JP6234160B2 - 希土類金属の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、希土類磁石をはじめとした希土類元素を含む処理材から希土類元素を分離精製する希土類金属の製造方法に関する。
近年、希少資源である希土類元素を小型の家電製品や電子製品、あるいは電気駆動車量用のモーターなどから回収してリサイクルすることが注目されている。特に希土類元素の中でも重希土類に分類されるディスプロシウム(Dy)は需要の多い金属であり、工業的なリサイクル方法の確立が期待されている。
使用済み製品から希土類元素を回収する方法としては、例えば、以下の方法が知られている。
例えば、特許第2765740号公報(特許文献1)には、希土類磁石のスクラップを硝酸−硫酸水溶液に溶解し、得られた溶液にアルコールを添加して希土類硫酸塩を選択的に晶析させて希土類元素を分離回収する方法が記載されている。また、特開平9−157769号公報(特許文献2)には、希土類金属を含有する合金スクラップを水素化して粉砕し、粉砕した合金スクラップを加熱して酸化物に変換し、該酸化物を酸溶液と接触させて希土類金属をイオンとして溶出させ、このイオンを含有する溶液から希土類金属を含む沈殿を生成させる希土類元素含有化合物の回収方法が記載されている。
しかしながら、酸溶解を用いた方法は、鉄が利用価値の低い水酸化物や酸化物となるため特別な処理が必要となり、操作が煩雑であるという問題がある。また、これらの方法は処理段数を多くする必要があるため多量の酸とアルカリを要し、これに伴い多量の廃液が生じるという問題がある。
また、酸溶解を用いる方法の他にも、溶融塩を用いる方法が知られている。
例えば、特開2002−60855号公報(特許文献3)には、希土類酸化物を原料とする溶融塩電解浴に投入し、電解浴中で希土類酸化物と磁石合金部に溶融分離させ、電解浴に溶解した希土類酸化物を希土類金属に還元し、磁石合金部とこれを合金化させ、希土類金属として再生する方法が記載されている。
特開2002−198104号公報(特許文献4)には、水素吸蔵合金を陽極として陰極とともに溶融塩に浸漬して前記陽極と陰極に電圧を印可し、水素吸蔵合金から希土類元素を溶解させ、これから不純物イオンを分離した後、電解還元により希土類元素を上記陰極上に析出させて金属として回収する方法が記載されている。
特開2003−73754号公報(特許文献5)には、気体または溶融状態の鉄塩化物に希土類元素と鉄族元素を含んだ物質を接触させ、その物質中の鉄族元素の金属状態を保ったまま上記物質中の希土類元素の塩化反応を行わせ、希土類元素を塩化物として選択的に回収する方法が記載されている。
特許第4242313号公報(特許文献6)には、溶融塩中に溶解した希土類元素を電気泳動により回収する方法が記載されている。また、特開2009−287119号公報(特許文献7)には、溶融塩電解でバイポーラー電極型隔膜により陽極室と陰極室を形成し、隔膜中を拡散透過させて回収する方法が記載されている。
しかしながら、上記の溶融塩を用いた方法にも次のような問題点がある。
まず、上記の文献に記載の方法では、希土類金属と遷移元素との完全分離ができないため、特定の元素を分離することができないという問題がある。特に、ネオジム磁石のスクラップからの回収方法では酸素以外の除去が困難である。このように、希土類金属同士の分離は酸溶解した溶媒抽出以外はほとんどできない。
また、水素吸蔵合金を陽極として、陰極とともに溶融塩に浸漬して、陽極溶解させる方法は電気泳動に大電圧が必要なため莫大な電力を要するという問題がある。
更に、途中で回収される希土類金属の濃度が低くかったり、また、バイポーラー電極型隔膜を用いる方法は拡散透過が必要で処理速度に限界があったりするため、工業的ではないという問題もある。
特許第2765740号公報 特開平9−157769号公報 特開2002−60855号公報 特開2002−198104号公報 特開2003−73754号公報 特許第4242313号公報 特開2009−287119号公報
本発明は、上記問題点に鑑みて、希土類磁石などの処理材から各希土類元素を高純度で分離することが可能であり、かつ、操作が容易な希土類金属の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決すべく以下の構成を採用する。
即ち、本発明は(1)溶融塩電解によって、鉄と一種類以上の希土類元素とを含む処理材から希土類元素を分離して得る方法であって、 前記溶融塩中に、前記処理材に含まれる希土類元素よりも貴な金属を添加して溶解させる工程と、 前記金属を溶解させた溶融塩中に、カソード電極と、前記処理材を用いたアノード電極と、を設けて電気分解を行い、前記処理材の構成元素のうち少なくとも、前記鉄と前記一種類以上の希土類元素とを前記溶融塩中に溶解する工程と、 前記金属及び前記処理材の構成元素のうちの少なくとも、前記鉄と前記一種類以上の希土類元素とが溶解した溶融塩中に一対の電極を設け、前記溶融塩中に溶解させた金属の金属イオン及び前記処理材から溶解した鉄イオンの両者が同時に又は別々に析出もしくは合金化するようにカソード電極の電位を制御して、前記溶融塩中から前記金属Aの金属イオン及び前記処理材から溶解した鉄イオンを回収する工程と、 前記溶融塩中に一対の電極を設け、該電極間に電圧を印加して電位差を発生させることにより、前記溶融塩中に溶解している前記処理材由来の希土類元素を一方の電極の表面に析出もしくは合金化させる工程と、 を有し、各工程を記載された順に行なう、溶融塩電解による希土類金属の製造方法、である。
本発明により、容易な操作で希土類磁石などの処理材から各希土類元素を高純度で分離する希土類金属の製造方法を提供することが可能となる。
実施例による希土類金属の製造方法の各工程の概略を表す図である。 図1の第2工程〜第5工程において用いた溶融塩電解装置の概略を表す図である。 図1の第2工程の条件の概略を表す図である。 実施例において用いた処理材の概略を表す図である。 図1の第4工程を終えた後のニッケル電極の表面を電子顕微鏡により観察した写真である。
