JP6224428B2 - 載置台にフォーカスリングを吸着する方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、載置台に被吸着物を吸着する方法及び処理装置に関するものである。
半導体デバイスといった電子デバイスの製造においては、減圧された処理容器内に被処理体を収容して、当該被処理体に対する処理が行われる。被処理体に対する処理の一例は、プラズマ処理であり、より具体的には、エッチング、成膜といった処理である。このような被処理体の処理に用いられる処理装置では、処理容器内に載置台が設けられており、当該載置台に被処理体が載置される。このため、載置台は、静電チャックを有している。
静電チャックとしては、単極タイプ及び双極タイプのものが知られている。単極タイプの静電チャックは、一つの電極、及び、誘電体膜を有しており、当該電極が誘電体膜内に設けられた構造を有している。また、単極タイプの静電チャックでは、電極に直流電圧が印加されるようになっている。単極タイプの静電チャックでは、電極に直流電圧が印加されると、静電チャックの表面が帯電する。また、被処理体は電気的に接地されているので、静電チャックに対する被処理体の対向面が、静電チャックの表面とは逆の極性で帯電する。これにより、静電チャックの表面と被処理体の間に電位差が生じ、被処理体が静電チャックに吸着される。
また、双極タイプの静電チャックは、二つの電極、及び誘電体膜を有しており、当該二つの電極が誘電体膜内に設けられた構造を有している。双極タイプの静電チャックでは、これら二つの電極に、互いに異なる電圧の直流電圧が印加されるように構成されている。双極タイプの静電チャックでは、二つの電極に異なる電圧の直流電圧が印加されると、静電チャック内で電位差が生じ、静電チャックの表面に正に帯電した領域と負に帯電した領域が発生する。また、静電チャックに対する被処理体の対向面が、静電チャックの表面とは逆の極性で帯電する。これにより、静電チャックの表面と被処理体の間に電位差が生じ、被処理体が静電チャックに吸着される。これら単極タイプ及び双極タイプの静電チャックは、特開2013−16554号公報に記載されている。
特開2013−16554号公報
上述した単極タイプ及び双極タイプの静電チャックの何れにおいても、静電チャックの表面が、帯電し易い状態に変質することがある。例えば、被処理体の処理によって発生した生成物が静電チャックの表面に付着することによって、変質層が形成され、当該変質層が帯電し易い状態を形成する。静電チャックの表面が変質すると帯電異常が生じ、被処理体に対する吸着力が低下することがある。また、電極への電圧の印加を停止させた後においても、静電チャックの表面に残留する電荷によって、静電チャックと被処理体との間にクーロン力が生じることがある。このように残留する電荷の量を正確に把握することが困難であるので、静電チャックの表面を除電することも困難なことがある。
したがって、本技術分野においては、静電チャックの吸着力の低下を抑制し、且つ、静電チャックの表面における残留電荷を抑制することが必要となっている。
第1の側面においては、載置台に被吸着物を吸着する方法が提供される。この載置台は、減圧可能な空間内で被処理体を処理するための処理装置において該空間を画成する処理容器内に設けられている。また、処理装置は、例えば、プラズマ処理装置である。この方法は、載置台の静電チャック上に被吸着物を載置する工程と、静電チャックの三つの電極にそれぞれ、互いに位相の異なる三つの交流電圧を印加する工程と、を含む。
第1の側面に係る方法では、三つの電極に印加される交流電圧が互いに異なる位相を有しているので、静電チャックの三つの電極に印加される電圧の全てが同時に同電位になることがない。したがって、三つの電極に対して上記三つの交流電圧をそれぞれ印加している期間では、静電チャックの三つの電極のうち何れか二つの電極間に電位差が発生し、静電チャックの表面に正に帯電した領域と負に帯電した領域が発生する。また、静電チャックに対する被吸着物の対向面が、静電チャックの表面とは逆の極性で帯電する。その結果、当該期間においては、静電チャックの表面と被処理体との間に、常時、電位差が生じる。故に、当該期間中において吸着力が常に発生している状態が維持される。また、帯電量は電界強度の時間積分に比例する量であり、静電チャックの三つの電極の各々には交互に正電圧及び負電圧となる交流電圧が印加されるので、静電チャックの表面の帯電量を抑制することが可能である。よって、静電チャックの吸着力の低下を抑制することが可能となり、且つ、静電チャックの表面の残留電荷を抑制することが可能となる。
