以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
なお、同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。また、車幅方向内側および車幅方向外側とは、タイヤを車両に装着したときの車幅方向に対する向きを示す。
この空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
一対のビードコア11、11は、複数のビードワイヤを束ねて成る環状部材であり、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を構成する。
カーカス層13は、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13は、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(クロスプライ構造)。ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチールあるいは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されて、リムフランジに対する左右のビード部の接触面を構成する。
[トレッドパターン]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、オールシーズン用タイヤのトレッドパターンを示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端である。
この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に連続して延在する複数の周方向溝21〜26と、これらの周方向主溝21〜26に区画されて成る複数の陸部31〜37と、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝41〜43とをトレッド部に備える(図2参照)。
周方向溝とは、1[mm]以上の溝幅および4[mm]以上の溝深さを有する縦溝をいう。したがって、周方向溝には、スリップサインの表示義務を有する周方向主溝のみならず、より幅狭な周方向細溝も含まれる。周方向主溝は、一般に、6[mm]以上の溝幅および7[mm]以上の溝深さを有する。
ラグ溝とは、2[mm]以上の溝幅および3[mm]以上の溝深さを有する横溝をいう。ラグ溝は、陸部をタイヤ幅方向に貫通するオープン構造を有しても良いし、一方の端部にて陸部内で終端するセミクローズド構造あるいは双方の端部にて陸部内で終端するクローズド構造を有しても良い。
溝幅は、トレッド踏面における溝幅の最大値として測定され、溝開口部に形成された切欠部や面取部を除外して測定される。また、溝深さは、トレッド踏面から溝底までの最大値として測定され、溝底に形成された部分的な凹凸部などを除外して測定される。
なお、後述するサイプとは、陸部に形成された切り込みであり、一般に2[mm]未満のサイプ幅を有する。
例えば、図2の構成では、タイヤ赤道面CLを境界とする車幅方向内側の領域に、1本の周方向主溝22が配置され、また、車幅方向外側の領域に、2本の周方向主溝25、26が配置されている。また、これらの周方向主溝22、25、26が、ストレート形状を有し、タイヤ全周に渡って連続して延在している。また、車幅方向内側の領域には、タイヤ接地端Tと周方向主溝22との間および周方向主溝22とタイヤ赤道面CLとの間に、周方向細溝21、23がそれぞれ配置されている。また、タイヤ赤道面CL上に、1本の周方向細溝24が配置されている。
また、これらの周方向主溝21〜26により、7列の陸部31〜37が区画されている。具体的には、タイヤ赤道面CLを境界とする車幅方向内側の領域に、4列の陸部31〜34が区画され、車幅方向外側の領域に、3列の陸部が区画されている。
また、車幅方向内側の領域では、車幅方向内側のトレッド端と周方向主溝22との間に、複数のラグ溝41が配置されている。また、これらのラグ溝41が、タイヤ周方向に緩やかに湾曲しつつタイヤ幅方向に延在して陸部31を貫通し、また、周方向主溝22に交差することなく陸部32の内部で終端している。また、これらのラグ溝41が、タイヤ周方向に所定間隔で配置されて、タイヤ接地端T上にある陸部31を複数のブロック51に分断している。これにより、ブロック列が形成されている。また、これらのブロック51が、1本のサイプ61をそれぞれ有している。また、これらのサイプ61が、ブロック51の内部で終端するクローズド構造を有し、タイヤ接地端Tに交差しつつタイヤ幅方向に延在している。また、陸部32が、複数のサイプ62を有している。また、これらのサイプ62が、ラグ溝41の延長線上にそれぞれ配置され、ラグ溝41を延長して周方向主溝22に開口している。
