始めに、実施例1のシート1の構成について、図1〜図7を用いて説明する。本実施例のシート1は、図1に示すように、自動車の運転席として構成されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えた構成となっている。上記シート1は、いわゆる「パワーシート」の構成となっており、シートバック2の背凭れ角度の調整やシートクッション3の着座位置の調整をそれぞれスイッチの操作による電動操作によって行うことができる構成となっている。
具体的には、シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、それぞれ、図示しない電動式のリクライナを介してシートクッション3の左右両サイドの後端部に連結された状態とされている。これにより、シートバック2は、常時は上述した図示しない各リクライナによってその背凭れ角度が固定された状態に保持され、図示しない電動スイッチの操作によって各リクライナを動作させることにより、その背凭れ角度が前後方向に調整される構成とされている。
また、シートクッション3は、車両のフロア上に、左右一対の電動式のスライドレール4を介して連結された状態とされている。これにより、シートクッション3は、常時は上述した各スライドレール4によってその着座位置が固定された状態に保持され、図示しない電動スイッチの操作によって各スライドレール4を動作させることにより、その着座位置が前後方向に調整される構成とされている。
また、シートクッション3は、上述した左右一対のスライドレール4との間に、それぞれ電動式のシートリフタ5が介在して設けられた構成となっている。これにより、シートクッション3は、常時は上記シートリフタ5によってその着座高さ位置が固定された状態に保持され、図示しない電動スイッチの操作によってシートリフタ5を動作させることにより、その着座高さが上下方向に調整される構成とされている。また、シートクッション3は、その前部に、電動式のチルト機構6が備えられた構成とされている。これにより、シートクッション3は、常時は上述したチルト機構6によってその着座乗員の大腿部を支える前部の支持角度が固定された状態に保持され、図示しない電動スイッチの操作によってチルト機構6を動作させることにより、上記前部の支持角度が高さ方向に調整される構成とされている(図6参照)。
このように、シート1は、シートバック2の背凭れ角度の調整(前後2方向)と、シートクッション3の着座位置の調整(前後2方向と上下2方向)と、シートクッション3の前部の支持角度の調整(上下2方向)と、が可能ないわゆる「8ウェイ」と呼ばれる8方向の調整操作が可能な構成とされている。これらの調整操作は、シートクッション3の車両外側(図1の紙面向かって左側)の側部等の所定箇所に設けられた図示しない電動スイッチの操作によって行われるようになっている。
ここで、上述したシートクッション3は、図1〜図2に示すように、その内部の骨格を構成する金属製のクッションフレーム3Fと、クッションフレーム3Fに上方側から全体を覆うように被せ付けられて乗員の着座荷重を軟らかく受け止める発泡ウレタン製のクッションパッド3Pと、クッションパッド3Pの表面全体に被せ付けられた布製のクッションカバー3Cと、クッションフレーム3Fの枠内に組み付けられて乗員の着座荷重を支える支持体10と、を有して構成されている。ここで、クッションフレーム3Fが本発明の「シートフレーム」に相当する。
上述したクッションフレーム3Fは、図2〜図4に示すように、シートクッション3の外周形状に沿った四角枠形状に組まれた構成となっている。具体的には、クッションフレーム3Fは、左右一対のサイドフレーム3Faと、各サイドフレーム3Faの前端部間に架橋されて着座乗員の大腿部を下方側から支えるフロントパネル3Fbと、を有し、各サイドフレーム3Faの後端部間に金属製の丸パイプ(リヤパイプ5D)がシート幅方向に貫通して軸連結されていることにより、全体が平面視四角枠形状に組まれた構成とされている。
上述した各サイドフレーム3Faは、それぞれ、プレス加工された1枚の鋼板材により形成されており、前後方向に長尺な板形状にカットされて、互いに内向するシート内側に面を向けて配設された状態とされている。各サイドフレーム3Faは、それぞれ、それらの上縁部と下縁部とがシート内側に折り曲げられて、曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。