一形態においては、被吸着物はウエハであり、前記静電チャックは、ウエハ用の静電チャックであってもよい。
また、別の一形態においては、被吸着物はフォーカスリングである。フォーカスリングは、ウエハのエッジを囲むように載置台上に搭載される。この形態では、前記静電チャックは、フォーカスリング用の静電チャックである。
また、更なる一形態の方法は、載置する前記工程の後、静電チャックとフォーカスリングとの間に伝熱ガスを供給するガスラインに接続された減圧ポンプを作動させて、フォーカスリングを静電チャックに吸引する工程と、吸引する該工程の後に、処理容器内の空間を減圧する工程と、を更に含む。そして、減圧する前記工程の後に、三つの交流電圧を印加する前記工程が行われる。フォーカスリングを静電チャック上に載置する際には、一般的に、処理容器内の空間の圧力は大気圧に設定される。この形態の方法によれば、大気圧環境において静電チャック上にフォーカスリングを位置決めして載置し、その後、減圧ポンプを作動させることにより、フォーカスリングを静電チャックに吸引する。そして、処理容器内の空間を減圧し、次いで、三つの電極に交流電圧を印加することで、フォーカスリングをクーロン力によって静電チャックに吸着する。このように、大気圧環境下では静電チャックの電極に電圧を印加しないので、感電を避けることが可能であり、また、静電チャックへの大気中の粉塵の吸着を抑制することが可能である。また、静電チャックにフォーカスリングを吸引した状態で処理容器内の空間を減圧するので、減圧時のフォーカスリングの位置ずれを抑制することが可能である。さらに、フォーカスリングの位置ずれを抑制できるので、被処理体の処理時のフォーカスリングの温度の制御性を向上させることが可能である。
第2の側面においては、上述した方法の実施に用いることが可能な処理装置が提供される。この処理装置は、被処理体を減圧された空間内で処理するための装置である。この処理装置は、処理容器、載置台、及び、電源を備える。処理容器は、減圧可能な空間を画成する。載置台は、処理容器内に設けられており、静電チャックを有する。静電チャックは、三つの電極を有する。電源は、静電チャックに被吸着物を吸着するために、三つの電極にそれぞれ、互いに異なる位相を有する三つの交流電圧を印加する。
一形態においては、前記静電チャックはウエハ用の静電チャックである。また、別の一形態においては、静電チャックはフォーカスリング用の静電チャックである。また、更なる一形態の処理装置は、減圧ポンプを更に備え、載置台には静電チャックとフォーカスリングとの間に伝熱ガスを供給するためのガスラインが形成されており、減圧ポンプは、当該ガスラインに接続されている。
以上説明したように、静電チャックの吸着力の低下を抑制し、且つ、静電チャックの表面における残留電荷を抑制することが可能となる。
一実施形態に係る処理装置を概略的に示す図である。 一実施形態に係る第1の静電チャックを示す平面図である。 一実施形態に係る第2の静電チャックを示す平面図である。 載置台に被吸着物を吸着する方法の一実施形態を示す流れ図である。 グラフ(a)において、静電チャックの三つの電極に印加される交流電圧の波形、及び、静電チャックの電極間の電位差を示し、グラフ(b)において、位相と各電極直上での静電チャックの吸着力の関係を示す図である。 載置台に被吸着物を吸着する方法の別一実施形態を示す流れ図である。 別の実施形態に係る第1の静電チャックを示す平面図である。 別の実施形態に係る第2の静電チャックを示す平面図である。
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
まず、載置台に被吸着物を吸着する方法の種々の実施形態の実施に用いることが可能な処理装置について説明する。図1は、一実施形態に係る処理装置を概略的に示す図である。図1には、一実施形態に係る処理装置の断面構造が概略的に示されている。図1に示すように、一実施形態に係る処理装置は、プラズマ処理装置10である。
プラズマ処理装置10は、容量結合型平行平板プラズマ処理装置であり、処理容器12を備えている。処理容器12は、略円筒形状を有しており、その内部に空間Sを画成している。処理容器12は、例えばアルミニウム製である。この処理容器12の表面には、例えば、陽極酸化処理が施されている。また、処理容器12は保安接地されている。
処理容器12の内部には、載置台16が設けられている。載置台16は、下部電極18、第1の静電チャック70、及び第2の静電チャック80を備えている。下部電極18は、例えば、アルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状を有している。この下部電極18は、支持部14によって支持されている。支持部14は、処理容器12の底部上に設けられている。支持部14は、例えば、絶縁材料から構成されており、円筒形状を有している。
