JP6224404B2 - ポリエチレン系樹脂発泡シート - Google Patents

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Description

本発明は、ポリエチレン系樹脂発泡シートに関し、詳しくは、有機物質等の移行による被包装物に対する汚染が少ないポリエチレン系樹脂発泡シートに関する。
ポリエチレン系樹脂発泡シート(以下、単に発泡シートともいう。)は、緩衝性に優れることから包装材として広く使用されてきた。しかし、透明性や光沢性が要望される部材の包装材として使用されると、被包装物の表面が汚染され、白っぽく見える現象(いわゆるくもり現象)を引き起こすことがあった。
くもり現象の原因は、製造直後のポリエチレン系樹脂発泡シートの収縮を防止するために添加される収縮防止剤や寸法安定剤が、発泡シートから被包装物に移行することによるものであると考えられる。該収縮防止剤や寸法安定剤としては、多価アルコールの高級脂肪酸エステル(具体的には、ステアリン酸モノグリセライド)、長鎖脂肪酸とポリオールとの部分エステル、高級アルキルアミン、脂肪酸アミド、オレフィン性不飽和カルボン酸コポリマー等が使用されてきた。
前記収縮防止剤や寸法安定剤による汚染を解決するために、特許文献1や特許文献2においては、収縮防止剤や寸法安定剤の種類や添加量の検討がなされており、これにより汚染の程度はかなり改善された。
しかし、特許文献1、2の技術においても、前記収縮防止剤などの添加剤が微量ながら用いられているため、全く上記添加剤を含まないものと比べると極めて薄くではあるが製品の表面にくもり現象の痕跡が見られ、なお十分ではなかった。
そこで、特許文献3においては特定密度のポリエチレン樹脂とイソブタンを60%以上とする特定の発泡剤を用いる方法が提案された。この方法によれば、前記収縮防止剤や前記安定剤等の収縮防止効果を有する添加剤(以下、収縮防止剤と総称する。)
を使用しないでも発泡シートの収縮を抑制できると共に、汚染の発生がない高発泡倍率(低見かけ密度)のポリエチレン系樹脂発泡シートを得ることができるようになった。
しかし、エレクトロニクス機器の包装において、収縮防止剤が添加されていない発泡シートを用いたにもかかわらず、被包装物の汚染が発生するという問題が起きた。この問題に関して、特許文献4には、発泡シートの製造を容易にするために添加される脂肪酸化合物が、新たなる汚染の原因であることが開示され、さらに脂肪酸化合物を添加しないでポリエチレン系樹脂発泡シートを製造する方法が開示されている。
特開平10−130415号公報 特開2001−322669号公報 特開2007−238779号公報 特開2009−155423号公報
前記のように、被包装物の汚染を防止するために発泡シートからの汚染物質の移行を防止する試みは種々試みられてきたが、未だ改良の余地が残されており、さらに優れた移行防止性能を有し、かつ緩衝性に優れる発泡シートの開発が強く望まれている。
本発明は、前記の問題点に鑑みなされたものであり、発泡シートから被包装物への汚染物質の移行量が極めて少なく、かつ緩衝性に優れるポリエチレン系樹脂発泡シートを提供することを目的とするものである。
本発明によれば、以下に示すポリエチレン系樹脂発泡シート、ガラス基板用間紙が提供される。
[1] 曲げ弾性率300MPa未満であり、50℃におけるn−ヘプタン抽出量が0.5重量%以下であるポリエチレン系樹脂を基材樹脂とする、見かけ密度20〜300kg/m、厚み0.05〜2.0mmの発泡シートであって、
該発泡シートの厚み方向の平均気泡径が0.02mm以上であり、該発泡シートの気泡変形率(厚み方向の平均気泡径/幅方向の平均気泡径)が0.3〜0.9であり、
該発泡シートの50℃におけるn−ヘプタン抽出量が0.5重量%以下であり、該発泡シートに帯電防止剤及び収縮防止剤が添加されていないことを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シート。
[2] 前記発泡シートの厚みが0.05〜0.5mmであることを特徴とする前記1に記載のポリエチレン系樹脂発泡シート。
