JP6230789B2 - 癌幹細胞集団及びその作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、癌形成能が無い細胞が実質的に除去された癌幹細胞の集団であって、癌組織の階層構造を再現する特徴を有する癌幹細胞集団、及び該癌幹細胞集団の作製方法に関する。また本発明は、当該癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデル若しくは当該癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系を用いた医薬品のターゲット分子探索方法、医薬品の評価方法、又は、医薬品のスクリーニング方法に関する。
従来、階層構造を持つがんは、分化の様々な段階の癌細胞が自己複製し、大きな腫瘍塊を形成すると考えられていたが、近年になって、自己複製能と多分化能を併せ持つ分化初期の限られた癌細胞からがんが形成されることが分かってきた。これを癌幹細胞モデルと言い、癌幹細胞の存在は、血液癌、脳腫瘍、乳癌、大腸癌など様々ながんで報告されている。癌幹細胞モデルでは、がんは分化の異なる不均一な集団から構成され、限られた細胞、すなわち癌幹細胞だけが新たながんを形成する能力を持つことが提唱されている。
一方で、階層構造を持たずモノクローナルな細胞集団で形成されるCMLや血液癌若しくは上皮系の低分化癌などの癌形成細胞も癌幹細胞と呼ばれることがあるが、これらは自己複製能は有するものの階層構造形成能(多分化能)は有していないことから、上記の癌幹細胞モデルからは逸脱しており、癌幹細胞の定義に関して混乱が生じている。例えば、2008年に、QuintanaらはB細胞、 T細胞さらに NK細胞を欠損する高度免疫不全マウス用いた実験により、ヒトメラノーマ細胞のほぼ全てが腫瘍形成能を有すると報告(非特許文献1)しているが、これらの細胞は多分化能を有しておらず分化しないため癌幹細胞に含めるべきではなく、単に癌形成細胞と呼ぶべき細胞である。
これまで階層構造を形成する癌幹細胞の分離・濃縮は、CD133やCD44などの癌幹細胞マーカーを用いたフローサイトメトリーで行うか、癌細胞をFGFやEGFなどを含む幹細胞培地を用いて浮遊培養する方法で行われてきた。フローサイトメトリー法は、操作中の細胞へのダメージがあることに加え、癌幹細胞のマーカーに使われているCD133やCD44は癌幹細胞特異的な表面マーカーではないことから、インタクトな癌幹細胞を高純度に調製する手法としては問題がある。実際、階層構造を持つ癌からフローサイトメトリー法で採取した癌幹細胞集団では、限界希釈により癌形成能を評価すると、癌幹細胞の頻度は1/262程度でしかなく、癌幹細胞以外の細胞を多く含むことが知られている(非特許文献2)。
また、浮遊培養から形成されるスフェロイド(細胞塊)は、階層構造を有する癌を形成する癌幹細胞を含むことが報告されているが、スフェロイドを構成する細胞集団は均質ではなく、癌幹細胞の頻度は1/240程度で癌幹細胞以外の細胞が大量に混在する(非特許文献3)。従って、癌幹細胞の純度が低いため、これらの細胞集団を用いて階層構造を持つ癌幹細胞の性質を明らかにするすることは困難である。また、ヒト癌組織を免疫不全動物に移植し、継代を重ねることにより癌幹細胞を濃縮する方法が報告されている(非特許文献4)が、膵臓癌においてこの方法で最も濃縮された癌幹細胞の頻度は1/180程度であった。
また、ヒト子宮頚部上皮細胞にヒトパピローマウイルス癌遺伝子を遺伝子導入して不死化した細胞株から、幹細胞マーカーのp75NTRを用いてp75NTR陽性細胞を分離し、TGFβとTNFαを含む培地で接着培養する例が報告されている(特許文献1)が、これらの細胞も階層構造は形成せず、癌幹細胞の範疇に入らない癌形成細胞である。
従って、これまでのところ、階層構造を形成する癌幹細胞を高純度で大量に調整する方法は知られておらず、その開発が強く要望されている。
特開2008-182912
Quintana E. et al., Nature. 2008 Dec 4;456(7222):593-8 O'Brien CA. et al., Nature. 2007 Jan 4;445(7123):106-10 Vermeulen L. et al., Nat Cell Biol. 2010 May;12(5):468-76 Ishizawa K. et al., Cell Stem Cell. 2010 Sep 3;7(3):279-82
本発明は、癌形成能が無い細胞が実質的に除去された癌幹細胞の集団であって、癌組織の階層構造を再現する特徴を有する癌幹細胞集団を提供することを課題とする。また本発明は、癌幹細胞を含む細胞群を付着培養する工程を含む、癌形成能が無い細胞が実質的に除去された癌幹細胞の集団を作製する方法を提供することを課題とする。さらに本発明は、当該癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデル若しくは当該癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系を用いた医薬品のターゲット分子探索方法、医薬品の評価方法、又は、医薬品のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために、鋭意研究を行った。
本発明者らは高度免疫不全マウスで癌細胞株を樹立し、その樹立細胞株を用いて、階層構造を持つがんと階層構造を持たないがんを比較・解析した。さらに、癌幹細胞モデルに帰属する階層構造を持つがんでは、その癌幹細胞の分離・濃縮・均質化・大量培養の方法が無いため、解析や癌幹細胞を用いた薬剤のスクリーニングなどに支障が生じているため、その問題の解決を試みた。
本発明者らは、これまでにヒト癌組織を、機能的なT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞を持たないNOD/SCID/gammac nullマウス(Fujii E. et al., Pathol Int. 2008; 58: 559-567)(以下、当該マウス及びNSGマウス(NOD-scid,IL-2Rgnullマウス)を本願では「NOGマウス」と称する)に移植することにより、複数のヒト癌細胞株を樹立した。この株はNOGマウス皮下で継代を重ねても、オリジナルの癌組織と同じ形態を有する癌組織を構築することから、細胞集団の中でヒト癌幹細胞が保存できると考えられる。そのため、NOGマウスで継代可能なヒト癌幹細胞は大変有用な研究ツールである。
本発明者らはNOGマウスでヒト癌組織を繰り返し成長させ、癌細胞を分離した後、様々な培養法を比較した。その結果、一般的に用いる浮遊培養法ではなく、血清を含まない幹細胞培地を用いた付着培養法により、均質で、癌形成能がある細胞と無い細胞が実質的に混在しない癌幹細胞組成物を得ることに成功し、これにより本発明を完成するに至った。
本方法によって入手した癌幹細胞は、血清を含まない幹細胞培地を用いて付着培養を継代して行うことにより、1ヶ月以上にわたり表現型を変化させることなく安定に維持された。この細胞は、これまで報告されている種々の大腸癌幹細胞マーカー(CD133、CD44、EpCAM、CD166、CD24、CD26およびCD29)を発現し、かつ、ほぼ100%の頻度で癌形成能を示し、元の原発性腫瘍と同じ組織病理学的特性(階層構造)を有する腫瘍を再構築した。また、この細胞は、付着培養条件下で高増殖性を示し、細胞表面マーカーであるLgr5が陽性であることでも特徴付けられる。また、高増殖性でLgr5陽性の癌幹細胞は、マウス尾静脈から注射すると肺や肝臓等の臓器で腫瘍塊を形成したことから、癌の転移に重要な役割を担っていることが示された。
一方、付着培養条件下で高増殖性を示し、細胞表面マーカーであるLgr5が陽性である癌幹細胞を、浮遊培養するか、イリノテカンや5-FU等の抗癌剤で処理することにより、低増殖性でLgr5が陰性である癌幹細胞を単離することができた。この細胞もまた、高い癌形成能を示した。さらに、低増殖性でLgr5が陰性である癌幹細胞を分離して、再び付着培養条件で培養することにより、高増殖性でLgr5が陽性である癌幹細胞に変化することが示された。従って、高増殖性でLgr5陽性の癌幹細胞と、低増殖性でLgr5陰性の癌幹細胞は、相互に変換可能であり、自己交替機能を有することが示された。
本発明は、より具体的には以下の〔1〕〜〔33〕を提供するものである。
〔1〕癌形成能が無い細胞が実質的に除去された癌幹細胞の集団であって、癌組織の階層構造を再現する特徴を有する癌幹細胞集団。
〔2〕前記癌幹細胞がヒト腫瘍組織由来であることを特徴とする、〔1〕に記載の癌幹細胞集団。
〔3〕前記ヒト腫瘍組織が、上皮癌由来の腫瘍組織であることを特徴とする、〔2〕に記載の癌幹細胞集団。
〔4〕前記上皮癌が、膵臓癌、前立腺癌、乳癌、皮膚癌、消化管の癌、肺癌、肝細胞癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、卵管癌、膣癌、肝臓癌、胆管癌、膀胱癌、尿管の癌、甲状腺癌、副腎癌、腎臓癌、又は、その他の腺組織の癌であることを特徴とする、〔3〕に記載の癌幹細胞集団。
〔5〕実質的に均質であることを特徴とする、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団。
〔6〕Extreme Limiting Dilution Analysisにおいて癌幹細胞の頻度が1/20以上であることを特徴とする、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団。
〔7〕癌幹細胞を1x104個以上含むことを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団。
〔8〕癌幹細胞を含む細胞群を付着培養する工程を含む方法により作製されることを特徴とする、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団。
〔9〕下記(1)〜(3)の工程を含む方法により作製されることを特徴とする、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団;
(1)癌幹細胞を含む細胞群を、同一又は異なる種に属する非ヒト動物に移植し、癌細胞塊を作製する工程、
(2)作製された癌細胞塊を細分化する工程、及び
(3)(2)の工程により得られた細胞集団を幹細胞培地にて付着培養する工程。
〔10〕前記非ヒト動物が、ヌードマウス、SCIDマウス、NOD-SCIDマウス、NOGマウス、又はヌードラットのいずれかであることを特徴とする、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団。
〔11〕癌幹細胞を含む細胞群を付着培養する工程を含む、癌形成能が無い細胞が実質的に除去された癌幹細胞の集団を作製する方法。
〔12〕前記癌幹細胞を含む細胞群が、癌組織の階層構造を再現する細胞群であることを特徴とする、〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記癌組織の階層構造を再現する細胞群が非ヒト動物で樹立した癌細胞株、スフェロイド、又は、癌幹細胞マーカーCD24、CD29、CD34、CD44、CD49f、CD56、CD90、CD117、CD133、CD135、CD166、CD184、CD271、CD326、Aldefluor、ABCG2、ABCG5、LGR5、及びMsi1から選択される少なくとも1つ以上のマーカーが陽性の細胞であることを特徴とする、〔12〕に記載の方法。
〔14〕付着培養を行う前に癌幹細胞を含む細胞群を増殖させることを特徴とする、〔11〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の方法。
〔15〕スフェロイド培養により癌幹細胞を含む細胞群を増殖させることを特徴とする、〔14〕に記載の方法。
〔16〕非ヒト動物に移植し継代することにより細胞群を増殖させることを特徴とする、〔14〕に記載の方法。
〔17〕前記癌幹細胞が、ヒト腫瘍組織由来であることを特徴とする、〔11〕〜〔16〕のいずれか一項に記載の方法。
〔18〕前記ヒト腫瘍組織が、上皮癌由来の腫瘍組織であることを特徴とする、〔17〕に記載の方法。
〔19〕前記上皮癌が、膵臓癌、前立腺癌、乳癌、皮膚癌、消化管の癌、肺癌、肝細胞癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、卵管癌、膣癌、肝臓癌、胆管癌、膀胱癌、尿管の癌、甲状腺癌、副腎癌、腎臓癌、又は、その他の腺組織の癌であることを特徴とする、〔18〕に記載の方法。
〔20〕前記非ヒト動物が、ヌードマウス、SCIDマウス、NOD-SCIDマウス、NOGマウス、又はヌードラットのいずれかであることを特徴とする、〔11〕〜〔19〕のいずれか一項に記載の方法。
〔21〕〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデル又は該癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系において、癌幹細胞から形成される階層構造、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を指標として評価を行うことを特徴とする、医薬品のターゲット分子探索方法。
〔22〕下記(1)〜(4)に記載された工程を含むことを特徴とする、〔21〕に記載の医薬品のターゲット分子探索方法;
(1)〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団を非ヒト動物に移植することにより非ヒト動物モデルを作製する工程、
(2)該癌幹細胞集団の癌進展プロセスにおいて特徴的に認められる組織構造、又はその生物学的特性を示す組織片を採取する工程、
(3)(2)において採取した組織片についてDNA、RNA、タンパク質、ペプチド又は代謝産物の発現を調べる工程、及び
(4)組織片中の癌幹細胞から形成される階層構造、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性に依存的に変動するDNA、RNA、タンパク質、ペプチド又は代謝産物を同定する工程。
〔23〕下記(1)〜(3)に記載された工程を含むことを特徴とする、〔21〕に記載の医薬品のターゲット分子探索方法;
(1)〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団をin vitro条件下で培養し、癌幹細胞から始まる癌進展プロセスの特徴構造、又は癌幹細胞の生物学的特性を再現する工程、
(2)特徴構造を再現した培養細胞の、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド又は代謝産物の発現を調べる工程、及び
(3)培養細胞中の癌幹細胞から形成される階層構造、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性に依存的に変動するDNA、RNA、タンパク質、ペプチド及び代謝産物を同定する工程。
〔24〕前記医薬品が抗癌剤であることを特徴とする、〔21〕〜〔23〕のいずれか一項に記載の方法。
〔25〕前記ターゲット分子が癌細胞マーカーであることを特徴とする、〔21〕〜〔24〕のいずれか一項に記載の方法。
