従来、例えば特許文献1、2のように左右のメインフレーム間にサスペンションクロスメンバを架設し、サスペンションクロスメンバの上方にエンジン等のパワーユニットを配置し、かつサスペンションクロスメンバにサスペンション装置のサスペンションアームを支持する車体構造が知られている。
この種の左右のメインフレームに架設されたサスペンションクロスメンバにパワーユニット及びサスペンションアームを支持する車体構造の一例を図6及び7を参照して説明する。
図6は車体前部の要部概要を示す斜視図であり、図6に示すように前後に延在する左右のメインフレーム101が配設される。各メインフレーム101は略水平で前後方向に延在する直線状の前部範囲101Aと、前部範囲101Aの後端101Abに連続して下方に傾斜するキックアップ部101B及びキックアップ部101Bの後方に連続して図示しないフロアフレームに連続する後部範囲101Cを備える。
左右のメインフレーム101の前端101Aaにそれぞれ所定値以上の衝撃荷重で軸圧潰するブラケット102を介して車幅方向に延在するバンパフレーム103が架け渡される。バンパフレーム103の前面に発泡材等によって形成された衝撃緩衝部材が配置され、衝撃緩衝部材の外表面を樹脂製のバンパフェイスによって被覆して車幅方向に延在するパンパを形成する。
左右のフロアフレームに上にフロアパネルが設けられ、フロアパネルの前端近傍がメインフレーム101のキックアップ部101Bに沿って上方に向かって延設し、その前端部に上方に延設してエンジンルームと車室とを区分するバルクヘッド部が形成される。
左右のメインフレーム101の前部範囲101Aの中間部にサスペンションクロスメンバ取付部101Acが形成され、左右のサスペンションクロスメンバ取付部101Acにサスペンションクロスメンバ105が架け渡される。
サスペンションクロスメンバ105は、扁平中空形状で上面に図示しないパワーユニットを支持する取付座面106が設けられる。サスペンションクロスメンバ102の端部に図示しないサスペンションアームの基端を揺動可能に支持する取付ブラケット107が設けられる。
一方、衝突等によってメインフレーム101の前端101Aaに前方から所定値以上の衝撃荷重が作用した際には、メインフレーム101の前部範囲101Aが、その前端101Aaから後端101Abに向かって漸次円滑に軸圧潰変形して衝撃エネルギを吸収することが好ましい。しかし、前部範囲101Aの中間部に形成されにサスペンションクロスメンバ取付部101Acが強固なサスペンションクロスメンバ102の取り付けによって剛性が極めて高くなり、軸圧潰変形に対する抗力が過大になり、該部範囲cの軸圧潰が阻害されて円滑な衝撃エネルギの吸収が阻害される。
この衝撃力、即ち加速度とクラッシュストロークとの相関を図6及び図7の加速度−クラッシュストローク相関図を参照して説明する。
衝突等により前方から所定値以上の衝撃荷重Pが作用すると、車体前方のバンパ及びブラケット102の範囲a、前部範囲101Aの前端101Aaとサスペンションクロスメンバ取付部101Acとの範囲b、サスペンションクロスメンバ105が取り付けられるサスペンションクロスメンバ取付部101Acの範囲c、サスペンションクロスメンバ取付部101Acと後端101Abとなるキックアップ部101Bとの範囲dが前方から漸次軸圧潰する。即ち、先ずバンパ及びブラケット102の範囲aが所定の加速度をもって軸圧潰し、続いて前部範囲101Aの前端101Aaからサスペンションクロスメンバ取付部101Acまでの範囲bが比較的小さな加速度をもって軸圧潰する。次に剛性が高く軸圧潰変形に対する抗力が極めて大きなサスペンションクロスメンバ取付部101Acの範囲cは圧潰変形することがなく、衝撃力が高められてサスペンションクロスメンバ取付部101Acと後端101Abとの範囲dが一気に大きな加速度、即ち大きな衝撃を伴って圧潰する。従って、サスペンションクロスメンバ取付部101Acの範囲cがいわゆる潰れ残りとなり良好なクラッシュストロークが確保できず、十分な衝撃エネルギの吸収が得られず乗員への衝撃が大きくなる。
