本発明の一実施形態について図1〜図22に基づいて説明すれば、次の通りである。以下の特定の項目で説明する構成以外の構成については、必要に応じて説明を省略する場合があるが、他の項目で説明されている場合は、その構成と同じである。また、説明の便宜上、各項目に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
〔従来技術の問題点について〕
SLMを活用して光複素振幅場を生成もしくは操作する方法としては、二つのSLMを直列に繋ぐ第1の方法が最も一般的である。しかし、通常のSLMは、所望の強度変調を加えようとする場合、不要な位相変調も付随してしまう。このため、第1の方法では、複数の偏光子および検光子を用いて各SLMの変調特性を複雑に制御しなければならないという問題点がある。また、第1の方法では、二つのSLMのそれぞれをピクセルサイズの単位で精確に調整しなければならず、また、光の回折の影響も無視できないという問題点もある。従って、振動などが激しい環境下において、第1の方法は十分に機能しない等の課題があるため、ほとんど用いられることがない。
第1の方法とは異なる有力な現状技術として、off-axis型計算機合成ホログラム(CGH: Computer Generated Holograms;以下、「off-axis型CGH」と略称する)をSLMに表示することで、光複素振幅場を生成する第2の方法がある。off-axis型CGHは最も一般的な光複素振幅場生成技術であり、この第2の方法では、単一のSLMのみで実現できるため、装置の低コスト化が可能である。しかしながら、第2の方法によって生成可能な光複素振幅場の解像度は、SLMの解像度より遥かに劣るという別の問題点がある。具体的には、例えば、SLMの100ピクセルで、ようやく1ピクセルの光複素振幅場が生成できる程度である。また、第2の方法では、所望の回折光以外に不要な回折光が生じるため、SLMへの入射光のエネルギーは、各回折光へ分散してしまう。そのため、達成可能な回折効率は最大で約30%程度でしかない。
これに対して、入射光エネルギーを全て所望の複素振幅を持つ回折光に費やすことができる方法として、キノフォームと呼ばれる技術が古くから提案されている(以下、第3の方法という)。この第3の方法は、「拡散性の強い物体のフーリエ変換分布は、散乱波面を形成し、その散乱波面における位相分布は元物体のほとんど全ての重要な特徴を保持している」という統計的な性質を基に、散乱位相画像のみをSLMに表示し、振幅と位相とを含む元物体の複素振幅情報を再生する。しかしながら、この第3の方法は、「再生可能な空間がフーリエ変換面の近傍に限られる」という極めて重大な欠点を持つため、例えば、3Dディスプレイへの応用において、数mm程度の非常に小さい再生像しか得られないという問題点がある。
以下、上述した従来の光複素振幅場生成技術の概要について纏める。
(1)上述した第1の方法では、二つのSLMを、4f光学系を挟んで直列に配置することで任意の光複素振幅場を生成する[非特許文献3参照]。しかし、一般的なTN(Twisted Nematic)型SLMでは、所望の空間強度変調をかけるとき、同時に不要な位相変調が掛かってしまう。また、その逆に、所望の空間位相変調を掛けるとき、同時に不要な強度変調が掛かってしまう。すなわち、第1の方法では、各々のSLMで強度と位相とを独立に変調して光複素振幅場を合成することはできないという問題点がある。しかしながら、第1の方法では、各SLMの変調特性を検光子と偏光子とで巧みに調整することで、任意の光複素振幅場を合成することが可能である。すなわち、第1の方法では、検光子と偏光子とを用いることで、SLMの解像度と等価な光複素振幅場を生成可能である点が大きな特長である。
(2)次に、上述した第2の方法では、SLMにoff-axis型CGHを表示することで所望の複素振幅場を回折させる[非特許文献4参照]。この第2の方法では、予めコンピュータ上で、任意の光複素振幅場を持つ信号光と参照光とを用意し、それらの干渉縞を計算しておく。その後、実光学系におけるSLMに計算したoff-axis型CGHを表示させ、参照光を照射することで、表現した光複素振幅場を得ることができる。この第2の方法は、上述した第1の方法と比較して、単一のSLMで実現できるため、光学系を簡略化できると共に装置のコストを抑えることができるというメリットがある。
(3)次に、上述したoff-axis型CGH(第2の方法)の持つ欠点を解決できるCGH技術として、キノフォームという第3の方法がある[非特許文献5参照]。この第3の方法は、「散乱物体から回折される光散乱波面において、位相分布は元物体におけるほとんど全ての重要な特徴を有している」という統計的性質に基づき、入射光に対して位相画像を変調することで元物体の複素振幅情報を再生する。この第3の方法は、ホログラムの代りに位相画像をSLMに表示するため、入射光のエネルギーおよびSLMの空間バンド幅を全て所望の複素振幅場のみに費やすことができるというメリットがある。また、第3の方法は、上述した第2の方法と比較して、参照光の生成や不要な回折次成分の分離にかかる処理を省略することもできるため、動画再生や3Dディスプレイへの応用においては大きな優位性を持つという特長がある。
しかしながら、上述した従来の光複素振幅生成方法は、いずれも利点を有していると同時に、いくつかの欠点も有している。そこで、上述した第1〜第3のそれぞれの方法における解決すべき問題点について以下に説明する。
(1)上記の第1の方法は、二つのSLMをピクセル単位(10μm)の精度で正確に配置する必要があるため、実施可能なのは、振動などが無い安定した環境下に限られるという問題点がある。また、二つのSLM以外に検光子と偏光子とをそれぞれ二つずつ必要とするため、使用する光学素子が増えてしまう問題点もある。また、初段のSLMを透過した後の光は、SLMの素子開口による回折の影響を受けた後で、第2段のSLMに入射する。このため、正確な光複素振幅場の生成が困難になるという問題点もある。
(2)上記の第2の方法では複素振幅情報を参照光との干渉縞によってコード化している。つまり、この干渉縞を形成するためにSLMの複数ピクセルを犠牲しなければいけないという問題点がある。これによって、実現可能な光複素振幅場の分解能は、SLMの解像度の1/100程度(XおよびY方向へそれぞれ1/10程度)でしかないという問題点がある。この点が、3Dディスプレイへの実用化の大きな障害になっている。また、SLMに入射光を照射した後、所望の回折光(+1次光)と共に、ホログラム特有の不要な回折次成分(0次光および−1次光)も生じるため、入射光エネルギーが各回折光に分散し、得られる最大の回折効率は、約30%程度であり、エネルギー利用効率が低いという問題点もある。
(3)上記の第3の方法では、複素振幅情報の再生空間がSLM面に対するフーリエ空間(領域)近傍に限られるという重大な制約を持つという問題点がある。すなわち、第3の方法は、レンズによるフーリエ変換面の近傍、または、遠方場におけるフーリエ変換面の近傍においてのみ、任意の複素振幅情報を生成可能である。複素振幅情報の生成がフーリエ変換レンズによって実現される場合、再生される複素振幅物体像はごく小さいものに限られる。例えば、レンズの焦点距離が100mm、光源波長が532nm、SLMのピクセルサイズが20μmの場合、再生像の大きさは約2.5mmにしかならない。この点が、3Dディスプレイ実用化の大きな障害になっている。一方、遠方場におけるフーリエ変換を使う場合、SLM面から大きく離れた位置に物体像が再生されてしまうため、現実的ではない。
以下で説明する本発明の態様は、上記の各問題点を解決すべく、本発明者らが考案したものである。
〔空間位相変調、空間強度変調および空間直交振幅変調について〕
ここで、位相変調(Phase Modulation;PM)は、無線通信や光通信などの通信技術の分野で使用される、位相変調、位相シフト変調(Phase Shift Modulation;PSM)または位相シフトキーイング(Phase Shift Keying;PSK)による変調方式である。PMは、搬送波の位相を変化させることで情報を伝達する。ホログラフィックメモリでは、通信技術の分野で使用されるPMと同様に、位相を変化させた信号光を記録する。しかしながら、本実施形態に係るホログラフィックメモリでは、時間軸方向に信号を変調する通信とは異なり、2次元の空間軸方向(x,y)に信号を変調し、データページとしてこれを記録し、再生する。そこで、本明細書では、本発明を具現化する形態で使用する位相変調による変調方式を、通信技術の分野で使用される「位相変調(PM)」と区別するために、「空間位相変調(Spatial Phase Modulation;SPM)」と呼ぶ。SPMは、光メモリ分野において用いられる位相変調および多値位相変調の概念を含む。例えば、空間位相変調の場合、信号光は、位相分布を有する光位相信号となる。より具体的には、信号光は、例えば、0およびφの二値の位相がデータピクセル毎に2次元配置(マトリクス状に配置)された位相分布を有する信号(2次元情報;データページ)として構成することができる。
次に、振幅変調(Amplitude Moderation;AM)は、強度変調ともいい、AMは、搬送波の振幅(または強度)を変化させることで情報を伝達する。ホログラフィックメモリでは、通信技術の分野で使用されるAMと同様に、振幅を変化させた信号光を記録する。しかしながら、本実施形態に係るホログラフィックメモリでは、時間軸方向に信号を変調する通信とは異なり、2次元の空間軸方向(x,y)に信号を変調し、データページとしてこれを記録し、再生する。そこで、本明細書では、本発明を具現化する形態で使用する振幅変調(または強度変調)による変調方式を、通信技術の分野で使用される「強度変調(AM)」と区別するために、「空間強度変調(Spatial Amplitude Modulation;SPM)」と呼ぶ。
