特許文献1記載の記録装置では、一のローラー(以下「反転用ローラー」と言う)の外周面を利用して反転経路を形成する。従って、例えばA3サイズのような用紙サイズの大きい用紙を反転させるためには、反転用ローラーを大きくする必要がある。
しかしながら、用紙サイズの大きい用紙を反転させるために前記反転用ローラーを大きくすると、例えばA4サイズのような用紙サイズの小さい用紙をこの反転用ローラーで反転させる際、前記用紙サイズの小さい用紙は、用紙サイズの大きい用紙に合わせて設定された反転経路を搬送されることになる。
したがって、用紙サイズの小さい用紙は、該用紙が反転経路において反転させられる際、余分な距離を移動することになる。その結果、この反転用ローラーを備えた反転経路では、用紙サイズの小さい用紙を反転させる際の時間が長くなり、スループットが低下することとなる。
また、この記録装置に用紙カセットからの搬送経路以外に、例えば記録装置の前面側から用紙を供給して記録を実行するための前面給紙経路を設けた場合において、用紙Pに記録を実行すべく前記記録ヘッドと対向する領域へと用紙Pを搬送する際、前記反転経路を利用して搬送される。
その結果、前面給紙経路に供給された用紙サイズの小さい用紙においても前面給紙経路から前記反転経路を介して前記記録ヘッドに至るので、搬送距離が長くなり、スループットが低下することとなる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、サイズの異なる媒体を反転させることができ、かつ複数の媒体搬送経路から搬送される媒体のスループットを向上させることができる反転経路を備える媒体搬送装置及び記録装置を提供することを目的とする。
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の媒体搬送装置は、媒体を処理する処理部の側から送られる媒体を反転させる第1ローラーと、前記第1ローラーに対して前記処理部の側に位置し、前記処理部の側から送られる前記媒体を反転させる機能と、外周面が前記第1ローラーによる反転前の媒体搬送経路と反転後の媒体搬送経路との双方に面して媒体に搬送力を付与する機能と、を備える第2ローラーと、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第1ローラーに沿って反転させて前記処理部の側に送る第1の媒体搬送経路と、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第2ローラーに沿って反転させて前記処理部の側に送る第2の媒体搬送経路と、前記反転前の媒体搬送経路において前記第2ローラーへ前記媒体を合流させる合流経路と、を備え、前記合流経路から搬送される前記媒体は、前記第2の媒体搬送経路を通って前記処理部へ搬送されることを特徴とする。
本態様によれば、処理部の側から送られる前記媒体を前記第1のローラーに沿って反転させて前記処理部の側に送る第1の媒体搬送経路と、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第1ローラーに対して前記処理部の側に位置する前記第2のローラーに沿って反転させて前記処理部の側に送る第2の媒体搬送経路とを備えるので、前記媒体の搬送方向における長さに応じて前記媒体を反転させる経路を選択することができる。
その結果、搬送方向における長さが短い媒体では、第2の媒体搬送経路を使用することにより、第1の媒体搬送経路を使用するよりも短い移動距離で反転することができるとともに搬送時間も短くすることができる。したがって、本態様の媒体搬送装置は、用紙サイズの異なる用紙を反転させることができるとともにスループットを向上させることができる。
また、前記合流経路から供給された媒体は、搬送方向における長さに関係なく前記第2の媒体搬送経路を通って前記処理部へ搬送されるので、前記第1の媒体搬送経路を通って前記処理部に向かうよりも搬送距離が短くなり、搬送時間を短くすることができる。その結果、前記合流経路から供給された媒体の記録時間を短くすることができるとともに前記合流経路から媒体を供給する際のスループットを向上させることができる。
