縮合剤やハフニウム化合物のような触媒を用いて直接行っても良く、あるいはスペーサー分子のカルボキシル基を一旦、混合酸無水物、カルボン酸誘導体または活性エステルに誘導した後、選択結合性物質のアミノ基または水酸基と縮合反応させてもよい。
3)反応性官能基Bがアミノ基または水酸基の場合
反応性官能基Bがアミノ基または水酸基である場合は、選択結合性物質のカルボキシル基との縮合反応を適用することができる。この反応は、カルボジイミド化合物のような縮合剤やハフニウム化合物のような触媒を用いて直接行っても良く、あるいは選択結合物質が有するカルボキシル基を一旦、混合酸無水物、カルボン酸誘導体または活性エステルに誘導した後、スペーサー分子のアミノ基または水酸基と反応させてもよい
上記の例では、選択結合性物質がカルボキシル基、アミノ基、水酸基のような反応性官能基Bと結合可能な官能基を有する場合を例示した。選択結合性物質、特にタンパク質の多くは、これらの官能基の少なくとも1種を有することが多いので、ここに例示した手法をそのまま用いることができる。選択結合物質が核酸である場合には、末端を化学修飾して反応性の高いアミノ基を導入した後に、上述の方法を用いて結合することができる。
反応性官能基Bがアミノ基または水酸基である場合は、選択結合性物質のカルボキシル基との縮合反応を適用することができる。この反応は、カルボジイミド化合物のような縮合剤やハフニウム化合物のような触媒を用いて直接行っても良く、あるいは選択結合物質が有するカルボキシル基を一旦、混合酸無水物、カルボン酸誘導体または活性エステルに誘導した後、スペーサー分子のアミノ基または水酸基と反応させてもよい
上記の例では、選択結合性物質がカルボキシル基、アミノ基、水酸基のような反応性官能基Bと結合可能な官能基を有する場合を例示した。選択結合性物質、特にタンパク質の多くは、これらの官能基の少なくとも1種を有することが多いので、ここに例示した手法をそのまま用いることができる。選択結合物質が核酸である場合には、末端を化学修飾して反応性の高いアミノ基を導入した後に、上述の方法を用いて結合することができる。
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。しかし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
第一工程:ポリメチルメタクリレートからなるマイクロビーズの表面の加水分解
ポリメチルメタクリレート製マイクロビーズ(早川ゴム株式会社、品番L−11、101.4μm、5g)をイソプロパノール(10mL)、続いて水(10mL)で洗浄し、10Nの水酸化ナトリウム水溶液(10mL)に懸濁し、70℃で12時間撹拌した。これを純水で十分に洗浄し、表面にカルボキシル基が生成したマイクロビーズを作製した。
第一工程:ポリメチルメタクリレートからなるマイクロビーズの表面の加水分解
ポリメチルメタクリレート製マイクロビーズ(早川ゴム株式会社、品番L−11、101.4μm、5g)をイソプロパノール(10mL)、続いて水(10mL)で洗浄し、10Nの水酸化ナトリウム水溶液(10mL)に懸濁し、70℃で12時間撹拌した。これを純水で十分に洗浄し、表面にカルボキシル基が生成したマイクロビーズを作製した。
第二工程a:マイクロビーズの表面のカルボキシル基とポリアミンの反応
第一工程で得た表面にカルボキシル基が生成したマイクロビーズ(1g)をメタノール(10mL)に懸濁し、ここに塩化チオニル(0.1mL)を滴下した。1時間撹拌後、デカンテーションにより液体を廃棄した。残ったビーズにエチレンジアミン(5mL)を加え、室温で12時間撹拌した。これを純水で十分に洗浄し、表面のカルボキシル基にエチレンジアミンが縮合したマイクロビーズを作製した。
第一工程で得た表面にカルボキシル基が生成したマイクロビーズ(1g)をメタノール(10mL)に懸濁し、ここに塩化チオニル(0.1mL)を滴下した。1時間撹拌後、デカンテーションにより液体を廃棄した。残ったビーズにエチレンジアミン(5mL)を加え、室温で12時間撹拌した。これを純水で十分に洗浄し、表面のカルボキシル基にエチレンジアミンが縮合したマイクロビーズを作製した。
第二工程b:スペーサー分子の結合
第二工程aで得た表面のカルボキシル基にエチレンジアミンが縮合したマイクロビーズ(1g)をポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ポリサイエンス社、品番24047、100mg)を含む水溶液(2mL)に懸濁し、室温で12時間撹拌した。得られたマイクロビーズを純水で十分に洗浄した。
第二工程aで得た表面のカルボキシル基にエチレンジアミンが縮合したマイクロビーズ(1g)をポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ポリサイエンス社、品番24047、100mg)を含む水溶液(2mL)に懸濁し、室温で12時間撹拌した。得られたマイクロビーズを純水で十分に洗浄した。
第三工程:抗マウスIgG抗体(選択結合性物質)の結合
第二工程bで得たスペーサー分子が結合したマイクロビーズ(1g)を、抗マウスIgG抗体水溶液(10mg/mL、2mL)に懸濁した。これを4℃で12時間撹拌した。その後、ビーズをリン酸緩衝液(pH7.2、8.3mM、1mL)で十分に洗浄して、抗マウスIgG抗体固定化マイクロビーズを得た。
