JP6236992B2 - ポリウレタンの製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、加工工程の機器と糸との摩擦抵抗を低下させて、このような問題を解決する手段として、固体の金属石鹸、油溶性高分子、高級脂肪酸及びアミノ変性シリコーン等を油剤としてポリウレタン系弾性繊維に添加する方法、平滑剤としてタルク、シリカ、コロイダルアルミナ及び酸化チタン等をポリウレタン系弾性繊維に分散させる方法、並びにシリコンジオールまたはシリコンジアミンをポリウレタン主鎖の一部に導入する方法等が検討されてきた(例えば、特許文献1)。
又、整経若しくは編みたて工程において油剤成分によって抽出された糸中のオリゴマー、または油剤中の固体若しくは高粘度成分が固体またはペースト状になって分離したものが、繊維、紡糸機、整経機、編み機及びガイド等に多量に付着するため、製品汚損並びに機械及び器具の目詰まりを生じるといった問題があり、課題の解決に至っていない。
一方、ポリウレタンの原料にポリシロキサンポリオールを用いてポリウレタンの特性を改良させた例がこれまでに数多く報告されている。例えば、変性ポリシロキサンジオールを使用した、高反発弾性率を有する熱可塑性ポリウレタン(特許文献2)、エーテル変性シリコーンを使用した、ソフトで良好な着用感を有するポリウレタン弾性繊維(特許文献3)、カルボン酸変性シリコーンをポリエーテルポリオールで変成したポリエーテル変成シリコーンを使用した、透明性および平滑性に優れたポリウレタン(特許文献4)等が挙げられる。
また、特許文献3に記載の方法では、ポリウレタンを製造した後に、得られたポリウレタンにエーテル変性シリコーンを添加するため、エーテル変性シリコーンが繊維表面から脱落し易いという問題があった。更に、ポリウレタンを製造する際に前記エーテル変性シリコーンを反応させようとしても、他のポリオールとの相溶性が不十分であり、均質なポリウレタンが生成しにくいといった問題もあった。
[1] ポリシロキサンポリオール(a)、ポリエーテルポリオール(b)、イソシアネート化合物(c)、及び鎖延長剤(d)を原料として製造することを特徴とするポリウレタンの製造方法であって、該ポリシロキサンポリオール(a)が、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)と、ポリエーテルポリオール(ii)とをカーボネート結合で連結させたポリシロキサンポリオールであることを特徴とするポリウレタンの製造方法。
[2] 前記ポリシロキサンポリオール(i)が、複数のエーテル結合を有することを特徴とする[1]に記載のポリウレタンの製造方法。
[3] 前記ポリシロキサンポリオール(a)が、前記ポリシロキサンポリオール(i)に炭酸ジエステルを反応させて水酸基をカーボネート化した後にポリエーテルポリオール(ii)を反応させて得たポリシロキサンポリオールであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリウレタンの製造方法。
[4] 前記ポリシロキサンポリオール(i)がカルビノール変性シリコーンであることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
[5] 前記ポリエーテルポリオール(ii)がポリテトラメチレンエーテルグリコールであることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1項に記載のポリポリウレタンの製造方法。
[6] 前記ポリシロキサンポリオール(a)の数平均分子量が500〜6,000であ
ることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。[7] 前記ポリシロキサンポリオール(a)の使用量の割合が、前記ポリシロキサンポリオール(a)と前記ポリエーテルポリオール(b)の合計使用量に対して0.01〜20質量%であることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
[8] 前記イソシアネート化合物(c)が芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
[9] 前記鎖延長剤(d)がポリアミン化合物であることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
[10] [1]〜[9]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法により得られたことを特徴とするポリウレタン。
[11] [10]に記載のポリウレタンから構成されることを特徴とするポリウレタン成形体。
[12] 表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/Cが0.05〜0.40であることを特徴とする[11]に記載のポリウレタン成形体。
[13] [10]に記載のポリウレタンを含むことを特徴とするポリウレタンフィルム。
[14] [10]に記載のポリウレタンを含むことを特徴とするポリウレタン繊維。
[15] ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)と、ポリエーテルポリオール(ii)とをカーボネート結合で連結させたポリシロキサンポリオール(a)。
[16] 分子内におけるポリシロキサン部位含有量が20〜50質量%である、[15]に記載のポリシロキサンポリオール(a)。
[17] [15]又は[16]に記載のポリシロキサンポリオール(a)と、ポリエーテルポリオール(b)とを含むことを特徴とするポリオール混合物。
[18] [17]に記載のポリオール混合物と、イソシアネート化合物(c)とを反応させて得たポリウレタンプレポリマー。
<1.ポリウレタンの製造>
<1−1.ポリウレタンの製造原料>
本発明のポリウレタンは、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)とポリエーテルポリオール(ii)とをカーボネート結合で連結させたポリシロキサンポリオール(a)[以降、ポリシロキサンポリオール(a)ということがある]、ポリエーテルポリオール(b)、イソシアネート化合物(c)、及び鎖延長剤(d)を原料として得られるものである。
ここで、ポリウレタンとポリウレタンウレアの構造的特徴の違いとしては、ポリウレタンは、主としてウレタン結合によって連鎖構造を形成するポリマーであり、ポリウレタンウレアは、主としてウレタン結合及びウレア結合によって連鎖構造を形成するポリマーで
ある。原料面からの違いとしては、ポリウレタンは、鎖延長剤として短鎖ポリオールを使用し製造されるものであり、ポリウレタンウレアは、鎖延長剤としてポリアミン化合物を使用し製造されるものである。
本発明において用いられるポリシロキサンポリオール(a)は、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)と、ポリエーテルポリオール(ii)をカーボネート結合で連結させて得られる。
