JP5223329B2 - 電気化学素子の評価方法及び電気化学素子の評価装置 - Google Patents

電気化学素子の評価方法及び電気化学素子の評価装置 Download PDF

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Description

本発明は、電気化学素子の評価方法及び電気化学素子の評価装置に関する。
近年、電気化学素子の一種であるリチウム二次電池の製造時に、電池内部に混入した金属粉が電極間の短絡を引き起こし、この短絡によって電池が発熱し、発火する事故が多発している。
このような事故の防止策として、下記特許文献1には、電極表面に多孔質材からなる絶縁層をコートすることが開示されている。電極表面に絶縁層をコートするにより、短絡の発生を抑制し、また短絡時の発熱量を減少させることが可能となった。
また、下記特許文献2〜5には、上述の絶縁層の形状、材質、厚み、又は製法と、短絡時の電池の発熱量との関係を検証するために、充電後の電池の側面に釘を刺し、発熱した電池の温度を測定する釘刺し試験が示されている。
特開平7−220759号公報 特開2005−174792号公報 特開2005−285605号公報 特開2006−164596号公報 特開2007−27100号公報
しかし、上記特許文献2〜5に示された釘刺し試験によって再現される短絡及び電池の発熱と、電池内部への金属粉の混入によって発生する実際の短絡及び発熱とは、発生のメカニズムが異なる現象である。実際の電池では、電池の製造時に電池内部に混入した金属粉が、電池の充放電によって、電極上への析出と溶解とを繰り返す。析出した金属粉は徐々に成長して絶縁層を突き破り、正極と負極の間で短絡を起こすと考えられる。また、外部からの衝撃や、電池の充放電に伴う電極の膨張収縮によって、金属粉が絶縁層やセパレータを突き破って短絡を起こすことも考えられる。これらの複雑な現象は、単純な釘刺し試験ではシミュレーションすることが不可能であった。
社団法人電子情報技術産業協会(以下、「JEITA」と記す。)は、経産省のワーキンググループの報告を受け、金属粉による短絡をシミュレーションするための指針を示し、上述の釘刺し試験に代わる評価方法を提案した。JEITAの評価方法では、組み上げた電池を一度分解した後、電池の電極部に金属粉を混入し、これを再び電池缶に収納した後に、電池に圧力をかけて、短絡の有無を調べる。この評価方法では、電池内への金属粉の混入による短絡を擬似的に再現することが可能である。
しかし、JEITAの評価方法では、電池を分解した後に、電極部を電池缶に再び収納する際に、金属粉の混入とは別の短絡の原因が生じる可能性があった。また、JEITAの評価方法では、金属粉が短絡に及ぼす影響の評価結果について再現性が得られない可能性もあった。
また、従来の釘刺し試験やJEITAの評価方法では、短絡を防止するための絶縁層の耐久性を定量的に評価することが困難であった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、金属粉による短絡を擬似的に再現することができ、電機化学素子用電極に積層された絶縁層の耐久性を定量的に評価することができる電気化学素子の評価方法、及び電気化学素子の評価装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る電気化学素子の評価方法は、導電性部材からなる先端部を備える針に荷重を印加し、先端部を、電気化学素子用電極に積層された絶縁層の表面から絶縁層の内部へ挿入し、電気化学素子用電極まで到達させる針挿入工程を備え、針挿入工程において、荷重と、先端部と電気化学素子用電極との間の電気抵抗と、を経時的に測定することを特徴とする。
針の先端部を絶縁層の内部へ挿入し、電気化学素子用電極まで到達させた時点、すなわち先端部が絶縁層を突き破った時点で、先端部と電気化学素子用電極とが絶縁層を介することなく直接導通するため、先端部と電気化学素子用電極との間の電気抵抗が非連続的(急激)に低下する。本発明では、針に印加した荷重と、先端部と電気化学素子用電極との間の電気抵抗とを、経時的に測定することによって、先端部と電気化学素子用電極との間の電気抵抗が非連続的(急激)に低下する時点での荷重を検出することができる。換言すれば、先端部が絶縁層を突き破って電気化学素子用電極と短絡する時点において、針の先端部を介して絶縁層に作用する荷重(絶縁層の破壊荷重)を直接測定することができる。このように、本発明では、絶縁層の耐久性を定量的に評価することができる。
