まず、本発明に用いられる光学フィルムについて説明する。図1(A)は、光学フィルムの構成例を模式的に表す平面図であり、図1(B)はその断面図である。光学フィルム1は、第一の領域101と第二の領域102とを有する。第一の領域101および第二の領域102は、長手方向(MD方向)に延在している。そのため、第一の領域101と第二の領域102との境界線105も長手方向に延在している。この長尺状の光学フィルム1は、切断工程を経て、最終的には、所定形状の枚葉体の光学フィルム1a〜1hに切断され、製品となる。
光学フィルム1の第一の領域101と第二の領域102とは、偏光状態が互いに異なる光学特性を有している。第一の領域と第二の領域の「偏光状態が互いに異なる」とは、直交ニコルあるいは平行ニコルに配置された2枚の偏光板(偏光子と検光子)の間に、光学フィルムが任意の角度で配置された場合に、第一の領域と第二の領域との透過率が異なる場合を意味する。例えば、第一の領域と第二の領域の偏光軸方向が異なる場合や、第一の領域と第二の領域が異なる複屈折特性(リターデーションや光軸方向)を有している場合、両者の偏光状態は互いに異なる。
光学フィルム1は、光学等方性フィルムや光学異方性フィルムからなる基材フィルム110上に、第一偏光領域131と第二偏光領域132を有する。光学異方性フィルムとしては、位相差板や偏光板等が挙げられる。第一偏光領域131および第二偏光領域132のそれぞれは、長手方向に延在する帯状に形成されており、境界線105に沿って両者は隣接している。このような光学フィルムは、長尺の基材フィルム110を長手方向に搬送しながら、その上に偏光領域131,132を塗布等により形成することによって製造される。第一偏光領域131と第二偏光領域132とは、例えば吸収軸方向が直交するように構成されている。図1に示す構成において、第一偏光領域131は、長手方向に吸収軸131aを有し、第二偏光領域132は、幅方向に吸収軸132aを有する。第一偏光領域131および第二偏光領域132の幅は特に制限されないが、例えば、1μm〜10cm程度である。
長手方向に連続して製造された光学フィルムは、最終的には、映像表示装置の画面サイズに合わせた枚葉体1a〜1hに切断されて、製品となる。本発明は、このように長尺状に形成された光学フィルムを、長手方向と平行な方向に所定位置で切断する方法、および当該切断に用いられる光学フィルム走行制御システムに関する。なお、フィルムの打ち抜き切断加工のように、長手方向と平行な方向への切断と当時に、長手方向の直交方向(幅方向)の切断が行われてもよい。
図2は、本発明の光学フィルムの製造工程、および当該製造工程に用いられる光学フィルム走行制御システムの構成概要を表す断面図である。図3は、図2における要部の斜視図である。光学フィルム走行制御システム500は、位置検出部20と、位置補正機構30を備える。位置検出部20は、MD方向に走行する光学フィルム1の幅方向における走行位置を検出する。位置補正機構30は、位置検出部20における走行位置検出結果に応じて、光学フィルムの走行位置が一定に保たれるように、幅方向の走行位置を補正する。位置補正機構30は、例えば、アクチュエータ等の動作部31を備えるガイドローラ32を有し、位置検出部20と動作部31とは、適宜の制御部40を介して連動されている。
図4は、位置検出部20の構成例、および偏光を利用した位置検出の原理を説明するための概念図である。位置検出部20において、フィルム走行面Sの法線上には、光源21と受光部29とが、フィルム走行面Sに対峙して設けられている。図4では、光源21とフィルム走行面との間に、偏光板23が設けられている。偏光板23は、光学フィルムの走行方向と直交する方向、すなわち幅方向に吸収軸を有する。
