JP6233132B2 - 製版用水性インクジェットインキおよび平版印刷用刷版の製版方法 - Google Patents

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Description

本発明は、平版印刷用原版に直接インクジェット印刷を行うことで、高精細かつ高耐刷性を有する平版印刷用刷版を作成可能な製版用水性インクジェットインキ、およびそれを用いた平版印刷用刷版の製版方法に関する。
平版印刷用刷版は、印刷時に平版印刷用インキが付着する疎水性の画線部と湿し水が付着する親水性の非画線部からなる。平版印刷はインキと湿し水が反発することを利用して、画線部に付着したインキを紙などの印刷媒体に転写する方法である。平版印刷用刷版は親水性の支持体上に疎水性の画線部を形成することで得られる。
平版印刷用刷版を製造することを製版と称するが、現在の製版方法はCTP方式が主流である。これは親水性の支持体上に疎水性の感光性樹脂層を設けたPS版と呼ばれる平版印刷用原版に対して、レーザーを用いて画線部を感光させ、その後、現像処理により未露光の非画線部の樹脂層を除去することで製版する方法である。CTP方式は非常に精細な刷版をデジタルデータから容易に作成することができる方式であるが、現像工程を必要とするためこの時に使用する現像液の廃液が環境に与える影響への懸念もある。
そこで現像工程を必要としない製版方式が開発されており、その中の一つがインクジェット方式である。インクジェット方式では親水性の原版に画線部を印刷して、疎水性の画線部、親水性の非画線部を形成する方法である。使用するインキとしてはインキ中に含有する疎水性の樹脂を利用した水性インキ(特許文献1)、油性インキ(特許文献2)や印刷後にUV硬化により疎水性樹脂を形成するUVインキ(特許文献3)などがある。
中でも環境への影響の面から水性インキによる製版方法が注目されている。例えば特許文献4では最低造膜温度が40℃以上の樹脂微粒子を使用した水性インキを使用した製版方法が開示されている。この方法では十分に加熱を行った原版上へ印刷することで高い耐刷性を発揮することが可能とある。しかし、原版を加熱する必要があることから、印刷時にインクジェットヘッドのノズル周辺のインキが乾燥し、ノズル欠損が生じる懸念がある。また、描画性に関する記述もなく、十分な品質の刷版を得ることは困難であった。
特開2010-023306号公報 特開平10-204356号公報 特開2006-334874号公報 国際公開WO2010021186号パンフレット
本発明の目的は、平版印刷用原版に直接インクジェット印刷を行うことで、高精細かつ高耐刷性を有する平版印刷用刷版を作成可能な製版用水性インクジェットインキ、およびそれを用いた平版印刷用刷版の製版方法を提供することにある。
少なくとも着色剤と水分散性樹脂微粒子と有機溶剤と水とを含む平版印刷用刷版の製版に使用される水性インクジェットインキであって、前記有機溶剤として炭素数4以上10以下の1,2−アルカンジオールをインキ中に重量%以上50重量%以下含むことを特徴とする製版用水性インクジェットインキに関する。
また、本発明は、1,2-アルカンジオールとして1,2-ヘキサンジオールを含むことを特徴とする上記製版用水性インクジェットインキに関する。
また、本発明は、水分散性樹脂微粒子と着色剤のインキ中の配合重量比[水分散性樹脂微粒子/着色剤]が5以上1000以下であることを特徴とする上記製版用水性インクジェットインキに関する。
また、本発明は、インキ中に配合される固形分量が5重量%以上20重量%以下であることを特徴とする上記製版用水性インクジェットインキに関する。
また、本発明は、水分散性樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)が60℃以上120℃以下であることを特徴とする上記製版用水性インクジェットインキに関する。
また、本発明は、さらにシリコン系界面活性剤を含むことを特徴とする上記製版用水性インクジェットインキに関する。
また、本発明は、上記製版用水性インクジェットインキを使用し、親水性表面を有する平版印刷用原版へインクジェット印刷を行い、疎水性の画線部を形成することを特徴とした平版印刷用刷版の製版方法に関する。
また、本発明は、平版印刷用原版へ印刷を行った後、100℃以上250℃以下に印刷された原版を加熱することを特徴とした上記平版印刷用刷版の製版方法に関する。
本発明により、平版印刷用原版に直接インクジェット印刷を行うことで、高精細かつ高耐刷性を有する平版印刷用刷版を作成可能な製版用水性インクジェットインキ、およびそれを用いた平版印刷用刷版の製版方法を提供することが可能となった。
本発明の刷版用水性インクジェットインキは少なくとも着色剤と水分散性樹脂微粒子と有機溶剤と水とを含み、有機溶剤として炭素数4以上10以下の1,2-アルカンジオールをインキ中に5重量%以上50重量%以下含むことを特徴する。以下、本発明のインキの成分について詳細に説明する。
(着色剤)
本発明では刷版の画線部を識別するために着色剤を使用する。着色剤としては、例えば、染料、顔料等が挙げられる。これらの着色剤は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。刷版の体制を向上させるためにも顔料を使用することが好ましい。刷版の画線部の識別が可能であれば着色剤の含有量は特に制限されないが、着色剤の含有量としてはインキの全量に対して0.1重量%以上5重量%以下、好ましくは0.2重量%以上3重量%以下、より好ましくは0.3重量%以上2重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以上1.5重量%以下である。
染料を使用する場合には、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料等の通常インクジェット記録に使用する各種染料を使用することができる。