フロントパネル3Fbは、上述した各サイドフレーム3Faと同様に、プレス加工された1枚の鋼板材により形成されており、シート幅方向に長尺な板形状にカットされて、シート上方側に面を向けて配設された状態とされている。上記フロントパネル3Fbは、その前側の縁部や左右両側の縁部がそれぞれシート下方側に折り曲げられて、曲げや捩りに対する構造強度が高められていると共に、シート上方側や外周側にエッジを立たせない形に形成された構成とされている。また、フロントパネル3Fbは、そのシート幅方向の中央部の後側半分の領域部が、下方側に傾斜した形に形成されている。これにより、フロントパネル3Fbは、着座乗員の大腿部を前上がりの角度姿勢で支えることのできる形に形成された状態とされている。
上記フロントパネル3Fbは、その左右両側の各縁部に、シート後方側へ延びる長板形状のチルトパネル3Fcがそれぞれ結合されており、これらチルトパネル3Fcを介して回転軸3Fc1により各サイドフレーム3Faの前後方向の中間部に回転可能に軸連結された状態とされている。これにより、フロントパネル3Fbが、各サイドフレーム3Faに対して、上述した各回転軸3Fc1を中心に高さ方向に回動することができる状態に組み付けられた状態とされている。上記可動構造により、上述したフロントパネル3Fbを各サイドフレーム3Faに対して高さ方向に回転移動させて着座乗員の大腿部を支える支持角度を高さ方向に調整することが可能なチルト機構6が構成されている。上記チルト機構6は、図2の向かって左側に示された車両外側のサイドフレーム3Faの内側部に設けられた駆動装置6Aの駆動によって動作(チルト動作)するようになっている。
シートリフタ5は、左右一対のフロントリンク5Aと、左右一対のリヤリンク5Bと、各フロントリンク5Aの中間部同士を一体的に繋ぐフロントパイプ5Cと、各リヤリンク5Bの上端部同士を一体的に繋いでこれらを各側のサイドフレーム3Faに対して回転可能な状態に軸連結するリヤパイプ5Dと、車両外側のリヤリンク5Bに回転駆動力やブレーキ力を伝達するギヤ機構5Eと、を有する構成とされている。
上述した各フロントリンク5Aは、各側のサイドフレーム3Faの内側(シート内側)に配置されている。各フロントリンク5Aは、それらの上端部が、それぞれ、連結軸5A1によって各側のサイドフレーム3Faに回転可能に軸連結され、下端部が、それぞれ、連結軸5A2によって各側のスライドレール4の上部に回転可能に軸連結された状態とされている。そして、各フロントリンク5Aは、それらの中間部が、シート幅方向にクランク状に折り曲げられた形とされており、その折り曲げられた段差の各部分にフロントパイプ5Cの各側の端部が差し込まれて溶接により強固に一体的に結合された状態とされている。これにより、各フロントリンク5Aは、上述したフロントパイプ5Cを介して互いに一体的となって回動することができる状態とされており、曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。
各リヤリンク5Bも、各側のサイドフレーム3Faの内側(シート内側)に配置されている。各リヤリンク5Bは、それらの上端部が、それぞれ、リヤパイプ5Dを介して各側のサイドフレーム3Faに回転可能に軸連結され、下端部が、それぞれ、連結軸5B2によって各側のスライドレール4の上部に回転可能に軸連結された状態とされている。具体的には、上述したリヤパイプ5Dは、各側のサイドフレーム3Faとそれらの内側に配された各リヤリンク5Bの上端部とにシート幅方向に貫通して挿通されており、各サイドフレーム3Faに対しては単にシート幅方向に挿通されて回転可能に軸連結された状態とされ、各リヤリンク5Bの上端部に対しては溶接により強固に一体的に結合された状態とされている。これにより、各リヤリンク5Bは、上述したリヤパイプ5Dを介して互いに一体的となって回動することができる状態とされており、曲げや捩りに対する構造強度が高められた状態とされている。
そして、上記各リヤリンク5Bのうち、車両外側のリヤリンク5Bには、同リヤリンク5Bに回転駆動力を伝達するための駆動装置5Fを備えたギヤ機構5Eが連結されている。上記シートリフタ5は、上述したギヤ機構5Eから車両外側のリヤリンク5Bに伝達される回転駆動力やブレーキ力によって、各側のリヤリンク5Bやフロントリンク5Aが一斉に回転したり回転止めされたりして、シートクッション3の着座高さを変えたり固定したりするようになっている。