〔26〕〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデル又は該癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系において、癌幹細胞から形成される階層構造、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を指標として評価を行うことを特徴とする、医薬品の評価方法。
〔27〕下記(1)〜(5)に記載された工程を含むことを特徴とする、〔26〕に記載の医薬品の評価方法;
(1)〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団を非ヒト動物に移植することにより非ヒト動物モデルを作製する工程、
(2)被験物質を(1)の非ヒト動物モデルに投与する工程、
(3)癌幹細胞から始まる癌進展プロセスにおいて特徴的に認められる組織構造、又はその生物学的特性を示す組織片を採取する工程、
(4)組織片中の癌幹細胞の経時変化、癌進展プロセス、又はその生物学的特性を観察する工程、及び
(5)被験物質により阻害された癌幹細胞から形成される階層構造形成、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を同定する工程。
〔28〕下記(1)〜(4)に記載された工程を含むことを特徴とする、 〔26〕に記載の医薬品の評価方法;
(1)〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団をin vitro条件下で培養し、癌幹細胞から始まる癌進展プロセスの特徴構造、又は癌幹細胞の生物学的特性を再現する工程、
(2)被験物質で(1)の培養細胞を処理する工程、
(3)癌幹細胞から形成される階層構造の変化、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を観察する工程、及び
(4)被験物質により阻害された癌幹細胞から形成される階層構造形成、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を同定する工程。
〔29〕〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデル又は該癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系において、癌幹細胞から形成される階層構造、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を指標として評価を行うことを特徴とする、医薬品のスクリーニング方法。
〔30〕下記(1)〜(5)に記載された工程を含むことを特徴とする、〔29〕に記載の医薬品のスクリーニング方法;
(1)〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団を非ヒト動物に移植することにより非ヒト動物モデルを作製する工程、
(2)被験物質を(1)の非ヒト動物モデルに投与する工程、
(3)癌幹細胞から始まる癌進展プロセスにおいて特徴的に認められる組織構造、又はその生物学的特性を示す組織片を採取する工程、
(4)組織片中の癌幹細胞の経時変化、癌進展プロセス、又はその生物学的特性を観察する工程、及び
(5)特定の癌幹細胞から形成される階層構造形成、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を阻害する被験物質を同定する工程。
〔31〕下記(1)〜(4)に記載された工程を含むことを特徴とする、〔29〕に記載の医薬品のスクリーニング方法;
(1)〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の癌幹細胞集団をin vitro条件下で培養し、癌幹細胞から始まる癌進展プロセスの特徴構造、又は癌幹細胞の生物学的特性を再現する工程、
(2)被験物質で(1)の培養細胞を処理する工程、
(3)癌幹細胞から形成される階層構造の変化、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を観察する工程、及び
(4)特定の癌幹細胞から形成される階層構造形成、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を阻害する被験物質を同定する工程。
〔32〕前記医薬品が、抗癌剤であることを特徴とする、〔26〕〜〔31〕のいずれかに記載の方法。
〔33〕前記in vitro条件下での培養系が、スフェロイド培養であることを特徴とする、〔21〕、〔23〕、〔26〕、〔28〕、〔29〕及び〔31〕のいずれか一項に記載の方法。
HE染色した組織標本を示す写真である。マウスへ移植した大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59、大腸癌株PLR325においてヒト組織と同様な形態学的構造が認められ、マウスの影響を受けないことが示された。一方、NOGマウスへ移植した大腸癌株PLR357では形態学的な変化が認められ、マウスへの移植実験に不適切であることが示された。 EPICS ALTRAを用い、癌幹細胞マーカーを用いたmouse MHC class I陰性かつ7-AAD Viability Dye陰性の細胞についてのフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59、大腸癌株PLR325から形成された癌細胞塊において癌幹細胞マーカー陽性の細胞が認められた。中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59においてはマーカー陽性細胞とマーカー陰性細胞が混在し、ヘテロな細胞集団であった。一方、低分化型の大腸癌株PLR325においては、すべての細胞がEpCAM、AC133、Aldefluorでは陽性、またすべての細胞がCD44では陰性という均質な特徴を示す細胞集団であった。 EPICS ALTRAを用い、マウス細胞除去を行った細胞についてのフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59、大腸癌株PLR325から形成された癌細胞塊において、マウス細胞除去後、95%以上の細胞がmouse MHC class I陰性であることが示された。 HE染色した組織標本を示す写真である。中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59において階層構造が認められた。一方、低分化型の大腸癌株PLR325において、階層構造は認められなかった。 ウエスタンブロッティング法によりLGR5タンパク質の発現を示した図である。中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59においてLGR5タンパク質が検出され、正常腸管幹細胞マーカー陽性の細胞が存在することが示された。一方、低分化型の大腸癌株PLR325において、LGR5タンパク質が検出されなかった。 EPICS ALTRAを用い、癌幹細胞マーカーを用いた7-AAD Viability Dye陰性の細胞についてのフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。市販大腸癌株HCT116は、ほとんどの細胞が幹細胞マーカー陽性という均質な特徴を示す細胞集団であった。 HE染色した組織標本を示す写真である。市販大腸癌株HCT116において階層構造は認められなかった。 ウエスタンブロッティング法によりLGR5タンパク質の発現を示した図である。市販大腸癌株HCT116において、LGR5タンパク質が検出されなかった。 in situハイブリダイゼーション法によりLGR5陽性細胞を示した写真である。市販大腸癌株HCT116において、LGR5陽性細胞は認められなかった。 in vitro培養した中分化型の大腸癌株PLR123の形態を示す写真である。浮遊状態においてのみ、スフェロイドと呼ばれる細胞塊の形成が認められた。 EPICS ALTRAを用い、癌幹細胞マーカーを用いた7-AAD Viability Dye陰性の細胞についてのフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。in vitroで付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59において、すべての細胞が癌幹細胞マーカー陽性で、均質な細胞集団あることが示された。 ウエスタンブロッティング法によりLGR5タンパク質の発現を示した図である。幹細胞培地でin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株においてLGR5タンパク質の増加が検出された。幹細胞培地でin vitro培養することにより正常腸管幹細胞マーカー陽性の細胞が濃縮されることが示唆された。 in situハイブリダイゼーション法によりLGR5陽性細胞を示した写真である。幹細胞培地でin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123はすべてがLGR5 probeに陽性であることが認められた。幹細胞培地でin vitro培養することにより正常腸管幹細胞マーカー陽性の細胞が濃縮されることが示され、すべての細胞が正常腸管幹細胞マーカーLGR5陽性の均質な細胞であることが示された。 HE染色した組織標本を示す写真である。10 細胞のin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59から形成された癌細胞塊において、ヒト組織及びNOG樹立癌細胞株と同様な階層構造が認められた。また、1ヵ月以上培養したin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123から形成された癌細胞塊においても、ヒト組織及びNOG樹立癌細胞株と同様な階層構造が認められた。in vitroで付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59はいずれも、すべてが多分化能を持つ癌幹細胞であることが示された。 EPICS ALTRAを用い、癌幹細胞マーカーを用いたmouse MHC class I陰性かつ7-AAD Viability Dye陰性の細胞についてのフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。10 細胞のin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59から形成された癌細胞塊において、癌幹細胞マーカー陰性の細胞が認められ、癌幹細胞から癌形成能を持たない分化細胞が産出されたことが示された。 HE染色した組織標本を示す写真である。in vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123から形成された2世代目の癌細胞塊において、ヒト組織及びオリジナル大腸癌株と同様な階層構造が認められた。 本発明の癌幹細胞集団および文献における、100個以下の細胞の癌細胞塊形成頻度を示す表である。当該癌幹細胞集団では全ての移植で癌の形成と階層構造が認められた。 抗ヒトLgr5モノクローナル抗体(mAb)である2U2E-2および2T15E-2の特異性を、Lgr4、Lgr5、またはLgr6 cDNAをトランスフェクトしたDG44細胞において、免疫蛍光顕微鏡観察により確認した結果を示す写真である。非トランスフェクト親細胞およびトランスフェクタントを固定し、5 μg/mLの抗体で処理した。Lgr5 cDNAを包含する細胞においては強力な蛍光(右側の緑色シグナル)が観察されたが、親細胞、およびLgr4またはLgr6 cDNAを包含する細胞では観察されなかった。スケールバーは5μmを示す。 抗ヒトLgr5モノクローナル抗体(mAb)である2T15E-2の特異性を、Lgr4、Lgr5、またはLgr6 cDNAをトランスフェクトしたDG44細胞において、フローサイトメトリーにより確認した結果を示す図である。非トランスフェクト親細胞およびトランスフェクタントをモノクローナル2T15E-2抗体と共にインキュベーションし、FACSにより解析した。2T15E-2抗体は、Lgr5 cDNAを包含する細胞とは反応したが、親細胞、およびLgr4またはLgr6 cDNAを包含する細胞とは反応しなかった。トランスフェクタントにおけるLgr4、Lgr5、およびLgr6の発現は、ウエスタンブロット解析によって確認した。 PLR123細胞の原発性細胞、浮遊癌幹細胞、および付着癌幹細胞におけるβ-カテニン、TCF1、TCF3、TCF4およびリン酸化c-JUNタンパク質のウエスタンブロット解析結果を示す写真である。原発性細胞と比較して、Lgr5陽性の付着癌幹細胞においては全てのタンパク質の発現がアップレギュレーションされた。タンパク質ローディング用の参照タンパク質としてのGAPDHも可視化された。 PLR123由来のLgr5陽性細胞1個および10個ならびにPLR123由来のLgr5陰性細胞10個に由来する異種移植片腫瘍の組織病理学の結果を示す写真である。全ての腫瘍が階層構造を示し、その組織病理学的特徴は、元の腫瘍と極めて類似していた。スケールバーは100μmを示す。 PLR59およびPLR123異種移植片に由来する付着癌幹細胞を1ヶ月間培養し、報告された癌幹細胞マーカーのフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。インビトロで1ヶ月間培養後でさえ、PLR59およびPLR123に由来する付着癌幹細胞はどちらも、報告された全ての癌幹細胞マーカーに対して陽性であった。灰色は、示された抗体で細胞を染色後の蛍光強度、またはALDHの活性を示し、白色は対照アイソタイプ抗体で細胞を染色後の蛍光強度、またはALDHインヒビターでのALDH活性による細胞の処理を示す。 PLR59およびPLR123異種移植片に由来する付着癌幹細胞を1ヶ月間培養した後、フローサイトメトリーで解析し(図22)、かつNOGマウスに注射した。図に示した数の付着癌幹細胞をNOGマウスの側腹部に皮下注射し、NOGマウスにおける腫瘍形成活性を検討した。接種から47日後、腫瘍形成を判定した結果を示す図である。付着癌幹細胞10個の皮下注射によってさえ、全ての注射部位で腫瘍が生じたが、該腫瘍の組織病理学的形態は元の腫瘍と高度に類似していた。 PLR59細胞の原発性細胞、浮遊癌幹細胞、および付着癌幹細胞におけるβ-カテニン、TCF1、TCF3、TCF4およびリン酸化c-JUNタンパク質のウエスタンブロット解析結果を示す写真である。原発性細胞と比較して、Lgr5陽性の付着癌幹細胞においては全てのタンパク質の発現がアップレギュレーションされた。タンパク質ローディングのための参照としてのGAPDHも可視化された。 PLR123細胞における、FH535(50μM)およびカルダモニン(50μM)によるLgr5陽性の付着癌幹細胞の増殖阻害を示す図である。FH535(灰色カラム)およびカルダモニン(黒色カラム)と共に3日間培養した後の生細胞の数を、DMSOのみの数(白色カラム)に対するパーセンテージとして示す。結果は3回の実験の平均である。各カラム上部のバーは標準偏差を示す。 PLR59細胞におけるFH535(50μm)およびカルダモニン(50μm)によるLgr5陽性の付着癌幹細胞の増殖阻害を示す図である。