[実施形態1]
以下、本発明を適用した画像形成装置の第一の実施形態について説明する。
なお、以下の説明で「画像形成装置」とは、紙、OHPシート、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に現像剤やインクを付着させて画像形成を行う装置を意味する。
また「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。また、「シート」とは紙(用紙)に限らず、OHPシート、布帛なども含み、現像剤やインクを付着させることができる媒体の意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものも含む。
以下の実施形態ではシートを「用紙」として説明し、また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置である、複数の像担持体である感光体が並行に配設されたタンデム型のカラーレーザープリンタ(以下、単に「プリンタ」という)の外観斜視図である。図3は、このプリンタの概略構成図である。
プリンタの下部には、複数枚の用紙Pを積層状態で収納する給紙トレイ30が配置されている。給紙トレイ30の上方でプリンタ本体の側面には、プリンタ内部の点検用の開閉カバー8が、開閉カバー8の下部を軸支する回転軸12を中心にプリンタ本体に対して開閉可能に設けられている。また、プリンタ本体の上部には、画像が形成された用紙Pがプリンタ内部から排紙される排紙トレイ45が設けられている。
図3に示すようにプリンタ内部には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための画像形成部(作像装置)として、4つのプロセスユニット1C,1M,1Y,1Kが配設されている。
4つのプロセスユニット1C,M,Y,Kは、トナーの色が異なる点以外はいずれもほぼ同じ構成である。以下の説明では、便宜上、構成部材を示す番号の後ろに作像する画像のトナー色に対応させてC、M、Y、Kを添え字として付すことにする。なお、一般的な説明では、これらの添え字を適宜省略する。
各プロセスユニット1C,M,Y,Kはそれぞれドラム状の感光体2C,2M,2Y,2Kを備え、4個の感光体2C,M,Y,Kは、画像形成部内の図3中左右方向に等間隔で離間させて並列に配設されている。各感光体2C,M,Y,Kはプリンタの動作時に、不図示の駆動源から駆動が伝達されることにより、図3中時計方向に回転する。
各感光体2C,2M,2Y,2Kの周囲には、現像装置5C,M,Y,Kなど、電子写真方式の作像に必要な部材、装置が配備されている。
感光体2C,M,Y,Kの上方には各色毎の画像データ対応のレーザ光Lを、各帯電ローラ4C,M,Y,Kで一様に帯電済みの各感光体2C,M,Y,Kの表面に走査し、静電潜像を形成するための潜像形成手段としての露光器7が設けられている。
各帯電ローラ4と各感光体2との間には、この露光器7により照射するレーザ光Lが感光体2に向けて入り込むように、細長いスペースが感光体2の回転軸の方向に確保されている。
図3に示す露光器7は、レーザ光源、ポリゴンミラー等を用いたレーザスキャン方式の露光装置であり、不図示の4個の半導体レーザから、形成すべき画像データに応じて変調したレーザ光Lを発する。
露光器7は金属または樹脂製の筐体により、光学部品、制御用部品を収納し、下面の出射口には、透光性の防塵部材を備えている。
なお、図3に示す露光器7は1個の筐体で構成されているが、複数の露光装置を各作像部に個別に設けることもできる。また、レーザ光を採用する露光装置のほかに、公知のLEDアレイと結像手段とを組合せた露光装置も採用できる。
シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色トナーは、各色を扱う現像装置5C,M,Y,Kで消費されると、不図示のトナー検知手段により検知される。そして、プリンタ内に備える各色のトナーを収納している不図示の4つのトナーボトルから、不図示のトナー補給手段により、各現像装置5C,M,Y,Kに供給される。
現像装置5C,M,Y,Kに設けられた現像ローラは、ステンレス鋼やアルミニウム製の円筒を有し、回転可能に、かつ、感光体2C,M,Y,Kとの距離が正規に確保されるように、現像装置5C,M,Y,Kのフレームに支持されている。また、現像ローラの内部には、所定の磁力線が構成されるようにマグネットが設けられている。
レーザ光Lにより各感光体2K,2Y,2M,2Cの表面に形成された色毎の静電潜像は、各色に対応した現像装置5C,M,Y,Kによりトナーで現像され顕像となる。
感光体2C,M,Y,Kの下方には、転写装置15が配設されている。この転写装置15は、無端状のベルト部材である中間転写ベルト16を有しており、中間転写ベルト16は従動ローラ17と駆動ローラ18とに巻き掛けられている。
そして不図示の駆動源によって駆動される駆動ローラ18が回転することによって、中間転写ベルト16が図3中矢印方向に回転し、現像ローラとの対向部を通過したあとの各感光体2の表面が、中間転写ベルト16のおもて面に接触するようになっている。
中間転写ベルト16の内周部には、中間転写ベルト16を介して各感光体2に対向させた4つの一次転写ローラ19Y,C,M,Kが設けられている。
中間転写ベルト16の駆動ローラ18近傍の外周部には、中間転写ベルト16のおもて面をクリーニングするベルトクリーニング装置21が設けられている。このベルトクリーニング装置21は、中間転写ベルト16のおもて面に残留する不要なトナーや、紙粉などの異物を除去するためのものである。
中間転写ベルト16としては、例えば、厚さが50[μm]〜600[μm]の樹脂フィルムまたはゴムを基体とするベルト部材を使用することができる。当該ベルト部材は、各感光体2が担持するトナー像を、各一次転写ローラ19にバイアスを印加することにより、ベルト表面に転写できるような抵抗値を有する。
一次転写ローラ19は、例えば芯金たる金属ローラの表面に導電性ゴム材料を被覆したもので、芯金に不図示の電源からバイアスが印加される。前記導電性ゴム材料は、例えばウレタンゴムにカーボンが分散されたもので、体積抵抗105[Ω・cm]程度に抵抗が調整されている。なお、一次転写ローラ19としては、ゴム層を有さない金属ローラも採用可能である。
中間転写ベルト16を挟んで駆動ローラ18と対向する位置には、二次転写ローラ20が設けられている。二次転写ローラ20は、例えば芯金たる金属ローラの表面に導電性ゴムを被覆したもので、芯金に電源からバイアスが印加される。前記導電性ゴムにはカーボンが分散されており、体積抵抗は107[Ω・cm]程度に抵抗が調整されている。
二次転写ローラ20は、駆動ローラ18と対向する位置で中間転写ベルト16に当接し、二次転写部としての二次転写ニップを形成している。二次転写ニップでは、中間転写ベルト16と二次転写ローラ20との間に用紙Pを通過させながらバイアスを印加することで、中間転写ベルト16のおもて面に担持されたトナー画像が、用紙Pに静電的に転写される。
中間転写ベルト16と給紙トレイ30との間には、廃トナーを収容する粉体収容器10が配設されている。この粉体収容器10には、ベルトクリーニング装置21により中間転写ベルト16から除去されたトナーなどが不図示の搬送路を搬送されて収納される。
本実施形態のプリンタでは、給紙トレイ30と二次転写ローラ20との間の上下方向の間隔を、その間にガイド55,56やレジストローラ対32を配設する関係で、ある程度大きく設定する必要がある。このため、中間転写ベルト16と給紙トレイ30との間にデッドスペースができるが、このデッドスペースに粉体収容器10を設置することで、当該デッドスペースを有効利用し、プリンタ全体の小型化を図っている。
給紙トレイ30の内部には、複数枚の用紙Pを積層状態で載せるための底板46が配設されている。この底板46は図3の左端が不図示の支軸によって回動自在に支持され、右端が上下方向に揺動可能とされている。また、底板46は不図示のバネの力で常時上方に付勢されている。