本発明の第2の態様の媒体搬送装置は、媒体を処理する処理部の側から送られる媒体を反転させる第1ローラーと、前記第1ローラーに対して前記処理部の側に位置し、前記処理部の側から送られる前記媒体を反転させる機能と、外周面が前記第1ローラーによる反転前の媒体搬送経路と反転後の媒体搬送経路との双方に面して媒体に搬送力を付与する機能と、を備える第2ローラーと、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第1ローラーに沿って反転させて前記処理部の側に送る第1の媒体搬送経路と、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第1ローラーと前記第2ローラーとの間をショートカットさせて前記処理部の側に送る第2の媒体搬送経路と、前記反転前の媒体搬送経路において前記第2ローラーへ前記媒体を合流させる合流経路と、を備え、前記合流経路から搬送される前記媒体は、前記第2の媒体搬送経路を通って前記処理部へ搬送されることを特徴とする。
本態様によれば、処理部の側から送られる前記媒体を前記第1ローラーに沿って反転させて前記処理部の側に送る第1の媒体搬送経路と、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第1ローラーと前記第2ローラーとの間をショートカットさせて前記処理部の側に送る第2の媒体搬送経路とを備えるので、前記媒体の搬送方向における長さに応じて前記媒体を反転させる経路を選択することができる。
その結果、搬送方向における長さが短い媒体では、前記第1ローラーと前記第2ローラーとの間をショートカットする第2の媒体搬送経路を使用することにより、第1の媒体搬送経路を使用するよりも短い移動距離で反転することができるとともに搬送時間も短くすることができる。したがって、本態様の媒体搬送装置は、用紙サイズの異なる用紙を反転させることができるとともにスループットを向上させることができる。
また、前記合流経路から供給された媒体は、搬送方向における長さに関係なく前記第1ローラーと前記第2ローラーとの間をショートカットする前記第2の媒体搬送経路を通って前記処理部へ搬送されるので、前記第1の媒体搬送経路を通って前記処理部に向かうよりも搬送距離が短くなり、搬送時間を短くすることができる。その結果、前記合流経路から供給された媒体の記録時間を短くすることができるとともに前記合流経路から媒体を供給する際のスループットを向上させることができる。
本発明の第3の態様の媒体搬送装置は、第1または第2の態様において、前記処理部と前記第2ローラーとの間に位置する搬送ローラー対を備え、前記媒体の搬送方向における長さが、前記搬送ローラー対から前記第2の媒体搬送経路を介して前記搬送ローラー対に至る長さよりも長い場合、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第1の媒体搬送経路により搬送し、前記媒体の搬送方向における長さが、前記搬送ローラー対から前記第2の媒体搬送経路を介して前記搬送ローラー対に至る長さ以下の場合、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第2の媒体搬送経路により搬送することを特徴とする。
本態様によれば、前記媒体の搬送方向における長さが、前記搬送ローラー対から前記第2の媒体搬送経路を介して前記搬送ローラー対に至る長さよりも長い場合、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第1の媒体搬送経路により搬送し、前記媒体の搬送方向における長さが、前記搬送ローラー対から前記第2の媒体搬送経路を介して前記搬送ローラー対に至る長さ以下の場合、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第2の媒体搬送経路により搬送するので、各媒体における長さに応じて前記媒体搬送経路を使い分けて、前記搬送ローラー対から前記第2の媒体搬送経路を介して前記搬送ローラー対に至る長さ以下の媒体における搬送距離を短くすることがきる。
その結果、前記搬送ローラー対から前記第2の媒体搬送経路を介して前記搬送ローラー対に至る長さ以下の媒体において余分な距離を搬送されることがないので、前記搬送ローラー対から前記第2の媒体搬送経路を介して前記搬送ローラー対に至る長さ以下の媒体における搬送時間を短くすることができる。したがって、本態様の媒体搬送装置は、用紙サイズの異なる用紙を反転させることができるとともにスループットを向上させることができる。