上記車体構造によると、左右のメインフレーム101の間に比較的幅が広く剛性の高いサスペンションクロスメンバ102が架設され、該部範囲の剛性が高くなり、衝突等により前方から所定値以上の衝撃荷重が入力された際、サスペンションクロスメンバ取付部101Acの範囲cがいわゆる潰れ残りとなり良好なクラッシュストロークが確保できず、十分な衝撃エネルギが吸収が得られなくなり、乗員への衝撃が大きくなることが懸念される。
かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、円滑なメインフレームの軸圧潰及び十分なクラッシュストロークが確保されて衝撃エネルギの吸収ができる安全性に優れた車体構造を提供することにある。
上記目的を達成する請求項1の車体構造は、軸圧潰により衝撃エネルギを吸収する左右のメインフレーム及び左右のアッパフレームを備え、該左右のメインフレーム間にパワーユニットが配置される車体構造において、車幅方向に延在して前記左右のアッパフレーム間に架設されたサスペンションクロスメンバと、該サスペンションクロスメンバの左右にそれぞれ設けられ、板面が車体前後方向を向く板状のサスペンション支持部材とを備え、該サスペンション支持部材は、車幅方向に延在して前記サスペンションクロスメンバに結合される上縁部と、該上縁部から下方に延在して下端にサスペンション支持部を有すると共に前記メインフレームに結合される外側縁部と、前記上縁部と前記サスペンション支持部との間に位置するパワーユニット支持部を有することを特徴とする。
これによると左右のアッパフレームに架設されたサスペンションクロスメンバとメインフレームとに掛け渡されて支持された板状のサスペンション支持部材によってパワーユニット及びサスペンション装置が強固に支持されると共に、メインフレームとサスペンション支持部材との結合による剛性増大範囲が抑制されて十分なクラッシュストロークが得られ、メインフレームの軸圧潰変形による良好な衝撃エネルギの吸収が得られる。
請求項2の発明は、軸圧潰により衝撃エネルギを吸収する左右のメインフレーム及び左右のアッパフレームを備え、該左右のメインフレーム間にパワーユニットが配置される車体構造において、車幅方向に延在して前記左右のアッパフレーム間に架設されたサスペンションクロスメンバと、該サスペンションクロスメンバの左右にそれぞれ設けられた板状のサスペンション支持部材とを備え、該サスペンション支持部材は、車幅方向に延在して前記サスペンションクロスメンバに結合される上縁部と、該上縁部から下方に延在して下端にサスペンション支持部を有すると共に前記メインフレームに結合される外側縁部と、前記上縁部と前記サスペンション支持部との間に位置するパワーユニット支持部と、該パワーユニット支持部から放射状に延在して前記上縁部及び前記外側縁部に結合される複数のリブとを備えたトラス形状であることを特徴とする。
これによると、サスペンション支持部材が剛性強度に優れたトラス形状に構成されると共に、パワーユニット支持部が放射状に配置された各リブによってサスペンションクロスメンバ及びメインフレームに結合される上縁部及び外側縁部に連結され、パワーユニットの支持剛性が確保できる。一方、衝撃力が付与されてパワーユニットが移動した際に、パワーユニット支持部を介して各リブに衝撃が付与されて各リブが破損乃至変形してパワーユニットが開放された下方に脱落してメインフレームと干渉することなく、メインフレームの円滑な軸圧潰が確保できる。
請求項3の発明は、請求項2の車体構造において、前記複数のリブは、前記パワーユニット支持部をそれぞれ前記上縁部の外方端及び内方端に連結する上部内側リブ及び上部外側リブと、前記パワーユニット支持部と前記外側縁部の下端とを連結する下部側リブであることを特徴とする。