また、空間強度変調型の場合、信号光は、強度分布を有する光強度信号とする。すなわち、信号光は、例えば、光強度が高いHigh部分と光強度が低いLow部分とがデータピクセル毎に2次元配置された強度分布を有する信号(2次元情報;データページ)として構成することができる。
次に、直交振幅変調(Quadrature Amplitude Moderation;以下「QAM」と略称する)は、無線通信や光通信など通信技術の分野で使用される。振幅変調(Amplitude Moderation;AM)と、位相変調(Phase Modulation;PM)とを組合せた変調方式である。QAMは、振幅および位相の両方の要素を変化させることで複数の情報を一度に伝達することができる。本実施形態に係るホログラフィックメモリでは、通信技術の分野で使用されるQAMと同様に、振幅および位相の両方を変化させた信号を記録する。しかしながら、本実施形態に係るホログラフィックメモリでは、時間軸方向に信号を変調する通信とは異なり、2次元の空間軸方向(x,y)に信号を変調し、データページとしてこれを記録し、再生する。そこで、本明細書では、本発明を具現化する形態で使用する直交振幅変調による変調方式を、通信技術の分野で使用される「直交振幅変調(QAM)」と区別するために、「空間直交振幅変調(Spatial Quadrature Amplitude Moderation;SQAM)」と呼ぶ。
〔散乱位相画像の生成過程・複素振幅画像の再生過程〕
以下では、図1〜図4に基づき、本発明の実施の一形態における基本的な処理について簡単に説明する。この基本的な処理は、「散乱位相画像の生成過程」と「複素振幅画像(または複素振幅物体像)の再生過程」とに大別される。
<散乱位相画像の生成過程>・・・図1、図2
図1は、本発明の実施の一形態に係る散乱位相画像生成装置1aの概要構成を示す図である。また、図2は、本発明の実施の一形態に係る散乱位相画像の生成過程における数値解析モデルの一例を示す図である。
散乱位相画像の生成過程は、光学素子の組合せ(以下、単に「光学系」と称する)を用いて実施しても良く(図1参照)、コンピュータ(計算機、またはその仮想空間)上で電子的に(計算機上の処理として)実施しても良い(図2参照)。また、散乱位相画像の生成過程をコンピュータ上で電子的に実施する場合、後述する散乱位相画像の生成過程の全過程をコンピュータ上で処理しても良いし、上記全過程のうちの少なくとも一以上の過程をコンピュータ上で処理しても良い(図1参照)。
散乱位相画像の生成過程では、入力像としての複素振幅画像に複数過程の処理が行われ、その結果物として、散乱位相画像が生成される。物体などの実映像(実画像)を用いる場合には、本実施形態の散乱位相画像の生成過程に使用される散乱位相画像生成装置1aの構成は、図1に示すように、ランダム拡散板(拡散部材)11a、FTレンズ(逆変換レンズ)12L、FTレンズ(変換レンズ)12R、撮像素子(位相検出器)13、および散乱位相画像生成部(画像生成部)14を備える。
(ランダム拡散板11a)
空間位相変調素子の一例であるランダム拡散板11aは、表面にランダムな凹凸分布が形成された拡散部材(光学素子)の一例であり、光波(またはその空間分布である光波分布)を拡散させる効果がある。また、ランダム拡散板11aの凹凸分布が形成された凹凸面は、FTレンズ12Lの側に向けられて配置されている。
ここで、本発明者らは、散乱位相画像が生成される側のFTレンズ12Lのフーリエ変換面(領域)またはフーリエ変換面からずれた位置に拡散性の強い拡散部材(例えば、ランダム拡散板11aなど)を配置すれば、原理上、フーリエ変換面の近傍のごく限られた領域だけでなく、あらゆる空間領域に散乱波面を作り出すことができることを新たに見出した。なお、本発明者らの実験により、ランダム拡散板11aがフーリエ変換面にあるときに、もっとも高い性能がでることが判明している。
但し、本発明は、上述した態様に限定されない。例えば、FTレンズ12L,12Rのいずれか一方を用いない光学系(例えば、後述する図5、6に示す光学系参照)の場合、複素振幅画像の再生過程では、ランダム拡散板11aをSLM15から出射する光波のフレネル領域に配置しても本発明の初期の効果が得られることが判明している。また、散乱位相画像の生成過程では、後述するCCD17をランダム拡散板11aから射出する光波のフレネル領域に配置しても本発明の初期の効果が得られることが判明している。
すなわち、拡散部材(例えば、ランダム拡散板11a)を用いるだけで、再生可能な領域を従来の「フーリエ変換面の近傍」から「全空間」に拡張することができる。このため、本実施形態では、ランダム拡散板11aを後述するFTレンズ12Lのフーリエ変換面(以下、「FT面」と称する)に配置している(なお、本発明の初期の効果を得るためであれば、FT面からずれた位置に配置しても良い)。なお、FTレンズ12Lの焦点距離をfとした時、FTレンズ12Lの光軸に対して右側の焦点位置(FTレンズ12Lの焦点距離fの位置)がFT面となる。
(FTレンズ12L,12R)
FTレンズ12L,12Rは、フーリエ変換レンズである。例えば、レンズの直前にクロス格子(物体)おくと、レンズによるフーリエ変換によって、その焦点面にはフーリエスペクトルが得られることが知られている。FTレンズ12L,12Rの構成材料は、透光性を有するガラス材料または樹脂材料であれば良く、特に限定されない。なお、本明細書では、便宜上、FTレンズによるフーリエ変換後の像をフーリエ変換像と呼び、FTレンズによる逆フーリエ変換後の像を逆フーリエ変換像と呼ぶ。
(撮像素子13)
撮像素子13(散乱位相画像生成面を有する)は、FTレンズ12Lを透過する透過光の複素振幅の分布(2次元情報)を位相検出法によって計測(検出する)ものであり、位相検出器として機能する。撮像素子13としては、例えば、CCD(charge coupled device)およびCMOS(complementary metal-oxide semiconductor)などを用いることができる。
(散乱位相画像生成部14)
散乱位相画像生成部14は、撮像素子13の撮像データを解析して、散乱位相画像を生成(算出)するものであり、例えば、コンピュータ(計算機)などで構成することができる。
<散乱位相画像の生成過程における処理の詳細>
次に、散乱位相画像の生成過程(散乱位相画像生成方法)の詳細について説明する。
(1)図1に示すように入力像として、2次元(2D)的または3次元(3D)的に分布する複数の複素振幅値の分布を持つ2D像IM1(複素振幅画像)または3D像IM2(複素振幅画像)を任意の入力空間に入力する。これらの複素振幅画像は物体などの実映像(または実画像)でも良いし、何らかの表示装置に表示された映像(または画像)でも良い。また、電子的に複素振幅画像を生成することも可能であり、この場合には、コンピュータ内に蓄積または生成された映像(または画像)を用いることができる。この場合、図2に示す入力面ISにおいて電子的に生成した複素振幅画像を入力する(同図のS11参照)。なお、FT面に対する入力空間の位置は、フレネル領域またはフラウンホーファー領域のいずれにあるかを問わない(どの位置にある入力像でも入力可能であることを意味する)。
(2)入力像をコンピュータ内で演算することにより生成せずに、物体などの実映像(または実画像)を用いる場合には、物理的なフーリエ変換レンズ(図1のFTレンズ12R参照)を配置することもできるし、FTレンズ12Rを配置せずに、フレネル領域の光波分布をFT面〔FT面は図1に示す散乱位相画像生成装置1aの光軸に沿って左側のFTレンズ12Lの焦点面に位置する〕に入射させても良い。
一方、入力像をコンピュータ内で演算することにより生成する場合(図2参照)、仮想空間上のFT面(図2に示すフーリエ変換面)における入力像の光波分布を計算する。ここで、入力空間がFTレンズ12R(図2に示す仮想光学系の光軸に沿って右側のレンズ)の後側焦平面に位置する場合、FFT(高速フーリエ変換)によりFTレンズ12Rを透過した後の光波分布を求めることができる。また、上記以外の場合(入力空間がFTレンズ12Rの後側焦平面に位置しない場合、もしくは、FTレンズ12Rを用いない場合)、光波伝搬計算を行い、図2に示すFT面における光波分布を求める。ここで、光波伝搬計算の方法(例えば、角スペクトル法やフレネル回折積分)は、伝搬距離に応じて適宜選択すれば良い。
(3)物体などの実映像(実画像)を用いる場合には、図1に示すように、物理的なランダム拡散板11aを配置して光波を透過させる。一方、入力像をコンピュータ内で仮想的に生成する場合、上記(2)で算出したFT面における光波分布をコンピュータ上で仮想的に生成した拡散板の透過関数と掛け合わせる(図2のS12参照)。
(4)物体などの実映像(実画像)を用いる場合には、図1に示すように、物理的なFTレンズ12Lをレンズの焦点面がFT面と一致するように配置して、光波を透過させ、光学的に逆フーリエ変換を実施する。そして、散乱位相画像生成部14は、逆フーリエ変換後の散乱位相波面を、撮像素子13により測定し、その測定データを散乱位相画像生成部14(コンピュータ上)に取り込む。
一方、入力像をコンピュータ内で演算することにより生成する場合(図2参照)、上記の(3)で算出された、拡散板の透過関数が掛け合わされた光波分布に対して、IFFT(逆高速フーリエ変換)を施すことで逆フーリエ変換を行い出力面OSにおける散乱波面を求める。
