JP6230170B2 - 蓄電デバイスの安全性評価試験方法および安全性評価試験装置 - Google Patents
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Description
その一例として、通称「釘刺し試験」(非特許文献1)と呼ばれるものがあり、電池に鉄釘を打ち込み、貫通させて内部短絡を起こす試験である。
これは、試験に際して発熱や発煙、発火や破裂を引き起こすことがある。すなわち、現状の「釘刺し試験」は、種々の原因で電池の内部で短絡が発生した場合に、事故につながるような発熱や発煙、発火や破裂が生じないことを確認するための安全性の評価試験として位置付けられている。
そして、電池の正極と負極が、鉄釘により短絡されることで発生する熱エネルギーが、有機物で構成される電解液を燃焼に導くことになり、これが前記した発火や破裂を伴うものとなる。したがって、釘刺し試験には、この発火や破裂から受ける被害を防ぐために、特許文献1や非特許文献2に示されたような比較的大掛かりな設備を導入する必要が生ずるものとなる。
したがって、前記した事象を利用することで、電解液を用いることなく、正極および負極を構成する電極材料と、セパレータの組み合わせ、およびこれに印加される直流電源を用いた疑似蓄電デバイスを利用することで、この種の蓄電デバイスの安全性を定量的に確認することが可能になる。
すなわち、蓄電デバイスの組み立て前の材料段階の状態で、蓄電デバイスに内部短絡が生じた場合の挙動を観察し、安全性の評価を行うことが可能となる。
加えてこの発明は、基本的には単一のセルを構成する少量の電極材料とセパレータを利用すると共に、これに外部電源を活用することで、各セルを並列接続した大容量の蓄電デバイスを想定した蓄電デバイスの安全性評価試験方法および試験装置を提供することを課題とするものである。
また、好ましくは前記疑似蓄電デバイスが載置されるステージとして、パイプ状のステージもしくは平面状のステージが利用される。
そして、前記正極集電体と負極集電体との間に供給する電圧値もしくは電流値を変更して、前記検証を行うことが望ましい。
加えて、好ましい実施の形態においては、前記疑似蓄電デバイスを載置するステージを加熱または冷却することができるヒータもしくは冷却手段が、前記ステージ内に配置される。
さらに、前記試験釘における前記ステージ側へ向かう進行速度は制御可能に構成されることが望ましい。
これにより、前記した特許文献1および非特許文献2に開示されたような高耐圧および防爆構造のチャンバーを用意すること、またチャンバー内を不活性なガスで満たすなどの付帯設備は必ずしも必要ではなくなる。それ故、前記した従来の安全性評価試験に比較して、手軽にかつ短時間でこの種の蓄電デバイスの安全性評価試験を行うことが可能になる。
このリチウムイオン電池は、正極活物質として金属の酸化物のリチウム塩が用いられる。このリチウム塩には導電補助剤としての炭素および結着剤が加えられ、正極集電体として機能する例えばアルミニウム箔の両面にコーティングされる。これにより得られる正電極材料は、シート状に形成される。
具体的には、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を含み、導電材として炭素質材料を含み、結着剤として熱可塑性樹脂などを含むものを用いることができる。
また、α−NaFeO2 型構造を有するリチウム複合酸化物やリチウムマンガンスピネルやオリビン酸鉄リチウムなどのスピネル型構造を有するリチウム複合酸化物が挙げられる。リチウム複合酸化物は、種々の金属元素を含んでもよく、特にTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Mg、Al、Ga、In、Zr、Sr及びSnからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素を含むことも可能である。
炭素質材料として、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料を主成分とすると良く、一方でリチウムチタンオキサイドなどの金属酸化物のリチウム塩を用いることもできる。また、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料、リチウム金属又はリチウム合金などを用いることができる。
その材質としてはアラミド、ガラス、セルロース、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリオレフィン、レーヨン、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、合成ゴム、共重合ポリアミド、共重合ポリエステルなどが使用される。
固体電解質としては、ポリビニリデンフロライド、ビニリデンフロライドの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフロロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂及びカルボキシメチルセルロースなどポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンと六フッ化プロピレン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチル等をポリマーマトリックスとし、電解質塩としては、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(Cl F2l+1SO2)(CmF2m+1SO2)(l、mは1以上の整数)、あるいはジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムなどのうち1種を用いても良く、あるいは2種以上を組み合わせた複合体又はゲル架橋体が挙げられる。
これにより、燃焼により危険を伴う有機電解液を使わずに、蓄電デバイスの安全性を評価できるものとなる。
