JP6224021B2 - 炭素繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法 - Google Patents
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Description
本実施形態の炭素繊維強化熱可塑性プラスチックは、炭素繊維及び熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材である。
エステル系熱可塑性樹脂は、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)等である。PET、PBTの場合、融点:230〜270℃、密度:1.35〜1.40g/cm3のものが使用できる。
ポリアミド系熱可塑性樹脂は、例えばナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ナイロン12(PA12)等の脂肪族ナイロンである。ナイロンの場合、融点:170〜270℃、密度:1.00〜1.15g/cm3のものが使用できる。
本実施形態で使用されるポリフェニレンサルファイド系熱可塑性樹脂は、末端基に塩素(Cl)を有する。ポリフェニレンサルファイド系熱可塑性樹脂の場合、融点:275〜290℃、密度:1.20〜1.35g/cm3のものが使用できる。ポリフェニレンサルファイド系熱可塑性樹脂の具体例は、サスティールPPS SGX−120(東ソー株式会社製)である。
サイジング剤付着時のハンドリング性の観点から、上記アミンは水溶性(水溶性アミン)であることが好ましい。「水溶性アミン」とは水に可溶なアミン化合物であり、具体的にエタノールアミン、モノエタノールアミン、2−アミノエタノール、ジエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミンなどである。
<付着工程>
上記サイジング剤(アンモニア、ヒドラジン、アミン)が溶媒と混合されて、サイジング剤液が作製される。使用される溶媒に特に制限はないが、水、アルコール類などが好ましい。サイジング剤は溶媒に溶解しても良く、溶媒中に懸濁した状態で存在していても良い。付着工程及び含浸工程でのハンドリング性等を考慮すると、サイジング剤が溶媒に溶解した状態(サイジング剤液)であることが好ましい。また、水を溶媒とすることが特に好ましい。サイジング剤濃度は、炭素繊維表面への付着量に応じて調整される。
本工程により、炭素繊維の表面にサイジング剤が付着する。炭素繊維表面へのサイジング剤の付着量は、サイジング剤の濃度だけでなく、塗布量、浸漬時間などの条件を適宜設定することによっても調整可能である。
サイジング剤が付着した炭素繊維束の表面に熱可塑性樹脂を接触させる。炭素繊維束と熱可塑性樹脂とを接触させる方法としては、熱可塑性樹脂フィルムと炭素繊維束とをラミネート処理する方法、熱可塑性樹脂粉末を炭素繊維表面に吹付ける方法等がある。
熱可塑性樹脂が接触した状態で炭素繊維束が加熱圧縮(熱プレス成形)される。熱プレス条件は、圧力:5MPa以上8MPa以下、温度:熱可塑性樹脂の融点以上熱可塑性樹脂の熱分解以下である。熱可塑性樹脂の融点以上の温度とすることにより、樹脂の流動性が増大し含浸性が高まる。一方、製品強度を考慮すると、本含浸工程で熱可塑性樹脂の分解を防止する必要があるので、熱プレス成形時の上限温度は熱分解温度以下とする。樹脂の流動性と熱分解とを考慮すると、熱プレス成形時の温度は熱可塑性樹脂の融点+15〜20℃を上限とすることが好ましい。
R1−CO−OR1’+R2R2’NH
→ R1−CO−NR2R2’+R1’OH…(1)
式(1)において、アンモニアの場合R2、R2’はH、ヒドラジンの場合R2はH、R2’はNH2である。第1級アミンの場合、R2はH、R2’は炭化水素基等である。第2級アミンの場合、R2、R2’は炭化水素基等である。第1級アミン及び第2級アミンとしては水溶性であることが好ましく、具体的にはエタノールアミン,モノエタノールアミン,2−アミノエタノール,ジエタノールアミン,エチルアミン,ジエチルアミンのいずれかである。
R3−CO−NHR3’+R4R4’NH
→ R3−CO−NHR4+R4’−NHR3’ …(2)