偏光板23の吸収軸方向と、光学フィルムの第一の領域上の偏光領域131の吸収軸方向は、直交する。光源21から射出された光(例えば、自然光)は、偏光板23により、紙面法線方向に振動する光が吸収され、紙面左右方向に振動する直線偏光として光学フィルム1側に射出される。偏光板23の吸収軸方向と偏光領域131の吸収軸方向131aが直交するため、偏光板23から射出された直線偏光は、第一の領域上の偏光領域131により吸収される。一方、偏光板23の吸収軸方向と、光学フィルムの第二の領域上の偏光領域132の吸収軸方向132aは、平行である。そのため、光源21から射出され、偏光板23を透過した直線偏光は、第二の領域上の偏光領域132では吸収されず、受光部29側に射出される。
受光部29は、例えば、フォトダイオードアレイやカメラ等のイメージセンサであり、幅方向に複数の受光素子を備える。図4に示す形態では、第一の領域101の偏光層で光が吸収されるため、第一の領域101の位置に対応する受光素子(図4において、受光部29の右側半分)には光源21からの光が到達せず(あるいは僅かな光のみが到達し)、第二の領域102の位置に対応する受光素子(図4において、受光部29の左側半分)にのみ、光源21からの光が到達する。そのため、光学フィルム1の第一の領域101と第二の領域102との境界105の位置は、受光部内の各受光素子に到達する光量が所定の閾値を超える位置、すなわち、明暗の境界として、受光部により検出される。明暗の境界、すなわち第一の領域と第二の領域との境界は、各受光素子の受光量等に基づいて、画像解析等によって検出することもできる。
図4では、光源21とフィルム走行面Sとの間に、偏光板23を備える例が図示されているが、偏光板は、光学フィルム走行面Sの法線上に配置されていればよい。例えば、図4において、光源21とフィルム走行面Sとの間の偏光板23に代えて、受光部29とフィルム走行面Sとの間に、偏光板25を設けることもできる。この場合、光源21から光学フィルム1へ入射した光は、第一の領域101と第二の領域102とで、それぞれ直交する直線偏光として偏光板25側に射出される。一方の領域からの光は直線偏光板25で吸収され、他方の領域からの光は直線偏光板25を透過するため、先の場合と同様に、明暗の境界に基づいて境界線105の位置が検出される。
なお、光源21から受光部29までの光路上には、レンズやミラー等の光学素子が配置されていてもよい。ミラー等が配置されている場合、「『光学フィルム走行面の法線上』に、光源,(円)偏光板,受光部等が配置される」とは、光源から受光部までの光路とフィルム走行面Sが直交しており、当該光路上に(円)偏光板等の光学素子が配置されている場合を包含する。
光学フィルム走行制御システム500において、位置検出部20は、位置補正機構30のガイドローラ32の近傍に配置されている。位置検出部20による位置検出結果は、制御部40に出力される。制御部40には、予め、光学フィルムの走行基準位置Vが設定されており、位置検出部20での検出結果(光学フィルムの境界線105の位置)が、基準位置Vと一致しているか否かが判定される。フィルムの走行位置が走行基準位置と一致していない場合、走行位置が基準位置に対してどちら側にずれているかが判定されるとともに、光学フィルム1の走行位置と基準位置との距離が算出される。当該算出結果に基づいて、制御部40は、光学フィルム1の境界線105走行位置の基準位置Vからのずれを修正させるべく、位置補正機構30に指令を送信し、動作制御(位置補正)が行われる。なお、制御部40に所定の閾値が予め入力され、境界線105の走行位置と基準位置Vとの距離が閾値以上である場合のみ、上記動作制御が行われてもよい。
位置補正機構30は、フィルムの走行位置を幅方向で変更(制御)可能なものであれば、その構成は特に限定されない。位置補正機構30は、例えば、アクチュエータ等の動作部31が設けられたガイドローラ32を備え、制御部40からの指令に従って、動作部31がガイドローラ32の姿勢(位置や角度等)を変更することによって、フィルム走行位置の補正を行う。