なお、カーボネート結合で連結するに際しては、上記(i)と(ii)とをカーボネート結合で直接連結しても良いし、(i)と(ii)とは異なるポリオール等を介してカーボネート結合で連結する、つまり、(i)と(ii)とを間接的に連結しても良い。
数平均分子量を前記上限以下とすることにより、ポリウレタン製造時に使用するポリエーテルポリオール(b)や溶媒との相溶性が良くなり、均質なポリウレタンを製造し易い。また、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の混合物(以下、ポリオール混合物ということがある)またはプレポリマー、プレポリマー溶液を形成した際に、それらの粘度が高くなりすぎることを抑え、操作性及び生産性が向上する傾向がある。前記下限以上とすることにより、得られるポリウレタン重合体の剥離性を十分発現させることができる。
のではないが、常温で液状又はワックス状のものであり、ポリシロキサンポリオール(a)の性状や形態は、用途に応じて種々選択すればよい。
本発明において用いられるポリシロキサンポリオール(a)は、通常、分子内に2個以上のカーボネート結合と2個以上のヒドロキシル基を有するものである。また、分子内に複数のエーテル結合を有することが好ましい。
ポリシロキサンポリオール(a)の好ましい分子構造としては、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)に由来する部分(〔X〕とする)とポリエーテルポリオール(ii)に由来する部分(〔Y〕とする)がカーボネート結合を介して連結されたYXY型である。ポリシロキサンポリオール(i)に過剰のカーボネート源を反応させて両末端をカーボネート化した後にポリエーテルポリオール(ii)を反応させてエステル交換反応を行えば、YXY型のポリシロキサンポリオールを優先的に製造することが可能となる。
しかし、本発明において用いられるポリシロキサンポリオール(a)はYXY型の分子構造が最も好ましいため、ポリシロキサンポリオール(i)の両末端を先にカーボネート化した後にポリエーテルポリオール(ii)を反応させてエステル交換反応を行い、YXY型分子の含有率を高めることが重要となる。
前述したような、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)とポリエーテルポリオール(ii)をカーボネート結合で連結させて得られるポリシロキサンポリオール(a)の製造について、以下に詳述する。
<1−1−1−1−1−a.ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)>
本発明において用いられるポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)は、通常、複数のシロキサン部位及び複数のヒドロキシル基を有する化合物であり、そのポリシロキサン骨格としては、シロキサン骨格を有する限り特に限定されるものではなく、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。これらの中で、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)中のヒドロキシル基の位置は特に限定されず、例えば、ヒドロキシル基を分子側鎖に有するもの、分子の両末端に有するもの、分子の片末端と側鎖に有するもの、及び分子の片末端のみに有するもの等が挙げられる。
また、前記ポリシロキサンポリオール(i)は、エーテル結合を有するものが好ましく、1分子中に複数のエーテル結合を有するものがより好ましい。分子中のエーテル結合の位置は特に限定されないが、直鎖状ポリシロキサンポリオールの両末端にエーテル結合を有することが特に好ましい。ポリシロキサンポリオール(a)の相溶性を向上させるためにはエーテル結合数は多い方が好ましいが、相溶性についてはポリシロキサンポリオール(i)に連結させるポリエーテルポリオール(ii)の分子量で調整可能であるため、最適なエーテル結合数は特に定めない。
ポリシロキサンポリオール(i)の製造方法も特に限定されないが、ポリジメチルシロキサンを原料として、エチレングリコールやポリオキシアルキレングリコールのモノアリルエーテルを反応させてヒドロシリル化にて製造したものであることが好ましい。この場合、完全にヒドロシリル化反応を進行させるためには過剰のアリルエーテルを使用する必要があるが、剰余分のアリルエーテルはストリッピング等により容易に除去することが可能である。つまり、未反応原料を残存することなくポリシロキサンポリオール(i)を製造することが可能であり、変性シリコーン製造時に未反応原料の不飽和カルボン酸が必ず残存するカルボン酸変性シリコーンとは異なる。カルボン酸変性シリコーンは主にポリジメチルシロキサンおよび不飽和カルボン酸を原料としてヒドロシリル化反応で製造されるが、不飽和カルボン酸を過剰に反応させて製造する。このため、未反応原料として不飽和カルボン酸が残り、さらに、使用する不飽和カルボン酸の分子量が大きいため、未反応原料として残った不飽和カルボン酸を完全に除去することができない。
1〜50の整数である。
本発明において用いられるポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)の分子量は、数平均分子量で、300以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、700以上であることが更に好ましい。また、5,000以下であることが好ましく、4,000以下であることがより好ましく、3,000以下であるものが更に好ましい。
尚、本発明において用いられるポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)の性状は、特に限定されるものではなく、常温で液状のものもワックス状のものも使用可能である。ハンドリング性が良いことから、液状のものが好ましい。
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(ii)は、通常、分子内の主骨格中に1つ以上のエーテル結合を有するヒドロキシ化合物である。主骨格中の繰り返し単位としては、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素のどちらでもよく、又、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(ii)の分子量は、数平均分子量で、200以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましい。また、3,000以下であることが好ましく、2,500以下であることがより好ましく、2,000以下であることが更に好ましい。
尚、数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法により求めることができる。
<1−1−1−1−2−a.触媒>
本発明におけるポリシロキサンポリオール(a)は、好ましくは、前記ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)と炭酸ジエステルとのカーボネート化反応並びに前記ポリエーテルポリオール(ii)とのエステル交換反応によって得られるものである。
臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩;酢酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩などのカルボン酸塩;メタンスルホン酸やトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸塩;燐酸塩や燐酸水素塩、燐酸二水素塩などの燐含有の塩;アセチルアセトナート塩;さらにはメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドを用いる事ができる。好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の酢酸塩やハロゲン化物、アルコキシドが用いられる。これらの金属、および金属化合物は単独でも組み合わせて用いてもよい。
その際の触媒の使用量は、ポリシロキサンポリオール(a)調製用原料総量に対して0.00001質量%以上が好ましく、0.0001質量%以上が更に好ましく、0.001質量%以上が最も好ましい。また、1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.02質量%以下が最も好ましい。
触媒の使用量を前記下限以上とすることにより、ポリシロキサンポリオール形成にかかる時間を短縮し、生成物の着色を防ぐことができる。また、前記上限以下とすることにより、触媒が、ポリウレタン化反応に対する過剰な反応促進作用を示すのを防ぐことができる。
本発明のポリシロキサンポリオール(a)の製造は、通常、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)と炭酸ジエステルとポリエーテルポリオール(ii)を、カーボネート化反応並びにエステル交換反応させる事により実施する事が出来る。カ
ーボネート化反応並びにエステル交換反応は同時に行っても良いが、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)に過剰の炭酸ジエステルを反応させてカーボネート化し、このカーボネート化体にポリエーテルポリオール(ii)を反応させてエステル交換反応によりポリシロキサンポリオール(a)を製造することが好ましい。
カーボネート化体を得る際のカーボネート化反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。反応圧力は任意であり、目的に応じて常圧又は減圧下で実施することができる。反応中に生成するアルコールを反応系から除去するために、反応系に不活性ガスを流通させてもよい。
このカーボネート化体にポリエーテルポリオール(ii)を反応させてエステル交換反応によりポリシロキサンポリオール(a)を製造する際の、エステル交換反応の反応温度は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、150℃以上が特に好ましい。また、通常250℃以下が好ましく、240℃以下がより好ましく、230℃以下が更に好ましく、220℃以下が特に好ましい。
また、エステル交換反応の初期は炭酸ジエステル含有量やアルコール生成量が多いため、反応初期は150〜170℃の温度で反応を行い、炭酸ジエステル含有量やアルコール留出量が減ってきた反応後半は170〜190℃の温度で反応を行うことが好ましい。具体的には、アルコールの留出が観測されなくなってから、エステル交換反応開始時よりも反応温度を10〜20℃以上高くすることが好ましい。
又、エステル化反応の反応時間は、触媒の使用量、反応温度、反応させる基質により異なるが、通常1時間以上とすることが好ましく、2時間以上とすることがより好ましい。また、通常30時間以下とすることが好ましく、20時間以下とすることがより好ましい。
又、その反応時間は、触媒の使用量、反応温度、反応させる基質、生成するポリシロキサンポリオールの物性等により異なるが、通常2時間以上とすることが好ましく、3時間以上とすることがより好ましい。また、通常30時間以下とすることが好ましく、20時間以下とすることがより好ましい。
ポリエーテルポリオール(ii)の使用量を前記上限以下とすることにより、ポリシロキサンポリオールやそのカーボネート化体とポリエーテルポリオールの相溶性が向上し、
エステル交換反応が進行しやすくなる傾向となる。使用量を前記下限以上とすることにより、エステル交換に必要なポリエーテルポリオールが確保でき、エステル交換反応を押し切りやすい傾向となる。
ポリシロキサンポリオール生成物からのエステル交換触媒等の除去には通常繁雑な工程を伴うので、生成したポリシロキサンポリオールは、一般にエステル交換触媒を分離することなく、そのままポリウレタンの製造に使用することが多い。しかし、触媒の含有量が多い場合やポリウレタンの用途によってはポリシロキサンポリオール中のエステル交換触媒を失活させておくことが好ましい。
水と接触させる前者方法による場合は、例えば、ポリシロキサンポリオールに水を1質量%以上添加して、好ましくは70〜150℃、より好ましくは90〜130℃の温度で1〜3時間程度加熱すればよい。その際の加熱による失活処理は、常圧下で行っても加圧下で行ってもよい。失活処理後に系を減圧にすると、失活に用いた水分をポリシロキサンポリオールから円滑に除去することができる。
所望のポリウレタン樹脂の物性に応じて、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)及びポリエーテルポリオール(ii)の重合度を調節することにより、生成するポリシロキサンポリオール(a)の分子量やポリシロキサン骨格の含有量を変化させることが容易に可能である。
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(b)は、通常、分子内の主骨格中に1つ以上のエーテル結合を有するヒドロキシ化合物である。主骨格中の繰り返し単位としては、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素のどちらでもよく、又、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。
1つ以上有していても良い。このとき、エーテル結合以外の結合の数は、エーテル結合に対して1/10以下であることが好ましく、1/100以下であることが最も好ましい。エーテル結合以外の結合が上記以下であることで、最終的に得られるポリウレタンの柔軟性や弾性回復性、透明性に優れる。
均質なポリウレタンを得るためには、ポリシロキサンポリオール(a)製造において用いたポリエーテルポリオール(ii)と同一のポリエーテルポリオール(b)を使用することが好ましい。
数平均分子量を前記上限以下とすることにより、後述するポリウレタンの製造において、前述したポリシロキサンポリオール(a)とこのポリエーテルポリオール(b)の混合物を作製する際の該混合物、及びそれを用いて製造したプレポリマー、プレポリマー溶液を形成した際に、それらの過度な粘度の上昇を抑え、操作性及び生産性を向上するとともに、得られるポリウレタンの低温における柔軟性及び弾性回復性が向上することができる。