下部電極18には、整合器MU1を介して第1の高周波電源HFSが接続されている。第1の高周波電源HFSは、プラズマ生成用の高周波電力を発生する電源であり、27〜100MHzの周波数、一例においては40MHzの高周波電力を発生する。整合器MU1は、第1の高周波電源HFSの出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
また、下部電極18には、整合器MU2を介して第2の高周波電源LFSが接続されている。第2の高周波電源LFSは、被処理体(以下、「ウエハW」という)にイオンを引き込むための高周波電力(高周波バイアス電力)を発生して、当該高周波バイアス電力を下部電極18に供給する。高周波バイアス電力の周波数は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数であり、一例においては3MHzである。整合器MU2は、第2の高周波電源LFSの出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
下部電極18上には、第1の静電チャック70及び第2の静電チャック80が設けられている。第1の静電チャック70は、その上面の上に載置されるウエハWを、クーロン力によって静電吸着する。第2の静電チャック80は、第1の静電チャック70を囲むように環状に延在している。第2の静電チャック80は、その上面の上に載置されるフォーカスリングFRを、クーロン力によって静電吸着する。フォーカスリングFRは、ウエハWに対する処理の均一性を向上させるために、ウエハWのエッジを囲むように第2の静電チャック80上に載置される。フォーカスリングFRは、ウエハに対する処理に応じて適宜選択される材料から構成される。例えば、フォーカスリングFRは、シリコン、又は石英から構成され得る。
下部電極18の内部には、冷媒室24が設けられている。冷媒室24には、外部に設けられたチラーユニットから配管26a,26bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給される。このように循環される冷媒の温度を制御することにより、第1の静電チャック70上に載置されたウエハWの温度が制御される。
また、プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、第1の静電チャック70の上面とウエハWの裏面との間に供給する。
また、プラズマ処理装置10は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、下部電極18の上方において、当該下部電極18と対向配置されている。下部電極18と上部電極30は、互いに略平行に設けられている。
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。上部電極30は、電極板34及び電極支持体36を含み得る。電極板34は、空間Sに面している。この電極板34には、複数のガス吐出孔34aが形成されている。電極板34は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体から構成され得る。
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、電極支持体36にはガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入ポート36cが形成されており、このガス導入ポート36cには、ガス供給管38が接続されている。
ガス供給管38には、バルブ42及び流量制御器44を介してガスソース40が接続されている。ガスソース40は、ウエハWの処理に応じて選択される一以上のガス種のガスを、バルブ42及び流量制御器44を介して、ガス供給管38に供給する。ガス供給管38に供給されたガスは、ガス拡散室36aに至り、ガス通流孔36b及びガス吐出孔34aを介して空間Sに吐出される。
また、プラズマ処理装置10は、接地導体12aを更に備え得る。接地導体12aは、略円筒状の接地導体であり、処理容器12の側壁から上部電極30の高さ位置よりも上方に延びるように設けられている。
また、プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。また、デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