(5)物体などの実映像(実画像)を用いる場合には(図1参照)、「散乱波面における位相分布は、元の複素振幅情報におけるほとんどの重要な特徴を有する」という統計的性質があるため、散乱位相画像生成部14は、撮像素子13の撮像データから得られる散乱波面における強度分布DSおよび位相分布DPのうち、強度分布DSを一定値に変換する(S1;散乱強度を一定と仮定)。一方、入力像をコンピュータ内で演算することにより生成する場合(図2参照)、出力面OSで得られる散乱波面における強度分布DSおよび位相分布DPのうち、強度分布DSを一定と仮定し(図2のS14参照)、散乱位相波面の符号(位相値の符号参照)を反転させることで、位相共役波面を持つ散乱位相画像を求める(図2のS15)。
<複素振幅画像の再生過程>・・・図3、図4
図3は、本発明の実施の一形態に係る複素振幅画像再生装置1bの概要構成を示す図である。図4は、本発明の実施の一形態に係る複素振幅画像の再生過程における数値解析モデルの一例を示す図である。
複素振幅画像の再生過程は、光学系を用いて実施しても良く(図3参照)、コンピュータ(計算機、またはその仮想空間)上で電子的に(計算機上の処理として)実施しても良い(図4参照)。
複素振幅画像の再生過程では、入力像としての散乱位相画像に複数過程の処理が行われ、その結果物として、複素振幅画像が生成される。
物体などの実映像(実画像)を用いる場合には、本実施形態の複素振幅画像の再生過程に使用される複素振幅画像再生装置1bの構成は、図3に示すように、ランダム拡散板11a、FTレンズ(逆変換レンズ)12L、FTレンズ(変換レンズ)12R、SLM(空間光変調器)15、および表示部16を備える。
(SLM15)
本実施形態のSLM15は、空間位相変調型の空間位相変調器であり、レーザ光源およびレーザ光径を拡大する拡大光学系としてのビームエキスパンダ(BE:Beam Expander)を備え、上記の散乱位相画像の生成過程で計算した散乱位相画像を出力(または表示)する。SLM15は、位相のみを0〜2πの範囲で変調できることが望ましい。SLM15によれば、ホログラムの代りに散乱位相画像の光波を空間光変調器から出射することができるので、空間光変調器に対する入射光のエネルギー、および、空間光変調器の空間バンド幅を全て所望の複素振幅画像の再生のみに費やすことができる。また、参照光の生成や不要な回折次成分の分離にかかる処理を省略することもできるため、動画再生や3Dディスプレイへの応用においては大きな優位性を持つ。
なお、空間光変調器は、空間強度変調型(または空間振幅変調型)、空間位相変調型、空間直交振幅変調型、およびそれらの多値変調型などの各種信号変調方法が可能である。また、空間光変調器には、空間位相変調器または空間強度変調器が存在し、いずれか一台の空間光変調器によって、光の複素振幅(位相と強度との両方)を生成することができる。
(表示部16)
表示部16は、ランダム拡散板11aで拡散されて生じた拡散光から生ずる2D像IM1または3D像IM2(複素振幅画像)を表示するものである。表示部16は、FT面(ランダム拡散板11aの面)に対してフレネル領域またはフラウンホーファー領域に配置できる。これにより、任意のサイズの複素振幅画像の再生像を任意の空間に再現することができる表示装置を実現できる。なお、本明細書において、フラウンホーファー領域とは十分に遠方という意味である。
<複素振幅画像の再生過程における処理の詳細>
次に、複素振幅画像の再生過程(複素振幅画像再生方法)における処理の詳細について説明する。
(1)上記の散乱位相画像の生成過程で計算した散乱位相画像をSLM15のSLM面(出力面)上に表示し(表示されるのは、位相値のみであるから一台のSLMで表示可能)、入射光をSLM15に照射する。この入射光は、SLM面上に表示した位相分布と等しい位相分布を有する光波を得るための光で、一般的には、平面波状の波面を有する光であれば良く、光源に大きな制約はない。
(2)図3に示すFTレンズ12L(フーリエ変換レンズ)によってSLM面における散乱位相画像がフーリエ変換面に集束する。ここで、FTレンズ12Lの焦点面の位置とFT面の位置とは一致している。
(3)FT面に集束した光波がランダム拡散板11aを透過する。このとき、散乱位相画像の生成過程における散乱波面の生成過程におけるランダム拡散板11aで受けた空間位相変調が相殺され、元の光波分布が復元される。
(4)ランダム拡散板11aを透過した光波分布(複素振幅分布=位相分布+強度分布)は、元の像空間に再生され、散乱位相画像の生成過程における入力像(2D像IM1または3D像IM2)が復元される(表示部16にて表示される)。
〔本発明を3Dディスプレイおよびホログラフィックメモリに応用した場合〕
次に、図5〜図8に基づき、本発明を3Dディスプレイおよびホログラフィックメモリに応用した場合について説明する。
<3Dディスプレイ>・・・図5、図6
以下では、FTレンズ12Rを用いずに、FTレンズ12Lに相当するFTレンズ12を備え、光波が伝播する回折効果(フレネル伝播)を用いる形態について説明する。なお、以下では、FTレンズを用いない空間中の伝播を「フレネル変換」という場合がある。
但し、本実施形態のように、3Dディスプレイの場合には、FTレンズ12Rを用いないケースが多いと思われるが、FTレンズ12Rを用いるか用いないかは、その装置の設計方針によるため、実際には一概に決定することはできない。
図5は、本発明を3Dディスプレイに適用する場合における散乱位相画像の生成過程を実現する光学系を示す図であり、図5の(a)は、散乱位相画像の光学的生成過程を実現する光学系2aを示す。
図5の(a)に示すように、光学系2aは、上述したランダム拡散板11aおよび散乱位相画像生成部14の他、FTレンズ12(フーリエ変換レンズ)、レンズL、CCD(撮像装置)17、BS(ビームスプリッタ)を備える。
本実施形態で照明光生成に用いられているレンズLは必須ではなく、必要に応じて、照明用の光学系を用意すれば良い。また、CCD17は、位相検出器(撮像素子)として機能する。一般的なCCDイメージセンサは、光の強度分布のみを検出可能であるが、図18〜図21に示す技術などを用いることにより、光の位相分布と、光の位相分布および強度分布の両方の検出が可能になる。なお、ランダム拡散板11aから射出する光波に対するフレネル領域にCCD17を配置する場合は、入力像の強度成分が必要とされる位相成分に正確に変換されてCCD17に入射するように考慮して配置することが望ましい。
図18は、本発明を具現化する形態で利用可能な位相測定方法を実現する光学系6を示す図である。また、図19は、本発明を具現化する形態で利用可能な位相測定方法を実現する別の光学系7を示す図である。
図18に示す光学系6では、予め2つの撮像素子(CCD1およびCCD2)における参照光の強度分布を測定し、これらの強度分布と、位相が互いに異なる2つのホログラム(ホログラム1およびホログラム2)の強度分布を用いて、物体光の複素振幅を測定する。すなわち、この光学系6では、複数の撮像領域(第1光検出部および第2光検出部)を用いることを前提としている。
次に、図19に示す光学系7では、2つのホログラムの強度分布を測定する前に、2つの撮像素子に試験物体光を照射し、これらの強度分布を測定することで、物体光側の光学素子や光路などの誤差の補正も行う。具体的には、まず、試験物体光(例えば、光路上に被検査物を配置しないで得られる物体光)のみを照射して、2つの撮像素子での強度分布を測定する。次に、参照光のみを照射して、2つの撮像素子で強度分布を測定する。これらの前処理の後、光路上に被検査物を配置した状態で物体光および参照光を同時に照射して、位相が互いに異なる2つのホログラム(ホログラム1およびホログラム2)の強度分布を2つの撮像素子で測定する。これらの6つの強度分布により、物体光の光複素振幅(光の位相および振幅)を正確に算出することができる。
図20は、本発明を具現化する形態で利用可能な空間直交振幅変調信号の生成方法を実現する光学系8aを示す図である。図21は、本発明を具現化する形態で利用可能な空間直交振幅変調信号の生成方法を実現する光学系8bを示す図である。
図20に示すように、光学系8aは、振幅変調を行う空間光変調器(SML1)と位相変調を行う空間光変調器(SML2)とから構成される。空間光変調器は、2次元の光信号(画像など)の振幅A(x,y)および位相exp{iφ(x,y)}の空間分布を電気的に制御することができる。空間光変調器の例には、LCD(Liquid Crystal Display)、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)ディスプレイ、DMD(デジタルミラーデバイス)などが含まれる。なお、振幅変調または位相変調のみを行う場合には、1台の空間光変調器(SLM)を用いれば良い。
次に、図21に示す光学系8bは、マイケルソンの干渉計を利用して、I信号とQ信号とを独立(並列)に強度変調してから混合する構成である。I信号およびQ信号は、次式(1)で表される強度信号である。
図21に示される2つの空間光変調器(SLM1およびSLM2)は、いずれも振幅変調を行う反射型の空間光変調器である。I信号は、SLM1によって振幅変調される。Q信号は、SLM2によって振幅変調される。図21に示す態様では、SLM1と、ビームスプリッターBSとの間の光路長LIおよびSLM2とBSとの光路長LQを「LI−LQ=λ/4」(λ:光波の波長)となるように設定する。このようにすることで、直交振幅変調信号光の生成位置SにおけるI信号とQ信号との位相差がπ/2となる。したがって、以下の式(2)で示されるように、図20に示される態様と等価な信号を得ることができる。