これによると、パワーユニット支持部に放射状に配置された上部内側リブが上縁部の端部に連結され、上部外側リブが上縁部と外側縁部との接続部に連結され、下部側リブが外側縁部の下端に結合されてサスペンション支持部材の剛性強度が確保されてパワーユニット支持部の剛性が確保されてパワーユニットの支持剛性が得られる。一方、衝撃力が付与されてパワーユニットが移動した際に、上部内側リブ、上部外側リブ、下部側リブの各リブが破損乃至変形してパワーユニットを脱落させる。
上記目的を達成する請求項4の車体構造は、軸圧潰により衝撃エネルギを吸収する左右のメインフレーム及び左右のアッパフレームを備え、該左右のメインフレーム間にパワーユニットが配置される車体構造において、車幅方向に延在して前記左右のアッパフレーム間に架設されたサスペンションクロスメンバと、該サスペンションクロスメンバの左右にそれぞれ設けられ、車幅方向に延在して前記サスペンションクロスメンバに結合される上縁部と、該上縁部から下方に延在して下端に前側サスペンション支持部を有すると共に前記メインフレームに結合される外側縁部と、前記上縁部と前記前側サスペンション支持部との間に位置する前側パワーユニット支持部を有する板状の前側サスペンション支持部材と、前記サスペンションクロスメンバの左右にそれぞれ設けられ、車幅方向に延在して前記サスペンションクロスメンバに結合される上縁部と、該上縁部から下方に延在して下端に後側サスペンション支持部を有すると共に前記メインフレームに結合される外側縁部と、前記上縁部と前記後側サスペンション支持部との間に位置する後側パワーユニット支持部を有し、板状で前記前側サスペンション支持部材と対向配置される後側サスペンション支持部材とを備え、対向する前記前側パワーユニット支持部と前記後側パワーユニット支持部との間でパワーユニットを支持し、対向する前記前側サスペンション支持部と前記後側サスペンション支持部との間でサスペンションアームを支持することを特徴とする。
これによると、左右のアッパフレームに架設されたサスペンションクロスメンバ及びメインフレームに支持されて対向配置された板状の前側サスペンション支持部材及び後側サスペンション支持部材によってパワーユニット及びサスペンションアームの支持が得られると共に、メインフレームの前側サスペンション支持部材及び後側サスペンション支持部材との結合部による剛性増大範囲が抑制されてクラッシュストロークが得られ、メインフレームの軸圧潰による良好な衝撃エネルギの吸収が確保できる。
請求項5の発明は、請求項4の車体構造において、前記前側サスペンション支持部材は、車幅方向に延在して前記サスペンションクロスメンバに結合される上縁部と、該上縁部の外方端から下方に延在して下端に前側サスペンション支持部を有すると共に前記メインフレームに結合される外側縁部と、前側パワーユニット支持部と、該前側パワーユニット支持部から放射状に延在して前記上縁部及び前記外側縁部に結合される複数のリブとを備えたトラス形状であり、前記後側サスペンション支持部材は、車幅方向に延在して前記サスペンションクロスメンバに結合される上縁部と、該上縁部の外方端から下方に延在して下端に後側サスペンション支持部を有すると共に前記メインフレームに結合される外側縁部と、後側パワーユニット支持部と、該後側パワーユニット支持部から放射状に延在して前記上縁部及び前記外側縁部に結合される複数のリブとを備えたトラス形状であることを特徴とする。
これによると、前側サスペンション支持部材の前側パワーユニット支持部が放射状に配置された各リブによってサスペンションクロスメンバ及びメインフレームに結合される上縁部及び外側縁部に連結され、後側サスペンション支持部材の後側パワーユニット支持部が放射状に配置された各リブによってサスペンションクロスメンバ及びメインフレームに結合される上縁部及び外側縁部に連結されて、パワーユニットの支持剛性が確保できる。