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明は、溶融塩電解によって、鉄と一種類以上の希土類元素とを含む処理材から希土類元素を分離して得る方法であって、 前記溶融塩中に、前記処理材に含まれる希土類元素よりも貴な金属を添加して溶解させる工程と、 前記金属を溶解させた溶融塩中に、カソード電極と、前記処理材を用いたアノード電極と、を設けて電気分解を行い、前記処理材の構成元素を前記溶融塩中に溶解する工程と、 前記金属及び前記処理材の構成元素が溶解した溶融塩中に一対の電極を設け、前記溶融塩中に溶解させた金属の金属イオン及び前記処理材から溶解した鉄イオンの両者が同時に又は別々に析出もしくは合金化するようにカソード電極の電位を制御して、前記溶融塩中から前記金属イオン及び鉄イオンを回収する工程と、 前記溶融塩中に一対の電極を設け、該電極間に電圧を印加して電位差を発生させることにより、前記溶融塩中に溶解している希土類元素を一方の電極の表面に析出もしくは合金化させる工程と、 を有する溶融塩電解による希土類金属の製造方法、である。
上記(1)に記載の発明により、希土類磁石をはじめとする希土類元素と鉄とを含む処理材から、高回収率で希土類元素を得ることができる。また、方法が容易であり、かつ廃液量を少なくすることができる。
なお、本発明において希土類元素よりも貴な金属とは、溶融塩中にイオンの形で溶解している状態において、その金属イオンが還元して析出を起こす電位範囲の上限値が希土類元素よりも高い金属のことをいう。
(2)前記溶融塩中に添加する金属は、鉄、亜鉛、及びスズのいずれかの金属、もしくは、これらの二種類以上の金属の混合物であることが好ましい。
鉄、亜鉛、及びスズは希土類元素よりも貴な金属であって、入手が容易であり、かつ安価であるため、本発明の実施形態に係る希土類金属の製造方法を実施するための費用を下げることができる。
(3)前記溶融塩は、ハロゲン化物であることが好ましい。
前記溶融塩としてハロゲン化物を用いることで、処理速度を速めて、工業的に操業することができる。
(4)前記溶融塩は、複数のハロゲン化物の混合物であることが好ましい。
溶融塩は複数の塩の混合物とすることで共晶反応が生じて融点が下がる傾向がある。このため、前記溶融塩として複数のハロゲン化物の混合物を用いることで、溶融塩の温度を低下させて、各工程での処理温度を下げることができる。これにより処理条件を緩和させることができ好ましい。
(5)前記溶融塩中に添加する金属は、前記溶融塩に含まれるハロゲンの化合物で添加することが好ましい。
前記溶融塩中に添加した前記金属イオンと前記処理材から溶解した鉄イオンとを析出もしくは合金化させる際に、他方の電極ではハロゲンガスが発生する。このため、溶融塩中に添加する金属を溶融塩中に含まれるハロゲンの化合物とすることで、溶融塩中への添加物と、溶融塩中からの析出物(回収物)及び発生ガスとのマスバランスを成立させることができる。これにより溶融塩を繰り返し利用することができるようになる。
(6)前記溶融塩として塩化物塩を用い、かつ前記溶融塩中に添加する金属を塩化物で添加することが好ましい。
塩化物塩はハロゲン塩の中でも一般的であり安価で入手しやすい塩であるため、原材料費を低く抑えることができ、本発明の実施形態に係る希土類金属の製造方法を実施するためのコストを下げることができる。
(7)前記処理材の構成元素を前記溶融塩中に溶解する工程において、前記カソード電極としては、炭素、グラッシーカーボン、モリブデン、鉄、銅、コバルト、タングステン又はタンタルを用いることが好ましい。
上記の電極材料は溶融塩電解条件下で安定な材料であり、処理に影響を与えないようにすることができる。また、これらの金属は溶融塩中に存在するアルカリ金属やアルカリ土類金属と合金化しない遷移金属である。また、電極の劣化が少ないという利点もある。
(8)前記溶融塩中に溶解している希土類元素を析出もしくは合金化させる工程においては、 前記一方の電極の電位を、前記溶融塩中に溶解している二種類以上の希土類元素のうち、特定の希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記特定の希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させ、 その後に、新たな電極を前記溶融塩中に設け、一方の電極の電位を、他の希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記他の希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させることが好ましい。
(9)前記溶融塩中に溶解している希土類元素を析出もしくは合金化させる工程においては、 前記一方の電極の電位を、重希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記重希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させ、 その後に、新たな電極を前記溶融塩中に設け、一方の電極の電位を、軽希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記軽希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させることが好ましい。
上記(8)に記載のように、溶融塩中に複数の希土類元素が溶解している場合に、一方の電極の電位を、特定の希土類元素イオンのみが還元して析出もしくは合金化する電位に制御することで、特定の希土類元素を選択的に電極表面に析出もしくは合金化させて回収することができる。特定の希土類元素イオンのみが還元するようにするためには、溶融塩中に溶解している複数の希土類元素イオンのうち、最も高い電位で還元するものから順に析出もしくは合金化するように、一方の電極の電位を制御すればよい。このようにすることで、上記(9)に記載のように、市場価値が高い重希土類元素等を選択的に高純度で得ることができる。
