JP6237459B2 - 鋼管の熱処理方法およびそれを用いる軸受用鋼管の製造方法 - Google Patents

鋼管の熱処理方法およびそれを用いる軸受用鋼管の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高炭素クロム軸受鋼の鋼管に球状化焼鈍を施す鋼管の熱処理方法およびそれを用いる軸受用鋼管の製造方法に関する。さらに詳しくは、工程増加がないとともに、浸炭性ガスの注入量を低減できる鋼管の熱処理方法および軸受用鋼管の製造方法に関する。
軸受の軌道輪(内・外輪)は、局部的に大きな面圧を繰り返し受けるために耐磨耗性が求められる。このような軌道輪の材料に、JIS G 4805に規定される高炭素クロム軸受鋼の鋼管(軸受用鋼管)を用いることができる。
軸受用鋼管の製造工程として、例えば、以下の工程例を採用できる。
(1)製管工程で、熱間製管によりビレットから鋼管(素管)を得る。
(2)球状化焼鈍工程で、その鋼管に球状化焼鈍を施す。
(3)スケールを除去するため、酸洗工程で、球状化焼鈍が施された鋼管を酸洗する。
(4)抽伸工程で、酸洗された鋼管を抽伸して所望の寸法とする。
(5)抽伸によって発生した残留応力を除去するため、焼鈍工程で、抽伸された鋼管に焼鈍を施す。
(6)精整工程で、焼鈍された鋼管を研磨や矯正等を行い、検査工程で各種検査が行う。
上記(2)の工程で球状化焼鈍を施すことにより、高炭素クロム軸受鋼に含まれる炭化物が球状化し、硬度や摺動特性、切削性を向上させることができる。この球状化焼鈍は、鋼管をAc1点以上の温度に加熱した後でAr1点以下の温度に徐冷することによって行われる。
図1は、球状化焼鈍のヒートパターン例を示す模式図である。同図に示すヒートパターン例では、鋼管をAc1点以上の第1温度に加熱して均熱した後、Ar1点以下の温度まで徐冷する。球状化焼鈍工程では、上述のヒートパターンによる熱処理ステップを鋼管に1回だけ施す場合や、その熱処理ステップを鋼管に複数回(例えば2回)繰り返して施す場合がある。熱処理ステップを繰り返せば、球状化がより進行することから、硬度や摺動特性、切削性をより向上させることができる。
一方、高炭素クロム軸受鋼の鋼管は、炭素含有量が高いことから、高温に加熱すると、炉内の雰囲気を制御しない限り、その表面(例えば内面や外面)に脱炭層が生じる。具体的には、前述した軸受用鋼管の製造手順では、熱間製管工程の前で分塊圧延によってインゴットからビレットを製造する工程や、上記(1)の熱間製管工程で脱炭層が形成される。
ここで、軸受用鋼管から軌道輪を製造するプロセスでは、軸受用鋼管に、その内外面に切削加工を施した後で焼入れを施す。軸受用鋼管の製造工程やその前工程で形成された脱炭層が深いと、焼入れ後に硬度不足が発生して問題となる。
これを防止するため、球状化焼鈍において、少なくとも一部の熱処理ステップで炉内雰囲気を浸炭性ガスとすることにより、脱炭層を浸炭する。この浸炭性ガス下の熱処理に、連続型光輝焼鈍炉を用いることができる。この場合、鋼管の外面と比べて内面が浸炭性ガスと接触し難いことから、内面に脱炭層が残存し易い傾向がある。
鋼管の内面に脱炭層が残存する問題に関し、従来から種々の提案がなされており、例えば、特許文献1〜3がある。特許文献1では、連続型光輝焼鈍炉に、搬送方向を複数の領域にかつ可及的密閉状に区画するカーテンを設けるとともに、それら複数の領域に浸炭性ガスを注入する供給装置をそれぞれ設けることが提案されている。ここで、特許文献1の実施例では、鋼管の中空部の雰囲気流れを煙の傾きで評価する。カーテンおよび供給装置を設けることにより、煙の傾きが大きくなる、換言すると、鋼材の中空部に流入する浸炭性ガスの流速が増加する。その結果、鋼材の内面に速やかに浸炭性ガスが流入し、脱炭を効果的に防止できるとしている。
