JP6237540B2 - 継目無鋼管の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は継目無鋼管の製造方法に関し、特に高合金継目無鋼管を製造する場合に優れた耐久性を発揮し、かつ内面品質の優れた継目無鋼管を製造することができる継目無鋼管穿孔圧延用プラグを用いて穿孔圧延を行う継目無鋼管の製造方法に関する。
熱間で継目無鋼管を製造する代表的な方法として、マンネスマンピアサーと称される穿孔圧延機により加熱された丸ビレットを穿孔圧延して中空素管を製造し、該中空素管にプラグミルやマンドレルミルと称される延伸圧延機などによって縮径減肉加工を施し、所定寸法の継目無鋼管に仕上げる方法がある。
上記の穿孔圧延機は、図3に示すように、互いに逆向きに傾斜させて対向配置され同一方向に回転する2本の傾斜ロール1と、パスライン上に配置されたマンドレル3により支持されたプラグ2を備えている。
上記のように構成された穿孔圧延機による穿孔圧延過程では、傾斜ロール1で圧延される中実の丸ビレットBの中心部に回転鍛造効果によってマンネスマン割れが発生し、この割れをプラグ2によって押し広げることで中空素管Hを得る。
上記の熱間穿孔圧延過程においては、プラグ2は、加熱された丸ビレットBおよび中空素管Hとの絶え間ない接触によって常時、高温、高負荷にさらされるため、非常に摩耗もしくは溶損しやすい。そのため、一般に、鋼製のプラグでは900〜1000℃の高温でスケール付け処理を施し、プラグ表面に数10〜数100μmのスケール被膜を形成させ、損耗防止を図っている。しかし、上記鋼製のプラグは、近年特に需要の増加してきたCrを5%以上含有するような高合金鋼の穿孔圧延に使用されたとき、損耗が著しく、丸ビレット数本の穿孔圧延にしか耐えない。
上記のような高合金鋼の穿孔圧延でプラグの損耗が顕著になる原因については、従来の調査によって、高合金鋼の丸ビレットを穿孔圧延している間、主にマンネスマン割れ部でプラグ先端部の表層に形成していたスケールが局所的に剥ぎ取られ、プラグ先端部に焼付きが発生するためであることが明らかになっている。
更に、スケールは断熱作用を有しているため、プラグ母材が高温に曝されることを防止しているが、スケールが剥ぎ取られたプラグ先端部は丸ビレットからの熱伝導、加工熱および摩擦熱などによって温度が上昇し、高温変形が著しくなる。この結果プラグ先端部の損耗が急速に進むと考えられる。
上記のようなプラグ先端部に発生する焼き付きや高温変形の問題に対して、従来、プラグ材質の変更やプラグの表面改質によりプラグの高温強度を向上させることで、穿孔中のプラグの損耗を抑制し、プラグ寿命の向上を図る方法が数多く提案されている。
例えば、特許文献1に、プラグ全体、またはプラグ最外面の一部を含むプラグ部分がセラミックからなる継目無鋼管圧延用プラグが提案されている。また、特許文献2には、少なくとも先端部が50重量%以上のニオブを含有するニオブ合金から成り、その表面に珪化物層を有する継目無鋼管穿孔圧延用プラグが提案されている。
特開平10−180315号公報 特開平10−156410号公報
しかし、上述の従来技術では、以下のような課題があった。
特許文献1または2に記載されているセラミックス材や珪化物の潤滑性は従来の鋼製プラグの表層部に形成されているスケールの潤滑性よりも劣っているため、継目無鋼管穿孔圧延用プラグに適用した場合にはプラグ表面の潤滑性が低下する。プラグ表面の潤滑性の低下は穿孔圧延の前進率の低下を引き起こし、穿孔圧延中の丸ビレットの空揉み数を増加させるため、マンネスマン割れを過度に大きくし、中空素管の内面性状を悪化させる。更にプラグ表面と被圧延材間の摩擦係数の増加により摩擦発熱が増大するため、特に高合金鋼などの穿孔圧延で被圧延材の内面の温度が著しく高くなり、穿孔圧延された後の中空素管内面にカブレなどの疵が発生しやすいという問題があった。
また、従来のプラグではスケールが表面を被覆することで潤滑性を確保しているが、プラグ表面に酸化物の突起が形成されており、この突起が被圧延材料の内面を押し付けるため、圧延後の中空素管の内面に凹状疵が生じる場合がある。
上記の凹状疵は一度発生すると、後工程まで残り、製品管の内面品質の悪化の原因となる。そのため、精整工程で内面の凹状疵をブラスト等で除去するための手入れ工数が増え、鋼管の製造コストが増大するという問題があった。