また、周方向主溝22とタイヤ赤道面CLとの間に、複数のラグ溝42が配置されている。また、これらのラグ溝42が、タイヤ周方向に緩やかに湾曲しつつタイヤ幅方向に延在して、周方向主溝22とタイヤ赤道面CLとの間にある2列の陸部33、34を貫通している。また、これらのラグ溝42が、タイヤ周方向に所定間隔で配置されて、これらの陸部33、34を複数のブロック52に分断している。これにより、周方向主溝22とタイヤ赤道面CLとの間に、2列のブロック列が形成されている。
また、車幅方向外側の領域では、タイヤ赤道面CL側にある2列の陸部35、36が、タイヤ周方向に連続するリブとなっている。また、これらの陸部35、36が、車幅方向外側のエッジ部に、複数の切欠71、72をそれぞれ有している。また、これらの切欠71、72が、タイヤ周方向に所定間隔で配置されている。
また、最も外側の周方向主溝26と車幅方向外側のトレッド端との間に、複数のラグ溝43が配置されている。また、これらのラグ溝43が、タイヤ接地面の外からタイヤ周方向に緩やかに湾曲しつつタイヤ接地端Tを越えてタイヤ幅方向に延在して、周方向主溝26に開口している。また、これらのラグ溝43が、タイヤ周方向に所定間隔で配置されて、陸部37のタイヤ接地面内にある部分をタイヤ周方向に分断している。
図2の構成では、上記のように、周方向溝21〜26およびラグ溝41〜43が配置されて、タイヤ赤道面CLに対して左右非対称なトレッドパターンが形成されている。なお、空気入りタイヤ1は、後述するピッチ配列の要件を満たす限り、任意のトレッドパターンを採用できる。
ここで、トレッド部を内側ショルダー領域、センター領域および外側ショルダー領域から成る3つの領域に区分する。
内側ショルダー領域は、次のように定義される。まず、図2のように、タイヤ赤道面CLから車幅方向内側に向かってタイヤ接地幅TWの15[%]以上40[%]の距離Win(0.15≦Win/TW≦0.40)にある周方向溝を、内側周方向溝と呼ぶ。そして、この内側周方向溝よりも車幅方向内側の領域を、内側ショルダー領域と呼ぶ。上記の条件を満たす周方向溝が複数ある場合には、任意の内側周方向溝を選択できる。
外側ショルダー領域は、次のように定義される。まず、タイヤ赤道面CLから車幅方向外側に向かってタイヤ接地幅TWの15[%]以上40[%]の距離Wout(0.15≦Wout/TW≦0.40)にある周方向溝を、内側周方向溝と呼ぶ。そして、この周方向溝よりも車幅方向外側の領域を、外側ショルダー領域と呼ぶ。上記の条件を満たす周方向溝が複数ある場合には、任意の内側周方向溝を選択できる。
センター領域は、上記の内側周方向溝と外側周方向溝との間の領域をいう。
例えば、図2の構成では、上記のように、空気入りタイヤ1が6本の周方向溝21〜26を備えている。また、タイヤ赤道面CLを境界として車幅方向内側にある周方向主溝22が、内側周方向溝であり、この周方向主溝22を境界として、内側ショルダー領域が区画されている。また、車幅方向外側にある2本の周方向主溝25、26のうち最も外側にある周方向主溝26が、外側周方向溝であり、この周方向主溝26を境界として、外側ショルダー領域が区画されている。
なお、タイヤ接地幅TWとは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離をいう。
タイヤ接地端Tとは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置をいう。
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
[ピッチバリエーション構造]
一般的な空気入りタイヤでは、陸部が、所定のピッチ配列を有する。ピッチ配列は、複数のラグ溝、サイプ、切欠、カーフなどが、タイヤ周方向に所定のピッチで配列されることにより構成される。ピッチ配列の種類には、単一ピッチ配列、周期ピッチ配列、ランダムピッチ配列などがある。
ピッチとは、タイヤ周方向に沿って同じパターンが繰り返されるときの、パターン構成要素の最小単位をいう。一般には、ピッチが、タイヤのパターンノイズや偏摩耗に影響を与えるラグ溝の配置により規定される。また、ラグ溝を有さない陸部では、ピッチが、サイプや切欠により規定される。
単一ピッチ配列とは、単一種類のピッチのみから成るピッチ配列をいう。具体的には、同一種類のピッチのピッチ数がタイヤ全周におけるピッチ数の80[%]以上であれば、単一ピッチ配列であるといえる。例えば、ピッチ長がモールドセクターの分割位置で変わる場合があるが、他の80[%]以上のピッチが同一種類であれば、単一ピッチ配列であるといえる。また、ピッチ長の最大値と最小値との比が1.00[%]以上1.09[%]以下であれば、同一種類のピッチであるといえる。
単一ピッチ配列を有する陸部では、摩耗がタイヤ全周で均一に進行するため、タイヤの多角形摩耗が抑制される。多角形摩耗とは、陸部がタイヤ周方向の一部で早期に摩耗する現象であり、例えば、ブロックのヒールアンドトゥ摩耗などである。また、単一ピッチ配列を有する陸部では、タイヤ周方向にかかる陸部の剛性変化が小さいため、タイヤのユニフォミティが向上する。