また、特許文献2では、直火式熱処理炉を用いて鋼管に球状化焼鈍を施すに際、予めスケールや潤滑剤といった付着物を鋼管表面から除去した後、両管端を密閉して焼鈍することが提案されている。この場合、鋼管の中空部に存在する空気中の酸素量が微量であることから、脱炭に至ることがない。また、鋼内部で炭素拡散が進行して脱炭が軽減されることにより、鋼管内面の脱炭を防止できる。それらの結果、熱処理後の脱炭層除去のための表面研削が不要となるとしている。
特許文献3では、鋼管を熱処理する際に、予め黒鉛と高温で燃焼し難い液体との混合物を内面に塗布し、その鋼管に脱炭性雰囲気炉で熱処理を施すことが提案されている。この場合、黒鉛の作用によって鋼管内面の脱炭が防止でき、熱処理後の脱炭層除去のための表面研削が不要となるとしている。
特開平11−199922号公報 特開平5−78734号公報 特開平3−2327号公報
前述の通り、高炭素クロム軸受鋼の鋼管の製造では、硬度や摺動特性、切削性を向上させるため、球状化焼鈍が行われる。一方、高炭素クロム軸受鋼の鋼管は、炭素含有量が高いことから、熱間製管等で高温に加熱すると、表面(例えば内面や外面)に脱炭層が生じる。脱炭層が深い場合、軌道輪の製造プロセスで焼入れを行うと、硬度不足が発生して問題となる。これを防止するため、球状化焼鈍において、熱処理ステップで雰囲気を浸炭性ガスとすることにより、脱炭層を浸炭する。その際、鋼管の外面と比べて内面が浸炭性ガスと接触し難いことから、内面に脱炭層が残存し易い傾向がある。
前述の特許文献1では、搬送方向を複数の領域にかつ可及的密閉状に区画するカーテンを設けるとともに、それら複数の領域に浸炭性ガスを注入する供給装置をそれぞれ設けることが提案されている。これにより、鋼材の中空部に流入する浸炭性ガスの流速(煙の傾き)が増加するので、鋼材の内面に速やかに浸炭性ガスが流入し、脱炭を効果的に防止できるとしている。
このように鋼材の中空部の流速を増加させるには、差圧を大きくする必要があり、浸炭性ガスを大量に注入する必要がある。このため、浸炭性ガスの注入量を低減して効率よく浸炭さることが望まれていた。また、カーテンの配置位置や、そのカーテンによって区画された複数の領域にそれぞれ注入される浸炭性ガスの配分については、特許文献1に何ら検討されていない。
前述の特許文献2では、スケール等を除去した後で両管端を密閉して焼鈍することが提案されている。この場合、両管端を密閉するために栓を装着する工程と、栓を取り外す工程とが必要となり、工数が増加する。また、脱炭層を鋼内部の炭素拡散によって浸炭するので、脱炭層が深い場合、長時間の熱処理が必要となり、製造効率が低下する。
前述の特許文献3では、予め黒鉛と高温で燃焼し難い液体との混合物を内面に塗布し、その鋼管に脱炭性雰囲気炉で熱処理を施すことが提案されている。この場合、鋼管内面に混合物を塗布する工程が必要となり、製造効率が低下するとともに製造コストが上昇する。また、小径鋼管の場合、内面に混合物を塗布する作業が煩雑となることから、小径鋼管の熱処理に適用するのは困難である。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、工程増加がないとともに、浸炭性ガスの注入量を低減できる鋼管の熱処理方法および軸受用鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前述の特許文献1で提案されるようなカーテンで複数の領域に仕切られる連続型光輝焼鈍炉で、浸炭性ガスの注入量を低減する方法を検討した。そこで、前記図1に示すヒートパターンによる熱処理では、浸炭が進行し易い温度域があり、具体的には(Ar1点−40℃)以上Ar1点以下の温度域で浸炭が進行し易いことを見出した。また、浸炭が進行し易い温度域に鋼管がなる区画領域で浸炭性ガスの注入量を増加させれば、鋼管の内面を浸炭性ガスと効率よく接触させることができる。これにより、連続型光輝焼鈍炉の各領域に注入される浸炭性ガスの合計量を低減できることを知見した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記(1)および(2)の鋼管の熱処理方法、並びに、下記(3)の軸受用鋼管の製造方法を要旨としている。