処理容器12の底部側においては、支持部14と処理容器12の内壁との間に排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート48の下方において処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内の空間Sを所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
また、処理容器12の内壁には、導電性部材(GNDブロック)56が設けられている。導電性部材56は、高さ方向においてウエハWと略同じ高さに位置するように、処理容器12の内壁に取り付けられている。この導電性部材56は、グランドにDC的に接続されており、異常放電防止効果を発揮する。
また、プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。この制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。この制御部Cntでは、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、プラズマ処理装置10の稼働状況を可視化して表示すことができる。さらに、制御部Cntの記憶部には、プラズマ処理装置10で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置10の各構成部に処理を実行させるためのプログラム、即ち、処理レシピが格納される。
以下、図1と共に、図2及び図3を参照して、載置台16の更なる詳細について説明する。図2は、一実施形態に係る第1の静電チャックを示す平面図である。また、図3は、一実施形態に係る第2の静電チャックを示す平面図である。
図1及び図2に示すように、載置台16の下部電極18上には、第1の静電チャック70が設けられている。第1の静電チャック70は、略円盤形状を有している。第1の静電チャック70は、三つの電極、即ち、電極70a、電極70b、及び70cを有している。これら電極70a、電極70b、及び電極70cは、一対の絶縁層又は絶縁シート間に設けられる。或いは、電極70a、電極70b、及び電極70cは、絶縁層の内層として設けられる。
図2に示すように、一実施形態において、電極70a、電極70b、及び70cは、略扇型の平面形状を有しており、第1の静電チャック70の中心軸線に対して周方向に配列されている。電極70a、電極70b、及び電極70cにはそれぞれ、三つの電源、即ち、電源72a、電源72b、及び電源72cが電気的に接続されている。電源72a、電源72b、及び電源72cは、交流電圧を発生する。一実施形態においては、これら電源72a、電源72b、及び電源72cによって発生される交流電圧は、同じ周波数を有し、0Vの平均電圧を有する。また、これら電源72a、電源72b、及び電源72cによって発生される交流電圧は、互いに異なる位相を有している。例えば、電源72a、電源72b、及び電源72cによって発生される交流電圧の間の位相は、120度に設定される。
このように、プラズマ処理装置10では、第1の静電チャック70の電極70a、電極70b、及び電極70cにそれぞれ、互いに異なる位相を有する三つの交流電圧が与えられる。電極70a、電極70b、及び70cに三つの交流電圧が与えられると、第1の静電チャック70の表面が帯電して、第1の静電チャック70の表面とウエハWとの間に電位差が生じる。これにより、第1の静電チャック70にウエハWが静電吸着される。
また、電極70a、電極70b、及び電極70cのそれぞれに印加される交流電圧が互いに異なる位相を有しているので、第1の静電チャック70の電極70a、電極70b、及び電極70cに印加される交流電圧の全てが同時に同電位になることがない。したがって、電極70a、電極70b、及び電極70cに三つの交流電圧をそれぞれ印加している期間(以下、「印加期間」という)では、電極70a、電極70b、及び電極70cのうち何れか二つの電極の間に電位差が発生し、第1の静電チャック70の表面に、正に帯電した領域と負に帯電した領域が発生する。また、第1の静電チャック70に対するウエハWの対向面が、第1の静電チャック70の表面とは逆の極性で帯電する。その結果、当該印加期間では、第1の静電チャック70の表面とウエハWとの間に、常時、電位差が生じる。故に、当該印加期間において吸着力が常に発生している状態が維持される。また、帯電量は電界強度の時間積分に比例する量であり、電極70a、電極70b、及び電極70cの各々には交互に正電圧及び負電圧となる交流電圧が印加されるので、第1の静電チャック70の表面の帯電量を抑制することが可能である。よって、第1の静電チャック70の吸着力の低下を抑制することが可能であり、且つ、第1の静電チャック70の表面の残留電荷を抑制することが可能である。