周期ピッチ配列とは、複数種類のピッチを連続して配列して成るピッチ配列をいう。一方、ランダムピッチ配列とは、複数種類のピッチを不連続に配列して成るピッチ配列をいう。具体的には、「連続」するピッチがタイヤ全周におけるピッチ数の6[%]以上であれば、周期ピッチ配列に該当し、6[%]未満であれば、ランダムピッチ配列に該当する。ピッチの種類は、一般に、相互に異なるピッチ長を有するピッチの種類として概念される。一般的な空気入りタイヤでは、3種類〜7種類のピッチが用いられる。また、2種類のピッチから成るピッチ配列は、周期ピッチ配列である。また、周期ピッチ配列およびランダムピッチ配列におけるピッチ長の最大値と最小値との比は、0.85以上1.15以下の範囲にあることが好ましい。
複数種類のピッチが「連続」および「不連続」のいずれに該当するかは、次のように判断される。例えば、ピッチ配列が相互に異なるピッチ長をもつ3種類のピッチA〜C(A>B>C)を有する場合を考える。このとき、A−A−B−B−C−C−B−B−A−A・・・のように、タイヤ周方向に隣り合うピッチが同一あるいは隣接するピッチ長を有する場合には、ピッチが「連続」であるといえる。一方で、A−Cのように、タイヤ周方向に隣り合うピッチが中間のピッチ長(B)を飛ばして配置される場合には、ピッチが「不連続」であるといえる。
周期ピッチ配列およびランダムピッチ配列のように複数種類のピッチから成るピッチ配列は、ピッチバリエーション構造と呼ばれる。かかるピッチバリエーション構造を有する構成では、走行時に発生するピーク音圧の周波数帯域が分散して、パターンノイズが減少する。これにより、タイヤの騒音性能が向上する。
[単一ピッチ配列と、周期ピッチ配列およびランダムピッチ配列との併用]
上記のように、ピッチバリエーション構造を有する構成では、パターンノイズが減少して、タイヤの騒音性能が向上する。
一方で、発明者の研究によれば、内側ショルダー領域にある陸部では、多角形摩耗が生じ易い。この傾向は、タイヤの使用状況(例えば、誘導輪での使用)、特定車両(例えば、ハイブリット車など)において顕著である。
そこで、この空気入りタイヤ1では、パターンノイズを低減しつつ内側ショルダー領域における多角形摩耗を抑制するために、以下の構成を採用している。
図3は、図1に記載した空気入りタイヤのピッチ配列を示す説明図である。同図は、図2のトレッドパターンにおける内側ショルダー領域、センター領域および外側ショルダー領域の各ピッチ配列を概念的に示している。また、同図において、記号の配列は、所定のピッチA〜Eが、図中左から右に向かう順序でタイヤ周方向に配置されることを示している。また、例えば、「A3」は、ピッチ長を有するピッチAがタイヤ周方向に3つ連続して配置されることを示している。
この空気入りタイヤ1では、内側ショルダー領域におけるピッチ配列が、単一種類のピッチから成る単一ピッチ配列であり、且つ、センター領域および外側ショルダー領域におけるピッチ配列が、周期ピッチ配列およびランダムピッチ配列の少なくとも一方であることを要する。
かかる構成では、単一ピッチ配列が内側ショルダー領域に配置されるので、内側ショルダー領域の陸部31の多角形摩耗が抑制される。一方で、周期ピッチ配列およびランダムピッチ配列の少なくとも一方がセンター領域および外側ショルダー領域に配置されるので、タイヤのパターンノイズが減少する。
例えば、図2のトレッドパターンでは、上記のように、内側ショルダー領域とセンター領域とが、車幅方向内側の最外周方向主溝26により区画され、また、センター領域と外側ショルダー領域とが、車幅方向外側の最外周方向主溝22に区画されている。また、図3に示すように、内側ショルダー領域におけるピッチ配列が、単一ピッチ配列であり、センター領域および外側ショルダー領域におけるピッチ配列が、ランダムピッチ配列である。具体的には、各領域のピッチ配列が以下のように構成されている。
まず、内側ショルダー領域におけるピッチ配列の各ピッチが、ピッチ長Pin_1、Pin_2、・・・、Pin_N(Nin:ピッチ数)をそれぞれ有する。また、センター領域におけるピッチ配列の各ピッチが、ピッチ長Pce_1、Pce_2、・・・、Pce_N(Nce:ピッチ数)をそれぞれ有する。また、外側ショルダー領域におけるピッチ配列の各ピッチが、ピッチ長Pout_1、Pout_2、・・・、Pout_N(Nout:ピッチ数)をそれぞれ有する。
ピッチ長は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのタイヤ周方向のピッチの長さとして測定される。ピッチ数は、1列のピッチ配列におけるタイヤ全周のピッチの総数である。