(1)高炭素クロム軸受鋼の鋼管に球状化焼鈍を施す鋼管の熱処理方法であって、前記球状化焼鈍が、浸炭性ガスが充満する光輝焼鈍炉の入口から出口まで前記鋼管をその長手方向を搬送方向にして搬送する過程で、Ac1点以上の温度に加熱した後でAr1点以下の温度に徐冷する熱処理ステップを含み、前記光輝焼鈍炉は、カーテンによって搬送方向に複数の領域に仕切られ、前記領域として、第1領域と、その第1領域の手前で隣接する第2領域とを備え、前記第1領域は、当該第1領域内の平均温度(℃)が(Ar1点−40℃)以上Ar1点以下の温度であって、前記鋼管を徐冷するための領域であり、前記第1領域と前記第2領域との差圧が、3〜8Paである、鋼管の熱処理方法。
(2)上記(1)に記載の鋼管の熱処理方法であって、前記第1領域の圧力と大気圧との差圧が、8〜18Paである、鋼管の熱処理方法。
(3)上記(1)または(2)に記載の鋼管の熱処理方法による球状化焼鈍工程を含む、軸受用鋼管の製造方法。
本発明の鋼管の熱処理方法は、連続型光輝焼鈍炉に、平均温度(℃)が(Ar1点−40℃)以上Ar1点以下の温度である第1領域と、その第1領域の手前に第2領域を設ける。その第1領域と第2領域との差圧を3〜8Paとする。これにより、鋼管の中空部に浸炭性ガスが流入する回数を増加できるとともに、浸炭が進行し易い温度域において、反応性が高い浸炭性ガスが鋼管の中空部に存在する状態にできる。その結果、鋼管内面の浸炭を効率よく進行でき、光輝焼鈍炉の各領域に注入される浸炭性ガスの合計量を低減できる。また、鋼管の両端への栓の着脱や鋼管内面への混合物の塗布が不要であり、工程を増加させることがない。
本発明の軸受用鋼管の製造方法は、上述の本発明の鋼管の熱処理方法を用いる球状化焼鈍工程を含む。これにより、球状化焼鈍工程において、工程を増加させることなく、浸炭性ガスの注入量を低減できることから、軸受用鋼管の製造コストを削減できる。
球状化焼鈍のヒートパターン例を示す模式図である。 本発明の鋼管の熱処理方法による処理フロー例を示す模式図であり、同図(a)は入口側領域への進入時、同図(b)は第2領域への進入時、同図(c)は第1領域への進入時、同図(d)は出口側領域への進入時、同図(e)は出口通過時をそれぞれ示す。
以下に、本発明の鋼管の熱処理方法および軸受用鋼管の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の鋼管の熱処理方法による処理フロー例を示す模式図であり、同図(a)は入口側領域への進入時、同図(b)は第2領域への進入時、同図(c)は第1領域への進入時、同図(d)は出口側領域への進入時、同図(e)は出口通過時をそれぞれ示す。同図には、連続型光輝焼鈍炉10と、熱処理に供される鋼管20と、その鋼管20を搬送する複数の搬送ローラ13とを示す。
搬送ローラ13は、駆動装置(例えばモータ)に駆動されて回転し、長手方向を水平にして載置された鋼管20を、その長手方向(同図の斜線を施した矢印参照)に搬送する。同図では、処理フローの理解を容易にするため、鋼管20を1本しか示していないが、その鋼管20の後方で別の鋼管を搬送することにより、連続型光輝焼鈍炉10は複数の鋼管に連続して熱処理を施すことができる。