給紙トレイ30の用紙搬送方向下流側の上部には、給紙ローラ47が配設されている。この給紙ローラ47は底板46上に載置された用紙Pの束の最上部に当接し、この最上部の用紙Pを、用紙搬送方向下流側の搬送路31に向けて繰り出すことができるようになっている。
なお、給紙ローラ47は用紙Pを搬送路31に向けて搬送する機能があればよく、必ずしもローラの形態である必要はない。例えば、給紙ローラ47に代えて、2つのローラ間に掛け渡した無端状の回転ベルトを使用してもよい。
搬送路31の用紙搬送方向下流側の末端付近には、用紙Pを一旦停止させるレジストローラ対32が配設されている。
このレジストローラ対32は、二次転写ニップの用紙搬送方向上流側で近傍に位置しており、中間転写ベルト16上のトナー像と、用紙先端位置とを精度良く合わせるために、用紙Pを一旦停止させて当該用紙Pを一時的に弛ませる。そして、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が二次転写ニップに到達する直前に、一旦停止させていた用紙Pを所定のタイミングで二次転写ニップに送り出す。
図2に示すように、全ての操作指示を行うための操作部がプリンタ手前側に設けられた、フルフロントオペレーションタイプのプリンタでは、中間転写ベルト16のプリンタ手前側に、両面印刷時に用紙Pを反転させるための両面ユニット9を配置する場合が多い。
このため、二次転写ローラ20やレジストローラ対32のプリンタ手前側には、スペース的な余裕が少ない。そこで、本実施形態のプリンタでは、二次転写ローラ20やレジストローラ対32のニップを斜め方向に配置して省スペース化を図っている。
特に、二次転写ローラ20の圧縮バネ25は大型であるため、斜め方向に配置することで両面ユニット9のデッドスペースを有効利用し、プリンタの前後方向の省スペース化を図ることができる。
レジストローラ対32は、中間転写ベルト16の駆動ローラ18よりもプリンタ奥側に配設されている。このため、レジストローラ対32の転写カバー側ローラは、開閉カバー8に対して図3に示す位置のままでは開閉カバー8を開く際に、その回転軌跡A2が駆動ローラ18と干渉する。
すなわち、開閉カバー8の回転軸12を中心とする半径R2の回転軌跡A2が、駆動ローラ18と干渉する。この干渉を回避するため、レジストローラ対32の転写カバー側ローラは、開閉カバー8を開く途中で、図示しない退避機構により回転軌跡A2の半径方向内側に揺動するように構成されている。
二次転写ニップの上方には、転写後搬送路33が配設されており、この転写後搬送路33の用紙搬送方向下流側の末端付近には定着装置34が設けられている。
定着装置34は、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ34aと、この定着ローラ34aに対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ34bとを備えている。なお、定着装置としては、無端状の回転ベルトを採用したものや、IH加熱方式など他の構成も可能である。
定着装置34の上方には、定着後搬送路35が配設されており、この定着後搬送路35の途中で排紙路36と反転搬送路41とに分岐しており、この分岐点に揺動軸42aを中心に揺動する切替部材42が配設されている。
排紙路36の用紙搬送方向下流側の末端には、用紙Pをプリンタ内部から外に排出する排出手段としての排紙ローラ対37が配設されている。
切替部材42を図3に示す実線の位置に位置させることで、定着装置34により定着が終了した用紙Pが定着後搬送路35から排紙路36に案内され、排紙ローラ対37により排紙トレイ45上に排紙しスタックさせる。
また、用紙Pのおもて面と裏面との両面に画像を形成する両面印刷においては、片面の定着を終了した用紙Pの後端が切替部材42を通過した後、切替部材42を図3に示す実線の位置から図中反時計まわり方向に回動させて破線の位置に位置させる。そして、排紙ローラ対37を逆回転させると、用紙Pが切替部材42にガイドされて反転搬送路41に案内され、搬送ローラ対43,44などにより再度、レジストローラ対32に送られる。
次に、このプリンタの基本動作について説明する。まず、用紙Pの片面だけに画像を形成する片面印刷時の動作について説明する。
図3において、図示しないプリンタの制御部からの搬送信号により給紙トレイ30の給紙ローラ47が回転すると、給紙トレイ30の底板46上に積載された用紙Pの最上部の用紙Pのみが、その下側の用紙Pから分離されて搬送路31へ送り出される。
そして、用紙Pの先端がレジストローラ対32のニップ部に到達すると、中間転写ベルト16上に形成されるトナー画像とタイミング(同期)をとり、かつ、用紙Pの先端スキューを補正するため、用紙Pに弛みを形成した状態で待機する。
ここで、プリンタの作像動作をプロセスユニット1Kを例に挙げて説明する。まず、感光体2Kの表面が帯電ローラ4Kによって均一な高電位に帯電される(マイナス帯電)。この感光体2Kの表面に対して、画像データに基づいて露光器7からレーザ光Lが照射され、感光体表面のレーザ光Lが照射された部分の電位が低下することで、感光体2Kの表面に静電潜像が形成される。
現像装置5の現像ローラの外周面に担持されたブラックトナーは、感光体2Kの表面の静電潜像に静電吸着され、当該静電潜像がトナーで現像されて可視像となる。この可視像が、感光体2Kと同期して回転する中間転写ベルト16の表面に対し、プラスに帯電された一次転写ローラ19による転写作用を受けて一次転写される。
このような潜像形成、現像、一次転写の各動作は、すべてのプロセスユニット1C,M,Y,Kで画像データと対応してタイミングをとって順次行われる。
この結果、中間転写ベルト16の表面上に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色トナー画像が順次重なり合った4色トナー画像が担持される。そして、この4色トナー画像が、図2中矢印方向に回転する中間転写ベルト16と共に搬送される。
ドラムクリーニング装置3Kは、感光体2Kから中間転写ベルト16にトナー画像を転写した後の感光体表面に付着している残留トナーを除去する。ドラムクリーニング装置3Kにより感光体2Kから除去された残留トナーは、不図示の廃トナー搬送手段によって、プロセスユニット1K内にある不図示の廃トナー収容部へ送られ回収される。また、図示しない除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによりクリーニングされた後の感光体表面は、不図示の除電装置により残留電荷が除電される。
以上のように各色トナー画像が中間転写ベルト16に転写されると、レジストローラ対32と給紙ローラ47とが駆動を開始し、中間転写ベルト16に転写されたトナー画像とタイミング(同期)をとって、用紙Pが二次転写ニップに送られる。
二次転写ローラ20はプラスに帯電されており、二次転写ニップへ送られてきた用紙Pに中間転写ベルト16上のトナー画像が静電的な力によって転写される。
中間転写ベルト16の表面の残留トナーや異物は、次の作像工程や転写工程のためにベルトクリーニング装置21によって除去される。中間転写ベルト16から除去されたトナーや異物は、不図示の廃トナー搬送手段によって不図示の搬送経路内を搬送され、粉体収容器10に送り込まれ粉体収容器10に収容される。
二次転写ニップでトナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置34へと搬送される。定着装置34に送り込まれた用紙Pは、定着ローラ34aと加圧ローラ34bとの間に挟まれ、その未定着トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、定着装置34から定着後搬送路35へ送り出される。