更に詳しくは、シアン染料としてはC. I. Acid Blue 1, 7, 9, 15, 22, 23, 25, 27, 29, 40, 41, 43, 45, 54, 59, 60, 62, 72, 74, 78, 80, 82, 83, 90, 92, 93, 100, 012, 103, 104, 112, 113, 117, 120, 126, 127, 129, 130, 131, 138, 140, 142, 143, 151, 154, 158, 161, 166, 167, 168, 170, 171, 182, 183, 184, 187, 192, 199, 203, 204, 205, 229, 234, 236, 249, C. I. Direct Blue 1,2, 6, 15, 22, 25, 41, 71, 76, 77, 78, 80, 86, 87, 90, 98, 106, 108, 120, 123, 158, 160, 163, 165, 168, 192, 193, 194, 195, 196, 199, 200, 201, 202, 203, 207, 225, 226, 236, 237, 246, 248, 249, C. I. Reactive Blue 1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 9, 13, 14, 15, 17, 18, 19, 20, 21, 25, 26, 27, 28, 29, 31, 32, 33, 34,37, 38, 39, 40, 41, 43, 44, 46, C. I. Food Blue 1, 2, C. I. Basic Blue 9, 25,28, 29, 44等が挙げられる。
マゼンタ染料としてはC. I. Acid Red 1, 6, 8, 9, 13, 14, 18, 26, 27, 32, 35, 37, 42, 51, 52, 57, 75, 77, 80, 82, 85, 87, 88, 89, 92, 94, 97, 106, 111, 114, 115, 117, 118, 119, 129, 130, 131, 133, 134, 138, 143, 145, 154, 155, 158, 168, 180, 183, 184, 186, 194, 198, 209, 211, 215, 219, 249, 252, 254, 262, 265, 274, 282, 289, 303, 317, 320, 321, 322, C. I. Direct Red 1, 2, 4, 9, 11, 13, 17, 20, 23, 24, 28, 31, 33, 37, 39, 44, 46, 62, 63, 75, 79, 80, 81, 83, 84, 89, 95, 99, 113, 197, 201, 218, 220, 224, 225, 226, 227, 228, 229, 230, 231, C. I. Reactive Red 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 11, 12, 13, 15, 16, 17, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 28, 29, 31, 32, 33, 34,35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 45, 46, 49, 50, 58, 59, 63, 64, C. I. Food Red 7, 9, 14等が挙げられる。
イエロー染料としてはC. I. Acid Yellow 1, 3, 11, 17, 19, 23, 25, 29, 36, 38, 40, 42, 44, 49, 59, 61, 70, 72, 75, 76, 78, 79, 98, 99, 110, 111, 127, 131, 135, 142, 162, 164, 165, C. I. Direct Yellow 1, 8, 11, 12, 24, 26, 27, 33, 39, 44, 50, 58, 85, 86, 87, 88, 89, 98, 110, 132, 142, 144, Reactive Yellow 1, 2, 3, 4, 6, 7, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 37, 42, C. I. Food Yellow 3, 4等が挙げられる。
ブラック染料としてはC. I. Direct Black 1, 7, 19, 32, 51, 71, 108, 146, 154, 166等が挙げられる。
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック以外の染料としてはC. I. Acid Green 7, 12, 25, 27, 35, 36, 40, 43, 44, 65, 79, C. I. Direct Green 1, 6, 8, 26, 28, 30, 31, 37, 59, 63, 64, C. I. Reactive Green 6, 7, C. I. Direct Violet 2, 48, 63, 90, C. I. Reactive Violet 1, 5, 9, 10等が挙げられる。
顔料を使用する場合には、無機顔料、有機顔料の何れも使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、 群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等を 挙げることができる。
有機顔料としてはアゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、染料レーキ顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