なお、本発明において重希土類元素とはランタノイドの中でガドリニウム(Gd)とそれよりも原子量が大きい希土類元素のことをいい、軽希土類元素とはこれよりも原子量が小さい希土類元素のことをいう。
(10)前記溶融塩中に溶解している希土類元素を析出もしくは合金化させる工程においては、 前記一方の電極の電位を、ディスプロシウムイオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記ディスプロシウムを選択的に析出もしくは合金化させ、 その後に、新たな電極を前記溶融塩中に設け、一方の電極の電位を、他の希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記他の希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させることが好ましい。
上記(10)のようにすることで、上記(9)に記載の場合と同様に、重希土類元素のなかでも特に市場価値が高く、需要が多いディスプロシウム(Dy)を選択的に高純度で得ることができる。
(11)前記溶融塩中に溶解している希土類元素を析出もしくは合金化させる工程において、 前記一方の電極にニッケルを用いて、前記希土類元素をニッケルとの合金として回収することが好ましい。
溶融塩中から特定の希土類元素イオンを析出させる際に、同程度の電位で還元して析出する複数種類の希土類元素イオンが溶融塩中に存在し、特定の希土類元素イオンのみを還元して析出させることが困難な場合がある。このような場合には、各希土類元素を合金化して回収するようにすることが有効である。これは、各希土類元素イオンを単体金属として析出させる場合の還元電位の差が小さい場合であっても、他の金属と希土類元素とを合金化させることで電位の差を大きくすることができるからである。希土類元素を他の金属と合金化させるためには、希土類元素を析出させる電極材料として、希土類元素と合金化する金属を用いればよい。
例えば、処理材中にディスプロシウム(Dy)とネオジム(Nd)が含まれている場合には、これらの還元電位の値は近い範囲にあるが、前記一方の電極材料にニッケルを用いて合金化して回収することで、ディスプロシウムをネオジムに対して高い分離比率(高濃度)で回収することができる。
(12)前記溶融塩中から前記金属イオン及び鉄イオンを回収する工程においては、 前記金属イオン及び鉄イオンを析出もしくは合金化させるカソード電極として、炭素、グラッシーカーボン、モリブデン、鉄、銅、コバルト、タングステン又はタンタルを用いることが好ましい。これらの金属は溶融塩中に存在するアルカリ金属やアルカリ土類金属と合金化しない遷移金属である。
前述のように、上記の電極材料は溶融塩電解条件下で安定な材料である。このため溶融塩中から金属イオン及び鉄イオンを析出もしくは合金化させるという処理に影響を与えないようにすることができ、また、劣化が少ないというメリットもある。
(13)前記溶融塩中に溶解している希土類元素を析出もしくは合金化させる工程においては、 前記希土類元素を析出もしくは合金化させる前記一方の電極とは別の電極として、炭素、グラッシーカーボン、モリブデン、白金、銀、又は金を用いることが好ましい。
溶融塩中に溶解している希土類元素を析出もしくは合金化させる工程において、前記希土類元素を析出もしくは合金化させる前記一方の電極とは別の電極としても、上記の電極材料を用いることで、系に影響を与えないで処理を行うことができる。また、劣化が少なく、メンテナンスが容易であるというメリットもある。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る希土類金属の製造方法の具体例を以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施形態に係る希土類金属の製造方法は、溶融塩電解を用いて、ネオジム磁石等の鉄と一種類以上の希土類元素とを含む処理材から希土類元素を抽出分離し、所望の希土類元素を高純度で得る方法である。
本発明の実施形態に係る希土類金属の製造方法の構成は、大きくは、溶融塩中に希土類元素よりも貴な金属を添加して溶解させる工程と、溶融塩中で処理材を電極(アノード)として電位の制御を行って、処理材中の特定の構成元素を溶解する工程(溶解工程)と、前記溶融塩中に溶解させた金属イオンと前記処理材から溶解した鉄イオンとを回収(析出)用の電極の電位を制御して選択的に回収する工程と、溶融塩中に設けた別の回収用の電極の電位を制御して、溶融塩中に溶解している特定の希土類元素を、回収用の電極に析出もしくは合金化させる工程(析出工程)からなっている。
このプロセスの特徴の一つはそれぞれの電極での電位を制御することで対象の希土類元素、特に重希土類元素のディスプロシウムのように需要の大きい希土類元素を、選択的に溶解もしくは析出させて分離するところにある。
また、もう一つの特徴は、溶解工程の前に溶融塩中に希土類元素よりも貴な金属イオンを添加することである。もし、溶解工程の前に溶融塩中に希土類元素よりも貴な金属イオンを添加していなかったとすると、溶解工程でアノードとした処理材から回収目的である希土類元素を溶解しても、溶解した希土類が対極となるカソードに他の元素と同時に析出もしくは合金化を起こしてしまい、後で行う析出工程での希土類元素の残存量が小さくなって、効率的な回収の妨げとなる。本発明者等は鋭意探求を重ねた結果、溶解工程の前に溶融塩中に希土類元素よりも貴な金属イオンを添加して溶解させることで、上記の問題点が解決できることを見出した。
溶解工程の前に溶融塩中に希土類元素よりも貴な金属イオンを添加して溶解させると好ましい理由としては、次のように考えられる。
まず、溶解時には、アノード電極とする処理材の電位のみを制御し、カソード電極の電位を制御していないことを前提に、溶融塩中に希土類元素よりも貴な金属を添加しない場合について検討する。