図5は、位置検出部20が境界105を検出することにより、フィルムの走行位置の補正が行われる様子を表す断面図である。位置検出部20によって境界105の位置が検出され、その位置が基準位置Vと一致するように位置補正機構30による走行位置の補正が行われる。そのため、光学フィルム1のエッジから切断線形成位置C1までの距離がW1である図5(A)、および光学フィルム1のエッジから切断線形成位置C1までの距離がW2である図5(B)のいずれの場合も、境界105が基準位置Vに戻るように、位置補正機構30による走行位置の補正が行われる。そのため、境界線105が長手方向と平行に形成されていれば、光学フィルムの端部にカール等の変形が生じている場合でも、光学フィルムが長手方向と平行に走行するように制御を行うことができ、光学フィルム走行制御システム内での切断線形成位置C1の幅方向の位置を一定に保つことができる。
図6は、位置検出部220がフィルムのエッジ位置Eを基準として位置検出を行うことにより、フィルムの走行位置の補正が行われる場合を表している。光学フィルム1のエッジEから切断線形成位置C201までの距離がW1(図6(A))からW2(図6(B))に変化すると、光学フィルム走行制御システム内での切断線形成位置C201の幅方向の位置も変化する。そのため、フィルムの端部にカール等の変形が生じていると、切断線形成(予定)位置C201が所期の基準位置とは異なる位置となるような走行制御が行われ、後の切断工程において、所期の位置とは異なる位置に切断線が形成されてしまう。
本発明においては、図5に示すように、光学フィルムの第一の領域と第二の領域とが異なる偏光特性を有することを利用して、両者の境界105を、偏光素子を備える位置検出部20によって検出し、その位置が一定となるように制御が行われる。そのため、光学フィルムの端部に変形が生じている場合等でも、切断線形成(予定)位置が一定となるように、走行の制御を行うことができる。なお、図4および図5では、光学フィルム1のエッジ付近に第一の領域101および第二の領域102が設けられた例が図示されているが、光学フィルムの幅方向中央付近に第一の領域、第二の領域およびその境界線を有する場合であっても、同様の原理により、フィルムの走行位置の検知および補正を行うことができる。
上記は、位置検出部20が、光学フィルム1の第一の領域101と第二の領域102との境界105の幅方向の位置を検出する例について説明したが、位置検出部20は、境界線105の位置に加えて、境界線の走行角度等を検出するように構成されていてもよい。例えば、面状の光源21、および複数の受光素子が面状に配置された受光部29(例えば、カメラ等)が用いられる場合は、明暗の境界が二次元で検出されるため、境界線105の走行角度を求めることができる。この場合、位置補正機構30により、境界線105の位置が基準位置Vと一致するように走行位置の補正が行われるとともに、境界線の走行方向が一定となるように、フィルムの走行状態が制御されてもよい。例えば、2本以上のガイドローラ(例えば、ガイドローラ32に加えてガイドローラ55)を、制御部40からの指令に基づいて動作可能に構成すれば、フィルムの走行角度の制御を行い得る。
なお、光学フィルム走行制御システムは、位置検出部20が、偏光に基づいて形成される明暗によって第一の領域と第二の領域との境界105を検出できるように構成されていれば、位置補正機構30や制御部40の構成は特に限定されない。位置補正機構や制御部としては、例えば、フィルムのエッジを検出して蛇行を補正するシステム(エッジポジションコントローラ)に用いられる位置補正機構や制御部と同様の構成のものを適宜に採用できる。
本発明の光学フィルムの製造方法では、図2に示すように、長尺状の光学フィルム1の巻回体2が繰出部50にセットされる。光学フィルム1は、繰出部50から、搬送ローラ51,52,53を経て、位置補正機構30のガイドローラ32上に搬送され、位置検出部20で第一の領域と第二の領域との境界の位置検出が行われる。
位置検出工程では、前述のように、第一の領域101と第二の領域102とが境界線105を境に光学フィルムの偏光特性が異なることを利用して、偏光素子を備える位置検出部20によって、走行状態が検出される。位置補正工程では、検出された境界線105の位置が、予め設定された走行基準位Vと一致しているか否かが判断される。両者が不一致の場合(あるいは両者の距離が閾値以上である場合)は、境界105の位置が走行基準位置Vと一致するように、位置補正機構30による走行位置の補正(動作制御)が行われる。
