図1〜図6を参照して、本発明の第一実施形態を説明する。図1及び図2を参照して、本実施形態に係る手書入力システム1の概要を説明する。以下の説明では、便宜的に、図1の左上側、右下側、上側、下側、右上側、左下側が、各々、読取装置2及び紙媒体100の左側、右側、前側、後側、上側、下側である。
図1に示すように、手書入力システム1は、読取装置2、電子ペン3、PC19等を含む。読取装置2は、折り畳んで携行可能な、薄型軽量の手書き入力装置である。手書入力システム1では、ユーザは電子ペン3を用いて、読取装置2に固定された紙媒体100の用紙120に、線画によって情報を記入する。線画は、文字、数値、記号、及び図形等を含む。読取装置2は、電子ペン3の位置を検出する。読取装置2は、経時的に検出された電子ペン3の複数の位置に基づいて、電子ペン3の軌跡を特定する。
図2に示すように、読取装置2は、左右一対の読取部2L,2R、フラットケーブル6、及びカバー4を含む。読取部2L,2Rは、いずれも矩形薄板状であり、カバー4の前面に左右方向に見開き可能に配置されている。読取部2L,2Rは、フラットケーブル6によって電気的に接続されている。読取部2Lは、カバー4の左側に設けられている袋部4Aの内側に収容される。読取部2Rは、例えば両面テープによって、カバー4の右前面に貼り付けられる。
図1に示すように、紙媒体100は、左右方向に見開き可能な冊子状である。紙媒体100では、一対の表紙110L,110Rと複数の用紙120が、各々の縁部の一部で綴じられている。紙媒体100は、読取装置2の前面に着脱可能である。表紙110Lが読取部2Lの上面に載置され、且つ、表紙110Rが読取部2Rの上面に載置されるように、紙媒体100は読取装置2に装着される。表紙110L,110Rは各々、例えば両面テープによって、読取部2L,2Rに貼り付けられる。読取部2L,2Rは各々、表紙110L,110Rと一体的に移動可能である。
ユーザは電子ペン3を用いて、読取装置2に装着された紙媒体100の用紙120に情報を記入できる。本実施形態では、用紙120の前後両面(つまり、二つの紙面)にそれぞれ、情報記入領域121及び保存指示領域122が設けられている。用紙120の紙面が、紙媒体100の一ページ分に相当する。情報記入領域121は、ユーザが電子ペン3を用いて、電子化して保存したい各種情報(文字、記号、図形等)を示す線画を記入するための自由記入欄である。 保存指示領域122は、ユーザが電子ペン3を用いて、後述の線画ファイルの生成を指示するための線画(例えばチェックマーク)を記入可能なチェックボックスである。
電子ペン3は、公知の電磁誘導式の電子ペンであり、略円筒状の筒体30を有する。筒体30の内部に、芯体31の一部、コイル32、可変容量コンデンサ33、基板34、コンデンサ35、及びインク収納部36が収容される。芯体31は、電子ペン3の先端部に設けられている。芯体31は図示外の弾性部材によって、電子ペン3の先端側に付勢されている。芯体31の先端部は、筒体30の外部に突出している。芯体31の後端側は、インクを収納するインク収納部36に接続されている。インク収納部36は、芯体31にインクを供給する。ユーザが電子ペン3を用いて筆記すると、インクによって用紙120に線画が形成される。
コイル32は、インク収納部36の周囲に巻回された状態で、芯体31と可変容量コンデンサ33との間に保持されている。可変容量コンデンサ33は、基板34によって電子ペン3の内部に固定されている。基板34には、コンデンサ35が搭載されている。コンデンサ35及び可変容量コンデンサ33はコイル32に並列に接続され、周知の共振(同調)回路を構成する。
図3を参照して、手書入力システム1の電気的構成を説明する。読取装置2は、センサ基板7L,7R、メイン基板20、及びセンサ制御基板28,29を備える。センサ基板7L,7Rは、夫々、読取部2L,2Rの内部に設けられる。メイン基板20は、CPU21、RAM22、フラッシュROM23、及び無線通信部24を備える。CPU21は、読取装置2の制御を行う。RAM22は、演算データ等の各種データを一時的に記憶する。フラッシュROM23は、CPU21が読取装置2を制御するために実行する各種プログラムを記憶する。フラッシュROM23は、電子ペン3の軌跡を示す線画データを記憶する。無線通信部24は、外部の電子機器と近距離無線通信を実行するためのコントローラである。