また上記本発明では、針の先端部を、電池内部に混入した金属粉、又電池内部で粒成長した金属粉と見なせば、先端部が絶縁層を突き抜けて電気化学素子用電極まで到達した状態を、金属粉が絶縁層を突き抜けたことにより発生した短絡と見なすことができる。したがって、上記本発明では、電池内部への金属粉の混入によって発生する短絡を擬似的に再現することができる。
また上記本発明では、JEITAの評価方法のように、電池を分解して電池缶から電極部を取り出した後に、電極部を電池缶に再び収納するような煩雑な作業を要しないため、評価中において、針の先端部によって絶縁層が突き破られること以外に、短絡の原因が生じる可能性が小さい。したがって、上記本発明では、従来の評価方法に比べて、破壊荷重の測定結果の再現性及び信頼性が向上する。
本発明に係る電気化学素子の評価方法では、電気化学素子用電極が、活物質含有層と、活物質含有層に積層された集電体と、を備え、絶縁層が、集電体が積層された側とは反対側において活物質含有層に積層されていることが好ましい。
これにより、電気化学素子用電極及び絶縁層の積層構造を、電池内に実装された電極及び絶縁層と同様の構造とすることによって、電池内に実装された状態にある絶縁層の破壊荷重を擬似的に評価することができる。
本発明に係る電気化学素子の評価方法では、絶縁層が、電化学素子用電極を保護する保護層であってもよく、セパレータであってよい。または、絶縁層が、保護層と、保護層に積層されたセパレータとを共に備えていてもよい。
これにより、保護層又はセパレータそれぞれの破壊荷重を直接測定することができる。
本発明に係る電気化学素子の評価装置は、先端部が電気化学素子用電極に積層された絶縁層の表面に対向するように配置され、先端部が導電性部材からなる針と、針に荷重を印加し、先端部を絶縁層の表面から絶縁層の内部へ挿入させ、電気化学素子用電極まで到達させる荷重印加手段と、荷重を経時的に測定する荷重測定手段と、先端部と電気化学素子用電極との間の電気抵抗を経時的に測定する抵抗測定手段と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る電気化学素子の評価装置を用いることにより、上記本発明に係る電気化学素子の評価方法を容易に実施することができる。
本発明に係る電気化学素子の評価装置では、荷重測定手段が、針に印加される荷重のうち、絶縁層の表面に対して略垂直又は略平行な方向における荷重を測定することが好ましい。これにより、絶縁層の表面に対して略垂直又は略平行な方向における絶縁層の破壊荷重を測定することができる。なお、荷重測定手段が、針に印加される荷重のうち、絶縁層の表面に対して斜め方向における荷重を測定する機能を有していてもよい。
本発明に係る電気化学素子の評価装置では、先端部の曲率Rが1μm〜5mmであることが好ましい。
先端部の曲率Rを上記の好適範囲内で適宜設定することによって、短絡の原因となる金属粉の粒径を擬似的に再現することができる。したがって、本発明では、金属粉の粒径と絶縁層の破壊荷重との関係を評価することができる。例えば、実際の金属粉の粒径がμmスケールである場合、先端部の曲率Rをμmスケールとすることによって、絶縁層の耐久性をより正確に評価することができる。
本発明に係る電気化学素子の評価方法及び評価装置では、針の表面のうち先端部以外の部分が絶縁体である。また、本発明に係る電気化学素子の評価方法及び評価装置では、先端部の長手方向の長さが1〜20μmである。
このように針の表面のうち先端部のみを局所的に導電部材から構成したり、先端部の長手方向の長さを上記の範囲内に限定したりすることによって、例えば、絶縁層と電気化学素子用電極とが交互に複数積層された構造を有する多層型電極の評価を行う場合に、先端部を単一の絶縁層のみ又は単一の電気化学素子用電極のみと電気的に接続させることができる。そのため、積層された複数の絶縁層各々の破壊荷重を個別に測定することができる。換言すれば、積層された複数の電気化学素子用電極のうちいずれか一つと先端部とを個別に短絡させることができるため、深さ位置(電極の積層方向における位置)ごとの短絡の状況を知ることができる。
本発明によれば、金属粉による短絡を擬似的に再現することができ、電機化学素子用電極に積層された絶縁層の耐久性を定量的に評価することができる電気化学素子の評価方法、及び電気化学素子の評価装置を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態であるリチウムイオン二次電池の評価装置、及びこの評価装置を用いたリチウムイオン二次電池の評価方法について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率及び位置関係は図示されたものに限定されない。
(リチウムイオン二次電池用電極)