この場合に、アノード電極(処理材)の電位を鉄(Fe)と希土類元素との両方が溶解する電位(例えば2.20V)に制御すると、アノード電極での溶解反応に応じてその電気量に見合う析出反応がカソード電極でも生じるが、カソード電極では、処理材から溶解した鉄から析出が始まる。しかしながら、処理材から溶解し始めた鉄の析出だけではアノード電極の溶解反応の電気量には不足であるため、鉄よりも卑な(還元電位が低い)希土類元素がカソード電極表面に析出してしまう。その結果、溶融塩中に残留する希土類元素イオンの量が少なくなってしまう。
また、希土類元素よりも貴な金属を添加しない場合に、アノード電極の電位を、鉄が溶解せずに希土類元素のみが溶解する電位(例えば1.70V)に制御すると、アノード電極では鉄が溶解せずに、希土類元素のみが溶解し始める。そうすると、溶融塩中に鉄イオンや希土類元素よりも貴な金属のイオンが存在しないため、カソード電極での析出反応は溶融塩中に溶解した希土類元素により生じる。このため、溶融塩中には希土類元素がほとんど残らず、続けて行う析出工程において希土類元素を回収できなくなってしまう。
これに対し、本発明の実施形態に係る希土類金属の製造方法のように溶解工程の前に溶融塩中に希土類元素よりも貴な金属を添加して溶解させる場合について検討すると、次のように考えられる。
まず、この場合に、アノード電極の電位を鉄と希土類元素との両方が溶解する電位(例えば2.20V)に制御すると、カソード電極では、アノード電極での鉄と希土類元素の溶解反応に応じた電気量に見合う量の析出反応が生じるが、溶融塩中には希土類元素よりも貴な金属の金属イオンが多く存在しているため、当該金属イオンの析出反応のみが生じて、希土類元素がカソード電極に析出しないようにすることができる。その結果、アノード電極である処理材から溶解した希土類元素が溶融塩中に残留することとなる。
なお、希土類元素よりも貴な金属を添加した場合に、アノード電極の電位を、鉄が溶解せずに希土類元素のみが溶解する電位(例えば、1.70V)に制御すると、アノード電極では溶融塩中に添加した金属イオンの還元反応が生じてアノード電極表面に析出してしまい、溶解反応を制御できなくなってしまう。
以下、各工程について詳細に説明をする。
(希土類元素よりも貴な金属を添加する工程)
本発明の実施形態に係る溶融塩電解による希土類金属の製造方法では、処理材を構成する元素を溶融塩中に溶解させる工程(溶解工程)の前に、溶融塩中に希土類元素よりも貴な金属を添加して溶解させる工程を有する。前述のように、予め溶融塩中に前記金属を溶解させておくことで、溶解工程において希土類元素がカソード電極に析出してしまうことを抑制することが可能となる。
前記溶融塩は、特に限定されるものではないが、処理速度を速めて工業的に操業する観点から、ハロゲン化物であることが好ましい。ハロゲン化物の溶融塩としては、例えば、塩化物系のものやフッ化物系のものを用いることができる。
塩化物系の溶融塩としては、例えばKCl、NaCl、CaCl2、LiCl、RbCl、CsCl、SrCl2、BaCl2、MgCl2などを用いることができる。またフッ化物系の溶融塩としては、例えばLiF、NaF、KF、RbF、CsF、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2を用いることができる。
前記ハロゲン化物のなかでも、効率の観点から塩化物系の溶融塩を用いることが好ましく、なかでも安価で入手が容易という点から、KCl、NaCl、CaCl2を用いることが好ましい。
また、これらの溶融塩は複数種類の溶融塩を組み合わせて任意の組成の溶融塩として用いることができる。例えば、KCl−CaCl2やLiCl−KCl、あるいはNaCl−KClといった組成の溶融塩を用いることができる。このように複数種類の溶融塩を組み合わせて用いることで溶融塩の融点を下げることができ、これによって、各工程での処理温度を下げることが可能となる。
なお、溶融塩電解を行う際の温度は、使用する溶融塩の融点に応じて適宜設定すればよい。すなわち、溶融塩の融点未満では塩が液状にならないため、溶融塩の融点以上の温度で溶融塩電解を行えばよい。また、あまりに高温で溶融塩電解を行うと、加熱に要するエネルギーコストの増加に加え、塩が安定しないため好ましくない。
希土類元素よりも貴な金属とは、溶融塩中にイオンの形で溶解している状態において、その金属イオンが還元して析出を起こす電位範囲の上限値が希土類元素よりも高い金属のことをいう。このような金属を溶融塩中に溶解させる目的は前述のように、溶解工程において希土類元素がカソード電極表面に析出することを抑制することにある。従って、前記金属の種類は、希土類元素よりも貴な(還元電位が高い)金属であれば特に限定されないが、入手が容易で安価な金属であることが好ましい。そのような金属としては、例えば、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)などが挙げられる。また、前記金属は単体で用いてもよいし、二種類以上の金属を混合した混合物として用いてもよい。
なお、本発明の実施形態に係る溶融塩電解による希土類金属の製造方法においては、溶解工程において処理材中の鉄も溶融塩中に溶解する。このため、溶融塩中に含まれる金属成分の種類を少なくする観点から、溶融塩中に予め溶解させておく前記金属は、上記のなかでも鉄であることがより好ましい。
希土類元素よりも貴な金属を溶融塩中に添加する添加量は、処理材に含まれている希土類元素の量に応じて適宜変更すればよい。例えば、後述する溶解工程において、アノード電極から希土類元素が充分に溶解し、かつカソード電極表面に析出せずに溶融塩中に残留することができる程度に、溶融塩中に前記金属を添加しておくことが好ましい。すなわち、アノード電極から希土類元素が溶解する反応の電気量に見合うだけの金属を溶解しておけばよい。なお、前記金属の添加量が多すぎて溶融塩中に溶解しきらずに沈殿が生じてしまうような場合には、後述する溶解工程において溶融塩中から鉄イオンが減少し始めると沈殿物が溶解して溶融塩中に新たな鉄イオンを供給することとなってしまう。このため、希土類元素よりも貴な金属の添加量は、前記金属が溶融塩中に溶解して沈殿物が生じない量以下にすることが好ましい。