定着装置34から用紙Pを送り出したタイミングでは、切替部材42は図2に示す実線の位置にあり、定着後搬送路35の用紙搬送方向下流側の末端付近を開放している。用紙Pは、定着後搬送路35を通過した後、排紙ローラ対37に挟み込まれ、排紙トレイ45へ画像面が下向き(フェースダウン)で排出される。
次に、プリンタで、用紙Pの両面に画像を形成する両面印刷時の動作について説明する。なお、用紙Pの片面に画像を定着させて、定着装置34から定着後搬送路35に用紙Pを送り出すまでの工程は、上述した片面印刷時と同様のため、その説明は省略する。
両面印刷を行う場合は、片面にトナー画像が定着され排紙ローラ対37によって搬送される用紙Pの後端が、定着後搬送路35を通り抜けると、切替部材42が図3に示す点線の位置に揺動し、定着後搬送路35の用紙搬送方向下流側の末端付近が閉鎖される。これとほぼ同時に、排紙ローラ対37が逆回転し、用紙Pが逆送されて切替部材42にガイドされながら反転搬送路41へ進入する。
反転搬送路41を搬送される用紙Pは、搬送ローラ対43,44などを経てレジストローラ対32に至り、中間転写ベルト16上に形成された裏面用のトナー画像とタイミングを合わせて送り出される。
用紙Pの裏面に形成すべき画像は、用紙Pが所定のところまで搬送された時に開始される作像工程により順次形成される。この場合の作像工程もまた前述の片面印刷時のフルカラートナー画像形成と同様であり、このフルカラートナー画像を中間転写ベルト16上に担持させる。
ただし、用紙Pは反転搬送路41で用紙搬送方向の前後が反転されているため、最初に作像されたときに対し、用紙搬送方向で逆から作像されるよう、露光器7からレーザ光Lを感光体表面に照射し静電潜像の作成が制御、実行される。
レジストローラ対32から送り出された用紙Pは、二次転写ニップを通過する際に、その裏面に中間転写ベルト16上のトナー画像が転写される。用紙Pの裏面のトナー画像が定着装置34によって定着された後、定着後搬送路35、排紙路36、排紙ローラ対37を順次経由して排紙トレイ45へ排出される。
なお、プリントは両面印刷の効率を上げるために、搬送路31内で数枚の用紙Pを同時に搬送することができる。
また、図3に示すように装置本体の図中右側面には、手差しトレイ69が図中矢印方向に開閉可能に設けられており、この手差しトレイ69を開放することにより、そこから手差し給紙ができるようになっている。
図4は手差しトレイ69から用紙を給紙する手差し給紙装置の断面図である。
手差し給紙装置には、手差しトレイ69上に積載された用紙Pを給紙するための給紙ローラ61が設けられている。
また、積載された用紙Pを給紙ローラ61に圧接させる圧接位置と当該圧接位置から退避した退避位置との間で、手差しトレイ69の給紙方向上流側に設けられた不図示の回動軸を中心に回動可能な底板62が手差しトレイ69に設けられている。
手差しトレイ69と底板62との間には、底板62を給紙ローラ61に向かって付勢する付勢手段であるスプリング63が設けられており、用紙Pの積載量によらず常にスプリング63によって給紙ローラ61に向かって付勢されている。
底板62よりも給紙方向下流側で給紙ローラ61の下面に接触し給紙される用紙Pを1枚ずつに分離する摩擦部材64が、用紙Pの搬送をガイドする搬送ガイド部材68に位置決めされた保持部材65の給紙方向上流側端部の上面に設けられている。
保持部材65の給紙方向上流側端部は、スプリング66からの押圧力によって給紙ローラ61に向かって付勢されており、保持部材65に設けられた摩擦部材64と給紙ローラ61とを圧接させている。これにより、給紙ローラ61と摩擦部材64との圧接部に底板62から用紙Pが送りこまれた際に、用紙Pに対して一定の摩擦力をかけることができる。
また、給紙ローラ61と摩擦部材64との圧接部に2枚の用紙Pが重なって送られた場合でも、前記摩擦力により用紙Pを1枚に分離して搬送することができる。1枚に分離された用紙Pは、搬送ガイド部材68によってガイドされながら搬送される。
また、手差しトレイ69は、開閉カバー8に対して不図示の回動軸を中心に回動可能に保持されている。そして、手差し給紙使用時には開閉カバー8に対して手差しトレイ69を開放した開放状態とし、手差し給紙を使用しない場合は、開閉カバー8に手差しトレイ69を収納することが可能である。なお、開閉カバー8に手差しトレイ69を収納した場合、手差しトレイ69に軸支されている底板62も開閉カバー8に収納される。
図5は手差し給紙終了後における手差し給紙装置の断面図である。
給紙ローラ61による底板62からの用紙給紙動作を実施している間は、給紙ローラ61によって用紙Pに搬送力を付与する必要がある。そのため、図4に示すように、底板62を圧接位置に位置させ、底板62上の用紙Pを給紙ローラ61に圧接させておく。一方、用紙給紙動作が終了した後は、ユーザーが用紙Pを手差しトレイ69に補給することを考慮して、図5に示すように底板62を圧接位置から退避位置に底板62を退避させ、底板62上の用紙Pと給紙ローラ61との圧接を解除する。
なお、前述したように底板62にはスプリング63により常に給紙ローラ61に向かって付勢され加圧力がかかっているので、給紙ローラ61の回転軸である給紙ローラ軸70に回転可能に支持されたカム71を回転動作させ、底板62にカム71を当接させる。これにより、スプリング63からの付勢に抗して底板62がカム71によって押し下げられ、底板62を給紙ローラ61から退避させることができる。
また、図4に示すように用紙給紙時では、底板62が圧接位置から退避して給紙ローラ61により用紙Pに与える搬送力を損なわれないようにするため、カム71と底板62とが接触しない姿勢でカム71を停止させておく。
すなわち、カム71は、底板62に接触せず底板62を圧接位置に位置させる上昇位置と、底板62が圧接位置から退避し底板62上に用紙Pの補給が可能となる下降位置との、2種類の位置で停止させる構成となっている。
なお、図5の紙面奥行き方向において、手差し給紙装置で対応しうる最大の用紙幅よりも外側で、底板62にカム71を接触させており、底板62上に積載された用紙Pとカム71とが接触しないようにしている。
図1は手差し給紙装置の斜視図である。
給紙ローラ61は給紙ローラ軸70に対してDカットまたはピンなどで回転止めされており、手差し給紙装置の側板(図示せず)に片持ちで軸受(不図示)を介して支持されている。
給紙ローラ軸70の給紙ローラ61側とは反対側の端部には、給紙ローラ軸70への駆動の伝達や遮断を切り替え可能な電磁クラッチである給紙クラッチ72が回転止めされた状態で設けられている。そして、複数のアイドルギヤを介して駆動源である駆動モータ85から駆動力が供給される。
給紙ローラ軸70の給紙クラッチ72の近傍には、カム71aが回転止めのない状態で設けられており、給紙ローラ61の回転と同期せずにカム71aが独立して回転可能となっている。
カム71aにはギヤ73がカップリング連結または一体成型されており、駆動モータ85からの駆動力が、ギヤ76、電磁クラッチである底板クラッチ75、ギヤ74の順でギヤ73に伝達されることで、カム71aが回動する。なお、駆動モータ85からギヤ76への駆動力の伝達は、複数のアイドルギヤを介して行われる。
また、底板クラッチ75は、底板昇降軸40の端部に回転止めされて設けられており、底板クラッチ75を連結状態にした場合、底板昇降軸40の底板クラッチ75とは反対側の端部に設けられたギヤ77が回転する。
このギヤ77は、カム71bとカップリング連結または一体成型されたギヤ78と噛み合っており、ギヤ77が回転することでギヤ78を介してカム71bに駆動が伝達される。
ここで、ギヤ76からカム71a及びカム71bの減速比が同一となるように、ギヤ73、ギヤ74、ギヤ77及びギヤ78を構成しておく。これにより、底板クラッチ75を連結状態にすると、カム71aとカム71bとを同一の回転数で回転させることができる。
さらに、カム71aとカム71b、及び、各ギヤや底板クラッチ75などの組付け時に、カム71aとカム71bとの位相(姿勢)を合わせておくことで、カム71aとカム71bとを常に同一の位相で回転させることができる。