次に、内側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ種類が、「C」のみの1種類で構成される。このため、ピッチ配列のピッチ長Pin_1、Pin_2、・・・、Pin_Nが、Pin_1=Pin_2=、・・・、=Pin_N=Cの関係を有する。また、図3(a)に示すように、ラグ溝41およびサイプ61が、一定のピッチ長Cでタイヤ周方向に配置されている。
また、センター領域および外側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ種類が、「A」〜「E」の5種類であり、これらのピッチのピッチ長がA>B>C>D>Eの関係を有している。また、ピッチ配列のピッチ長Pce_1、Pce_2、・・・、Pce_Nが、図3(b)に示す所定のランダムピッチ配列によって「A」〜「E」のいずれかに設定されている。また、センター領域および外側ショルダー領域が、同一パターンのランダムピッチ配列を有している。このため、ラグ溝42、43および切欠71、72が、このランダムピッチ配列によってタイヤ周方向に配置されている。
[変形例]
図4〜図6は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図は、トレッドパターンにおける内側ショルダー領域、センター領域および外側ショルダー領域の各ピッチ配列を概念的に示している。
図2および図3の構成では、上記のように、内側ショルダー領域が単一ピッチ配列を有し、センター領域および外側ショルダー領域の双方がランダムピッチ配列を有している。単一ピッチ配列は、周期ピッチ配列およびランダムピッチ配列と比較して、パターンノイズを抑制する作用が強い。また、内側ショルダー領域では、センター領域および外側ショルダー領域と比較して、多角形摩耗が生じ易い。また、ランダムピッチ配列は、単一ピッチ配列と比較して、パターンノイズを抑制する作用が強く、また、周期ピッチ配列と比較して、タイヤの操縦安定性能を向上させる作用が強い。したがって、かかる構成では、内側ショルダー領域の多角形摩耗が効果的に抑制され、タイヤの騒音性能および操縦安定性能が向上する点で好ましい。
これに対して、図4に示す構成では、内側ショルダー領域が単一ピッチ配列を有し、センター領域および外側ショルダー領域の双方が周期ピッチ配列を有する。単一ピッチ配列は、周期ピッチ配列およびランダムピッチ配列と比較して、パターンノイズを抑制する作用が強い。また、内側ショルダー領域では、センター領域および外側ショルダー領域と比較して、多角形摩耗が生じ易い。また、周期ピッチ配列は、単一ピッチ配列と比較して、パターンノイズを抑制する作用が強く、また、ランダムピッチ配列と比較して、陸部の多角形摩耗を抑制する作用が強い。したがって、かかる構成は、内側ショルダー領域の多角形摩耗が効果的に抑制され、タイヤの騒音性能および耐多角形摩耗性能が向上する点で好ましい。
なお、図3および図4の構成では、センター領域および外側ショルダー領域が、同一パターンのランダムピッチ配列(図3)あるいは同一パターンの周期ピッチ配列(図4)を有している。
しかし、これに限らず、センター領域および外側ショルダー領域が、相互に異なるパターンのランダムピッチ配列あるいは相互に異なるパターンの周期ピッチ配列を有しても良い(図示省略)。これにより、センター領域および外側ショルダー領域の特性の相異を活かしたトレッドパターンの設計が可能となる。
また、図5に示す構成では、内側ショルダー領域が単一ピッチ配列を有し、センター領域がランダムピッチ配列を有し、且つ、外側ショルダー領域が周期ピッチ配列を有する。したがって、トレッド部が、単一ピッチ配列とランダムピッチ配列と周期ピッチ配列とを併用したトレッドパターンを有している。上記のように、ランダムピッチ配列は、周期ピッチ配列と比較して、タイヤの操縦安定性能を向上させる作用が強い。また、センター領域は、タイヤの操縦安定性能に対する影響が強い。また、上記のように、周期ピッチ配列は、ランダムピッチ配列と比較して、陸部の多角形摩耗を抑制する作用が強い。また、外側ショルダー領域では、内側ショルダー領域と比較して、陸部の多角形摩耗が生じ易い。したがって、かかる構成は、タイヤの操縦安定性能および耐多角形摩耗性能が効果的に向上する点で好ましい。
また、図6に示す構成では、内側ショルダー領域が単一ピッチ配列を有し、センター領域が周期ピッチ配列を有し、外側ショルダー領域がランダムピッチ配列を有する。周期ピッチ配列は、ランダムピッチ配列と比較して、高周波パターンノイズを抑制する作用が強い。また、センター領域は、パターンノイズに対する影響が強い。また、ランダムピッチ配列は、周期ピッチ配列と比較して、制動性能を向上させる作用が強い。また、外側ショルダー領域は、制動性能に対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの騒音性能および制動性能が効果的に向上する点で好ましい。