一方、衝撃が付与されてパワーユニットが移動した際に、前側サスペンション支持部材の前側パワーユニット支持部を支持する各リブ及び後側サスペンション支持部材の後側パワーユニット支持部を支持する各リブが破損乃至変形してパワーユニットを下方に脱落させる。
本発明によると、左右のアッパフレームに架設されたサスペンションクロスメンバ及びメインフレームに支持された板状のサスペンション支持部材によってパワーユニット及びサスペンション装置の支持剛性が得られると共に、メインフレームのサスペンション支持部材との結合部による剛性増大の範囲が抑制されてクラッシュストロークが得られ、メインフレームの軸圧潰により良好な衝撃エネルギの吸収が確保できる。
以下、本発明による車体構造の一実施の形態を図1乃至図5を参照して説明する。なお、図1乃至4において矢印Fは車体前方方向を示す。
本実施の形態の説明にあたり、予め本実施の形態におけるパワーユニット50及びサスペンション装置60の概要を図4を参照して説明する。
パワーユニット50は、例えば縦置エンジン本体及びトランスミッションが一体にユニット化され、トランスミッションケース51の上部から左右に突出する一対のマウント部52を有し、マウント部52に設けられた円筒ブッシュ55を介して後述するサスペンション支持部材30を介して車体に吊り下げ支持される。
一方、サスペンション装置60は、サスペンションアーム62の先端が車輪Tを回転自在に支持するハウジング61の下端にボールジョイントにて結合され、サスペンションアーム62の基端は前後アームの二股に構成され、一方のアームが円筒ブッシュ等を介して車体側に上下揺動可能に軸着され、他方のアームが円筒ブッシュ65を介して後述するサスペンション支持部材30に軸着される。
ハウジング61の上部にはダンパ63a及びコイルスプリング63bを備えたストラット63が結合され、ストラット63の上端部はマウント部材を介して後述するストラットタワー8の上端部に回転自在に支持される。また、ハウジング61には、ステアリングギヤボックス66から突出するタイロッド67が連結される。これらパワーユニット50及びサスペンション装置60の詳細な説明は省略する。
図1は車体前部の概要を示す斜視図であり、図2はメインフレーム及びサスペンション支持部材等の骨格部材を主に示す車体前部の概要を示す斜視図、図3はサスペンション支持部の概要を示す要部分解斜視図、図4はサスペンション装置等を搭載した状態における図1のIII−III線断面図である。
図1に示すように、車体前部は車室AとエンジンルームBと区画するバルクヘッド1を有し、バルクヘッド1の両側端がそれぞれ上下方向に延在する左右のフロントピラ3に接合し、下端がフロアパネルの前端に連接する。
各左右のフロントピラ3の前方に中空形状のアッパフレーム5がエンジンルームBの左右上縁に沿って延在し、各アッパフレーム5の後端はそれぞれフロントピラ3に接合する。
一方、エンジンルームBの左右下縁に沿ってそれぞれ前後方向に中空形状で衝突等の際に軸圧潰変形により衝撃エネルギを吸収するメインフレーム10が延在する。左右の各メインフレーム10は、図1及び図2に示すようにエンジンルームBの下縁に沿って略水平で前後方向に延在する直線状の前部範囲10Aと、前部範囲10Aの後端10Abに連続すると共にバルクヘッド1の前面に沿って漸次下方に移行するように傾斜するキックアップ部10B及びキックアップ部10Bの後方に連続して図示しないフロアフレームに連続する後部範囲10Cを備える。
左右のメインフレーム10の前端10Aaにそれぞれ所定値以上の衝撃荷重で軸圧潰するブラケット11を介して車幅方向に延在するバンパビームとなるバンパフレーム12が架け渡される。バンパフレーム12の前面に図示しないポリプロピレン発泡材等によって形成された衝撃緩衝部材が配置され、衝撃緩衝部材の外表面を樹脂製のバンパフェイスによって被覆して車幅方向に延在するパンパを形成する。