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートは、その基材樹脂が曲げ弾性率300MPa未満のポリエチレン系樹脂であると共に、基材樹脂についての50℃におけるn−ヘプタン抽出量が0.5重量%以下であり、且つ得られた発泡シートの50℃におけるn−ヘプタン抽出量が0.5重量%以下であると共に、該発泡シートに帯電防止剤及び収縮防止剤が添加されていないので、汚染物質の移行汚れが防止され、被包装物に対する表面汚染性が極めて低く、緩衝性に優れた発泡シートとなっており、なおかつ発泡シートの見かけ密度が20〜300kg/m、厚みが0.05〜2.0mm、厚み方向の平均気泡径が0.02mm以上であると共に、気泡変形率(厚み方向の平均気泡径/幅方向の平均気泡径)が0.3〜0.9であることにより、該発泡シートに収縮防止剤が添加されていないにもかかわらず、製造後の収縮からの厚み回復に優れている。
以下、本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートについて詳細に説明する。
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シート(以下、単に発泡シートともいう。)を構成する基材樹脂は曲げ弾性率300MPa未満のポリエチレン系樹脂である。曲げ弾性率が300MPa未満のポリエチレン系樹脂は、柔軟性に富むので、得られた発泡シートは柔らかく緩衝性に優れたものとなる。かかる観点から、曲げ弾性率は、好ましくは270MPa以下、より好ましくは250MPa以下である。一方、曲げ弾性率の下限は100MPaであり、好ましくは120MPaである。
本発明におけるポリエチレン系樹脂とは、樹脂中のエチレン成分が50モル%以上の樹脂をいい、曲げ弾性率300MPa未満のポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(PE−LD)、直鎖状低密度ポリエチレン(PE−LLD)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVAC)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸エチル(EEAK)等が挙げられる。
また、高密度ポリエチレン(PE−HD)であっても、前記曲げ弾性率300MPa未満のポリエチレン系樹脂と混合して、その混合樹脂の曲げ弾性率が300MPa未満であれば用いることができる。
なお、一般に、低密度ポリエチレンとは、長鎖分岐構造を有する密度が910kg/m以上930kg/m未満のポリエチレン系樹脂をいい、直鎖状低密度ポリエチレンとは、エチレンと炭素数4〜8のα−オレフィンとの共重合体であって実質的に分子鎖が線状である密度が910kg/m以上930kg/m未満のポリエチレン系樹脂をいい、高密度ポリエチレンとは、密度が930kg/m以上のポリエチレン系樹脂をいう。
前記曲げ弾性率の測定方法は、JIS K7171(1994年)に準じ、厚み2mm×幅25mm×長さ40mmの試験片を用いて、スパン間距離30mm、圧子の半径R1が5.0mm、支持台の半径R2が2.0mm、試験速度が2mm/分の条件で測定され、測定値から算出された値を採用する。
なお、発泡シートを構成する樹脂の試験片としては、発泡シートを加熱プレス、冷却プレスを使用して脱泡して非発泡の樹脂とし、該非発泡の樹脂を複数重ね合わせて、加熱プレス、冷却プレスを使用して前記した試験片の厚みの非発泡樹脂シートを得、該非発泡樹脂シートから上記試験片寸法に切り出されたものを使用する。
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートにおいては、50℃でのヘプタン抽出量が0.5重量%以下であることを要する。該発泡シートを構成する、前記ポリエチレン系樹脂には低分子量成分が含有されており、ヘプタンで抽出されるものの多くはポリエチレン系樹脂中の低分子量成分であると推測される。このヘプタンにより抽出される低分子量成分が被包装物への汚染物質となることを本発明等は見出した。