また、図2の構成では、センター領域にて、より大きいピッチ長を有するピッチの溝面積比が、より小さいピッチ長を有するピッチの溝面積比よりも大きい(具体的には、0.5[%]以上2.0[%]以下の範囲で大きい)ことが好ましい。また、外側ショルダー領域にて、より大きいピッチ長を有するピッチの溝面積比が、より小さいピッチ長を有するピッチの溝面積比よりも小さい(具体的には、0.5[%]以上2.0[%]以下の範囲で小さい)ことが好ましい。なお、内側ショルダー領域のピッチの溝面積比は、ピッチ配列が単一ピッチ配列であり、各ピッチのピッチ長が一定なので、一定である。
ピッチの溝面積比は、単位ピッチ内に形成された横溝の溝面積の総和と、ピッチの面積との比として算出される。横溝は、タイヤ幅方向に延在する溝であり、例えば、ラグ溝、傾斜溝などが含まれる。一方で、周方向溝、陸部に形成されたサイプ、カーフ、切欠部などは、横溝に該当しない。
溝面積は、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面にて、測定される。
上記の構成では、センター領域におけるピッチの溝面積比が適正化されるので、ブロックの大きさが、大きいピッチと小さいピッチとの間で均一化される。また、センター領域は、タイヤの操縦安定性能に対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの操縦安定性能が向上する点で好ましい。
また、上記の構成では、ショルダー領域におけるピッチの溝面積比が適正化されるので、タイヤ加硫成形時における金型へのトレッドゴムの押し込み量が、大きいピッチと小さいピッチとの間で均一化される。また、外側ショルダー領域は、ヒールアンドトゥ摩耗およびユニフォミティに対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの耐偏摩耗性能およびユニフォミティが向上する点で好ましい。
また、上記とは逆に、図2の構成では、センター領域にて、より大きいピッチ長を有するピッチの溝面積比が、より小さいピッチ長を有するピッチの溝面積比よりも小さい(具体的には、0.5[%]以上1.5[%]以下の範囲で小さい)ことが好ましい。また、外側ショルダー領域にて、より大きいピッチ長を有するピッチの溝面積比が、より小さいピッチ長を有するピッチの溝面積比よりも大きい(具体的には、0.5[%]以上1.5[%]以下の範囲で大きい)ことが好ましい。
上記の構成では、センター領域におけるピッチの溝面積比が適正化されるので、タイヤ加硫成形時における金型へのトレッドゴムの押し込み量が、大きいピッチと小さいピッチとで均一化される。また、センター領域は、転がり抵抗およびユニフォミティに対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの低転がり抵抗性能およびユニフォミティが向上する点で好ましい。
また、上記の構成では、ショルダー領域におけるピッチの溝面積比が適正化されるので、ブロックの大きさが、大きいピッチと小さいピッチとの間で均一化される。また、外側ショルダー領域は、旋回性能に対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの旋回性能が向上する点で好ましい。
また、図2の構成では、センター領域におけるピッチ配列のピッチ比aが、外側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ比bよりも小さい(a<b)ことが好ましい。また、センター領域のピッチ比aが、1.20≦a≦1.45の範囲にあることが好ましく、ショルダー領域のピッチ比bが、1.40≦b≦1.70の範囲にあることが好ましい。なお、内側ショルダー領域のピッチ比は、ピッチ配列が単一ピッチ配列であるので、1である。
ピッチ比は、各領域のピッチ配列におけるピッチ長の最大値と最小値との比として算出される。
上記の構成では、センター領域のピッチ比が相対的に小さいので、センター領域における陸部のタイヤ周方向の剛性が均一化される。また、センター領域は、タイヤの操縦安定性能に対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの操縦安定性能が向上する点で好ましい。
また、上記の構成では、ショルダー領域のピッチ比が相対的に大きいので、タイヤのパターンノイズが効果的に抑制される。また、ショルダー領域は、パターンノイズに対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの騒音性能が向上する点で好ましい。
また、図2の構成では、センター領域におけるピッチ配列のピッチ数Nceが、外側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ数Noutに対して同一または少ない(Nce≦Nout)ことが好ましい。また、センター領域のピッチ数Nceが10≦Nce≦80の範囲にあり、外側ショルダー領域のピッチ数Noutが20≦Nout≦100の範囲にあることが好ましい。