エンジンルームBの左右の側壁となるホイールエプロン7がアッパフレーム5とメインフレーム10との間に架設され、更にホイールエプロン7に重なるようにアッパフレーム5とメインフレーム10との間に、エンジンルームB内に膨出するストラットタワー8が架け渡される。このストラットタワー8はアッパフレーム5とメインフレーム10の間に架設されて支持されると共に前端部及び後端部がホイールエプロン7に重合して結合する。ストラットタワー8にサスペンション装置60のストラット63の上端がマウント部材を介して回転可能に支持され、ストラット63からのサスペンション入力荷重がこれら部材を介して車体全体に分散伝達され、サスペンション入力荷重に対する支持剛性が確保される。
左右のストラットタワー8の前側に車幅方向に延在して左右のアッパフレーム5間に架設されるサスペンションクロスメンバ21及びサスペンションクロスメンバ21の左右に複数のサスペンション支持部材30、本実施の形態では前後に対向配置される一対の前側サスペンション支持部材30Aと後側サスペンション支持部材30Bを備えたサスペンション支持構造20が設けられる。
このサスペンション支持構造20を図3及び図4を参照して説明する。図3はサスペンション支持構造20の要部分解斜視図であり、図4はサスペンション支持構造20の概要を示す図1のII−III線断面に相当する図である。
サスペンションクロスメンバ21は、上面22A、この上面22Aの前縁及び後縁に沿って下方に折曲して対向する前面22B、後面22Cを有する断面コ字状で車幅方向に延在する直線状のサスペンションクロスメンバ本体22と、サスペンションクロスメンバ本体22の上面22A、前面22B、後面22Cの各端部にそれぞれ連結する上面23A、前面23B、後面23Cを有する断面コ字状で車幅方向に延在してストラットタワー8に結合すると共にアッパフレーム5に結合するサスペンションクロスメンバブラケット23とによって構成される。
サスペンションクロスメンバ本体22の前面22Bの端部に前側サスペンション支持部材30Aの上縁部31Aを取付けるボルト取付孔24a、24aを有する前側取付部22Dが形成され、後面22Cの端部に後側サスペンション支持部材30Bの上縁部31Bの上縁部31Bを取付ける図示しないボルト取付孔24b、24bを有する後側取付部23Eが形成される。
前側サスペンション支持部材30Aは、図3に示すように、例えばアルミニウム系合金の押出成形材であって、前側サスペンション支持部36A及び前側パワーユニット支持部38Aを有する車体前後方向に比較的薄い略三角板状で、車幅方向に延在してサスペンションクロスメンバ本体22の前側取付部22Dに重合可能で車幅方向外方側の外方端31Aaから車幅方向中央側の内方端31Abに直線状で延在する上縁部31A、上縁部31Aの外方端31Aaから下方に延在してメインフレーム10の前部範囲10Aから更に下方に突出した下端32Aaに前側サスペンション支持部36Aを有する外側縁部32Aを有する。上縁部31Aの内方端31Abと外側縁部32Aの下端32Aaとの間に前側パワーユニット支持部30Aを有し、この前側パワーユニット支持部38Aから放射状に延在して上縁部31Aの内方端31Abとの間に架設される上部内側リブ33Aと、前側パワーユニット支持部38Aから放射状に延在して上縁部31Aの外方端31Aaと外側縁部32Aとの連続部との間に架設される上部外側リブ34Aと、前側パワーユニット支持部38Aとから放射状に延在して外側縁部32Aの下端32Aaとの間に架設される下部側リブ35Aとを有する軽量で剛性強度に優れたトラス状に構成される。外側縁部32Aにメインフレーム10の前部範囲10Aにおける前後方向中間部にエンジンルームB側から当接して図示しないブラケット等を介して結合される取付部32Abが形成される。
上縁部31Aの外方端31Aa及び内方端31Abにサスペンションクロスメンバ21の前側取付部22Dに形成されたボルト取付孔24a及び24aに対応するボルト取付孔31a、31aを有する。