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の評価装置は、電気化学素子用電極の一種であるリチウムイオン二次電池用電極(以下、電極10と記す。)を測定対象物とする。
図1に示すように、電極10は、活物質含有層14と、活物質含有層14に積層された集電体16と、を備え、電極10の活物質含有層14側には絶縁層12が積層されている。これにより、電池に実装されている電極と同様の構造を有する電極10を評価することができる。なお、電極10は、アノード電極であってもよく、カソード電極であってもよい。
電極10がアノード電極である場合、活物質含有層14は、負極活物質(アノード活物質)、導電助剤、結着剤等を含む層である。アノード活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知のアノード活物質を使用できる。このような活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn、Si等のリチウムと化合することのできる金属、SiO、SiO、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)、TiOが挙げられる。中でも、炭素材料が好ましく、層間距離d002が0.335〜0.338nmであり、且つ、結晶子の大きさLc002が30〜120nmである炭素材料がより好ましい。このような条件を満たす炭素材料としては、人造黒鉛、MCF(メソカーボンファイバ)、MCMB(メソカーボンマイクロビーズ)等が挙げられる。なお、上記層間距離d002及び結晶子の大きさLc002は、X線回折法により求めることができる。
電極10がカソード電極である場合、活物質含有層14は、正極活物質(カソード活物質)、導電助剤、結着剤等を含む層である。カソード活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMn(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn又はFe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素またはVOを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)等の複合金属酸化物が挙げられる。
集電体16としては、公知の電気化学デバイスに用いられている集電体を用いることができ、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属箔等が挙げられる。
絶縁層12は、電極10を保護する保護層であってもよく、セパレータであってよい。これにより、電極10に積層された状態にある保護層又はセパレータそれぞれの破壊荷重を直接測定することができる。または、絶縁層12が、保護層と、保護層に積層されたセパレータの2層から構成されていてもよい。
なお、保護層は、樹脂バインダーと、セラミックス材料とを含む層である。セラミックス材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、マグネシア、ムライト等の酸化物系セラミックス、窒化珪素、窒化チタン等の窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等のセラミックス、又はこれらの複合化合物を用いることができる。これらの材料は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
また、セパレータは、カソード電極とカソード電極との間に配置される層であり、電気絶縁性の多孔体から形成される。電気絶縁性の多孔体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの単層体又は積層体、樹脂の混合物の延伸膜、又はセルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なとも1種の構成材料からなる繊維不織布等が挙げられる。
なお、活物質含有層14の厚さは、20〜200μm程度である。集電体16の厚さは、6〜25μm程度である。絶縁層12の厚さは、0.05〜10μm程度である。
(リチウムイオン二次電池の評価装置及び評価方法)
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の評価装置2は、図1に示すように、針4と、荷重印加手段である上下方向移動部材7及び水平方向移動部材9と、荷重測定手段であるロードセル6と、抵抗測定手段である抵抗測定器8と、を備える。測定対象物である電極10は台3上に載置されている。なお、台3上の電極10は、固定手段(図示省略)によって固定されていてもよい。また、電極10が載置される台3の表面は、平面であってもよく、曲面であってもよい。