また、図1及び図3に示すように、載置台16の下部電極18上には、第1の静電チャック70を囲むように第2の静電チャック80が設けられている。第2の静電チャック80は、略環状に延在している。第2の静電チャック80は、三つの電極、即ち、電極80a、電極80b、及び80cを有している。これら電極80a、電極80b、及び電極80cは、一対の絶縁層又は絶縁シート間に設けられている。或いは、電極80a、電極80b、及び電極80cは、絶縁層の内層として設けられる。
図3に示すように、一実施形態において、電極80a、電極80b、及び80cは、略扇型の平面形状を有しており、第2の静電チャック80の中心軸線に対して周方向に配列されている。電極80a、電極80b、及び電極80cにはそれぞれ、三つの電源、即ち、電源82a、電源82b、及び電源82cが電気的に接続されている。電源82a、電源82b、及び電源82cは、交流電圧を発生する。一実施形態においては、これら電源82a、電源82b、及び電源82cによって発生される交流電圧は、同じ周波数を有し、0Vの平均電圧を有する。また、これら電源82a、電源82b、及び電源82cによって発生される交流電圧は、互いに異なる位相を有している。例えば、電源82a、電源82b、及び電源82cによって発生される交流電圧の間の位相は、120度に設定される。
プラズマ処理装置10では、第2の静電チャック80の電極80a、電極80b、及び電極80cにそれぞれ、互いに異なる位相を有する三つの交流電圧が与えられる。電極80a、電極80b、及び電極80cに三つの交流電圧が与えられると、第2の静電チャック80の表面が帯電して、第2の静電チャック80の表面とフォーカスリングFRとの間に電位差が生じる。これにより、第2の静電チャック80にフォーカスリングFRが静電吸着される。
また、電極80a、電極80b、及び電極80cのそれぞれに印加される交流電圧が互いに異なる位相を有しているので、第2の静電チャック80の電極80a、電極80b、及び電極80cに印加される交流電圧の全てが同時に同電位になることがない。したがって、電極80a、電極80b、及び電極80cに三つの交流電圧をそれぞれ印加している期間、即ち、印加期間では、電極80a、電極80b、及び電極80cのうち何れか二つの電極の間に電位差が発生し、第2の静電チャック80の表面に、正に帯電した領域と負に帯電した領域が発生する。また、第2の静電チャック80に対するフォーカスリングFRの対向面は、第2の静電チャック80の表面とは逆の極性で帯電する。その結果、当該印加期間では、第2の静電チャック80の表面とフォーカスリングFRとの間に、常時、電位差が生じる。故に、当該印加期間において吸着力が常に発生している状態が維持される。また、電極80a、電極80b、及び電極80cの各々には交互に正電圧及び負電圧となる交流電圧が印加されるので、第2の静電チャック80の表面の帯電量を抑制することが可能である。よって、第2の静電チャック80の吸着力の低下を抑制することが可能であり、且つ、第2の静電チャック80の表面の残留電荷を抑制することが可能である。
また、一実施形態においては、図1に示すように、載置台16には、ガスラインGLが形成されている。ガスラインGLは、第2の静電チャック80の表面(即ち、上面)において環状の開口を画成するように形成されている。このガスラインGLは、第2の静電チャック80の上面とフォーカスリングFRとの間に伝熱ガスを供給するためのガスラインであり、伝熱ガス供給機構90に接続されている。伝熱ガス供給機構90は、ガスラインGLにHeガスといった伝熱ガスを供給し得る。また、このガスラインGLには、減圧ポンプ92が接続されている。
減圧ポンプ92及びガスラインGLは、大気圧環境下においてフォーカスリングFRを第2の静電チャック80に吸引して、フォーカスリングFRを当該第2の静電チャック80に仮固定するために用いることができる。より具体的に説明すると、フォーカスリングFRを第2の静電チャック80上に載置する作業は、空間Sの圧力を大気圧に設定した状態で行われる。次いで、治具を用いて、フォーカスリングFRが第2の静電チャック80に対して位置決めされ、当該第2の静電チャック80上に載置される。次いで、減圧ポンプ92が作動される。これにより、ガスラインGLと空間Sとの間に圧力差が生じ、フォーカスリングFRが第2の静電チャック80に対して吸引される。次いで、空間Sが減圧され、その後、電極80a、電極80b、及び電極80cに三つの交流電圧がそれぞれ印加される。これにより、仮固定されたフォーカスリングFRが第2の静電チャック80に静電吸着される。