この駆動構成により、給紙ローラ61と底板62の昇降機構部との駆動が同一駆動源であった場合でも、給紙ローラ61と底板62の昇降機構部とのそれぞれを独立のタイミングで駆動制御が可能となる。
また、底板62上の用紙Pの有無を検知する紙有無検知手段84が設けられている。紙有無検知手段84は、装置本体に設けられた不図示の軸に回転自在に支持されたフィラー84aと、不図示の光学センサとで構成されている。
底板62上に積載された用紙Pとフィラー84aとが接した状態では、光学センサの受光部が発光部からの光を受光し、「紙有り」が検知される。一方、底板62上に用紙Pが積載されておらず底板62とフィラー84aとが接した状態では、光学センサの発光部からの光をフィラー84aが遮り、受光部が光を受光しなくなって、「紙無し」が検知される。
図6は、底板位置検知手段を示した手差し給紙装置の斜視図である。
底板62はカム71a及びカム71bの回転により昇降動作が可能となるが、前述の通り、底板62が上昇位置と下降位置となる位相にてカム71a及びカム71bを停止させる必要がある。
図1に示す底板昇降機構の構成においては、底板クラッチ75の連結時間によって、前記位相を制御することは可能である。一方で、カム71a及びカム71bの停止位置の精度をより高めるためには、図6に示すように底板62の位置を検知する底板位置検知手段を設けるのが望ましい。
図6では、底板位置検知手段として、ギヤ78近傍に透過型センサである底板位置検知センサ79と底板位置検知フィラー80とを配置している。
底板位置検知センサ79は手差し給紙装置本体(不図示)に固定されており、底板位置検知フィラー80は手差し給紙装置本体(不図示)に回動可能に支持されている。
ギヤ78の軸方向外側の側面には、底板位置検知フィラー80に接離可能な半円筒型リブ81が一体で設けられている。
図7は底板上昇時における底板位置検知部の詳細説明図である。図8は底板下降時における底板位置検知部の詳細説明図である。
底板位置検知フィラー80は、回動軸80sを中心に回動可能であり、トーションスプリング等の押圧手段(不図示)によって、図7中反時計回りに常時トルクが付与されており、フィラー突き当てリブ82に当接して待機する。
このとき、底板位置検知フィラー80の先端は、底板位置検知センサ79の検知部83を遮光状態とする位置にある。この遮光状態では、底板位置検知フィラー80と半円筒型リブ81とは接触しておらず、カム71bも底板62と接触していない。
ここから底板クラッチ75を連結し、ギヤ78を図中時計回りに回転させると、底板位置検知フィラー80と半円筒型リブ81とが接触し始める。これに連動し、底板位置検知フィラー80が回動軸80sを中心に図中時計回りに回動し、ある特定の位相にて、図8に示すように底板位置検知フィラー80の先端が底板位置検知センサ79の検知部83から退避して検知部83を透過状態にする。
底板位置検知センサ79の検知信号により、底板62が上昇した位置である底板上昇状態か、底板62が下降した位置である底板下降状態かを判断する。すなわち、図7に示すように検知部83が透過状態から遮光状態に切り換わったタイミングを底板上昇状態と判断する。一方、図8に示すように検知部83が遮光状態から透過状態に切り換わったタイミングを底板下降状態と判断する。そして、この判断タイミングで底板クラッチ75をOFFすることにより、カム71a及びカム71bの停止位置の精度を確保することができる。
また、部品寸法のばらつきや、底板位置検知センサ79及び底板クラッチ75の応答性などにより、カム71a及びカム71bの停止位置に誤差が生じる可能性がある。これに対し、底板位置検知センサ79の検知情報から底板クラッチ75をOFFする時間を制御的に調整することで、カム71a及びカム71bの停止精度をさらに向上させることが可能となる。
図9は、本実施形態に係る手差し給紙装置の給紙動作及び底板昇降動作の制御を示すフローチャートである。
本実施形態に係る手差し給紙装置では、プリンタに設けられた制御部によって、給紙動作と底板昇降動作とは独立に制御可能となっている。そして、底板位置検知センサ79の検知結果と、底板62上の用紙Pの有無を検知する紙有無検知手段84の検知結果とに基づいて、駆動源である駆動モータ85と給紙クラッチ72と底板クラッチ75とを制御する。
まず、パーソナルコンピュータからドライバを用いて、紙厚や紙サイズや枚数等を指定して、手差し給紙の印刷指示を出すことにより印刷動作が開始される(S1)。次に、紙有無検知手段84にて底板62上の用紙Pの有無を検知し、その検知結果に基づいて底板62に用紙Pが積載されているかを判断する(S2)。
底板62に用紙Pが積載されていない場合は(S2でNO)、画像形成装置に設けられた表示パネルに「紙無し」であることを通知して、底板62に用紙Pが積載されるまで待機する(S4)。
底板62に用紙Pが積載されている場合は(S2でYES)、底板位置検知センサによって底板62の位置を検知し、底板62が上昇位置にいるのか、下降位置にいるのかを判断する(S3)。
底板62が上昇位置にいる場合は(S3でNO)、給紙可能な状態である。そのため、駆動モータ85をONし駆動させ(S6)、給紙クラッチ72をONし(S10)、駆動モータ85から給紙ローラ軸70に駆動を伝達して給紙ローラ61を回転させ給紙動作を開始する。
底板62が下降位置にいる場合は(S3でYES)、給紙可能な状態にするために底板62を上昇位置まで上昇させる。そのため、駆動モータ85をONし駆動させ(S5)、底板クラッチ75をONし(S7)、駆動モータ85から底板昇降軸40に駆動を伝達して、各ギヤを介してカム71a及びカム71bを回動させる。
その後、底板位置検知フィラー80の先端が底板位置検知センサ79の検知部83を遮光して底板位置検知センサ79をOFFしてから(S8)、所定時間Tu秒後に底板クラッチ75をOFFして(S9)、底板昇降軸40への駆動伝達を遮断する。これにより、底板62の下降位置から上昇位置までの上昇が完了する。
ここで、所定時間Tuとは、底板位置検知センサ79による検知タイミングからカム71が上昇位置の位相となるまでのレイアウトによって定まる時間差である。
底板62が上昇位置に位置したら、給紙クラッチ72をONし(S10)、駆動モータ85から給紙ローラ軸70に駆動を伝達して給紙ローラ61を回転させ給紙動作を開始する。
ここで、印刷動作の開始時(S1)に、複数枚の印刷を行う指示が出されている場合は、印刷動作シーケンスに基づき、指定枚数分の連続給紙動作を実行する(S11)
そして、指定枚数分の印刷が終了した後は(S12)、既に次の印刷指示が来ているかを判断する(S19)。次の印刷指示が来ている場合は(S19でYES)、底板62を上昇位置に位置させたまま、次の給紙動作を開始する(S10)。一方、次の印刷指示が来ていない場合は(S19でNO)、底板クラッチ75をONし(S15)、駆動モータ85から底板昇降軸40に駆動を伝達して、各ギヤを介してカム71a及びカム71bを回動させて底板62を下降させる。
底板位置検知フィラー80の先端が底板位置検知センサ79の検知部83から退避して検知部83が透過し底板位置検知センサ79がONされてから(S16)、所定時間Td秒後に底板クラッチ75をOFFして(S17)、底板昇降軸40への駆動伝達を遮断する。これにより、底板62の上昇位置から下降位置までの下降が完了する。また、駆動モータ85もOFFし(S18)、駆動を停止させて印刷終了となる(S20)。
ここで、所定時間Tdとは、底板位置検知センサ79による検知タイミングからカム71が下降位置の位相となるまでのレイアウトによって定まる時間差である。
また、連続給紙動作を実行した際に(S11)に、印刷指示の枚数が終了する前に紙無しとなる場合や、ジャムが発生する場合がある。
紙有無センサが紙無しを検知しOFFとなったら(S14)、底板クラッチ75をONし(S15)、駆動モータ85から底板昇降軸40に駆動を伝達して、各ギヤを介してカム71a及びカム71bを回動させて底板62を下降させる。