同図に示す連続型光輝焼鈍炉10は、鋼管20を炉内に搬入するための入口10aが一端に設けられ、鋼管20を炉外に搬出するための出口10bが他端に設けられる。炉内を搬送方向に複数の領域に仕切るため、仕切り板12およびカーテン11が、搬送方向に間隔を設けて複数配置される。仕切り板12は、上側仕切り板12aと、下側仕切り板12bとで構成され、搬送される鋼管20を通過可能とするため、上側仕切り板12aの下端と下側仕切り板12bの上端とが離間される。
上側仕切り板12aと下側仕切り板12bとの間を可及的に密閉するため、カーテン11が上側仕切り板12aから下側仕切り板12bに向かって吊り下げられる。このカーテン11として、例えば、短冊状の耐熱布片を並べたカーテンを用いることができる。このようなカーテン11により、上側仕切り板12aと下側仕切り板12bとの間に鋼管を通過可能としつつ、各領域内に注入された浸炭性ガスが流出するのを可及的に遮断する。なお、入口10aと出口10bにもカーテンを設置してもよい。
同図に示す光輝焼鈍炉10は、入口10aから順に、入口側領域10e、第2領域10d、第1領域10c、出口側領域10fに仕切られている。これらの領域には、浸炭性ガスをそれぞれ注入することができ、それによって、浸炭性ガスを充満させることができる。
このような光輝焼鈍炉10を用いる熱処理では、処理に供される鋼管20が入口10aから出口10bまで搬送される。その過程で、Ac1点以上の温度に加熱した後でAr1点以下の温度に徐冷され、例えば、前記図1に示すヒートパターンとなるように加熱した後で徐冷される。ここで、加熱速度は、250〜700℃/時間程度、徐冷における冷却速度は70℃/時間以下(25〜70℃/時間)である。上記加熱速度は、加熱開始から加熱終了までの平均であり、上記冷却速度は、冷却開始から冷却終了までの平均である。
本発明の鋼管の熱処理方法は、高炭素クロム軸受鋼の鋼管への球状化焼鈍を対象とし、その球状化焼鈍の熱処理ステップのうちでも、浸炭性ガスが充満する光輝焼鈍炉10を用いる熱処理ステップを対象とする。
光輝焼鈍炉10は、カーテン11によって搬送方向に複数の領域に仕切られ、領域として、第1領域10cと第2領域10dとを備える。第1領域10cは、その領域内の平均温度(℃)が(Ar1点−40℃)以上Ar1点以下の温度であって、鋼管20を徐冷するための領域である。
本発明において、第1領域内の平均温度(℃)は、第1領域10cの入側と出側とで鋼管20の温度を測定し、測定された入側温度と出側温度との平均値とする。入側温度と出側温度は、ガスの注入量、鋼管の搬送速度、鋼管のサイズに基づいて決定される炉の設定温度に基づく。炉の設定温度が実際の鋼管の温度に合致していることは、例えば、定期的に、中空部に熱電対を挿入し状態で鋼管を炉内に搬送し、鋼管の実温度と炉の設定温度を比較することで確認すればよく、確認の結果、必要に応じて較正すればよい。
このような第1領域内の平均温度が(Ar1点−40℃)以上Ar1点以下の温度であれば、その第1領域で、浸炭が進行し易い温度域に鋼管がなることを意味する。
また、第1領域10cが鋼管20を徐冷するための領域であると規定する。これは、加熱過程および徐冷過程のいずれでも、鋼管が(Ar1点−40℃)以上Ar1点以下の温度域内となるが、加熱過程は鋼管が上記温度域内となる時間が短く、浸炭を促進させる効果が発揮され難いことによる。
一方、第2領域10dは、その第1領域10cの手前(入口側)に位置し、第1領域10cとカーテンを挟んで隣接する。
このような第1領域10cと第2領域10dとの差圧を3〜8Paとする。ここで、第1領域10cと第2領域10dとの差圧は、第1領域10cの圧力から第2領域10dの圧力を差し引いたものである。これにより、同図(c)に示すように鋼管20が第2領域10dから第1領域10cに進入する際に、鋼管の中空部を経由して第1領域10cから第2領域10dに浸炭性ガスが流れる(同図(c)の実線矢印参照)。このため、鋼管20の中空部に浸炭性ガスが流入する。