また、処理材中に鉄が含まれているため溶解工程ではこの鉄も溶融塩中に溶解する。そして、この鉄も希土類元素よりも貴な金属であるから溶解工程ではこの処理材由来の鉄もカソード表面に析出する。したがって、溶解工程を始める前に、希土類元素よりも貴な金属が溶融塩中にある程度存在していて希土類元素がカソード電極表面に析出することを抑制できれば、溶解工程が進行するにつれて処理材由来の鉄もカソード電極表面に析出するようになる。このため最初に添加する金属の量が、希土類元素が溶解する反応に応じた電気量に見合う量より少ない場合であっても、カソード電極表面に希土類元素が析出することを抑制できることがある。
また、溶融塩中に添加する金属は、例えば、粉砕して粒状、粉状にし、これらを溶融前の塩と混合して加熱することで溶解させてもよいし、あるいは溶融塩に投入して溶解させてもよい。また、溶融塩中に添加する金属を電極として設けて溶融塩電解により溶解させてもよい。
(溶解工程)
本発明の実施形態に係る溶融塩電解による希土類金属の製造方法では、上記のようにして希土類元素よりも貴な金属を予め溶解させた溶融塩中に、カソード電極と、処理材を用いたアノード電極と、を設けて電気分解を行うことで、処理材の構成元素を溶融塩中に溶解させる工程を有する。この工程では、処理材を用いたアノード電極の電位を制御することで、処理材を構成している元素を溶融塩中に溶解させる。
前記処理材としては、鉄と一種類以上の希土類元素とを含むものであれば限定されないが、特に、需要の大きい重希土類元素、なかでもディスプロシウム(Dy)を含むものであることが好ましい。
このような処理材としては、例えば、希土類磁石として、ネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石などが挙げられる。特に、ネオジム磁石の一部はディスプロシウムの含有量が多いため処理材として好ましい。
前記アノード電極としては、前記処理材を通電可能にしたものを用いればよい。このようにするためには、例えば、処理材と外部電源とを導電線で接続すればよい。また、アノード電極での溶解反応の効率を高めるには、処理材を可能な限り細分化して表面積を大きくすることが好ましい。
前記カソード電極は特に限定されず、例えば、炭素、グラッシーカーボン、モリブデン、鉄、銅、コバルト、タングステン又はタンタルなどを用いることができる。これらの電極材料は、溶融塩電解条件下で安定しており、処理に影響を与えないため好ましい。また、これらの金属は溶融塩中に存在するアルカリ金属やアルカリ土類金属と合金化しない遷移金属である。
本発明の実施形態に係る溶融塩電解による希土類金属の製造方法においては、溶解工程の前に希土類元素よりも貴な金属を溶融塩中に溶解させているため、溶解工程においては、アノード電極とした処理材から所定の元素が溶融塩中に溶解すると同時に、予め添加していた希土類元素よりも貴な金属のイオンが対極のカソード電極表面に析出もしくは合金化する。電荷のバランスから、アノード電極である処理材から溶融塩に溶解した元素の量と電気的に対応する量の金属イオンがカソード電極表面に析出、もしくはカソード電極成分と合金化を起こす。この結果、処理材から溶解した希土類元素は溶融塩中に残存することになる。具体的には、処理材中の希土類元素、特に、ディスプロシウム(Dy)を代表とする重希土類元素を溶融塩中に残存させることになる。
溶解工程においては、アノード電極において処理材の構成元素が溶融塩中に溶解する反応が生じるようにアノード電極の電位を制御する。このとき、回収目的となる希土類元素と併せて処理材中の鉄(Fe)が溶解するように電位を制御する。すなわち、溶融塩中にアノードとして処理材を、また、対極となるカソードとして他の電極材料を準備して配置し、標準電極を用いてアノードの電位を制御する。
溶解工程におけるアノード電極の電位は、溶解させる元素の種類に応じて、変えることができる。一般的な例として処理材にネオジム磁石を用いる場合には、鉄と、希土類元素であるネオジム(Nd)及びディスプロシウム(Dy)とを、まとめて溶解する電位にアノード電極の電位を制御する。この場合、鉄はカソード電極に回収されながら、一方でネオジム磁石(アノード電極)から溶解することになる。このような形とすることで、溶解した希土類元素はカソード電極に析出することなく溶融塩中に蓄積することになる。
(鉄イオンと希土類元素よりも貴な金属の金属イオンを回収する工程)
本発明の実施形態に係る溶融塩電解による希土類金属の製造方法では、前記処理材の構成元素が溶解した溶融塩中に一対の電極を設け、前記溶融塩中に溶解させた金属の金属イオン及び前記処理材から溶解した鉄イオンの両者が同時に又は別々に析出もしくは合金化するようにカソード電極の電位を制御して、前記溶融塩中から前記金属イオン及び鉄イオンを回収する工程、を有する。
この工程は、溶融塩中に存在している各種イオンのうち、希土類元素イオン以外のイオンをカソード電極表面に析出もしくは合金化させて回収する工程である。すなわち、カソード電極の電位を制御することによって、最初に溶融塩中に溶解させた希土類元素よりも貴な金属のイオンと、溶解工程において溶融塩中に溶解した鉄イオンとを、選択的に回収する。この場合、最初に添加した金属のイオンと、処理材に由来する鉄イオンとを別々に回収してもよいし、同時に回収してもよい。別々に回収する場合には、それぞれの金属が析出する電位に制御して溶融塩電解を行えばよい。なお、この回収工程を繁雑にさせないためにも、前述のように、溶解工程の前に溶融塩中に溶解させる希土類元素よりも貴な金属は、鉄(Fe)であることが好ましい。
この前記金属イオンと鉄イオンとを溶融塩中から回収する工程において、前記カソード電極は特に限定されず、例えば、炭素、グラッシーカーボン、モリブデン、鉄、銅、コバルト、タングステン又はタンタルなどを用いることができる。これらの電極材料は溶融塩電解条件下で安定しており、処理に影響を与えないため好ましい。また、これらの金属は溶融塩中に存在するアルカリ金属やアルカリ土類金属と合金化しない遷移金属である。