前側サスペンション支持部36Aは、サスペンションアーム62の基端に配設された円筒ブッシュ65の筒部66の前端が当接する筒状乃至ボス状であって、円筒ブッシュ65の筒部66を挿通する取付ボルト42aが前後方向に貫通するボルト貫通孔37を有する。
前側パワーユニット支持部38Aは、パワーユニット50のトランスミッションケース51に突設形成されたマウント部52に配設された円筒ブッシュ55の筒部56の前端が当接する筒状乃至ボス状であって、筒部56を挿通する取付ボルト41aが前後方向に貫通するボルト貫通孔39を有する。更にボルト貫通孔39には予め設定された以上の衝撃荷重付加によって開口変形して取付ボルト41aを脱落させる脆弱部となるスリット39aが形成される。
後側サスペンション支持部材30Bは、前側サスペンション支持部材30Aと同様の形状のアルミニウム系合金の押出成形材であって、サスペンションクロスメンバ本体22の後側取付部23Eに重合可能で外方端31Baから内方端31Bbに延在する上縁部31B、上縁部31Bの外方端31Baから下方に延在して下端32Baに後側サスペンション支持部36Bを有する外側縁部32Bを有する。上縁部31Bの内方端31Bbと外側縁部32Bの下端32Baとの間に後側パワーユニット支持部38Bを有し、この後側パワーユニット支持部38Bと上縁部31Bの内方端31Bbとの間に架設される上部内側リブ33Bと、後側パワーユニット支持部38Bと上縁部31Bの外方端31Baと外側縁部32Bとの連続部に架設された上部外側リブ34Bと、後側パワーユニット支持部38Bから放射状に延在して後側サスペンション支持部36Bを有する外側縁部32Bの下端32Baとの間に架設された下部側リブ35Bとを有する軽量で剛性強度に優れたトラス形状に構成される。外側縁部32Bにフレーム10の前部範囲10Aに前側サスペンション支持部材30Aに隣接してエンジンルームB側から当接してブラケット等を介して固定される取付部32Bbが形成される。
上縁部31Bの外方端31Ba及び内方端31Bbにサスペンションクロスメンバ本体22の後側取付部23Eに形成されたボルト取付孔24b、24bに対応するボルト取付孔31b、31bを有する。
後側サスペンション支持部36Bは、サスペンションアーム62の基端に配設された円筒ブッシュ65の筒部66の後端が当接する筒状乃至ボス状であって、筒部66を挿通する取付ボルト42aが前後方向に貫通するボルト貫通孔37を有する。
後側パワーユニット支持部38Bは、トランスミッションケース51に突設形成されたマウント部52に配設された円筒ブッシュ55の筒部56の後端が当接する筒状乃至ボス状であって、筒部56に挿通する取付ボルト41aが前後方向に貫通するボルト貫通孔39を有する。更にボルト貫通孔39には予め設定された以上の衝撃によって開口変形して取付ボルト41aを脱落させる脆弱部となるスリット39aが形成される。
このように構成された前側サスペンション支持部材30Aは、上縁部31Aをサスペンションクロスメンバ本体22の前側取付部22Dに重ね、ボルト取付孔24a、31a及びボルト取付孔24b、31aにそれぞれ挿入される図示しない取付ボルト及び該取付ボルトに螺合するナット等によってサスペンションクロスメンバ21に締結し、かつ外側縁部32Aの取付部32Abをメインフレーム10の前部範囲10Aに図示しないブラケット等を介して固定する。これによる前側サスペンション支持部材30Aは、上縁部31Aが左右のアッパフレーム5に架け渡されたサスペンションクロスメンバ21に結合され、下端がメインフレーム10に結合してサスペンションクロスメンバ21とメインフレーム10とに架設支持される。