散乱位相画像の生成過程では、入力空間における3D像IM2(入力像)が実物あるいは実映像の場合、光学的に処理することができる。また、3D像IM2(入力像)をコンピュータ上で仮想的に生成あるいはコンピュータ内に蓄積された3D映像データを利用する場合、光学素子を用いずにコンピュータによる電子的処理で散乱位相画像を生成することができる。
図5の(a)に示すように、散乱位相画像を光学的に生成する場合、照明光を3D物体(3D像)に照射する。3D物体から反射した光波は、ランダム拡散板11aを透過することで空間位相変調が付加され、FTレンズ12を介した出力面(位相検出面)で散乱波面を形成する。
ここで、FTレンズ12とFT面との距離=FTレンズの焦点距離である。ただし、本発明の実施様態は、このような光学条件に限定されるものではなく、例えば、ランダム拡散板11aをCCD17(位相検出器)とFTレンズ12との中間に配置しても良いし、CCD17とランダム拡散板11aとの距離を大きく取ることによってFTレンズ12を用いない構成とすることも可能である。
次に、散乱波面の位相分布のみをCCD17により計測し、そのデータを散乱位相画像生成部14(コンピュータ上)に取り込む。取り込んだ位相分布の位相共役波面を計算し、これを散乱位相画像とする。
また、図5の(a)のFT面の位置に位相検出器(ただしこの場合には、位相と強度との両方を検出できるもの)を配置して、まず、入力像の複素振幅分布を計測した後、コンピュータ内で、ランダム拡散板11aによる空間位相変調処理とFTレンズ12によるフーリエ変換と等価な処理を行うことも可能である。この様態においては、入力空間における3D像IM2(入力像)が実物あるいは実映像の場合であっても、散乱位相画像の生成過程において物理的なランダム拡散板やFTレンズは不要になる。
図5の(a)に示されたCCD17は、位相検出器を表している。一般的なCCDイメージセンサは、光の強度分布のみを検出可能であるが、上記のように図18〜図21に示した技術を用いることにより、光の位相分布の検出、または、光の位相分布および強度分布の両方の検出が可能になる。
一方、図5の(b)は、散乱位相画像の電子的生成過程を実現するコンピュータ上の仮想光学系2bを示す。同図に示すように、仮想光学系2bでは、入力空間に入力される3D像IM2は、ランダム拡散板11aの透過関数に掛け合わされ、FTレンズ12によるフーリエ変換を施され、仮想的に配置された撮像素子13の位置における散乱位相画像生成面における散乱波面が計算され、その後は、上記の散乱位相画像生成部14と同様の計算により、散乱位相画像が計算される。このように、散乱位相画像をコンピュータ上で電子的に生成する場合、3D像IM2のFT面における光波分布を角スペクトル伝搬計算によって求める。ここで、コンピュータ上で表現される3D像IM2は、以下に示すように複数の2D像から構成される。
Nは3D像IM2を構成する2D像の総数、h(x,y,zi)は、各光軸位置における2D像を示す。3D像IM2が出力面に形成する散乱波面は、各2D像が作る散乱波面の重ね合わせによって求められる。具体的には、まず角スペクトル法によって2D像のFT面における光波分布を計算する。
a(x,y,zi+di)はFT面における光波分布、diは各2D像からFT面までの距離、添え字iは各 2D像の番号、μおよびvは2D像の空間周波数、F[*]またはF−1[*]はそれぞれフーリエ変換、逆フーリエ変換演算子である。その後、FT面における光波分布と拡散板の透過関数がと以下のように掛け合わされる。
t(x,y)はランダム拡散板11aの透過関数とする。そして、掛け合わされた光波分布にFFTを施すことでフーリエ変換を行い、各2D像の出力面における散乱波面gi(x,y)を求める。
式(4)〜式(6)の計算を、3D像IM2を構成する全ての2D像に対して行い、それらの散乱波面を重ね合わせることで、3D像IM2の散乱波面を求める。
その後、求めた散乱波面における強度分布を消失させ、位相分布情報だけからこの散乱波面の位相共役波面を求める。このようにして最終的な散乱位相画像が完成する。この時、散乱位相画像は、位相のみから構成されるものの、元3D像IM2(入力像)の強度と位相とを含む複素振幅情報のほとんど全てを有している。
なお、FTレンズ12とランダム拡散板11aとの位置関係は図5の(b)に示す態様に限定されない。例えば、図5の(b)の破線で囲んだ部分に示すように、入力光の光軸に沿って、FTレンズ12とランダム拡散板11aとの位置関係を入れ替えても、本発明の初期の効果を得ることは可能である。なお、この仮想光学系を実際の光学系で実現する場合には、CCD17は、ランダム拡散板11aから出射する光波のフレネル領域に配置する。
次に、図6は、本発明を3Dディスプレイに適用する場合における3D像(複素振幅画像)の光学的再生過程を実現する光学系の例を示す図である。ここでは、FTレンズ12Rを用いず、ランダム拡散板11aで拡散されて生じた拡散光を直接表示する形態を示す。
図6の(a)は、SLM15から発生する光波の進行方向に対して、FTレンズ12、ランダム拡散板11aをこの順序で配置するとともに、ランダム拡散板11aをFT面に配置した光学系2cを示す。図6の(a)に示す光学系2cは、上述したSLM15、FTレンズ12、およびランダム拡散板11aを備えている。
同図に示す3D像IM2の光学的再生過程では、光学的または電子的に生成された散乱位相画像をSLM15(空間位相生成装置)上に表示する。SLM15に平面波を照射すると、位相画像が付加された光波が生成され、FTレンズ12を介して逆フーリエ変換され、ランダム拡散板11aを通過する。
このとき、散乱位相画像の生成過程における散乱波面の生成過程において付加されたランダム拡散板11aによる空間位相変調は相殺され、元の光波分布が復元し、入力像の複素振幅分布が再生される。なお、光学系2cのような配置の場合、ランダム拡散板11aは、必ずしもフーリエ変換面(レンズの焦点位置)にある必要はない。以下、この点について説明する。すなわち、本発明を具現化する様態は、上述した形態のような光学条件に限定されるものではなく、例えば、ランダム拡散板11aをSLM15(空間変調器)とFTレンズ12との中間に配置しても良いし、ランダム拡散板11aは、フーリエ変換面(レンズの焦点位置)からずれた位置に配置しても良い。また、SLM15とランダム拡散板11aとの距離を大きく取ることによってFTレンズ12を用いない構成とすることも可能である。
図6の(b)は、図6の(a)のFTレンズ12およびランダム拡散板11aの位置関係を光波の進行方向に対して逆にした光学系2dを示す。本実施形態では、ランダム拡散板11aは、SLM15から出射する光波のフレネル領域に配置している。
SLM15に平面波を照射すると、位相画像が付加された光波が生成され、ランダム拡散板11aを通過し、FTレンズ12を介して逆フーリエ変換される。
なお、ランダム拡散板11aをフレネル領域に配置する場合は、SLM15で生成された位相成分が必要とされる強度成分に正確に変換されて再生されるように考慮して配置することが望ましい。
図6の(c)は、ランダム拡散板11aがFT面からずれた位置に配置されている光学系2eを示す。このように、ランダム拡散板11aの配置位置は必ずしもFT面に限定されない。
なお、理論上、フラウンホーファー領域の像は、フーリエ変換像と一致するので「FTレンズ12Rを用いずに十分遠方に再生される像」と「FTレンズ12Rをランダム拡散板11aが焦点位置になるように配置した場合(フーリエ変換)の像は一致することになる。
以上の複素振幅画像を再生する形態について纏めると、
(1)FTレンズ12Rを用いてFT面のフーリエ変換像を再生する形態、
(2)FTレンズ12Rを用いずに、FT面の右側のフレネル領域に像を再生する形態、および、
(3)FTレンズ12Rを用いずに、FT面の十分遠方(フラウンホーファー領域)に像を再生する形態の3つの形態が考えられる。
<ホログラフィックメモリ>・・・図7、図8
図7は、本発明をホログラフィックメモリに適用する場合における散乱位相画像の電子的生成過程を実現する仮想光学系の一例を示す図である。
通常のホログラフィックメモリでは、光の強弱を二次元空間に配列したデータページ(強度画像)が光波に変調され、それがホログラフィック媒質への記録または読出しに用いられる。
一方、図7に示す本発明の実施の一形態の仮想光学系3aでは、データページの代わりに散乱位相画像が媒質への記録または読出しに用いられる。すなわち、散乱位相画像の生成と再生とは全てコンピュータ上の電子的処理によって行われる。散乱位相画像は、データページ構造をもはや判別できないが、元のデータページのほとんど全ての情報を含んでいる。これにより、多値強度と多値位相とを含む直交振幅変調信号の利用が可能となるため、ホログラフィックメモリの記憶容量を大幅に向上させることができる。
図7に示す散乱位相画像の電子的生成過程では、まず、入力面ISに多値強度と多値位相とを含む直交振幅変調信号を用意する。次に、この直交振幅変調信号による光波は、FFT(高速フーリエ変換)によりフーリエ変換され、フーリエ変換面において拡散板の透過関数との乗算が行われる。乗算後の光波分布は、IFFT(逆高速フーリエ変換)により逆フーリエ変換され、出力面OSにおける散乱波面が計算される。その後は、上述した散乱位相画像生成部14が、散乱波面における強度分布を捨て(一定値と仮定)、位相共役波面を持つ散乱位相画像を求める。
図7では、FTレンズ12L,12R、およびランダム拡散板11aなどの光学モデルが示されているが、実際には、物理的な光学系を用いる必要はなく、これらと等価な処理をコンピュータ内で行えば良い。