更に詳しくは、シアン顔料としてはC. I. Pigment Blue 1, 2, 3, 15:1, 15:3, 15:4, 15:6, 16, 21, 22, 60, 64等が挙げられる。マゼンタ顔料としてはC. I. Pigment Red 5, 7, 9, 12, 31, 48, 49, 52, 53, 57, 97, 112, 120, 122, 146, 147, 149, 150, 168, 170, 177, 178, 179, 184, 188, 202, 206, 207, 209, 238, 242, 254, 255, 264, 269, 282、C. I. Pigment Violet 19, 23, 29, 30, 32, 36, 37, 38, 40, 50等が挙げられる。イエロー顔料としてはC. I. Pigment Yellow 1, 2, 3, 12, 13, 14, 16, 17, 20, 24, 74, 83, 86, 93, 94, 95, 109, 110, 117, 120, 125, 128, 129, 137, 138, 139, 147, 148, 150, 151, 154, 155, 166, 168, 180, 185, 213等が挙げられる。
ブラック顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。例えば、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40nm、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては下記のものが挙げられる。例えば、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビアンカーボン製)、REGA330R、400R、660R、MOGUL L、ELFTEX415(以上、キャボット製)、Nipex90、Nipex150T、Nipex160IQ、Nipex170IQ、Nipex75、Printex85、Printex95、Printex90、Printex35、PrintexU(以上、エボニックデグサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック以外の顔料としてはC. I. Pigment Green 7, 10, 36、C. I. Pigment Brown 3, 5, 25, 26、C. I. Pigment Orange 2, 5, 7, 13, 14, 15, 16, 24, 34, 36, 38, 40, 43, 62, 63, 64, 71等が挙げられる。
これらの顔料を使用する場合には長期間のインキ安定性を維持するためにも、インキ媒体中に分散して使用することが好ましい。顔料の分散方法としては、顔料を酸化処理等により表面改質し、分散剤なしで顔料を分散させる方法や、界面活性剤や樹脂を分散剤として顔料を分散させる方法がある。より安定なインキとするためにも分散樹脂を使用して顔料を分散させることが好ましい。
顔料分散樹脂としてはアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、αオレフィンマレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂等が挙げられる。なかでもアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂を使用することが好ましい。
顔料分散樹脂の酸価は50mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であることが顔料分散の安定性、インクジェット適性の面から好ましい。酸価が50mgKOH/g以上であると樹脂が水に対し十分に溶解し、インキ粘度を低く保ち、安定な吐出を実現できる。また、400mgKOH/g以下であると顔料-樹脂間の相互作用が樹脂同士や樹脂-水間の相互作用よりも十分に強くなり、分散を良化させ、インキの安定性を保つことができる。顔料分散樹脂の酸価は、より好ましくは100 mgKOH/g以上350mgKOH/g以下であり、更に好ましくは150 mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である。
顔料分散樹脂の重量平均分子量は5000以上100000以下であることが好ましい。重量平均分子量5000以上であると分散安定性が良化し、重量平均分子量100000以下であると吐出安定性が良化する。より好ましくは重量平均分子量10000以上50000以下であり、更に好ましくは重量平均分子量15000以上30000以下である。
顔料と顔料分散樹脂の重量比率は2/1以上100/1以下であることが好ましい。顔料分散樹脂の重量比率が2/1以上であるとインキの粘度を低く抑えることができる。また、100/1以下であると分散安定性が良化し、インキの安定性を向上させることができる。顔料と顔料分散樹脂の重量比率としてより好ましくは4/1以上50/1以下、更に好ましくは5/1以上25/1以下であり、最も好ましくは10/1以上20/1以下である。
(水分散性樹脂微粒子)
本発明のインキでは、刷版の疎水性画線部を形成するためのバインダー樹脂として、水分散性樹脂微粒子を使用する。一般に水性インクジェットインキのバインダー樹脂としては水溶性樹脂と水分散性樹脂微粒子の何れかが使用されるが、水分散性微粒子は樹脂の分子量が高いため、強固な皮膜を形成し、高い耐性を発揮することができる。また、水分散性微粒子はインキの粘度も比較的低く保つことができ、インクジェット適性を損なうことなく配合量を増やせるため、インクジェット用途には好適である。