本発明は、継目無鋼管、特に高合金継目無鋼管を穿孔圧延する場合に、優れた耐久性を発揮し、かつ自己潤滑性に優れた継目無鋼管穿孔圧延用プラグを用いて穿孔圧延を行うことで、内面品質が優れた継目無鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、金属母材の表面に種々の硬質被膜を形成させた継目無鋼管穿孔圧延用プラグを用いて、高合金鋼の丸ビレットの熱間穿孔圧延を実施し、プラグの耐久性や製造された鋼管の内面品質の要因となる前記硬質被膜の高温域での潤滑性と硬度について鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
一般に、高温域で高硬度を有することや、鉄鋼材料を機械加工する際の焼付きを防止するため、高融点のセラミックス、サーメット、または超硬合金を工具材料に適用した事例が数多く存在する。
しかしながら、上記の硬質材料は、耐衝撃性に劣るため、継目無鋼管穿孔圧延用プラグに適用した場合、熱衝撃や衝撃荷重などの高負荷にさらされるため、容易に破損するという問題があった。特に、硬質材料単体で作製されたプラグは穿孔圧延中に破損し、その破損の主な起点がプラグとマンドレルとの接合部であることが分かった。
上記のような破損の問題を防止するために、プラグの母材を鉄鋼材料で作製し、該母材の表面に硬質材料を被覆することで、プラグとマンドレルとの接合部を起点とする破損を抑制し、かつ、丸ビレットおよび中空素管と接触する面は硬質材料の特性を有するプラグとすることが行われている。
硬質の被膜材は多種存在するが、その中でCrN系の被膜材は、鉄鋼材との摩擦特性が優れており、かつ高硬度であることがよく知られている。また、被膜形成方法としては、物理蒸着による方法が、母材を高温まで加熱する必要がないため母材の損傷が少なく、かつ、溶射による方法と異なり被膜中に不純物の混合や内部欠陥の生成が少ないため被膜の強度が高く、冷間切削用工具の表面改質技術として広く用いられている。
しかしながら、CrNの耐熱温度は一般的に700℃程度であるため継目無鋼管の穿孔圧延のような1000℃以上の高温環境で使用するには適していない。そこで、上記したCrNの優れた特性を失わずに、耐熱温度を向上する方法を検討した結果、CrNにAlを添加することが有効であることが判明した。CrNにAlを25〜50%の範囲で添加したAl−Cr系窒化物は、CrNよりも耐熱温度が向上し、1000℃以上の高温雰囲気下での使用が可能になるとともに、常温における硬さがビッカース硬度で約3000に向上する。
さらに、Al−Cr系窒化物にBを3〜25%の範囲で添加することによって高温環境での耐摩耗性が向上した。この耐摩耗性の向上は、BがAl−Cr系窒化物内に分散し、被膜表面で酸化されることにより自己潤滑性を有するB層を窒化物被膜の表面に形成することによると考えられる。そこで、高温摺動試験により1000℃に加熱したCrNの被膜、Al−Cr系窒化物(金属成分のみの原子%で45%Al−55%Cr)の被膜およびAl−Cr−B系窒化物(金属成分のみの原子%で45%Al−45%Cr−10%B)の被膜の摩擦係数を評価した。設定荷重は5Nとし、相手材はSUS304とした。その結果、表1に示すように、CrNの被膜では摩擦係数が約0.45であったのに対し、Al−Cr系窒化物の被膜の摩擦係数は約0.3、さらにAl−Cr−B系窒化物の被膜の摩擦係数は約0.25であった。この結果から、CrNの被膜と比較して、Al−Cr系窒化物の被膜は、潤滑性と硬度の向上効果が得られ、さらにAl−Cr系窒化物に上記範囲でBを添加したAl−Cr−B系窒化物の被膜は、潤滑性がさらに向上するため、より耐摩耗性が向上すると考えられる。
また、上記のAl−Cr系窒化物またはAl−Cr−B系窒化物をプラグ表面に被覆することでスケールに依存することなく継目無鋼管の穿孔圧延時の前進効率を向上できるため、中空素管の内面品質が改善されると考えられる。
さらに、継目無鋼管穿孔圧延用プラグは、特に変形抵抗が大きな13Cr鋼等の高合金鋼ビレットを穿孔圧延中に、負荷荷重の増大と被圧延材の加工発熱による温度上昇でプラグ先端部の高温変形が大きくなる。この際、プラグ表面に被覆した硬質被膜がプラグ母材の変形に追随出来ず、破壊に至ることがある。このような被膜の破壊に対しては、プラグ先端部をMo基やNi基、またはCo基等の耐熱合金で製造し、プラグ母材の高温変形を小さくすることがさらに望ましいことが明らかになった。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたもので、下記の要旨からなる。
