JP6338029B1 - サイジング剤塗布炭素繊維束、熱可塑性樹脂組成物、成形体、サイジング剤塗布炭素繊維束の製造方法、および成形体の製造方法 - Google Patents

サイジング剤塗布炭素繊維束、熱可塑性樹脂組成物、成形体、サイジング剤塗布炭素繊維束の製造方法、および成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

熱可塑性樹脂に対し高いレベルでの接着性を示す場合であっても、サイジング剤塗布炭素繊維の開繊工程において良好な開繊性を示すサイジング剤塗布炭素繊維束を提供する。少なくとも、アミノ基またはアミド基を含む化合物(A)をサイジング剤成分として含むサイジング剤塗布炭素繊維束である。

Description

本発明は、熱可塑性樹脂に対し高接着性を示し、サイジング剤塗布炭素繊維の開繊工程において良好な開繊性を示すサイジング剤を塗布したサイジング剤塗布炭素繊維束、そのサイジング剤塗布炭素繊維束を用いた熱可塑性樹脂組成物、成形体、サイジング剤塗布炭素繊維束の製造方法、および成形体(本発明において「熱可塑性樹脂成形体」や単に「成形体」と称する。)の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、軽量でありながら、強度および弾性率に優れるため、種々のマトリックス樹脂と組み合わせた複合材料として、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に用いられている。炭素繊維を用いた複合材料の代表的な形態として、プリプレグを積層して得られるプリフォームをプレス成形(加圧力の下で脱泡し、賦形する成形方法)した成形品が挙げられる。このプリプレグは、連続した炭素繊維を一方向に配列させた炭素繊維基材に樹脂を含浸して製造する方法が一般的である。複雑な形状への形状追従性に優れ、短時間成形可能な不連続な炭素繊維(チョップド、ウェブ等)を用いた複合材料も提案されているが、比強度、比剛性などの力学特性や特性の安定性において、構造材としての実用性能はプリプレグが優れている。
近年、炭素繊維複合材料では、成形性、取扱い性、得られる成形品の力学特性に優れた成形材料が要求されるようになり、工業的にもより高い経済性、生産性が必要になってきている。その要求に対する答えの一つとして、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を用いたプリプレグの開発が進められている。
炭素繊維の優れた特性を活かすには、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を高めることが重要である。炭素繊維束とマトリックス樹脂との界面接着性を向上させるため、通常、炭素繊維束に気相酸化や液相酸化等の酸化処理を施し、炭素繊維表面に酸素含有官能基を導入する方法が行われている。例えば、特許文献1では炭素繊維束に電解処理を施すことにより、界面接着性の指標である層間せん断強度を向上させる方法が提案されている。
炭素繊維の表面改質のみでは十分な界面接着性が得られない場合、サイジング処理を追加する試みがなされる。例えば、特許文献2では炭素繊維束にサイジング剤としてポリエチレンイミンを塗布することにより、官能基の少ない熱可塑性樹脂との接着性を向上させる方法が提案されている。また、特許文献3では炭素繊維束をウェブ等に高次加工後にポリエチレンイミンをサイジング剤として塗布する方法を採用している。また、特許文献4では炭素繊維束に高分子量で高粘度のポリエチレンイミンを集束剤として使用することで、射出成形機内で分散しにくい炭素繊維チョップドの作製を行っている。
特許文献5および6には、アミン化合物と界面活性剤を滑剤として用いることで、繊維の製造工程での毛羽を抑制する手法が提案されている。
以上のように、連続・不連続な炭素繊維を用いた複合材料の分野においては、接着性の向上検討が行われており、また、滑剤を用いた毛羽の抑制、開繊性向上の検討が行われている。一方、上記の技術をマトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を用いたプリプレグに用いた場合において、サイジング剤を塗布した炭素繊維束の高開繊性とマトリックス樹脂との高接着性を両立させることで、高粘度な熱可塑性樹脂の含浸性を向上させ、含浸ムラやボイドの発生を抑制するという思想はなかった。
特開平04−361619号公報 特開2013−166924号公報 特開2006−089734号公報 特開平03−065311号公報 特表2002−528661号公報 特開2006−161018号公報
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、熱可塑性樹脂に対し高いレベルでの接着性を示す場合であっても、サイジング剤塗布炭素繊維束の開繊工程において良好な開繊性を示すサイジング剤塗布炭素繊維束を提供することを目的とする。

本発明者らの検討により、化合物(A)のようにマトリックス樹脂との相互作用が強く、接着性が高い化合物をサイジング剤に用いると、サイジング剤塗布炭素繊維束の開繊性が低下しやすく、プリプレグ作製時の含浸ムラやボイド発生が起こりやすい、という課題があることが分かった。本課題に対して、化合物(A)の分子量と粘度およびサイジング剤の付着量を厳密に制御することで炭素繊維間の相互作用を高度に制御でき、高い開繊性と高い接着性を両立可能であることを見いだした。
また、一般的な開繊性向上手段として平滑成分をサイジング剤に配合すると、開繊性は向上するが、高接着成分である化合物(A)の比率の低下に伴い、接着性が低下し、単純な組み合わせでは接着性と開繊性を両立することは難しいことが分かった。本課題に対して、特定の化学構造を有する平滑剤を化合物(A)に対する比率を制御して配合することで、炭素繊維上で化合物(A)と化合物(B)が傾斜構造を形成し、サイジング剤塗布炭素繊維束の高開繊性と高接着性が両立することを見いだした。