その後、光学フィルム1は、ガイドローラ55経て切断加工部60へ搬送される。搬送経路の上流で幅方向の走行位置の補正が行われているため、光学フィルム1は、第一の領域と第二の領域との境界105が、ガイドローラ55上の幅方向の所定位置を通過した後、その走行状態を保って切断加工部60へと導入される。これに伴って、切断線形成(予定)位置C1も、ガイドローラ55上の幅方向の所定位置を通過した後、その走行状態を保って切断加工部60へと導入される。
切断工程では、切断加工部60によって、光学フィルム1が、境界線105の延在方向と平行な方向に切断される。図7は、切断加工部60によって、光学フィルム1が切断加工される様子を模式的に表す平面図である。上流で幅方向の位置検出が行われ、走行位置が補正された光学フィルム1は、例えば、一定の間隔の切断線C11〜C14に沿って切断され、複数の切断片1A,1B,1Cとされる。光学フィルム1の幅方向端部の余白部1Xは、切断加工部60よる切断によって除去される。
各切断片1A,1B,1Cの幅は、光学フィルムの用途等に応じて任意に設定され得る。例えば、光学フィルムが液晶表示装置等の画像表示装置に用いられる場合、各切断片の切断幅は、画面サイズ(画面の幅または画面高さ)に合わせて設定される。なお、図7では、第一の領域101および第二の領域102は、余白部1Xに含められ、切断によって除去される形態が図示されているが、製品の仕様等によっては、第一の領域および第二の領域は製品部分(切断片1A〜1C)に含まれてもよい。
図8は、光学フィルム1の走行位置が補正された場合の切断線の様子を模式的に表す平面図である。塗布等の光学フィルム形成時の蛇行等に起因して、光学フィルム1のエッジから切断線形成(予定)位置C1までの距離W1,W2が、フィルム長手方向(MD)において一定ではない場合でも、本発明によれば、境界105の位置が一定となるように走行位置が補正される。そのため、エッジから切断線形成(予定)位置までの距離の変化に関わらず、切断線形成(予定)位置C1上に、切断線C11,C21が形成される(図8(A))。また、位置検出部20を位置補正機構30の近傍に配置して、位置検出結果のフィードバック時間を短縮したり、位置検出部において境界105の走行角度を検出することによって、走行方向(走行角度)が一定となるような走行制御を行うことが可能となる。そのため、光学フィルムの光軸方向等が、MD方向と平行でない場合でも、光学フィルムの光軸方向と境界線105とが平行であれば、フィルムの走行方向と光軸方向とが平行となるように、走行位置(走行方向)の補正が可能となり、切断線形成(予定)位置C1上に、切断線C11,C31が形成される。
図7および図8では、境界105よりも幅方向の内側に切断線Cが形成されるように切断を行う例が図示されているが、切断線は、境界線105と平行な方向、すなわちMD方向に延在するものであれば、その位置は、境界線105よりも幅方向の外側であってもよく、境界線105上であってもよい。
所定幅に切断された光学フィルムの切断片1A,1B,1Cは、その後、さらに幅方向にも切断され、所定サイズの枚葉の光学フィルムとなる。なお、切断加工部60は、境界線105の延在方向(長手方向)と平行な方向に切断を行うことに加えて、境界105の延在方向と直交する方向、すなわち幅方向にも切断を行うものであってもよい。例えば、切断加工部60がトムソン刃等の打ち抜き加工手段を備える場合、長尺状の光学フィルムを所定サイズに打ち抜き加工することで、枚葉の光学フィルムが得られる。
以上、第一の領域101および第二の領域102のそれぞれに、吸収軸方向が互いに直交する第一偏光領域131および第二偏光領域132を有する光学フィルムの例を中心に、本発明の製造工程および光学フィルム走行制御システムの構成について説明した。なお、光学フィルムは、第一の領域と第二の領域とが、偏光状態が互いに異なる光学特性を有していれば、両者の偏光状態は必ずしも直交するものに限定されない。第一の領域と第二の領域の偏光状態が異なっていれば、位置検出部において、両者の境界で明暗の差(透過率の差)に基づいて、境界の位置を検出可能であるため、両者の偏光状態が直交する場合と同様に、境界線105の位置が一定となるようにフィルムの走行状態を制御できる。