(1)加熱された丸ビレットをロールとプラグで構成される穿孔圧延機によって穿孔圧延して中空素管とし、該中空素管に延伸圧延機および定径圧延機によって縮径減肉加工を施し、所定寸法の鋼管とする継目無鋼管の製造方法において、前記プラグが、金属母材の表面にAl−Cr系窒化物の蒸着被膜を形成させた継目無鋼管穿孔圧延用プラグであることを特徴とする継目無鋼管の製造方法。
(2)前記金属母材の先端部が耐熱合金からなることを特徴とする(1)に記載の継目無鋼管の製造方法。
(3)前記プラグの表面の硬さがビッカース硬度で3000以上3500以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の継目無鋼管の製造方法。
(4)前記被膜が金属成分のみの原子%でAl:25〜50%、Cr:50〜75%を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の継目無鋼管の製造方法。
(5)前記被膜がPVD法により形成されたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の継目無鋼管の製造方法。
(6)前記被膜がBを金属成分のみの原子%で3〜30%含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の継目無鋼管の製造方法。
(7)前記耐熱合金が質量%でMo:99.0〜99.5%のMo基合金、Ni:45〜65%のNi基合金、またはCo:43〜50%のCo基合金のいずれかであることを特徴とする(2)〜(6)のいずれかに記載の継目無鋼管の製造方法。
本発明によれば、高合金継目無鋼管を製造する場合においても、優れた耐久性を発揮し、かつ優れた自己潤滑性を有する継目無鋼管穿孔圧延用プラグを用いて穿孔圧延を行うため、内面品質が優れた継目無鋼管を低コストで製造することが可能となる。
本発明に係る継目無鋼管穿孔圧延用プラグの一例を示す断面模式図 穿孔圧延後の中空素管の内面粗さを比較した図 穿孔圧延機による圧延態様を示す模式図
以下、本発明に係る継目無鋼管穿孔圧延用プラグ(単に、「プラグ」という場合もある。)について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る継目無鋼管穿孔圧延用プラグの一例を示す断面模式図である。該プラグは先端部4a、本体部4b、Al−Cr系窒化物の蒸着被膜5で構成される。なお、図1では、プラグの金属母材が本体部4bと先端部4aに分割され、各部が異なる材料の場合を示しているが、本発明では本体部4bと先端部4aが一体の場合も含まれる。
前述したように、プラグの金属母材の本体部4b(本体部4bと先端部4aが一体の場合は、先端部4aも含む)の材料は、マンドレルとの接合部での破損を防止するため、靭性を有する鋼材とし、先端部4aと本体部4bの表面を硬質のAl−Cr系窒化物で被覆する。被膜の厚さは、1μm未満では耐摩耗性が劣り、10μmを超えるとチッピングや膜剥離を生じやすくなって寿命が低下するため、1〜10μmが好ましい。より好ましくは2〜5μmであるが、特に規定するものではない。
通常、Al−Cr系窒化物のような被膜を形成するには、化学気相蒸着法(CVD法)、物理気相蒸着法(PVD法)等、種々の方法が適用できるが、継目無鋼管穿孔圧延用プラグの場合は、被膜を形成する処理温度によって金属母材の硬度低下や被膜の密着性の問題が発生するため、PVD法の一種であるイオンプレーティング法が好ましい。
また、プラグの金属母材とAl−Cr系窒化物の蒸着被膜との密着性を向上させるために、プラグの金属母材の表面の硬さをビッカース硬度Hvで1500〜1800まで高くすることが好ましい。前記金属母材が鋼製の場合には、表面を硬化する方法として、窒化処理を行なうことが一般的であり、例えば塩浴窒化法等の窒化処理であれば500〜550℃程度の低温側で処理することが可能である。したがって、焼き戻し温度が550℃以上である高速度鋼(SKH)や合金ダイス鋼(SKD)等をプラグの金属母材の素材として選定すれば、前記窒化処理によって前記金属母材の機械的性質(強度や靭性など)が変化することがない。