前記希土類元素よりも貴な金属として鉄(Fe)を用いる場合に、望ましい例としては、例えば、カソード電極にモリブデン(Mo)を用いて、鉄のみが析出し希土類元素は析出しない電位(例えば1.00V)に制御して溶融塩中の鉄を回収することが挙げられる。これにより溶融塩中にはほとんど希土類元素のみが存在する状態になる。このような状態とすることで、次の工程で高濃度の希土類元素の回収が可能となる。
また、前記希土類元素よりも貴な金属として亜鉛(Zn)やスズ(Sn)を用いる場合には、これらの金属の融点は比較的低温であるため、溶融塩の温度によっては、カソード電極表面に析出する金属が溶融し、液体状態で回収される。なお、処理材から溶解した鉄イオンはカソード電極表面に析出することによって回収されるが、この場合のカソード電極の電位としては、例えば1.00Vとすることで、鉄はカソード電極表面に析出し、亜鉛やスズは液体金属として回収される。
(希土類元素の析出工程)
本発明の実施形態に係る溶融塩電解による希土類金属の製造方法は、前記金属イオンと鉄イオンとを除いた前記溶融塩中に一対の電極を設け、該電極間に電圧を印加して電位差を発生させることにより、前記溶融塩中に溶解している希土類元素を一方の電極の表面に析出もしくは合金化させる工程(析出工程)、を有する。
この析出工程では、溶融塩中に溶解している希土類元素を溶融塩電解によってカソード電極表面に析出させる。また、場合によっては、後述するようにカソード電極の構成元素と合金化させる。
この場合はカソード電極の電位の制御によって、溶融塩電解で特定の希土類元素を選択的にカソード電極に金属もしくは合金として析出させる。析出においても溶解と同様に希土類元素が金属もしくは合金として析出する電位は、希土類元素の種類によって異なる性質があるため、この性質を利用して分離する。析出させる金属単体あるいは合金の析出電位は、電気化学的な計算により算出することができる。具体的にはネルンストの式を用いて計算することができる。
たとえば、処理材として希土類磁石を用いた場合に、当該希土類磁石から溶融塩中に溶解したディスプロシウム(Dy)、ネオジム(Nd)といった2種類の希土類元素を溶融塩電解におけるカソード電極の電位を制御することで、Dyを選択的にカソードに析出もしくは合金化させることができる。
この場合、例えば、カソード電極にニッケル(Ni)を用いると、それぞれの希土類元素がNiと合金化する電位(酸化還元電位)の差が大きいために、希土類元素を選択的に回収することが容易になる。具体的には、Ni−Dyは、Ni−Ndより貴な合金となるので、カソード電極の設定電位を小さくしていくことで、Dy、NdをNi合金の形で選択的に回収することができる。すなわち、カソード電極の電位をNi−Dy系の合金の酸化還元電位より低く、Ni−Nd系の合金の酸化還元電位よりも高い電位に制御する。このようにすることでNi電極(カソード電極)には、Ni−Dy系合金のみが生成する。
そして、溶融塩中のDyをNi−Dy系の合金として回収した後に、溶融塩中にカソード電極として別のNi電極を設けて、電位をNi−Nd系合金が生成する電位に制御することで、溶融塩中のNdをNi−Nd系合金として回収することができる。
このように2種類の希土類元素を含む処理材を用いた場合であっても、下記(I)及び(II)の2つのプロセスを経ることによって対象物から希土類元素を分離抽出することが可能となる。
(I)析出用電極(カソード)の電位を、溶融塩中に溶解している二種類以上の希土類元素のうち特定の希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御して前記特定の希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させる。
(II)続いて、新たな析出用電極(カソード)を溶融塩中に設け、カソード電極の電位を前記特定の希土類元素とは別の他の希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、他の希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させる。
上記のようにすることで、希土類元素の中でも特に必要性の高い重希土類元素のディスプロシウム(Dy)の回収も可能となる。
なお、上記のNi−Dy系合金、Ni−Nd系合金から、Dy、Ndの単体を得るには、Ni−Dy系合金、Ni−Nd系合金をそれぞれ別の溶融塩中でアノード電極に用いて電解することで、カソード電極の表面にDy単体あるいはNd単体を析出させて得ることが可能である。
例えば、アノード電極にNi−Dy系合金、カソード電極に炭素を用いて、溶融塩中で電解処理を行う。NiとDyでは、Dyが卑な金属であるため、Ni−Dy系合金のアノード電極の電位をDyのみが溶解する電位に制御することで、Ni−Dy系合金からDyを溶解させることができる。そしてその後に、炭素のカソード電極の電位を制御することでDy単体を析出させて回収することができる。
また、Ni−Nd系合金の場合、ネオジム磁石原料の製造工程のNd供給源として利用することも可能である。ネオジム磁石の製造工程では、溶融塩電解でNdとFeを合金化させている。このNd元素供給源料として、今回のNi−Nd系合金は使用することが可能である。
溶融塩中に溶解している希土類元素を析出もしくは合金化させる一方の電極(カソード電極)とは別の電極(アノード電極)としては、例えば、炭素、グラッシーカーボン、モリブデン、白金、銀、又は金を用いることができる。これらの電極材料は溶融塩電解条件下で安定であるため、系に影響を与えないで処理を行うことができる。また、劣化が少なく、メンテナンスが容易であるというメリットもある。
以上の各工程を経ることにより希土類金属が得られる。
なお、前記溶解工程の前に溶融塩中に添加する金属イオンは、溶融塩を構成する元素とのイオンの形で添加すると、最後の析出工程までの一連のプロセスを完了した後の溶融塩は、マスバランスとして金属イオンを添加する前の溶融塩の状態にもどることになり、処理サイクルを連続的に行うことができ好ましい。