アミノ基またはアミド基を含む化合物(A)と特定の化学構造を有する平滑成分である化合物(B)を混合したサイジング剤を使用した場合、より極性の高い化合物(A)が炭素繊維側に多く偏在し、炭素繊維と逆側のサイジング層の最外層に極性の低い化合物(B)が偏在しやすいという現象が見られることが確認された。このサイジング層の傾斜構造の結果として、化合物(A)は炭素繊維近傍で炭素繊維と強い相互作用を及ぼし、接着性が向上する。さらに、平滑成分である化合物(B)は炭素繊維束内の単糸表層の摩擦係数を下げることで、開繊加工時に接触する単糸間の滑りを良好にするため、開繊性を向上させることができる。その結果、炭素繊維とマトリックス樹脂の界面接着性を高めることができ、得られる炭素繊維強化複合材料の物性を高くすることができる。
上述した課題を解決し、目標を達成するために、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維束は、アミノ基またはアミド基を含む化合物(A)を含むサイジング剤が炭素繊維に塗布されたサイジング剤塗布炭素繊維束であって、下記(i)または(ii)を満たすことを特徴とする。
(i)アミノ基またはアミド基を含む化合物(A)をサイジング剤全量100質量部に対して50質量部以上含む、長さ10cm以上のサイジング剤塗布炭素繊維束であって、化合物(A)の重量平均分子量Mwが2500以下、化合物(A)の25℃における粘度が200〜10000mPa・sであり、かつ、下記式(a)で示されるサイジング剤付着量Xが0.03質量%以上0.1質量%未満である。
X=(W0−W1)/W0 ×100 (%)・・・(a)
W0=炭素繊維及びサイジング剤の総質量
W1=炭素繊維のみの質量
(ii)アミノ基またはアミド基を含む化合物(A)、および下記式(I)および/または(II)で表される化合物(B)の総量が、サイジング剤全量100質量部に対して50質量部以上であり、かつ、(A)の質量WAと(B)の質量WBが式(III)を満たす前記サイジング剤が炭素繊維に塗布されたサイジング剤塗布炭素繊維束であって、化合物(A)と化合物(B)のSP値の差が0.5〜4.0(J/cm0.5である。
−COO−(CHCHO)−CO−R・・・式(I)
−COO−(CHCHO)−H・・・式(II)
(式中、R、R、Rは炭素数1以上の炭化水素基を表す。)
0.1≦WB/(WA+WB)<0.6 ・・・式(III)
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は上記サイジング剤塗布炭素繊維束および熱可塑性樹脂(C)を含有してなることを特徴とする。
また、本発明の成形体は、上記熱可塑性樹脂組成物を用いたプリプレグまたはUD(一方向)テープであることを特徴とする。
また、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維束の製造方法は、上記サイジング剤を水系溶媒で前記炭素繊維に塗布する工程を有することを特徴とする。
また、本発明の成形体の製造方法は、上記サイジング剤塗布炭素繊維束、および熱可塑性樹脂(C)を用いて、熱可塑性樹脂組成物を得た後に、前記熱可塑性樹脂組成物を300℃以上に加熱する工程を有することを特徴とする。

本発明によれば、熱可塑性樹脂に対し高いレベルでの接着性を持ちながら、サイジング剤塗布炭素繊維束の開繊工程において良好な開繊性を示すサイジング剤塗布炭素繊維束を得ることができる。その結果、熱可塑性樹脂成形体中の繊維含有率を均一にさせることが可能となり、このサイジング剤塗布炭素繊維束を含む熱可塑性樹脂成形体の力学特性も良好になる。
平均引裂可能距離の測定方法を示す図である。
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明を構成するサイジング剤は、アミノ基およびアミド基の少なくともいずれかを含む化合物(A)を含むことが必要である。
アミノ基またはアミド基を含む化合物(A)を含むサイジング剤を塗布した炭素繊維束は熱可塑性樹脂との優れた接着性を発現する。その結果、そのサイジング剤が塗布された炭素繊維束を用いた熱可塑性樹脂成形体の力学特性が向上する。そのメカニズムは明確ではないが、アミノ基やアミド基は極性が高く、炭素繊維束表面や樹脂中のカルボキシル基、水酸基等の極性の高い酸素含有構造と水素結合等の強い相互作用をすることで、優れた接着性を発現すると考えられる。
本発明を構成する化合物(A)としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、脂肪族アミド化合物、芳香族アミド系化合物が挙げられる。中でも、高接着性を示す観点から脂肪族アミン化合物が好ましい。脂肪族アミン化合物の接着性が高い理由として、他のアミノ基およびアミド基を有する化合物と比較して極性が非常に高いことが考えられる。
脂肪族アミン化合物の具体的な例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジシアンジアミド、テトラエチレンペンタミン、ジプロプレンジアミン、ピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ポリアミドアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、ココアルキルアミン、牛脂アルキルアミン、オレイルアミン、硬化牛脂アルキルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチルミリスチルアミン等の脂肪族モノアミン類;ポリエチレンイミン、ポリプロピレイミン、ポリブチレンイミン、1,1−ジメチル−2−メチルエチレンイミン、1,1−ジメチル−2−プロピルエチレンイミン、N−アセチルポリエチレンイミン、N−プロピオニルポリエチレンイミン、N−ブチリルポリエチレンイミン、N−パレリルポリエチレンイミン、N−ヘキサノイルポリエチレンイミン、N−ステアロイルポリエチレンイミン等のポリアルキレンアミン類、およびその誘導体、およびそれらの混合物等が挙げられる。