センサ基板7L,7Rに、X軸方向及びY軸方向の各々に細長いループコイルが多数配列されている。センサ基板7Lは、センサ制御基板28のASIC28Aに電気的に接続されている。センサ基板7Rは、センサ制御基板29のASIC29Aに電気的に接続されている。ASIC28A,29Aのうち、マスター側のASIC28AはCPU21に直接接続され、スレーブ側のASIC29AはASIC28Aを介してCPU21に接続されている。
線画データが取得される原理を、概略的に説明する。CPU21はASIC28A,29Aを制御して、センサ基板7L,7Rの各々のループコイルに、一本ずつ特定の周波数の電流(励磁用送信電流)を流す。これにより、センサ基板7L,7Rの各々のループコイルから磁界が発生する。この状態で、例えばユーザが電子ペン3を用いて、読取装置2に固定された紙媒体100の用紙120に線画を記入する動作を行うと、電子ペン3はセンサ基板7L,7Rに近接する。そのため、電子ペン3の共振回路は電磁誘導によって共振し、誘導磁界を生じる。
次に、CPU21はASIC28A,29Aを制御して、センサ基板7L,7Rの各々のループコイルからの磁界の発生を停止させる。センサ基板7L,7Rの各々のループコイルは、電子ペン3の共振回路から発せられる誘導磁界を受信する。CPU21はASIC28A,29Aを制御して、センサ基板7L,7Rの各々のループコイルに流れる信号電流(受信電流)を検出させる。ASIC28A,29Aがこの動作を全てのループコイルについて一本ずつ実行することで、受信電流に基づいて電子ペン3の位置が座標情報として検出される。
電子ペン3を用いて用紙120に線画が記入されている状態では、芯体31に筆圧が付与される。コイル32のインダクタンスは、芯体31に付与される筆圧に応じて変化する。これにより、芯体31に付与される筆圧に応じて、電子ペン3の共振回路の共振周波数が変化する。CPU21は、共振周波数の変化(位相変化)を検出して、電子ペン3に付与された筆圧を特定する。CPU21は、特定した筆圧によって、用紙120に線画が記入されている状態であるか否かを検出できる。
読取装置2で検出可能な電子ペン3の全ての座標点と、読取装置2に固定された用紙120上の座標点との対応を定める位置特定テーブルが、フラッシュROM23に記憶されている。CPU21はフラッシュROM23の位置特定テーブルを参照することで、検出した電子ペン3の座標点に基づいて、用紙120上における線画の記入位置を特定できる。CPU21は、一の連続する線画毎に線画データを取得する。線画データは、電子ペン3が用紙120に接触してから離れるまでの一回の記入動作における、電子ペン3の軌跡を示す複数の座標情報を含む。
本実施形態では、CPU21は検出した電子ペン3の座標点に基づいて、情報記入領域121及び保存指示領域122(図1参照)のいずれに線画が記入されているか否かを判断できる。情報記入領域121に線画が記入されていると判断した場合、CPU21は線画データを取得し、RAM22に一時記憶する。保存指示領域122に線画が記入されていると判断した場合、CPU21はRAM22に一時記憶されている線画データに基づいて、線画ファイルを生成してフラッシュROM23に保存する。線画ファイルは、情報記入領域121に記入されている線画全体の少なくとも一部を示す画像ファイルである。
PC19は、CPU41,ハードディスクドライブ(HDD)42、RAM43、無線通信部44、入力回路45、出力回路46、入力部191、及びディスプレイ192を含む。CPU41は、PC19の制御を行う。HDD42は、CPU41が実行する各種プログラムを記憶する。RAM43は、種々の一時データを記憶する。無線通信部44は、外部の電子機器と近距離無線通信を実行するためのコントローラである。入力回路45は、CPU41へ入力部191からの指示を送る制御を行う。出力回路46は、CPU41からの指示に応じてディスプレイ192に画像を表示する制御を行う。
CPU41は、PC19で読取装置2の線画ファイルを取得する指示が入力された場合、無線通信部44を介して読取装置2との間で近距離無線通信を実行する。読取装置2のフラッシュROM23に記憶されている線画ファイルは、読取装置2からPC19に転送される。CPU41は、読取装置2から転送された線画ファイルをRAM43に記憶する。CPU41は、RAM43に記憶した線画ファイルに基づく画像を、ディスプレイ192に表示できる。さらにCPU41は、RAM43に記憶した線画ファイルに基づく画像に対して公知のOCR処理を実行することで、用紙120に記入された情報を取得できる。