図2の処理フロー例では、第2領域10dの圧力は入口領域10eの圧力よりも高く、入口領域10eの圧力は大気圧よりも高くなるように浸炭性ガスを注入する。すなわち、第1領域10cの圧力>第2領域10dの圧力>入口領域10eの圧力>大気圧という関係となっている。
従って、鋼管20の中空部には、同図(a)に示すように炉外から入口側領域10eに進入する際に鋼管20の中空部を経由して入口側領域10eから炉外に浸炭性ガスが流れる。また、同図(b)に示すように入口側領域10eから第2領域10dに進入する際に鋼管20の中空部を経由して第2領域10dから入口側領域10eに浸炭性ガスが流れる。これらにより、鋼管20の中空部には浸炭性ガスが存在する状態となる。
本発明の鋼管の熱処理方法は、第2領域10dから第1領域10cに進入する際に鋼管20の中空部にさらに浸炭性ガスを流入させる。このように鋼管20の中空部に浸炭性ガスが流入する回数を増加させ、熱処理の過程で鋼管20の中空部に浸炭性ガスが流入する合計量を増加させる。これにより、鋼管内面と浸炭性ガスとの接触を促進し、鋼管内面の浸炭を効率よく進行できる。
図2(c)に示すような第1領域10cへの進入時における中空部への浸炭性ガスの流入は、浸炭が進行し易い温度域に鋼管がなっている状態で、または、その温度域に鋼管がなる直前で行われる。このため、浸炭が進行し易い温度域において、反応性が高い浸炭性ガスが鋼管の中空部に存在する状態にでき、これによっても鋼管内面の浸炭を効率よく進行できる。
これらのことから、本発明の鋼管の熱処理方法は、内面の脱炭層を十分に浸炭することによって焼入れ後に硬度不足が発生する問題を防止できる。また、鋼管中空部への浸炭性ガスの流入回数を増加させることにより、鋼管中空部への浸炭性ガスの流入量を確保する。この場合、差圧を大きくして流速を増加させることによって浸炭性ガスの中空部への流入量を確保する方式と比べ、第1領域10c以外の領域で浸炭性ガスの供給量を低減させることができる。その結果、光輝焼鈍炉の各領域に注入される浸炭性ガスの合計量を低減できる。
また、本発明の鋼管の熱処理方法は、熱処理を行う連続型光輝焼鈍炉において、鋼管の両端に栓を装着する工程や、栓を取り外す工程、鋼管の内面に混合物を塗布する工程を設ける必要がない。このため、工程を増加させることなく(製造効率を維持しつつ)、焼入れ後に硬度不足が発生する問題を防止できる。
第1領域10cの圧力と大気圧との差圧は、8〜18Paとするのが好ましい。ここで、第1領域10cの圧力と大気圧の差圧は、第1領域10cの圧力から大気圧を差し引いたものである。これにより、第1領域での浸炭反応をより効率的に行うことができ、注入する浸炭性ガスの合計量をより低減できる。
第1領域10cの入側温度(℃)は、Ar1点以上(Ar1+20℃)点以下とするのが好ましい。これにより、浸炭が進行し易い温度域に鋼管20がなった際に鋼管20の中空部に存在する浸炭性ガスの反応性をより高めることができる。このため、第1領域での浸炭反応をより効率的に行うことができ、注入する浸炭性ガスの合計量をより低減できる。
第1領域10cの出側温度(℃)は、(Ar1点−60℃)以上(Ar1点−40℃)以下とするのが好ましい。これにより、浸炭が進行し易い温度域の終盤で鋼管20の中空部に反応性が高い浸炭性ガスを流入させることができる。このため、第1領域での浸炭反応をより効率的に行うことができ、注入する浸炭性ガスの合計量をより低減できる。
第2領域10dの入側温度(℃)は、Ac1点以上とするのが好ましい。これにより、第2領域の入側のカーテンと入口10aの距離や第2領域の長さが好適となる。この場合、第2領域10dの入側で鋼管の中空部に浸炭性ガスを流入させることにより、浸炭反応を促進させつつ、入口側領域10eへの浸炭性ガスの注入量を低減して注入する浸炭性ガスの合計量をより低減できる。