図1に示す構成は、疑似蓄電デバイスが載置されるステージとして、パイプ状のステージを利用した例を示しており、このパイプ状ステージ1は、軸芯が水平となるように後述する垂直のプレート面に取り付けられている。なお、このパイプ状のステージ1は好ましくはステンレス鋼により構成され、後述するようにその軸芯部分には、ステージ1を加熱することができるヒータが埋設されている。
なお、この実施の形態においては、ステージ1を加熱するヒータが用いられているが、これは加熱および冷却が共にできるように構成することが望ましい。
そして、図1に示す例においては、前記パイプ状ステージ1には、前記したシート状の負電極材料S1、シート状のセパレータ材料S2、シート状の正電極材料S3が順に重ねられ、パイプ状ステージ1に疑似蓄電デバイスS0が載置された状態になされる。
図1に示す例では、前記した負電極材料S1の各端部を把持する第1チャック機構C1が、前記したパイプ状ステージ1の直下に配置されている。これは1つの固定パイプ3と、この固定パイプ3の左右両側に配置された可動パイプ4L,4Rにより構成されている。
なお、前記電源供給装置からの直流出力は、第1チャック機構C1の若干下方に配置された出力端子9,10よりもたらされる。
この状態において、前記した試験釘2が降下して、パイプ状ステージ1に載置された疑似蓄電デバイスS0を、その先端部で貫通する。
一方、前記試験釘2を介した短絡による発熱で、電極材料が連続燃焼に至る場合には、この場合の各電極材料S1,S3とセパレータ材料S2の組み合わせは、設定された電流値もしくは電圧値の範囲において、これに電解液が加わることにより事故につながるような発火や破裂が生ずる度合いが大きいことを検証することができる。
試験釘の直径は、内部短絡を起こす異物の大きさを想定するものであり、試験釘を交換して評価を行うことで、異物の大きさの依存性について検証できるものとなる。
そして、釘刺し速度についても依存性があり、評価試験の再現性を確かめることができる点で必要となる。
なお図2〜図7においては、図1に基づいて説明した各部と同一の機能を果たす部分を同一の符号で示しており、したがってその詳細な説明は適宜省略する。
図2および図3に示すように、この評価試験装置の外郭を構成する筐体21は、全体が縦長のほぼ直方体状に形成されており、その正面上部の大半を占める位置に、図1に示した主要な各部が配置されている。
これらが取り付けられた前記プレート22Aは、押さえ金具23によって筐体21に着脱可能に取り付けられており、後述する図6および図7に示す平面状ステージ47を搭載したプレート22Bと交換可能となるように構成されている。
そして、図1に基づいて説明したとおり、正極および負極端子9,10にはリード線が接続され、パイプ状ステージ1に載置された疑似蓄電デバイスS0の正極集電体および負極集電体に対して、設定された直流電圧もしくは直流電流が供給される。
前記ヒータ27は、図2に示す装置正面の左上に配置されたヒータスイッチ28によりオン・オフ制御され、さらにヒータスイッチ28の左側に配置された温度調節部29の操作によって、パイプ状ステージ1の加熱温度が調節される。
なお、前記した各チャック機構には、固定パイプと可動パイプとの間で、電極材料等を挟んだ状態で、さらに電極材料等にテンションを加えることができるテンションコントロール機能を備えることが望ましい。
この構成によると、負電極材料S1、セパレータS2および正電極材料S3が重ねられたステージ上の状況が、実際の電池の状況に近い形として再現および検証することができる。
また、前記ホルダー35を利用して先端形状の異なる試験釘2を、選択的に装着することもできる。その先端形状は、例えば先が尖ったもの、または先が丸くなったもの、さらには例えば紙に孔を穿けるパンチ形状のものなど、実際に市場で遭遇する短絡事故に対応した種々の形状のものを用いることができる。
したがって、前記アクチュエータ37の駆動制御により、前記試験釘2をパイプ状ステージ1に載置された疑似蓄電デバイスS0に対して進行(降下)させると共に、後退(上昇)させることができる。
したがって、例えば正電極材料、セパレータ、負電極材料の繰り返しが多層になされた疑似蓄電デバイスについての評価を行う場合においても、疑似蓄電デバイスの全層にわたって試験釘2によって確実に孔を穿けることができる。これにより多層の疑似蓄電デバイスに対しても、精度の高い短絡試験を実現させることが可能となる。
なお、前記したホルダー35に着脱可能に取り付けられる試験釘2の先端部付近には、温度検出素子を配置して、釘刺しによる短絡で生ずる温度を直接計測できるように構成することが望ましい。
また図3に示したように、この評価試験装置の側面の一部には、AC電源を受け入れるコンセント44が配置されており、このコンセント44の上部にはヒューズボックス45が配置されている。
この平面状ステージ47を搭載したプレート22Bは、前記したとおりパイプ状ステージ1等を搭載したプレート22Aと交換することができるように構成されている。
すなわち、プレート22Bにおける左右底部の隅角部には、矩形状の切欠き部22aが形成されており、この切欠き部22aに、すでに説明した電源供給装置25からの出力端子9,10が位置するようにして、押さえ金具23によって取り付けられる。
なお、前記台座48には位置合わせピン51が立設されており、このピン51を利用して台座48に対して蓋体49が取り付けられる。
この状態で、図6に示すように試験釘2が台座48に向かって進行することで、すでに説明した釘刺し試験が実行される。
これは、試験釘2の正極もしくは負極側からの刺し込み方向についても、依存性があることが確認されており、評価試験の再現性を確かめることができる点で必要となる。
この場合、充電状態の電池から取り出した正負の電極材料は、洗浄により電解液を除去し、乾燥させたものを評価試料として利用することになる。
これによると、充電状態の電池を想定したより現実に近い状態における精密な評価として位置付けることができる。
2 試験釘
3 固定パイプ
4L,4R 可動パイプ
5L,5R 固定パイプ