該ヘプタン抽出量が0.5重量%超の場合には、被包装物に対する、ポリエチレン系樹脂発泡シート中からの低分子量成分等の有機物の移行量が多くなり、被包装物が汚染される虞がある。かかる観点から、ポリエチレン系樹脂発泡シートのヘプタン抽出量は0.4重量%以下が好ましく、0.3重量%以下が更に好ましく、0.2重量%以下が特に好ましい。
前記ヘプタン抽出量が少ないポリエチレン系樹脂としては、前記ポリエチレン系樹脂からヘプタン等の溶媒によって低分子量成分を抽出除去したものが挙げられる。また、前記ポリエチレン系樹脂のうち、スラリー法や溶液法を用いて製造されるものが挙げられる。スラリー法や溶液法により製造されるポリエチレン系樹脂は、製造時の脱溶媒工程において低分子量成分が除去されており、前記ヘプタン等の溶媒による抽出除去処理が不要なので、コストや廃液処理の観点から好ましい。なお、ヘプタン抽出量が0.5重量%超のポリエチレン系樹脂であっても、ヘプタン抽出量が0.5重量%以下のポリエチレン系樹脂と混合して、全体として0.5重量%以下としたポリエチレン系樹脂を用いても良い。
前記ヘプタン抽出量は次のように求められる。ポリエチレン系樹脂2gをフラスコ内に投入し、ノルマルヘプタン400mlを加え、50℃にて48時間加熱還流する。得られた溶液を濾過し、分取された残留物から溶媒を加熱真空下にて除去する。得られた残留物の重量と投入したポリエチレンの量の差をヘプタン抽出量とし、投入したポリエチレン系樹脂の量を基準として換算し、重量%にて表す。
本発明の発泡シートのヘプタン抽出量も同方法によって求めることができる。すなわち、本発明の発泡シート2gを5mm角に切断し、フラスコ内に投入し、ノルマルヘプタン400mlを加え、撹拌子で撹拌しながら50℃にて48時間加熱還流する。後はポリエチレン系樹脂と同様にしてヘプタン抽出量を算出することができる。
なお、本発明の目的が達成可能な限度において、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体やその水添物等の熱可塑性エラストマー、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム等のゴム等の重合体を前記ポリエチレン系樹脂とともに使用することができる。但し、発泡シート全体として、ヘプタン抽出量が0.5重量%以下であることを要する。
さらに、ポリエチレン系樹脂としては、前記したポリエチレン系樹脂の中でも、190℃における溶融張力が20mN〜400mNのものが好ましい。190℃における溶融張力が20mN以上であれば、低見かけ密度、高独立気泡率の発泡シートを製造しやすいので好ましい。一方、190℃における溶融張力が400mN以下であれば、押出する際、樹脂の粘度が過度に上昇することがなく発泡シートを製造しやすいので好ましい。低見かけ密度の発泡層を得るのが容易である点から、190℃における溶融張力は30mN以上であることがより好ましく、さらに好ましくは40mN以上である。また連続気泡率の低い発泡層を得るのが容易となる点から、190℃における溶融張力は、300mN以下であることがより好ましく、さらに好ましくは250mN以下である。
ポリエチレン系樹脂の190℃における溶融張力(メルトテンション或いはMTと記載することもある)は、例えば、株式会社東洋精機製作所製のメルトテンションテスターII型等によって測定することができる。具体的には、ノズル径2.095mm、長さ8mmのノズルを有するメルトテンションテスターを用い、上記ノズルから樹脂温度190℃、押出のピストン速度10mm/分の条件で樹脂を紐状に押し出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛けた後、5rpm/秒(紐状物の捲取り加速度:1.3×10−2m/秒)程度の割合で捲取り速度を徐々に増加させていきながら直径50mmの捲取りローラーで捲取る。
溶融張力を求める具体的な方法は、捲取り速度500(rpm)において捲取りを行って張力検出用プーリーと連結する検出機により検出される紐状物の溶融張力を経時的に測定し、縦軸にMT(mN)を、横軸に時間(秒)を取ったチャートに示すと、振幅をもったグラフが得られる。次に振幅の安定した部分の、振幅の中央値(X)をとる。本発明では、この値(X)を溶融張力とする。尚、測定に際し、まれに発生する特異的な振幅は無視するものとする。