次に、図8は、本発明をホログラフィックメモリに適用する場合における散乱位相画像および空間直交振幅変調信号の再生過程を実現する光学系の一例を示す図である。図8の(a)は、ホログラフィック媒質11bへの散乱位相画像の光学的記録再生過程を実現する光学系の一例を示す。
図8の(a)に示す光学系3bにて実現するホログラフィック記録再生過程では、散乱位相画像IMP1を表示したSLM15によって信号光を生成し、これをホログラム媒質11bへの記録および読出しに用いる。本実施形態のホログラフィック記録再生過程では、ホログラム媒質11bへの多重記録方法(シフト多重記録や角度多重記録、位相コード多重記録など)に関して特に制約はない。同様に、ホログラムの読出し方法(順方向読出し、または、位相共役読出し)に関しても特に制約はない。ホログラム媒質11bから読み出された信号光は、CCD17(位相検出面)に到達し、散乱位相画像IMP2がコンピュータ上に電子データとして取り込まれる。ここで、位相検出器に関しても特に制限はなく、上述した図18〜図21にて示した方法の他、非特許文献7に示された方法を用いることができる。
図8の(b)は、空間強度変調と空間位相変調とを組み合わせた空間直交振幅変調信号の電子的再生過程を実現する仮想光学系の一例を示す。
図8の(b)に示す直交振幅変調信号の電子的再生過程では、コンピュータ上に取り込まれた散乱位相画像IMpを基に、図7に示す過程とは逆の処理が行われる。これによって、散乱位相画像IMpのみから強度情報と位相情報とを含む直交振幅変調信号が再生される。なお、図8の(b)においてもFTレンズ12L,12Rやランダム拡散板11aなどの光学モデルが示されているが、実際には、物理的な光学系を用いる必要はなく、これらと等価な処理をコンピュータ内で行えば良い。
〔3次元計測、光断層映像技術(光CT)、光計測技術への応用〕
上述した本発明の一態様は、図22に示すホログラム記録装置9aおよびホログラム再生装置9bにおけるノイズ除去方法で必要とされる光複素振幅場生成装置として用いることができる。これにより、3次元計測、光断層映像技術(光CT)、および光計測技術の大幅な性能向上が期待できる。
<ノイズの除去方法>
以下、コリニアホログラムの場合を仮定して、本発明が適用され得るノイズの除去方法について説明する。
(ホログラム記録装置9a)・・・図22の(a)
図22の(a)に示すように、ホログラム記録装置9a(またはホログラム記録過程)に使用される構成は、空間位相変調光学系211、レンズ212、および記録媒質(ホログラム記録媒体)213である。
(空間位相変調光学系211)
同図に示すように空間位相変調光学系211は、参照光Eとともに、信号光Aに対して空間位相変調処理を行って生成した位相変調光A’を記録媒質213に照射するものであり、本実施形態では、さらに、空間光変調器(光照射手段)211aおよびランダム拡散板211bを備えている。
(空間光変調器211a)
本実施形態の空間光変調器211aは、レーザ光源およびレーザ光径を拡大する拡大光学系としてのビームエキスパンダを備えており、データページP1〜Pmのデータページ部分に対応する信号光A、参照光用リングに対応する参照光Eを出力(または表示)する。
空間光変調器211aによる信号変調方法は、強度変調型、位相変調型、空間直交振幅変調型、およびそれらの多値変調型などいずれでも構わない。空間光変調器211aは位相のみを0〜2πの範囲で変調できることが望ましい。ここで、空間光変調器211aとしては、空間位相変調器または空間強度変調器のいずれも用いることができる。いずれか一台の空間光変調器によって、光の複素振幅(位相と強度との両方)を生成することができる。
(ランダム拡散板211b)
空間位相変調素子の一例であるランダム拡散板211bは、表面にランダムな凹凸分布が形成された光学素子であり、光波を拡散させる効果があるため、信号光Aは、このランダム拡散板211bに透過させると、空間位相変調処理が行われ、位相変調光A’が出力される。ランダム拡散板211bの配置場所に関して特に制約はないが、図22の(a)に示す形態では、ランダム拡散板211bを信号光Aのフレネル領域に配置している。
(レンズ212、記録媒質213)
レンズ212は、コンデンサレンズ(対物レンズ)であり、参照光Eおよび位相変調光A’を集光し、記録媒質213中で干渉(結像)させて干渉縞を形成し、この干渉縞をホログラムとして記録する。なお、レンズ212の構成材料は、透光性を有するガラス材料または樹脂材料であれば良く、特に限定されない。例えば、記録媒質213としては、フォトポリマーを用いることができる。ホログラムの記録では、ビームエキスパンダによって拡大されたビームを、レンズ212によって記録媒質213中に集光する。
(記録過程の詳細)
本実施形態の記録過程は、下記の(イ)〜(ハ)の各過程を少なくとも含む。
(イ)空間光変調器211aによって、信号光Aおよび参考光Eを生成する。なお、この手順は従来通りであるのでその説明は省略する。
(ロ)この信号光Aにランダム拡散板211bを介して空間位相変調exp{jΦ}を加え、位相変調光A’=Aexp{jΦ}を得る。空間位相変調素子としては光波を拡散させる効果のあるものが望ましく、本実施形態では、ランダム拡散板211bを用いているが、これに限定されない。例えば、ランダム拡散板211bと同様の空間位相変調効果を実現する空間光変調器を用いても良い。図22の(a)に示す形態では、空間位相変調処理のためのランダム拡散板211bを設置しているが、信号生成の段階でこの空間位相変調効果を含めた信号光A’を生成することにより、図示されているランダム拡散板211bなどの付加的な光学系を除外することができる。
(ハ)信号光Aおよび位相変調光A’を、レンズ212を用いて記録媒質213に集光し、記録媒質213中で干渉させて干渉縞を形成し、この干渉縞をホログラムとして記録する。この手順は従来通りである。
なお、実際には、必ずしもランダム拡散板211bを設置する必要はなく、信号光Aを生成する時に、ランダム拡散板211bと前後の光波伝搬効果とを含めた位相変調光A’の位相分布または強度分布を計算によって求め、この分布を、空間光変調器211aを用いて直接生成して出射するようにしても良い。
すなわち、ランダム拡散板211bなどの空間位相変調素子と前後の光波伝搬効果を含めた位相変調光A’を計算によって求め、この分布を空間光変調器211aによって直接生成する場合には、exp{jΦ}は計算上与える既知の位相分布または強度分布であるから、あらかじめ計測する必要は生じない。
また、これにより、ランダム拡散板211aなどの位相変調手段(または素子)を新たに付加する必要がなくなる。すなわち、記録光学系を簡単化することができる。このため、系全体の構成を簡単化することができる。
(ホログラム再生装置9b)・・・図22の(b)
図22の(b)に示すように、本実施形態のホログラム再生装置9b(ホログラム読出し過程)に使用される構成は、空間光変調器211a、レンズ212、記録媒質213、レンズ214および撮像素子(複素振幅検出手段)215である。
(空間光変調器211a)
ホログラム読出し過程では、空間光変調器211aは、参照光用リングに対応する参照光Eのみを出力(または表示)する。
(レンズ212、記録媒質213、レンズ214)
レンズ212および記録媒質213については上記のとおりである。レンズ214は、コリメータレンズであり、記録媒質213を透過した透過光(回折光D)をコリメートして、撮像素子215に入射させるものである。
(撮像素子215)
撮像素子215は、記録媒質213を透過する透過光の複素振幅の分布(2次元情報)を位相検出法によって計測(検出する)ものである。撮像素子215は、上述した撮像素子13と同様に、例えば、CCDおよびCMOSなどを用いることができる。この検出においては、元の信号(データページP1〜Pm)が強度のみの情報を有する場合でも、位相と強度とを含む複素振幅を計測する必要がある。位相検出方法としては、例えば、特許文献1に開示された方法を用いることができる。
次に、本実施形態では、撮像素子215により計測された複素振幅を用いて以下では、図示しない計算機内の処理によってデジタル位相共役再生過程が行われるようにしている。
より具体的には、デジタル位相共役再生では、検出された複素振幅(以下、「複素振幅A’’」という)を用いて以下の計算を行う。
検出された複素振幅A’’の位相共役(A’’)*を計算し、これを撮像素子215の位置に表示したものと仮定して同図の左側に光波伝搬した場合の複素振幅を計算する。この計算を行うと、対応する光学モデルでは、ランダム拡散板211bの直前において、再生された光波の複素振幅は、再生信号(A’)*とノイズ成分を加えたものになっている。
ここで、(A’)*=A*exp{−jΦ}であるから、これが、ランダム拡散板211bを再透過すると、位相exp{Φ}が加えられ、透過後の信号成分A*exp{−jΦ}exp{jΦ}=A*となり信号A*が復調される。
これに対して、ノイズ成分は、ランダム拡散板211bにおいて位相exp{jΦ}が加えられることによって、ランダムに拡散し、その多くが信号領域の外部に分離されることによってノイズの低減が実現できる。
このように、通常のホログラム再生手順で再生された信号光の複素振幅を検出することにより、図22の(a)に示すランダム拡散板211bによる処理はデジタル的(コンピュータ内の処理)に行うことができ、付加的な光学系は不要となる。