FH535(灰色カラム)およびカルダモニン(黒色カラム)と共に3日間培養した後の生細胞の数を、0日目の数(白色カラム)に対するパーセンテージとして示す。 PLR123細胞のEGFおよびFGFの存在下または非存在下での細胞の増殖を示す図である。付着癌幹細胞を、存在下または非存在下で3日間(黒色カラム)培養した。生細胞の数を、0日目の数に対するパーセンテージとして示す(白色カラム)。結果は3回の実験の平均である。各カラム上部のバーは標準偏差を示す。 PLR59細胞のEGFおよびFGFの存在下および非存在下での細胞の増殖を示す図である。付着癌幹細胞を、存在下または非存在下で3日間(黒色カラム)培養した。生細胞の数を、0日目(白色カラム)の数に対するパーセンテージとして示す図である。 PLR123細胞におけるLgr5陽性の付着癌幹細胞およびLgr5陰性の浮遊癌幹細胞の増殖に対する化学療法剤の効果を示す図である。5-FU(10μg/mL、灰色カラム)またはイリノテカン(10μg/mL、黒色カラム)による処理後の生細胞の数を、化学療法剤を用いずに培養した生細胞数(白色カラム)のパーセンテージとして示す。結果は3回の実験の平均である。各カラム上部のバーは標準偏差を示す。 PLR59細胞におけるLgr5陽性の付着癌幹細胞およびLgr5陰性の浮遊癌幹細胞の増殖に対する5-FU(10μg/mL)およびイリノテカン(10μg/mL)の効果を示す図である。5-FU(灰色カラム)またはイリノテカン(黒色カラム)による処理後の生細胞の数を、上記薬物の非存在下で培養した場合(白色カラム)に対するパーセンテージとして示す。 PLR123細胞の付着癌幹細胞をにおいて、化学療法剤によって細胞を処理した後の付着性癌幹細胞のLgr5発現の変化を示す図である。フローサイトメトリーの結果を示す。上部は化学療法剤無し(対照)を示し、中央は5-FU処理細胞を示し、下部はイリノテカン処理細胞を示す。灰色は、記載の抗体で細胞を染色した後の蛍光強度またはALDH活性を示し、白色は、対照アイソタイプ抗体で細胞を染色した後の蛍光強度またはALDHインヒビターでのALDH活性を示す。 培養条件および化学療法剤処置による、大腸癌幹細胞の表現型の交互変化を示す写真である。5-FUおよびイリノテカンに対するLgr5陽性癌幹細胞の感受性を調べた。5-FUおよびイリノテカンはどちらも、Lgr5陽性の癌幹細胞の増殖を有意に阻害した。5-FUまたはイリノテカンに3日間曝露後、これらの化学療法剤に対し抵抗性を有する細胞が現れた。該薬物耐性細胞の形態は、高密度に凝集されていた。スケールバーは25μmを示す。 PLR59細胞の付着癌幹細胞を5-FUまたはイリノテカンによって処理した後の癌幹細胞マーカーのフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。上部は5-FU処理細胞を示し、下部はイリノテカン処理細胞を示す。灰色は、記載の抗体で細胞を染色した後の蛍光強度またはALDH活性を示し、白色は、対照アイソタイプ抗体で細胞を染色した後の蛍光強度またはALDHインヒビターでのALDH活性を示す。 PLR123細胞における付着培養および浮遊培養の移行前(1として示す)および後の細胞のLgr5 mRNAのレベルを示す図である。F→Aは、浮遊培養から付着培養への移行を示し、A→Fは付着培養から浮遊培養への移行を示す。結果は3回の実験の平均である。各カラム上部のバーは標準偏差を示す。 癌幹細胞の形態の交互変化を示す写真である。Lgr5陰性の大腸癌幹細胞を解離させて平底プレートで培養したところ、一部の細胞がプレートの底に付着し、Lgr5陽性となり、間葉細胞様形態を示した(左側)。一方、Lgr5陽性の付着大腸癌幹細胞を超低接着プレートで培養したところ、一部の細胞が増殖を停止し、スフェロイド様構造を形成した。スケールバーは10μmを示す。 PLR123細胞におけるLgr5陰性の浮遊癌幹細胞およびLgr5陽性の付着癌幹細胞におけるE-カドヘリンおよびSnailのウエスタンブロット解析結果を示す写真である。浮遊癌幹細胞は高レベルのE-カドヘリンを発現した一方、付着癌幹細胞は高レベルのSnailを発現した。GADPHをローディング対照として用いた。 PLR123細胞におけるE-カドヘリン抗体、Snail抗体、およびβ-カテニン抗体によるLgr5陰性の浮遊癌幹細胞およびLgr5陽性の付着癌幹細胞の免疫細胞化学の結果を示す写真である。浮遊癌幹細胞は、細胞表面のE-カドヘリンおよびβ-カテニンが高発現している上皮様細胞であったが、付着癌幹細胞は、Snailおよびβ-カテニンが核局在している間葉様細胞であった。スケールバーは25μmを示す。 PLR59細胞におけるLgr5陰性の浮遊癌幹細胞およびLgr5陽性の付着癌幹細胞におけるE-カドヘリンおよびSnailのウエスタンブロット解析結果を示す図である。浮遊癌幹細胞は高レベルのE-カドヘリンを発現した一方、付着癌幹細胞は高レベルのSnailを発現した。GADPHをローディング対照として用いた。 抗Lgr5抗体および抗Snail抗体による異種移植組織(PLR123細胞由来)の免疫組織化学の結果を示す写真である。出芽性領域のEMT様細胞において核Snailと細胞質Lgr5の同時発現が検出された(左側パネル)が、管においては検出されなかった(右側パネル)。矢印はLgr5陽性の出芽性細胞を示す。スケールバーは10μmを示す。 多数の器官における付着癌幹細胞の腫瘍形成活性を示す図である。PLR 123の付着癌幹細胞を5×105個、尾静脈に注射した(n=5)。様々な器官における投与後40日目の腫瘍形成の出現率を示す。 肺、肝臓、リンパ節、および皮下組織における腫瘍の組織病理学的実験の結果を示す写真である。肺において、腫瘍細胞は未分化の腫瘍巣を示したが、肝臓およびその他器官においては、腫瘍細胞は、複数の分化ステージを伴う管構造を示した。スケールバーは100μmを示す。
本発明は、ヒト癌疾患の治療又は予防のための医薬品開発に有効に使用することのできる癌幹細胞集団に関する。具体的には、癌形成能が無い細胞が実質的に除去された、癌幹細胞の集団であって、癌組織の階層構造を再現する特徴を有する癌幹細胞集団に関する。
本発明の癌幹細胞集団の由来は特に限定されるものではないが、ヒト腫瘍組織由来であることが好ましい。
本発明の第一の側面として、癌形成能が無い細胞が実質的に除去された癌幹細胞の集団であって、癌組織の階層構造を再現する前記集団が提供される。
本発明において「癌」とは、典型的には制御されない細胞増殖により特徴づけられる哺乳動物の生理学的状態を意味し、又はかかる生理学的状態を言う。本発明において、癌の種類は、特に限定されるものではないが、次のものが挙げられる:癌腫(上皮癌)としては、膵臓癌、前立腺癌、乳癌、皮膚癌、消化管の癌、肺癌、肝細胞癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、卵管癌、膣癌、肝臓癌、胆管癌、膀胱癌、尿管の癌、甲状腺癌、副腎癌、腎臓癌、又はその他の腺組織の癌が挙げられる。肉腫(非上皮癌)としては、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、黄紋筋肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、線維肉腫、悪性末梢神経腫瘍、消化管間質系腫瘍、類腱腫、ユーイング肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、その他の実質臓器の腫瘍、例えばメラノーマ又は脳腫瘍が挙げられる(Kumar V, Abbas AK, Fausio N. Robbins and Cotran Pathologic Basis of Disease. 7th Ed. Unit I: General Pathology, 7: Neoplasia, Biology of tumor growth: Benign and malignant neoplasms. 269-342, 2005)。本発明の癌幹細胞集団は、上記の上皮癌由来の腫瘍組織由来のものであってもよい。
本発明において、癌幹細胞とは、以下のi)及び/又はii)に記載された能力を有する細胞をいう。
i)自己複製能を保有する。自己複製能とは、分裂した2つの娘細胞のどちらか1つ又は両方の細胞が、細胞系譜上、親細胞と同等の能力及び分化程度を保持している細胞を産出できる能力をいう。
ii)癌細胞塊を構成する複数種の癌細胞へ分化できる。癌幹細胞から分化した複数種の癌細胞は、正常幹細胞と同様に、細胞系譜上、癌幹細胞を頂点とする階層構造を形成する。癌幹細胞から段階的に多種癌細胞が産出されることにより多様な特徴を有する癌細胞塊が形成される。
癌幹細胞とは癌形成能をもち、正常幹細胞と同様に多分化能と自己複製能を持つ癌細胞である。また、癌幹細胞マーカーCD24、CD29、CD34、CD44、CD49f、CD56、CD90、CD117、CD133、CD135、CD166、CD184、CD271、CD326、Aldefluor、ABCG2、ABCG5、LGR5、及びMsi1から選択される少なくとも1つ以上のマーカーが陽性である場合があるが、必ずしも陽性である必要はない。好ましくは、CD326、CD133、CD44、ALDHから選択される少なくとも1つ以上のマーカーが陽性であり、さらに好ましくは、CD326、CD133、CD44、ALDHから選択される少なくとも2つ以上のマーカーが陽性であり、さらに好ましくは、CD326、CD133、CD44、ALDHから選択される少なくとも3つ以上のマーカーが陽性であり、最も好ましくはCD326、CD133、CD44、ALDHすべてが陽性である。
また、癌幹細胞が示し得る生物活性である上皮間葉移行の能力も癌幹細胞の有する性質の一つでもあり得る。正常細胞および腫瘍細胞は、in vitroおよびin vivoで多様な分化の状態において存在する。これらの分化状態は、少なくとも部分的に、細胞が属する組織微小環境から生じる複雑なシグナルの統合を通して調節される。細胞(例えば癌細胞)は、多数の遺伝子撹乱(genetic perturbation)を通して、例えば特定の因子(例えばTwist、Snail、TGF-ベータもしくはMMP類)の過剰発現を介して、またはE−カドヘリンなどの接着性接合部タンパク質の阻害により、上皮間葉移行(EMT)を経験するように誘導され得る。EMTへと誘導された細胞は、用いられた誘導方法に関係なく、類似する表現型の形質およびタンパク質マーカー(例えばバイオマーカー)を発現し、このことは、EMTが主要な分化プログラムであることを示している。本発明は、EMTへと誘導された細胞が、癌幹細胞に関連する細胞表面マーカーの発現、懸濁培養中での増殖、少ない細胞数でのin vivoでの腫瘍形成、および特定の標準的な化学療法薬に対する耐性を含む、癌幹細胞の特性のうちの多数を共有するという発見に関する。したがって、間葉分化転換または上皮間葉分化転換とも称される上皮間葉移行を経験した細胞により示される分化の状態は、癌幹細胞を特異的に標的とする治療を同定するために利用することができる。本発明の非限定な一態様において、例えば被験細胞を生成する目的等のために上皮間葉移行を誘導する方法が提供される。
癌幹細胞は、癌幹細胞を頂点とする階層構造を形成する。癌幹細胞から段階的に多種癌細胞が産出されることにより多様な特徴を有する癌細胞塊が形成される。一方、癌形成細胞とは多分化能をもたない癌細胞であって、癌形成能を持つ癌細胞である。癌形成試験では癌形成能と自己複製能を評価することができ、病理学的な解析や分化マーカーを用いた解析では多分化能を評価できる。癌幹細胞であることを証明するためには、癌形成能だけでなく自己複製能と多分化能も評価しなければならない。
癌細胞塊とは、細胞などがヒト腫瘍組織と同様にバラバラでなく相互に接着して形成する塊であり、癌細胞、間質細胞や血球細胞などの癌細胞以外の細胞、コラーゲンやラミニンなどの細胞外基質などで構築される塊をいう。
階層構造とは、正常組織に見られる特徴的な固有構造の一部が、当該組織を発生元とする腫瘍構造に病理組織学的に検出されることをいい、一般に高分化型の癌でこの階層構造がより高度に再現し、例えば、腺腔形成臓器の腫瘍(胃癌、大腸癌、膵臓癌、肝癌、胆管癌、乳癌、肺腺癌、前立腺癌など)の場合、管腔形成や粘液細胞の出現等が見られ、扁平上皮構造を取る腫瘍(肺、皮膚、膣粘膜等の扁平上皮癌)の場合、上皮の重層構造形成と角化傾向等が見られることを言う。一方で、低分化型の癌ではこの階層構造の再現が不十分で、異型性に富むと言われている(Kumar V, Abbas AK, Fausio N. Robbins and Cotran Pathologic Basis of Disease. 7th Ed. Unit I: General Pathology, 7: Neoplasia, Biology of tumor growth: Benign and malignant neoplasms. 272-281, 2005)。この階層構造は癌の種々の生物反応の結果、再現されたものであると考えられることから、これを再現する非ヒト動物モデルの利用価値は高いものと考えられる。
階層構造を再現するとは、移植元の癌患者の癌組織が持っていた特長的な固有構造が、非ヒト動物に移植された際に、同様に観察されることをいう。
癌形成能を有するとは、非ヒト動物に移植された細胞、又は細胞集団が癌細胞塊を形成することをいい、好ましくは階層構造を有する癌細胞塊を形成することである。
癌形成能がないとは、非ヒト動物に移植された細胞、又は細胞集団が癌細胞塊を形成できないことをいう。
癌形成能がない細胞が実質的に除去されたことは、限界希釈した細胞集団を免疫不全動物に移植することにより確認できる。本発明において、「癌形成能がない細胞が実質的に除去された」とは、免疫不全動物、好ましくはNOGマウスにスポットあたり10細胞を皮下移植した際に形成される癌細胞塊の形成頻度が60%以上であることをいい、好ましく70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは100%をいう。また、Hu Y & Smyth GK., J Immunol Methods. 2009 Aug 15;347(1-2):70-8やIshizawa K & Rasheed ZA. et al., Cell Stem Cell. 2010 Sep 3;7(3):279-82に記載された方法など用いることができる。この方法では、1000細胞、100細胞、10細胞を免疫不全動物に移植し、癌細胞塊が形成される頻度をExtreme Limiting Dilution Analysis (Hu Y & Smyth GK., J Immunol Methods. 2009 Aug 15; 347(1-2): 70-8)を用いて解析する。本発明において、癌形成能がない細胞が実質的に除去された「均質な癌幹細胞の集団」とは、当該解析方法で癌幹細胞の頻度が1/20以上、好ましくは1/10以上、より好ましくは1/5以上、さらに好ましくは1/3以上、さらに好ましくは1/2以上、最も好ましくは1/1であることをいう。