図9(A)〜(E)は、本発明に使用可能な光学フィルムの他の構成例を模式的に示す断面図である。図9(A)の光学フィルム11では、基材フィルムの第一の領域101上に第一偏光領域131が形成されており、第二の領域102上には、偏光領域が形成されていない。このような形態であっても、位置検出部20が、第一偏光領域131と、吸収軸方向が直交するように配置された偏光板23(または25)を有していれば、第二の領域102に対応する部分の受光素子のみで、光源21からの光が検出されるため、境界線105の位置を検出できる。
図9(B)の光学フィルム12では、基材フィルムの第一の領域101上に第一位相差領域121が形成されており、第二の領域102上には、偏光層や位相差層が形成されていない。このような形態では、図10に示すように、位置検出部20が、光源21とフィルム走行面Sとの間、および受光部29とフィルム走行面との間のそれぞれに、偏光板23,25を備えていれば、第一の領域101と第二の領域102の境界105を、互いに異なる偏光に基づいて形成される明暗により光学的に検出できる。例えば、偏光板23の吸収軸方向と、第一位相差領域121の遅相軸方向とのなす角が45°であり、第一位相差層が波長λの1/2のリターデーションを有している場合、偏光板23から射出して光学フィルム1に入射した直線偏光は、位相差層によって、その振動方向が90°回転させられる。そのため、図10に模式的に示すように、第一の領域からの射出光と第二の領域からの射出光は、互いに直交する直線偏光となり、一方の領域からの光は直線偏光板25で吸収され、他方の領域からの光は直線偏光板25を透過するため、明暗の境界に基づいて境界線105の位置が検出される。
また、図9(C)に示すように、基材フィルムの第一の領域101上に第一位相差層領域が形成され、第二の領域102上に第二位相差領域122が形成された光学フィルム13を用いることもできる。このような形態も、図10に示すように、位置検出部20が、光源21とフィルム走行面Sとの間、および受光部29とフィルム走行面との間のそれぞれに、偏光板23,25を備えていれば、第一の領域101と第二の領域102の境界105を、互いに異なる偏光に基づいて形成される明暗により光学的に検出できる。
第一の領域と第二の領域に、偏光状態が互いに異なる光学特性を有する位相差領域121,122を有する光学フィルム13が用いられる場合、図11に示すような円偏光板24を備える位置検出部20によって、位置検出を行うこともできる。
図11は、円偏光板を備える位置検出部20の構成例、および位置検出の原理を説明するための概念図である。図11に示す位置検出部20において、光源21とフィルム走行面Sとの間には、偏光板23が設けられており、受光部29とフィルム走行面Sとの間には、1/4波長板27と偏光板25とが積層された円偏光板24が設けられている。
光源21から射出された光(例えば、自然光)は、偏光板23により、紙面法線方向に振動する光が吸収され、紙面左右方向に振動する直線偏光として光学フィルム13側に射出される。光学フィルム13の第一の領域101と第二の領域102とが、いずれも1/4波長のリターデーションを有し、両者の遅相軸方向が直交するように構成されている場合、光学フィルム13の第一の領域101から円偏光板24側に射出される光と第二の領域102から円偏光板24側に射出される光とは、互いに直交する円偏光(右円偏光と左円偏光)となる。
円偏光板24は、直線偏光板25の光学フィルム走行面S側に、1/4波長板27が位置するように配置されている。直線偏光板25の吸収軸方向と1/4波長板の遅相軸方向とのなす角は45°に設定されている。直線偏光板25と1/4波長板27とは貼合積層されていてもよく、両者が分離可能に配置されていてもよい。
光学フィルム13の第一の領域101および第二の領域102からは、直交する円偏光が射出されるため、一方の円偏光(第一の領域101からの射出光)は、円偏光板24によって吸収され、他方の円偏光(第二の領域102からの射出光)は、円偏光板24を透過して、受光部29側に射出される。