尚、ここで、数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法により求めたものである。
ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の使用量は特に限定されるものではないが、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の合計質量に対して、ポリシロキサンポリオール(a)の使用量として、通常0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましく、0.07質量%以上であることが特に好ましく、0.1質量%以上であることが最も好ましい。
また、通常20質量%以下であることが好ましく、17質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、12質量%以下であることがより更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましく、5質量%以下であることが最も好ましい。
本発明において用いられるイソシアネート化合物(c)は、特に限定されるものではないが、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−MDI、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート及びトリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、並びに1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
ましい。
又、イソシアネート化合物のNCO基の一部を、ウレタン、ウレア、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド及びイミド等に変成したものであってもよく、更に多核体には前記以外の異性体を含有しているものも含まれる。
本発明において用いられる鎖延長剤(d)は、主として、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のアミノ基を有する化合物、水に分類される。この中でも、ポリウレタン製造には短鎖ポリオール、具体的には2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を有する化合物が好ましい。また、ポリウレタンウレア製造には、ポリアミン化合物、具体的には2個以上のアミノ基を有する化合物が好ましい。
な強度や弾性回復性能や弾性保持性能が得られ、良好な高温特性が得られる。
本発明において、ポリウレタンの製造には、以上の(a)〜(d)の他に、ポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤等を使用することができる。
又、ポリウレタン製造時に、必要に応じて他の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤としては、「CYANOX1790」(CYANAMID社製)、「IRGANOX245」、「IRGANOX1010」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「Sumilizer GA−80」(住友化学社製)及び2,6−ジブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の酸化防止剤、「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「SANOL LS−2626」及び「SANOL LS−765」(以上、三共社製)等の光安定剤、「TINUVIN328」及び「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等の紫外線吸収剤、ジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体等のシリコン化合物、赤燐、有機燐化合物、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素または塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤、二酸化チタン等の顔料、染料、カーボンブラック等の着色剤、カルボジイミド化合物等の加水分解防止剤、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等のフィラー、滑剤、油剤、界面活性剤、その他の無機増量剤並びに有機溶媒等が挙げられる。
本発明において、ポリウレタンを製造するには、ポリシロキサンポリオール(a)、ポリエーテルポリオール(b)、イソシアネート化合物(c)、及び鎖延長剤(d)を主製造用原料として、上記記載の各使用量で用い、一般的に実験/工業的に用いられる全ての製造方法により、無溶媒或いは溶媒共存下で実施することができる。
、プレポリマーをいったん調製した後に鎖延長剤(d)と反応させることにより、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすく、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離がしっかりとなされやすく、エラストマーとしての性能を出しやすい特徴がある。
また、前記(a)と前記(b)の混合物と前記(c)を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと前記(d)を反応させるポリウレタン製造方法は、ポリシロキサンポリオール(a)がポリウレタンの分子構造に組みこまれるのでポリウレタン成形工程においてポリシロキサンポリオールがブリードアウト(分離、析出)しにくく、生成するポリウレタン成形体の剥離性が損なわれない最も好ましい方法であると言える。
また、一方または双方が固体または高粘度の液体である場合は、加温して粘度の低い液状として混合することもできる。
ポリオール混合物を予め調整しておくと、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の相溶性が良好であるので、このように混合した状態で長期に保存した場合であっても、相分離を起こすことがないという特徴をもつ。
ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)を別のラインから導入する場合、通常のポリウレタン製造設備に本発明のポリシロキサンポリオール用のタンクとフィードラインを増やすだけで、剥離性に優れる特殊グレードのポリウレタンが製造可能となる。
ルの保管タンクに導入すると、通常グレードのポリウレタンを製造する場合にポリシロキサンポリオールが混在してしまい、ポリウレタンの均質性が損なわれる可能性が考えられる。