図4を参照し、読取装置2のメイン処理を説明する。読取装置2の電源がONされた場合、CPU21がフラッシュROM23に記憶されたプログラムを実行することで、メイン処理を開始する。まず、読取装置2におけるユーザの筆記が検出される(S1)。ステップS1では、先述したように、電子ペン3によって用紙120に記入されている線画が検出され、線画データが取得される。取得された線画データは、RAM22に一時記憶される。
次いで、ステップS1で検出された電子ペン3の座標点に基づいて、線画開始点が検出されたか否かが判定される(S3)。線画開始点は、線画を記入する電子ペン3が最初に用紙120と接触した位置(つまり、線画の先頭位置)を示す座標点である。線画開始点が検出されていない場合(S3:NO)、処理はステップS1に戻り、引き続き線画が検出されて線画データが取得される。
線画開始点が検出された場合(S3:YES)、検出された線画開始点に基づいて、保存指示が入力されたか否が判断される(S5)。本実施形態では、検出された線画開始点が保存指示領域122にある場合、保存指示が入力されたと判断される(S5:YES)。この場合、現在設定されているファイル保存モードが、追記モードであるか否かが判断される(S7)。
ファイル保存モードは、線画ファイルを生成する方法を示す情報であり、フラッシュROM23に設定されている。ユーザは読取装置2の物理キー(図示外)を操作して、ファイル保存モードとして通常モード及び追記モードのいずれかを選択的に設定できる。通常モードは、後述の新規ファイルを生成するモードである。追記モードは、後述の追記ファイルを優先的に生成するモードである。
フラッシュROM23に設定されているファイル保存モードが通常モードである場合(S7:NO)、新規ファイルが生成されて、フラッシュROM23に保存される(S9)。新規ファイルは、対象線画を示す線画ファイルである。対象線画は、前回保存ファイルが示す線画よりも後に、情報記入領域121に対して記入された線画である。前回保存ファイルは、前回実行されたステップS9又は後述のステップS11のうち、後に実行されたステップで生成された新規ファイル又は後述の追記ファイルである。前回保存ファイルが示す線画を、前回線画という。
例えばステップS9では、RAM22に一時記憶されている線画データのうち、対象線画を示す線画データが一つのファイルに合成されて、新たな線画ファイルである新規ファイルが生成される。フラッシュROM23では、ステップS9で生成された新規ファイルが、新たな線画ファイルとして保存される。その後、処理はステップS1に戻る。
フラッシュROM23に設定されているファイル保存モードが追記モードである場合(S7:YES)、追記ファイルが生成されて、フラッシュROM23に保存される(S11)。追記ファイルは、追記線画を示す線画ファイルである。追記線画は、先述の対象線画と前回線画との両方を含む線画である。
例えばステップS11では、RAM22に記憶されている線画データのうち、追記線画を示す線画データが一つのファイルに合成されて、追記ファイルが生成される。フラッシュROM23に記憶されている前回保存ファイルが、ステップS11で生成された追記ファイルによって更新される。ただしメイン処理の開始直後は、フラッシュROM23に前回保存ファイルが記憶されていない。この場合、ステップS11では、ステップS7と同様に対象線画を示す線画データに基づいて、新規ファイルと同様に追記ファイルが生成及び保存される。
一方、検出された線画開始点が情報記入領域121にある場合、保存指示が入力されていないと判断される(S5:NO)。この場合、後述のページ移動判断処理が実行される(S13)。ページ移動判断処理に基づく戻り値が「TRUE」である場合(S15:YES)、処理はステップS7に進み、先述のようにファイル保存モードに応じて新規ファイル又は追記ファイルが生成及び保存される。ページ移動判断処理に基づく戻り値が「FALSE」である場合(S15:NO)、処理はステップS1に戻る。
ステップS9又はS11の実行後、ページ移動判断処理に基づく戻り値が「TRUE」である場合(S17:YES)、RAM22に記憶されている全ての線画データが削除される(S19)。ページ移動判断処理に基づく戻り値が「FALSE」である場合(S17:NO)、又はステップS19の実行後、処理はステップS1に戻る。