図11では、受光部29とフィルム走行面Sとの間に設けられる検光子として、円偏光板24を用いる例が図示されているが、円偏光板24は、光学フィルム走行面Sの法線上に配置されていればよい。例えば、光源21とフィルム走行面Sとの間の偏光子として、偏光板と1/4波長板とが積層された円偏光板が設けられていてもよい。この場合、光源21から射出された光は、円偏光板により、円偏光に変換され、光学フィルム1に到達する。第一の領域101から受光部側に射出される光と、第二の領域102から受光部側に射出される光とは、偏光方向が直交する直線偏光となる。一方の領域からの光は受光部側の直線偏光板で吸収され、他方の領域からの光は受光部側の直線偏光板を透過するため、受光部側に円偏光板を有する場合と同様に、明暗の境界に基づいて境界線105の位置が検出される。
また、図9(B)や図9(C)の光学フィルム12,13のように、第一の領域および/または第二の領域に位相差層を有する形態において、位相差層のリターデーションの波長分散等に起因して透過光が着色している場合は、単なる明暗(透過率差)だけでなく、色の相違等に基づいて境界を検出することも可能である。
本発明は、光学フィルムの第一の領域と第二の領域とが、偏光状態の異なる光学特性を有していれば、基材フィルム上に偏光層や位相差層が形成されたものに限定されず、各種の光学フィルムに適用可能である。例えば、第一のフィルムの幅方向の一部に第二のフィルムが積層された積層光学フィルムにも、本発明は適用可能である。
図9(D)において、第一のフィルムとしての基材フィルム110の幅方向中央部には、第二のフィルムとしての保護層150が積層されている。基材フィルム110の幅方向端部には保護層が積層されていない。保護層150としては、延伸ポリエステルフィルムや、延伸ポリオレフィンフィルム等が用いられる。延伸フィルムのように光学異方性を有するフィルムが保護層として用いられる場合、保護層150は位相差を有しているため、保護層が積層されていない第一の領域101と、保護層150が積層されている第二の領域102とは、偏光状態の異なる光学特性を有している。そのため、保護層150のエッジを境界105として、偏光素子を備える検出部20によってその位置を検出できる。保護層150のエッジ、すなわち第一の領域と第二の領域との境界105は、基材フィルム110上に存在することから、光学フィルム14のエッジに比してカール等の変形が抑制される。そのため、光学フィルム14のエッジを検出して走行制御が行われる場合に比して、より正確な走行制御を行うことができる。
また、図9(E)に示すように、基材フィルム115が、位相差フィルム等の光学異方性フィルムである場合、この基材フィルム115よりも幅が大きい保護層150が積層された光学フィルム114’を用いることもできる。この場合、保護層150のみを有し基材フィルムを有していない第一の領域101と、基材フィルム115上に保護層150が積層されている第二の領域102とは、偏光状態の異なる光学特性を有している。そのため、基材フィルム115のエッジを境界105として、偏光素子を備える検出部20によってその位置を検出できる。
以上説明したように、本発明の光学フィルム走行制御システムでは、光学フィルムが、第一の領域と第二の領域との境界を境に、異なる偏光特性を有することを利用して、偏光素子を備える位置検出部によって境界の走行位置が検出される。そのため、フィルムの端部にカール等の変形が生じている場合や、フィルムエッジから切断線形成位置までの距離がMD方向で変化する場合であっても、走行制御システム内での、光学フィルムの相対位置が一定となるように制御が行われる。
本発明の製造方法では、上記走行制御システムにより、走行位置が制御(補正)された光学フィルムが、切断工程に供される。切断線形成位置が、幅方向の所定の位置を走行するように制御が行われるため、一定の相対位置で切断を行うことができ、不所望の位置で切断される不良や、軸ズレの発生が抑制され、光学フィルムの歩留り向上に寄与し得る。