脂肪族アミン化合物の中でも1分子内に含まれる官能基量が2以上である化合物は、接着性が高くなりやすいため好ましく用いられる。特に、ポリアルキレンイミンは、1分子内に含まれる官能基量を増加させやすく、接着性を向上させやすいために好ましく用いられる。1分子内に含まれる官能基量が2以上である化合物の接着性が高くなりやすい理由として、官能基量が増えることで分子の極性が高くなりやすいことが考えられる。
芳香族アミン化合物の具体的な例としては、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、ベンジジン、トリアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、2,4,6−トリアミノフェノール、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、1,3,5−トリアミノベンゼンおよびその誘導体、およびそれらの混合物等が挙げられる。
脂肪族アミド化合物の具体的な例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のモノアミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド等のビスアミド類;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン610等の脂肪族ポリアミド類およびその誘導体、およびそれらの混合物等が挙げられる。ポリアミド系樹脂の水性化を容易にするため、分子中にポリアルキレンオキサイド鎖や3級アミン成分等の親水基を導入したものを用いることできる。これら脂肪族アミドは、単独で使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。
芳香族アミド化合物の具体的な例としては、アミノベンズアミド、アミノベンズアニリド、アミノベンゼンスルホンアミド等の芳香族アミドアミン;ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ナイロン6/6Tコポリマーなどの芳香族/脂肪族ポリアミド類およびその誘導体等が挙げられる。これら芳香族アミドは、単独で使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。
本発明にかかる(i)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束を構成するサイジング剤においては、溶媒を除いたサイジング剤全量100質量部に対して、化合物(A)を50質量部以上含むことが必要である。50質量部以上含むことで接着性が向上し、それを用いた熱可塑性樹脂成形体の物性も向上する。60質量部以上含むことが好ましく、80質量部以上含むことがさらに好ましい。化合物(A)以外の成分として、本発明の効果に影響しない範囲で、適宜、ノニオン系界面活性剤等を添加してもよい。
本発明にかかる(i)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束においては、化合物(A)の重量平均分子量Mwが2500以下であることが必要である。なお、上記の重量平均分子量Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCと略記)法で測定され、プルランを標準物質として得られるものである。Mwが大きいほどサイジング剤の粘度が高くなるため、サイジング剤を介して粘着している炭素繊維同士を引き離すのに大きな力が必要となる。Mwを2500以下とすることで、サイジング剤の動きやすさの指標である粘度を低下させ、炭素繊維同士を拘束する力を弱めることによって、炭素繊維束の開繊性が向上する。Mwは1500以下であることが好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。一方、分解の点では、Mwが大きいほど高温でのサイジング剤の揮発や分解を抑制できる。Mw下限は500以上であることが好ましく、650以上であることがさらに好ましい。
本発明にかかる(i)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束においては、化合物(A)の25℃における粘度が200〜10000mPa・sである必要がある。粘度が10000mPa・s以下である場合、サイジング剤を介して炭素繊維同士を拘束する力が弱めることによって開繊性が向上する。粘度は8000mPa・s以下であることが好ましく、3000mPa・s以下であることがさらに好ましい。粘度の下限は特にないが、200mPa・s以上とすることで炭素繊維束へのサイジング剤塗布プロセスにおいて、付着量の制御を安定化させることができる。なお、本発明において25℃の温度におけるサイジング剤の粘度は、粘弾性測定器を用いて周波数3.14rad/sで測定した値を用いる。
本発明にかかる(i)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束はサイジング剤が炭素繊維束に対して0.03質量%以上0.1質量%未満の割合で付着されている必要がある。サイジング剤の付着量を0.03質量%以上とすることで、表面に均一に付着したサイジング剤は炭素繊維束の耐擦過性を向上させ、製造時や加工時の毛羽発生を抑制し、開繊性が良好な炭素繊維シートの平滑性等の品位を向上させることができる。付着量は0.04質量%以上が好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。一方、サイジング剤の付着量を0.1質量%未満とすることで、炭素繊維間に存在するサイジング剤の存在量を少なくし、繊維間の拘束を弱めることができるため、外力による繊維の開繊が容易となり均一に繊維束を拡幅することができる。付着量は0.09質量%未満が好ましく、0.08質量%未満が更に好ましい。