このように、プラズマ処理装置10では、大気圧環境下において第2の静電チャック80の電極80a、電極80b、電極80cに電圧を印加せずにフォーカスリングFRを仮固定することができるので、感電を避けることが可能であり、第2の静電チャック80への大気中の粉塵の吸着を抑制することが可能である。また、第2の静電チャック80にフォーカスリングFRを吸引した状態で処理容器12内の空間Sが減圧されるので、減圧時のフォーカスリングFRの位置ずれを抑制することが可能である。さらに、フォーカスリングFRの位置ずれを抑制できるので、ウエハWの処理時のフォーカスリングFRの温度の制御性を向上させることが可能である。また更に、第2の静電チャック80にフォーカスリングFRを吸引した状態で、当該フォーカスリングFRを第2の静電チャック80に静電吸着することができるので、第2の静電チャック80による静電吸着の開始時にフォーカスリングFRに与えられる衝撃力を緩和することが可能である。
以下、載置台に被吸着物を吸着する方法の一実施形態について説明する。図4は、載置台に被吸着物を吸着する方法の一実施形態を示す流れ図である。以下においては、プラズマ処理装置10を処理装置として用いる場合の一例に従って、図4に示す方法MT1を説明する。
図4に示すように、方法MT1は、工程ST1及び工程ST2を含んでいる。工程ST1では、被吸着物が載置台16の静電チャック上に載置される。被吸着物の一例は、ウエハWであり、この一例においては、第1の静電チャック70上にウエハWが載置される。なお、ウエハWが被吸着物である場合には、処理容器12内の空間Sの圧力が大気圧よりも低い圧力に減圧された状態で、ウエハWが処理容器12内に搬入されて、第1の静電チャック70上に載置される。
また、被吸着物の別の一例は、フォーカスリングFRであり、この一例においては、第2の静電チャック80上にフォーカスリングFRが載置される。なお、フォーカスリングFRが被吸着物である場合には、処理容器12内の空間Sの圧力が大気圧に設定された状態で、フォーカスリングFRが処理容器12内に搬入されて、第2の静電チャック80上に載置される。
続く工程ST2では、静電チャックの三つの電極にそれぞれ、互いに位置の異なる三つの交流電圧が印加される。ウエハWが被吸着物である一例においては、第1の静電チャック70の電極70a、電極70b、及び電極70cにそれぞれ、互いに位相の異なる三つの交流電圧が印加される。これにより、ウエハWが第1の静電チャック70に静電吸着される。
また、フォーカスリングFRが被吸着物である一例においては、第2の静電チャック80の電極80a、電極80b、及び電極80cにそれぞれ、互いに位相の異なる三つの交流電圧が印加される。これにより、フォーカスリングFRが第2の静電チャック80に静電吸着される。
ここで、図5を参照する。図5のグラフ(a)には、静電チャックの三つの電極に印加される交流電圧の波形、及び、静電チャックの電極間の電位差が示されており、図5のグラフ(b)には、位相と各電極直上での静電チャックの吸着力の関係が示されている。図5のグラフ(a)では、凡例「第1AC」により示す波形が、第1の静電チャック70の電極70a又は第2の静電チャック80の電極80aに印加される交流電圧の波形であり、凡例「第2AC」により示す波形が、第1の静電チャック70の電極70b又は第2の静電チャック80の電極80bに印加される交流電圧の波形であり、凡例「第3AC」により示す波形が、第1の静電チャック70の電極70c又は第2の静電チャック80の電極80cに印加される交流電圧の波形を示している。また、図5のグラフ(a)では、凡例「第1の電位差」により示す電位差が、電極70aと電極70bとの間の電位差、又は、電極80aと電極80bとの間の電位差であり、凡例「第2の電位差」により示す電位差が、電極70aと電極70cとの間の電位差、又は、電極80aと電極80cとの間の電位差であり、凡例「第3の電位差」により示す電位差が、電極70bと電極70cとの間の電位差、又は、電極80bと電極80cとの間の電位差である。また、図5のグラフ(b)では、凡例「第1電極」により示す吸着力は、電極70a又は電極80aの直上での静電チャックの吸着力であり、凡例「第2電極」により示す吸着力は、電極70b又は電極80bの直上での静電チャックの吸着力であり、凡例「第3電極」により示す吸着力は、電極70c又は電極80cの直上での静電チャックの吸着力である。また、図5のグラフ(b)では、凡例「平均」により示す吸着力は、静電チャックの全領域における吸着力の平均値を表わしている。