例えば、塩化物の溶融塩LiCl−KClを用いる場合において、添加金属としてFeを用いる場合はFeCl2の形で添加する。そうすると、溶解したFeイオンはすべてカソード電極に回収され、一方、塩素イオンは、Feイオンや希土類元素イオンがカソード電極で還元されて合金化する際に、アノード電極で酸化されて塩素ガスとなって気化する。
このように添加した塩化鉄は、Feイオンは析出回収され、塩化物イオンはガスとして気化する。このように、添加した元素(イオン)は、回収もしくはガス化して、系の内部に残らない計算となる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は例示であって、本発明の希土類金属の製造方法はこれらに限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の範囲によって示され、特許請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
[製造例1]
図1に示すようにして、下記の第1工程から第5工程を行うことにより希土類金属、特にディスプロシウム(Dy)の製造を行った。第2工程から第5工程における溶融塩電解は図2に示す装置を用いて行った。また、各工程の条件は表1に示す通りとした。
(第1工程:希土類元素よりも貴な金属を添加する工程)
溶融塩としてLiCl−KCl(融点:352℃)を用意し、450℃に加熱をした。この溶融塩に希土類元素よりも貴な金属として鉄(Fe)を添加し、溶解させた。鉄は塩化鉄(FeCl2)を用いて、溶融塩中で0.2mol%となるように供給した。
(第2工程:溶解工程)
上記で用意した溶融塩中に、図3に示すようにアノード電極とカソード電極と参照電極(Ag/Ag電極)を設けて溶融塩電解を行った。
アノード電極は、処理材をニッケルワイヤーで結ぶことにより作製した。また、処理材としては、車載パワーステアリングモーター用のネオジム磁石を用いた。具体的には、図4に示すようにローターから磁石を取り出し、この各磁石を更に1/3に切断して用いた。各磁石の厚さは1.0〜1.5mmであった。用いたネオジム磁石の組成は表2に示す通りであった。
カソード電極にはモリブデンを用いた。
そして、アノード電極の電位を2.20Vに制御して溶融塩電解を行った結果、アノード電極からは鉄とともに希土類元素が溶解し、カソード電極表面には鉄が析出した。
(第3工程:鉄イオンと希土類元素よりも貴な金属の金属イオンを回収する工程)
上記で得られた溶融塩中に別の一対の電極を設けて溶融塩電解を行った。カソード電極にはモリブデンを用い、アノード電極にはグラッシーカーボンを用いた。そして、カソード電極の電位を1.00Vに制御することにより、カソード電極表面には鉄が析出し、アノード電極表面からは塩素ガスが発生した。これにより溶融塩中から鉄イオンが回収されて、希土類元素が多量に残留した溶融塩が得られた。
(第4工程:希土類元素1の析出工程)
上記で得られた多量の希土類元素が溶解した溶融塩中に更に別の一対の電極を設けて溶融塩電解を行った。カソード電極にはニッケルを用い、アノード電極にはグラッシーカーボンを用いた。そして、カソード電極の電位を0.65〜0.67Vに制御することにより、カソード電極表面にはディスプロシウム(Dy)がニッケルと合金化し、アノード電極表面からは塩素ガスが発生した。溶融塩中には鉄イオンがほぼ残留していなかったため、非常に高純度のディスプロシウム−ニッケル合金を得ることができた。
(第5工程:希土類元素2の析出工程)
上記のようにして鉄イオンとディスプロシウムイオンとが除去された溶融塩中に、更に別の一対の電極を設けて溶融塩電解を行った。カソード電極にはニッケルを用い、アノード電極にはグラッシーカーボンを用いた。そして、カソード電極の電位を0.55〜0.60Vに制御することにより、カソード電極表面にはネオジム(Nd)とプラセオジム(Pr)とがニッケルと合金化し、アノード電極表面からは塩素ガスが発生した。
[製造例2]〜[製造例12]
各工程の条件を表1に示す通りにした以外は製造例1と同様にして希土類金属の製造を行った。
なお、以上の製造例1〜12において、製造例1〜9は実施例であり、製造例10〜12は比較例である。
[評価]
製造例1の第4工程を経ることによって得られたディスプロシウムがニッケルと合金化したカソード電極(ニッケル)の表面をSEM−EDX分析によって観察した。その写真を図5に示す。
図5中の、αとβで示す部分のスペクトルを分析した結果、表3に示す組成となっていることが分かった。これにより、ネオジム(Nd)に対してディスプロシウム(Dy)が非常に高純度で得られていることが確認された。なお、表3からは鉄(Fe)を除いた値を示している。
21、31 アノード
22、32 カソード
23、33 参照電極
24 ポテンシオスタット
35 溶融塩
α DyがNiと合金化したカソード電極表面の領域の一部
β DyがNiと合金化したカソード電極表面の領域の別の一部

Claims (13)

  1. 溶融塩電解によって、鉄と一種類以上の希土類元素とを含む処理材から希土類元素を分離して得る方法であって、
    前記溶融塩中に、前記処理材に含まれる希土類元素よりも貴な金属を添加して溶解させる工程と、
    前記金属を溶解させた溶融塩中に、カソード電極と、前記処理材を用いたアノード電極と、を設けて電気分解を行い、前記処理材の構成元素のうちの少なくとも、前記鉄と前記一種類以上の希土類元素とを前記溶融塩中に溶解する工程と、
    前記金属及び前記処理材の構成元素のうちの少なくとも、前記鉄と前記一種類以上の希土類元素とが溶解した溶融塩中に一対の電極を設け、前記溶融塩中に溶解させた金属の金属イオン及び前記処理材から溶解した鉄イオンの両者が同時に又は別々に析出もしくは合金化するようにカソード電極の電位を制御して、前記溶融塩中から前記金属Aの金属イオン及び前記処理材から溶解した鉄イオンを回収する工程と、
