JP6233132B2 - 製版用水性インクジェットインキおよび平版印刷用刷版の製版方法 - Google Patents
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Description
本発明では刷版の画線部を識別するために着色剤を使用する。着色剤としては、例えば、染料、顔料等が挙げられる。これらの着色剤は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。刷版の体制を向上させるためにも顔料を使用することが好ましい。刷版の画線部の識別が可能であれば着色剤の含有量は特に制限されないが、着色剤の含有量としてはインキの全量に対して0.1重量%以上5重量%以下、好ましくは0.2重量%以上3重量%以下、より好ましくは0.3重量%以上2重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以上1.5重量%以下である。
本発明のインキでは、刷版の疎水性画線部を形成するためのバインダー樹脂として、水分散性樹脂微粒子を使用する。一般に水性インクジェットインキのバインダー樹脂としては水溶性樹脂と水分散性樹脂微粒子の何れかが使用されるが、水分散性微粒子は樹脂の分子量が高いため、強固な皮膜を形成し、高い耐性を発揮することができる。また、水分散性微粒子はインキの粘度も比較的低く保つことができ、インクジェット適性を損なうことなく配合量を増やせるため、インクジェット用途には好適である。
更にインキ中の固形分量をインキ全量に対して5重量%以上20重量%以下とすることが好ましい。固形分量が20重量%よりも多い場合には、刷版上に形成された画線部にインクジェット印刷によるドットの凹凸が生じる場合がある。このような凹凸が多くあると、平版印刷インキの着肉性が低下したり、凹凸から画線部が欠ける原因となったりし、平版印刷物の品質低下を生じる可能性がある。固形分量が20重量%以下であれば刷版上に凹凸の少ない画線部を形成することが出来る。固形分量として好ましくは8重量%以上18重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上15重量%以下である。
本発明では有機溶剤として炭素数4以上10以下の1,2-アルカンジオールをインキ中に5重量%以上50重量%以下の割合で配合することを特徴とする。1,2-アルカンジオールはヒドロキシル基の親水部とアルキル基の疎水部とを有する両親媒性構造であることから、界面活性効果を示し高い濡れ広がり性を発揮する。また、2つのヒドロキシル基を有することにより高い保湿性を有するため、インクジェットヘッドのノズル近傍でインキが乾燥条件下におかれても流動性を保ち、ノズル欠損が生じにくくなる。また、この溶剤を使用することでインキの基材上での濡れ広がり性が向上し、製版時にプラテンで基材を加温しなくてもムラ、ニジミのない刷版を得ることが可能となる。更にプラテンを加温することで、より良質な刷版を得ることが出来る。刷版にムラ、ニジミが生じると、これを利用して平版印刷して得られた印刷物にも画質低下の影響を与えることとなる。炭素数4以上10以下の1,2-アルカンジオールを使用しない場合にはムラやニジミにより刷版品質の低下が生じる。また、これを解消するためにプラテン温度を上げると、インクジェットヘッドのノズル近傍のインキが乾燥することによりインキが不吐出となり、画像欠陥が生じてしまう。
本発明では界面活性剤をインキに配合することも可能である。界面活性剤を使用することで高い濡れ広がり性を発揮し、良質な刷版を得ることができる。更に印刷後に低温で加熱を行った場合にも高い耐刷性を発揮することが可能となる。この原因は定かではないが、界面活性剤が樹脂微粒子の造膜助剤として働き、低温でも樹脂微粒子の造膜が起こるためと考えられる。
本発明のインキは上記成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、消泡剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の添加剤を適宜添加することができる。これらの添加剤の添加量としては、インキの全質量に対して0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上3重量%以下である。
本発明で使用する平版印刷用原版としては、平版印刷に適した親水性表面を有するものであれば従来既知のものが使用できる。平版印刷用原版とは原版の元となる支持体上に、必要に応じて親水化処理、粗面化処理、インキ受理層塗布処理などを行ったものである。
本発明のインキをインクジェット方式により平版印刷用原版に画線部を印刷することで平版印刷用刷版を作成することが出来る。本発明のインキを原版へ付着させ、溶剤や水を揮発、乾燥させることで疎水性の樹脂分が原版上へ残り、これが平版印刷時に印刷される画線部となる。