Extreme Limiting Dilution Analysis(ELDA)は、幹細胞のアッセイの必要性に応じた、制限希釈分析(limiting dilution analysis(LDA))のためのソフトウェアアプリケーションである。ELDAは0%または100%の応答を含むすべてのLDAのデータセット、のために有意義な信頼区間を提供する制限希釈解析ソフトウェアであり、シングルヒット仮説の妥当性のテスト、複数のデータセット間の頻度有意差のためのテスト等を含む。 Huら(J Immunol Methods. (2009) 347 (1-2), 70-78)によって提唱されたELDAにもとづく解析方法は、上記の非特許文献に記載される方法を適用するほか、http://bioinf.wehi.edu.au/software/elda/において提供される、オンラインの解析ツールを用いることによって当業者は実施することが可能である。
本発明を用いれば、癌幹細胞を大量に調製することが可能である。付着培養するフラスコ数を増やすことで原理的には所望の数の癌幹細胞を取得することができる。例えばT150フラスコを用いた場合、コンフルエントまで培養すれば通常4×107個以上の細胞を取得することが可能であり、5つのフラスコを用いて培養すれば2×108個以上の細胞を調整することができる。従って、本発明では所望の細胞数を調製することができる。
本発明の癌幹細胞集団は、好ましくは癌形成能が無い細胞が実質的に除去されたており、かつ、該集団には癌幹細胞を1x104個以上含んでいてもよく、より好ましくは1x105個以上、さらに好ましくは1x106個以上、さらに好ましくは1x107個以上、さらに好ましくは1x108個以上、最も好ましくは1x109個以上含んでいてもよい。
本発明の第2の側面として、本発明の細胞集団の作製方法が提供される。
本発明の細胞集団は、例えば、癌幹細胞を含む細胞群を付着培養することにより、作製することができる。
癌幹細胞を含む細胞群としては、SV40などの癌ウイルス遺伝子若しくはRasなどの癌遺伝子を導入した細胞、癌組織から株化した細胞などを用いることができる。
癌幹細胞を含む細胞群としては、癌組織の階層構造を再現する細胞群を用いることが好ましく、例えば採取した癌組織を用いることができるが、好ましくは非ヒト動物に癌を移植し継代して作製した樹立癌細胞株で、さらに好ましくは免疫不全動物に癌を移植し継代して作製した樹立癌細胞株で、最も好ましくはNOGマウスに癌組織を移植し継代して作製したNOG樹立癌細胞株を用いることができる。
さらに、癌幹細胞を含む細胞群としては、スフェロイド培養により形成されたスフェロイドでもよいし、又は、癌幹細胞マーカーCD24、CD29、CD34、CD44、CD49f、CD56、CD90、CD117、CD133、CD135、CD166、CD184、CD271、CD326、Aldefluor、ABCG2、ABCG5、LGR5、及びMsi1から選択される少なくとも1つ以上のマーカーが陽性である細胞を含む細胞群でもよい。
細胞群の由来は特に限定されず、ヒト、サル、チンパンジー、イヌ、ウシ、ブタ、ウサギ、ラット、マウス等の哺乳動物等に由来するものを用いることができるが、ヒト由来のものが好ましい。
NOG樹立癌細胞株は当業者に知られた方法で作製することができ、例えばFujii E. et al., Pathol int. 2008; 58: 559-567に記載された方法などを用いることができ、外科手術で摘出したヒト大腸癌、胃癌、肺癌、乳癌、膵臓癌などをハサミで物理的にミンスし、NOGマウスに皮下移植・継代することにより樹立できる。NOG樹立癌細胞株では継代を経てもオリジナルヒト癌組織の特徴が維持される。
付着培養工程としては、付着培養であれば使用する培地は特に制限されないが、無血清の幹細胞培地を用いることが好ましい。
付着培養とは、付着培養フラスコ、プレート、ディッシュに細胞を播種後、付着した状態で細胞を培養、継代することをいい、浮遊細胞を除いた培養である。コンフルエントに増殖した細胞は、Accutaseを用いて剥がし新しい付着培養フラスコ、プレート、ディシュに継代し培養を続ける。
本発明に使用可能な培養液は、癌幹細胞を培養するのに使用できる培養液であれば特に限定されるものではなく、例えばEGF、bFGF、hLIF、HGF、NGF、NSF-1、TGFβ、TNFα、Heparin、BSA、insulin、Transferrin、Putrescine、Selenite、Progesterone、Hydrocortisone、D-(+)-Glucose、Sodium Bicarbonate、 HEPES、L-Glutamine、N-acetylcysteine加えた従来公知の基礎培養液又はこれらの混合物を培養液として用いることができる。EGFの濃度は特に限定されないが、0.1〜100ng/mL、好ましくは0.5〜50ng/mL、より好ましくは1〜20ng/mLである。bFGFの濃度は特に限定されないが、0.1〜100ng/mL、好ましくは0.5〜50ng/mL、より好ましくは1〜20ng/mLである。hLIFの濃度は特に限定されないが、0.1〜100ng/mL、好ましくは0.5〜50ng/mL、より好ましくは1〜20ng/mLである。HGFの濃度は特に限定されないが、0.1〜100ng/mL、好ましくは1〜50ng/mLである。NGFの濃度は特に限定されないが、0.1〜100ng/mL、好ましくは1〜50ng/mLである。NSF-1の濃度は特に限定されないが、0.1〜100ng/mL、好ましくは1〜50ng/mLである。TGFβの濃度は特に限定されないが、0.1〜100ng/mL、好ましくは1〜50ng/mLである。TNFαの濃度は特に限定されないが、0.1〜100ng/mL、好ましくは1〜50ng/mLである。Heparinの濃度は特に限定されないが、10ng/mL〜10μg/mL、好ましくは2〜5μg/mLである。BSAの濃度は特に限定されないが、0.1〜10mg/mL、好ましくは1〜8mg/mLである。Insulinの濃度は特に限定されないが、1〜100μg/mL、好ましくは10〜50μg/mLである。Transferrinの濃度は特に限定されないが、10〜500μg/mL、好ましく50〜200μg/mLである。Putrescineの濃度は特に限定されないが、1〜50μg/mL、好ましくは10〜20μg/mLである。Seleniteの濃度は特に限定されないが、1〜50nM、好ましくは20〜40nMである。Progesteroneの濃度は特に限定されないが、1〜50nM、好ましくは10〜30nMである。Hydrocortisoneの濃度は特に限定されないが、10ng/mL〜10μg/mL、好ましくは100ng/mL〜1μg/mLである。D-(+)-Glucoseの濃度は特に限定されないが、1〜20mg/mL、好ましくは5〜10mg/mLである。Sodium Bicarbonateの濃度は特に限定されないが、0.1〜5mg/mL、好ましくは0.5〜2mg/mLである。 HEPESの濃度は特に限定されないが、0.1〜50mM、好ましくは1〜20mMである。L-Glutamineの濃度は特に限定されないが、0.1〜10mM、好ましくは1〜5mMである。N-acetylcysteineの濃度は特に限定されないが、1〜200μg/mL、好ましく10〜100μg/mLである。公知の基礎培養液としては、癌幹細胞のもととなる癌細胞の培養に適したものであれば特に限定されないが、例えばDMEM/F12、DMEM、F10、F12、IMDM、EMEM、RPMI-1640、MEM、BME、Mocoy's 5A、MCDB131等が挙げられる。この中では、DMEM/F12が好ましい。
最も好ましい幹細胞培地として、D-MEM/F12培地に、最終濃度が20ng/mLのEGF、10ng/mL のbFGF、4μg/mLのHeparin、4mg/mLのBSA、25μg/mLのinsulin、100μg/mLのTransferrin、16μg/mLのPutrescine、30nMのSelenite、20nMのProgesterone、2.9mg/mLのD-(+)-Glucoseを加えた培地が挙げられる。
付着培養を行う前に癌幹細胞を含む細胞群を増殖させることが好適である。
細胞群を増殖させるとは、例えば、スフェロイド培養や非ヒト動物に移植し継代することにより増殖させることをいうが、特にこれらに限定されるものではない。
スフェロイド培養とは、上記の幹細胞を培養できる培地を用いて非付着培養フラスコ、プレート、ディッシュに細胞を播種後、浮遊した状態で細胞を培養することであり、このような浮遊した状態の培養で形成された細胞塊をスフェロイドという。
非ヒト動物としては拒絶反応が起こりにくい点で免疫不全動物を用いることができる。免疫不全動物としては、機能的なT細胞を欠損している非ヒト動物、例えばヌードマウスやヌードラット、機能的なT細胞とB細胞とを欠損している非ヒト動物、例えばSCIDマウスやNOD-SCIDマウスの使用が好適であり、なかでも優れた可移植性を有するT細胞、B細胞、NK細胞とを欠損しているマウス(例えば、SCIDマウス、RAG2KOまたはRAG1KOマウスとIL-2Rgnullマウスとを組み合わせた高度免疫不全マウス:これにはNOD/SCID/gammacnullマウス、NOD-scid,IL-2RgnullマウスやBALB/c-Rag2null,IL-2Rgnullマウスなどが含まれる)の使用がより好適である。
非ヒト動物の週齢は、例えば無胸腺ヌードマウス、SCID マウス、NOD/SCIDマウス、NOGマウスの場合、4〜100週齢のものを用いることが好ましい。
NOGマウスは、例えばWO 2002/043477に記載の方法により作製可能であり、(財)実験動物中央研究所やThe Jackson Laboratory(NSGマウス)から入手することも可能である。
移植する細胞は細胞塊、組織片、個々に分散した細胞、単離後一旦培養された細胞、他の動物に移植されるという過程を経て再びその動物から単離された細胞など、どのようなものでもよいが、分散した細胞が好ましい。また、移植される細胞数は、10以下の数でよいが、それ以上の数の細胞を移植しても構わない。
皮下移植は移植手技が簡便であるという点から好適な移植部位であるではあるが、移植部位は特に制限されるものではなく、使用する動物によって適宜移植部位を選択することが好ましい。なお、NOG樹立癌細胞株の移植操作は、特に制限されず、慣用の移植操作に従って行うことができる。
本方法の細胞集団は、例えば患者から採取した癌組織を無血清の幹細胞培地を用い付着培養することで作製することができる。また、付加的に細胞群を増殖させるために、付着培養を行う前にどのような培養を経たかは問われない。例えば、患者から採取した癌組織をスフェロイド培養し、その後無血清の幹細胞培地を用い付着培養することで作製することもできる。また、患者から採取した癌組織を非ヒト動物に移植・継代した後に、無血清の幹細胞培地を用い付着培養することで作製することもできる。さらには、患者から採取した癌組織をNOGマウスに移植・継代し作製したNOG樹立癌細胞株を、無血清の幹細胞培地を用い付着培養する作製する方法が、効率よく大量の本発明の細胞集団を得ることができる点で最も好ましい。
本発明の細胞集団は、医薬品のターゲット分子探索方法、医薬品の評価方法に使用することができる。医薬品の評価方法としては医薬品のスクリーニング方法や抗癌剤のスクリーニングなどが挙げられる。
ターゲット分子探索方法として、Gene-chip解析を用いた癌幹細胞で高発現するDNAやRNAなどの遺伝子(例えば、癌幹細胞のマーカー)の同定方法、プロテオミクスを用いた癌幹細胞で高発現するタンパク質、ペプチド又は代謝産物の同定方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ターゲット分子探索のスクリーニング方法として、低分子ライブラリー、抗体ライブラリー、マイクロRNAライブラリー、RNAiライブラリーからcell growth inhibition assayで癌幹細胞の増殖を抑制する物質をスクリーニングする方法などが挙げられる。抑制する物質を取得後、標的を明らかにすることができる。
癌幹細胞を免疫し抗体を取得後、ELISAで結合抗体をスクリーニング、又はcell growth inhibition assayで増殖を抑制する抗体をスクリーニングすることもできる。結合抗体、機能抗体取得後、抗原を同定してターゲット分子を明らかにすることができる。
本発明の癌幹細胞の集団を用いれば、既存薬剤や開発中の薬剤を用いて癌幹細胞への効果を評価し、新たな薬効を見出すこともできる。
均一な癌幹細胞の濃縮により、例えば以下のようなことが可能となる。
1.癌幹細胞に特異的に発現する、核酸(DNA, RNA)、たんぱく質などを高率に同定し、これらの分子の機能を解明する。
2.癌幹細胞に特異的に発現する、核酸(DNA, RNA)、たんぱく質などを高率に同定し、これを阻害する薬剤候補の探索・スクリーニングを実施する
3.濃縮される各癌幹細胞の生物機能解析結果(浸潤性、分裂速度など)を指標に、癌の予後診断などに用いる
4.濃縮される各癌幹細胞の生物機能解析結果(浸潤性、分裂速度など)を指標に、新たに癌を分類し、この分類ごとの抗癌剤の探索・スクリーニングに応用する。
5.濃縮された癌幹細胞が、癌組織の大部分を占める分化細胞を輩出する過程を研究し、この過程をおさえこむ抗癌剤(癌サイレンサー)の探索・スクリーニングに使用する。
6.癌幹細胞の培養条件(酸素分圧、栄養条件、抗癌剤処置等)を劣悪な方向に調節することで、癌幹細胞に特徴的な生物反応を検出し、癌幹細胞の耐久性の成因を検討する。
7.癌幹細胞の培養条件(酸素分圧、栄養条件、抗癌剤処置等)を劣悪な方向に調節することで、癌幹細胞に特徴的な生物反応を検出し、癌幹細胞の耐久性を阻害する抗癌剤の探索・スクリーニングに使用する。
医薬品のターゲット分子探索方法
本発明は、本発明の癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデル又は本発明の癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系において、癌幹細胞から形成される階層構造、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を指標として評価を行うことを特徴とする、医薬品のターゲット分子探索方法に関する。
本方法において、癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデルを使用する場合には、以下の(1)〜(4)に記載された工程により、医薬品のターゲット分子探索を行うことができる。
(1)癌幹細胞集団を非ヒト動物に移植することにより非ヒト動物モデルを作製する工程、
(2)癌幹細胞集団の癌進展プロセスにおいて特徴的に認められる組織構造、又はその生物学的特性を示す組織片を採取する工程、
(3)(2)において採取した組織片についてDNA、RNA、タンパク質、ペプチド又は代謝産物の発現を調べる工程、及び
(4)組織片中の癌幹細胞から形成される階層構造、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性に依存的に変動するDNA、RNA、タンパク質、ペプチド又は代謝産物を同定する工程。
また、本方法において、癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系を使用する場合には、以下の(1)〜(3)に記載された工程により、医薬品のターゲット分子探索を行うことができる。
(1)癌幹細胞集団をin vitro条件下で培養し、癌幹細胞から始まる癌進展プロセスの特徴構造、又は癌幹細胞の生物学的特性を再現する工程、
(2)特徴構造を再現した培養細胞の、DNA、RNA、及びタンパク質、ペプチド又は代謝産物の発現を調べる工程、及び