また、ランダム拡散板211bなどの空間位相変調素子を実際に設置して記録する場合には、上記の計算を行うために、ランダム拡散板211bの透過特性exp{jΦ}(透過関数)をあらかじめ計測しておく必要がある。しかしながら、空間位相変調素子として空間光変調器など電気的に特性(位相値)を制御できる素子を用いる場合には、空間位相変調素子の特性は既知であるから、事前計測の必要はない。また、上述したように、ランダム拡散板211bと前後の光波伝搬効果を含めた位相変調光A’の強度分布または位相分布を計算によって求め、この分布を空間光変調器211aによって生成する場合には、exp{jΦ}は計算上与える既知の強度分布または位相分布であるから、あらかじめ計測する必要は生じない。
以上によれば、記録時および/または再生時にランダム拡散板などの新たな光学素子を付加することなく、デジタル位相共役再生技術によって簡素な光学系を保ちながらも、データページ間(単位情報間)のクロストーク(以下、ページ間クロストークという)を大幅に低減することが可能となる。
また、上記のように、ノイズ成分としてのページ間クロストーク成分も広範囲に拡散して再生成分から分離されるため、記録媒質213にデータページを記録できる情報量密度、記録媒質213からデータページを再生できる情報量密度、対象物の透過光に含まれる画像計測により単位情報を計測可能な情報量密度を圧倒的に向上させることができる。
よって、従来よりも記録、再生または計測時における実情報量密度を潜在的情報量密度に近づけることができる。ここに、対象物に単位情報を記録できる単位体積当たりの情報量、対象物から単位情報を再生できる単位面積当たりの情報量、光を照射した対象物の透過光に含まれる画像計測により単位情報を計測可能な単位体積当たりの情報量を情報量密度と称する。
(図22に示す形態の適用範囲について)
なお、以上の説明では、ホログラム記録媒体の再生時におけるノイズ成分の除去に関する形態について説明したが、図22に示す形態はこのような形態に限定されない。例えば、図22に示す形態は、画像計測装置などに応用することも可能である。この画像計測装置では、上記の空間位相変調光学系211(または空間光変調器211a)を備え、位相変調光A’を観測試料(対象物)に照射するように構成する。また、この画像計測装置では、上記の空間位相変調光学系211(または空間光変調器211a)を備え、位相変調光A’が照射された観測試料から出射される出射光の複素振幅に対して、または、上記の参照光Eが照射された観測試料から出射される位相変調光A’の位相共役光を含む出射光に対して、ランダム拡散板211bと同一の位相変調処理を行うことで、出射光からノイズ成分を除去するように構成しても良い。さらに、この画像計測装置では、位相変調光A’が照射された観測試料から出射される出射光を用いて、または、上記のノイズ成分を除去した光を用いて2次元情報(位相分布または強度分布)を生成する処理を行うように構成しても良い。
<本発明の一態様による効果>
上述した本発明の一態様によれば、光学とエレクトロニクスとの完全な融合を提供する。特に本発明の一態様に係る複素振幅画像の再生過程と位相検出器による複素振幅計測とを組合せた場合、超並列性を持つ光学処理と柔軟性を持つ電子処理との間を目的に応じて自由に移動することが可能となる。そのため、新たな機能や性能を有する独創的な新規デバイスを創出できる。また、本発明をホログラフィックメモリに応用する場合、多値強度と多値位相とを組み合わせた直交振幅変調信号の使用が可能になり、大幅な記録密度拡大が容易に期待できる。この他、ホログラフィックメモリにおける複雑な光学処理の一部を電子的処理に任せた後、処理後の光波分布を本発明の一態様に係る実光学系上に表現することで、大幅な系の簡略化も可能になる。また、本発明の一態様と位相検出器とを組み合わせることで、信号光分布に対する符号化または復号化処理を付加的な光学素子無しに電子的に行うことが可能となるため、従来のホログラフィックメモリでは達成不可能な低ノイズを実現できる。On-axis型CGHの一種である上述のキノフォームは、不要な回折次成分無しに、100%の回折効率で所望の複素振幅場を得ることができる。しかし、この技術は「再生可能な空間がフーリエ空間近傍に限られる」という本質的な欠点を持っているため、数mmサイズの微小な2D像または3D像しか再生できない。一方の本発明の一態様によれば、ランダム拡散板11aなどを用いて「任意の空間」に散乱波面を生成できるため、従来技術における再生空間の制約を完全に排除することができる。すなわち、本発明の一態様によれば、「任意の空間」に「任意のサイズ」の2D像または3D像を再現でき、大画面ディスプレイが可能となる。なお、ここでいう、3D像とは、偏光などを用いて立体感を演出する疑似立体表示技術(現状の3Dテレビ)ではなく、光複素振幅分布(光複素振幅場)の正確な再生が可能なリアル3次元表示技術および同時多視点裸眼立体視技術である(たとえば、現状の3Dテレビでは、斜め方向から視た時に、隠れていた情報が視えるようなリアルな3D表示は不可能である)。
この他、図22に示す態様を利用する光断層撮影技術(光CT)にも本発明は大きく貢献できる。図9に示す断層撮影装置4は、物理的なランダム拡散板で生成した拡散光L1をSLM15で表示して生体試料OBの生体組織へ照射した後、反射拡散光L2にデジタル位相共役再生を施すことで、所定深さの断層情報のみを抽出している。本発明は、任意の複素振幅分布を生成可能な技術であるから、同図に示すように、断層撮影技術で必要とされる「物理的なランダム拡散板で生成した拡散光」の複素振幅分布を物理的なランダム拡散板を用いずに生成可能である。なお、比較例として、図24のランダム拡散板(拡散板)を用いた断層撮影装置401の構成を示す。図9に示す断層撮影装置4と図24に示す比較例の断層撮影装置401とを比較すると、本実施形態の断層撮影装置4によれば、レンズ1,2、拡散板を単一のSLMで置換できるので、不要な光学素子を排除することができる。
ここで、本発明の一態様に関し、その動作の確認を数値解析と実験との両面から行ったので、その結果について以下で説明する。
〔数値解析による動作確認〕
図10の「I.数値解析パラメータ」に数値解析で用いたパラメータを示しており、光源波長は532nm、複素振幅画像の領域は256×256(pixels)、SLMのピクセル数は画像領域の4×4倍に相当する1024×1024(pixels)と設定している。図2および図4は動作確認に用いた数値解析モデルを示し、図2は散乱位相画像の生成過程における数値解析モデルの一例を示す。一方、図4は複素振幅画像の再生過程における数値解析モデルの一例を示す。ここで、再生可能な複素振幅は、2D像および3D像のいずれであるかを問わないが、本数値解析では2D複素振幅画像(振幅分布と位相分布とを有する)を用いるものとする。
<散乱位相画像の生成過程>・・・図2
以下では、図2に沿って、数値解析の流れについて説明する。
(1)任意の複素振幅値を持つ2D画像を入力面ISにおいて生成する(S11)。
(2)この2D画像の光波にフーリエ変換を施したフーリエ変換分布を高速フーリエ変換(FFT)によって計算する(変換ステップ)。
(3)このフーリエ変換分布と計算機上で生成した拡散板の透過関数とを掛け合わせる(乗算する;S12)(乗算ステップ)。この拡散部材の透過関数の乗算は、FT面に拡散部材が配置されているという条件下で行う。なお、拡散部材がFT面からずれた位置に配置されている仮想光学系では、逆フーリエ変換像に対する拡散部材の透過関数の乗算を、拡散部材がFT面からずれた位置に配置されているという条件下で行っても良い。
(4)掛け合わされた光波分布に対して逆FFT(IFFT)を施すことで逆フーリエ変換を行い(逆変換ステップ)、出力面OSにおける散乱波面を求める(S13)。
(5)「散乱波面における位相分布は、元の複素振幅情報におけるほとんどの重要な特徴を有する」という仮定を基に、散乱波面における強度分布を一定にする(S14)。
(6)散乱位相波面の符号を反転(位相符号を反転)させることで、位相共役波面を持つ散乱位相画像を求める(S15)。
<複素振幅画像の再生過程>・・・図4
以下では、図4に沿って、数値解析の流れについて説明する。
(1)SLM面に上記過程で生成した散乱位相画像を表示(配置)する(S21)。
(2)SLM面における散乱位相画像の光波の逆フーリエ変換分布をIFFTにより求める(逆変換ステップ)。
(3)この逆フーリエ変換分布と拡散板の透過関数とを再度掛け合わせる(乗算する;S22)(乗算ステップ)。この拡散部材の透過関数の乗算は、FT面に拡散部材が配置されているという条件下で行う。なお、拡散部材がFT面からずれた位置に配置されている仮想光学系では、逆フーリエ変換像に対する拡散部材の透過関数の乗算を、拡散部材がFT面からずれた位置に配置されているという条件下で行っても良い。
(4)掛け合わされた光波分布をFFTによってフーリエ変換することで、再生面における2D画像を求める(S23)(変換ステップ)。
図11は、本発明に係る強度画像および位相画像の例を示す図である。図11の(a)は、散乱位相画像の生成過程における入力像の強度画像(元の強度画像)の一例を示し、図11の(b)は、散乱位相画像の生成過程における入力像の位相画像(元の位相画像)の一例を示す。また、図11の(c)は、複素振幅画像の再生過程における再生像の強度画像(再生強度画像)の一例を示し、図11の(d)は、複素振幅画像の再生過程における再生像の位相画像(再生位相画像)の一例を示す。