そして、底板位置検知フィラー80の先端が底板位置検知センサ79の検知部83から退避して検知部83が透過しS16で底板位置検知センサ79がONされてから(S16)、所定時間Td秒後にS17で底板クラッチ75をOFFする(S17)。これにより、底板昇降軸40への駆動伝達を遮断され、底板62の上昇位置から下降位置までの下降が完了する。また、駆動モータ85もOFFし(S18)、駆動モータ85の駆動を停止させる。
その後、画像形成装置に設けられた表示パネルにて「紙無し」であることを通知し(S4)、底板62に用紙Pが積載されるまで待機する。そして、用紙Pが補給され底板62に用紙Pが積載された場合は、また印刷動作を実行する。
また、連続給紙動作を実行した際に(S11)に、ジャムが発生した場合は(S13)、給紙クラッチ72をOFFし、駆動モータ85から給紙ローラ軸70への駆動を遮断して給紙ローラ61を停止させる(S21)。
そして、底板クラッチ75をONし(S15)、駆動モータ85から底板昇降軸40に駆動を伝達して、各ギヤを介してカム71a及びカム71bを回動させて底板62を下降させる。
その後、底板位置検知フィラー80の先端が底板位置検知センサ79の検知部83から退避して検知部83が透過しS16で底板位置検知センサ79がONされてから(S16)、所定時間Td秒後にS17で底板クラッチ75をOFFする(S17)。これにより、底板昇降軸40への駆動伝達を遮断され、底板62の上昇位置から下降位置までの下降が完了する。また、駆動モータ85もOFFし(S18)、駆動モータ85の駆動を停止させる。
その後、画像形成装置に設けられた表示パネルにてジャムが発生したことを通知し(S22)、ユーザーにジャム処理を促す。
上述したように、本実施形態に係る手差し給紙装置の給紙動作及び底板昇降動作の制御では、連続給紙動作を実行する際に、底板62を常に上昇位置に位置させ用紙Pと給紙ローラ61とを当接させる底板常接方式を採用している。これにより、底板62の昇降回数を最小限にできるため、連続給紙動作を実行する際に用紙1枚ごとに底板62を昇降させ給紙ローラ61と用紙Pとを離間させる底板昇降方式に比べて騒音を低減させることができる。
一方、底板昇降方式にも底板常接方式に対してメリットがある。底板常接方式は、給紙動作中に常に底板62から押圧力が付与されている。そのため、用紙間の摩擦力や帯電などによる密着力が高い用紙や、用紙間の摩擦力のバラつきが大きい用紙Pなどを用いた場合、用紙Pが多数枚重なった束の状態で給紙ローラ61と摩擦部材64との圧接部に進入しやすくなる。
給紙ローラ61と摩擦部材64との圧接部では、2枚の用紙Pが重なった状態で進入した場合に分離することは可能であるが、3枚以上の用紙Pが重なった状態で進入した場合には分離できない。
特に、近年需要が高まっているコート紙や耐水紙、ラベル紙などの特殊紙がこれに該当し、摩擦部材64を用いたフリクションパッド分離方式では、これらの特殊紙の分離性能を確保することが課題となっている。
これに対し、底板昇降方式では、給紙ローラ61にて用紙Pを給紙(繰り出した)直後に底板62を下降させるため、給紙ローラ61よりも用紙搬送方向下流側へ用紙Pを搬送しているときは圧が付与されていない。よって、搬送されている用紙Pによって、底板62に積載され待機している最上部の用紙Pが、搬送されている用紙Pとの摩擦力や密着力により一緒に連れ出される確率が極端に低くなる。
よって、特殊紙の分離性能を確保する上では、底板昇降方式のほうが底板常接方式より優れていると言える。
そこで、本実施形態の手差し給紙装置では、用紙Pの分離性能に懸念がない印刷条件では騒音を考慮し底板常接方式にて動作させ、用紙Pの分離性能に懸念がある印刷条件では底板昇降方式に切り替えて動作させるよう前記制御部により制御を行う。
すなわち、複数枚の用紙Pが重なり合ったまま給紙ローラ61と摩擦部材64との圧接部である分離ニップよりも用紙搬送方向下流側に搬送される重送の発生を予測するための情報に基づいて、前記制御部により、重送が発生するか否かを予測する。そして、重送が発生すると予測されない場合には、底板常接方式にて給送動作を行う。一方、重送が発生すると予測される場合には、底板昇降方式にて給送動作を行う。
前述の通り、図1に示す駆動構成では、給紙ローラ61の駆動と底板62の昇降駆動とを独立に制御できるので、底板昇降方式と底板常接方式とのどちらの動作も実施可能である。
底板昇降方式と底板常接方式との動作の差を説明するために、図10に本実施形態における手差給紙部からレジスト部までの搬送レイアウトを示す。
給紙ローラ61により底板62上から搬送された用紙P1は、搬送ガイド部材68a,68b,68eにガイドされながら、回転駆動している搬送ローラ対44により搬送される。その後、搬送ガイド部材68c,68d,68fにガイドされながら用紙P1が搬送され、停止しているレジストローラ対32のニップに用紙P1の先端が到達する。
なお、搬送ガイド部材68dには、反射型センサであるレジストセンサ88が設けられており、用紙P1の先端を検知できる。用紙P1はレジストセンサ88にて先端が検知されてから所定時間搬送され、給紙ローラ61及び搬送ローラ対44の駆動を停止によって、停止しているレジストローラ対32のニップに先端が突き当てられ、斜行補正が可能となる。
レジストローラ対32よりも用紙搬送方向下流側には、前述したように中間転写ベルト上のトナー画像を用紙Pに転写する二次転写ニップが位置しており、転写のタイミングに合わせて、給紙ローラ61や搬送ローラ対44やレジストローラ対32を駆動する。
このとき、底板常接方式では、搬送されている用紙P1と、底板62で待機している用紙P2との接触面に対して、スプリング63による底板62から給紙ローラ61に向かった加圧力が常に付与されている。
これに対し、底板昇降方式では、底板62から給紙ローラ61と摩擦部材64との圧接部に用紙P1が搬送されるわずかな時間だけ底板62を上げておき、その後は底板62を下降させる。
このとき、レジストローラ対32が駆動してから用紙P1の後端が給紙ローラ61を抜けるまでの時間は、用紙P1の長さと、給紙ローラ61からレジストローラ対32までの搬送距離とから算出できる。そして、該当するタイミングで、また底板62を上昇させることにより、用紙P2の給紙を開始することができる。
次に、底板昇降方式による底板昇降動作と、底板常接方式による底板常接動作との切り替え処理について説明する。
パーソナルコンピュータからドライバを用いて、手差し給紙の印刷指示を出すことにより印刷動作が開始する際に、用紙Pの種類をドライバで選択する。このとき、特殊紙モードを選択し、かつ、複数枚印刷する場合は、底板昇降方式にて底板62の動作を制御する。また、底板昇降方式にて底板62の動作を制御するように、画像形成装置に設けられた操作パネルからユーザーが直接指示することも可能である。これにより、連続給紙動作時に底板62の昇降動作を必要最小限で実行でき、騒音による不快感を減らすことができる。
一方、特殊紙に限定しない場合でも、上述したような重送しやすい条件がある。例えば、粗悪紙であったり、保管状態の悪い紙や裏紙であったり、また、外気に近い劣悪な環境での装置使用などである。
この場合、ドライバを用いた印刷指示だけでは底板昇降方式と底板常接方式とのどちらを実行するか判断できず重送を抑えることができない。そこで、ドライバの印刷指示に関わらず、自動で重送しやすい条件と認識し、底板昇降方式と底板常接方式とを切り替える方法について説明する。
重送の自動認識手段としては、レジストセンサ88にて検出可能な用紙Pの給紙時間T1を利用する。レジストセンサ88にて検出された給紙時間T1に対し、ある条件式にて給紙時間T1を判定する。そして、重送しやすいと判断されれば、底板常接方式による底板常接動作から、底板昇降方式による底板昇降動作に切り替える。このときの給紙時間T1の定義については、下記2つの例を挙げる。
<例1>
給紙時間T1:給紙クラッチON〜レジストセンサON
<例2>
給紙時間T1:レジストセンサOFF(先行紙)〜レジストセンサON(後行紙)