さらに、プラグの先端部4aおよび本体部4bの表面は、Al−Cr系窒化物の蒸着被膜5の剥離を抑制するために、表面粗さが算術平均粗さRaで0.2μm以下となるように仕上げられることが好ましい。継目無鋼管穿孔圧延用プラグのように高荷重が負荷されると、蒸着被膜とプラグの金属母材との界面の凹凸部、特に前記金属母材表面の凸部に応力が集中し、そこを起点に蒸着被膜が破壊されるため、プラグの金属母材(先端部4aおよび本体部4b)の表面粗さは平滑にすることが好ましい。
プラグの先端部4aは、前述したように圧延温度(約1200℃)において降伏強さが100MPa以上の高温強度を必要とするため、耐熱合金からなることが好ましい。より好ましくは、Niを45〜65質量%含有しているNi基合金、Moを99.0〜99.5質量%含有しているMo基合金、その他Coを43〜50質量%含有しているCo基合金等に代表されるような耐熱合金であることが望ましい。Ni基合金でNiが45質量%未満、65質量%超え、Mo基合金でMoが99.0質量%未満、99.5質量%超え、Co基合金でCoが43質量%未満、50質量%超え、ではともに高温強度が低下する。
また、プラグの先端部4aと本体部4bとの装着態様は、図1に示したような両者の凹凸部分を焼き嵌め、ネジ止め、圧入あるいは圧接などし、その軸心回りに相互回転不能に固定接続する方法、もしくは、上記凹凸部分を適宜な脱落防止機構を用いてルーズに嵌め合わせるなどし、その軸心回りに相互回転可能に装着する方法のうちいずれの方法で行われたものでも良い。
また、本発明において、Al−Cr系窒化物の蒸着被膜は、高負荷の環境下でも高硬度と耐久性を発揮することが求められるために、その組成を金属成分のみの原子%でAlが25%以上50%以下、Crが50%以上75%以下とすることが好ましい。
さらに、Al−Cr系窒化物にBを添加し、Al−Cr−B系窒化物の蒸着被膜とすることで蒸着被膜表面の自己潤滑性を向上させることが可能である。この場合、BはBNとして蒸着被膜中に分散する。このBNが蒸着被膜表面で酸化されることにより自己潤滑性を有するB層を蒸着被膜の表面に形成し、蒸着被膜表面の自己潤滑性を向上する。Bが過少であるとBの自己潤滑性を十分に発現できず、また、Bが過剰であるとCrやAlのホウ化物を析出して蒸着被膜が脆化するため、Bの成分比率は原子%で3%以上、30%以下が好ましい。
以上に説明した本発明の継目無鋼管穿孔圧延用プラグは、常法に従って穿孔圧延機にセットして使用される。上記のように構成されたプラグを用いることにより、プラグ表層部に溶損やえぐれなどの損傷が発生することが抑制されるため、高Cr鋼などの難加工材料の穿孔圧延が可能となる。また、プラグ表面に生じる酸化物層が極めて良好な潤滑性を有するので、穿孔圧延における前進効率が優れ、内面性状が良好な継目無鋼管を製造することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明について具体的に説明する。
本発明例で用いた継目無鋼管穿孔圧延用プラグは、図1に示すような複合構造のプラグであって、その先端部4aを表2に示す組成の耐熱合金、本体部4bを、塩浴窒化法により窒化処理を行って表面を硬化した合金ダイス鋼(SKD61)とし、先端部4aと本体部4bの凹凸部分を焼き嵌めして固定接続した。その後、イオンプレーティング法により、ターゲット材を変更することで、表2に示すような成分組成で膜厚が約3μmのAl−Cr系窒化物の蒸着被膜またはAl−Cr−B系窒化物の蒸着被膜を本体部4bと先端部4aの表面に形成させたプラグを本発明例として使用した。
また、比較例1として使用したプラグは、従来の継目無鋼管穿孔圧延用プラグと同様、低合金鋼製の一体型プラグであり、その表面に厚さ約200μmのスケールを熱処理にて形成させたプラグである。
上記の各プラグを穿孔圧延機にセットし、1200℃に加熱された外径58mm、長さ250mmのSUS420J2製の丸ビレットを、外径69mm、内径54mm、長さ450mmの中空素管に穿孔圧延することで各プラグの性能および中空素管の内面性状を評価した。