式(2)において、アンモニアの場合R4、R4’はH、ヒドラジンの場合R4はH、R4’はNH2である。第1級アミンの場合、R4はH、R4’は炭化水素基等である。第2級アミンの場合、R4、R4’は炭化水素基等である。第1級アミン及び第2級アミンとしては水溶性であることが好ましく、具体的にはエタノールアミン,モノエタノールアミン,2−アミノエタノール,ジエタノールアミン,エチルアミン,ジエチルアミンのいずれかである。
熱プレス成形終了後、炭素繊維束を常温(25〜30℃程度)に冷却する。こうすることにより、熱可塑性樹脂が固化し、炭素繊維強化熱可塑性プラスチックが得られる。
図1は炭素繊維強化熱可塑性プラスチックの製造装置の一例の概略図である。製造装置100は、付着手段130、樹脂接触手段140、加熱手段150、及び冷却手段160を備える。製造装置100は、ロービング110から巻き出された炭素繊維束(原糸)111に対して付着工程、樹脂接触工程、含浸工程を連続的に施し、製造されたプリプレグ171を巻取り手段170で巻き取る装置である。
樹脂接触手段140は上述の樹脂接触工程を実施する。図1はラミネート処理による方法を採用した例を示している。この場合、樹脂接触手段140は、フィルム原反142から熱可塑性樹脂フィルムを巻き出すフィルム供給手段141、及び、熱可塑性樹脂フィルムと開繊糸112とを圧着する圧着手段(例えば圧着ローラ)143を備える。樹脂接触手段140において、平坦な開繊糸112の両面に熱可塑性フィルムが接触する。
加熱手段150は上記含浸工程のうちプレス成形を実施する。加熱手段150の加熱方法としては、誘導加熱を採用することができる。誘導加熱は昇温時間が短いため、加熱に要するエネルギーを低減させることが可能であるので有利である。
冷却手段160において熱可塑性樹脂が含浸した開繊糸が搬送されながら冷却されることにより、熱可塑性樹脂が固化し、炭素繊維強化熱可塑性プラスチックのプリプレグ171が得られる。
横断面が円形の炭素繊維束に樹脂を含浸させるときの成形時間(含浸時間)tは以下の式(3)で表される。式(3)中、粘度ηは樹脂の分子量に比例し、温度に反比例する。
Vf:炭素繊維束中の繊維堆積含有率
R0:炭素繊維束の半径
R:樹脂未含浸領域の半径
k:浸透率(Darcyの法則で用いられる定数)
Pm:成形圧力
l:樹脂含浸率
l0:t=0における樹脂含浸率(本実施形態の場合、l0=0)
従来技術Bは、従来技術Aと同じη/kであってより高圧の熱プレス成型を行った場合を想定している。熱プレス成型時の温度は「本発明」と同じとした。
従来技術Cは、「本発明」と同じ圧力であるが、より高温(例えば+30〜40℃)で熱プレス成形を行った場合を想定している。
「本発明」は、上記で説明した工程により樹脂の含浸を行った場合である。すなわち、熱プレス成型時において、サイジング剤とナイロン6との反応による低分子化及び温度上昇を考慮している。
図3は、図2における樹脂含浸率100%のときの成形時間の比較である。
このように、「本発明」は従来技術Cの条件よりも外部から与えるエネルギーが低くても効率的に樹脂を含浸させる点で有利である。
110 ロービング
111 原糸
112 開繊糸
120 開繊手段
130 付着手段
131 浸漬槽
132 サイジング剤液
140 樹脂接触手段
141 フィルム供給手段
142 フィルム原反
143 圧着手段
150 加熱手段
160 冷却手段
170 巻取り手段
171 プリプレグ
Claims (2)
- 炭素繊維束を構成する炭素繊維の表面に、アンモニア、ヒドラジン、及び、アミンのいずれかであるサイジング剤が付着する工程と、
前記サイジング剤が付着した前記炭素繊維束の表面に熱可塑性樹脂が接触する工程と、
前記熱可塑性樹脂が接触した前記炭素繊維束を加熱圧縮されるとともに、前記熱可塑性樹脂と前記サイジング剤とが反応して前記熱可塑性樹脂が加熱されることにより、前記熱可塑性樹脂が前記炭素繊維束の内部に含浸する工程と、
前記熱可塑性樹脂が含浸した前記炭素繊維束が冷却して、前記熱可塑性樹脂が固化する工程と、
を含み、
前記熱可塑性樹脂が、末端に塩素を有するポリフェニレンサルファイド系樹脂である炭素繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法。 - 前記含浸する工程において、前記熱可塑性樹脂の融点以上前記熱可塑性樹脂の熱分解温度以下、5MPa以上8MPa以下の条件で、前記熱可塑性樹脂を前記炭素繊維の間に含浸させる請求項1に記載の炭素繊維強化熱可塑性プラスチックの製造方法。
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