本発明では水分散性樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)を30℃以上200℃以下の範囲にすることで刷版の画線部の耐刷性を向上させることが可能であり、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは50℃以上130℃以下、更に好ましくは60℃以上120℃以下、最も好ましくは70℃以上110℃以下の範囲とするのが良い。上記の範囲内では刷版上に形成された画線部が十分な強度を保つことができるため、繰り返し平版印刷を行っても刷版の欠けや削れが生じず、印刷品質を落とすことなく印刷物を得ることが可能である。
水分散性樹脂微粒子の酸価は0mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲であることが好ましい。酸価があまりに高い場合には、刷版上に形成された画線部の親水性が高くなることで平版印刷インキの着肉性が低下し、印刷画質に悪影響を与えることがある。好ましくは0 mgKOH/g以上80mgKOH/g以下の範囲であり、より好ましくは0 mgKOH/g以上50mgKOH/g以下の範囲であり、更に好ましくは0 mgKOH/g以上30mgKOH/g以下の範囲であり、最も好ましくは0 mgKOH/g以上10mgKOH/g以下の範囲である。
水分散性樹脂微粒子としてはアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。インキの安定性、耐刷性の面からアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂の水分散性樹脂微粒子を使用することが好ましい。
水分散性樹脂微粒子としてアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂を選択する場合には、構成成分としては汎用のアクリルモノマー、スチレン誘導体等を使用することが出来る。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル基含有モノマー、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド含有モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン、αメチルスチレン等の芳香環含有モノマー、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ(アミド)基含有モノマー、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸等の酸基含有モノマー、から選択することが出来る。
更に水分散性樹脂微粒子の構成成分として架橋性単量体を含むことで、インキ中での樹脂微粒子のインキ中での分散安定性の向上や、樹脂微粒子の内部架橋による高い樹脂強度により耐刷性の向上といった効果が得られる。
架橋性単量体は樹脂微粒子の製造時に他の原料となる単量体と合わせて用いることで、樹脂微粒子内に導入する。樹脂微粒子中の架橋性単量体の含有量としては、樹脂微粒子全量に対して、0.1重量%以上10重量%以下が好ましく、より好ましくは0.2重量%以上8重量%以下であり、更に好ましくは0.5重量%以上5重量%以下である。含有量がこの範囲であれば、インキの安定性の向上や刷版の耐刷性の向上といった効果を十分に得ることが可能である。
架橋性単量体としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等の2個以上の不飽和基を有する単量体、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有不飽和単量体、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N, N-ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルエーテル化-N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有不飽和単量体が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用して用いることができる。
上記の架橋性単量体の中でも、2個のアリル基を有する単量体とアルコキシシリル基含有不飽和単量体が分散安定性向上の面から好ましく、2個のアリル基を有する単量体が更に好ましい。
本発明に使用する水分散性樹脂微粒子には酸性基としてスルホン酸基含有単量体を含むことで樹脂微粒子の分散安定性を更に向上させることができる。樹脂微粒子中のスルホン酸基含有単量体の含有量としては、樹脂微粒子全量に対して、0.1重量%以上5重量%以下が好ましく、より好ましくは0.2重量%以上3重量%以下であり、更に好ましくは0.5重量%以上2重量%以下である。含有量がこの範囲であれば、樹脂微粒子の分散安定性が良好となる。
スルホン酸基含有単量体としてはスチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリルオキシベンゼンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。
上記の水分散性樹脂微粒子のインキ中における含有量は、固形分でインキの全量に対して2重量%以上30重量%以下の範囲であり、好ましくは5重量%以上25重量%以下の範囲であり、より好ましくは8重量%以上20重量%以下の範囲である。
本発明では刷版の画線部を識別するために着色剤を必要とするが、水分散性樹脂微粒子を元とする樹脂成分に着色剤成分が含まれると、樹脂の強度が下がり、平版印刷時に刷版の画線部が欠けたり削れたりすることがある。このような不具合を防ぐために水分散性樹脂微粒子と着色剤のインキ中の配合重量比[水分散性樹脂微粒子/着色剤]を5以上1000以下にすることが好ましい。着色剤の配合量に対して樹脂の割合を増やすことにより、平版印刷時に樹脂強度の低下の影響が生じないようにすることが出来る。より好ましくは配合重量比[水分散性樹脂微粒子/着色剤]が8以上500以下、更に好ましくは10以上100以下、最も好ましくは12以上50以下である。