同様に、後側サスペンション支持部材30Bは、前側サスペンション支持部材30Aの後方に間隔をおいて対向して、その上縁部31Bをサスペンションクロスメンバ本体22の後側取付部22Eに重ね、ボルト取付孔24b、31b及びボルト取付孔24b、31bにそれぞれ挿入される図示しない取付ボルト及び該取付ボルトに螺合するナット等によってサスペンションクロスメンバ21に締結し、かつ外側縁部32Bの図示しない取付部32Bbをメインフレーム10の前部範囲10Aに図示しないブラケット等を介して固定する。これによる前側サスペンション支持部材30Bは、上縁部31Bが左右のアッパフレーム5に架け渡されたサスペンションクロスメンバ21に結合され、下端が前側サスペンション支持部材30Aに接近してメインフレーム10に結合支持される。
この同軸上で対向する前側サスペンション支持部材30Aの前側パワーユニット支持部37Aと後側サスペンション支持部材30Bの後側パワーユニット支持部37Bとの間に、トランスミッションケース51に突設形成されたマウント部52に配設された円筒ブッシュ55を挿入する。この前側パワーユニット支持部38Aのボルト貫通孔39、円筒ブッシュ55の筒部56、後側パワーユニット支持部38Bのボルト貫通孔39に挿入して貫通する取付ボルト41a及び該取付ボルト41aに螺合するナット41b等によってマウント部52を前側サスペンション支持部材30Aの前側パワーユニット支持部37Aと後側サスペンション支持部材30Bの後側パワーユニット支持部37Bに軸支する。
同様に、メインフレーム10の近傍において同軸上で対向する前側サスペンション支持部材30Aの前側サスペンション支持部36Aと後側サスペンション支持部材30Bの後側サスペンション支持部36Bとの間に、ハウジング61に連結されたサスペンションアーム62の基端に配設された円筒ブッシュ65を挿入する。この前側サスペンション支持部36Aのボルト貫通孔37、円筒ブッシュ65の筒部66、後側サスペンション支持部36Bのボルト貫通孔37に挿入して貫通する取付ボルト42a及び該取付ボルト42aに螺合するナット42b等によってサスペンションアーム62の基端を揺動可能に前側サスペンション支持部材30Aの前側パワーユニット支持部37Aと後側サスペンション支持部材30Bの後側パワーユニット支持部37Bに軸支する。
これにより、パワーユニット50から取付ボルト41bを介して前側サスペンション支持部材30Aに前側パワーユニット支持部38Aに入力された荷重は、各放射状に配置された上部内側リブ33A、上部外側リブ34A及び下部側リブ35Aを介して前側サスペンション支持部材30A全体に分散伝達されサスペンションクロスメンバ21及びメインフレーム10等に分散支持される。同様に取付ボルト41bを介して後側サスペンション支持部材30Bに後側パワーユニット支持部38Bに入力された荷重を各放射状に配置された上部内側リブ33B、上部外側リブ34B及び下部側リブ35Bを介して後側サスペンション支持部材30B全体に分散伝達されサスペンションクロスメンバ21及びメインフレーム10等に分散支持されてパワーユニット50の支持剛性が確保される。
このようにして左右に離間したそれぞれの前側サスペンション支持部材30Aの前側パワーユニット支持部38A及び後側サスペンション支持部材30Bの後側パワーユニット支持部38Bにマウント部52が円筒ブッシュを介して取り下げ支持されたパワーユニット50は、車体前後方向の回転軸に対するパワーユニット50の反力、いわゆるローリング力が受け止められる。一方、衝突等でパワーユニット50に前方から過大な衝撃荷重が入力されてパワーユニット50が後退移動した際には、パワーユニット50の後方移動に伴ってパワーユニット50を支持する前側パワーユニット支持部38A及び後側パワーユニット支持部38Bが後方に押動され、前側パワーユニット支持部38Aを支持する上部内側リブ33A、上部外側リブ34A、下部側リブ35A等に衝撃が付与されて各リブが変形或いは破断し、或いは取付ボルト41aによりスリット39aが開口して取付ボルト41aが抜け出して脱落し、同様に後側パワーユニット支持部38Bを支持する上部内側リブ33B、上部外側リブ34B、下部側リブ35B等の各リブが変形或いは破断或いはスリット39aが開口して取付ボルト41aが抜け出して脱落し、パワーユニット50の車室A方向への移動が抑制できると共にパワーユニット50を開放された下方に脱落させる。