(3)培養細胞中の癌幹細胞から形成される階層構造、癌肝細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性に依存的に変動するDNA、RNA,タンパク質、ペプチド及び代謝産物を同定する工程。
本発明において、癌進展プロセスにおいて特徴的に認められる組織又は細胞株の構造観察は、AMeX法等の公知の標本作製方法により薄切組織標本を作製した上で、HE染色及び免疫組織化学染色(IHC)を実施することで行うことができる。被験組織において、上述のヒト腫瘍組織に特異的な階層構造、癌進展プロセス、又はその生物学的特性が確認された場合に、その被験組織を癌関連組織であるものとして、DNA、RNA,タンパク質、ペプチド及び代謝産物の発現を確認する。DNA、RNA、タンパク質、ペプチド及び代謝産物の発現確認については、特に制限はされず、慣用の発現確認方法に従って行うことができる。RNAとしては、マイクロRNA、siRNA、tRNA、snRNA、mRNA、又はノンコーディングRNA等が挙げられる。例えば、各遺伝子のmRNAを定法に従って抽出し、このmRNAを鋳型としたノーザンハイブリダイゼーション法、又はRT-PCR法を実施することによって各遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。さらに、DNAアレイ技術を用いて、各遺伝子の発現レベルを測定することも可能である。また、各遺伝子からコードされるタンパク質を含む画分を定法に従って回収し、各タンパク質の発現をSDS-PAGE等の電気泳動法で検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うこともできる。また、各タンパク質に対する抗体を用いて、ウエスタンブロッティング法を実施し、各タンパク質の発現を検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うことも可能である。これらの方法により抗癌剤のターゲット分子の探索を行うことができる。
前記の医薬品のターゲット分子の非限定的な一態様として、実施例で挙げられたような本発明の癌幹細胞に特異的に発現している分子であるCD133、CD44、EpCAM、CD166、CD24、CD29またはLGR5等が好適に挙げられる。
本発明において、前記医薬品は特に限定されるものではないが、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗ウイルス剤、血管新生抑制剤、ステロイド剤、酵素阻害剤、抗生物質、抗ヒスタミン剤、抗凝固剤、抗感染剤、鎮痛剤、糖尿病治療剤、関節炎治療剤、抗ぜんそく剤、抗不眠症剤、鎮吐剤、片頭痛治療剤、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗精神病剤、解熱剤、パーキンソン病治療剤、アルツハイマー治療剤、交感神経作用剤、不整脈治療剤、降圧剤、利尿剤、抗利尿剤、抗凝固剤、血管拡張剤、鎮静剤などが挙げられるが、抗癌剤が好適である。また、前記医薬品は特に限定されるものではないが、タンパク質薬剤、核酸薬剤、低分子薬剤、細胞性薬剤などが挙げられる。また、本発明において、ターゲット分子は特に限定されるものではないが、膜受容体、酵素、イオンチャネル、転写因子あるいは核内受容体などが挙げられ、癌細胞マーカーが好適である。
医薬品の評価方法
本発明は、本発明の癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデル又は癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系において、癌幹細胞から形成される階層構造、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を指標として評価を行うことを特徴とする、医薬品の評価方法に関する。
本方法において、本発明の癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデルを使用する場合には、以下の(1)〜(5)に記載された工程により、医薬品の評価を行うことができる。
(1)癌幹細胞集団を非ヒト動物に移植することにより非ヒト動物モデルを作製する工程、
(2)被験物質を(1)の非ヒト動物モデルに投与する工程、
(3)癌幹細胞から始まる癌進展プロセスにおいて特徴的に認められる組織構造、又はその生物学的特性を示す組織片を採取する工程、
(4)組織片中の癌幹細胞の経時変化、癌進展プロセス、又はその生物学的特性を観察する工程、及び
(5)被験物質により阻害された癌幹細胞から形成される階層構造形成、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を同定する工程。
また、本方法において、癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系を使用する場合には、以下の(1)〜(3)に記載された工程により、医薬品の評価を行うことができる。
(1)癌幹細胞集団をin vitro条件下で培養し、癌幹細胞から始まる癌進展プロセスの特徴構造、又は癌幹細胞の生物学的特性を再現する工程、
(2)被験物質で(1)の培養細胞を処理する工程、
(3)癌幹細胞から形成される階層構造の変化、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を観察する工程、及び
(4)被験物質により阻害された癌幹細胞から形成される階層構造形成、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を同定する工程。
医薬品のスクリーニング方法
本発明は、本発明の癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデル又は癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系において、癌幹細胞から形成される階層構造、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を指標として評価を行うことを特徴とする、医薬品のスクリーニング方法に関する。
本方法において、本発明の癌幹細胞集団が移植された非ヒト動物モデルを使用する場合には、以下の(1)〜(5)に記載された工程により、医薬品のスクリーニングを行うことができる。
(1)癌幹細胞集団を非ヒト動物に移植することにより非ヒト動物モデルを作製する工程、
(2)被験物質を(1)の非ヒト動物モデルに投与する工程、
(3)癌幹細胞から始まる癌進展プロセスにおいて特徴的に認められる組織構造、又はその生物学的特性を示す組織片を採取する工程、
(4)組織片中の癌幹細胞の経時変化、癌進展プロセス、又はその生物学的特性を観察する工程、及び
(5)特定の癌幹細胞から形成される階層構造形成、癌幹細胞から始まる癌進展プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を阻害する被験物質を同定する工程。
また、本方法において、癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系を使用する場合には、以下の(1)〜(4)に記載された工程により、医薬品のスクリーニングを行うことができる。
(1)癌幹細胞集団をin vitro条件下で培養し、各癌進展プロセスの特徴構造、又はその生物学的特性を再現する工程、
(2)被験物質で(1)の培養細胞を処理する工程、
(3)培養細胞中の癌幹細胞の階層構造の経時変化、癌進展プロセス、又はその生物学的特性を観察する工程、及び
(4)被験物質により阻害された癌幹細胞の階層構造形成、癌進展プロセス、又はその生物学的特性を同定する工程。
上記スクリーニング方法により抗癌剤のスクリーニングを行うことができる。
本発明の方法における「被験物質」としては、特に制限はなく、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、抗体、ペプチド、アミノ酸等の単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞抽出物、真核単細胞抽出物若しくは動物細胞抽出物等を挙げることができる。これらは精製物であっても、また植物、動物又は微生物等の抽出物等のように粗精製物であってもよい。また被験物質の製造方法も特に制限されず、天然物から単離されたものであっても、化学的又は生化学的に合成されたものであっても、また遺伝子工学的に調製されたものであってもよい。
上記被験試料は必要に応じて適宜標識して用いることができる。標識としては、例えば、放射標識、蛍光標識等を挙げることができる。また、上記被験試料に加えて、これらの被験試料を複数種混合した混合物も含まれる。
本方法において、非ヒト動物モデルに対する被験物質の投与方法も特に制限されない。投与する被験物質の種類に応じて、経口投与又は皮下、静脈、局所、経皮若しくは経腸(直腸)などの非経口投与を適宜選択することができる。
本方法において、被験物質で癌幹細胞集団の培養細胞を処理する方法も特に制限されない。当該処理は、細胞の培養液又は該細胞抽出液に被験試料を添加することにより行うことができる。被験試料がタンパク質の場合には、例えば、該タンパク質をコードするDNAを含むベクターを、癌幹細胞集団へ導入する、又は該ベクターを癌幹細胞集団の細胞抽出液に添加することで行うことも可能である。また、例えば、酵母又は動物細胞等を用いた2ハイブリッド法を利用することも可能である。
被験物質の評価は、その後、当該モデル動物について移植組織(癌幹細胞集団が移植された組織)を摘出し該移植組織の組織学的特徴を観察したり、又は細胞培養系において組織学的特徴を測定することによって行うことができる。
具体的には、被験物質の評価は、非ヒト動物モデル又は癌幹細胞集団のin vitro条件下での培養系において、移植組織又は培養系の癌幹細胞から形成される階層構造を観察し、ヒト癌細胞特有の階層構造を形成しているか確認するか、又はヒト癌疾患に特徴的な癌進展プロセスに対する影響を確認することによって行うことができる。なお、癌進展プロセスにおいて特徴的に認められる組織又は細胞株の構造観察は、AMeX法等の公知の標本作製方法により薄切組織標本を作製した上で、HE染色及び免疫組織化学染色(IHC)を実施することで行うことができる。
上記被験物質の評価は、より具体的には、被験物質を投与しない対照の非ヒト動物モデル又は癌幹細胞集団について同様に、移植組織又は培養系の癌幹細胞の階層構造を観察し、ヒト癌細胞特有の階層構造を形成しているか確認し、被験物質を投与した非ヒト動物モデル又は癌幹細胞集団と上記対照動物とで、癌幹細胞の階層構造を対比することによって行うことができる。この場合、対照動物の場合に比して、被験物質を投与した移植組織又は培養系においてヒト癌細胞特有の階層構造が見られない場合、又はその割合が低下した場合に、それらの被験物質を、ヒト癌疾患の治療又は予防効果を有する有効物質として選択することができる。
また、上記被験物質の評価は、より具体的には、被験物質を投与しない対照の非ヒト動物モデル又は癌幹細胞集団について同様に、移植組織又は培養系の癌進展プロセスを観察し、ヒト癌細胞特有の癌進展プロセスが見られるか確認し、被験物質を投与した非ヒト動物モデル又は癌幹細胞集団と上記対照動物とで、癌幹細胞の癌進展プロセスを対比することによって行うことができる。この場合、対照動物の場合に比して、被験物質を投与した移植組織又は培養系においてヒト癌細胞特有の癌進展プロセスが見られない場合に、それらの被験物質を、ヒト癌疾患の治療又は予防効果を有する有効物質として選択することができる。
さらに、上記被験物質の評価は、より具体的には、被験物質を投与しない対照の非ヒト動物モデル又は癌幹細胞集団について同様に、移植組織又は培養系の癌幹細胞における生物学的特性を観察し、ヒト癌細胞特有の当該特性が見られるか確認し、被験物質を投与した非ヒト動物モデル又は癌幹細胞集団と上記対照動物とで、癌幹細胞の当該特性を対比することによって行うことができる。この場合、対照動物の場合に比して、被験物質を投与した移植組織又は培養系においてヒト癌細胞特有の当該特性が見られない場合に、それらの被験物質を、ヒト癌疾患の治療又は予防効果を有する有効物質として選択することができる。
なお、前述する本発明のスクリーニング方法により、選抜されるヒト癌疾患に対する予防有効物質又は治療有効物質は、必要に応じて、さらに他の薬効試験や安全性試験などを行うことにより、またさらにヒト癌疾患患者への臨床試験を行うことにより、より効果の高い、また実用性の高い予防有効物質又は治療有効物質として選別することができる。
このようにして選別される予防有効物質又は治療有効物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生化学的合成(発酵)又は遺伝子学的操作によって、工業的に製造することもできる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]ヒト癌細胞株を用いた癌幹細胞と癌形成細胞の調製と評価
(1)マウスへ移植した大腸癌株の形態学的評価
大腸癌検体は、PharmaLogicals Research(シンガポール)およびParkway Laboratory Services(シンガポール)の倫理委員会の承認の下で、同意を得た患者から入手したものである。腫瘍片を剪刀で細かく刻み、NOGマウスの側腹部に移植した。ヒト大腸癌異種移植片は、実験動物中央研究所(日本)より供与されたNOGマウス中で継代することにより維持した。本実験で使用したマウスは、PharmaLogicals Researchの動物実験ガイドラインに従って処置した。NOGマウス、又はSCIDマウスで樹立した大腸癌細胞株をNOGマウスへ皮下移植し、癌細胞塊を作成した。癌細胞塊は摘出後、4% パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)にて4℃で16から24 時間の条件で固定し、AMeX法にて包埋して薄切組織標本を作製した。組織標本はHE染色を実施した。図1に結果を示す。NOGマウスへ移植した大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59、大腸癌株PLR325においてヒト組織と同様な形態学的構造が認められ、NOGマウスの影響を受けないことが示された。一方、NOGマウスへ移植した大腸癌株PLR357では形態学的な変化が認められ、NOGマウスへの移植実験に不適切であることが示された。
(2)癌細胞塊から細胞の調製
NOGマウスから癌細胞塊を摘出し、ハサミで物理的にミンスした。次に、DPBS (Invitrogen、Cat. No. 14190144) で数回懸濁し、Collagenase/Dispase(Roche、Cat. No. 10 269 638 001)とDNaseI(Roche、Cat. No. 11 284 932 001)とを含む酵素液に組織を移して、37℃で3時間撹拌した。さらに、ピペッティングを繰り返し細分化した細胞にLysing buffer(BD、Cat. No. 555899)を加え、マウス赤血球を除去した。最後に40μm cell strainer(BD、Cat. No. 352340)に通し、DPBSで数回懸濁し細胞液を調製した。
(3)癌幹細胞マーカー陽性細胞の検出