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬製)0.2部とを仕込み、別途、2-エチルヘキシルアクリレート16部、メチルメタクリレート51部、スチレン30部、ジメチルアクリルアミド2部、アクリル酸1部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬製)1.8部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1%をさらに加えた。内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液10部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液20部の10%を添加し重合を開始した。反応系内を60℃で5分間保持した後、内温を60℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液の残りを1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。ジエチルアミノエタノールを添加して、pHを8.5とし、さらにイオン交換水で固形分を40%に調整して水分散性樹脂微粒子Aの分散液を得た。得られた水分散性樹脂微粒子Aの計算上のガラス転移温度は70℃である。
表1の原料を使用する以外は水分散性樹脂微粒子Aと同様の操作にて樹脂合成を行い、水分散性樹脂微粒子B〜Dの溶液を得た。得られた水分散性樹脂微粒子B〜Dの計算上のガラス転移温度は表1記載の通りである。
顔料としてピグメントブルー15:3を20部、顔料分散樹脂(スチレンアクリル樹脂、酸価200mgKOH/g)を6部、水74部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを充填したサンドミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散液を得た。
評価用インキ1の製造例と同様に、表2記載の通りの組成となるように配合を行い評価用インキ2〜22を作成した。
作成した評価用インキ1をプラテンヒーターを具備するインクジェット装置に充填し、粗面化処理したアルミニウム板を平版印刷用原版として用い、解像度1440×1440dpiで印刷を行い、平版印刷用刷版を製造した。この時の印刷時のプラテン温度は25℃であり、原版への印刷後に120℃、10分の条件で加熱処理を行った。
平版印刷用刷版1枚を製版した後に、ノズルチェックパターンを印刷しノズル欠損の有無を確認することで印刷安定性の評価を行った。
A:印刷後にノズル欠損が生じていない
B:印刷後にノズル欠損が生じている
作成した刷版をオフセット印刷機にセットし、インキとしてヴァンテアンエコー墨 HAS、湿し水としてニュースキング Aly(0.5%)を使用して新聞用紙にサイズの異なる文字列を含む画像の印刷を行った。印刷物の文字列を確認し、識別できる文字列のサイズで描画性の評価を行った。
A:3ptの文字が識別できる
B:5ptの文字が識別できる
C:8ptの文字が識別できる
D:8ptの文字が識別できない
作成した刷版をオフセット印刷機にセットし、インキとしてヴァンテアンエコー墨 HAS、湿し水としてニュースキング Aly(0.5%)を使用して新聞用紙に15万枚印刷を行った。印刷途中でおよそ1000枚ごとに印刷物を抜き取り、文字の欠けや潰れなどの画像欠陥が生じているかを確認し、評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
A:15万枚まで画像欠陥が生じない
B:10万枚まで画像欠陥が生じない
C:15万枚まで画像欠陥が生じない
D:2万枚まで画像欠陥が生じない
E:2万枚で画像欠陥が生じている
評価用インキ2, 6, 11, 19を使用して原版への印刷を行い、印刷後の加熱温度、時間を表4記載の通りに変化させ、平版印刷用刷版の製造を行った。評価は試験1と同様に印刷安定性、描画性、耐刷性の評価を行った。
評価用インキ2, 6, 11, 20, 21, 22を使用して原版への印刷を行い、印刷中のプラテン温度を表5記載の通りに変化させ、平版印刷用刷版の製造を行った。評価は試験1と同様に印刷安定性、描画性、耐刷性の評価を行った。
Claims (8)
- 少なくとも着色剤と水分散性樹脂微粒子と有機溶剤と水とを含む平版印刷用刷版の製版に使用される水性インクジェットインキであって、前記有機溶剤として炭素数4以上10以下の1,2−アルカンジオールをインキ中に8重量%以上50重量%以下含むことを特徴とする製版用水性インクジェットインキ。
- 1,2−アルカンジオールとして1,2−ヘキサンジオールを含むことを特徴とする請求項1記載の製版用水性インクジェットインキ。
- 水分散性樹脂微粒子と着色剤のインキ中の配合重量比[水分散性樹脂微粒子/着色剤]が5以上1000以下であることを特徴とする請求項1または2記載の製版用水性インクジェットインキ。
- インキ中に配合される固形分量が5重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の製版用水性インクジェットインキ。
- 水分散性樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)が60℃以上120℃以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の製版用水性インクジェットインキ。
- さらにシリコン系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の製版用水性インクジェットインキ。
- 請求項1〜6いずれか記載の製版用水性インクジェットインキを使用し、親水性表面を有する平版印刷用原版へインクジェット印刷を行い、疎水性の画線部を形成することを特徴とした平版印刷用刷版の製版方法。
- 平版印刷用原版へ印刷を行った後、100℃以上250℃以下に印刷された原版を加熱することを特徴とした請求項7記載の平版印刷用刷版の製版方法。
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