但し、張力検出用プーリーに掛けた紐状物が捲取り速度500(rpm)までに切断した場合は、紐状物が切断したときの捲取り速度R(rpm)を求める。次いでR×0.7(rpm)の一定の捲取り速度において、前述と同様にして得られるグラフより、振幅の中央値(X)を溶融張力として採用する。
前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、低見かけ密度の発泡シートを得ることができることから0.1〜20g/10分が好ましく、より好ましくは0.5〜15g/10分、更に好ましくは、1〜12g/10分である。
なお、本発明におけるMFRはJIS K 7210(1999)の付属書A表1の条件Dに準拠して測定される。
本発明の発泡シートの厚みは0.05〜2mmである。発泡シートの厚みが薄すぎると、緩衝材として使用する場合に被包装物の保護性が不十分となるおそれがある。一方、発泡シートの厚みが厚すぎると、包装材として発泡シートの取扱い性が悪くなるおそれがある。また、厚みが厚すぎると、移行性を小さくするために収縮防止剤を用いることなく発泡シートを製造しようとする場合に、厚みの回復が遅くなってしまうおそれがある。かかる観点から、発泡シートの厚みの上限は、好ましくは1.5mmであり、より好ましくは0.7mm、更に好ましくは0.5mm、特に好ましくは0.3mmである。一方、その下限は、0.06mmが好ましく、より好ましくは0.08mm、さらに好ましくは0.1mmである。
前記発泡シートの厚みの測定方法は以下の通りである。
まず、発泡シートを押出方向に直行する幅方向に垂直に切断し、該切断面の厚みを顕微鏡により等間隔に幅方向に10点撮影を行い、撮影した各点における発泡シートの厚みを測定し、得られた値のそれぞれの算術平均値を発泡シートの厚みとする。
本発明の発泡シートの見かけ密度は20〜300kg/mである。該発泡シートの見かけ密度が小さすぎると包装材料として強度不足になる虞がある。この観点から、該見かけ密度の下限は、25kg/mが好ましく、30kg/mがより好ましく、45kg/mが更に好ましい。一方、発泡シートの見かけ密度が大きすぎると、使用される用途によっては得られた発泡シートの緩衝性が低下不足する虞がある。かかる観点から該見かけ密度の上限は270kg/mが好ましく、250kg/mがより好ましく、200kg/mが更に好ましく、150kg/mが特に好ましい。
本発明において、発泡シートの見かけ密度の測定方法は下記の通りである。まず前述した方法により、発泡シートの厚みを測定し、次に坪量を測定する。発泡シートの坪量(g/m)は、発泡シートの全幅にわたって幅10cm×発泡シートの厚みの試験片を切り出し、試験片の質量(g)を測定した後、試験片の面積(m:シートの幅(m)×0.1m)でその質量を除し、単位換算することで得られる(g/m)。見かけ密度(kg/m)は、坪量(g/m)を厚みで割算し単位換算することで得られる。
本発明の発泡シートの坪量は、15〜300kg/mであることが好ましい。この範囲内であれば、十分な強度を有し、緩衝性にも優れる発泡シートとなる。かかる観点から発泡シートの坪量は、20〜250kg/mがより好ましく、25〜200kg/mがさらに好ましい。
本発明においては、発泡シートの厚み方向の平均気泡径が0.02mm以上であることを要する。厚み方向の平均気泡径が0.02mm以上であれば、表面平滑性に優れ、外観が良好な発泡シートとなる。また、該平均気泡径が小さすぎると発泡シート製造時、コルゲートと呼ばれる幅方向のヒダが発生し、均一な厚みの発泡シートを得ることができなくなる虞がある。
一方、該平均気泡径が大きすぎると、緩衝性が低下し、緩衝包装材として役に立たなくなる虞がある。かかる観点から、厚み方向の平均気泡径としては0.04〜1mmが好ましく、より好ましくは0.06〜0.7mmである。