さらに、本発明の構成によれば、フィルムの端部にカール等の変形が生じている場合でも、このような変形に影響されることなく、フィルムの走行位置を正確に検知でき、数μm〜数十μm単位の精度で、フィルム走行位置の制御および補正が可能である。そのため、本発明は、立体映像表示装置に用いられるパターン光学フィルムのように、微小なパターンを有する光学フィルムの切断にも有用である。立体映像表示装置等に用いられるパターン光学フィルムは、表示装置の画素と光学フィルムのパターンのピッチを合致させる必要があり、切断位置を数μm〜数十μmの精度で一定に保つことが求められる。
図12(A)は、パターン光学フィルムの一形態にかかるパターン位相差板の構成例を表す模式的平面図である。パターン位相差板15の第一の領域101および第二の領域102は、いずれも、可視光の1/4波長のリターデーションを有し、両者の遅相軸方向が直交するように構成されている。
図12(B)は、図12(A)のパターン位相差板の模式的断面図である。パターン位相差板は、パターニングされていない基材フィルム(例えば、光学等方性フィルム)110上に、パターン位相差層120を備える。パターン位相差層120では、第一位相差領域121と第二位相差領域122とが幅方向に沿って交互に配置されている。第一位相差領域121および第二位相差領域122は、いずれも、可視光の1/4波長のリターデーションを有し、両者の遅相軸方向が直交するように構成されている。
パターン位相差板15は、例えば、円偏光を利用する立体映像表示装置に用いられる。パターン位相差板は、例えば液晶表示装置の視認側偏光板よりもさらに視認者側に設けられ、第一位相差領域および第二位相差領域のそれぞれの遅相軸方向と、偏光板の吸収軸方向とのなす角が±45°となるように配置される。このような構成によれば、液晶セル等からの射出光が、第一位相差領域と第二位相差領域とで直交する円偏光(右円偏光と左円偏光)となって視認者側に射出される。第一の領域と第二の領域のそれぞれが、映像表示装置の右目用領域と左目用領域に対応するように配置されることで、例えば、右目用領域の映像光は右円偏光、左目用領域の映像光は左円偏光となって視認者側に到達する。視認者は、右目用視認部と左目用視認部とからなる立体視用偏光眼鏡を装着してこの映像光を視認する。立体視用偏光眼鏡の右目用視認部と左目用視認部とは、互いに直交する円偏光板を備える。例えば、右目用視認部は、左円偏光を吸収し、右円偏光のみを透過するように構成されており、左目目用視認部は、右円偏光を吸収し、左円偏光のみを透過するように構成されている。そのため、視認者の右目では右目用領域からの映像光のみが視認され、左目では左目用領域からの映像光のみが視認されるため、立体映像表示が実現される。
このようなパターン位相差板は、一般に、長尺の基材フィルム110を長手方向に搬送しながら、その上にパターン位相差層120等を形成することによって製造される。そのため、パターン光学フィルムは、フィルムの長手方向とパターン延在方向とが平行であり、フィルムの幅方向に第一の領域と第二の領域とを交互に有している。パターン光学フィルムが立体映像表示装置に用いられる場合、第一の領域および第二の領域の幅は、表示装置の画素(または絵素)のピッチに等しく、例えば、数十μm〜数百μm程度である。
光学フィルムとしてパターン位相差板15が用いられる場合、位置検出部20としては、図11に示すように、フィルム走行面Sの法線上に円偏光板24を備えるものが好適に用いられる。
なお、第一位相差領域121および第二位相差領域122が、いずれも、可視光の1/4波長のリターデーションを有する構成以外でも、第一の領域と第二の領域とが互いに直交する円偏光を射出するパターン位相差板を構成できる。例えば、第一の領域と第二の領域の遅相軸方向が平行で、両者のリターデーションの差が、可視光の波長の1/2の奇数倍であるパターン位相差板も、直線偏光板と組み合わせることで、互いに直交する円偏光を射出することができる。