図5を参照し、第一実施形態のページ移動判断処理を説明する。まず検出中線画の記入面が、RAM22が記憶する変数K1に設定される(S21)。検出中線画は、ステップS1で記入位置が検出されている線画である。本実施形態では、ステップS1で検出された線画開始点が、読取部2L,2Rのいずれに対応するかが特定される。線画開始点が読取部2Lに対応する場合、変数K1に「左面」が設定される。線画開始点が読取部2Rに対応する場合、変数K1に「右面」が設定される。
次いで直前線画の記入面が、RAM22が記憶する変数K2に設定される(S23)。直前線画は、検出中線画の直前に検出された線画である。本実施形態では、RAM22に記憶されている線画データに基づいて、直前線画の線画終了点が特定される。線画終了点は、線画を記入する電子ペン3が最後に用紙120と接触した位置(つまり、線画の末尾位置)を示す座標点である。特定された直前線画の線画終了点が読取部2L,2Rのいずれに対応するかに応じて、変数K2に「左面」又は「右面」が設定される。
ステップS21,23で各々設定された変数K1,K2が異なる場合(S25:NO)、メイン処理(図4参照)に「TRUE」が返される(S27)。ステップS21,23で各々設定された変数K1,K2が同じである場合(S25:YES)、メイン処理(図4参照)に「FALSE」が返される(S29)。ステップS27又はS29の実行後、処理はメイン処理(図4参照)に戻る。
図6を参照して、本実施形態に係る読取装置2で線画ファイルが生成される事例を、具体的に説明する。図1に示す例では、読取装置2の電源がONされた状態で、読取装置2の前面に紙媒体100が装着されている。読取装置2に設定されているファイル保存モードは、追記モードである。表紙110Lと重なる用紙120(以下、用紙120L)は、読取部2L上に配置されている。表紙110Rと重なる用紙120(以下、用紙120R)は、読取部2R上に配置されている。
ユーザは電子ペン3を用いて、用紙120Lの情報記入領域121に「123」を記入する。読取装置2では、「123」を構成する複数の線画データが、RAM22に一時記憶される(S1)。その後、ユーザは電子ペン3を用いて、用紙120Lの保存指示領域122にチェックマークを記入する(S3:YES、S5:YES)。読取装置2では、RAM22に一時記憶されている線画データに基づいて、対象線画「123」を示す追記ファイル131が生成され、フラッシュROM23に保存される(S7:YES、S11)。
引き続き、ユーザは電子ペン3を用いて、用紙120Lの情報記入領域121に「ABC」を記入する。読取装置2では、「ABC」を構成する複数の線画データが、RAM22に一時記憶される(S1)。ユーザが用紙120Lに記入している間は、検出中線画の記入面(変数K1)及び前回線画の記入面(変数K2)はいずれも「左面」であるため、戻り値は「FALSE」である(S25:YES、S29、S15:NO)。
その後、ユーザは電子ペン3を用いて、用紙120Rの情報記入領域121に線画を記入する(S3:YES、S5:NO、S13)。この場合、検出中線画の記入面(変数K1)は「右面」であり、且つ前回線画の記入面(変数K2)は「左面」であるため、戻り値は「TRUE」である(S25:NO、S27、S15:YES)。したがって、RAM22に一時記憶されている線画データに基づいて、前回線画「123」及び対象線画「ABC」を含む追記線画を示す追記ファイル132が生成される。フラッシュROM23では、追記ファイル131が追記ファイル132に更新される(S7:YES、S11)。
さらに、RAM22に一時記憶されている全ての線画データが削除される(S17:YES、S19)。これ以降に用紙120に線画が記入された場合、記入された線画は追記ファイル132に追記されることなく、新たな線画ファイルとして保存される。例えばユーザは電子ペン3を用いて、用紙120Rの情報記入領域121に「456」を記入した後、用紙120Rの保存指示領域122にチェックマークを記入する(S3:YES、S5:YES)。この場合、読取装置2では、対象線画「123」を示す新たな追記ファイルが生成及び保存される(S7:YES、S11)。
なお、図示しないが、ファイル保存モードが通常モードに設定されている場合、例えば次のように線画ファイルが生成される。ユーザは電子ペン3を用いて、用紙120Lの情報記入領域121に「123」を記入した後、用紙120Lの保存指示領域122にチェックマークを記入する。読取装置2では、RAM22に一時記憶されている線画データに基づいて、対象線画「123」を示す新規ファイルが生成され、フラッシュROM23に保存される(S5:YES、S7:NO、S9)。