支持体10は、図2〜図4に示すように、クッションフレーム3Fの枠内に設けられており、その上部に組み付けられたクッションパッド3Pを下方側から広く面で支えて乗員の着座荷重を軟らかく受け止める構成となっている。上述した支持体10は、矩形状にカットされた可撓性面状の布材11と、布材11の後部領域(後述する支持面領域11A)を外周側から支える略U字形状に折り曲げられた外周枠12と、布材11の前縁部に通された芯部材13と、から構成されている。ここで、布材11が本発明の「面状部材」に相当する。
上述した布材11は、その後部領域(支持面領域11A)の左右両側部に形成された各サイド通し部11A1内に、外周枠12の前後方向に伸びる左右の支え部12Aがそれぞれ通された状態とされており、これら支え部12Aによる支持により後部領域(支持面領域11A)が張られた状態に保たれた構成とされている。上述した布材11の各サイド通し部11A1は、これらに外周枠12の各支え部12Aが裏側からあてがわれた状態で、各サイド通し部11A1の幅方向に延長されたひれ部を裏側に折り返して布材11の裏面部に袋状に縫い付けることにより、内部に外周枠12の各支え部12Aを前後方向に通した状態に縫製された状態とされている。
また、上述した布材11は、その前縁部に形成された前側通し部11B1内に、幅方向に真っ直ぐに伸びる棒状の芯部材13が通された状態とされており、上記芯部材13を介してクッションフレーム3Fのフロントパネル3Fb上に引掛けられて設けられた状態とされている。上述した布材11の前側通し部11B1は、同部に芯部材13が裏側からあてがわれた状態で、前側通し部11B1の前方側に延長されたひれ部を裏側に折り返して布材11の裏面部に袋状に縫い付けることにより、内部に芯部材13を幅方向に通した状態に縫製された状態とされている。
上述した布材11は、その外周枠12によって外周側から支えられた後部領域が、支持面領域11Aとして、外周枠12を介してクッションフレーム3Fの各側のサイドフレーム3Faやリヤパイプ5Dに取り付けられて支えられた状態とされている。また、布材11は、上記支持面領域11Aから前方側に延びる前部領域が、延出面領域11Bとして、上述した芯部材13を介してクッションフレーム3Fのフロントパネル3Fbに取り付けられて支えられた状態とされている。上記延出面領域11Bは、支持面領域11Aから前方側に延びた領域となっていることで、外周枠12単体の支持では支えられない(垂れ下がってしまう)領域となっている。ここで、上記クッションフレーム3Fの各側のサイドフレーム3Fa及びリヤパイプ5Dが本発明の「他方のフレーム片」に相当し、フロントパネル3Fbが本発明の「一方のフレーム片」に相当する。
外周枠12は、1本の鋼線材が平面視略U字形状に折り曲げられて形成されている。上記外周枠12は、その左右一対の前後方向に延びる支え部12Aの前側の端部と後側の端部とが、それぞれ、シート幅方向にクランク状に折り曲げられた形に形成された状態とされている(前側の折曲げ部12A1及び後側の折曲げ部12A2)。上述した前側の折曲げ部12A1は、各支え部12Aの前側の端部からシート幅方向の外側に斜め前方向きに折り曲げられた後、更に前方側に真っ直ぐに延びる形に折り曲げられたクランク形状とされている(図5参照)。また、後側の折曲げ部12A2は、各支え部12Aの後側の端部からシート幅方向の内側に折り曲げられた後、更に後方側に真っ直ぐに延びる形に折り曲げられたクランク形状とされている。
そして、上記外周枠12は、図2〜図4に示すように、上述した前後方向に真っ直ぐに延びる各支え部12Aが、上述した布材11の左右両側部に形成された各サイド通し部11A1内に通された状態に組み付けられて(縫製されて)、布材11の支持面領域11Aを両外側から支えた状態となっている。そして、上記外周枠12は、上述した各支え部12Aの後側の折曲げ部12A2の折り曲げられた先の端部に形成された下方側に湾曲する形の各フック部12Cが、クッションフレーム3Fのリヤパイプ5D上に上方側から嵌め込まれて組み付けられると共に、各支え部12Aの前側の折曲げ部12A1の折り曲げられた先の端部12Bが、部分的にシート幅方向に平たく押し潰された形とされて、各側のサイドフレーム3Faの内側面にあてがわれて溶接により強固に一体的に結合されて、クッションフレーム3Fに組み付けられた状態とされている(図5参照)。