(固形分量)
更にインキ中の固形分量をインキ全量に対して5重量%以上20重量%以下とすることが好ましい。固形分量が20重量%よりも多い場合には、刷版上に形成された画線部にインクジェット印刷によるドットの凹凸が生じる場合がある。このような凹凸が多くあると、平版印刷インキの着肉性が低下したり、凹凸から画線部が欠ける原因となったりし、平版印刷物の品質低下を生じる可能性がある。固形分量が20重量%以下であれば刷版上に凹凸の少ない画線部を形成することが出来る。固形分量として好ましくは8重量%以上18重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上15重量%以下である。
インキ中の固形分量は以下の通り測定することができる。ガラス製のシャーレに1〜3g程度のインキを量りとり、これを180℃のオーブンにて30分間乾燥させる。乾燥後の重量を量り、これを固形分として乾燥前後の重量からインキ中の割合を求める。
(有機溶剤)
本発明では有機溶剤として炭素数4以上10以下の1,2-アルカンジオールをインキ中に5重量%以上50重量%以下の割合で配合することを特徴とする。1,2-アルカンジオールはヒドロキシル基の親水部とアルキル基の疎水部とを有する両親媒性構造であることから、界面活性効果を示し高い濡れ広がり性を発揮する。また、2つのヒドロキシル基を有することにより高い保湿性を有するため、インクジェットヘッドのノズル近傍でインキが乾燥条件下におかれても流動性を保ち、ノズル欠損が生じにくくなる。また、この溶剤を使用することでインキの基材上での濡れ広がり性が向上し、製版時にプラテンで基材を加温しなくてもムラ、ニジミのない刷版を得ることが可能となる。更にプラテンを加温することで、より良質な刷版を得ることが出来る。刷版にムラ、ニジミが生じると、これを利用して平版印刷して得られた印刷物にも画質低下の影響を与えることとなる。炭素数4以上10以下の1,2-アルカンジオールを使用しない場合にはムラやニジミにより刷版品質の低下が生じる。また、これを解消するためにプラテン温度を上げると、インクジェットヘッドのノズル近傍のインキが乾燥することによりインキが不吐出となり、画像欠陥が生じてしまう。
炭素数4以上10以下の1,2-アルカンジオールとしては1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオールジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール等が挙げられる。中でもインキ中の水との混和性、水分散性樹脂微粒子の分散安定性の点から1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールを使用することが好ましい。より好ましくは1,2-ヘキサンジオールである。
本発明でインキ中に含まれる炭素数4以上10以下の1,2-アルカンジオールの配合量は、インキ全量に対して、5重量%以上50重量%以下の範囲である。この範囲内であれば上述したとおり、良好な画質の刷版を得ることが可能となる。より好ましくは8重量%以上35重量%以下、更に好ましくは10重量%以上30重量%以下、最も好ましくは12重量%以上25重量%以下である。
本発明では上述した効果に影響を与えない限り、その他の溶剤を併用することが可能である。その他の溶剤としてはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジエチレングリコージメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール等の多価アルコール系溶剤、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-メチルオキサゾリジノン、N-エチルオキサゾリジノン、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、N, N-ジメチル-β-メトキシプロピオンアミド等の含窒素系溶剤、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等が挙げられる。
インキ中の総溶剤量は、インキ全量に対して、5重量%以上70重量%以下が好ましい。より好ましくは8重量%以上50重量%以下、更に好ましくは10重量%以上35重量%以下、最も好ましくは12重量%以上25重量%以下である。
(界面活性剤)
本発明では界面活性剤をインキに配合することも可能である。界面活性剤を使用することで高い濡れ広がり性を発揮し、良質な刷版を得ることができる。更に印刷後に低温で加熱を行った場合にも高い耐刷性を発揮することが可能となる。この原因は定かではないが、界面活性剤が樹脂微粒子の造膜助剤として働き、低温でも樹脂微粒子の造膜が起こるためと考えられる。
界面活性剤としてはシリコン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、グリコールエーテル系界面活性剤等が使用できる。中でもシリコン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤を使用することが好ましく、より好ましくはシリコン系海面下製剤である。
シリコン系界面活性剤としては下記一般式1〜3で表される化合物を使用することが好ましい。より好ましくは一般式2または一般式3で表される化合物であり、更に好ましくは一般式2で表される化合物である。界面活性剤の添加量としては、インキ全量に対して、0.1重量%以上5重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上3重量%以下であり、更に好ましくは0.8重量%以上2重量%以下であり、最も好ましくは1重量%以上1.5重量%以下である。
Figure 0006233132