図1に示す散乱位相画像の強度分布DSは一様に散乱し、図11の(a)に示す元の強度画像を全く判別できないことが分かる。散乱波面におけるこの強度分布は再生過程において一定と仮定され(図1のS1、図2のS14参照)、この散乱の一様さが再生品質を決定する。例えば、散乱強度画像において元の強度画像の特徴を残している、つまり、ランダム拡散板11aによる散乱が不十分である場合、再生強度画像の品質は大きく劣化する。図11の(c)および(d)は、それぞれ、散乱位相画像のみから再生した強度画像および位相画像を示している。図11によると、位相画像はほぼ完全に再生されているが、強度画像はわずかにノイズが混在している。これは、一定と仮定される散乱強度画像に一部の元の強度情報が残留していたためと考えられる。本発明者らによる解析により、本発明の一態様に係る複素振幅画像の再生過程における再生品質は、ランダム拡散板11aによる拡散角に大きく依存することが判明した。ここで、拡散角は、ランダム拡散板11aに平行な光が入射したときの出射光の強度が中心強度の1/2になる角度(全角)の半分の角度(半角)で定義される。
そこで、複素振幅画像の再生品質の拡散角依存性を図12に示す。再生品質の評価指標は以下の式によって表される規格化平均自乗誤差(NMSE:Normalized root mean square)を用いるものとする。
ここで、R(i,j)は再生画像を、S(i,j)は元画像を表している。また、NpxおよびNpyは、それぞれ、x方向およびy方向に沿う画像のピクセル数を示す。図12によると、再生強度画像のNMSEは拡散角を増加させるほど大幅に改善されることが分かる。この原因について本発明者らが鋭意検討した結果、これは拡散角の増加に伴い、散乱位相画像へ移動する元の強度情報が増すためと考えられることが判明した。
一方、再生位相画像に関しては、NMSEに大きな変化は無いことが観察できる。この原因について本発明者らが鋭意検討した結果、光波がランダム拡散板11aを透過した後も、元画像におけるほとんどの位相情報は散乱強度分布へ移らず、散乱位相分布に保持されていると考えられることが判明した。これらの結果は、光波における位相情報の重要性を示唆している。なお、図12では拡散角を5°までに設定しているが、より広い解析領域を用意することで、より大きな拡散角を設定することが可能になり、再生品質を改善できるものと考えられる。
〔実験による動作確認〕
次に、実際に図13に示す光学系5を試作し、その動作の確認を実験した結果について説明する。この動作確認の実験は、本発明をホログラフィックメモリに適用することを想定したものであるため、上述したように、ランダム拡散板11aによる位相変調および復調処理は全てコンピュータ上で行った。
したがって、同図に示すSLMへ表示される画像は、図2に示す解析モデルに従ってコンピュータ上で生成された散乱位相分布を使用した。今回の実験では、空間位相変調型のSLMにより生成された信号光は、二つの4f光学系(L1およびL2、ならびに、L3およびL4によって構成される)を介して位相検出面(CCD面;CCD1およびCCD2)に直接結像する。位相検出器はホログラフィックダイバーシティ干渉計(非特許文献7参照)を用いており、CCD面で位相検出された散乱位相画像は、実光学系からコンピュータ上に取り込まれる。最後に、図4の解析モデルに従った位相復調処理が施され、散乱位相画像のみから元の複素振幅値を持つ再生画像が得られる。ここで、本実験で用いた空間位相変調型のSLM(Hamamatsu社製のx10468)、およびCCD(Stingray社製のF125B)のピクセルサイズは、それぞれ、20μmおよび3.75μmと異なるため、焦点距離400mmと75mmのレンズで構成された縮小光学系を組み、両素子間のピクセルマッチングを行っている(図13参照)。
図14は、上記光学系5に関連する画像の例を示す図である。図14の(a)は、元の強度画像(強度2値;1:0.5)の一例を示し、図14の(b)は、元の位相画像(位相4値;0,π/2,π,3π/2)の一例を示す。次に、図14の(c)は、図2に示す解析モデルに従って生成されたSLM面に表示する散乱位相画像の一例を示し、図14の(d)は、CCD面で位相検出された計測位相画像の一例を示す。最後に、図14の(e)は、図4に示す解析モデルに従って再生された再生振幅画像の一例を示し、図14の(f)は、再生位相画像の一例を示す。
位相画像のみから元の強度情報と位相情報とが高い品質を持って復元されていることが観察できる。再生画像に含まれるムラはビームスプリッター等で発生するゴースト像と正像の干渉の結果である。したがって、ゴースト像が出現しないペリクルビームスプリーターを用いることでムラを無くすことができる。解像度の向上には、ピクセル数の多い位相検出器(CCD)を用いれば良い。さらに、あらかじめ、平面波をSLMに表示し、光学系を透過した平面波の位相を位相検出器によって計測し、この計測データを初期光学歪みとしてコンピュータ上に保存しておき、再生時の計測データから差し引くことで、参照光分布にムラがある場合や用いる光学素子に傷や歪みがある場合に生ずる再生品質の低下を防ぐことができる。
最後に、図15に再生画像の拡散角依存性を示す。図15を見ると、図12に示す数値解析結果と同様の傾向(拡散角Θdiffが大きいほど再生品質が高まる)を示していることが分かる。
〔情報処理への応用〕
本発明の一態様によれば、任意の空間に「元の像を再生」できるだけでなく、コンピュータ内で入力像に対して「変形や移動、回転などの任意の操作を加えた像も再生」できる。
例えば、野球グラウンドに白球が落ちているような像がある場合、本発明の一態様によれば、像の散乱波面をコンピュータ上に取り込むことさえできれば、野球グラウンドに白球が転々と転がっている様子を実空間上に表示できる。
以下に、この方法の具体的な手順を示す。
(1)実空間に存在する像の散乱波面を、位相検出器を通してコンピュータ上に取り込む。このとき、野球グラウンドに白球(操作対象となる物体)が落ちている像とは別に、背景の野球グランドのみから成る像の散乱波面も取得しておく。この様にすることで背景と物体の情報をコンピュータ上で独立して扱う。ここで、実空間に存在する画像を取り込む代りに、コンピュータ内で生成あるいは蓄積した画像情報を用いることもできる。さらに、背景画像と物体画像とを別々に用意することなく、画像処理技術によって1つの画像に含まれる背景から物体画像を抽出したデータを用いることもできる。
(2)取り込んだ散乱波面から、実空間ではなく、コンピュータ上で仮想的に背景画像と物体画像とをそれぞれ独立に再生する。
(3)コンピュータ上の再生空間において、再生物体画像を任意の位置ヘシフトし、シフト後の物体画像と背景画像とを重ね合わせる。
(4)重ね合わせによって生成された画像データをコンピュータ上の入力空間に配置し、重ね合わせた画像の散乱波面を再度計算する。
(5)上記した(3)および(4)の処理を繰り返すことで、白球の位置がそれぞれ異なる像の散乱波面を求める。
(6)各散乱波面をSLMに順々に表示することで、再生空間において、野球グラウンドに転がる白球を表現することができる。
ここで、元の像に移動操作を加えた像を再生できることを示すために数値解析を実際に行ったので、以下では、その結果について説明する。図16に本解析で用いた元画像を示す。
図16の(a)および図16の(b)は、それぞれ光波場における強度成分へ変調する背景画像(サッカーグラウンド)、および物体画像(サッカーボール)である。一方、図16の(c)および図16の(d)は、それぞれ光波場における位相成分へ変調する背景画像(野球グラウンド)、および物体画像(白球)である。
図17の(a)および図17の(b)は、それぞれ移動操作無しの再生画像を示しており、散乱位相画像のみから複素振幅値を持つ再生像が綺麗に表現されていることが分かる。図17の(c)および図17の(d)は、それぞれ物体を背景に対して左方向(負の符号で示す)へ200ピクセル分シフトした場合における再生画像である。同様に、図17の(e)および図17の(f)は、それぞれ物体を背景に対して右方向(正の符号で示す)へ200ピクセル分シフトした場合における再生画像である。
以上のように、本発明の一態様によれば、元の複素振幅像を再生できるだけでなく、必要に応じて元の複素振幅画像に対して、任意の操作を加えた画像も再生することが可能である。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る複素振幅画像再生装置は、散乱位相画像の光波を出力する少なくとも一つの空間光変調器(SLM15)と、入射された光波に対して逆フーリエ変換を施す逆変換レンズ(FTレンズ12)と、入射された光波を拡散する拡散部材(ランダム拡散板11a)と、を備え、上記拡散部材が上記逆変換レンズのフーリエ変換面または当該フーリエ変換面からずれた位置に配置されている構成である。
また、本発明の態様9に係る複素振幅画像再生方法は、散乱位相画像に対して逆フーリエ変換を施す逆変換ステップと、上記逆変換ステップにて生成される逆フーリエ変換像に対して拡散部材の透過関数を乗算する乗算ステップと、を含み、上記逆フーリエ変換像に対する上記拡散部材の透過関数の乗算を、上記逆フーリエ変換に係るフーリエ変換面または当該フーリエ変換面からずれた位置に上記拡散部材が配置されているという条件下で行う方法である。
上記構成または方法によれば、逆変換レンズの(または逆フーリエ変換に係る)フーリエ変換面または当該フーリエ変換面からずれた位置に拡散性の強い拡散部材を配置することで、フーリエ変換面の近傍に限定されず、あらゆる空間領域に散乱波面を作り出すことが可能である。従って、任意のサイズの再生像を任意の空間に再現することが原理的に可能になる。