これにより、上記外周枠12は、クッションフレーム3Fの各サイドフレーム3Faとリヤパイプ5Dとに取り付けられた状態として、布材11の後部領域(支持面領域11A)をクッションフレーム3Fに対して定位置で支えることができる状態に保持された状態とされている。具体的には、上記外周枠12は、上述した各フック部12Cがクッションフレーム3Fのリヤパイプ5D上に上方側から嵌め込まれて組み付けられた構成となっていることにより、リヤパイプ5Dがシートリフタ5の動作時に軸回転する動きを逃がせるように、各サイドフレーム3Faとリヤパイプ5Dとに跨って組み付けられた状態とされている。これにより、外周枠12は、互いに相対回転する各サイドフレーム3Faとリヤパイプ5Dとに跨って組み付けられた状態とされていても、シートリフタ5の動きを阻害することなく、布材11を定位置で支えた状態に保持することができる構成とされている。
上述した外周枠12の各支え部12Aは、それらの前側の折曲げ部12A1と後側の折曲げ部12A2との間のストレートな領域部の全域が、前述した布材11の各サイド通し部11A1内に通された状態として、布材11の支持面領域11Aを前後方向の広い範囲に亘って両外側から支持した状態となっている。そして、このような構成となっていることにより、外周枠12の各支え部12Aにより支えられた布材11は、その各サイド通し部11A1が、外周枠12の各支え部12Aの前側の折曲げ部12A1と後側の折曲げ部12A2とによって前後方向に位置ズレしないように規制された状態とされている。
芯部材13は、上述した外周枠12と同じ1本の鋼線材から形成されている。上記芯部材13は、上述した布材11の前側の縁部(前側通し部11B1)内に幅方向の全域に亘って通された状態とされており、同前側の縁部(前側通し部11B1)の所々の箇所に空けられた開口部から外部に露出した状態として設けられている。上述した芯部材13は、図2〜図4に示すように、上述した前側通し部11B1の所々の箇所から外部に露出する部位が、クッションフレーム3Fのフロントパネル3Fb上に切り起こされて形成された各掛爪3Fb1に前方側から引掛けられることにより、フロントパネル3Fb上に組み付けられた状態とされている。
上記芯部材13の引掛けにより、上述した布材11の外周枠12による支えのない前部領域(延出面領域11B)が、フロントパネル3Fbに組み付けられて支えられた状態とされている。詳しくは、上記布材11は、上記芯部材13を介した前側の縁部のフロントパネル3Fbへの引掛けにより、その前部領域(延出面領域11B)がフロントパネル3Fb上に乗り上がった状態として、フロントパネル3Fbと一続きの面形状を成すように繋がった状態に設けられた状態とされている。
上述した布材11の延出面領域11Bは、その前側の縁部が上述した芯部材13を介してフロントパネル3Fb上に取り付けられていることにより、クッションフレーム3Fが前述したチルト機構6の動作によってフロントパネル3Fbを各サイドフレーム3Faに対して上下動させる動きの影響を受ける構成とされている。具体的には、図6〜図7に示すように、上記布材11は、上述した外周枠12によって支えられた支持面領域11Aが各サイドフレーム3Faに組み付けられているのに対して、支持面領域11Aから外れた延出面領域11Bがフロントパネル3Fbに組み付けられていることにより、フロントパネル3Fbがチルト動作によって上下動することにより、延出面領域11Bが支持面領域11Aに対して高さ方向に動かされる構成となっている。
しかし、上記布材11は、上記の動きに対しては、延出面領域11Bがその可撓性によってフロントパネル3Fbの動きに追従して撓むことができるようになっており、フロントパネル3Fbのチルト動作を阻害することなく、フロントパネル3Fbと一続きに繋がった状態を維持することができるようになっている。詳しくは、上記布材11は、上記フロントパネル3Fbがチルト動作する動きに対して、延出面領域11Bが支持面領域11Aとの境界ライン11Cを折れ線にして傾斜角度を変化させる態様で撓み変形するようになっている。
上述した境界ライン11Cは、布材11の支持面領域11Aの左右両側部に形成された各サイド通し部11A1の前端側の縁部を繋ぐラインとなっており、外周枠12による支持がなされる部分(支持面領域11A)とそうでない部分(延出面領域11B)との境界を形成するラインとなっている。上記の境界ライン11Cは、図7に示すように、その前後方向の配設位置が、フロントパネル3Fbのチルト動作時の回転中心である回転軸3Fc1の直下位置に設定されている。
上記布材11は、それ自体の持つ伸縮性により、フロントパネル3Fbがチルト動作しても、フロントパネル3Fbと支持面領域11Aとの間で常に張った状態を維持することができるようになっている。なお、布材11は、伸縮性をもたない素材によって形成されていてもよい。その場合には、布材11がフロントパネル3Fbのチルト動作によって延出面領域11Bが突っ張りすぎた状態とならないように、延出面領域11Bを弛みをもたせた状態でフロントパネル3Fbと支持面領域11Aとの間に掛け渡しておくと良い。