更に、本発明においては、発泡シートの気泡変形率(厚み方向の平均気泡径/幅方向の平均気泡径)が0.3〜0.9であることを要する。該気泡変形率が大きすぎると、押出発泡により発泡シートを得る際にコルゲートが取りきれず発泡シートの厚み精度が低下する虞がある。一方、該気泡変形率が小さすぎると、緩衝性が低下する上に、収縮防止剤を添加しないで発泡シートを製造しようとすると、製造後の収縮からの厚み回復に時間がかかりすぎる。かかる観点から、好ましい該気泡変形率は0.35〜0.8であり、更に好ましくは0.4〜0.75であり、特に好ましくは0.5〜0.7である。
発泡シートの厚み方向の平均気泡径に対する発泡シートの厚みの比は、1〜5であることが好ましく、1.1〜3がより好ましく、1.2〜2.5がさらに好ましい。
前記範囲内であれば発泡シート表面に凹状の箇所が生じず、厚み精度に優れると共に、強度にも優れる発泡シートが得られる。
気泡変形率は、例えば以下の通りに調整される。幅方向の気泡径に対する厚み方向の気泡径が小さくなるように調整したい場合には、拡幅比(以下、ブローアップ比ともいう。)を大きくする方法で調整できる。一方、幅方向の気泡径に対する厚み方向の気泡径が大きくなるように調整したい場合には、ブローアップ比を小さくする方法で調整できる。
なお、幅方向の平均気泡径に対する押出方向の平均気泡径の比は、ダイリップ部からの吐出速度と引取速度とのバランスを変えることにより調整することができる。
本発明の発泡シートを製造するには、ブローアップ比(マンドレルの直径/環状ダイリップ部の直径)を2〜5の範囲内に設定することが好ましい。この範囲のブローアップ比とすることによって、収縮防止剤が含まれていない場合であっても、特に厚み回復性に優れる発泡シートとすることができる。即ち、発泡シートの汚染原因となる収縮防止剤等の添加剤を使用しなくても良く、n−ヘプタン抽出量を高めるおそれを低減することが可能になる。
さらに、ブローアップ比は所望される見かけ密度にあわせて設定することが好ましい。具体的には、見かけ密度が45〜300kg/mの場合、ブローアップ比は2〜3に設定し、見かけ密度が25〜45kg/mの場合3〜4に設定し、見かけ密度が18〜25kg/mの場合4〜5に設定すれば、押出発泡時のコルゲートを抑制し、さらに発泡後の厚み回復に必要な気泡変形率の発泡シートにすることができる。
上記範囲のブローアップ比とすることによって、収縮防止剤が含まれていない場合であっても、厚み回復性に優れる発泡シートを得ることができる。即ち、発泡シートの汚染原因となる収縮防止剤等の添加剤を使用しなくても良いこととなり、n−ヘプタン抽出量を高めるおそれを低減することが可能になる。
なお、前記ブローアップ比が小さすぎると、発泡に伴う円周方向への発泡シートのコルゲートを緩和することができず、発泡シートの厚み精度が低下する虞がある。一方、ブローアップ比が大きすぎると、気泡変形率が小さくなりすぎてしまう。
本明細書において、厚み方向の平均気泡径、幅方向の平均気泡径は、それぞれ以下のようにして測定される。
厚み方向の平均気泡径:切り出した発泡体断面の幅方向中心部を、押出方向に沿って垂直に切断された断面における中央部付近に発泡体の全厚みに線分を引き、この線分上にある気泡の数を測定し、線分の長さを気泡数で割った値を厚み方向の平均気泡径(mm)として採用する。
幅方向の平均気泡径:発泡体の押出方向に対して直交する垂直断面の中央部付近に幅方向に長さ30mmの線分を引き、この線分上にある気泡の数を測定し、線分の長さを気泡数で割った値を幅方向の平均気泡径(mm)として採用する。
なお、これらの線分の始点は気泡壁の外側の端から引くこととする。
次に、本発明のポリエチレン系樹脂発泡シート製造方法の好ましい例について説明する。本発明の発泡シートは、環状ダイを用いる押出発泡方法により製造される。
該押出発泡方法においては、例えば、前記n−ヘプタン抽出量が0.5重量%以下のポリエチレン系樹脂と気泡調整剤と必要に応じた添加剤とを押出機に供給し、加熱溶融して樹脂溶融物とし、次いで、該樹脂溶融物に物理発泡剤を圧入し、さらに混練して発泡性溶融樹脂とし、押出機内において該発泡性溶融樹脂を発泡可能な温度に調整し、環状ダイに導入しダイ先端のリップ部から大気中に押出し、該発泡性溶融樹脂を発泡させて筒状発泡体を形成し、該筒状発泡体を、マンドレルにて拡張(ブローアップ)しつつ引取りながら押出方向に沿って切り開くことにより、発泡シートを得ることができる。