引き続き、ユーザは電子ペン3を用いて、用紙120Lの情報記入領域121に「ABC」をした後、用紙120Rの情報記入領域121に線画を記入する。この場合、RAM22に一時記憶されている線画データに基づいて、対象線画「ABC」を示す新規ファイルが生成され、フラッシュROM23に保存される(S5:NO、S13、S15:YES、S7:NO、S9)。その後、RAM22に一時記憶されている全ての線画データが削除される(S17:YES、S19)。
仮にメイン処理(図4)にページ移動判断処理(S13)を設けていない場合、ユーザが上記と同様の記入動作を行うと、次のように線画ファイルが生成される。ユーザが用紙120Lにおいて情報記入領域121に「123」を記入して保存指示領域122にチェックマークを記入する。読取装置2では、上記と同様に対象線画「123」を示す追記ファイルが生成及び保存される。引き続きユーザは、用紙120Lの情報記入領域121に「ABC」を記入し、用紙120Rの情報記入領域121に「456」を記入した後、用紙120Rの保存指示領域122にチェックマークを記入する。この場合、読取装置2では、前回線画「123」と対象線画「ABC」及び「456」とを全て含む追記ファイルが生成及び保存される。
本実施形態の読取装置2では、電子ペン3によって線画が記入されている紙面(ページ)が変更された場合には、それ以降に取得される線画データに基づいて、既存の線画ファイルとは異なる新たな線画ファイルが生成される。したがって、メイン処理(図4)にページ移動判断処理(S13)を設けていない場合とは異なり、新たな紙面に記入された線画が既存の線画ファイルに追記されることを防止できる。
以上説明したように、第一実施形態の読取装置2では、配置された紙媒体100の紙面に対して線画を記入する電子ペン3の位置である記入位置が、読取部2L,2R及びCPU21によって検出される。検出された記入位置に基づいて、一の連続する線画毎に電子ペン3の軌跡を示す線画データが取得され、RAM22に記憶される(S1)。紙媒体100又は紙面(ページ)の切り替えに関する所定条件が満たされた場合(S13、S15:YES)、RAM22に記憶されている線画データに基づいて、紙面に記入された線画の全体の少なくとも一部を示す線画ファイルが生成される(S9又はS11)。したがって、紙媒体100に記入された情報を示す線画ファイルが適切なタイミングで取得される。
検出された第一位置と第二位置とがそれぞれ異なる紙面に対応する場合(S25:NO、S27)、所定条件を満たすと判断される(S15:YES)。第一位置は、検出中線画の先頭位置に対応する記入位置である。第二位置は、第一位置の直前に検出された、直前線画の末尾位置に対応する記入位置である。したがって、電子ペン3によって線画が記入されている紙面(ページ)が移動したタイミングで、線画ファイルを取得できる。
ファイルの生成指示が入力されたと判断された場合、RAM22に記憶されている線画データに基づいて線画ファイルが生成される。詳細には、検出された記入位置に基づいて、紙面に設けられた保存指示領域122に線画が記入されたかが判断される(S5)。保存指示領域122に線画が記入されたと判断された場合(S5:YES)、RAM22に記憶されている線画データに基づいて線画ファイルが生成される(S9又はS11)。したがって、ユーザの指示が行われたタイミングで、線画ファイルを取得できる。なお、ユーザは読取装置2に設けられた所定の物理キー(図示外)を押下することで、ファイルの生成指示を入力してもよい。
図7〜図9を参照して、本発明の第二実施形態を説明する。以下では、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。図7に示すように、第二実施形態の読取装置2は、矩形薄板状である。読取装置2の内部に、先述のセンサ基板、センサ制御基板、及びメイン基板20が設けられる(図3参照)。第二実施形態の紙媒体100は、複数枚の用紙120が上縁部で綴じられたノートパッドである。紙媒体100は、例えば両面テープによって読取装置2の前面に着脱可能である。