上下方向移動部材7は、台3に固定された支柱5に接続されており、上下方向(支柱5の長手方向)に自在に移動する機能を有する。上下方向移動部材7に接続された水平方向移動部材9は、水平方向(上下方向移動部材7の長手方向)に自在に移動する機能を有する。ロードセル6は水平方向移動部材9に固定されている。
針4は、先端部4aが絶縁層12の表面に対向するように、ロードセル6に固定されている。針4の先端部4aは、金属等の導電性部材から構成されている。針4は、上下方向移動部材7によって上下方向に移動させることができると共に、水平方向移動部材9によって水平方向に移動させることができる。なお、針4の長手方向に垂直な断面の直径は、10〜5000μm程度である。
荷重印加手段である上下方向移動部材7は、絶縁層12の表面に対して垂直な荷重を針4に印加し、先端部4aを絶縁層12の表面から絶縁層12の内部へ挿入させ、電極10まで到達させる機能を有する。ロードセル6は、上下方向移動部材7が針4に印加する荷重を経時的に測定する機能を有する。このような評価装置10を用いれば、いわゆる突き刺し試験を行うことができる。また、水平方向移動部材9は、電極10に積層された絶縁層12の表面に対して平行な荷重を針4に印加し、ロードセル6は、水平方向移動部材9が針4に印加する荷重を経時的に測定する機能も有する。このような評価装置10を用いれば、いわゆる引っ掻き試験を行うこともできる。
抵抗測定器8は、先端部4aと電気的に接続されていると共に、活物質含有層14又は集電体16のいずれかにおいて電極10と電気的に接続されており、先端部4aと電極10との間の電気抵抗を経時的に測定する機能を有する。なお、本実施形態では、抵抗測定器8は集電体16と電気的に接続するものとする。
上述の評価装置2を用いることにより、以下に示す本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法を容易に実施することができる。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の評価方法では、まず、上下方向移動部材7及び水平方向移動部材9を稼動させることによって、針4の先端部4aを絶縁層12の表面に接触させて保持する。次に、針挿入工程において、荷重印加手段である上下方向移動部材7によって針4に荷重を印加し続けることよって、図2に示すように、針4の先端部4aを絶縁層12の表面から絶縁層12の内部へ挿入し、更に、図3に示すように、先端部4aを活物質含有層14まで到達させる。この針挿入工程では、上下方向移動部材7によって針4に荷重を印加し続けながら、ロードセル6によって荷重を経時的に測定すると共に、先端部4aと電極10との間の電気抵抗も経時的に測定する。
図3に示すように、先端部4aを活物質含有層14まで到達させた時点、すなわち先端部4aが絶縁層16を突き破った時点で、先端部4aと活物質含有層14とが絶縁層16を介することなく直接導通するため、先端部4aと電極10との間の電気抵抗が非連続的に低下する。針挿入工程では、上述のように、上下方向移動部材7が針4に印加した荷重と、先端部4aと電極10との間の電気抵抗とを、経時的に測定しているため、先端部4aと電極10との間の電気抵抗が非連続的に低下する時点での荷重を検出することができる。換言すれば、先端部4aが絶縁層12を突き破って電極10と短絡する時点において、上下方向移動部材7が針4を介して絶縁層12に及ぼす荷重(絶縁層12の破壊荷重)を直接測定することができる。このように、本実施形態では、電池の安全性の判定材料となる絶縁層12の耐久性を定量的に評価することができる。
また本実施形態では、針4の先端部4aを、電池内部に混入した金属粉、又電池内部で粒成長した金属粉と見なせば、先端部4aが絶縁層12を突き抜けて活物質含有層14まで到達した状態を、金属粉が絶縁層12を突き抜けたことにより発生した短絡と見なすことができる。したがって、本実施形態では、電池内部への金属粉の混入によって発生する短絡を擬似的に再現することができる。
また本実施形態では、JEITAの評価方法のように、電池を分解して電池缶から電極部を取り出した後に、電極部を電池缶に再び収納するような煩雑な作業を要しないため、評価中において、針4の先端部4aによって絶縁層12が突き破られること以外に、短絡の原因が生じる可能性が小さい。したがって、本実施形態では、従来の評価方法に比べて、絶縁層12の破壊荷重の測定結果において再現性及び信頼性が向上する。
また本実施形態では、材質又は厚さの異なる絶縁層12が積層された電極10をそれぞれ評価することによって、絶縁層12の材質又は厚さと、絶縁層12の破壊荷重との関係を評価することができる。