本発明の第4の態様の記録装置は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記第1ローラーと前記第2ローラーとの間に位置し、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第1の媒体搬送経路へ搬送する第1姿勢と、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第2の媒体搬送経路へ搬送する第2姿勢とを切換可能な切換手段を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1ローラーと前記第2ローラーとの間に位置し、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第1の媒体搬送経路へ搬送する第1姿勢と、前記処理部の側から送られる前記媒体を前記第2の媒体搬送経路へ搬送する第2姿勢とを切換可能な切換手段を備えるので、各媒体の長さに応じて搬送される媒体の使用する媒体搬送経路を切り換えることができる。その結果、各媒体において余分な距離を搬送されることがないので、各媒体における搬送時間を短くすることができる。したがって、本態様の媒体搬送装置は、用紙サイズの異なる用紙を反転させることができるとともにスループットを向上させることができる。
本発明の第5の態様の記録装置は、媒体を処理する処理部と、第1から第4のいずれか一の態様における媒体搬送装置とを備えることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様から第4の態様のいずれか一の態様と同じ効果を得ることができる。
本発明の第6の態様の記録装置は、第5の態様において、前記合流経路は、前記反転前の媒体搬送経路において前記第2ローラーに対して前記処理部側の位置で合流することを特徴とする。
本態様によれば、第5の態様における作用効果に加え、前記合流経路が前記反転前の媒体搬送経路において前記第2ローラーに対して前記処理部側の位置で合流するので、前記合流経路から搬送されてきた媒体を前記第2の媒体搬送経路を介して前記処理部に搬送することができる。その結果、前記合流経路から前記処理部までの経路の長さが前記第1の媒体搬送経路を通る場合よりも短くなるので、搬送時間が短くなり、前記合流経路から媒体を供給する際のスループットを向上させることができる。
本発明の第7の態様の記録装置は、媒体を処理する処理部と、第4の態様における媒体搬送装置と、前記媒体搬送装置を制御する制御部と、媒体を検出する検出器と、を備え、前記合流経路は、前記反転前の媒体搬送経路において前記第2ローラーに対して前記処理部側の位置で合流し、前記制御部は、前記検出器により検出した前記媒体の搬送方向における前記媒体の長さに基づいて、前記切換手段の前記第1の姿勢と前記第2の姿勢とを切り換えることを特徴とする。
本態様によれば、第4の態様における作用効果に加え、前記制御部が前記検出器により検出した前記媒体の長さの情報に基づいて前記切換手段の姿勢を切り換えるので、前記媒体の長さに対応する媒体搬送経路を選択することができる。その結果、この記録装置において、用紙サイズの異なる用紙を反転させることができるとともにスループットを向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施例において同一の構成については、同一の符号を付し、最初の実施例においてのみ説明し、以後の実施例においてはその構成の説明を省略する。
図1は本発明に係るプリンターの背面側斜視図であり、図2は本発明に係る第1の実施例におけるプリンターの媒体収容部からの媒体搬送経路を示す側断面図であり、図3は第1の実施例に係る搬送部周辺の拡大図であり、図4は本発明に係るプリンターの制御ブロック図であり、図5は本発明に係る第1の実施例におけるプリンターの第1の媒体搬送経路を示す側断面図である。
図6は本発明に係る第1の実施例におけるプリンターの第2の媒体搬送経路を示す側断面図であり、図7は本発明に係る第1の実施例におけるプリンターにおいて前面給送経路から搬送される媒体の媒体搬送経路を示す側断面図であり、図8は第1の実施例の変更例に係る搬送部周辺の拡大図である。
また、各図において示すX−Y−Z座標系はX方向が記録ヘッドの走査方向、Y方向が記録装置の奥行き方向、Z方向が記録ヘッドと媒体との間の距離(ギャップ)の変化する方向すなわち装置高さ方向を示している。尚、各図において−Y方向を装置前面側とし、+Y方向側を装置背面側とする。
■■■プリンターの概要■■■■■■■
図1を参照するに、本発明に係るプリンター10が示されている。プリンター10は、装置本体12と、装置本体12の上部に当該装置本体12に対して回動可能に設けられた原稿読取装置14とを備えている。装置本体12は、装置背面側(図1+Y方向側)において、装置本体12に対して回動可能に構成された背面カバー16を備えている。尚、図1において、背面カバー16は、装置本体12に対して閉じた状態にある。