一方、前側サスペンション支持部材30A及び後側サスペンション支持部材30Bが前後方向に薄い板状で前後に隣接配置され、メインフレーム10の前部範囲10Aに形成される前側サスペンション支持部材30A及び後側サスペンション支持部材30Bの取付部10Acの範囲cが軸方向に狭く、前側サスペンション支持部材30A及び後側サスペンション支持部材30Bの取り付けによるメインフレーム10の剛性が高くなる範囲が極めて小さく設定されることから、クラッシュストロークが十分確保でき、衝突等によってメインフレーム10の前端10Aaに前方から所定値以上の衝撃荷重が作用した際には、メインフレーム10の前部範囲10Aが、その前端10Aaから後端10Abに向かって漸次円滑に軸圧潰して衝撃エネルギを吸収する。
この衝撃力、即ち加速度とクラッシュストロークとの相関を図2及び図7の加速度−クラッシュストローク相関図を参照して説明する。
衝突等により前方から所定値以上の衝撃荷重Pが作用すると、先ずバンパ及びブラケット11の範囲aが所定の加速度をもって軸圧潰し、続いて前部範囲10Aの前端10Aaから前側サスペンション支持部材30A及び後側サスペンション支持部材30Bの取付部10Acまでの範囲bが比較的小さな加速度をもって軸圧潰する。次に、前側サスペンション支持部材30A及び後側サスペンション支持部材30Bの結合によって剛性が高められた取付部10Acの範囲cは極めて狭い範囲であり、衝撃力が増大することなく、続いてクラッシュストロークが十分確保された前側サスペンション支持部材30A及び後側サスペンション支持部材30Bの取付部10Acと後端10Abとの範囲dが比較的小さな加速度、即ち比較的小さな衝撃を伴って圧潰する。従って、前側サスペンション支持部材30A及び後側サスペンション支持部材30Bの取付部10Acの極めて狭い範囲cのみが潰れ残りとなり良好なクラッシュストロークが確保でき、十分な衝撃エネルギの吸収が得られ乗員への衝撃が抑制されて安全性が向上する。
更に、パワーユニット50の前方から過大な衝撃荷重が入力されてパワーユニット50が後退した際には、前側パワーユニット支持部38A及び後側パワーユニット支持部38Bの後方移動に伴って前側パワーユニット支持部38Aを支持する上部内側リブ33A、上部外側リブ34A、下部側リブ35A等に衝撃が付与されて各リブが変形或いは破断或いはスリット39aが開口して取付ボルト41aが抜け出して脱落し、同様に後側パワーユニット支持部38Bを支持する上部内側リブ33B、上部外側リブ34B、下部側リブ35B等の各リブが変形或いは破断或いはスリット39aが開口して取付ボルト41aが抜け出して脱落することで、パワーユニット50がメインフレーム10の軸圧潰に影響することなく良好なメインフレーム10の軸圧潰変形が確保されて良好な衝撃エネルギの吸収が確保できる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では前側サスペンション支持部材30Aと後側サスペンション支持部材30Bの2枚のサスペンション支持部材を積層配置したが、要求剛性に応じて更にサスペン支持部材を積層配置することもできる。
また、上記実施の形態では各サスペンション支持部材においてパワーユニット支持部から放射状に上部内側リブ、上部外側リブ、下部側リブの3本のリブを配置したが、リブを他の複数配置することもできる。また、各リブの衝撃によって変形や破断を容易にする溝や孔、薄肉部等による脆弱部を形成することもできる。
更に、上記実施の形態では、車体前部の構造への適用例を説明したが、後部車体構造に適用するもできる。