図2に示す光輝焼鈍炉のように入口10aおよび出口10bがカーテン等でシールされていない場合、炉内に空気の侵入を防ぐために入口側領域10eの圧力または出口側領域10fの圧力を大気圧よりも高くする必要がある。入口側領域10eの圧力と大気圧との差圧、および、出口側領域10fの圧力と大気圧との差圧は、いずれも、0.1〜2Paとするのが好ましい。
高炭素クロム軸受鋼の化学組成は、例えば、質量%で、C:0.6〜1.5%、Cr:0.5〜5.0%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下を含有し、残部をFeおよび不純物とすることができる。その化学組成の場合、Feの一部に代えて、さらに、質量%で、Mo:1.0%以下およびV:1.0%以下のいずれか一方または両方を含有させてもよい。ここで、不純物とは、鋼管を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等から混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明の軸受用鋼管の製造方法は、上述の本発明の鋼管の熱処理方法による球状化焼鈍工程を含む。このため、球状化焼鈍工程において、工程を増加させることなく、浸炭性ガスの注入量を低減でき、軸受用鋼管の製造コストを削減できる。
本発明の軸受用鋼管の製造方法は、球状化焼鈍工程の前工程として、例えば、マンネスマン製管法による熱間製管を採用できる。
球状化焼鈍工程の後工程では、例えば、酸洗工程、抽伸工程、焼鈍工程、精整工程および検査工程をその順で行うことができる。
本発明の鋼管の熱処理方法および軸受用鋼管の製造方法による効果を確認するため、鋼管に球状化焼鈍を施す試験を行った。
本試験では、鋼管に前記図1に示すヒートパターンによって熱処理を施した。鋼管は、インゴットを分塊圧延してビレットとし、そのビレットを熱間製管することによって得た。インゴットは、JIS G 4805に規定されるSUJ2に相当する高炭素クロム軸受鋼のインゴットを用いた。本試験に用いた高炭素クロム軸受鋼は、Ac1点が約760℃、Ar1点が約740℃であった。鋼管の寸法は、外径が85mm、肉厚が7.2mm、長さが14mであった。
熱処理では、鋼管を800℃に加熱した後、その温度で15分間に亘って均熱し、その後、徐冷した。熱処理では、前記図2に示す光輝焼鈍炉10を用いた。光輝焼鈍炉10は、搬送方向に区分けられた10個のゾーンを有し、各ゾーンの体積はいずれも30m3であった。それらの10個のゾーンには、入口側から順に第1ゾーン、第2ゾーン、・・・、第10ゾーンと番号を付した。
本試験では、第1ゾーンおよび第2ゾーンを入口側領域10e、第3ゾーン〜第5ゾーンを第2領域10d、第6ゾーン〜第8ゾーンを第1領域10c、第9ゾーンおよび第10ゾーンを出口側領域10fとした。入口側領域10e、第2領域10d、第1領域10cおよび出口側領域10fに、それぞれ浸炭性ガスを注入し、その注入量を調整することにより、いずれの領域も大気圧より高い圧力を維持した。また、光輝焼鈍炉の入口10aから出口10bまでの距離は70mであり、鋼管の搬送速度を調整することにより、鋼管の前側の端部を240分かけて光輝焼鈍炉を通過させた。
第1領域は、入側温度を750℃、出側温度を690℃とし、その領域内の平均温度は720℃であった。また、第2領域の入側温度を800℃、入口側領域の入側温度を常温、出口側領域の出側温度を660℃とした。
各領域に注入した浸炭性ガスは、質量%で、CO:12.6%、CO2:0.4%、O2:0.2%を含有し、残部がN2であった。
本試験では、熱処理前の鋼管の内面と、熱処理後の鋼管の内面について、表面から2/100mmの深さまでのC濃度(質量%)を測定した。C濃度は、EPMAを用いた線分析で測定した。