図5のグラフ(a)に示すように、工程ST2において静電チャックの三つの電極にそれぞれ印加される三つの交流電圧の全てが同時に同電位になることがない。したがって、静電チャックの三つの電極に対して三つの交流電圧をそれぞれ印加している期間、即ち、印加期間では、静電チャックの三つの電極のうち何れか二つの電極間に電位差が発生する。これにより、静電チャックの表面に正に帯電した領域と負に帯電した領域が発生する。また、静電チャックの表面に対する被吸着物の対向面は、静電チャックの表面とは逆の極性で帯電する。その結果、当該印加期間において静電チャックの表面と被処理体との間に、常時、電位差が生じる。故に、図5のグラフ(b)に示すように、当該印加期間において吸着力が常に発生している状態が維持される。また、静電チャックの三つの電極の各々には交互に正電圧及び負電圧となる交流電圧が印加されるので、静電チャックの表面の帯電量を抑制することが可能である。よって、静電チャックの吸着力の低下を抑制することが可能となり、且つ、静電チャックの表面の残留電荷を抑制することが可能となる。
次いで、載置台に被吸着物を吸着する方法の別の一実施形態について説明する。図6は、載置台に被吸着物を吸着する方法の別一実施形態を示す流れ図である。以下においては、プラズマ処理装置10を処理装置として用いる場合の一例に従って、図6に示す方法MT2を説明する。図6に示す方法MT2では、被吸着物は、フォーカスリングFRである。
方法MT2は、図6に示すように、工程ST1及び工程ST2との間に行われる工程STa、工程STb、及び工程STcを含んでおり、さらに、工程ST2の後に行われる工程STdを含んでいる。
工程ST1では、処理容器12内の空間Sの圧力は、大気圧に設定される。そして、工程ST1では、フォーカスリングFRが、空間S内に搬入され、第2の静電チャック80に対して位置決めされて、当該第2の静電チャック80上に載置される。工程ST1におけるフォーカスリングFRの位置決めには、治具が使用され得る。
続く工程STaでは、減圧ポンプ92が作動されることにより、フォーカスリングFRが第2の静電チャック80に吸引される。これにより、第2の静電チャック80に対してフォーカスリングFRが仮固定される。
続く工程STcでは、治具が取り外され、排気装置50を作動させることによって処理容器12内の空間Sが減圧される。この工程STcにおいても、フォーカスリングFRが第2の静電チャック80に吸引された状態が維持される。続く工程ST2では、第2の静電チャック80の電極80a、電極80b、及び電極80cにそれぞれ、互いに位相の異なる三つの交流電圧が印加される。これにより、第2の静電チャック80にフォーカスリングFRが静電吸着される。続く工程STdでは、減圧ポンプ92が停止され、ガスラインGLに伝熱ガスが供給される。
かかる方法MT2では、大気圧環境下での作業時、即ち、工程ST1、工程STa、及び、工程STbの作業時には、第2の静電チャック80の電極に電圧を印加せずに、フォーカスリングFRを仮固定することができる。よって、大気圧環境下での作業時の感電を避けることが可能であり、また、第2の静電チャック80への大気中の粉塵の吸着を抑制することが可能である。
また、工程STcでの減圧時には、フォーカスリングFRが第2の静電チャック80に対して吸引された状態が維持されているので、空間Sの減圧時の気流等によってフォーカスリングFRが位置ずれすることを抑制することが可能である。さらに、方法MT2では、フォーカスリングFRの位置ずれを抑制できるので、ウエハWの処理時のフォーカスリングFRの温度の制御性を向上させることが可能である。また更に、方法MT2では、第2の静電チャック80にフォーカスリングFRを吸引した状態で、当該フォーカスリングFRを第2の静電チャック80に静電吸着するので、工程ST2の開始時にフォーカスリングFRに与えられる衝撃力を緩和することが可能である。