    前記溶融塩中に一対の電極を設け、該電極間に電圧を印加して電位差を発生させることにより、前記溶融塩中に溶解している前記処理材由来の希土類元素を一方の電極の表面に析出もしくは合金化させる工程と、
    を有し、
    各工程を記載された順に行なう、溶融塩電解による希土類金属の製造方法。
  2. 前記溶融塩中に添加する金属が、鉄、亜鉛、及びスズのいずれかの金属、もしくは、これらの二種類以上の金属の混合物である請求項1に記載の希土類金属の製造方法。
  3. 前記溶融塩が、ハロゲン化物である請求項1又は請求項2に記載の希土類金属の製造方法。
  4. 前記溶融塩が、複数のハロゲン化物の混合物である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の希土類金属の製造方法。
  5. 前記溶融塩中に添加する金属を、前記溶融塩に含まれるハロゲンの化合物で添加する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の希土類金属の製造方法。
  6. 前記溶融塩が塩化物塩であって、前記溶融塩中に添加する金属を、塩化物で添加する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の希土類金属の製造方法。
  7. 前記処理材の構成元素を前記溶融塩中に溶解する工程において、前記カソード電極として、炭素、グラッシーカーボン、モリブデン、鉄、銅、コバルト、タングステン、又はタンタルを用いる請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の希土類金属の製造方法。
  8. 前記溶融塩中に溶解している前記処理材由来の希土類元素を析出もしくは合金化させる工程において、
    前記一方の電極の電位を、前記溶融塩中に溶解している二種類以上の前記処理材由来の希土類元素のうち特定の希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記特定の希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させ、
    その後に、新たな電極を前記溶融塩中に設け、一方の電極の電位を、他の前記処理材由来の希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記他の前記処理材由来の希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させる請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の希土類金属の製造方法。
  9. 前記溶融塩中に溶解している前記処理材由来の希土類元素を析出もしくは合金化させる工程において、
    前記一方の電極の電位を、前記処理材由来の重希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記処理材由来の重希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させ、
    その後に、新たな電極を前記溶融塩中に設け、一方の電極の電位を、前記処理材由来の軽希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記処理材由来の前記軽希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させる請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の希土類金属の製造方法。
  10. 前記溶融塩中に溶解している前記処理材由来の希土類元素を析出もしくは合金化させる工程において、
    前記一方の電極の電位を、前記処理材由来のディスプロシウムイオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記処理材由来のディスプロシウムを選択的に析出もしくは合金化させ、
    その後に、新たな電極を前記溶融塩中に設け、一方の電極の電位を、他の前記処理材由来の希土類元素イオンが還元して析出もしくは合金化する電位に制御し、前記他の前記処理材由来の希土類元素を選択的に析出もしくは合金化させる請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の希土類金属の製造方法。
  11. 前記溶融塩中に溶解している前記処理材由来の希土類元素を析出もしくは合金化させる工程において、
    前記一方の電極にニッケルを用いて、前記処理材由来の希土類元素をニッケルとの合金として回収する請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の希土類金属の製造方法。
  12. 前記溶融塩中から前記金属Aの金属イオン及び前記処理剤から溶解した鉄イオンを回収する工程において、
    前記金属Aの金属イオン及び前記処理剤から溶解した鉄イオンを析出もしくは合金化させるカソード電極として、炭素、グラッシーカーボン、モリブデン、鉄、銅、コバルト、タングステン又はタンタルを用いる請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の希土類金属の製造方法。
  13. 前記溶融塩中に溶解している前記処理材由来の希土類元素を析出もしくは合金化させる工程において、
    前記処理材由来の前記希土類元素を析出もしくは合金化させる前記一方の電極とは別の電極として、炭素、グラッシーカーボン、モリブデン、白金、銀、又は金を用いる請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の希土類金属の製造方法。
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