本発明にかかる(i)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束は各単糸の長さが10cm以上であることが必要である。長さが10cm以上である炭素繊維は実質的に連続であると見なせ、本発明の特徴である開繊性向上の効果がより顕著にあらわれる。30cm以上が好ましく、100cm以上がさらに好ましい。
本発明における(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束を構成するサイジング剤は、下記式(I)および/または(II)で表される化合物(B)を含むことが必要である。
−COO−(CHCHO)−CO−R・・・式(I)
−COO−(CHCHO)−H・・・式(II)
(式中、R、R、Rは炭素数1以上の炭化水素基を表す。)。
化合物(B)を含むサイジング剤を塗布した炭素繊維束は(A)と傾斜構造をつくることで接着性を保ちながら、単糸間の摩擦を低減し、開繊工程での単糸間の平滑性を良好にする。その結果、開繊性を向上させる。そのサイジング剤が塗布された炭素繊維束は、外力による繊維の開繊が容易となり均一に繊維束を拡幅することができる。
本発明におけるサイジング剤は、式(I)および/または、式(II)の化合物を含むことが好ましい。式(I)の化合物は両末端基が炭化水素基を有するため、疎水性が高く、サイジング剤塗布炭素繊維束のサイジング剤層表層に濃縮しやすい。このため、開繊性が向上するため、好ましい。式(II)の化合物は親水基を末端基として有するため、極性成分である化合物(A)と相溶しやすく、サイジング剤層内で相分離のない均一な傾斜構造を形成する。このため、開繊性が向上するため、好ましい。
化合物(B)は、式(I)のR、R、および(II)のRの位置に炭素数1以上の炭化水素基を有することが必要である。疎水性の高い炭化水素基は、炭素繊維上でサイジング剤表層に濃縮し、表面の摩擦係数を下げる。炭素数は10以上が好ましく、15以上がさらに好ましい。また、炭素数は22以下であることが好ましい。22以下であると化合物(B)の水溶性が高まるため、好ましい。
本発明における(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束を構成するサイジング剤においては、溶媒を除いたサイジング剤全量100質量部に対して、化合物(A)および化合物(B)の総量を50質量部以上含むことが必要である。50質量部以上含むことで化合物(A)による接着性の向上の効果と化合物(B)による開繊性の向上の効果が発現する。それを用いた熱可塑性樹脂組成物の物性も向上する。化合物(A)および化合物(B)の総量を60質量部以上含むことが好ましく、80質量部以上含むことがさらに好ましい。
また、本発明における(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束を構成するサイジング剤においては、化合物(A)の質量WAと化合物(B)の質量WBが式(III)を満たすことが必要である。0.1以上であると、化合物(B)の比率が大きくなり、繊維間の摩擦が低減し、開繊性が向上するため好ましい。0.2以上がより好ましい。0.6未満であると化合物(A)の比率が大きくなり、接着性が向上するため、好ましい。0.5以下がより好ましく、0.3以下がより好ましい。
0.1≦WB/(WA+WB)<0.6・・・式(III)。
また、接着性と開繊性を両立するためには、化合物(A)の質量WAと化合物(B)の質量WBが式(III)を満たし、かつ、本発明における化合物(B)が溶媒を除いたサイジング剤全量100質量部に対して、10質量部以上含み、化合物(A)が溶媒を除いたサイジング剤全量100質量部に対して、40質量部以上含む範囲とすることが好ましい。また、本発明における化合物(B)は溶媒を除いたサイジング剤全量100質量部に対して、25質量部以上含むことで開繊性がさらに向上するため、25質量部以上がより好ましい。
また、本発明におけるサイジング剤においては、化合物(A)と化合物(B)のSP値の差が0.5〜4.0(J/cm0.5である必要がある。ここで、SP値は、一般に知られている溶解性パラメータのことであり、溶解性および極性の指標となる。本発明で規定されるSP値は、Polym.Eng.Sci.,14(2),147−154(1974)に記載された、Fedorsの方法に基づき、分子構造から算出した値である。SP値の差が0.5以上であると、化合物(A)と化合物(B)の極性差が大きく、傾斜構造を形成する。1.0(J/cm0.5以上であることが好ましく、2.0(J/cm0.5以上であることがさらに好ましい。4.0(J/cm0.5以下であると、化合物(A)と化合物(B)の相溶性が増加するため、サイジング剤中の各成分のドメイン化が抑制され、化合物(A)と化合物(B)の均一な傾斜構造が形成され、接着性、開繊性が向上するため、好ましい。3.5(J/cm0.5以下であることが好ましく、3.0(J/cm0.5以下であることがさらに好ましい。
また、本発明にかかる(i)を満たす炭素繊維は、炭素繊維の平均引き裂き可能距離が700mm以上であることが好ましい。平均引き裂き可能距離が長いということは、炭素繊維同士の絡み合いが少ないことを意味し、平均引き裂き可能距離が短いということは、炭素繊維同士の絡み合いが多いことを意味する。該距離が700mm以上であると、炭素繊維同士の絡み合いが少ないため、サイジング剤を介して炭素繊維同士が粘着する確率が低下するため、開繊工程において外力により繊維束が均一に拡幅しやすい。平均引き裂き可能距離は、より好ましくは900mm以上である。本発明のサイジング剤塗布炭素繊維束において、平均引き裂き可能距離を上記範囲内とする手段としては、どのような方法も採用することができるが、炭素繊維束に対して、または炭素繊維束の製造プロセスのいずれかの工程において、流体による交絡処理を抑えることによって、炭素繊維単糸間の絡み合い点を減らすことで達成することができる。