通常グレードと特殊グレードのポリウレタンを所望の物性が得られるように効率よく製造するためには、このようにポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)を別々のラインから導入することが好ましい。
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、前記(a)、前記(b)、前記(c)及び前記(d)を一緒に仕込むことで反応を行う方法である。反応は、通常、各成分を0〜250℃で反応させることが好ましい。
前記反応温度は、溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低くなるために生産性が悪く、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。
また、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
二段法は、プレポリマー法ともよばれる。まずポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)を混合し、イソシアネート化合物(c)とそのポリオール混合物とを反応させたプレポリマーを製造する。次いで該プレポリマーにイソシアネート化合物(c)又は多価アルコール及びアミン化合物等の活性水素化合物成分を加えることにより、二段階反応させることもできる。
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。溶媒共存下で実施する場合、汎用性や溶解性等の観点から、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルホルムアミド並びにそれらの2種以上の混合物等のアミド系溶媒;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる溶媒が好ましく用いられる。これらの中でN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
NCO/活性水素基(ポリオール混合物)の反応当量比は、通常1以上であることが好
ましく、1.05以上であることがより好ましい。また、通常10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。
又、鎖延長剤(d)の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるNCO基の当量に対して、通常0.1以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。また、通常5.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。
また、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
上記の製造方法で得られるポリウレタンは、通常は溶媒存在下で反応を行っているため、溶媒に溶解した状態で得られるのが一般的であるが、溶液状態でも固体状態でも制限されない。
本発明において、ポリウレタンのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、用途により異なるが、通常1万〜100万が好ましく、5万〜50万がより好ましく、10万〜40万が更に好ましく、15万〜30万が特に好ましい。
又、分子量分布の目安としての、その重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)は、1.5〜3.5であることが好ましく、1.7〜3.0であることがより好ましく、1.8〜3.0であることが特に好ましい。なお、前記数平均分子量(Mn)も、前述のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
しく、90°以上であることが更に好ましく、95°以上であることが特に好ましい。下限以上にすることにより、ポリウレタンの剥離性が向上する傾向がある。
又、上記の製造方法で得られるポリウレタンは、ハードセグメントの含有量が、ポリウレタンの全質量に対して、1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましく、4〜12質量%であることが更に好ましく、5〜10質量%であることが特に好ましい。
尚、本発明でいう、ハードセグメントとは、P.J.Flory,Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885(1936)をもとに、全体質量に対する、イソシアネートと鎖延長剤結合部の質量を、下記式で算出したものである。
ここで、
R=イソシアネート化合物(c)のモル数/(ポリエーテルポリオール(b)の水酸基のモル数+ポリシロキサンポリオール(a)の水酸基のモル数)
Mdi=イソシアネート化合物(c)の数平均分子量
Mda=鎖延長剤(d)の数平均分子量
Mp=ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)から成るポリオール混合物の数平均分子量
溶媒存在下で反応を行った際に得られるポリウレタン溶液は、ゲル化が進行しにくく、粘度の経時変化が小さい等保存安定性がよく、又、チクソトロピー性も小さいため、フィルム、繊維等に加工するためにも都合がよい。
ポリウレタンの量を前記下限以上とすることにより、大量の溶媒を除去することが不要とになり生産性を向上することができる。一方、前記上限以下とすることにより、溶液の粘度を抑え、操作性及び加工性を向上することができる。
<3.ポリウレタン成形体>
本発明のポリウレタン成形体は、前記のポリウレタンから構成される成形体である。前記の通り、本発明においてポリウレタン成形体とは、固体状態のポリウレタンを意味するので、前記で例示した製造方法で得られた固体状のポリウレタン自体も本発明のポリウレタン成形体に該当する。さらには固体状態又は液体状態のポリウレタンを公知の方法で成形することによって得られる成形体も該当する。
また、本発明には、成形体表面の原子組成が特定のものであることを特徴とするポリウレタン成形体も含まれる。すなわち、成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/Cは、下限が0.05以上であることが好ましく、0.07以
上であることがより好ましく、0.08以上であることがさらに好ましく、0.09以上であることがよりさらに好ましく、0.10以上であることが特に好ましい。前記下限値未満であると、ポリウレタン成形体の剥離性が不十分となるため好ましくない。
本発明において、成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比は、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)またはXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)により測定するものとする。従って、ここで規定される表面原子の相対存在比は厳密には最表面の原子数比ではなく、分析測定域の厚みのある部分に存在する原子数比となる。