癌細胞塊から調製した細胞をFACSバッファー(2% Fetal Bovine Serum / DPBS)で懸濁し、Rat mAb to mouse MHC classI(Abcam、Cat. No. ab15680)を加え、4℃で30分反応させた。細胞をFACSバッファーで1回洗浄した後、2次抗体としてPE 標識Goat Ab to rat IgG2a(BioLegend、Cat. No. 405406)あるいはAPC 標識Goat Ab to rat IgG2a(BioLegend、Cat. No. 405407)、死細胞染色として7-AAD Viability Dye(Beckman Coulter、Cat. No. A07704)、癌幹細胞マーカーとしてFITC標識mouse mAb to human CD326 (EpCAM) (Miltenyi Biotec、Cat. No. 130-080-301)、PE標識mouse mAb to human CD133/1 (AC133) (Miltenyi Biotec、Cat. No. 130-080-801)、あるいはPE標識mouse mAb to human CD44 (BD Pharmingen、Cat. No. 550989)をそれぞれ加え、4℃で30分反応させた。次いで細胞をFACSバッファーで1回洗浄した後フローサイトメトリー解析に供した。アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDEHYDE DEHYDROGENASE:ALDH)活性はAldeFluor Kit(Stemcell Technologies、Cat. No. 01700)を用いて、メーカー推奨の操作を行うことにより検出した。フローサイトメトリー解析にはEPICS ALTRA (Beckman Coulter)を用い、mouse MHC class I陰性かつ7-AAD Viability Dye陰性の細胞について癌幹細胞マーカーの解析を行った。図2に結果を示す。大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59、大腸癌株PLR325から形成された癌細胞塊において癌幹細胞マーカー陽性の細胞が認められた。中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59においてはマーカー陽性細胞とマーカー陰性細胞が混在し、ヘテロな細胞集団であった。一方、低分化型の大腸癌株PLR325においては、すべての細胞がEpCAM、AC133、ALDH活性が陽性、またすべての細胞がCD44が陰性という均質な特徴を示す細胞集団であった。
(4)細胞液からマウス細胞の除去
癌細胞塊から調製した細胞をFACSバッファーで懸濁し、Rat mAb to mouse MHC class Iを加え、4℃で15分反応させた。細胞をFACSバッファーで1回洗浄した後、2次抗体としてPE 標識Goat Ab to rat IgG2aを加え、4℃で15分反応させた。さらに細胞をFACSバッファーで1回洗浄した後、EPICS ALTRAによるセルソーティング、 又は、EasySep Mouse PE Positive selection Kit (Stemcell Technologies、Cat. No. 18554)を用いてメーカー推奨の操作を行うことによりマウス細胞を除去した。細胞の純度はEPICS ALTRAを用いて解析した。図3に結果を示す。大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59、大腸癌株PLR325から形成された癌細胞塊において、マウス細胞除去後、95%以上の細胞がmouse MHC class I陰性であることが示された。
(5)大腸癌株の癌形成試験
上記(2)で調製した細胞液からマウス細胞を除去したのち、癌細胞を顕微鏡下で単一細胞であることを確認し、細胞数をカウントした。Hank's Balanced Salt Solution(Invitrogen、Cat. No. 24020-117)で50%に希釈したMatrigel Basement Membrane Matrix(BD、Cat. No. 354234)を用いて、10000cells/mL、1000cells/mL、100cells/mLの細胞液を調製した。それぞれの細胞液を100μL/spot、すなわち1000cells/spot、100cells/spot、10cells/spotでNOGマウスへ皮下移植し、形成される腫瘍数を評価した。表1に結果を示す。中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59において100cells/spot以上の移植において癌の形成が認められ、低分化型の大腸癌株PLR325において10cells/spot以上の移植において癌の形成が認められた。また、癌形成能を有する細胞の頻度をExtreme Limiting Dilution Analysisを用いて解析した。大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59、大腸癌株PLR325においてそれぞれ1/161、1/195、1/14の頻度で癌形成能を有する細胞が含まれていることが示された。
Figure 0006230789
(6)大腸癌株における階層構造形成の組織学的評価
100細胞、10細胞から形成された癌細胞塊は摘出後、4% パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)にて4℃で16から24 時間の条件で固定し、AMeX法にて包埋して薄切組織標本を作製した。組織標本はHE染色を実施した。図4に結果を示す。中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59において階層構造が認められ、大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59は癌幹細胞であることが示された。一方、低分化型の大腸癌株PLR325において、階層構造は認められず、大腸癌株PLR325は癌形成細胞であることが示された。
(7)正常腸管幹細胞マーカーLGR5タンパク質の検出
上記(2)で調製した細胞液からマウス細胞を除去したのち、RIPAバッファー(Sigma、Cat. No. R0278)を用いて大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59、大腸癌株PLR325の細胞ライゼートを作成し、SDS-PAGEを行った後、ウエスタンブロッティングを行った。LGR5タンパク質を検出するためにrabbit mAb to human GPR49(Abcam、Cat. No. ab75850)、陽性コントロールのためにmouse mAb to human GAPDH(Santa Cruz、Cat. No. Sc-69778)を用いた。図5に結果を示す。中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59においてLGR5タンパク質が検出され、正常腸管幹細胞マーカー陽性の細胞が存在することが示された。一方、低分化型の大腸癌株PLR325において、LGR5タンパク質は検出されなかった。
[実施例2]市販in vitro癌細胞株の特徴解析
(1)市販in vitro癌細胞株の培養
市販in vitro癌細胞株の培養は一般的な方法(例えば、37℃、5%CO2存在下)を基本とし、ATCC(http://www.atcc.org/)推奨の培地を用いて行った。なお、全ての培地中のFetal Bovine Serumは、56℃で30min以上保温する処理を行うことにより、非働化したものを用いた。
(2)癌幹細胞マーカー陽性細胞の検出
in vitro培養した癌細胞をAccutase (ICT、Cat. No. AT104)でフラスコから剥がし、FACSバッファーで懸濁し、死細胞染色として7-AAD Viability Dye(Beckman Coulter, Cat. No. A07704)、癌幹細胞マーカーとしてFITC標識mouse mAb to human CD326 (EpCAM)、PE標識mouse mAb to human CD133/1 (AC133)、あるいはPE標識mouse mAb to human CD44をそれぞれ加え、4℃で30分反応させた。次いで細胞をFACSバッファーで1回洗浄した後フローサイトメトリー解析に供した。アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDEHYDE DEHYDROGENASE:ALDH)活性はAldeFluor Kitを用いて、メーカー推奨の操作を行うことにより検出した。フローサイトメトリー解析にはEPICS ALTRA (Beckman Coulter)を用い、7-AAD Viability Dye陰性の細胞について癌幹細胞マーカーの解析を行った。図6に結果を示す。HCT116において、ほとんどの細胞が幹細胞マーカー陽性という均質な特徴を示す細胞集団であった。
(3)市販in vitro細胞株の癌形成試験
in vitro培養した癌細胞をAccutaseでフラスコから剥がし、癌細胞を顕微鏡下で単一細胞であることを確認し、細胞数をカウントした。Hank's Balanced Salt Solutionで50%に希釈したMatrigel Basement Membrane Matrixを用いて、10000cells/mL、1000cells/mL、100cells/mLの細胞液を調製した。それぞれの細胞液を100μL/spot、すなわち1000cells/spot、100cells/spot、10cells/spotでNOGマウスへ皮下移植し、形成される腫瘍数を評価した。表2に結果を示す。HCT116において10cells/spot以上の移植において癌の形成が認められた。また、癌形成能を有する細胞の頻度をExtreme Limiting Dilution Analysisを用いて解析した。HCT116において1/9の頻度で癌形成能を有する細胞が含まれていることが示された。
Figure 0006230789
(4)市販in vitro細胞株における階層構造形成の組織学的評価
10細胞から形成された癌細胞塊は摘出後、4% パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)にて4℃で16から24 時間の条件で固定し、AMeX法にて包埋して薄切組織標本を作製した。組織標本はHE染色を実施した。図7に結果を示す。HCT116において階層構造は認められず、HCT116は癌形成細胞であることが示された。
(5)正常腸管幹細胞マーカーLGR5タンパク質の検出
RIPAバッファーを用いてHCT116の細胞ライゼートを作成し、SDS-PAGEを行った後、ウエスタンブロッティングを行った。LGR5タンパク質を検出するためにrabbit mAb to human GPR49、陽性コントロールのためにmouse mAb to human GAPDHを用いた。図8に結果を示す。HCT116において、LGR5タンパク質が検出されなかった。
(6)正常腸管幹細胞マーカーLGR5陽性細胞の検出
HCT116を5000cells/wellでLab-Tek Chamber Slides(Thermo Scientific、Cat. No. 177402)に蒔き込み培養した。約24時間後、in situハイブリダイゼーションに使用した。in situハイブリダイゼーションはQuantiGene ViewRNA Plate-Based Assay Kit(Panomics、Cat. No. QVP0010)、QuantiGene ViewRNA Plate-Based Signal Amplification Kit(Panomics、Cat. No. QVP0200)、QuantaGene ViewRNA GPR49(LGR5) Probe set(Panomics、Cat. No. VA1-10587)を用いてメーカー推奨の操作を行うことにより解析した。また、核染色にDAPI(Invitrogen、Cat. No. D21490)を用いた。図9に結果を示す。HCT116においてLGR5 probeに対して陽性である細胞は認められなかった。
[実施例3] 癌幹細胞のin vitro株化
(1)癌幹細胞のin vitro付着培養(以後、単に付着培養という場合もある)
細胞の培養は一般的な方法(例えば、37℃、5%CO2存在下)を基本とし、以下の幹細胞培地を用いて行った。幹細胞培地はDMEM/F12(Invitrogen、Cat. No. 11330057)培地に、最終濃度が1xのN-2 supplement(Invitrogen、Cat. No. 17502014)、20ng/mLのRecombinant Human EGF(Invitrogen、Cat. No. 11330032)、10ng/mL のFibroblast Growth Factor-basic Human Recombinant(Sigma, Cat、No. F0291)、4μg/mLのHeparin Sodium Salt(Sigma、Cat. No. H3149)、4mg/mLのAlbuMax Lipid Rich BSA(Invitrogen、Cat. No. 11010021)、20μg/mLのinsulin, Human Recombinant, Zinc solution(Invitrogen、Cat. No. 12585014)、2.9mg/mLのD-(+)-Glucose Solution (45%)(Sigma、Cat. No. G8769)、1xのAntibiotic- Antimycotic(Invitrogen、Cat. No. 15240062)となるようにそれぞれ加えて作製した。癌幹細胞を含む癌細胞は幹細胞培地を用いて付着培養用の6 wellプレート(BD、Cat. No. 353046)で培養した。数日後、プレートに付着した細胞と浮遊した細胞が認められたが、浮遊細胞は除き、付着細胞のみを培養した。コンフルエントに増殖した付着細胞はAccutaseを用いて剥がし、新しい付着培養用の6 wellプレート、あるいは付着培養用のT25フラスコ(BD、Cat. No. 353109)、T75フラスコ(BD、Cat. No. 356485)、T150フラスコ(BD、Cat. No. 355001)を用いて培養した。以下の(2)に示す方法ですべての付着細胞が癌幹細胞マーカー陽性になるまで継代を続け、一部の細胞は細胞保存液であるバンバンカー(Wako、Cat. No. 302-14681)で懸濁し、-80℃以下で保存した。図10にin vitro培養した中分化型の大腸癌株PLR123の形態を示す。浮遊状態においてのみ、スフェロイドと呼ばれる細胞塊の形成が認められた。
(2)癌幹細胞マーカー陽性細胞の検出