図8に示すように、第二実施形態のページ移動判断処理(図4のS13参照)では、まず検出中線画の開始Y座標が、RAM22が記憶する変数Y1に設定される(S41)。本実施形態では、ステップS1で検出された線画開始点のY座標が、変数Y1に開始Y座標として設定される。本実施形態のY軸方向は、読取装置2の上側から下側に向く。したがって、紙媒体100における線画の記入位置が下側に移動するほど、検出されるY座標は小さくなる。次いで直前線画の終了Y座標が、RAM22が記憶する変数Y2に設定される(S43)。本実施形態では、RAM22に記憶されている線画データに基づいて、直前線画の線画終了点のY座標が特定される。特定されたY座標が、変数Y2に終了Y座標として設定される。
変数Y1から変数Y2を減じた算出値が、閾値L1よりも大であるか否かが判断される(S45)。一例として閾値L1は、紙媒体100のY軸方向(本実施形態では、上下方向)の長さに、3/4を乗じた値である。算出値が閾値L1よりも大である場合(S45:YES)、検出中線画の線画特徴が特定される(S47)。例えばステップS47では、ステップS1と同様に、検出中線画の線画開始点から線画終了点までの座標点が検出される。線画開始点から線画終了点までの長さ(道のり)が、検出中線画の全長として特定される。検出中線画の全長が所定値未満である場合、検出中線画の線画特徴が文字特徴に特定される。検出中線画の全長が所定値以上である場合、検出中線画の線画特徴が図形特徴に特定される。
ステップS47で文字特徴が特定された場合(S49:NO)、メイン処理(図4参照)に「TRUE」が返される(S51)。ステップS47で図形特徴が特定された場合(S49:YES)、メイン処理(図4参照)に「FALSE」が返される(S53)。なお、算出値が閾値L1未満である場合も(S45:NO)、メイン処理(図4参照)に「FALSE」が返される(S53)。ステップS51又はS53の実行後、処理はメイン処理(図4参照)に戻る。
図9を参照し、本実施形態に係る読取装置2で線画ファイルが生成される事例を、具体的に説明する。図9に示す例では、図6に示す例と同様に、読取装置2の電源がONされた状態で、読取装置2の前面に紙媒体100が装着されている。読取装置2に設定されているファイル保存モードは、追記モードである。ユーザは電子ペン3を用いて、情報記入領域121に「123」を記入した後、保存指示領域122にチェックマークを記入する(S1、S3:YES、S5:YES)。読取装置2では、対象線画「123」を示す追記ファイル131が生成され、フラッシュROM23に保存される(S7:YES、S11)。
引き続き、ユーザは電子ペン3を用いて、情報記入領域121に「ABC」を記入する。ユーザは「123」及び「ABC」を記入した用紙120を引き剥がし、新たな用紙120の情報記入領域121に線画「4」を記入する。この場合、直前線画「C」の終了Y座標(変数Y2)から、検出中線画「4」の開始Y座標(変数Y1)までのY軸方向距離は、紙媒体100のY軸方向長さの3/4以上である(S45:YES)。さらに、検出中線画「4」の線画特徴は文字特徴である(S47、S49:YES、S15:YES)。
したがって、読取装置2では、RAM22に一時記憶されている線画データに基づいて、前回線画「123」及び対象線画「ABC」を含む追記線画を示す追記ファイル132が生成される。フラッシュROM23では、追記ファイル131が追記ファイル132に更新される(S7:YES、S11)。RAM22に一時記憶されている全ての線画データが削除される(S17:YES、S19)。これ以降に用紙120に線画が記入された場合、記入された線画は追記ファイル132に追記されることなく、新たな線画ファイルとして保存される。
以上説明したように、第二実施形態の読取装置2では、第一実施形態と同様に、紙媒体100に記入された情報を示す線画ファイルが適切なタイミングで取得され、且つユーザの指示が行われたタイミングで線画ファイルを取得できる。さらに、検出された第一位置が第二位置に対して、紙媒体100における上方向に所定値以上離れているか否かに基づいて、所定条件を満たすか否かが判断される(S13、S15)。
詳細には、第一位置が第二位置に対して所定値以上離れており(S45:YES)、且つ、第一位置を含む線画の種別が文字である場合(S49:NO)、所定条件を満たすと判断される(S15:YES)。第一位置が第二位置に対して所定値未満離れている場合(S45:NO)、又は、第一位置を含む線画の種別が図形である場合(S49:YES)、所定条件を満たさないと判断される(S15:NO)。したがって、電子ペン3によって線画が記入されている紙面(ページ)が移動したタイミングで、線画ファイルを取得できる。