次いで、図2を参照してプリンター10における「媒体」としての用紙Pの搬送経路18について説明する。プリンター10は、装置本体12において媒体収容部20と、「媒体搬送装置」としての搬送部22と、「処理部」としての記録部24と、排出部26と、制御部28(図4参照)とを備えている。尚、図2における符号18が付された一点鎖線は、媒体収容部20から搬送部22及び記録部24を介して排出部26へ至る用紙Pの搬送経路18である。
媒体収容部20は、プリンター10において図2におけるZ軸方向下方側に位置する給紙カセット30を備えている。給紙カセット30は、装置本体12に対し装置前方側(図2における−Y方向側)から装着及び取り外し可能に構成されている。
給紙カセット30の上方には、図示しない駆動源によって回転駆動される給送ローラー32、32が設けられている。また、給紙カセット30の底板30aは用紙Pを支持するとともに図2における+Z軸方向に位置する給送ローラー32に用紙Pを付勢するホッパーとして構成されている。
制御部28(図4参照)の制御により、給紙カセット30に収容された用紙Pを搬送経路下流側に給送する際、給送ローラー32は給紙カセット30に収容された用紙Pの最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙Pを給紙カセット30から搬送経路下流側へ送り出す。
また、背面カバー16は、装置本体12に対して閉じられた状態にある際、その内面が用紙Pの搬送経路の一部を構成している。すなわち、背面カバー16の内側に形成された給送経路部34は、給紙カセット30から送り出された用紙Pを搬送経路18に沿って搬送部22へ案内する。
搬送部22は、第1ローラー36、第2ローラー38、第1搬送従動ローラー40、第2搬送従動ローラー42、第3搬送従動ローラー44、第4搬送従動ローラー46、第5搬送従動ローラー48及び一対の搬送ローラー対50を備えている。また、第1ローラー36及び第2ローラー38は、装置本体12に対して着脱可能なユニット体52として構成している。また、ユニット体52において第1ローラー36と第2ローラー38との間には、「第2の媒体搬送経路」としてのショートカット搬送経路54が設けられている。ショートカット搬送経路54については、後述する。
尚、ユニット体52は、装置本体12に対して背面カバー16を図2における+Y軸方向に回動させて、背面カバー16を装置本体12に対して開いた状態とした際、図2における+Y軸方向側から装置本体12に対して着脱することができる。また、本実施例において第1ローラー36及び第2ローラー38は、ユニット体52が装置本体12に取り付けられ、背面カバー16が装置本体12に対して閉じられた状態の際、図示しない共通の駆動源によりそれぞれ図2における時計周り方向に回転駆動させられる。
用紙Pは、搬送部22において搬送経路18に沿って第1ローラー36と当接する第5搬送従動ローラー48及び第3搬送従動ローラー44、第2ローラー38と当接する第2搬送従動ローラー42及び第1搬送従動ローラー40を介して搬送ローラー対50に搬送される。搬送部22の搬送ローラー対50の搬送経路下流側には、記録部24が設けられている。
記録部24は、走査方向(図2におけるX軸方向)に移動可能なキャリッジ56と、キャリッジ56の下部に設けられ、用紙Pにインクを吐出する記録ヘッド58と、記録ヘッド58と対向し、用紙Pを支持するように設けられたプラテン60とを備えている。
さらに、記録部24の搬送経路下流側には、排出部26が設けられている。排出部26には一対の排出ローラー62が設けられている。搬送経路18に沿って搬送部22から記録部24へと送られた用紙Pは、その第1面(表面)に記録が実行される。記録実行後、用紙Pは排出ローラー62にニップされ、装置本体12の前面側に設けられた開口64からへ装置前方側に設けられた排出スタッカー66に向けて排出される。排出スタッカー66は、排出された用紙Pを支持する。
また、プリンター10は、媒体収容部20から搬送部22を介して記録部24へと至る搬送経路18の他に、プリンター10の前方側(図2及び図7における−Y軸方向側)から用紙Pを供給する「合流経路」としての前面給送経路68(図7における二点鎖線参照)を備えている。
前面給送経路68は、前面媒体支持部70と、記録部24の図2における−Z軸方向側に位置する搬送路72とを備えている。前面媒体支持部70は、用紙Pをプリンター10の前方側(図2における−Y軸方向側)から搬送部22に搬送する際の給紙トレイとして機能する。また、前面媒体支持部70の少なくとも一部は、排出スタッカー66に用紙Pが排出された際、排出スタッカー66とともに用紙Pを支持する。
搬送路72は、前面媒体支持部70に支持された用紙Pを第2ローラー38と第4搬送従動ローラー46とのニップ点に向けて搬送するように構成されている。尚、前面給送経路68については、後ほど説明する。