(式中aは1〜500の整数、bは0〜10の整数。R1はアルキル基、またはアリール基を示す。R2は下記(A), (B), (C), (D)の内の何れかの置換基で示され、R2の内、少なくとも一つは(A)を含む。)
Figure 0006233132
(cは1〜20の整数であり、dは0〜50の整数であり、eは0〜50の整数である。R3は水素原子またはアルキル基を示し、R4は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示す。)
Figure 0006233132
(fは2〜20の整数である。R5は水素原子、アルキル基、アシル基、ジメチルプロピル骨格を有するエーテル基の何れかを示す。)
Figure 0006233132
(gは2〜6の整数であり、hは0〜20の整数であり、iは1〜50の整数であり、jは0〜10の整数であり、kは0〜10の整数である。R6は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示す。)
(D) アルキル基、またはアリール基である。
一般式1で表される化合物の市販品としてはエボニックデグサ社製のTegotwin4000やTegotwin4100等が挙げられる。
Figure 0006233132
(式中lは10〜80の整数を示す。R7は下記(E)の置換基で示される。)
Figure 0006233132
(mは1〜6の整数、nは0〜50の整数、oは0〜50の整数であり、n+oは1以上の整数で示される。R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、または(メタ)アクリル基である。)
一般式2で表される化合物の市販品の例としては、東レ・ダウコーニング社製のBY16-201, SF8427, ビックケミー社製のBYK-331, BYK-333, BYK-UV3500, エボニックデグサ社製のTegoglide410, Tegoglide432, Tegoglide435, Tegoglide440, Tegoglide450等が挙げられる。
Figure 0006233132
(pおよびqは1以上の整数であり、p+qは3〜50の整数で示される。R9は下記(E)の置換基で示され、R10は炭素数1〜6のアルキル基で示される。)
Figure 0006233132
(rは1〜6の整数、sは0〜50の整数、tは0〜50の整数であり、s+tは1以上の整数で示される。R11は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、または(メタ)アクリル基である。)
一般式3で表される化合物の市販品の例としては、東レ・ダウコーニング社製のSF8428, FZ-2162, 8032ADDITIVE, SH3749, FZ-77, L-7001, L-7002, FZ-2104, FZ-2110, F-2123, SH8400, SH3773M, ビックケミー社製のBYK-345, BYK-346, BYK-347, BYK-348, BYK-349, エボニックデグサ社製のTegowet250, Tegowet260, Tegowet270, Tegowet280, 信越化学工業社製のKF-351A, KF-352A, KF-353, KF-354L, KF355A, KF-615A, KF-640, KF-642, KF-643等が挙げられる。
アセチレン系界面活性剤としては一般式4で表される化合物を使用することが好ましい。一般式4で表される化合物の市販品としてはエアープロダクツ社製のサーフィノール104, サーフィノール420, サーフィノール440, サーフィノール465, サーフィノール485等が挙げられる。
Figure 0006233132
(式中uおよびvはそれぞれ独立に0〜50の整数を示す。)
本発明の水性インクジェットインキに含まれる水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
本発明で使用することができる水のインキ組成中における含有量は、インキ全量に対して、20重量%以上90重量%以下の範囲が好ましく、40重量%以上85重量%以下の範囲がより好ましく、60重量%以上80重量%以下の範囲が更に好ましい。
(その他の成分)
本発明のインキは上記成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、消泡剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の添加剤を適宜添加することができる。これらの添加剤の添加量としては、インキの全質量に対して0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上3重量%以下である。
(平版印刷用原版)
本発明で使用する平版印刷用原版としては、平版印刷に適した親水性表面を有するものであれば従来既知のものが使用できる。平版印刷用原版とは原版の元となる支持体上に、必要に応じて親水化処理、粗面化処理、インキ受理層塗布処理などを行ったものである。
平版印刷用原版の支持体としてはアルミニウム板やその合金板のような金属板、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート等のプラスチックフィルム、耐水処理された紙などを使用することが出来る。原版自体の耐性から金属板を支持体として使用することが好ましく、より好ましくはアルミニウム板である。
アルミニウム板を使用する際には粗面化処理、ケイ酸ナトリウム、フッ化ジルコニウム酸カリウム、リン酸塩などの水溶液への浸漬処理、陽極酸化処理といった表面処理を行うことが好ましい。これらの処理により平版印刷適性の向上、原版の耐性向上といった効果が得られる。粗面化処理はブラシ研磨の様な機械的に粗面化する方法や、電解エッチングにより凹凸を形成するといった従来既知の方法で行うことが出来る。