以下、第1の静電チャックの別の実施形態について説明する。図7は、別の実施形態に係る第1の静電チャックを示す平面図である。図7に示す第1の静電チャック170は、第1の静電チャック70に代えて、プラズマ処理装置10に用いられ得る。第1の静電チャック170は、電極170a、電極170b、及び、電極170cを備えている。電極170a、電極170b、及び、電極170cは、第1の静電チャック170の中心軸線を中心にして環状に延在している。また、電極170a、電極170b、及び、電極170cは、第1の静電チャック170の中心軸線に対して同軸に設けられている。具体的には、電極170aの外側に電極170bが設けられており、電極170bの外側に電極170cが設けられている。電極170a、電極170b、及び、電極170cにはそれぞれ、電源72a、電源72b、及び電源72cが接続されている。この第1の静電チャック170においても、電極170a、電極170b、及び、電極170cにそれぞれ、異なる位相を有する三つの交流電圧が印加されるようになっている。この第1の静電チャック170と上述の第1の静電チャック70を対比すれば明らかなように、第1の静電チャックに設けられる三つの電極の形状及び配置は、任意に変更可能である。
次いで、第2の静電チャックの別の実施形態について説明する。図7は、別の実施形態に係る第2の静電チャックを示す平面図である。図8に示す第2の静電チャック180は、第2の静電チャック80に代えて、プラズマ処理装置10に用いられ得る。第2の静電チャック180は、電極180a、電極180b、及び、電極180cを備えている。電極180a、電極180b、及び、電極180cは、第2の静電チャック180の中心軸線を中心にして環状に延在している。また、電極180a、電極180b、及び、電極180cは、第2の静電チャック180の中心軸線に対して同軸に設けられている。具体的には、電極180aの外側に電極180bが設けられており、電極180bの外側に電極180cが設けられている。電極180a、電極180b、及び、電極180cにはそれぞれ、電源82a、電源82b、及び電源82cが接続されている。この第2の静電チャック180においても、電極180a、電極180b、及び、電極180cにそれぞれ、異なる位相を有する三つの交流電圧が印加されるようになっている。この第2の静電チャック180と上述の第2の静電チャック80を対比すれば明らかなように、第2の静電チャックに設けられる三つの電極の形状及び配置は、任意に変更可能である。
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述した実施形態のプラズマ処理装置10は、第1の静電チャック及び第2の静電チャックを備えているが、別の実施形態では、プラズマ処理装置は、第1の静電チャック及び第2の静電チャックのうち一方のみを備えていてもよい。また、プラズマ処理装置10は、下部電極に二つの高周波電力を供給するタイプのプラズマ処理装置であるが、下部電極に高周波バイアス電力が供給され、上部電極にプラズマ生成用の高周波電力が供給されてもよい。また、プラズマ処理装置10は、容量結合型のプラズマ源を有しているが、プラズマ処理装置のプラズマ源は限定されるものではない。例えば、プラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ源、又は、マイクロ波といった表面波を発生するプラズマ源を備えていてもよい。
また、上述した実施形態の処理装置はプラズマ処理装置であったが、処理装置は、減圧環境下で被処理体を処理するものであれば、任意の処理装置であってもよい。
また、上述した実施形態では、静電チャックの三つの電極に三つの電源が個別に接続されていたが、三つの交流電圧は、一つの電源から発生される交流電圧に基づくものであってもよい。
10…プラズマ処理装置、12…処理容器、S…空間、16…載置台、50…排気装置、70…第1の静電チャック、70a,70b,70c…電極、72a,72b,72c…電源、80…第2の静電チャック、80a,80b,80c…電極、82a,82b,82c…電源、FR…フォーカスリング、GL…ガスライン、90…伝熱ガス供給機構、92…減圧ポンプ、W…ウエハ。

Claims (1)

  1. 減圧可能な空間内で被処理体を処理するための処理装置において該空間を画成する処理容器内に設けられた載置台にフォーカスリングを吸着する方法であって、
    前記空間内の圧力を大気圧に設定した状態で、前記載置台の静電チャック上に前記フォーカスリングを載置する工程と、
    静電チャック上に前記フォーカスリングを載置する前記工程の後に、前記静電チャックと前記フォーカスリングとの間に伝熱ガスを供給するガスラインに接続された減圧ポンプを作動させることにより、前記フォーカスリングを前記静電チャックに吸引する工程と、
    吸引する前記工程の後に、前記処理容器内の空間を減圧する工程と、
    減圧する前記工程の後に、前記静電チャックの三つの電極にそれぞれ、互いに位相の異なる三つの交流電圧を印加する工程と、
    を含む方法。
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