また、搬送部22の搬送ローラー対50の搬送経路上流側には、「検出器」としての媒体検出器74が設けられている。媒体検出器74は、一例として搬送経路18に沿って用紙Pの先端が記録部24に向かって搬送される際、媒体検出器74を横切ると用紙Pの検出を開始し、制御部28に検出信号を送信する。そして、用紙Pの後端が媒体検出器74を記録部24に向けて横切ると用紙Pの検出が終了し、前記検出信号の制御部28への送信を停止する。
尚、本実施例において一例として制御部28は、媒体検出器74からの検出信号を受信してから停止するまでの間、搬送部22における第1ローラー36及び第2ローラー38を回転駆動させる前記共通の駆動源(図示せず)の回転数を図示しないエンコーダー等を用いて監視し、検出された回転数に基づいて用紙Pの搬送方向における長さを算出するように構成されている。
■■■第1の実施例■■■■■■■
■■■記録部から送られた媒体の反転経路について■■■■■■■
次いで、図3、図5及び図6を参照して用紙Pを反転させるための2つの反転経路について説明する。図3に示すように、ユニット体52において、第1ローラー36と第2ローラー38との間には、ユニット体52の高さ方向つまり図3におけるZ軸方向においてユニット体52の上面52aと下面52bとを繋ぐショートカット搬送経路54が設けられている。
本実施例において、ショートカット搬送経路54は、第2ローラー38に沿って湾曲して形成されている。また、ユニット体52の下面52bにおいてショートカット搬送経路54の入り口側には、「切換手段」としてのフラップ76が設けられている。すなわち、フラップ76は、第1ローラー36と第2ローラー38との間に位置している。
フラップ76は、ショートカット搬送経路54の入り口が閉じられた姿勢(図3破線状態参照)と、入り口が開いている姿勢(図3実線状態参照)とを切換可能に構成されている。具体的には、フラップ76は制御部28により制御された図示しない駆動源(ソレノイド等)により姿勢を切り換えられる。尚、ここで、フラップ76において、ショートカット搬送経路54の入り口が閉じられた姿勢を第1姿勢とし、ショートカット搬送経路54の入り口が開いている姿勢を第2姿勢とする。
ここで、フラップ76の第1姿勢と第2姿勢との切換動作について説明する。図3において符号78が付された破線の経路は、後述する第2の媒体搬送経路78を示している。ここで、第2の媒体搬送経路78の経路長Lは、搬送ローラー対50からショートカット搬送経路54を介して再度搬送ローラー対50に至る経路の長さである。尚、本実施例では、一つの例として第2の媒体搬送経路78の経路長LをA4サイズの用紙の長さに設定されている。
制御部28は、媒体検出器74及びエンコーダー(図示せず)の検出情報に基づいて得られた用紙Pの搬送方向の長さが、第2の媒体搬送経路78の経路長Lより長い場合、フラップ76を第1の姿勢(図3破線状態参照)とする。また、制御部28は、用紙Pの搬送方向の長さが、第2の媒体搬送経路78の経路長L以下の場合、フラップ76を第2の姿勢(図3実線状態参照)とする。
次いで図5を参照するに、符号80が付された一点鎖線は、第1の媒体搬送経路80である。用紙Pの第1面(表面)と第2面(裏面)とを反転させるために用紙Pを記録部24から搬送部22に逆送する際、制御部28は、用紙Pの搬送方向における長さが第2の媒体搬送経路78の経路長Lより長いと判断した場合、フラップ76を第1の姿勢(図3破線状態参照)とし、第1の媒体搬送経路80に沿って用紙Pを搬送する。
具体的には、用紙Pが記録部24から搬送部22に搬送される際、用紙Pは図3における−Y軸方向側から+Y軸方向側に向かってユニット体52の下面52bの下方に位置する反転前の媒体搬送経路を通り、第1ローラー36の外周面を利用して用紙Pが反転させられる。
そして、第1ローラー36により反転させられた用紙Pは、搬送部22において図3における+Y軸方向側から−Y軸方向側に向かってユニット体52の上面52aの上方に位置する反転後の媒体搬送経路を通り、記録部24に送られる。具体的には、用紙Pは、第1の媒体搬送経路80に沿って第1ローラー36と当接する第5搬送従動ローラー48及び第3搬送従動ローラー44、第2ローラー38と当接する第2搬送従動ローラー42及び第1搬送従動ローラー40を介して搬送ローラー対50に搬送される。