図10を参照して、本発明の第三実施形態を説明する。第三実施形態は、第一及び第二実施形態と比べて、ページ移動判断処理(図4のS13参照)の詳細が異なる。以下では、第一及び第二実施形態と異なる点を中心に説明する。
図10に示すように、第三実施形態の追記判断処理では、まず検出中線画の記入開始日時が、RAM22が記憶する変数T1に設定される(S61)。本実施形態では、ステップS1において線画開始点の検出された日時が、変数T1に検出中線画の記入開始日時として設定される。次いで直前線画の記入終了日時が、RAM22が記憶する変数T2に設定される(S63)。本実施形態は、RAM22に記憶されている線画データに基づいて、直前線画の線画終了点の検出された日時が特定される。特定された日時が、変数T2に直前線画の記入終了日時として設定される。
変数T1から変数T2を減じた算出値が、閾値L2よりも大であるか否かが判断される(S65)。一例として閾値L2は、10秒である。算出値が閾値L2よりも大である場合(S65:YES)、メイン処理(図4参照)に「TRUE」が返される(S67)。算出値が閾値L2未満である場合(S65:NO)、メイン処理(図4参照)に「FALSE」が返される(S69)。ステップS67又はS69の実行後、処理はメイン処理(図4参照)に戻る。
本実施形態に係る読取装置2で線画ファイルが生成される事例を、具体的に説明する。例えばユーザは電子ペン3を用いて、用紙120に「123」及び「ABC」を記入し、さらに10秒経過した後、次の用紙120に線画の記入を開始する(S65:YES、S67、S15:YES)。
読取装置2では、RAM22に一時記憶されている線画データに基づいて、「123」及び「ABC」を示す追記ファイル132が生成される。フラッシュROM23では、追記ファイル131が追記ファイル132に更新される(S7:YES、S11)。RAM22に一時記憶されている全ての線画データが削除される(S17:YES、S19)。これ以降に用紙120に線画が記入された場合、記入された線画は追記ファイル132に追記されることなく、新たな線画ファイルとして保存される。
以上説明したように、第三実施形態の読取装置2では、第一、第二実施形態と同様に、紙媒体100に記入された情報を示す線画ファイルが適切なタイミングで取得され、且つユーザの指示が行われたタイミングで線画ファイルを取得できる。さらに、第一位置が検出された時点から第二位置が検出された時点までの時間が所定値以上である場合(S65:YES)、所定条件を満たすと判断される(S15:YES)。したがって、電子ペン3によって線画が記入されている紙面(ページ)が移動したタイミングで、線画ファイルを取得できる。
上記第一〜第三実施形態において、読取装置2が本発明の「情報入力装置」の一例である。電子ペン3が本発明の「筆記具」の一例である。読取部2L,2R及びCPU21が、本発明の「検出手段」の一例である。ステップS1を実行するCPU21が、本発明の「データ取得手段」の一例である。ステップS13及びS15を実行するCPU21が、本発明の「切替判断手段」の一例である。ステップS9又はS11を実行するCPU21が、本発明の「第一ファイル生成手段」及び「第二ファイル生成手段」の一例である。ステップS5を実行するCPU21が、本発明の「ファイル生成判断手段」の一例である。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。読取装置2は他の方法で電子ペン3の位置を検出してもよい。例えば読取装置2はタッチパネルを備えてもよい。タッチパネルの駆動方式は、抵抗膜方式であることが好ましい。タッチパネル上に紙媒体100が置かれてもよい。CPU21は、電子ペン3によって紙媒体100の用紙120に線画を記入する動作が行われた場合、タッチパネルを介して筆圧が加えられた位置を検出してもよい。
線画ファイルの生成は、読取装置2とは異なる装置で実行されてもよい。例えば変形例の手書入力システム1では、読取装置2で生成された全ての線画データがPC19に転送され、RAM43に一時記憶される。PC19では、CPU41が図4に示すメイン処理(図4参照)を実行する。これにより、PC19において、上記と同様に線画ファイル(新規ファイル及び追記ファイル)を生成できる。