前記発泡性溶融樹脂の樹脂温度は、100〜120℃が好ましく、より好ましくは105〜115℃である。該樹脂温度が低すぎると、良好な発泡体を形成することができなくなる。一方、該樹脂温度が高すぎると、発泡性溶融樹脂の溶融粘度が低くなりすぎて、良好な発泡体を形成することができなくなる。
本発明の発泡シートにおいては、前記気泡調整剤として、有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。上記気泡調整剤の中でも、緩衝性に優れる発泡シートを得るという観点から、クエン酸、重炭酸ナトリウム又はタルクを使用することが好ましい。
本発明の発泡シートは、前記の通り特定の平均気泡径と気泡変形率を有するものであり、製造後に収縮しても厚みの回復性に優れるものである。しかし、n−ヘプタン抽出量が0.5重量%以下となる範囲であれば、従来から使用されているステアリン酸モノグリセライド等の収縮防止剤を添加しても良い。
その場合、前記収縮防止剤の含有量は、発泡シートを構成する基材樹脂に対して概ね0.3重量%以下が好ましく、より好ましくは0.2重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下であり、添加しないことが特に好ましい。
また、n−ヘプタン抽出量が0.5重量%以下となる範囲において、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、充填剤等の添加剤を加えても良い。
前記物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ化炭化水素、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類などの有機系物理発泡剤、酸素、窒素、二酸化炭素、空気、水等の無機系発泡剤が挙げられる。場合によっては、アゾジカルボンアミド等の分解型発泡剤を使用することもできる。これらの物理発泡剤は、2種以上を混合して使用することが可能である。これらのうち、発泡性の観点から有機系物理発泡剤が好ましく、中でもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
該発泡剤添加量は、発泡剤の種類、目的とする見かけ密度に応じて調整する。例えば、物理発泡剤としてイソブタン30重量%とノルマルブタン70重量%とのブタン混合物などの物理発泡剤を用いた場合、基材樹脂100重量部当たり2〜35重量部が好ましく、より好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは4〜25重量部である。
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートは、被包装物への有機物の移行量が小さく抑えられたものなので、液晶用ガラス等の間紙やエレクトロニクス機器の包装材などとして好適に使用できるものである。
以下、実施例、比較例により、本発明を具体的に説明する。
発泡シートの製造に用いたポリエチレン系樹脂を一覧表として表1に示す。なお、略称Bにて示される低密度ポリエチレン系樹脂は、略称Cで示される低密度ポリエチレン系樹脂(ダウケミカル社製、NUC8321)を50℃のヘプタン中に24時間浸漬し、抽出により低分子量成分を抽出したものである。
気泡調整剤
松村産業株式会社製タルク:商品名ハイフィラー#12
装置
直径90mmの第一押出機と直径120mmの第二押出機の2台の押出機が直列に接続されたタンデム押出機を備え、第二押出機の出口に環状ダイが取り付けられた装置を用いた。
実施例1〜4、比較例1〜4
表2に示す直径の環状ダイを用い、表2に示す種類のポリエチレン系樹脂と、表2に示す量のタルクを配合した原料を、第一押出機の原料投入口に供給し、加熱混練し、約200℃に調整された溶融樹脂混合物とした。該溶融樹脂混合物に物理発泡剤として表2に示す量の混合ブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70重量%/30重量%)を圧入し、次いで第一押出機の下流側に連結された第二押出機に導入して、表2に示す樹脂温度のポリエチレン系樹脂溶融物とし、表2に示すブローアップ比、吐出量で環状ダイから押出し、筒状発泡体を形成した。押出された筒状発泡体を直径350mmの筒状冷却管に沿わせて引取り、切り開くことによりポリエチレン系樹脂発泡シートを得た。