上記の構成では、センター領域のピッチ数Nceが少ないので、センター領域における陸部の剛性が確保される。また、センター領域は、タイヤの操縦安定性能に対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの操縦安定性能が向上する点で好ましい。
また、上記の構成では、外側ショルダー領域のピッチ数Noutが多いので、タイヤのパターンノイズが効果的に抑制される。また、外側ショルダー領域は、パターンノイズに対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの騒音性能が向上する点で好ましい。
また、図2の構成では、外側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ数Noutが、内側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ数Ninよりも少ない(Nout<Nin)ことが好ましい。また、外側ショルダー領域のピッチ数Noutが20≦Nout≦100の範囲にあり、内側ショルダー領域のピッチ数Ninが50≦Nin≦140の範囲にあることが好ましい。
上記の構成では、外側ショルダー領域のピッチ数Noutが少ないので、外側ショルダー領域における陸部の剛性が確保される。また、外側ショルダー領域は、旋回性能に対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの旋回性能が向上する点で好ましい。
また、上記の構成では、内側ショルダー領域のピッチ数Ninが多いので、陸部の接地圧が分散されて、多角形摩耗が抑制される。また、内側ショルダー領域では、多角形摩耗が生じ易い。したがって、かかる構成は、タイヤの耐多角形摩耗性能が向上する点で好ましい。
また、図2の構成では、センター領域におけるピッチ配列のピッチ種数(ピッチの種類の数)が、外側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ種数よりも少ないことが好ましい。なお、内側ショルダー領域のピッチ種数は、ピッチ配列が単一ピッチ配列であるので、タイヤ全周におけるピッチ数の80[%]以上が同一種類のピッチで構成されている。
上記の構成では、センター領域のピッチ種数が少ないので、センター領域における陸部のタイヤ周方向の剛性が均一化される。また、センター領域は、タイヤの操縦安定性能に対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの操縦安定性能が向上する点で好ましい。
また、上記の構成では、外側ショルダー領域のピッチ種数が多いので、タイヤのパターンノイズが効果的に抑制される。また、外側ショルダー領域は、パターンノイズに対する影響が強い。したがって、かかる構成は、タイヤの騒音性能が向上する点で好ましい。
また、図2の構成では、上記のように、内側ショルダー領域が単一ピッチ配列を有し、センター領域および外側ショルダー領域がランダムピッチ配列を有している。また、センター領域および外側ショルダー領域が、同一パターンのランダムピッチ配列を有している。これにより、単一ピッチ配列とランダムピッチ配列とを併用したトレッドパターンが形成されている。
上記の構成は、トレッド部が内側ショルダー領域とセンター領域および外側ショルダー領域とを区画する少なくとも1本の周方向溝22を備えることにより、実現できる。したがって、境界となる周方向溝22から車幅方向外側のトレッド端部までの領域には、周方向溝が配置されていなくとも良い(図示省略)。かかる構成としては、例えば、車幅方向内側領域の所定の範囲(0.15≦Win/TW≦0.40となる距離Win)に、少なくとも1本の周方向溝が配置され、且つ、センター領域および外側ショルダー領域に、タイヤ周方向に対して傾斜する傾斜ラグ溝のみが配置されたトレッドパターンが想定される。
また、図2の構成では、上記のように、内側ショルダー領域の陸部31が、複数のラグ溝41に区画されて成るブロック列であり、また、各ブロック51がサイプ61をそれぞれ有している。また、複数のラグ溝41および複数のサイプ61が、タイヤ周方向に一定のピッチ長で配置されている。
しかし、これに限らず、内側ショルダー領域の陸部31が、ラグ溝41を有さないリブであっても良い(図示省略)。すなわち、内側ショルダー領域の陸部31がタイヤ周方向に連続するリブである。かかる構成では、陸部31がラグ溝41を有する構成と比較して、パターンノイズが減少する。これにより、タイヤの騒音性能が向上する。