そして、用紙Pは、搬送ローラー対50の搬送方向下流側に位置する記録部24に再度送られ、記録部24において第2面(裏面)に記録が実行される。つまり、第1の媒体搬送経路80は、記録部24から送られる用紙Pを第1ローラー36に送る反転前の媒体搬送経路と、用紙Pを第1ローラー36に沿って反転させた後、記録部24に向けて送る反転後の媒体搬送経路とを備えて構成されている。尚、本実施例では、例えばA3サイズの用紙Pが第1の媒体搬送経路80に沿って反転させられる。
次いで図6を参照するに、符号78が付された二点鎖線は、第2の媒体搬送経路78である。用紙Pの第1面(表面)と第2面(裏面)とを反転させるために用紙Pを記録部24から搬送部22に逆送する際、制御部28は、用紙Pの搬送方向における長さが第2の媒体搬送経路78の経路長L以下であると判断した場合、フラップ76を第2の姿勢(図3実線状態参照)とし、第2の媒体搬送経路78に沿って用紙Pを搬送する。
具体的には、用紙Pが記録部24から搬送部22に搬送される際、用紙Pは図3における−Y軸方向側から+Y軸方向側に向かってユニット体52の下面52bの下方に位置する反転前の媒体搬送経路を搬送され、第2姿勢にあるフラップ76によりショートカット搬送経路54内に導かれる。そして、用紙Pはショートカット搬送経路54を通ることにより反転させられる。
そして、ショートカット搬送経路54を通ることにより反転させられた用紙Pは、搬送部22において図3における+Y軸方向側から−Y軸方向側に向かってユニット体52の上面52aの上方に位置する反転後の媒体搬送経路を通り、記録部24に送られる。具体的には、用紙Pは、第2の媒体搬送経路78に沿って第2ローラー38と当接する第2搬送従動ローラー42及び第1搬送従動ローラー40を介して搬送ローラー対50に搬送される。
そして、用紙Pは、搬送ローラー対50の搬送方向下流側に位置する記録部24に再度送られ、記録部24において第2面(裏面)に記録が実行される。つまり、第2の媒体搬送経路78は、記録部24から送られる用紙Pをショートカット搬送経路54に案内する反転前の媒体搬送経路と、用紙Pをショートカット搬送経路54に通らせて、用紙Pを反転させ、記録部24に向けて送る反転後の媒体搬送経路とを備えて構成されている。尚、本実施例では、例えばA4サイズ以下の用紙Pが第2の媒体搬送経路78に沿って反転させられる。
したがって、プリンター10及び搬送部22は、記録部24の側から送られる用紙Pを第1ローラー36に沿って反転させて記録部24の側に送る第1の媒体搬送経路80と、記録部24の側から送られる用紙Pを第1ローラー36に対して記録部24の側に位置する第2ローラー38に沿って反転させて記録部24の側に送る第2の媒体搬送経路78とを備えている。
したがって、プリンター10及び搬送部22において、用紙Pの搬送方向における長さに応じて用紙Pを反転させる経路を選択することができる。その結果、搬送方向における長さが第2の媒体搬送経路78の経路長L以下の長さの用紙P、例えば用紙サイズがA4以下である場合、用紙Pの搬送に第2の媒体搬送経路78を使用することにより、第1の媒体搬送経路80を使用するよりも短い移動距離で反転することができるとともに搬送時間も短くすることができる。したがって、プリンター10及び搬送部22は、用紙サイズの異なる用紙を反転させることができるとともにスループットを向上させることができる。
また、用紙Pにおける搬送方向の長さに応じて第1の媒体搬送経路80と第2の媒体搬送経路78とを使い分けて、経路長L以下の長さの用紙Pにおける搬送距離を短くすることがきる。その結果、経路長L以下の長さの用紙Pにおいて余分な距離を搬送されることがないので、経路長L以下の長さの用紙Pにおける搬送時間を短くすることができる。したがって、プリンター10及び搬送部22は、用紙サイズの異なる用紙を反転させることができるとともにスループットを向上させることができる。
また、制御部28は、媒体検出器74及びエンコーダー(図示せず)の検出情報に基づいて得られた用紙Pの搬送方向の長さに応じて、フラップ76の姿勢を記録部24の側から送られる用紙Pを第1の媒体搬送経路80へ搬送する第1姿勢と、記録部24の側から送られる用紙Pを第2の媒体搬送経路78へ搬送する第2姿勢とを切り換えるので、用紙Pの搬送方向における長さに応じて第1の媒体搬送経路80と第2の媒体搬送経路78とを切り換えることができる。
その結果、経路長L以下の長さの用紙Pにおいて余分な距離を搬送されることがないので、経路長L以下の長さの用紙Pにおける搬送時間を短くすることができる。したがって、プリンター10及び搬送部22は、用紙サイズの異なる用紙を反転させることができるとともにスループットを向上させることができる。