図11は、連続給紙中の手差し給紙装置の断面図である。なお、図11において、給紙ローラ61と摩擦部材64との圧接部を分離ニップ89とし、給紙ローラ61と底板62との圧接部を給紙ニップ90とする。
図11では、先行紙である用紙P1の後端は、分離ニップ89を抜けており、この時点で給紙クラッチ72をOFFし、給紙ローラ61は停止している。
後行紙である用紙P2の先端は、用紙P1の給紙が終わり、給紙ローラ61が停止するまでの間、摩擦部材64が用紙P2へ付与する摩擦力によって、分離ニップ89よりも用紙搬送方向上流側で待機していることが望ましい。
ところが、給紙ニップ90にて用紙P1と用紙P2との間に生じる摩擦力や密着力により、図11に示すように分離ニップ89よりも用紙搬送方向下流側まで用紙P2の先端が連れ出される場合がある。
すなわち、用紙間の摩擦力や密着力に対して摩擦部材64の摩擦力が小さくなる場合に、このような挙動を示すので重送しやすい用紙Pの挙動であると言える。そして、このような挙動の場合を判別する方法として、図10に示したレジストセンサ88を利用する。
用紙P1の給紙が終わって用紙P2の給紙が開始されるときに、図11に示すように用紙P2の先端が、分離ニップ89よりも用紙搬送方向下流側に位置する場合、分離ニップ89に位置する場合よりも、用紙P2の先端がレジストセンサ88に早く到達する。
すなわち、給紙クラッチ72をONしてから、レジストセンサ88にて用紙P2の先端を検知する時間が短いほど重送しやすい用紙Pの挙動となる。よって、上記例1では、給紙時間T1を「給紙クラッチON〜レジストセンサON」と定義している。
また、本実施例では、先行紙である用紙P1の後端と、後行紙である用紙P2の先端とは、所定の紙間距離で搬送するよう給紙クラッチ72のOFFから給紙クラッチ72のONまでの時間を制御しているが、用紙P2の待機位置を検知する手段がない。そのため、理想の停止位置である分離ニップ89よりも用紙搬送方向下流側に用紙P2の先端が位置する場合には、紙間距離が狙いより短くなってしまう。
そして、紙間距離が短い状態で用紙P1と用紙P2が搬送されると、レジストセンサ88にて用紙P1の後端を検知してから、用紙P2の先端を検知するまでの時間も理想時間より短くなる。よって、上記例2では、給紙時間T1を「レジストセンサOFF(先行紙)〜レジストセンサON(後行紙)」と定義している。
このように上記例1と上記例2とのいずれかで定義された給紙時間T1に対して、給紙動作1枚ごとに給紙時間T1を計測する。そして、給紙時間T1が、予め実験により定めた重送が発生しやすい時間Tkより小さい値をとった場合、次紙より底板常接動作から底板昇降動作に切り替え、その後の給紙動作は全て底板昇降動作にて制御する。
すなわち、n枚目の給紙時間T1をTnとすると、数1のような場合、n+1枚目から底板昇降動作にて制御する。
重送しやすい状態は、底板62に積載されている用紙P全てに対して想定されるので、底板昇降動作は紙有無検知手段84にて紙無しを検知するまで、または、プリンタの電源がOFFされるまで継続される。
また、時間Tkは、ドライバで指示する用紙Pの種類やサイズ、手差し給紙装置に設けられた温度湿度センサから検出される雰囲気の温度や湿度などの組合せによって異なる値とし、予めテーブルを用意しておくことも可能である。
本実施形態における給紙時間の推移や底板動作の切り替えについて図12に示す。
図12では横軸に通紙枚数、縦軸に上記例1に挙げた給紙時間T1(n枚目ではTn)として、給紙時間Tnの推移をグラフにしている。
図12では1枚目から3枚目までは、ほぼ理想値で給紙時間Tnが推移している。それに対し、4枚目から給紙時間Tnが理想値よりも小さくなり、5枚目で給紙時間Tnの値が時間Tkより小さくなる。すなわち、上記数1からT5<Tk(=0.4)となる。
このとき、用紙Pの挙動としては3枚目までは正常であったが、4枚目から重送傾向になり5枚目で重送が懸念される領域に入ったことを意味している。よって、5枚目までは底板常接動作にて制御していたが、6枚目以降は底板昇降動作に切り替えることにより、給紙時間Tnが理想値に復帰するようにする。
しかし、Tn<Tkという条件式を用いると、突発的に1枚だけ給紙時間が小さくなった場合でも、底板常接動作から底板昇降動作に底板62の動作を切り替えてしまう。そのため、不必要に底板昇降動作を行ってしまう可能性がある。
そこで、ある一定枚数iの給紙時間Tnの平均値Taを用いて、時間Tkと比較し、底板常接動作から底板昇降動作への底板動作の切り替えの判断を実施することで、重送の自動認識精度を上げることができる。すなわち、数2の条件を満たす場合に、n+1枚目から底板昇降動作にて制御する。
また、i枚の中で、ばらつきTσが大きければ、より、給紙時間Tnの減少が懸念されるので、任意に定めた定数Aを用いて、数3の条件式とする。
このとき、定数Aの値を大きくするほど、安全に重送を防ぐことができるが、反面、不必要に底板昇降が発生する場合がある。そのため、定数Aの値としては実験を踏まえて適正な値を定める必要がある。
さらに、給紙時間Tnの減少率が大きい場合を条件としたいときは、ある一定枚数iの給紙時間Tnの減少量Tdを用いて、時間Tkと同様に予め定めた値Trを超える場合に、次紙より底板常接動作から底板昇降動作に切り替えるという方法も採用できる。この際の底板動作の底板常接動作から底板昇降動作への切り替えの判断式は数4のようになる。
以上に示す数1から数4の判断式により、給紙動作中に底板動作を底板常接動作から底板昇降動作に切り替えることが可能である。一方で、数1から数4に示す判断式は、重送が懸念される状態に陥ってからの処理のため、重送を回避できる状態への復帰が手遅れになる場合も考えられる。
そこで、以下には、重送が発生する通紙枚数を予測し、推定される通紙枚数から底板動作を底板常接動作から底板昇降動作に切り替える方法について説明する。
図13は、図12と同様に給紙時間Tnの推移を示す曲線であるが、ある枚数(図13では10枚)までのデータから近似直線T(n)を求める。ここから、T(n)<Tkとなるnを求め、n枚目から重送が懸念される状態に陥ると考えることができる。よって、n枚に対してα枚余裕をとって、n−α枚目から底板動作を底板常接動作から底板昇降動作に切り替える制御を行う。
また、図14は、手差し給紙部からレジストローラ対32までの給紙出口センサが設けられた手差し給紙装置の断面図である。
図14に示す手差し給紙装置では、給紙ローラ61の用紙搬送方向下流直後に、反射型センサである給紙出口センサ91を設置している。このように給紙出口センサ91を設けることで、前述した判断式を用いなくとも、底板62で待機している用紙P2の先端が、給紙出口センサ91の検知位置に到達していたら重送の懸念があると判断し、底板動作を底板常接動作から底板昇降動作に切り替える。
一方、底板昇降動作においては重送に対して余裕度を上げることができるが、逆に不給紙に対して不利になる場合がある。これについては、上述した制御内容と同様に、給紙時間または紙間距離の監視から、増加傾向にある場合は底板昇降動作から底板常接動作に切り替えることにより、不給紙に対する余裕を上げることができる。
[実施形態2]
以下、本発明を画像形成装置に適用した第二の実施形態について説明する。
図15は、本実施形態に係る画像形成装置である複写機500の概略構成図である。この複写機500は、画像形成部101と、用紙供給装置140と、原稿搬送読取ユニット350とを備えている。原稿搬送読取ユニット350は、画像形成部101の上に固定された画像読取装置(スキャナ)150と、これに支持される原稿搬送装置としてのADF351とを有している。
用紙供給装置140は、ペーパーバンク141内に多段に配設された2つの給紙カセット142、給紙カセット142から記録媒体としての用紙を送り出す給紙ローラ143、送り出された用紙を分離して給紙路144に供給する分離ローラ145等を有している。また、複写機500の給紙路137に用紙を搬送する複数の搬送ローラ146等も有している。そして、給紙カセット142内の用紙を複写機500内の給紙路137内に給紙する。