幹細胞培地でin vitro付着培養した癌細胞をAccutaseでフラスコから剥がし、FACSバッファーで懸濁し、死細胞染色として7-AAD Viability Dye、癌幹細胞マーカーとしてFITC標識mouse mAb to human CD326 (EpCAM)、PE標識mouse mAb to human CD133/1 (AC133) 、あるいはPE標識mouse mAb to human CD44をそれぞれ加え、4℃で30分反応させた。次いで細胞をFACSバッファーで1回洗浄した後フローサイトメトリー解析に供した。アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDEHYDE DEHYDROGENASE:ALDH)活性はAldeFluor Kitを用いて、メーカー推奨の操作を行うことにより検出した。フローサイトメトリー解析にはEPICS ALTRAを用い、7-AAD Viability Dye陰性の細胞について癌幹細胞マーカーの解析を行った。図11に結果を示す。in vitroで付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59において、すべての細胞が癌幹細胞マーカー陽性で、均質な細胞集団あることが示された。
(3)正常腸管幹細胞マーカーLGR5タンパク質の検出
細胞液からマウス細胞を除去したのち、RIPAバッファーを用いて、中分化型の大腸癌株PLR123、中分化型の大腸癌株PLR59、幹細胞培地でin vitro付着培養した大腸癌株PLR123、幹細胞培地でin vitro付着培養した大腸癌株PLR59各々の細胞ライゼートを作成し、SDS-PAGEを行った後、ウエスタンブロッティングを行った。LGR5タンパク質を検出するためにrabbit mAb to human GPR49、陽性コントロールのためにmouse mAb to human GAPDHを用いた。図12に結果を示す。幹細胞培地でin vitro付着培養した大腸癌株においてLGR5タンパク質の増加が検出された。幹細胞培地でin vitro培養することにより正常腸管幹細胞マーカー陽性の細胞が濃縮されることが示唆された。
(4)正常腸管幹細胞マーカーLGR5陽性細胞の検出
幹細胞培地でin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123を50000cells/wellでLab-Tek Chamber Slidesに蒔き込み培養した。約24時間後、in situハイブリダイゼーションに使用した。in situハイブリダイゼーションはQuantiGene ViewRNA Plate-Based Assay Kit、QuantiGene ViewRNA Plate-Based Signal Amplification Kit、QuantaGene ViewRNA GPR49(LGR5) Probe setを用いてメーカー推奨の操作を行うことにより解析した。また、核染色にDAPIを用いた。図13に結果を示す。幹細胞培地でin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123はすべてがLGR5 probeに陽性であることが認められた。幹細胞培地でin vitro培養することにより正常腸管幹細胞マーカー陽性の細胞が濃縮されることが示され、すべての細胞が正常腸管幹細胞マーカーLGR5陽性の均質な細胞であることが示された。
(5)in vitro付着培養した細胞の癌形成試験
in vitro付着培養した癌細胞をAccutaseでフラスコから剥がし、DPBSで数回懸濁した。細胞液は40μm cell strainerに通し、顕微鏡下で単一細胞であることを確認し、細胞数をカウントした。Hank's Balanced Salt Solutionで50%に希釈したMatrigel Basement Membrane Matrixを用いて、10000cells/mL、1000cells/mL、100cells/mLの細胞液を調製した。それぞれの細胞液を100μL/spot、すなわち1000cells/spot、100cells/spot、10cells/spotでNOGマウスへ皮下移植し、形成される腫瘍数を評価した。表3に結果を示す。in vitroで付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59において、すべての移植で癌の形成が認められた。in vitroで付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59はいずれも、すべてが癌形成能を有する細胞であることが示された。
Figure 0006230789
(6)癌幹細胞のin vitro株化の評価
in vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123をさらに1ヶ月以上培養し、癌形成能力の比較を行った。in vitro付着培養した細胞をAccutaseでフラスコから剥がし、DPBSで数回懸濁した。細胞液は40μm cell strainerに通し、顕微鏡下で単一細胞であることを確認し、細胞数をカウントした。Hank's Balanced Salt Solutionで50%に希釈したMatrigel Basement Membrane Matrixを用いて、10000cells/mL、1000cells/mL、100cells/mLの細胞液を調製した。それぞれの細胞液を100μL/spot、すなわち1000cells/spot、100cells/spot、10cells/spotでNOGマウスへ皮下移植し、形成される腫瘍数を評価した。表4に結果を示す。1ヶ月以上培養した中分化型の大腸癌株PLR123はすべての移植で癌の形成が認められた。in vitro培養による癌形成能力は100%に保たれ、in vitro株化に成功したことが示された。
Figure 0006230789
(7)10 細胞のin vitro付着培養癌細胞から形成された癌細胞塊における階層構造形成の組織学的評価
10 細胞のin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59から形成された癌細胞塊を摘出して、4% パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)にて4℃で、16から24 時間の条件で固定後、AMeX法にて包埋して薄切組織標本を作製した。組織標本はHE染色を実施した。図14に結果を示す。10 細胞のin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59から形成された癌細胞塊において、ヒト組織及び樹立癌細胞株と同様な階層構造が認められた。また、1ヵ月以上培養したin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123から形成された癌細胞塊においても、ヒト組織及びNOG樹立癌細胞株と同様な階層構造が認められた。in vitroで付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59はいずれも、すべてが多分化能を持つ癌幹細胞であることが示された。
(8)10 細胞のin vitro付着培養癌細胞から形成されたヒト癌細胞塊より調製した細胞における癌幹細胞マーカーの解析
10 細胞のin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59から形成された癌細胞塊より調製した細胞をFACSバッファーで懸濁し、Rat mAb to mouse MHC classIを加え、4℃で30分反応させた。細胞をFACSバッファーで1回洗浄した後、2次抗体としてPE 標識Goat Ab to rat IgG2aあるいはAPC 標識Goat Ab to rat IgG2a、死細胞染色として7-AAD Viability Dye、癌幹細胞マーカーとしてFITC標識mouse mAb to human CD326 (EpCAM) 、PE標識mouse mAb to human CD133/1 (AC133)、あるいはPE標識mouse mAb to human CD44をそれぞれ加え、4℃で30分反応させた。次いで細胞をFACSバッファーで1回洗浄した後フローサイトメトリー解析に供した。アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDEHYDE DEHYDROGENASE:ALDH)活性はAldeFluor Kitを用いて、メーカー推奨の操作を行うことにより検出した。フローサイトメトリー解析にはEPICS ALTRAを用い、mouse MHC class I陰性かつ7-AAD Viability Dye陰性の細胞について癌幹細胞マーカーの解析を行った。図15に結果を示す。10 細胞のin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123、大腸癌株PLR59から形成された癌細胞塊において、癌幹細胞マーカー陰性の細胞が認められ、癌幹細胞マーカー陽性細胞から癌幹細胞マーカー陰性細胞が産出されたことが示された。
(9)10 細胞のin vitro付着培養癌細胞から形成されたヒト癌細胞塊(1世代目)より調製した細胞の癌形成試験(2世代目)
10 細胞のin vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123から形成された癌細胞塊(1世代目)より調製した細胞液からマウス細胞を除去したのち、ヒト癌細胞を顕微鏡下で単一細胞であることを確認し、細胞数をカウントした。Hank's Balanced Salt Solutionで50%に希釈したMatrigel Basement Membrane Matrixを用いて、10000cells/mL、1000cells/mL、100cells/mLの細胞液を調製した。それぞれの細胞液を100μL/spot、すなわち1000cells/spot、100cells/spot、10cells/spotでNOGマウスへ皮下移植し、形成される腫瘍数及び形態を評価した。表5に結果を示す。10箇所以上で階層構造を有する癌の形成が認められたことから、癌細胞塊に含まれる細胞が癌幹細胞としての自己複製能を有することが示された。また、癌細胞塊に含まれる癌幹細胞の頻度は、1/95であったことから、in vitro付着培養した癌幹細胞から癌形成能を持たない分化した細胞が産出されたことが示された。
Figure 0006230789
(10)in vitro付着培養癌細胞から形成された2世代目の癌細胞塊における階層構造形成の組織学的評価
in vitro付着培養癌細胞から形成された2世代目の癌細胞塊を摘出して、4% パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)にて4℃で、16から24 時間の条件で固定後、AMeX法にて包埋して薄切組織標本を作製した。組織標本はHE染色を実施した。図16に結果を示す。in vitro付着培養した中分化型の大腸癌株PLR123から形成された2世代目の癌細胞塊において、ヒト組織及びNOG樹立癌細胞株と同様な階層構造が認められた。
[参考実施例1] Lgr5タンパク質発現解析
(1)全長ヒトLgr4、Lgr5、およびLgr6を発現する細胞の樹立
NM_018490(Lgr4)、NM_001017403(Lgr5)、およびNM_003667(Lgr6)の配列に基づくPCRによって、全長ヒトLgr4、Lgr5、およびLgr6 cDNAをクローニングした。クローニングした遺伝子のN末端にHAタグを付加または付加せずに、発現させた。Gene Pulser(BioRad)を用いて、チャイニーズハムスター卵巣細胞株CHO DG44(Invitrogen)に発現プラスミドをトランスフェクトした。G418を用いて、安定な細胞株であるHA-Lgr4/DG、HA-Lgr5/DG、およびHA-Lgr6/DGを選択した。
(2)可溶性Lgr5-Fcタンパク質の調製
可溶性のLgr5(アミノ酸1〜555)タンパク質を、CHO DG44のマウスIgG2aのFc部分との融合タンパク質として発現させた。ヤギ抗マウスIgG2a(Bethyl labotratories)およびHRPラット抗マウスIgG2amAb(Serotec)を用いるサンドイッチELISAにより、トランスフェクタントをスクリーニングした。sLgr5-Fcを最も豊富に生じたクローンを2D3と命名した。2D3培養上清を回収し、Lgr5-Fcタンパク質をプロテインA-セファロースカラムによってアフィニティ精製した(Pharmacia)。Lgr5-Fcはタンパク質免疫化およびELISAスクリーニングのための抗原として働いた。
(3)Lgr5-Fcタンパク質免疫化による抗Lgr5モノクローナル抗体の生成(WO2009063970)
完全フロイントアジュバント中に乳化させた50μgのLgr5-Fcを用いて、Balb/cマウス(Charles River Japan)を皮下免疫した。2週間後、フロイント不完全アジュバント中の同量を用いて2週間にわたり週1回の注射を繰り返した。細胞融合の3日前、マウスに25μgのLgr5Fcを静脈注射した。免疫化マウスに由来する脾臓リンパ球を、従来法(Kremer L and Marquez G (2004) Methods Mol. Biol., 239, 243 - 260)により、P3-X63Ag8U1マウスミエローマ細胞(ATCC)と融合させた。ELISAを用いて、sLgr5-Fcとの反応性を有する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングした。Lgr5特異的マウスmAb 2T15E-2および2U2E-2を樹立した。
(4) 培養細胞および異種移植組織に関する免疫蛍光染色
免疫蛍光細胞化学のために、4%パラホルムアルデヒドおよびメタノールで固定した細胞を、マウス抗ヒトE-カドヘリン抗体(Abcam)、ウサギ抗ヒトSnail抗体(Abcam)、またはウサギ抗ヒトβ-カテニン抗体(Sigma)と共にインキュベーションし、その後、それぞれAlexaFluor 488で標識したヤギ抗マウスIgG抗体またはヤギ抗ウサギIgG抗体を用いて可視化した。免疫蛍光組織化学のために、上記異種移植腫瘍のパラフィンブロック由来の薄片をマウス抗ヒトLgr5抗体(2U2E-2)またはウサギ抗ヒトSnail抗体(Abcam)と共にインキュベーションした。一次抗体とインキュベーションした後、Lgr5タンパク質を、ポリマー-HRP(DAKO)と結合したヤギ抗マウス抗体によって検出し、AlexaFluor 488標識チラミド(tyramide)(Invitrogen)によって可視化した。ビオチン化ヤギ抗ウサギ抗体(VECTOR)によってSnailタンパク質を検出し、AlexaFluor 568標識ストレプトアビジン(Invitrogen)によって可視化した。これらの細胞および検体も、DAPI(Invitrogen)で染色した。
(5)フローサイトメトリー解析
CSCを標識抗体でインキュベーションし、EPICS ALTRA(Beckman Coulter)およびFACSCalibur(Becton Dickinson)を用いて解析した。使用した抗体は、PE標識マウス抗ヒトCD133抗体(Miltenyi Biotec)、PE標識マウス抗ヒトCD44抗体(BD Pharmingen)、FITC標識マウス抗ヒトCD326(EpCAM)抗体(Miltenyi Biotec)、PE標識マウス抗ヒトCD166抗体(R&D Systems)、PE標識マウス抗ヒトCD24抗体(BD Pharmingen)、PE標識マウス抗ヒトCD26抗体(BD Pharmingen)、およびPE標識マウス抗ヒトCD29抗体(BD Pharmingen)であった。