本発明における(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束を構成する化合物(B)は親水親油バランス(HLB)が10以上であることが好ましい。本発明で規定されるHLBは、「新・界面活性剤入門」,128頁,(1992)に記載された、グリフィンの方法に基づき、分子構造から算出した値である。通常、サイジング剤は溶液を用いて炭素繊維に塗布され、使用環境の安全性の面から、溶媒として水を使用することが一般的である。化合物(B)のHLBが10以上であると、水溶液中で均一に溶解するため、炭素繊維上に均一に塗布することができ、炭素繊維上のサイジング剤の付着ムラを低減する。これにより開繊性が向上するため、好ましい。12以上がより好ましく、14以上がさらに好ましい。
本発明における(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束を構成する化合物(B)は式(I)または(II)で表されるnが12以上であることが好ましい。nが12以上であると化合物(B)の親水性が高くなり、水溶液を用いてサイジング剤を炭素繊維に塗布した場合に、炭素繊維上のサイジング剤の付着ムラを低減することができる。nは20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。また、100以下であると、高分子量化により水への不溶化を抑制し、付着ムラを低減することができるため好ましい。
本発明における(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束を構成する化合物(B)は融点が20℃以上であることが好ましい。融点が20℃以上であると、化合物(B)を常温(25℃)で使用する際に、表層に一部析出した化合物(B)が固体の形状を示し、繊維間摩擦を低減させ、開繊性を向上させるため、好ましい。40℃以上がより好ましく、45℃以上がさらに好ましい。上限は特に無いが、50℃以上で開繊性向上の効果はほぼ飽和することがある。
本発明における(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束を構成する化合物(B)の具体的な例としては、例えば、PEGモノカプリル酸エステル、PEGモノヘプチル酸エステル、PEGモノペラルゴン酸エステル、PEGモノカプリン酸エステル、PEGモノラウリン酸エステル、PEGモノミリスチン酸エステル、PEGモノペンタデシル酸エステル、PEGモノパルミチン酸エステル、PEGモノリノール酸エステル、PEGジラウリン酸エステル、PEGモノオレイン酸エステル、PEGジオレイン酸エステル、PEGジカプリル酸エステル、PEGジヘプチル酸エステル、PEGジペラルゴン酸エステル、PEGジカプリン酸エステル、PEGジラウリン酸エステル、PEGジミリスチン酸エステル、PEGジペンタデシル酸エステル、PEGジパルミチン酸エステル、PEGジリノール酸エステル等のポリエチレングリコール脂肪酸エステルをあげることができる。これら化合物(B)は、それぞれ1種を単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。なお、「PEG」とは「ポリエチレングリコール」の略である。
また、本発明における(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束を構成するサイジング剤において、化合物(A)は表面自由エネルギーが45mJ/m以上であることが好ましい。表面自由エネルギーが45mJ/m以上であると、炭素繊維表面に化合物(A)が偏在しやすく、上述したサイジング剤中での傾斜構造を発現することができ、高接着性を発現することができるため、好ましい。50mJ/m以上であることがより好ましく、60mJ/m以上であることがさらに好ましい。
表面自由エネルギーとは、固体または液体表面の分子が物質内部の分子と比べて余分に持つエネルギーのことである。
本発明において、化合物(A)のサイジング剤の表面自由エネルギーは25℃における表面自由エネルギーを指す。また、表面自由エネルギーは公知の方法により求めることができ、例えば、以下の方法により求めることができる。
まず、熱可塑性樹脂平板の表面自由エネルギーを求める。算出方法として、熱可塑性樹脂の平板上に表面自由エネルギーの極性成分および分散成分が既知である液体を滴下し、作製した液滴の形状から測定した接触角をもとに、前述のオーエンスの近似式より傾きaの2乗を熱可塑性樹脂平板の表面自由エネルギーの極性成分(γ 切片bの2乗を表面自由エネルギーの極性成分(γ )として求めることができる。熱可塑性樹脂平板の表面自由エネルギー(γ)はγ s、とγ の和となる。
オーエンスの近似式は、液体の表面自由エネルギーγ、表面自由エネルギーの極性成分γ 、表面自由エネルギーの分散成分γ L、および測定により得られる接触角θを式(IV)〜式(VI)に代入し、X、Yにプロットする。2種類以上の表面自由エネルギーの極性成分および分散成分が既知である液体を用いて作成したプロットの最小自乗法により直線近似した近似式の傾きと切片から求めることができる。
Y=a・X+b ・・・(IV)
X=(γ 0.5/(γ 0.5 ・・・(V)
Y=(1+cosθ)・(γ)/2(γ 0.5 ・・・(VI)。
化合物(A)の表面自由エネルギーは、前記方法により表面自由エネルギーを算出した熱可塑性樹脂平板上にサイジング剤を滴下し、作製した液滴の形状から測定した接触角をもとに、前述の式(IV)〜式(VI)のγ L、γ から算出することができる。