上述した布材11は、その着座乗員の臀部を支える後部側の領域が、上述した支持面領域11Aとして、クッションフレーム3Fの各サイドフレーム3Faの下縁部に近い低い位置に配置された状態とされており、上述したフロントパネル3Fbがチルト動作しても各サイドフレーム3Faに対する位置が変化することなく一定の位置に保たれるようになっている。これに対して、上述した布材11の着座乗員の大腿部を支える前部側の領域は、上述した延出面領域11Bとして、その後側の縁部が上述した外周枠12により支えられた支持面領域11Aにより支えられ、前側の縁部がフロントパネル3Fbによって支えられた状態として設けられている。
これにより、布材11の延出面領域11Bは、フロントパネル3Fbがチルト動作することで、その後側の縁部(上述した境界ライン11C)を折れ線にしてフロントパネル3Fbの動きに合わせて形状を撓ませることができるようになっている。この撓み変形により、布材11は、フロントパネル3Fbがチルト動作しても一定位置に保持される支持面領域11Aと、チルト動作により高さ位置が変化するフロントパネル3Fbとの間を、延出面領域11Bによって滑らかに繋いだ形を保ちながらフロントパネル3Fbの動きを逃がすことができるようになっている。
上述した支持体10は、シートクッション3に乗員の着座荷重がかけられることにより、布材11の支持面領域11Aや延出面領域11Bにおいてその荷重を受けて、布材11を伸張させたり布材11の支持面領域11Aを支える外周枠12を撓ませたりしながら、その荷重を軟らかく受け止めるようになっている。
次に、図2を参照して、クッションパッド3Pの構成について説明する。クッションパッド3Pは、軟質ポリウレタンフォーム原料を発泡成形して形成したものである。上記クッションパッド3Pは、上述したクッションフレーム3Fの上部に組み付けられることにより、クッションフレーム3Fの各枠部(各サイドフレーム3Fa、フロントパネル3Fb及びリヤパイプ5D)や上述した支持体10によって、下方側から広く面で支えられた状態にセットされるようになっている。具体的には、クッションパッド3Pは、上述したクッションフレーム3Fの各枠部によって支持された外周部では、これらによって下方側から硬く支持された状態とされ、上述した支持体10の布材11によって支持された中央部では、布材11の張設力によって下方側から弾性的に軟らかく支持された状態とされるようになっている。
詳しくは、上述したクッションパッド3Pは、クッションフレーム3Fの各枠部(各サイドフレーム3Fa、フロントパネル3Fb及びリヤパイプ5D)をそれぞれシート外周側から覆った状態となるように上方側から組み付けられてセットされている。そして、クッションパッド3Pは、上記クッションフレーム3Fの上部に組み付けられた後に、その表面全体(着座面や前後左右の各側面)を覆うようにクッションカバー3Cが上方側から被せ付けられて、クッションカバー3Cの各周縁部がクッションフレーム3Fの底部に引張り込まれて止着されることにより、同クッションカバー3Cの張設力によって、クッションフレーム3Fの各枠部(各サイドフレーム3Fa、フロントパネル3Fb及びリヤパイプ5D)上に強く押し付けられて密着した状態に組み付けられて保持された状態とされている。
詳しくは、上述したクッションパッド3Pは、その前部3Paが、上述したクッションフレーム3Fのフロントパネル3Fbを前側と上側とからそれぞれ覆うように組み付けられて支持された状態とされており、後部3Pcが、クッションフレーム3Fのリヤパイプ5Dを後側と上側とからそれぞれ覆うように組み付けられて支持された状態とされている。上記の組み付けにより、クッションパッド3Pは、その着座乗員の臀部から強い体圧を受ける中央の尻支え部3Pbが、上述した支持体10の布材11の支持面領域11Aによって下方側から適切に軟らかく受け止められる構成でありながら、その外周部が、上述したクッションフレーム3Fの各枠部(各サイドフレーム3Fa、フロントパネル3Fb及びリヤパイプ5D)によって下方側から強く安定的に支えられた状態に保持されるようになっている。
このように、本実施例のシート1は、クッションフレーム3F(シートフレーム)に組み付けられて乗員の着座荷重を支える面状の支持体10を有する構成となっている。クッションフレーム3Fは、支持体10の面外方向(高さ方向)に中折れ状に回動(チルト動作)できる構成とされている。支持体10は、乗員の着座荷重を支える可撓性の布材11(面状部材)と、布材11を外周側から支える外周枠12と、を有する。