<4.ポリウレタンの用途>
本発明で製造されるポリウレタン、及びそのウレタンプレポリマー溶液は、多様な特性を発現させることができる。例えば、樹脂状、ゴム状及び熱可塑性エラストマー状等の材質で、又、各種形状に成形された固体状またはフォーム状及び液体状等の性状で、繊維、フィルム、塗料、接着剤及び機能部品等として、衣料、衛生用品、包装、土木、建築、医療、自動車、家電及びその他工業部品等の広範な分野で用いられる。
本発明のポリウレタンを用いたフィルムは、その厚さとしては特に限定されるものではないが、通常10〜1000μmであることが好ましく、10〜500μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。フィルムの厚さを1000μm以下とすることにより、十分な透湿性が得られる。又、10μm以上とすることにより、ピンホールが形成されにくいとともに、フィルムがブロッキングしにくく、取り扱い易くなる。
又、引張特性として、破断強度は、通常5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましく、20MPa以上であることが更に好ましく、30MPa以上であることが特に好ましい。また、破断伸度は、通常100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、300%以上であることが更に好ましく、500%以上であることが特に好ましい。
固浴中で溶媒その他の可溶性物質を抽出する湿式製膜法、並びに支持体または離型材にポリウレタン溶液を塗布又は流延し、加熱及び減圧等により溶媒を除去する乾式製膜法等が挙げられる。
乾燥温度は、溶媒の種類や乾燥機の能力等によって任意に設定できるが、乾燥不十分、或いは急激な脱溶媒が起こらない温度範囲を選ぶことが必要であり、室温〜300℃の範囲であることが好ましく、60℃〜200℃の範囲であることがより好ましい。
ポリウレタンフィルムと繊維の物性は非常によい相関があり、フィルム試験等で得られた物性値は繊維においても同様の傾向を示す場合が多い。本発明のポリウレタンを用いた繊維は、伸長回復性、弾性、耐加水分解性、耐光性、耐酸化性、耐油性及び加工性等に優れる。
本発明のポリウレタンを用いた弾性繊維の優れた透湿性は、衣類に使用される際に蒸れにくく、付け心地がよいという特徴を持つ。又、応力の変動率またはモジュラスが小さいという特性は、例えば、衣類として体につける際に小さな力でそでを通したりすることができ、小さな子供やお年寄りにとっても非常に着脱しやすいという特徴を持つ。
<ポリシロキサンポリオール(a)の数平均分子量>
ポリエーテルポリオール(ii)がポリシロキサン骨格を有し、複数のエーテル結合を有するポリシロキサンポリオール(i)に対して2当量以上存在する場合、ポリシロキサンポリオール(a)の数平均分子量は、原料の分子量から以下の〔式1〕に従って算出することができる。実施例に用いたポリシロキサンポリオール1,2,3の数平均分子量は、〔式1〕によって算出した。
ポリシロキサンポリオール1,2,3の数平均分子量=(ポリシロキサンポリオール(i)の分子量)+(DECの分子量)×2+(ポリエーテルポリオール(ii)の分子量)×2−(エタノールの分子量)×4
<ポリエーテルポリオール(ii)、及びポリエーテルポリオール(b)の数平均分子量>
JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法より数平均分子量を求めた。
得られたポリウレタン又はポリウレタンウレアの分子量は、ポリウレタン又はポリウレタンウレアのジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」 (カラム:TskgelGMH−XL(2本)〕を用い、標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
透明ガラス規格瓶(150ml、第一ガラス社製「PS−13K」)にポリウレタンウレア溶液100mlを入れ、瓶の真横から溶液の透明性を目視観察し、以下の基準で評価した。
○;透明。
×;白濁し、瓶を通し背景が全く見えない。
<剥離試験方法>
成形したフィルム2枚を重ね合わせ、長さ4cm、幅1cmの試験片2枚を打ち抜き、その長さ方向一端から2.5cmの重ね合わせ部分を、温度25℃、相対湿度50%の条件下、19.6kPaの圧力を10分間印加した試験片について、引張試験機(FUDOH製「レオメーターNRM−2003J」)を用い、引張速度300mm/分で圧着部分をT型剥離したときの剥離強度を測定した。
協和界面科学株式会社製の自動接触角計DM―300を用い、ポリウレタンフィルム表面に1.5〜2.0μlの水滴を落とし、5秒後に水滴の接線と成形体表面のなす内角を測定した。フィルムの場所を変えて同じ操作を5回繰り返し、得られた5点の値の平均値を水接触角とした。
成形したフィルムから打ち抜いた幅10mm、長さ100mm(厚み約50μm)の短冊状試験片を用い、JIS K6301に準じ、温度23℃、相対湿度55%の条件下、引張試験機(オリエンテック社製、製品名「テンシロンUTM−III−100」)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、100%伸長時と300%伸長時の応力、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
ポリウレタン成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比、すなわち、表面原子組成は、ESCA(Electron Spectroscopy for
Chemical Analysis)測定により求めた。測定は、アルバック−ファイ株式会社ESCA装置「ESCA−5800」を用いて実施した。測定条件は、以下の通りである。
・励起X線:単色AlKα線(1486.6eV)
・X線出力:14kV、350W(帯電防止の為中和銃使用)
・分析モード(LENS MODE):5(最小領域モード)
・アパーチャー番号:5
・検出角度(試料法線から検出器の角度):45度
・PassEnergy:23.5eV
・チャージシフト補正:炭素のC1sピークの結合エネルギーを285.0eVに合わせ
るように行った。
相対存在比=(ケイ素Si2pのピーク面積/ピーク補正相対感度係数)/(炭素C1sのピーク面積/ピーク補正相対感度係数)
尚、各ピークの面積は装置付属のMultiPak Ver.8.2Cソフトを使用しSavitzky−Golayアルゴリズムを用いたスムージング処理(9ポイント)を行いshirleyのバックグラウンド補正を使って求めた。相対存在比算出に用いたケイ素原子ピークと炭素原子ピークの結合エネルギー及びMultiPak Ver.8.2Cソフトで用いられている補正感度係数は次の通りである。
・Si2p:結合エネルギー=102.5eV付近、
・補正相対感度係数=4.872
・C1s:結合エネルギー=285.0eV付近、
・補正相対感度係数=5.220