6L,6R 可動パイプ
7L,7R 固定パイプ
8L,8R 可動パイプ
9,10 出力端子
11,12 リード線
13,14 鰐口クリップ
21 筐体
22A,22B プレート
22a 切欠き部
23 押さえ金具
25 電源供給装置
27 ヒータ
27a リード線
28 ヒータスイッチ
29 温度調節部
31 支持金具
32 支軸
34 ロードセル
35 ホルダー
36 支持部材
37 アクチュエータ
37a 駆動スライダー
41 タッチパネル
42 主電源スイッチ
43 非常停止スイッチ
44 AC電源コンセント
45 ヒューズボックス
47 平面状ステージ
48 台座
49 蓋体
50 取り付け金具
51 位置合わせピン
52 ダストボックス
C1 第1チャック機構
C2L,C2R 第2チャック機構
C3L,C3R 第3チャック機構
S0 疑似蓄電デバイス
S1 負電極材料
S2 セパレータ材料
S3 正電極材料
Claims (14)
- 電解液を使うことなく、電極材料とセパレータの組み合わせによる疑似蓄電デバイスを利用し、前記電極材料とセパレータを用いた場合の蓄電デバイスの安全性を定量的に確認する蓄電デバイスの安全性評価試験方法であって、
正極集電体と正極活物質層を含むシート状の正電極材料と、負極集電体と負極活物質層を含むシート状の負電極材料との間に、シート状のセパレータ材料またはシート状の固体電解質が介在されて、ステージ上で重ね合わされることで疑似蓄電デバイスを形成する工程と、
前記疑似蓄電デバイスの正極集電体および負極集電体との間に、定められた電圧もしくは電流を供給する工程と、
前記ステージに向かって試験釘を進行させて、当該試験釘によって前記疑似蓄電デバイスを貫通することで、前記正極集電体と負極集電体とを短絡させる工程と、
が実行され、前記正極集電体と負極集電体の短絡により、前記疑似蓄電デバイスの電極材料が燃焼状態に移行するか否かを検証することを特徴とする蓄電デバイスの安全性評価試験方法。 - 前記正電極材料および負電極材料として、充電した電池より取り出して電解液を除去したものを用いることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験方法。
- 前記疑似蓄電デバイスが載置されるステージとして、パイプ状のステージもしくは平面状のステージを利用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験方法。
- 前記正極集電体と負極集電体との間に供給する電圧値もしくは電流値を変更して、前記検証を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験方法。
- 前記ステージを加熱または冷却した状態で、前記検証を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験方法。
- 前記試験釘として、直径の異なる複数の試験釘もしくは先端形状が異なる複数の試験釘を利用して、前記検証を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験方法。
- 前記試験釘におけるステージ側への進行速度を異ならせて、前記検証を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験方法。
- 電解液を使うことなく、電極材料とセパレータの組み合わせによる疑似蓄電デバイスを利用し、前記電極材料とセパレータを用いた場合の蓄電デバイスの安全性を定量的に確認する蓄電デバイスの安全性評価試験装置であって、
正極集電体と正極活物質層を含むシート状の正電極材料と、負極集電体と負極活物質層を含むシート状の負電極材料との間に、シート状のセパレータ材料またはシート状の固体電解質が介在されて重ね合わせることで構成された疑似蓄電デバイスを載置するステージと、
前記疑似蓄電デバイスの正極集電体および負極集電体との間に定められた電圧もしくは電流を供給する電源供給装置と、
前記ステージ側に向かって進行し、前記疑似蓄電デバイスを貫通することにより、前記正極集電体と負極集電体とを短絡させることができる試験釘と、
を備えたことを特徴とする蓄電デバイスの安全性評価試験装置。 - 前記疑似蓄電デバイスが載置されるステージとして、パイプ状のステージもしくは平面状のステージが、交換可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験装置。
- 前記パイプ状のステージが取り付けられたプレートには、前記正電極材料、前記セパレータ材料、前記負電極材料の両端部をそれぞれ把持するチャック機構が備えられていることを特徴とする請求項9に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験装置。
- 前記電源供給装置は、前記正極集電体と負極集電体との間に供給する電圧値もしくは電流値が変更可能となるように構成されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験装置。
- 前記疑似蓄電デバイスを載置するステージを加熱または冷却することができるヒータもしくは冷却手段が、前記ステージ内に配置されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験装置。
- 前記試験釘は、前記ステージ側に向かって進行および後退するホルダーに着脱可能に取り付けられ、前記ホルダーには直径の異なる試験釘もしくは先端形状の異なる試験釘がそれぞれ取り付け可能に構成されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験装置。
- 前記試験釘における前記ステージ側へ向かう進行速度が制御可能に構成されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の蓄電デバイスの安全性評価試験装置。
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