評価装置2では、ロードセル6が、針4に印加される荷重のうち、絶縁層12の表面に対して略垂直又は略平行な方向における荷重を測定することが好ましい。これにより、絶縁層12の表面に対して略垂直な荷重が作用する場合の絶縁層12の破壊荷重を測定できるのみならず、絶縁層12の表面に対して略平行な荷重が作用する場合の絶縁層12の破壊荷重を測定することもできる。
先端部4aの曲率Rは1μm〜5mmであることが好ましい。先端部4aの曲率Rを1μm〜5mm内で適宜設定することによって、短絡の原因となる金属粉の粒径を擬似的に再現することができる。したがって、金属粉の粒径と絶縁層12の破壊荷重との関係を評価することができる。例えば、実際の金属粉の粒径がμmスケールである場合、先端部の曲率Rをμmスケールとすることによって、絶縁層12の耐久性をより正確に評価することができる。また、先端部4aの曲率Rを1μm〜5mm内で適宜設定することによって、先端部4aと絶縁層12との接触面積、及び先端部4aが絶縁層12に及ぼす圧力を所定の範囲内で調整することが可能であるため、電池内の金属粉が混入した場合に絶縁層12が許容しうる圧力の範囲を評価することもできる。
図2、3に示すように、針4の表面のうち先端部4a以外の部分は絶縁体である。また、先端部4aの長手方向の長さLは1〜20μmである(図1参照)。
このように針4の表面のうち先端部4aのみを導電部材から構成したり、又は先端部4aの長手方向の長さLを上記の範囲内に限定したりすることによって、例えば、絶縁層12と電極10とがそれぞれ交互に複数積層された構造を有する多層型電極の評価を行う際に、先端部4aを単一の絶縁層12のみ又は単一の電極10のみと電気的に接続させることができる。そのため、積層された複数の絶縁層12の破壊荷重を個別に測定することができる。換言すれば、積層された複数の電極10のうちいずれが一つと先端部4aとを個別に短絡させることができるため、深さ位置(積層方向における位置)ごとの短絡の状況を知ることができる。
針挿入工程において、針4の先端部4aを絶縁層12の表面から絶縁層12の内部へ挿入し、活物質含有層14まで到達させる際の先端部4aの速度は、0.1〜1mm/min程度であることが好ましい。先端部4aの速度を大きくすることによって、電池に対して外部から衝撃を加えることにより発生する短絡を擬似的に再現することができる。また、先端部4aの速度を小さくすることによって、電池内で徐々に粒成長した金属粉によって引き起こされる短絡を再現することができる。
以上、本発明の電気化学デバイスの好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の説明においては、主として、評価対象がリチウムイオン二次電池の場合について説明したが、評価対象はリチウムイオン二次電池に限定されるものではなく、金属リチウム二次電池等のリチウムイオン二次電池以外の二次電池や、リチウムキャパシタ等の電気化学キャパシタ等であってもよい。また、評価装置10は、荷重印加手段として、上下方向移動部材7又は水平方向移動部材9のいずれかを単独で備えていてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図1に示すリチウムイオン二次電池の評価装置2を用いて、以下に示すように、試料1〜10について、突き刺し強度(単位:gf(=9.80665 ×10−3kg・m/s))の測定を行った。なお、評価装置2が備える針4の長手方向に垂直な断面の直径は、500μmとした。また、先端部4aの長手方向の長さLを10μmとし、先端部4aの曲率Rを10μmとした。以下では、試料1を例として、突き刺し強度の測定について説明する。
(試料1)
試料1のリチウムイオン二次電池用電極としては、図1〜3に示すように、活物質含有層14と、活物質含有層14に積層された集電体16との2層を備える電極10を用いた。電極10の活物質含有層14側には、絶縁層12を積層した。なお、活物質含有層14は、負極用活物質であるカーボンから構成し、集電体16には銅箔を用い、絶縁層12は、アルミナと樹脂バインダーとから構成した。また、活物質含有層14の厚さは、80μmとし、集電体16の厚さは、15μmとし、絶縁層12の厚さは、7μmとした。