複写機500は、光書込装置102や、K、Y、M、C色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット103K,Y,M,C、中間転写ベルト125を有する転写ユニット124を備えている。また、紙搬送ユニット128、レジストローラ対133、定着装置134、排紙ローラ対135、スイッチバック装置136、給紙路137等も備えている。
そして、光書込装置102内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、プロセスユニット103K,Y,M,Cの感光体104K,Y,M,Cに向けてレーザ光Lを照射する。この照射により、ドラム状の感光体104K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン用の仕様であることを示している。
上記構成の複写機500において、各感光体104K,Y,M,Cの表面に形成されたトナー像は、図中時計回り方向に無端移動する中間転写ベルト125に順次重ね合わせて1次転写される。この1次転写により、中間転写ベルト125には4色重ね合わせのカラートナー像が形成される。
また、用紙供給装置140から供給された用紙が、レジストローラ対133により所定のタイミングで、紙搬送ユニット128と中間転写ベルト125との間に形成された2次転写ニップに進入し、中間転写ベルト125上のカラートナー像が用紙に転写される。2次転写ニップを通過した用紙は、中間転写ベルト125から離間して定着装置134へ搬送される。定着装置134に搬送された用紙は、定着装置134内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着された後、定着装置134から排紙ローラ対135に送られた後、機外の排紙トレイ501へと排出される。
次に、画像形成部101の上に固定された原稿搬送読取ユニット350について説明する。
スキャナ150やこれの上に固定されたADF351からなる原稿搬送読取ユニット350は、後述する固定画像読取部151や移動読取部152を有している。
移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された第二コンタクトガラス155の直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第二コンタクトガラス155上に載置された原稿MSの下面で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ150に固定された画像読取センサ153で受光する。
固定画像読取部151は、光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有しており、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された第一コンタクトガラス154の直下に配設されている。
そして、ADF351によって搬送される原稿MSが第一コンタクトガラス154上を通過する際に、光源から発した光を原稿MSで順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサ153で受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSを走査する。
スキャナ150の上に配設されたADF351は、本体カバー352に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台353、原稿MSを搬送するための原稿搬送部354、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台355などを保持している。
ADF351は、スキャナ150に固定された不図示の蝶番によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第一コンタクトガラス154や第二コンタクトガラス155を露出させる。
原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を一枚ずつ分離することができないため、ADF351による搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF351を開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第二コンタクトガラス155上に載せた後、ADF351を閉じる。そして、スキャナ150の移動読取部152によってそのページの画像を読み取らせる。
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF351によって1枚ずつ自動搬送することができる。そして、搬送しながら、スキャナ150内の固定画像読取部151に順次読み取らせていくことができる。
この場合、原稿画像のコピーを行おうとする使用者は、原稿束を原稿載置台353上にセットした後、不図示の操作部のコピースタートボタンを押す。すると、ADF351が、原稿載置台353上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に原稿搬送部354内に送り、それを反転させながら原稿スタック台355に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の固定画像読取部151の真上に通す。このとき、原稿MSの画像がスキャナ150の固定画像読取部151によって読み取られる。
また、本実施形態の複写機500に設けられた原稿搬送読取ユニット350の給紙装置として、実施形態1で説明した手差し給紙装置と同様の構成や制御を行う給紙装置を用いる。これにより、複数枚の原稿MSを連続給紙時に原稿載置台353上の原稿MSと給紙ローラとの接離動作を必要最低限に抑えて、重送の発生を抑えつつ、原稿載置台353上の原稿MSと給紙ローラとの衝突音に起因した騒音を低減させることができる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
複数枚のシートを積載する底板62などのシート積載台と、回転可能に設けられシート積載台上のシートを給送する給紙ローラ61などの給送部材と、前記シート積載台上のシートと前記給送部材とを接離させる底板昇降機構などの接離機構と、前記給送部材と接触し分離ニップを形成する摩擦部材64などの分離部材とを備え、前記分離ニップにて前記分離部材と前記給送部材とによりシートを一枚ずつ分離して給送する手差し給紙装置などの給送装置において、複数枚のシートが重なり合ったまま前記分離ニップよりもシート搬送方向下流側に搬送される重送の発生を予測するための情報に基づいて、重送の発生を予測する制御部などの重送発生予測手段を有しており、前記重送発生予測手段により、重送が発生すると予測されない場合には、給送動作開始時から給送動作終了時まで前記シート積載台上のシートと前記給送部材とを接触させる第一の給送動作を行い、重送が発生すると予測された場合には、給送動作開始時に前記シート積載台上のシートと前記給送部材とを接触させ、その後の所定の離間タイミングで当該シートと当該給送部材とを離間させる第二の給送動作を行う。
(態様A)においては、重送発生予測手段により重送が発生すると予測されない場合には、前記第一の給送動作を行うので、連続給送時の2枚目以降ではシート積載台上のシートと給送部材とが常時接触した状態となる。これにより、連続給紙時にシート積載台上のシートと給送部材の衝突音に起因した騒音を低減させることができる。
また、重送発生予測手段により重送が発生すると予測された場合には、前記第二の給送動作を行うので、給送動作開始から給送動作終了までシート積載台から給送部材に向かってシートに押圧力が付与され続けない。これにより、例えば、特殊紙などのシートを用いた場合などに、3枚以上のシートが重なった束の状態で分離ニップに進入し、分離ニップでシートの分離を適切に行えず重送が発生してしまうのを抑制することができる。