Lgr5を染色するために、CSCを、マウス抗ヒトLgr5抗体(2T15E-2)と、次にPR標識ラット抗マウスIgG抗体(Invitrogen)と、インキュベーションした。アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性は、AldeFluor Kit(Stemcell Technologies)を用いて測定した。抗マウスMHCクラスI抗体(Abcam)およびPEまたはAPC標識したヤギ抗ヒトIgG2a抗体(BioLegend)で染色することによって、マウス細胞とヒトCSCを区別した。死細胞も、7-AAD Viability Dye(Beckman Coulter)によって除去した。
これらの抗体はLgr5に高度に特異的であったが、Lgr5に対して両方とも高い相同性を有するLgr4およびLgr6に対しては交差反応しなかった(図18、19)。これらの抗体を用いることにより、本発明者らは、付着性の癌幹細胞にLgr5が発現することを立証した。
[参考実施例2] Lgr5陽性およびLgr5陰性の大腸CSCの腫瘍再構築能力
大腸癌の幹細胞群の特徴がWntシグナル伝達であるならば、インビボではLgr5陽性の付着細胞しか腫瘍を形成することができない。これが本当なのかどうか確かめるため、本発明者らは、Lgr5陽性の付着細胞およびLgr5陰性の浮遊細胞の腫瘍形成能を調べた。
結果、腫瘍形成活性は、Lgr5陰性の浮遊細胞よりもLgr5陽性の付着細胞において強力であったが、Lgr5陽性細胞およびLgr5陰性細胞のどちらもNOGマウスにおける腫瘍形成能を保持していた。Lgr5陽性細胞10個の皮下注射により全ての注射部位(6箇所のうち6箇所)で腫瘍が生じたが、Lgr5陰性細胞では注射部位6箇所のうち2箇所(PLR123由来細胞)または1箇所(PLR59由来細胞)で腫瘍が形成された(表6)。
Figure 0006230789
なお、Lgr5陽性細胞は、接種部位あたりたった1個の細胞を注射した場合でさえ、注射部位12箇所のうち2箇所(PLR123由来細胞)または1箇所(PLR59由来細胞)で腫瘍が再構築され(図20)、Lgr5陽性細胞およびLgr5陰性細胞に由来する腫瘍の組織病理学的形態は、元の腫瘍とほぼ同じであった(図21)。さらに細胞表面マーカーの発現およびLgr5陽性CSCの腫瘍形成活性は、1ヶ月の継代培養を経た後でさえ変化しなかった(図22、23)。
これらの結果により、PLR59およびPLR123に由来するLgr5陽性細胞およびLgr5陰性細胞は高純度の大腸CSCであること、および、Lgr5陽性およびLgr5陰性細胞は大腸癌における2種類の別個の状態のCSCを意味することが実証された。
[参考実施例3]TCFおよびβ-カテニンの効果
ウエスタンブロット解析は以下の方法によって実施された。Complete Miniプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)を添加したRIPAバッファー(Sigma)を用いて、タンパク質を抽出した。タンパク質をNuPAGEゲル(Invitrogen)で分画し、PVDF膜に転写した。1%スキムミルク含有PBSでブロッキングした後、膜を、ウサギ抗ヒトβカテニン抗体(Sigma)、ウサギ抗ヒトホスホc-JUN抗体 (Sigma)、ウサギ抗ヒトTCF1抗体 (Cell Signaling)、ウサギ抗ヒトTCF3抗体 (Cell Signaling)、ウサギ抗ヒトTCF4抗体 (Cell Signaling)、ウサギ抗ヒトLgr5抗体 (Abcam)、マウス抗ヒトEカドヘリン抗体 (Abcam)、ウサギ抗ヒトSnail 抗体(Abcam)、および、マウス抗ヒトGAPDH抗体 (Santa Cruz)でプローブした。BCIP/NBT基質(KPL)を用いて反応性のバンドを検出した。
Lgr5の発現と一致して、Lgr5陽性細胞ではβ-カテニン、TCF1、TCF3、およびTCF4タンパク質のレベルがアップレギュレーションされたが、Lgr5陰性細胞では認められなかった(図20および図24)。
一方、c-JunのN末端領域のリン酸化は、Lgr5陰性癌幹細胞と比べてLgr5陽性癌幹細胞では検出されなかった(図20および図24)。
Wntシグナル伝達が大腸癌幹細胞の増殖を駆動するかどうかとの疑問を解決するため、本発明者らは、β-カテニン/TCFインヒビターであるFH535、およびWnt/β-カテニンインヒビターであるカルダモニン(β-カテニンの分解を誘発する)が大腸癌幹細胞の増殖に与える効果を調べた。細胞増殖は以下の方法により評価された。浮遊癌幹細胞および付着癌幹細胞を、それぞれウェルあたり浮遊癌幹細胞約100個および付着細胞1×104個で、96ウェルプレートに播種した。0および3日目に、製造元のプロトコールに従って、Cell Counting Kit-8アッセイ(Doujindo)により生細胞数を測定した。0日目の平均吸光度を100%と表した。化学感受性分析のため、浮遊癌幹細胞および付着癌幹細胞を、それぞれウェルあたり浮遊癌幹細胞約100個および付着細胞1×104個で、96ウェルプレートに播種し、24時間インキュベーションした後、10μg/mLの5-FU (Hospira)、10μg/mLのイリノテカン(Hospira)、50 mMのTCFインヒビターFH535 (Merck)、および50 mMのβカテニンインヒビターであるカルダモニン(Merck)を添加した。薬物存在下で3日間培養した後、Cell Counting Kit-8を細胞に加えた。DMSOまたは培地のみに曝露した細胞の平均吸光度を100%と表した。実験はすべて3回ずつ行った。
結果、50μMのFH535はLgr5陽性の大腸癌幹細胞の増殖を有意に低下させたが、Lgr5陰性の大腸癌幹細胞の増殖には影響を与えなかった(図25および図26)。一方、50μMのカルダモニンはLgr5陽性の大腸癌幹細胞において生細胞数を70%まで減少させ、Lgr5陰性の大腸癌幹細胞において約50%まで減少させた(図25および図26)。
この結果は、TCFがLgr5陽性細胞の増殖を仲介すること、およびβ-カテニンが大腸癌幹細胞の生存に関与することを示唆するものである。興味深いことに、Lgr5陽性細胞はEGFおよびFGFの供給が無くても増殖し(図27および28)、このことは、大腸癌幹細胞が、その増殖に関してWntシグナル伝達を活性化するための内因的/自己分泌機序を包含していることを示すものである。
[参考実施例4]大腸癌幹細胞のLgr5陽性状態からLgr5陰性状態への交替能力
癌幹細胞の特徴の1つは、化学療法剤に対する抵抗性であるため、本発明者らは、5-FUおよびイリノテカンに対する大腸癌幹細胞の感受性を調べた。前述のように、Lgr5陽性細胞は倍加時間約2.5日で増殖したが、Lgr5陰性癌幹細胞は増殖という観点からは静止状態であった。5-FU(10micro g/ml)およびイリノテカン(10micro g/ml)で処理した場合、いずれの場合もLgr5陽性の大腸癌幹細胞の増殖は有意に阻害したが、Lgr5陰性の大腸癌幹細胞の増殖および生存には影響を与えなかった(図29および図30)。Lgr5陽性の大腸癌幹細胞を5-FU(10micro g/ml)またはイリノテカン(10micro g/ml)に3日間曝露した後、これらの化学療法剤に対して抵抗性を有する細胞が現れた。驚くべきことに、該薬物抵抗性細胞はLgr5陰性であり、かつその形態が変化しており(図31、図32、および図33)、これは、Lgr5陽性状態からLgr5陰性状態へ変化したことが示された。
本発明者らは、Lgr5陰性の大腸癌幹細胞がLgr5陽性状態に変化するのかどうか確認するため、イリノテカン処理により調製したLgr5陰性の大腸癌幹細胞を再度無血清の幹細胞培養液で付着培養したところ、Lgr5陽性となり、間葉細胞様形態を示すとともに(図34および図35)、細胞増殖を開始した。一方、Lgr5陽性の付着大腸癌幹細胞を超低接着プレートで培養したところ、本発明者らは細胞のいくつかが増殖を停止し、スフェロイド様構造を形成し、非常に低レベルのLgr5 mRNAを示したことを観察した(図34および図35)。
なお、Lgr5のmRNAは、下記の定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によって評価された。すなわち、RNeasy Mini Kit including DNAase treatment(Qiagen)を用いて単離された全RNAを鋳型としてcDNAが、First-Strand cDNA Synthesis Kit(SABiosciences)を用いて合成された。定量的リアルタイムPCR(QRT-PCR)解析は、Mx3005P Real-Time PCR System(Stratagene)において、SYBR Green/Rox qPCR(SABiosciences)を用いて実施した。誘導倍率の値は、2-ΔΔCt法を用いて算出した。GAPDHおよびACTBを参照として用いた。実験はすべて3回ずつ行った。
定量的リアルタイムPCR解析のためのプライマーとして以下のプライマーを、反応性の転写産物を増幅するために用いた。
Lgr5:
フォワードプライマー5'-AGTTTATCCTTCTGGTGGTAGTCC-3'(配列番号:1)、
リバースプライマー5'-CAAGATGTAGAGAAGGGGATTGA-3'(配列番号:2)、
GAPDH:
フォワードプライマー5'-CTCTGCTCCTCCTGTTCGAC-3'(配列番号:3)、
リバースプライマー5'-ACGACCAAATCCGTTGACTC-3'(配列番号:4)、
ACTB:
フォワードプライマー5'-AAGTCCCTTGCCATCCTAAAA-3'(配列番号:5)、
リバースプライマー5'-ATGCTATCACCTCCCCTGTG-3'(配列番号:6)
前記の結果より、本発明者らは、大腸癌幹細胞はLgr5陽性状態とLgr5陰性状態の間を交替し、そのような変化は外因的な要素およびニッチ環境を必要としないと結論づけた。
[参考実施例5] Lgr5陽性の大腸癌幹細胞のインビトロおよびインビボにおけるEMT
核β-カテニンを発現している間葉様細胞は、EMTを受ける、移動性癌幹細胞および転移形成癌幹細胞であると考えられる(Brabletz T, Jung A, Spaderna S, Hlubek F, Kirchner T (2005) Opinion: migrating cancer stem cells - an integrated concept of malignant tumour progression. Nat Rev Cancer 5:744-749.)。Lgr5陽性の大腸癌幹細胞の形態が間葉細胞に似ているため、本発明者らはLgr5陽性の大腸癌幹細胞は移動性癌幹細胞に相当するかどうか試験した。ウエスタンブロット分析によって、Lgr5陽性の大腸癌幹細胞における、低レベルの細胞表面E-カドヘリン、高レベルのSnail、および核局在β-カテニンの発現(これはEMTの特徴である)が明らかになった(図36、図37、および図38)。これに対して、Lgr5陰性の大腸癌幹細胞はいかなるEMTの兆候も示さず、すなわち、細胞表面E-カドヘリンが高発現し、Snailが低発現し、かつβ-カテニンの核局在は認められなかった。さらに、異種移植腫瘍組織で、出芽性領域でEMTを受けている細胞における、SnailとLgr5の同時発現が観察され(図39)、これは、Lgr5陽性の大腸癌幹細胞が移動性幹細胞に相当するとの見解を支持するものである。
さらに、本発明者らは、Lgr5陽性の大腸癌幹細胞は、肺、肝臓、リンパ節、および皮下を含む複数の組織において腫瘍を形成することを示した。興味深いことに、腫瘍細胞の静脈注射から少なくとも40日後までに、肝臓、リンパ節、および皮下においては上皮管構造をもつ腫瘍が再構成されたが、肺では再構成されなかった(図40、41)。
本発明によって、均質で、癌形成能がある細胞と無い細胞が実質的に混在しない、癌組織の階層構造を再現する癌幹細胞組成物及びその作製方法が提供された。このクローナル(均質)な細胞集団を用い、遺伝子発現解析やプロテオミクス解析を行うことで、癌幹細胞に特異的に発現する標的や、活性化されているシグナル伝達系の特定が可能となると期待される。さらに、均質な癌幹細胞の継続的な大量調整が可能となり、当該癌幹細胞を用いた医薬品候補物質のハイスループット(high throughput)解析により、癌患者で最も深刻な結果である癌の再発や転移に効果のある薬剤や診断マーカーを見出す確率が格段に向上することが期待される。

Claims (9)

  1. 免疫不全非ヒト動物に癌を移植し継代して癌幹細胞を含む細胞群を得る工程、および、前記癌幹細胞を含む細胞群を無血清の幹細胞培地で付着培養する工程を含む、癌形成能が無い細胞が実質的に除去された癌幹細胞集団を作製する方法であって、前記細胞集団は10 cell/spotでNOD/SCID/gammac nullマウスへ6 spot移植しExtreme Limiting Dilution Analysisにおいて解析した場合の癌形成を示す癌幹細胞の頻度が1である、実質的に均質な癌幹細胞集団であり、前記癌幹細胞を含む細胞群が、癌組織の階層構造を再現する細胞群である方法。
  2. 前記癌組織の階層構造を再現する細胞群が非ヒト動物で樹立した癌細胞株、スフェロイド、又は、癌幹細胞マーカーCD24、CD29、CD34、CD44、CD49f、CD56、CD90、CD117、CD133、CD135、CD166、CD184、CD271、CD326、Aldefluor、ABCG2、ABCG5、LGR5、及びMsi1から選択される少なくとも1つ以上のマーカーが陽性の細胞であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  3. 付着培養を行う前に癌幹細胞を含む細胞群を増殖させることを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
  4. スフェロイド培養により癌幹細胞を含む細胞群を増殖させることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  5. 非ヒト動物に移植し継代することにより細胞群を増殖させることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  6. 前記癌幹細胞が、ヒト腫瘍組織由来であることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記ヒト腫瘍組織が、上皮癌由来の腫瘍組織であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  8. 前記上皮癌が、膵臓癌、前立腺癌、乳癌、皮膚癌、消化管の癌、肺癌、肝細胞癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、卵管癌、膣癌、肝臓癌、胆管癌、膀胱癌、尿管の癌、甲状腺癌、副腎癌、腎臓癌、又は、腺組織の癌であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  9. 前記非ヒト動物が、ヌードマウス、SCIDマウス、NOD-SCIDマウス、NOGマウス、又はヌードラットのいずれかであることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の方法。
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