また、本実施例において用紙Pの搬送方向における長さに応じて、用紙Pを反転させる経路として第1の媒体搬送経路80と第2の媒体搬送経路78を使い分けることにより、第1ローラー36への負荷を低減することができる。具体的には、第1ローラー36は、媒体収容部20から用紙Pを引き上げるため、第2ローラー38よりも負荷が大きく磨耗しやすい。
すなわち、搬送方向における長さが短い用紙Pを反転させる際、第2の媒体搬送経路78を使用することは、第1の媒体搬送経路80ひいては第1ローラー36の負荷を減らすこととなる。その結果、第1ローラー36の寿命が延びるので、プリンター10及び搬送部22の高寿命化を図ることができる。
■■■前面給送経路について■■■■■■■
次いで、図7を参照して、プリンター10の前方側(図7における−Y軸方向側)から供給された用紙Pを記録部24まで搬送する前面給送経路68(図7における二点鎖線)について説明する。
前面給送経路68において、前面媒体支持部70と排出スタッカー66の少なくとも一部に支持された用紙Pは、図示しない駆動源により駆動される給送ローラー82により搬送路72に沿って搬送部22に向けて搬送される。搬送路72は、記録部24から搬送部22に向けて搬送される反転経路に合流する。具体的には、搬送路72は、搬送部22における第2ローラー38と第4搬送従動ローラー46とのニップ点よりも搬送方向上流側、つまり記録部24側において第2の媒体搬送経路78における反転前の媒体搬送経路に合流する。
ここで、用紙Pが前面給送経路68から供給される際、用紙Pは前面給送経路68及び第2の媒体搬送経路78を経て搬送ローラー対50に至るので、搬送ローラー対50にニップされた用紙Pの先端は、用紙Pの搬送方向における長さに関係なく用紙Pの後端と重なることがない。
したがって、用紙Pが前面給送経路68から供給される際、制御部28はフラップ76を第2姿勢に切り換えて、用紙Pを前面給送経路68から第2の媒体搬送経路78に案内し、記録部24へ搬送させる。記録部24へ搬送された用紙Pは、記録部24において用紙Pの第1面(表面)に記録が実行される。両面記録を実行しない場合、用紙Pは排出部26に向けて搬送される。
次いで、前面給送経路68から第2の媒体搬送経路78を介して記録部24へ供給された用紙Pにおいて、両面記録を実行する際の反転経路について説明する。用紙Pが前面給送経路68から第2の媒体搬送経路78を介して記録部24へ供給される際、制御部28は、媒体検出器74により用紙Pの検出を行う。用紙Pの第2面(裏面)への記録を実行する際、制御部28は、媒体検出器74及び図示しないエンコーダーの検出情報に基づいて用紙Pの搬送方向における長さを算出する。
制御部28は、用紙Pの搬送方向における長さが第2の媒体搬送経路78の経路長Lより長い場合、フラップ76を第1の姿勢(図3破線状態参照)とし、用紙Pを第1の媒体搬送経路80に沿って搬送する。また、制御部28は、用紙Pの搬送方向における長さが第2の媒体搬送経路78の経路長L以下の場合、フラップ76を第2の姿勢(図3実線状態参照)とし、用紙Pを第2の媒体搬送経路78に沿って搬送する。
前面給送経路68から供給された用紙Pは、搬送方向における長さに関係なく、第1ローラー36と第2ローラー38との間をショートカットするショートカット搬送経路54を通って第2の媒体搬送経路78に沿って記録部24へ搬送されるので、第1の媒体搬送経路80を通って記録部24に向かうよりも搬送距離が短くなり、搬送時間を短くすることができる。その結果、前面給送経路68から供給された用紙Pの記録時間を短くすることができるとともに、前面給送経路68から用紙Pを供給する際のスループットを向上させることができる。
また、前面給送経路68は第2の媒体搬送経路78における前記反転前の媒体搬送経路において前記第2ローラーに対して記録部24側の位置で合流するので、前面給送経路68から搬送されてきた用紙Pを第2の媒体搬送経路78を介して記録部24に搬送することができる。その結果、前面給送経路68から記録部24までの経路の長さが第1の媒体搬送経路80を通る場合よりも短くなるので、搬送時間が短くなり、前面給送経路68から用紙Pを供給する際のスループットを向上させることができる。
また、制御部28が媒体検出器74により検出した用紙Pの長さの情報に基づいてフラップ76の姿勢を切り換えるので、用紙Pの長さに対応する媒体搬送経路を選択することができる。その結果、プリンター10及び搬送部22において、用紙サイズの異なる用紙を反転させることができるとともにスループットを向上させることができる。
<<<第1の実施例の変更例>>>
(1)本実施例では、ショートカット搬送経路54を第2ローラー38に沿って用紙Pを反転させる経路として構成したが、ショートカット搬送経路54の形成位置は、第1ローラー36と第2ローラー38との間に位置していればよい。