また、本発明のインクジェットインキにより形成される画線部をより精細にするために画像受理層を設けることも好ましい。画像受理層としてはポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、カゼイン、ゼラチン等の水溶性樹脂を使用することができる。
(インクジェット製版方法)
本発明のインキをインクジェット方式により平版印刷用原版に画線部を印刷することで平版印刷用刷版を作成することが出来る。本発明のインキを原版へ付着させ、溶剤や水を揮発、乾燥させることで疎水性の樹脂分が原版上へ残り、これが平版印刷時に印刷される画線部となる。
インクジェット記録方式としては一回の走査で画像を形成するワンパス方式と複数回の走査で画像を形成するマルチパス方式の何れも使用することが可能であるが、マルチパス方式を使用することが好ましい。マルチパス方式では複数回の走査で画像を形成するため、インクジェットヘッドのノズル欠損が生じても他のノズルでカバーすることができ、刷版の画線部に欠陥が生じにくい。
使用するインクジェットヘッドとしてはコンティニュアス方式でもオンデマンド方式でも何れも使用可能である。また、吐出方式としてはピエゾ方式、サーマル方式の何れも使用可能である。
インクジェットヘッドから吐出されるインキの液適量としては0.5〜20pLが好ましい。より好ましくは1pL以上15pL以下であり、更に好ましくは2 pL以上10pL以下であり、最も好ましくは3 pL以上7pL以下である。液適量を小さくすることで、解像度の高い刷版を作成することが可能となる。但し、あまりに小さい場合には空気抵抗により液滴の着滴位置がばらつくため、画質の低下が生じる場合がある。
所望するスクリーン線数の刷版を得るために、インクジェット印刷の解像度は適宜変更することが出来るが、600×600dpi以上の解像度で印刷することが好ましい。新聞印刷に必要な60〜80線程度の解像度の刷版であれば、720×720dpiの解像度でインクジェット印刷することで網点の再現が可能である。また、より高品質なカラー印刷に使用される150〜200線の刷版の様な高解像度の網点を再現するには、インクジェット印刷の解像度も1440×1440dpi〜2880×2880dpiといった高解像度にすることが好ましい。
本発明のインキは室温で印刷を行っても精細な画像を作成することが可能であるが、プラテンヒーターにより原版を加温しながら印刷することも可能である。加温によりインキの乾燥を速め、ドットのニジミを生じづらくして、より高精細な刷版を作成することが可能となる。但し、プラテンヒーターをあまりに高温にしてしまうと、インクジェットヘッドのノズル近傍のインキが揮発し、ノズル欠損を生じてしまう場合がある。印刷時の温度としては10℃以上60℃以下が好ましく、15℃以上55℃以下がより好ましく、20℃以上50℃以下が更に好ましい。
本発明の製版方法では印刷された原版を加熱処理することでより高い耐刷性を発揮することが可能である。加熱処理の温度としては50℃以上300℃以下が好ましく、100℃以上250℃以下がより好ましく、150℃以上230℃以下が更に好ましい。また、乾燥温度としては特に制限されないが、1分以上60分以下であることが好ましく、2分以上30分以下であることがより好ましく、5分以上15分以下であることが更に好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
(水分散性樹脂微粒子Aの製造例)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬製)0.2部とを仕込み、別途、2-エチルヘキシルアクリレート16部、メチルメタクリレート51部、スチレン30部、ジメチルアクリルアミド2部、アクリル酸1部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬製)1.8部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1%をさらに加えた。内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液10部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液20部の10%を添加し重合を開始した。反応系内を60℃で5分間保持した後、内温を60℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液の残りを1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。ジエチルアミノエタノールを添加して、pHを8.5とし、さらにイオン交換水で固形分を40%に調整して水分散性樹脂微粒子Aの分散液を得た。得られた水分散性樹脂微粒子Aの計算上のガラス転移温度は70℃である。
(水分散性樹脂微粒子B〜Dの製造例)
表1の原料を使用する以外は水分散性樹脂微粒子Aと同様の操作にて樹脂合成を行い、水分散性樹脂微粒子B〜Dの溶液を得た。得られた水分散性樹脂微粒子B〜Dの計算上のガラス転移温度は表1記載の通りである。
Figure 0006233132
(評価用インキ1の製造例)
顔料としてピグメントブルー15:3を20部、顔料分散樹脂(スチレンアクリル樹脂、酸価200mgKOH/g)を6部、水74部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを充填したサンドミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散液を得た。
顔料分散液10部、水分散性樹脂微粒子Aの分散液20部、1,2-ブタンジオール16部、残りを水としてインキ全体が100部になるように調整し、これをディスパーで十分に均一になるまで攪拌した。その後、メンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し本発明の水性インクジェットインキを作成した。
(評価用インキ2〜22の製造例)