また、本発明における(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束を構成するサイジング剤においては、サイジング剤がエポキシ基を有する化合物を実質的に含まないことが好ましい。ここで、化合物を実質的に含まないとは、そのような化合物が全く存在しないか、たとえ添加物のような形態で存在していたとしても、サイジング剤全量に対して1質量部以下であることを意味する。反応性の高いエポキシ基は、アミン化合物またはアミド化合物末端のアミノ基と反応し、強固な架橋構造を形成する。このため、サイジング剤がエポキシ基を有する化合物を実質的に含まないことにより炭素繊維単糸間の架橋構造の形成を抑制し、開繊性が向上する。
本発明にかかる(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束は繊維間摩擦係数が0.30以下であることが好ましい。0.30以下では炭素繊維束内の単糸間の摩擦力が低減するため、開繊性が向上する。0.25以下がより好ましい。
繊維間摩擦係数は、炭素繊維表面のラフネス、サイジング剤に含まれる平滑成分の種類、量、サイジング剤塗布炭素繊維束の付着量により制御できる。
繊維間摩擦係数は以下の手順で求めることができる。回転しないように固定されたボビン上に厚みが均一となるように巻き付けた炭素繊維束の表面に、巻状物と同じ炭素繊維束を接触角3π(rad)になるよう円周上に重ならないよう巻きつける。巻き付けた炭素繊維束の一方の端部に錘をつけ、反対端を一定の速度で引っ張り、巻き付けた炭素繊維束が動き出す際の張力をから求めることができる。
本発明にかかる(ii)を満たすサイジング剤塗布炭素繊維束はサイジング剤がサイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下の割合で付着されていることが好ましい。サイジング剤の付着量を0.01質量部以上とすることで、表面に均一に付着したサイジング剤は炭素繊維束の耐擦過性を向上させ、製造時や加工時の毛羽発生を抑制し、開繊性が良好な炭素繊維シートの平滑性等の品位を向上させることができる。付着量は0.3質量部以上が好ましい。一方、サイジング剤の付着量を1.0質量部以下とすることで、炭素繊維間に存在するサイジング剤の存在量を少なくし、繊維間の拘束を弱めることができるため、外力による繊維の開繊が容易となり均一に繊維束を拡幅することができる。付着量は0.7質量部以下未満が好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましい。
本発明で用いられる炭素繊維束としては特に制限は無いが、力学特性の観点からは、ポリアクリロニトリル系炭素繊維が好ましく用いられる。本発明で用いられるポリアクリロニトリル系炭素繊維束は、ポリアクリロニトリル系重合体からなる炭素繊維前駆体繊維を酸化性雰囲気中で最高温度200〜300℃で耐炎化処理した後、不活性下雰囲気下中、最高温度500〜1200℃で予備炭化処理を行い、次いで不活性雰囲気中、最高温度1200〜2000℃で炭化処理することで得られる。
本発明において、炭素繊維束と熱可塑性樹脂との接着性を向上させるため、炭素繊維束に酸化処理を施すことで酸素含有官能基を表面に導入することが好ましい。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。
本発明において、液相電解酸化で用いられる電解液としては、酸性電解液およびアルカリ性電解液が挙げられる。酸性電解液としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、ホウ酸、および炭酸等の無機酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、およびマレイン酸等の有機酸、または硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。なかでも、強酸性を示す硫酸と硝酸が好ましく用いられる。アルカリ性電解液としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。
本発明において、炭素繊維束に導入する酸素含有官能基量としては、X線光電子分光法により測定されるその繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度(O/C)が、0.14〜0.30の範囲内であるものが好ましい。O/Cが0.14以上であることにより、炭素繊維表面のカルボキシル基および水酸基が増加し、サイジング剤との相互作用が強くなり接着性が向上する。O/Cは、好ましくは0.16以上であり、さらに好ましくは0.18以上である。一方、酸化による炭素繊維自体の強度の低下の点では、O/Cは小さい方が良く、O/Cが0.30以下であることが良い。好ましくは0.25以下であり、さらに好ましくは0.20以下である。
炭素繊維束のO/Cは、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めることができる。まず、溶剤で炭素繊維束表面に付着している汚れ等を除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピーク(ピークトップ)の結合エネルギー値を284.6eVに合わせる。C1sピーク面積は282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。O1sピーク面積は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求められる。ここで、表面酸素濃度とは、上記のO1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出できる。
次に、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維束の製造方法について述べる。
まず、本発明におけるサイジング剤の炭素繊維束への塗布(付与)手段について述べる。