(2)本実施例では、フラップ76を搬送部22におけるユニット体52の下面52bに設ける構成としたが、この構成に代えて、図8に示すようにフラップ84を装置本体12側においてユニット体52の下面52bにおけるショートカット搬送経路54の入り口と対向する位置に設けてもよい。
(3)また、本実施例では、用紙Pの搬送方向における長さが第2の媒体搬送経路78の経路長L以下の場合、用紙Pを第2の媒体搬送経路78に沿って搬送する構成としたが、この構成に代えて、用紙Pの長さが経路長L以下であっても印刷デューティやインクの乾燥時間、高密度記録の実行時等は、制御部28により用紙Pを第1の媒体搬送経路80に沿って搬送するように制御してもよい。
上記説明をまとめると、本実施形態の搬送部22は、用紙Pを処理する記録部24の側から送られる用紙Pを反転させる第1ローラー36と、該第1ローラー36に対して記録部24の側に位置し、記録部24の側から送られる用紙Pを反転させる機能と、外周面が第1ローラー36による反転前の媒体搬送経路と反転後の媒体搬送経路との双方に面して媒体に搬送力を付与する機能と、を備える第2ローラー38と、記録部24の側から送られる用紙Pを第1ローラー36に沿って反転させて記録部24の側に送る第1の媒体搬送経路80と、記録部24の側から送られる用紙Pを第2ローラー38に沿って反転させて記録部24の側に送る第2の媒体搬送経路78と、第2の媒体搬送経路78における反転前の媒体搬送経路において第2ローラー38へ用紙Pを合流させる前面給送経路68とを備えている。前面給送経路68から搬送される用紙Pは、第2の媒体搬送経路78を通って記録24部へ搬送される。
搬送部22は、用紙Pを処理する記録部24の側から送られる用紙Pを反転させる第1ローラー36と、該第1ローラー36に対して記録部24の側に位置し、記録部24の側から送られる用紙Pを反転させる機能と、外周面が第1ローラー36による反転前の媒体搬送経路と反転後の媒体搬送経路との双方に面して媒体に搬送力を付与する機能と、を備える第2ローラー38と、記録部24の側から送られる用紙Pを第1ローラー36に沿って反転させて記録部24の側に送る第1の媒体搬送経路80と、記録部24の側から送られる用紙Pを第1ローラー36と第2ローラー38との間をショートカットさせて記録部24の側に送る第2の媒体搬送経路78と、第2の媒体搬送経路78における反転前の媒体搬送経路において第2ローラー38へ用紙Pを合流させる前面給送経路68とを備えている。前面給送経路68から搬送される用紙Pは、第2の媒体搬送経路78を通って記録24部へ搬送される。
搬送部22は、記録部24と第2ローラー38との間に位置する搬送ローラー対50を備え、用紙Pの搬送方向における長さが、搬送ローラー対50から第2の媒体搬送経路78を介して搬送ローラー対50に至る経路長Lよりも長い場合、記録部24の側から送られる用紙Pを第1の媒体搬送経路80により搬送し、用紙Pの搬送方向における長さが、搬送ローラー対50から第2の媒体搬送経路78を介して搬送ローラー対50に至る経路長L以下の場合、記録部24の側から送られる用紙Pを第2の媒体搬送経路78により搬送する。
搬送部22は、第1ローラー36と第2ローラー38との間に位置し、記録部24の側から送られる用紙Pを第1の媒体搬送経路80へ搬送する第1姿勢と、記録部24の側から送られる用紙Pを第2の媒体搬送経路78へ搬送する第2姿勢とを切換可能なフラップ76、84を備える。
プリンター10は、用紙Pを処理する記録部24と搬送部22とを備える。さらにプリンター10において前面給送経路68は、第2の媒体搬送経路78における反転前の媒体搬送経路において第2ローラー38側の位置で合流する。
あるいはプリンター10は、用紙Pを処理する記録部24とフラップ76、84が設けられた搬送部22と、搬送部22を制御する制御部28と、用紙Pを検出する媒体検出器74とを備えている。制御部28は、媒体検出器74により検出した用紙Pの搬送方向における長さに基づいて、フラップ76、84の第1の姿勢と第2の姿勢とを切り換える。
また、本実施形態では本発明に係る搬送部22を記録装置の一例としてのインクジェットプリンターに適用したが、その他液体噴射装置一般に適用することも可能である。
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンター、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含むものである。
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。