評価用インキ1の製造例と同様に、表2記載の通りの組成となるように配合を行い評価用インキ2〜22を作成した。
Figure 0006233132
(試験1)
作成した評価用インキ1をプラテンヒーターを具備するインクジェット装置に充填し、粗面化処理したアルミニウム板を平版印刷用原版として用い、解像度1440×1440dpiで印刷を行い、平版印刷用刷版を製造した。この時の印刷時のプラテン温度は25℃であり、原版への印刷後に120℃、10分の条件で加熱処理を行った。
(印刷安定性評価)
平版印刷用刷版1枚を製版した後に、ノズルチェックパターンを印刷しノズル欠損の有無を確認することで印刷安定性の評価を行った。
A:印刷後にノズル欠損が生じていない
B:印刷後にノズル欠損が生じている
(描画性)
作成した刷版をオフセット印刷機にセットし、インキとしてヴァンテアンエコー墨 HAS、湿し水としてニュースキング Aly(0.5%)を使用して新聞用紙にサイズの異なる文字列を含む画像の印刷を行った。印刷物の文字列を確認し、識別できる文字列のサイズで描画性の評価を行った。
A:3ptの文字が識別できる
B:5ptの文字が識別できる
C:8ptの文字が識別できる
D:8ptの文字が識別できない
(耐刷性)
作成した刷版をオフセット印刷機にセットし、インキとしてヴァンテアンエコー墨 HAS、湿し水としてニュースキング Aly(0.5%)を使用して新聞用紙に15万枚印刷を行った。印刷途中でおよそ1000枚ごとに印刷物を抜き取り、文字の欠けや潰れなどの画像欠陥が生じているかを確認し、評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
A:15万枚まで画像欠陥が生じない
B:10万枚まで画像欠陥が生じない
C:15万枚まで画像欠陥が生じない
D:2万枚まで画像欠陥が生じない
E:2万枚で画像欠陥が生じている
インキ2〜22についても同様にして、刷版の製造を行い、評価を行った。インキ1〜18を使用して試験を行ったところ、インキに水分散性樹脂微粒子、炭素数4以上10以下の1,2-アルカンジオールを5重量%以上50重量%以下含むため、印刷安定性、描画性、耐刷性いずれも良好な結果が得られた。また、配合量の調整、水分散性樹脂微粒子のガラス転移温度の調整、シリコン系界面活性剤の使用などにより、更に高い効果を発揮している(実施例1〜18)。一方でインキ19では水分散性樹脂微粒子を使用していないため耐刷性が悪く、インキ20〜22では有機溶剤が請求項の範囲外であるため描画性が悪い結果となっている(比較例1〜4)。
(試験2)
評価用インキ2, 6, 11, 19を使用して原版への印刷を行い、印刷後の加熱温度、時間を表4記載の通りに変化させ、平版印刷用刷版の製造を行った。評価は試験1と同様に印刷安定性、描画性、耐刷性の評価を行った。
評価用インキ2, 6, 11では印刷後の加熱温度を上げ、加熱時間を長くすることで耐刷性が向上する結果が得られた(実施例19〜33)。特にシリコン系界面活性剤を使用したインキ11では低温での乾燥であっても高い耐刷性を発揮することができている。一方で水分散性樹脂微粒子を使用していないインキ19では乾燥温度を高くしても耐刷性は向上しなかった(比較例5, 6)。
(試験3)
評価用インキ2, 6, 11, 20, 21, 22を使用して原版への印刷を行い、印刷中のプラテン温度を表5記載の通りに変化させ、平版印刷用刷版の製造を行った。評価は試験1と同様に印刷安定性、描画性、耐刷性の評価を行った。
Figure 0006233132
Figure 0006233132
Figure 0006233132
評価用インキ2, 6, 11ではプラテン温度を高くすることで、印刷安定性を損なうことなく、描画性が向上する結果が得られた(実施例34〜39)。インキ20, 22ではプラテン温度を高くすることで描画性は向上したが、ノズル欠損が生じてしまった(比較例8, 11, 12)。インキ21では乾燥温度を上げても描画性が向上せず、十分が画質を得ることができなかった(比較例9, 10)。

Claims (8)

  1. 少なくとも着色剤と水分散性樹脂微粒子と有機溶剤と水とを含む平版印刷用刷版の製版に使用される水性インクジェットインキであって、前記有機溶剤として炭素数4以上10以下の1,2−アルカンジオールをインキ中に重量%以上50重量%以下含むことを特徴とする製版用水性インクジェットインキ。
  2. 1,2−アルカンジオールとして1,2−ヘキサンジオールを含むことを特徴とする請求項1記載の製版用水性インクジェットインキ。
  3. 水分散性樹脂微粒子と着色剤のインキ中の配合重量比[水分散性樹脂微粒子/着色剤]が5以上1000以下であることを特徴とする請求項1または2記載の製版用水性インクジェットインキ。
  4. インキ中に配合される固形分量が5重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の製版用水性インクジェットインキ。
  5. 水分散性樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)が60℃以上120℃以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の製版用水性インクジェットインキ。
  6. さらにシリコン系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の製版用水性インクジェットインキ。
  7. 請求項1〜6いずれか記載の製版用水性インクジェットインキを使用し、親水性表面を有する平版印刷用原版へインクジェット印刷を行い、疎水性の画線部を形成することを特徴とした平版印刷用刷版の製版方法。
  8. 平版印刷用原版へ印刷を行った後、100℃以上250℃以下に印刷された原版を加熱することを特徴とした請求項7記載の平版印刷用刷版の製版方法。
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