上記のように、陸部31がラグ溝41を有さない構成では、陸部31のピッチが、陸部31に配置されたサイプ61、切欠あるいはカーフ(図示省略)などにより定義される。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する少なくとも1本の周方向溝21〜26(特に、内側ショルダー領域とセンター領域とを区画する周方向溝22)と、周方向溝21〜26に区画されて成ると共に所定のピッチ配列を有する複数の陸部31〜37とを備える(図2参照)。また、トレッド部を内側ショルダー領域、センター領域および外側ショルダー領域から成る3つの領域に区分するときに、内側ショルダー領域におけるピッチ配列が、単一種類のピッチから成る単一ピッチ配列である。また、センター領域におけるピッチ配列および外側ショルダー領域におけるピッチ配列が、複数種類のピッチを連続的に配列して成る周期ピッチ配列および複数種類のピッチを不連続に配列して成るランダムピッチ配列の少なくとも一方である。
かかる構成では、単一ピッチ配列が内側ショルダー領域に配置されるので、内側ショルダー領域の陸部31の多角形摩耗が抑制される。一方で、周期ピッチ配列およびランダムピッチ配列の少なくとも一方がセンター領域および外側ショルダー領域に配置されるので、タイヤのパターンノイズが減少する。これにより、タイヤの耐多角形摩耗性能と騒音性能とが両立する利点がある。特に、内側ショルダー領域の陸部31では、多角形摩耗が生じ易い。したがって、この内側ショルダー領域における多角形摩耗を抑制することにより、タイヤの耐多角形摩耗性能が効果的に向上する。
また、この空気入りタイヤ1では、センター領域におけるピッチ配列および外側ショルダー領域におけるピッチ配列のうちの一方が、ランダムピッチ配列であり、他方が、周期ピッチ配列である(図3および図4参照)。かかる構成では、単一ピッチ配列が内側ショルダー領域に配置されるので、内側ショルダー領域の陸部31の多角形摩耗が抑制される。一方で、周期ピッチ配列およびランダムピッチ配列の少なくとも一方がセンター領域および外側ショルダー領域に配置されるので、タイヤのパターンノイズが減少する。これにより、タイヤの耐多角形摩耗性能と騒音性能とが両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、センター領域におけるピッチ配列が、ランダムピッチ配列であり、且つ、外側ショルダー領域におけるピッチ配列が、周期ピッチ配列である(図5参照)。かかる構成では、センター領域のランダムピッチ配列により、タイヤの操縦安定性能が向上し、外側ショルダー領域の周期ピッチ配列により、陸部の多角形摩耗が抑制される。これにより、タイヤの操縦安定性能と耐多角形摩耗性能とが両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、センター領域におけるピッチ配列が、周期ピッチ配列であり、且つ、外側ショルダー領域におけるピッチ配列が、ランダムピッチ配列である(図6参照)。かかる構成では、センター領域の周期ピッチ配列により、パターンノイズが低減し、外側ショルダー領域のランダムピッチ配列により、制動性能が向上する。これにより、タイヤの騒音性能と制動性能とが両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、センター領域にて、より大きいピッチ長を有するピッチの溝面積比が、より小さいピッチ長を有するピッチの溝面積比よりも大きく、且つ、外側ショルダー領域にて、より大きいピッチ長を有するピッチの溝面積比が、より小さいピッチ長を有するピッチの溝面積比よりも小さい(図示省略)。かかる構成では、センター領域および外側ショルダー領域におけるピッチの溝面積比が適正化されるので、タイヤの操縦安定性能、耐偏摩耗性能およびユニフォミティの向上が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、センター領域にて、より大きいピッチ長を有するピッチの溝面積比が、より小さいピッチ長を有するピッチの溝面積比よりも小さく、且つ、外側ショルダー領域にて、より大きいピッチ長を有するピッチの溝面積比が、より小さいピッチ長を有するピッチの溝面積比よりも大きい(図示省略)。かかる構成では、センター領域および外側ショルダー領域におけるピッチの溝面積比が適正化されるので、タイヤの低転がり抵抗性能、ユニフォミティおよび旋回性能が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、センター領域におけるピッチ配列のピッチ比が、外側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ比よりも小さい(図示省略)。かかる構成では、センター領域および外側ショルダー領域におけるピッチ比が適正化されるので、タイヤの操縦安定性能および騒音性能が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、センター領域におけるピッチ配列のピッチ数Nceが、外側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ数Noutに対して同一または少ない(Nce≦Nout)(図示省略)。