表1に、各領域のゾーンあたりの浸炭性ガスの注入量と、各領域の圧力と大気圧との差圧と、熱処理前および熱処理後の内面のC濃度(質量%)とを示す。なお、比較例2、比較例3、本発明例1および本発明例2では、入口側領域と出口側領域とでガス注入量を0(ゼロ)(m3/時間)としたが、入口側領域および出口側領域のいずれでも大気圧との差圧が生じた。これは、第2領域に注入した浸炭性ガスの一部が入口側領域に流れることや、第1領域に注入した浸炭性ガスの一部が出口側領域に流れること等によるものである。
Figure 0006237459
ここで、本試験に用いた高炭素クロム軸受鋼では、C濃度が0.95〜1.10質量%であることが要求される。比較例1および比較例2は、いずれも第1領域と第2領域とで圧力を同じとし、その結果、熱処理後のC濃度が要求範囲を下回った。この場合、第1領域および第2領域で大気圧との差圧をより大きくすれば、流速の増加に伴って中空部への浸炭性ガスの流入量が増加し、C濃度を上昇させて要求範囲内にできる。しかしながら、光輝焼鈍炉の大部分を高圧にすることとなり、各領域に注入される浸炭性ガスの合計量が著しく増大する。
これに対し、本発明例1および本発明例2では、第1領域と第2領域で圧力を異ならせ、その差圧を3〜8Paとした。これにより、鋼管の中空部に浸炭性ガスが流入する回数を増やして中空部への浸炭性ガスの流入量を増加させ、その結果、熱処理後のC濃度が要求範囲内となった。この場合、光輝焼鈍炉のうちで第1領域のみを高圧とすればよく、各領域に注入される浸炭性ガスの合計量を低減できる。
一方、比較例3では、第1領域と第2領域で圧力を異ならせ、その差圧を3〜8Paの範囲を超えて10Paとした。その結果、熱処理後のC濃度が要求範囲を上回った。
これらから、第1領域と第2領域との差圧を3〜8Paとすることにより、効率よく鋼管内面の浸炭を進行できることが明らかになった。
本発明の鋼管の熱処理方法および軸受用鋼管の製造方法は、球状化焼鈍工程において、工程を増加させることなく、浸炭性ガスの注入量を低減できる。このため、軸受用鋼管の製造に適用すれば、軸受用鋼管の製造コストの削減に大きく寄与することができる。
10:光輝焼鈍炉、 10a:入口、 10b:出口、 10c:第1領域、
10d:第2領域、 10e:入口側領域、 10f:出口側領域、
11:カーテン、 12:仕切り板、 12a:上側仕切り板、
12b:下側仕切り板、 13:搬送ローラ、 20:鋼管

Claims (3)

  1. 高炭素クロム軸受鋼の鋼管に球状化焼鈍を施す鋼管の熱処理方法であって、
    前記球状化焼鈍が、浸炭性ガスが充満する光輝焼鈍炉の入口から出口まで前記鋼管をその長手方向を搬送方向にして搬送する過程で、Ac1点以上の温度に、加熱速度を250〜700℃/時間として加熱した後でAr1点以下の温度に、冷却速度を25〜70℃/時間として徐冷する熱処理ステップを含み、
    前記光輝焼鈍炉は、カーテンによって搬送方向に複数の領域に仕切られ、前記領域として、第1領域と、その第1領域の手前で隣接する第2領域とを備え、
    前記第1領域は、当該第1領域内の平均温度(℃)が(Ar1点−40℃)以上Ar1点以下の温度であって、前記鋼管を徐冷するための領域であり、
    前記第1領域と前記第2領域との差圧が、3〜8Paである、鋼管の熱処理方法。
  2. 請求項1に記載の鋼管の熱処理方法であって、
    前記第1領域の圧力と大気圧との差圧が、8〜18Paである、鋼管の熱処理方法。
  3. 請求項1または2に記載の鋼管の熱処理方法による球状化焼鈍工程を含む、軸受用鋼管の製造方法。
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