よって、連続給送時にシート積載台上のシートと給送部材との接離動作を必要最低限に抑えて、重送の発生を抑えつつ、底板上の用紙と給紙ローラとの衝突音に起因した騒音を低減させることができる。
(態様B)
(態様A)において、前記給送手段よりも給送方向下流にシートを検知するシート検知手段を設けており、前記情報は、前記給送手段が駆動してから前記シート検知手段によってシートの先端を検知するまでの給紙時間T1などの時間T1であり、前記時間T1が予め設定された所定時間Tk未満の場合は前記第一の給送動作から前記第二の給送動作に給送動作を切り替え、当該時間T1が所定時間Tk以上の場合は前記第一の給送動作で動作する。これによれば、上記実施形態について説明したように、シートの検知タイミングが早い場合に重送が出やすいと判断し、連続給紙動作時でのシート積載板の昇降動作を必要最小限で実行でき、騒音による不快感を減らすことができる。
(態様C)
(態様A)において、前記給送手段よりも給送方向下流にシートを検知するシート検知手段を設けており、前記情報は、複数枚の連続給送時に先行するシートの後端を前記シート検知手段によって検知してから後行するシートの先端を当該シート検知手段によって検知するまでの時間T1であり、前記時間T1が予め設定された所定時間Tk未満の場合は前記第一の給送動作から前記第二の給送動作に給送動作を切り替え、当該時間T1が所定時間Tk以上の場合は前記第一の給送動作で動作する。これによれば、上記実施形態について説明したように、先行するシートと後行するシートとの紙間が狭い場合に重送が出やすいと判断し、連続給紙動作時でのシート積載板の昇降動作を必要最小限で実行でき、騒音による不快感を減らすことができる。
(態様D)
(態様A)、(態様B)または(態様C)において、前記情報には、シートの種類に関する情報が含まれる。これによれば、上記実施形態について説明したように、重送が発生し易いコート紙や薄紙など特定の種類のシートを用いる場合のみ第二の給送動作で給送動作を行うことで、連続給紙動作時でのシート積載板の昇降動作を必要最小限で実行でき、騒音による不快感を減らすことができる。
(態様E)
(態様A)、(態様B)、(態様C)または(態様D)において、前記第一の給送動作と前記第二の給送動作との選択をユーザーが行うための選択手段を有しており、前記選択手段によりユーザーが前記第一の給送動作と前記第二の給送動作とのどちらかを選択することで給送動作を切り替え可能である。これによれば、上記実施形態について説明したように、重送が発生しやすいシートの種類に対してのみユーザーが選択的に第二の給送動作で給送動作を行うことで、連続給紙動作時でのシート積載板の昇降動作を必要最小限で実行でき、騒音による不快感を減らすことができる。
(態様F)
(態様B)、(態様C)、(態様D)または(態様E)において、前記所定時間Tkが、シートの種類によって異なる。これによれば、上記実施形態について説明したように、シートの種類に応じて重送の発生しやすさの判断基準を変えて、シート積載板の昇降動作をシートの種類に応じ必要最小限で実行することができる。
(態様G)
(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)または(態様F)において、温度を検知する温度検知手段を有しており、前記所定時間Tkが前記温度によって異なる。これによれば、上記実施形態について説明したように、装置内の雰囲気の温度に応じて重送の発生しやすさの判断基準を変えて、シート積載板の昇降動作を前記温度に応じ必要最小限で実行することができる。
(態様H)
(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)または(態様F)において、湿度を検知する湿度検知手段を有しており、前記所定時間Tkが前記湿度によって異なる。これによれば、上記実施形態について説明したように、装置内の雰囲気の湿度に応じて重送の発生しやすさの判断基準を変えて、シート積載板の昇降動作を前記湿度に応じ必要最小限で実行することができる。
(態様I)
(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)または(態様G)において、少なくともシートを2枚給送したときの各時間T1の平均値Taが、前記所定時間Tk以上の場合は前記第一の給送動作を行い、前記平均値Taが前記所定時間Tk未満の場合は前記第二の給送動作を行う。これによれば、上記実施形態について説明したように、突発的に1枚だけ給紙時間が小さくなった場合でも、第一の給送動作から第二の給送動作に切り替えてしまい、不必要にシート積載板の昇降動作が行われるのを抑制できる。
(態様J)
(態様I)において、少なくともシートを2枚給送したときの各時間T1の標準偏差Tσと前記平均値Taと任意の定数Aとを用いて算出したTa−A×Tσの値が、前記所定時間Tk未満の場合は前記第二の給送動作を行う。これによれば、上記実施形態について説明したように、不必要にシート積載板の昇降動作が行われるのをより抑制することができる。
(態様K)
(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)、(態様G)、(態様H)、(態様I)または(態様J)において、少なくとも2以上であるn枚給送した場合の時間T1のn枚中の減少量Tdが、予め設定された所定値Tr未満の場合は第一の給送動作を行い、前記減少量Tdが前記所定値Tr以上の場合は前記第二の給送動作を行う。これによれば、上記実施形態について説明したように、給紙時間が減少傾向にあるかを判断して、不必要にシート積載板の昇降動作が行われるのを抑制することができる。
(態様L)
(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)、(態様G)、(態様H)、(態様I)または(態様J)において、少なくとも2以上であるn枚給送した場合の各時間T1の変動から、シートの枚数nに対する近似直線を求め、当該近似直線が前記所定時間Tkを下回る場合の前記枚数nに対し、所定値αを用いて、n−α枚目までは前記第一の給送動作を行い、n−α枚目以降から前記第二の給送動作を行う。これによれば、上記実施形態について説明したように、重送を回避できる状態への復帰が手遅れになるのを抑制することができる。
(態様M)
(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)、(態様G)、(態様H)、(態様I)、(態様J)、(態様K)または(態様L)において、シートの給送開始時点で、前記シート検知手段によりシートの先端を検知している場合は、前記第二の給送動作を行う。これによれば、上記実施形態について説明したように、シート検知手段の検知結果に基づいて重送の懸念があると判断し、底板動作を底板常接動作から底板昇降動作に切り替えることができる。
(態様N)
シートに画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段にシートを給送するシート給送手段とを備えた画像形成装置において、前記シート搬送手段として、(態様A)乃至(態様M)の給送装置を用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、連続給紙動作時でのシート積載板の昇降動作を必要最小限で実行でき、騒音による不快感を減らすことができる。
(態様O)
シートの画像を読み取る画像読取手段と、前記画像読取手段にシートを給送するシート給送手段とを備えた画像読取装置において、前記シート給送手段として、(態様A)乃至(態様M)の給送装置を用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、連続給紙動作時でのシート積載板の昇降動作を必要最小限で実行でき、騒音による不快感を減らすことができる。