かかる構成では、センター領域および外側ショルダー領域におけるピッチ数Nce、Noutの関係が適正化されるので、タイヤの操縦安定性能および騒音性能が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、外側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ数Noutが、内側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ数Ninよりも少ない(Nout<Nin)(図示省略)。かかる構成では、センター領域および外側ショルダー領域におけるピッチ数Nout、Ninの関係が適正化されるので、タイヤの旋回性能および耐多角形摩耗性能が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、センター領域におけるピッチ配列のピッチ種数が、外側ショルダー領域におけるピッチ配列のピッチ種数よりも少ない(図示省略)。かかる構成では、センター領域および外側ショルダー領域におけるピッチ種数の関係が適正化されるので、タイヤの操縦安定性能および騒音性能が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、内側ショルダー領域における陸部31が、ラグ溝41を有さないリブである(図示省略)。かかる構成では、陸部31がラグ溝41を有する構成と比較して、パターンノイズが減少する。これにより、タイヤの騒音性能が向上する利点がある。
図7および図8は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)耐多角形摩耗性能、(2)騒音性能、(3)ユニフォミティ、(4)操縦安定性能および(5)制動性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ205/60R16の試験タイヤがJATMA規定の適用リムに組み付けられ、この試験タイヤにJATMA規定の最高空気圧および最大負荷が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である排気量1500[cc]のFF(Front engine - Front drive)車両の総輪に装着される。
(1)耐多角形摩耗性能に関する評価では、試験車両が一般舗装路を10000[km]走行した後に、トレッド面のヒールアンドトゥ摩耗が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例1、2を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
(2)騒音性能に関する評価では、試験車両が平滑路面を速度100[km/h]で走行して、テストドライバーがパターンノイズに関する官能評価を行う。この評価は、従来例1、2を基準(100)とした指数評価により行われ、数値が大きいほど好ましい。
(3)ユニフォミティに関する評価では、試験タイヤがJATMA規定の適用リムに組み付けられ、この試験タイヤに空気圧200[kPa]および加重5.31[kN]が付与される。また、ユニフォミティ測定試験機が用いられて、RFV(ラジアル・フォース・バリエーション)が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例1、2を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
(4)操縦安定性能に関する評価では、試験車両がドライ路面を速度100[km/h]で走行して、テストドライバーが官能評価を行う。この評価は、従来例1、2を基準(100)とした指数評価により行われ、数値が大きいほど好ましい。
(5)制動性能に関する評価では、試験車両が乾燥路面を走行し、速度100[km/h]からの制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例1、2を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
実施例1〜10の試験タイヤは、図2のトレッドパターンを有し、内側ショルダー領域の陸部31が単一ピッチ配列を有する。実施例11の試験タイヤは、実施例1の構成において、内側ショルダー領域の陸部31がラグ溝41を有さないリブである(図示省略)。また、実施例1〜4における単一ピッチ配列、周期ピッチ配列およびランダムピッチ配列を構成する5種類のピッチA〜Eのピッチ長は、図3〜図6に記載した数値である。
従来例1の試験タイヤは、図2のトレッドパターンにおいて、内側ショルダー領域の陸部31がランダムピッチ配列を有する。従来例2の試験タイヤは、図2のトレッドパターンにおいて、すべての領域の陸部31〜37が、単一ピッチ配列を有する。
試験結果が示すように、実施例1〜11の試験タイヤでは、各種のタイヤ性能が向上することが分かる。なお、評価が98以上であれば、許容範囲内といえる。