本発明において、サイジング剤は溶媒で希釈し、均一な溶液として用いることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミド等が挙げられるが、なかでも、取扱いが容易であり、安全性の観点から有利であることから、水が好ましく用いられる。
塗布手段としては、例えば、ローラーを介してサイジング剤溶液に炭素繊維束を浸漬する方法、サイジング剤溶液の付着したローラーに炭素繊維束を接する方法、サイジング剤溶液を霧状にして炭素繊維束に吹き付ける方法等があるが、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維束を製造する上では、ローラーを介してサイジング剤溶液に炭素繊維束を浸漬する方法が好ましく用いられる。また、サイジング剤の付与手段は、バッチ式と連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましく用いられる。また、サイジング剤付与時に、炭素繊維束を超音波で加振させることも好ましい態様である。
ローラーを介してサイジング剤溶液に炭素繊維束を浸漬する方法に用いるサイジング剤溶液の濃度は1質量%以下であることが、好ましい。1質量%以下であると、付着する固形分がサイジング剤塗布炭素繊維束100質量部に対して、およそ0.5質量部以下になり、開繊性に優れるサイジング剤塗布炭素繊維束が得られるため、好ましい。また、サイジング剤溶液の濃度は0.4質量%以下であることが、さらに好ましい。
0.4質量%以下であると、付着する固形分がサイジング剤塗布炭素繊維束100質量部に対して、およそ0.1質量部以下になり、より開繊性に優れるサイジング剤塗布炭素繊維束が得られるため、好ましい。
本発明において、サイジング剤溶液を塗布した後、接触式乾燥手段によって、例えば、加熱したローラーに炭素繊維束を接触させることによりサイジング剤塗布炭素繊維束を得ることが好ましい。 加熱したローラーに導入された炭素繊維束は、張力によって加熱したローラーに押し付けられ、急速に乾燥されるため加熱したローラーで拡幅された炭素繊維束の扁平な形態がサイジング剤によって固定されやすい。扁平な形態となった炭素繊維束は、単繊維間の接触面積が小さくなるため、開繊性が高くなりやすい。
また、本発明において、予備乾燥工程として加熱したローラーを通過させた後、第2乾燥工程としてさらに熱処理を加えても良い。該第2乾燥工程としての熱処理には、接触方式、非接触方式のいずれの加熱方式を採用してもよい。該熱処理を行うことでサイジング剤に残存している希釈溶媒を更に除去し、サイジング剤の粘度を安定化することができるため、安定して開繊性を高めることができる。熱処理条件としては、20〜250℃の温度範囲が好ましい。20℃以上の場合、残存した希釈溶媒を効率的に除去し易く、開繊性を高めやすい。一方、熱処理温度の上限を250℃以下とすることで、サイジング剤成分の熱劣化や自己重合による架橋・増粘を抑制することができ開繊性を高めやすい。165℃以下が好ましく、135℃以下がさらに好ましい。
また、化合物(A)以外の成分として、本発明の効果に影響しない範囲で平滑成分としてノニオン系界面活性剤、特に化合物(B)を添加した場合、サイジング剤の自己重合による架橋・増粘を抑制することができ開繊性を高めやすいため、熱処理条件の温度範囲は、230℃以下が好ましく、215℃以下がさらに好ましい。
また、前記熱処理は、マイクロ波照射および/または赤外線照射で行うことも可能である。
本発明において、サイジング剤塗布炭素繊維束は熱可塑性樹脂(C)と複合化させることで、熱可塑性樹脂組成物とすることが好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂(C)としては、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケントン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂が好ましい。
本発明において、熱可塑性樹脂(C)は、ガラス転移温度200℃未満である場合、成形温度を低くすることができ、設備上の負荷が小さくなり、好ましい。また、熱可塑性樹脂(C)は、ガラス転移温度が200℃以上である場合、耐熱性と力学特性に優れており、熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体も同特性が高くなるため、好ましい。該温度が200℃以上である熱可塑性樹脂は、他の熱可塑性樹脂と比較して同温度での粘度が高いため、成形時の含浸性が低くなり、含浸ムラやボイドを発生しやすいという問題があるが、開繊性の高い本発明のサイジング剤塗布炭素繊維束と組み合わせることで、そのような課題を解決することができる。上述の樹脂であれば、曲げ強度、引張り強度等の樹脂の力学特性が高く、熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体の強度が高くなるため好ましい。なお、熱可塑性樹脂としては、本発明の目的を損なわない範囲で、これらの樹脂を複数種含む熱可塑性樹脂が用いられても良い。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、プリプレグまたはUDテープなどの成形材料の形態で好ましく使用することができる。
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体の製造方法について述べる。本発明の成形体の製造方法は、サイジング剤塗布炭素繊維束と熱可塑性樹脂(C)を用いて前記熱可塑性樹脂組成物を得るに際し、300℃以上に加熱する工程を有することが好ましい。成形工程で300℃以上に加熱して成形することにより、熱可塑性樹脂が繊維束内に十分浸透して含浸性が向上することで、熱可塑性樹脂組成物の物性も向上する。一般的に、成形工程での加熱温度を上げると、サイジング剤の分解物が発生し、成形体に悪影響を与えることがあり得るが、本発明のサイジング剤塗布炭素繊維束ではサイジング剤の付着量が少ないため、そのような悪影響を低減することができる。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体の具体例としては、最終製品としての成形体に加え、成形体を製造するために用いられる成形材料(例えば、以下の例示されるペレット、スタンパブルシート、UDテープおよびプリプレグ等)を含む。