また、パターン位相差板は、第一の領域と第二の領域とが、直交する円偏光を射出するものに限定されない。例えば、第一位相差領域のリターデーションが可視光の波長の1/2の奇数倍であり、第二位相差領域のリターデーションが可視光の波長の1/2の偶数倍(0の場合も含む)であれば、両者は、互いに直交する直線偏光を射出するように構成される。
このように、第一位相差領域と第二位相差領域の遅相軸方向が直交する場合や、両者のリターデーション値の差が波長の1/2倍である場合、すなわち、第一位相差領域と第二位相差領域とが互いに直交する偏光特性を有している場合、偏光素子を備える位置検出部によって、パターン境界の明暗を、白黒(受光素子に光が到達する部分と光がほとんど到達しない部分)の境界として検出可能である。そのため、パターン境界の検出精度および走行の補正精度が高められ、不所望の位置に切断線が形成される不良品の発生頻度が顕著に低減され得る。
また、本発明は、パターン位相差板以外のパターン光学フィルムにも適用可能である。例えば、吸収軸方向が異なる第一偏光領域と第二偏光領域とにパターニングされたパターン偏光板も、パターン光学フィルムとして適用可能である。パターン偏光板16は、例えば図13(A)に示されるように、パターニングされていない基材フィルム110上に、第一偏光領域131と第二偏光領域132が交互に配置されたパターン偏光層130を有する。第一偏光領域131および第二偏光領域132が、いずれも直線偏光子からなり、両者の吸収軸方向が直交するように構成されていれば、第一の領域と第二の領域とが互いに直交する偏光特性を有するため、位置検出部においてパターン境界を白黒境界として検出可能となる。
その他、位相差板と偏光板とが積層されたパターン光学フィルムも、本発明に適用可能である。例えば、図13(B)に示されるように、パターニングされていない直線偏光板135上にパターン位相差層120を有する、パターン位相差層付き偏光板17や、図13(C)に示されるように、パターニングされていない位相差板125上に、パターン偏光層130を有する、位相差板付きパターン偏光板18等も、本発明に適用可能である。これらのパターン位相差層付き偏光板や、位相差板付きパターン偏光板は、位相差板(位相差層)のリターデーションが可視光の1/4倍であり、その遅相軸方向と、偏光板(偏光層)の吸収軸方向とのなす角が±45°となるように積層されていれば、パターン円偏光板となる。
このようなパターン光学フィルムでは、パターン位相差層やパターン偏光層のパターン境界を、第一の領域101と第二の領域102の境界線105として、位置検出工程における検出対象とすることができる。そのため、フィルムの走行制御の位置検出のために、別途、第一の領域や第二の領域を形成する必要がない。
パターン光学フィルムの走行制御が行われる場合、位置検出の対象となる境界線105は、パターン光学フィルムの製品部分であってもよく、製品部分以外であってもよい。例えば、図14に示すように、製品部分となるパターン領域111,112とは別に、光学フィルムの幅方向端部等に、第一の領域101と第二の領域102とが形成されていてもよい。この場合も、製品部分のパターン領域111,112の形成時に、第一の領域101および第二の領域102を同時に形成できる。また、製品部分のパターン111,112の幅と、位置検出に用いられる第一および第二の領域101,102の幅とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
光学フィルムとして上記の各パターン光学フィルムが用いられる場合、位置検出部20の構成は、光学フィルムの構成に応じて適宜に改変し得る。
本発明の光学フィルム走行制御システムは、位置検出部20が、偏光板23,25や1/4波長板27等の各偏光素子を、着脱可能あるいは配置角度改変可能に構成されていることが好ましい。各偏光素子の有無や配置角度を変更可能であれば、光学フィルムの構成や、第一の領域および第二の領域の光学特性(偏光特性)に応じて、境界105の検出精度が高められるように、位置検出部の構成を改変できる。そのため、位置検出精度が向上され、それに伴ってフィルムの走行状態をより正確に制御することが可能となる。