比較例5
リップ幅1100mmのTダイを用いた以外は実施例1と同様にして押出発泡体を得た。コルゲートが取りきれず厚みムラの大きな発泡シートとなった。また、緩衝性に劣る発泡シートであった。
表2中、見かけ密度、厚み、厚み方向気泡径、気泡扁平率、n−ヘプタン抽出量は前記の方法により測定した。なお、上記物性は、それぞれ押出した発泡シートを温度23℃、湿度50%の雰囲気下で7日間載置し、発泡シート厚みを回復させた後に測定を行った。
表3中、厚み精度評価、緩衝性評価、汚染性評価は次のように行った。
厚み精度評価
それぞれ押出した発泡シートを温度23℃、湿度50%の雰囲気下で7日間載置し、発泡シート厚みを回復させた後に、厚み精度を下記の基準にて評価した。
○:厚みムラがなく、発泡シート全体の厚みが均一であった。
×:発泡シートにコルゲートが発生し、厚みが不均一な部分が見られた。
緩衝性評価
まず、押出した発泡シートを温度23℃、湿度50%の雰囲気下で7日間フリーな状態で置き、厚みを回復させた後に、得られた発泡シートから縦50mm、横50mmに20枚試験片を切り出した。切り出した試験片切断面の横方向中央部の厚みを顕微鏡を用いて20枚それぞれ測定し、その平均値を圧縮前試験片の平均厚みとした。次に、試験片20枚を重ね、圧縮試験機にて10mm/minの圧縮速度で圧縮前試験片の平均厚み×20の厚みの50%まで圧縮した直後に負荷を開放し、その後1日23℃に放置して、回復後の試験片の平均厚みを圧縮前試験片の平均厚みと同様にして求めた。その後、回復後の試験片の平均厚みを圧縮前試験片の平均厚みで割算し、100をかけて回復率(%)を求め、下記の基準で緩衝性を評価した。
例えば、平均厚み1mmの試験片の緩衝性を試験する場合、厚み1mmの試験片を20枚重ね、圧縮試験機にて積層した試験片の厚みが10mmとなるまで圧縮した後に負荷を開放し、その後1日23℃で放置し、顕微鏡を用いて回復後試験片の平均厚みを求める。その後、前記回復率(%)を求め、以下の基準で評価した。
○:圧縮した状態から70%以上回復した。
×:圧縮した状態からの回復率が70%未満であった。
汚染性評価
あらかじめ、松浪ガラス工業株式会社製プレクリンスライドガラスの接触角をJIS-R3257(1999)に記載の静滴法に基づき、協和界面科学株式会社製接触角計DM500Rを用いて評価した。該スライドガラスに評価を行うサンプル(実施例・比較例で得られた発泡シート)を3.8g/cmの圧力で密着させつつ60℃で24時間静置した。その後、サンプルをガラスから除去し、サンプルが接触していたガラスの面について再度接触角を同様に測定し、下記のように評価した。
◎:試験前後の接触角の差が10°以下
○:試験前後の接触角の差が10°を超え、25°未満
×:試験前後の接触角の差が25°以上

Claims (2)

  1. 曲げ弾性率300MPa未満であり、50℃におけるn−ヘプタン抽出量が0.5重量%以下であるポリエチレン系樹脂を基材樹脂とする、見かけ密度20〜300kg/m、厚み0.05〜2mmの発泡シートにおいて、該発泡シートの厚み方向の平均気泡径が0.02mm以上であり、該発泡シートの気泡変形率(厚み方向の平均気泡径/幅方向の平均気泡径)が0.3〜0.9であり、該発泡シートの50℃におけるn−ヘプタン抽出量が0.5重量%以下であり、該発泡シートに帯電防止剤及び収縮防止剤が添加されていないことを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シート。
  2. 前記発泡シートの厚みが0.05〜0.5mmであることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン系樹脂発泡シート。
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