より具体的には、上記構成または方法によれば、例えば、圧倒的に大きな自由度(奥行きおよびサイズ)を有する物体情報を含んだ複素振幅画像の生成が可能になる。このため、原理的に360°同時多視点裸眼立体視に対応可能であり、大きなサイズ、かつ、大きな視野角の複素振幅画像の再生が可能になる。さらに、上記構成または方法によれば、空間光変調器にホログラムではなく散乱位相画像を表示するため、空間光変調器の解像度や空間光変調器への入射光のエネルギーを効果的に活用できる(ほぼ100%のエネルギー利用効率)。これにより、入射光のエネルギーの損失がほとんど生じない複素振幅画像の再生方式を提供することができる。
また、本発明の態様2に係る複素振幅画像再生装置は、上記態様1において、上記逆変換レンズは、上記空間光変調器から出力された散乱位相画像の光波に対して逆フーリエ変換を施しても良い。
これにより、空間光変調器の情報を結像させる必要がある場合などに好適に使用できる複素振幅画像再生装置を実現できる。
また、本発明の態様3に係る複素振幅画像再生装置は、上記態様1または2において、上記逆変換レンズによる逆フーリエ変換像の光波が上記拡散部材で拡散されて生じた拡散光に対してフーリエ変換を施す変換レンズを備えていても良い。
また、本発明の態様9に係る複素振幅画像再生方法は、下記態様8において、上記乗算ステップにて上記逆フーリエ変換像に対して上記拡散部材の透過関数を乗算することによって生成される像に対してフーリエ変換を施す変換ステップを含んでいても良い。
これにより、空間光変調器の情報を結像させる必要がある場合などに好適に使用できる複素振幅画像再生装置または複素振幅画像再生方法を実現できる。
また、本発明の態様4に係る複素振幅画像再生装置は、上記態様3において、上記変換レンズによるフーリエ変換像から生成される複素振幅画像を表示する表示部を備えていても良い。
上記の構成によれば、任意のサイズの複素振幅画像の再生像を任意の空間に再現することができる表示装置を実現できる。
また、本発明の態様5に係る複素振幅画像再生装置は、上記態様4において、上記拡散部材で拡散されて生じた拡散光から生ずる複素振幅画像を表示する表示部が、上記拡散部材に対してフレネル領域またはフラウンホーファー領域に配置されていても良い。
上記構成によれば、拡散部材に対して表示部を任意の位置に配置することができる。すなわち、表示部による再生可能な領域を従来のキノフォームの再生可能な領域であるフーリエ変換面の近傍から全空間に拡張できる。例えば、上述した従来のキノフォームでは、数mm程度の非常に小さい再生像しか得られないのに対して、本発明の上記態様によれば、例えば、数10cm以上の複素振幅画像の再生が可能になる(100倍以上の拡大効果)。
また、本発明の態様6に係る複素振幅画像再生装置は、上記態様4または5において、上記表示部に表示される複素振幅画像の解像度が、上記空間光変調器から出力される散乱位相画像の解像度と等しくても良い。
これにより、任意の複素振幅画像を、空間光変調器の有する解像度と等しい解像度で生成可能になる。言い換えれば、本願の上記の態様により、空間光変調器の空間バンド幅と等価な複素振幅画像を取得可能(SLMの1ピクセルで、1ピクセルの複素振幅画像が生成される)である。
また、本発明の態様7に係る複素振幅画像再生装置は、上記態様1〜6において、上記空間光変調器は、光波の位相のみを出力する位相変調型の空間光変調器であっても良い。
上記構成によれば、ホログラムの代りに散乱位相画像の光波を空間光変調器から出射することができるので、空間光変調器に対する入射光のエネルギー、および、空間光変調器の空間バンド幅を全て所望の複素振幅画像の再生のみに費やすことができる。また、参照光の生成や不要な回折次成分の分離にかかる処理を省略することもできるため、動画再生や3Dディスプレイへの応用においては大きな優位性を持つ。
また、本発明の態様11に係る複素振幅画像再生方法は、上記態様9または10において、上記逆フーリエ変換像に対する上記拡散部材の透過関数の乗算を、上記逆フーリエ変換に係るフーリエ変換面に上記拡散部材が配置されているという条件下で行っても良い。
本発明者らの実験により、拡散部材がフーリエ変換面にあるときに、もっとも高い性能ができることが判明している。よって、上記の方法では、逆フーリエ変換像に対する拡散部材の透過関数の乗算を、逆フーリエ変換に係るフーリエ変換面に拡散部材が配置されているという条件下で行っている。
また、本発明の態様12に係る散乱位相画像生成装置は、光波を拡散する拡散部材と、複素振幅画像に由来する光波が上記拡散部材で拡散されて生じた拡散光に対して逆フーリエ変換を施す逆変換レンズと、上記逆変換レンズによる逆変換像の光波の散乱波面を解析して散乱位相画像を生成する画像生成部と、を備え、上記拡散部材が上記逆変換レンズのフーリエ変換面または当該フーリエ変換面からずれた位置に配置されている構成である。
また、本発明の態様15に係る散乱位相画像生成方法は、複素振幅画像に由来する光波に対して拡散部材の透過関数を乗算する乗算ステップと、上記乗算ステップにて上記複素振幅画像に由来する光波に対して上記拡散部材の透過関数を乗算することによって生成される像に対して逆フーリエ変換を施す逆変換ステップと、を含み、上記複素振幅画像に由来する光波に対する上記拡散部材の透過関数の乗算を、上記逆フーリエ変換に係るフーリエ変換面または当該フーリエ変換面からずれた位置に上記拡散部材が配置されているという条件下で行う方法である。
上記の構成または方法によれば、入力像(複素振幅画像)の入力可能な空間をフーリエ変換面の近傍から任意の空間に拡張することができる。このため、複素振幅画像の再生に好適に用いることのできる散乱位相画像を生成することができる。
また、本発明の態様13に係る散乱位相画像生成装置は、上記態様12において、上記複素振幅画像の光波が上記拡散部材で拡散される前に、当該複素振幅画像の光波に対してフーリエ変換を施す変換レンズを備えていても良い。
また、本発明の態様16に係る散乱位相画像生成方法は、上記態様15において、上記複素振幅画像の光波に対して上記拡散部材の透過関数を乗算する前に、当該複素振幅画像の光波に対してフーリエ変換を施す変換ステップを含んでいても良い。
上記構成または上記方法によれば、複素振幅画像の情報を結像させる必要がある場合などに好適に使用できる散乱位相画像生成装置または散乱位相画像生成方法を実現できる。
また、本発明の態様15に係る散乱位相画像生成方法は、上記態様13または14において、上記複素振幅画像に由来する光波または上記複素振幅画像の光波に対する上記拡散部材の透過関数の乗算を、上記逆フーリエ変換に係るフーリエ変換面に上記拡散部材が配置されているという条件下で行っても良い。
本発明者らの実験により、拡散部材がフーリエ変換面にあるときに、もっとも高い性能ができることが判明している。よって、上記の方法では、複素振幅画像に由来する光波または複素振幅画像の光波に対する拡散部材の透過関数の乗算を、逆フーリエ変換に係るフーリエ変換面に上記拡散部材が配置されているという条件下で行っている。
〔本発明の別の表現〕
また、本発明の態様は以下のように表現することもできる。
すなわち、本発明の一態様によれば、任意の光複素振幅場(必ずしも光波帯に限定されない電磁波の位相および振幅)を、単一の空間位相変調素子で、かつ、空間位相変調素子の有する解像度と等しい解像度で生成可能な方法を提供する。
また、本発明の一態様によれば、従来の方法と比較して、圧倒的に大きな自由度(奥行きおよびサイズ)を有する物体情報を含んだ光複素振幅場の生成が可能である。さらに、本発明の一態様によれば、入射光のエネルギー損失がほとんど生じない光複素振幅場の生成方式を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、散乱位相画像生成面のフーリエ変換領域に拡散性の強い媒体(ランダム拡散板など)を配置することで、原理上、あらゆる空間にある物体の散乱波面を作り出すことができるため、再生可能な領域を従来の「フーリエ変換面近傍」から「全空間」に拡張できる。
また、上述した従来のキノフォームでは、数mm程度の非常に小さい再生像しか得られないのに対して、本発明の一態様によれば、数10cm以上の3D画像再生が可能になる(100倍以上の拡大効果)。
さらに、本発明の一態様によれば、入射光エネルギーのほぼ100%が所望の回折光に費やされること、SLMの空間バンド幅と等価な複素振幅を取得可能(SLMの1ピクセルで、1ピクセルの複素振幅が生成される)であること、単一のSLMで実現できることも本発明の重要な特長と言える。
また、本発明の一態様によれば、複素振幅出力面のフーリエ変換面に拡散性の強い媒体(ランダム拡散板など)を配置することで、フーリエ変換面近傍に限定されず、あらゆる空間領域に散乱波面を作り出すことが可能である。従って、「任意のサイズ」の再生像を「任意の空間」に再現することが原理的に可能である(原理的には、360°同時多視点裸眼立体視に対応可能であり、大きなサイズ、かつ、大きな視野角の複素振幅再生を可能にする)。
また、本発明の一態様によれば、SLMにホログラムではなく位相画像を表示するため、SLMの解像度や入射光エネルギーを効果的に活用できる(ほぼ100%のエネルギー利用効率)。なお、本発明の一態様に使用される拡散性の強い媒体は、ランダム拡散板に限定されるものではなく、様々なタイプの空間位相変調素子を用いることができる。また、本発明の一態様に使用される「拡散性の強い媒体」は、利用用途によっては必ずしも物理的に配置する必要はなく、コンピュータ内の電子的な処理における仮想的な「拡散性の強い媒体」を用いることもできる。さらに、本発明の一態様に使用される空間位相変調素子は現行のSLMに限定されるものではなく、光の空間位相分布を生成できる様々なタイプの素子を用いることが可能である。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。