試料1の評価では、まず、電極10を、評価装置2が備える固定手段(図示省略)によって、台3の平面上に固定した後、針4の先端部4aを絶縁層12の表面に接触させて保持した。次に、針挿入工程では、絶縁層12の表面に垂直な方向の荷重を、荷重印加手段である上下方向移動部材7によって針4に印加し続けることよって、針4の先端部4aを絶縁層12の表面から絶縁層12の内部へ垂直に挿入し、先端部4aを活物質含有層14まで到達させた。また針挿入工程では、上下方向移動部材7によって針4に荷重を印加し続けながら、針4に印加した荷重をロードセル6で経時的に測定すると共に、先端部4aと電極10との間の電気抵抗も経時的に測定した。荷重及び電気抵抗の経時的な測定結果から、先端部4aと電極10との間の電気抵抗が1kΩ以下に低下した時点での荷重を検出した。すなわち、先端部4aが絶縁層12を突き破って電極10と短絡する時点において絶縁層12に作用する荷重(突き刺し強度)を検出した。結果を表1に示す。
なお、針挿入工程において、針4の先端部4aを絶縁層12の表面から絶縁層12の内部へ挿入し、活物質含有層14まで到達させる際の先端部4aの速度は、0.5mm/minとした。また、ロードセル6としては、最大測定値が5Nのものを使用した。
(試料2〜10)
試料2〜10の評価は、絶縁層12の厚さを表1に示す値としたこと以外は試料1と同様とした。結果を表1に示す。また、図4に、試料1〜10の絶縁層の厚さと突き刺し強度とをプロットした。また、図5に、試料1に対する針挿入工程の各時点(単位:秒)で測定した先端部4aと電極10との間の電気抵抗(kΩ)をプロットしたグラフを示す。
Figure 0005223329

表1及び図4に示す測定結果から、絶縁層の厚みと突き刺し強度に比例関係があることが確認された。また、図5に示すように、針挿入工程では、先端部4aと電極10との間の電気抵抗が急激に低下したことが確認された。
本発明に係る電気化学素子の評価装置の好適な一実施形態を示す模式斜視図である。 本発明に係る電気化学素子の評価方法の好適な一実施形態を示す模式図であり、電極と、電極に積層された絶縁層と、絶縁層の内部に挿入された針とを、針の長手方向に対して平行に切断した場合の模式断面図である。 本発明に係る電気化学素子の評価方法の好適な一実施形態を示す模式図であり、電極と、電極に積層された絶縁層と、先端部が電極に接触した針とを、針の長手方向対して平行に切断した場合の模式断面図である。 試料1〜10の絶縁層の厚さと突き刺し強度とを示すグラフである。 試料1に対する針挿入工程の各時点で測定した先端部4aと電極10との間の電気抵抗をプロットしたグラフである。
符号の説明
2・・・電気化学素子の評価装置、4・・・針、4a・・・先端部、6・・・ロードセル(荷重測定手段)、7・・・上下方向移動部材(荷重印加手段)、8・・・抵抗測定手段、9・・・水平方向移動部材(荷重印加手段)、10・・・電気化学素子用電極、12・・・絶縁層、14・・・活物質含有層、16・・・集電体。

Claims (7)

  1. 導電性部材からなる先端部を備える針に荷重を印加し、前記先端部を、電気化学素子用電極に積層された絶縁層の表面から前記絶縁層の内部へ挿入し、前記電気化学素子用電極まで到達させる針挿入工程を備え、
    前記針の表面のうち前記先端部以外の部分が絶縁体であり、
    前記先端部の長手方向の長さが1〜20μmであり、
    前記針挿入工程において、前記荷重と、前記先端部と前記電気化学素子用電極との間の電気抵抗と、を経時的に測定する、電気化学素子の評価方法。
  2. 前記電気化学素子用電極が、活物質含有層と、前記活物質含有層に積層された集電体と、を備え、
    前記絶縁層が、前記集電体が積層された側とは反対側において前記活物質含有層に積層されている、請求項1に記載の電気化学素子の評価方法。
  3. 前記絶縁層が、前記電化学素子用電極を保護する保護層である、請求項1又は2に記載の電気化学素子の評価方法。
  4. 前記絶縁層がセパレータである、請求項1又は2に記載の電気化学素子の評価方法。
  5. 先端部が電気化学素子用電極に積層された絶縁層の表面に対向するように配置され、前記先端部が導電性部材からなる針と、
    前記針に荷重を印加し、前記先端部を前記絶縁層の表面から前記絶縁層の内部へ挿入させ、前記電気化学素子用電極まで到達させる荷重印加手段と、
    前記荷重を経時的に測定する荷重測定手段と、
    前記先端部と前記電気化学素子用電極との間の電気抵抗を経時的に測定する抵抗測定手段と、
    を備え、
    前記針の表面のうち前記先端部以外の部分が絶縁体であり、
    前記先端部の長手方向の長さが1〜20μmである、電気化学素子の評価装置。
  6. 前記荷重測定手段が、前記針に印加される前記荷重のうち、前記絶縁層の表面に対して略垂直又は略平行な方向における荷重を測定する、請求項に記載の電気化学素子の評価装置。
  7. 前記先端部の曲率Rが1μm〜5mmである、請求項5又は6に記載の電気化学素子の評価装置。
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