プラグの耐久性を評価するため、1本の穿孔圧延が終わるたびに目視でプラグを観察し、プラグの損耗の程度によって継続使用の可否を判断しながら、前記丸ビレット10本の穿孔圧延を実施した。
また、潤滑性の評価指標として、中空素管の長さおよび穿孔圧延時間から、<1>式に示すように、穿孔圧延の前進効率を圧延ロールの圧延速度の穿孔方向成分と中空素管の圧延速度との比として算出した。前進効率が高い程プラグの潤滑性が優れていることを示す。
(前進効率)=(L/t)/(Vr×sinθ) <1>
ここで、L:中空素管の長さ
t:穿孔圧延時間
Vr:圧延ロールの圧延速度
θ:圧延ロールの傾斜角
これらの算出結果と穿孔圧延後のプラグの損耗状態の結果を表2に併せて示した。また、表2には、使用前のプラグ表面の粗さを測定し、平均化した結果も併せて示した。
表2から明らかなように、本発明例で使用したプラグは、10本の丸ビレットをプラグが損耗することなく穿孔圧延することができ、その後の継続使用も可能な状態であった。さらに、本発明プラグは、穿孔圧延の前進効率も比較例よりも高く潤滑性が優れていることが分かった。
一方、比較例である従来型の低合金鋼製の穿孔プラグでは2本目の丸ビレットまではプラグが損耗することなく穿孔圧延ができたが、3本目の丸ビレットを穿孔圧延した後、プラグの損耗が確認され、継続使用できなかった。
また、穿孔圧延後の各中空素管に対して内面粗さを測定した結果を図2に示す。
図2から明らかなように、本発明例では、穿孔圧延を繰り返してもプラグの表面に酸化物から成る米粒状突起の発生が認められず、穿孔圧延した10本全ての中空素管の内面粗さが算術平均粗さRaで0.55μm以下と良好であり、中空素管の内面に凹状疵は発生していなかった。
一方、比較例であるスケール被膜のプラグを用いた穿孔圧延で得られた中空素管の内面粗さは算術平均粗さRaで5.0μm程度であり、中空素管の内面の凹凸形状が顕著であった。
以上のように、本発明の製造方法によれば、内面品質の優れた高合金継目無鋼管を効率よく製造できる。
Figure 0006237540
Figure 0006237540
1 傾斜ロール
2 穿孔圧延用プラグ
3 マンドレル
B 丸ビレット
H 中空素管
4a 本発明に係る継目無鋼管穿孔圧延用プラグの先端部
4b 本発明に係る継目無鋼管穿孔圧延用プラグの本体部
5 Al−Cr系窒化物の蒸着被膜

Claims (7)

  1. 加熱された丸ビレットをロールとプラグで構成される穿孔圧延機によって穿孔圧延して中空素管とし、該中空素管に延伸圧延機および定径圧延機によって縮径減肉加工を施し、所定寸法の鋼管とする継目無鋼管の製造方法において、前記プラグが、金属母材の表面にAl−Cr系窒化物の蒸着被膜を形成させ、1000〜1200℃における潤滑性に優れる継目無鋼管穿孔圧延用プラグであり、前記中空素管の内面粗さを算術平均粗さRaで0.55μm以下とすることを特徴とする継目無鋼管の製造方法。
  2. 前記金属母材の先端部が耐熱合金からなることを特徴とする請求項1に記載の継目無鋼管の製造方法。
  3. 前記プラグの表面の硬さがビッカース硬度で3000以上3500以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の継目無鋼管の製造方法。
  4. 前記被膜が金属成分のみの原子%でAl:25〜50%、Cr:50〜75%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の継目無鋼管の製造方法。
  5. 前記被膜がPVD法により形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の継目無鋼管の製造方法。
  6. 前記被膜がBを金属成分のみの原子%で3〜30%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の継目無鋼管の製造方法。
  7. 前記耐熱合金が質量%でMo:99.0〜99.5%のMo基合金、Ni:45〜65%のNi基合金、またはCo:43〜50%のCo基合金のいずれかであることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の継目無鋼管の製造方法。
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