第二工程bで得たスペーサー分子が結合したマイクロビーズ(1g)を、抗マウスIgG抗体水溶液(10mg/mL、2mL)に懸濁した。これを4℃で12時間撹拌した。その後、ビーズをリン酸緩衝液(pH7.2、8.3mM、1mL)で十分に洗浄して、抗マウスIgG抗体固定化マイクロビーズを得た。
(抗マウスIgG抗体固定化マイクロビーズを用いたマウスIgGの検出)
上記の方法で得た抗マウスIgG抗体固定化マイクロビーズを10mgずつ12本のエッペンドルフチューブ(1.5mL)にとりわけ、それぞれをリン酸緩衝液(pH7.2、8.3mM、1mL)で3回洗浄した。それぞれのエッペンドルフチューブに被検物質であるマウスIgGの溶液を100μL加えた。加えた試料溶液はマウスIgGの濃度が0,1,10,100ng/mLの4水準の水溶液で、各水準の試料溶液をそれぞれ3本のチューブに加えた。1時間後、それぞれをリン酸緩衝液(pH7.2、8.3mM、1mL)で3回洗浄した。
上記の方法で得た抗マウスIgG抗体固定化マイクロビーズを10mgずつ12本のエッペンドルフチューブ(1.5mL)にとりわけ、それぞれをリン酸緩衝液(pH7.2、8.3mM、1mL)で3回洗浄した。それぞれのエッペンドルフチューブに被検物質であるマウスIgGの溶液を100μL加えた。加えた試料溶液はマウスIgGの濃度が0,1,10,100ng/mLの4水準の水溶液で、各水準の試料溶液をそれぞれ3本のチューブに加えた。1時間後、それぞれをリン酸緩衝液(pH7.2、8.3mM、1mL)で3回洗浄した。
続いて、マイクロビーズに捕捉されたマウスIgGを検出するため、各チューブにHorseradish Peroxidase(HRP)標識抗マウスIgG抗体溶液(1μg/mL、100μL)を加えた。1時間後、それぞれをリン酸緩衝液(pH7.2、8.3mM、1mL)で3回洗浄した。それぞれにテトラメチルベンジジン水溶液(0.4g/L)と過酸化水素水(0.02%)の1:1混合液(100μL)を加え、30分後に2N硫酸(100μL)を加え反応を停止した。各チューブから上清をとり、450nmの吸光度を測定した。マウスIgG各濃度3回ずつの測定結果を表1に示す。試料溶液中のマウスIgG濃度に応じた吸収がみられ、抗マウスIgG抗体固定化マイクロビーズにより、マウスIgGの検出ができることが確認できた。
Claims (9)
- ポリアルキル(メタ)アクリレートからなるマイクロビーズの表面を加水分解する第一工程、加水分解したマイクロビーズの表面にスペーサー分子を結合する第二工程、第二工程でマイクロビーズの表面に結合したスペーサー分子に選択結合性物質を結合する第三工程の三工程を含む選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法。
- 前記スペーサー分子が、マイクロビーズの表面と結合する反応性官能基Aおよび選択結合性物質と結合する反応性官能基Bを有する請求項1に記載の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法。
- 前記スペーサー分子が有する反応性官能基Aがエポキシ基、アミノ基、水酸基のいずれかである請求項2に記載の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法。
- 前記スペーサー分子が有する反応性官能基Aがエポキシ基またはカルボキシル基であって、かつ、第一工程で生成したマイクロビーズの表面のカルボキシル基にポリアミンを反応させる工程に続いて、該ポリアミンのアミノ基に該スペーサー分子を結合させる第二工程を行う、請求項2に記載の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法。
- 前記スペーサー分子が有する反応性官能基Bがエポキシ基またはカルボキシル基である請求項2〜4のいずれかに記載の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法。
- 前記スペーサー分子の主鎖が親水性高分子鎖である請求項1〜5のいずれかに記載の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法。
- 前記スペーサー分子の主鎖である親水性高分子がポリエチレングリコールである請求項6に記載の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法。
- 前記マイクロビーズの粒径が10〜200μmである請求項1〜7のいずれかに記載の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法。
- 該選択結合性物質がタンパク質または核酸である請求項1〜8のいずれかに記載の選択結合性物質固定化マイクロビーズの製造方法。
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-
2007
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