炭素C1sのピーク面積については、280eV及び290.5eV付近の極小値をshirleyで結んで得られる面積と、290.5eV及び293eV付近の極小値をshirleyで結んで得られるベンゼン環のshake up由来のピーク(291〜293eV付近〉の面積を足したものを用いた。
<ポリシロキサンポリオール(a)の製造>
実施例1
撹拌子を備えた100mL四つ口丸底フラスコに、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)として、カルビノール変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、「X−22−160AS」、数平均分子量930)9.34g(10.0mmol)、炭酸ジエステルとして炭酸ジエチル(キシダ化学社製)5.93g(50.2mmol)、テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)を0.22g測り取った。
ポリエーテルポリオール(ii)として、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、「PTMG」と略記することがある。)(数平均分子量1000、三菱化学社製)30.0g(30.0mmol)を添加し、還流管を外して留出管を取り付け、留出部はテープヒーターにより120℃に保温した。真空ポンプで反応系内を減圧下にし、反応容器をオイルバスに浸して30分で180℃まで昇温し、180℃で1時間反応させた。その後、10分で200℃まで昇温し、200℃で6時間反応させ、ポリシロキサンポリオール1(数平均分子量2985、ポリジメチルシロキサン含有量24質量%)および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物1)を得た。
ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)として、カルビノール変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、「BY16−201」、数平均分子量1500)15.0g(10.0mmol)を使用し、炭酸ジエステル使用量を5.93g(50.2mmol)、テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)の量を0.32gとしてカーボネート化反応を行い、PTMG使用量を22.0g(22.0mmol)にしてエステル交換反応を行った以外は実施例1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2(数平均分子量3552、ポリジメチルシロキサン含有量36質量%)および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物2−1)を得た。エステ
ル化反応進行率は92%であった。
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×12hで実施した以外は実施例2−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物2−2)を得た。エステル化反応進行率は、100%であった。
実施例3−1
炭酸ジエステル使用量を5.95g(50.3mmol)、テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)の量を0.29gとしてカーボネート化反応を行い、PTMG使用量を30.0g(30.0mmol)にしてエステル交換反応を行った以外は実施例2−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物3−1)を得た。エステル化反応進行率は83%であった。
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×12hで実施した以外は実施例3−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物3−2)を得た。エステル化反応進行率は、98%であった。
実施例3−3
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×18hで実施した以外は実施例3−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物3−3)を得た。エステル化反応進行率は、100%であった。
炭酸ジエステル使用量を5.92g(50.1mmol)、テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)の量を0.29gとしてカーボネート化反応を行い、PTMG使用量を40.0g(40.0mmol)にしてエステル交換反応を行った以外は実施例2−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物4−1)を得た。エステル化反応進行率は81%であり、実施例2−1〜2−2や3−1〜3−3に比べてエステル化反応進行率が低く、エステル化反応を完全に押切ることはできなかった。
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×12hで実施した以外は実施例4−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物4−2)を得た。エステル化反応進行率は、87%であった。
実施例5−1
ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)として、カルビノール変性シリコーン(信越化学社製、「KF−6001」、数平均分子量1810)9.05g(5.0mmol)を使用し、炭酸ジエステル使用量を2.98g(25.2mmol)、テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)の量を0.19gとしてカーボネート化反応を行い、PTMG使用量を15.0g(15.0mmol)にしてエステル交換反応を行った以外は実施例1と同様にして、ポリシロキサンポリオール3(数平均分子量3862、ポリジメチルシロキサン含有量42質量%)および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物5−1)を得た。エステル化反応進行率は80%であった。
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×12hで実施した以外は実施例5−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール3および未反応PTMGの混合物(ポリオー
ル混合物5−2)を得た。エステル化反応進行率は、100%であった。
テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)の量を0.25gとしてカーボネート化反応を行い、PTMG使用量を15.0g(15.0mmol)にしてエステル交換反応を行った以外は実施例5−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール3および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物6−1)を得た。エステル化反応進行率は、76%であった。
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×12hで実施した以外は実施例6−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール3および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物6−2)を得た。エステル化反応進行率は、96%であった。
<ポリウレタンウレアの製造>
<ポリウレタンウレア1の製造>
容量が1Lのフラスコに、ポリエーテルポリオール(b)として予め40℃に加温したポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、「PTMG」と略記することがある。)(数平均分子量1965、三菱化学社製)149.62gと、実施例1で得られたポリオール混合物1を1.94g加えて混合し、この混合物をポリウレタン製造用の原料とした。この混合物中のポリシロキサンポリオール1の割合は0.96質量%であった。
そして、このフラスコを45℃のオイルバスにセットし、窒素雰囲気下にて碇型攪拌翼で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。
て乾燥させて厚さ約50μmの無色透明なフィルムを得た。このフィルムの剥離試験を行ったところ、剥離強度は0.21N/cmであり、参考例1に比べて剥離性は良好であった。又、得られた弾性フィルムは表2に示す通りの特性であった。
<ポリウレタンウレア2の製造>
ポリエーテルポリオール(b)としてのポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1965、三菱化学社製)の量を138.84gとし、実施例2−2で得られたポリオール混合物2−2を1.43gとし、イソシアネート化合物(c)としてのMDIの量を28.5gとした以外は、実施例6と同様にしてわずかに濁りがあるポリウレタンウレア2溶液を得た。
又、こうして得られたポリウレタンウレア2溶液から実施例7と同様にしてフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は0.12N/cmであり、比較例に比べて剥離性は良好であった。又、得られた弾性フィルムは表2に示す通りの特性であった。
<ポリウレタンウレア3の製造>
ポリエーテルポリオール(b)としてのポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1965、三菱化学社製)の量を140.86gとし、実施例5−2で得られたポリオール混合物5を1.44gとし、イソシアネート化合物(c)としてのMDIの量を28.84gとした以外は、実施例6と同様にして透明性良好なポリウレタンウレア3溶液を得た。
又、こうして得られたポリウレタンウレア3溶液から実施例7と同様にしてフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は0.14N/cmであり、比較例に比べて剥離性は良好であった。又、得られた弾性フィルムは表2に示す通りの特性であった。
<ポリウレタンウレア4の製造>
ポリシロキサンポリオールを使用せず、PTMGを185.58g、MDIを37.711g、EDAを2.91g、DEAを0.91gとした以外は実施例7と同様にしてポリウレタンウレア4溶液を製造した。
こうして得られたポリウレタンウレア4溶液から、実施例7と同様にして無色透明なフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は1.12N/cmであり、剥離性は悪かった。また、得られたフィルムのSi/Cは0.000であり、水接触角は80.7であった。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
そして、得られるポリウレタン及びポリウレタンウレアを用いて弾性繊維およびフィルム等のポリウレタン成形体を製造する場合、油剤および平滑剤等の使用量の削減によるコストの削減、製品汚損並びに機械および器具の目詰まり頻度低減による操業安定性の向上、摩擦抵抗の低減による機械に導入する駆動電力の削減等が期待できる。
Claims (12)
- ポリシロキサンポリオール(a)、ポリエーテルポリオール(b)、イソシアネート化
合物(c)、及び鎖延長剤(d)を原料として製造することを特徴とするポリウレタンの
製造方法であって、該ポリシロキサンポリオール(a)が、ポリシロキサン骨格を有する
ポリシロキサンポリオール(i)と、ポリエーテルポリオール(ii)とをカーボネート
結合で連結させたポリシロキサンポリオールであることを特徴とするポリウレタンの製造
方法。 - 前記ポリシロキサンポリオール(i)が、複数のエーテル結合を有することを特徴とす
る請求項1に記載のポリウレタンの製造方法。 - 前記ポリシロキサンポリオール(a)が、前記ポリシロキサンポリオール(i)に炭酸
ジエステルを反応させて水酸基をカーボネート化した後にポリエーテルポリオール(ii
)を反応させて得たポリシロキサンポリオールであることを特徴とする請求項1又は2に
記載のポリウレタンの製造方法。 - 前記ポリエーテルポリオール(ii)がポリテトラメチレンエーテルグリコールである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリポリウレタンの製造方法。 - 前記ポリシロキサンポリオール(a)の数平均分子量が500〜6,000であること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。 - 前記ポリシロキサンポリオール(a)の使用量の割合が、前記ポリシロキサンポリオー
ル(a)と前記ポリエーテルポリオール(b)の合計使用量に対して0.01〜20質量
%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方
法。 - 前記イソシアネート化合物(c)が芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。 - 前記鎖延長剤(d)がポリアミン化合物であることを特徴とする請求項1乃至7のいず
れか1項に記載のポリウレタンの製造方法。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法により得られたことを特
徴とするポリウレタン。 - 請求項9に記載のポリウレタンから構成されることを特徴とするポリウレタン成形体。
- 請求項9に記載のポリウレタンを含むことを特徴とするポリウレタンフィルム。
- 請求項9に記載のポリウレタンを含むことを特徴とするポリウレタン繊維。
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