布材11は、外周枠12によって支えられた支持面領域11Aと、外周枠12単体の支持では支えられない延出面領域11Bと、を有する。支持体10は、布材11の延出面領域11Bが上述したチルト動作するフロントパネル3Fb(一方のフレーム片)に組み付けられ、外周枠12がクッションフレーム3Fのサイドフレーム3Faやリヤパイプ5D(他方のフレーム片)に組み付けられることにより、クッションフレーム3Fのチルト動作を布材11の可撓性により吸収できる態様で両フレーム片の間に跨って組み付けられた状態とされている。このような構成となっていることにより、チルト動作するクッションフレーム3Fに対して、乗員の着座荷重を支える面状の支持体10を、適切に追従させられる形に設けることができる。
また、クッションフレーム3Fは、フロントパネル3Fbが各サイドフレーム3Faに対して上方側にチルト動作可能にヒンジ連結された構成とされている。支持体10は、布材11の後部領域(支持面領域11A)が外周枠12によって外周側から支えられて各サイドフレーム3Faに組み付けられた状態とされ、布材11の前部領域(延出面領域11B)がフロントパネル3Fbに組み付けられた状態とされている。
このような構成となっていることにより、フロントパネル3Fbが各サイドフレーム3Faに対して上方側に中折れ動作するチルト機構6を備えたシートクッション3に対して、支持体10を適切に追従させられる形に組み付けることができる。詳しくは、支持体10は、外周枠12によって外周側から支えられて各サイドフレーム3Faに組み付けられた布材11の後部領域(支持面領域11A)によって、乗員の臀部からの大きな体圧を受けるシートクッション3の後部領域(クッションパッド3Pの尻支え部3Pb)を強く下方側から支えることができながら、フロントパネル3Fbに組み付けられた布材11の前部領域(延出面領域11B)をフロントパネル3Fbの動きに適切に追従させられるようにすることができる。
また、布材11は、そのフロントパネル3Fbに組み付けられる延出面領域11Bに外周枠12とは別体の芯部材13が結合されており、芯部材13を介して延出面領域11Bがフロントパネル3Fbに組み付けられている。このように、布材11の延出面領域11Bが芯部材13を介してフロントパネル3Fbに組み付けられていることにより、延出面領域11Bをフロントパネル3Fbに対して、受ける負荷を広く分散させられる状態に組み付けることができる。
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「乗物用シート」は、自動車の運転席以外のシートにも適用することができる他、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の他の乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。
また、本発明の「シートフレーム」は、支持体の面外方向に中折れ状に回動できる構成とされたものであればよく、シートクッションのフレーム構造が中折れ式とされたものの他、シートバックのフレーム構造が中折れ式とされたものであってもよい。
また、本発明の「面状部材」は、布材の他、皮革材(合成皮革や人工皮革など)等の乗員の荷重を支えられる可撓性の面状からなるものであってもよい。また、「外周枠」は、面状部材を外周側から支える構成となっていればよく、外周のどの領域を支えるようになっていてもよい。また、外周枠による面状部材の支持は、外周枠を面状部材の縁部に形成した袋状の通し部内に通して面状部材を外周側から支えるものに限らず、外周枠を樹脂の溶着等によって面状部材の縁部に一体的に結合して面状部材を外周側から支えるものであってもよい。
また、支持体は、面状部材の延出面領域がシートフレームの中折れ動作する一方のフレーム片に組み付けられ、外周枠がシートフレームの中折れ動作する他方のフレーム片に組み付けられればよく、上記実施例1において、外周枠が布材(面状部材)の前部領域(支持面領域)を外周側から支持してフロントパネルに組み付けられ、布材(面状部材)の後部領域(延出面領域)がクッションフレームのサイドフレームやリヤパイプに組み付けられた構成とされたものであってもよい。また、外周枠は、シートフレームの中折れ動作する他方のフレーム片に対して、溶接の他、ピンによる締結やフックによる引掛け等、どのような形で組み付けられるものであっても良い。