本発明の成形体の具体例としては、例えば、ペレット、スタンパブルシート、UDテープおよびプリプレグ等の成形材料の他、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳等の携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品等の電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシ等の内部部材やそのケース、機構部品、パネル等の建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュール等の自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブ等の航空機関連部品、部材および外板、風車の羽根等の成形部品が挙げられる。特に、航空機部材、風車の羽根、自動車外板および電子機器の筐体およびトレイやシャーシ等に好ましく用いられる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
<重量平均分子量Mwの測定方法>
サイジング剤の重量平均分子量はGPCを用いてプルランを標準物質とした公知の方法で測定できる。GPCの測定条件として、本発明では、以下の条件を採用するものとする。
測定装置:島津製作所製
使用カラム:昭和電工製 Shodex Asahipac
GF−710HQ+GF−510HQ+GF−310HQ
溶離液:0.2モル%−モノエタノールアミン水溶液
(酢酸を添加してpH5.1に調整)
標準物質:プルラン(シグマアルドリッチ社製)
検出器:示唆屈折計(島津製作所製)。
<サイジング剤の粘度の測定方法>
サイジング剤の粘度は、粘弾性測定器を 用いて測定した。測定条件としては、直径40mmのパラレルプレートを用い、スパンを1mmとして周波数3.14rad/sにおいて25℃で測定を行った。
<サイジング付着量の測定方法>
2.0±0.5gのサイジング塗布炭素繊維束を秤量(W1)(小数点第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm)に15分間放置し、サイジング剤を完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)(小数点第4位まで読み取り)して、W1−W2によりサイジング付着量を求める。このサイジング付着量を炭素繊維束100質量部に対する質量部に換算した値(小数点第3位を四捨五入)を、付着したサイジング剤の付着量(質量部)とした。測定は2回おこない、その平均値をサイジング剤の付着量とした。
<サイジング剤塗布炭素繊維束の平均引き裂き可能距離の測定方法>
炭素繊維束を1160mmの長さにカットし、その一端を水平な台上に粘着テープで動かないように固定する(この点を固定点Aと呼ぶ)。次に、該繊維束の固定していない方の一端を指で2分割し、その一方を緊張させた状態で台上に粘着テープで動かないように固定する(この点を固定点Bと呼ぶ)。そして、2分割した他方を、固定点Aが支点となり弛みが出ないよう台上に沿って動かし、固定点Bからの直線距離が500mmの位置で静止させ、台上に粘着テープで動かないように固定する(この点を固定点Cと呼ぶ)。固定点A、B、Cで囲まれた領域を目視で観察し、固定点Aから最も遠い交絡点を見つけ、固定点Aと固定点Bで結ばれる直線上に投影した距離を最低目盛りが1mmの定規で読み取り、引き裂き可能距離とする。前記操作の繰り返し30回の測定の算術平均値が平均引き裂き可能距離である。引き裂き可能距離の測定方法を図1に示す。本測定方法において、固定点Aから最も遠い交絡点とは、固定点Aからの直線距離が最も遠く、かつ弛みのない3本以上の単繊維が交絡している点のことである。
下記の基準で平均引き裂き距離を3段階で評価し、AとBを合格とした。
A:平均引き裂き距離が900mm以上
B:平均引き裂き距離が700mm以上かつ900mm未満
C:平均引き裂き距離が700mm未満。
<繊維間摩擦係数の測定方法>
回転しないように固定されたボビン上に厚みが均一となるよう5〜10mm厚、巻密度0.9 〜1.4g/cmの範囲で巻き付けたサイジング剤塗布炭素繊維束の表面に、巻状物と同じ炭素繊維束を接触角3π(rad)になるよう円周上に重ならないよう巻きつける。巻き付けた炭素繊維束の一方の端部に錘(T1)をつけ、反対端をばねばかりで1m /minの速度で引っ張り、巻き付けた炭素繊維束が動き出す際の張力をT2として、次式から繊維間摩擦係数を求めた。
繊維間摩擦係数=ln(T2/T1)/θ
T2:炭素繊維が動き出す際の張力( = ばねばかりの指示値)
T1:錘重量(=0.19g/tex)
θ: 巻状物と巻きつけた糸との合計接触角(=3πrad)
測定は2回おこない、その平均値を繊維間摩擦係数とした。なお、測定ボビンは測定2時間以上前に測定雰囲気温湿度条件(測定条件:23±3℃/60±5%)に置いたものを使用した。
<界面せん断強度(IFSS)の測定方法>
サイジング剤塗布炭素繊維束から単糸を抜き出し、積層した樹脂フィルムで上下方向から挟み、熱プレス装置にて、炭素繊維単糸を埋め込んだ成形板を得た。この成形板からダンベル形状のIFSS測定用試験片を打ち抜いた。
ダンベル形状の試料の両端部を挟み、繊維軸方向(長手方向)に引張力を与え、2.0mm/分の速度で歪みを12%生じさせた。その後、加熱により透明化させた試料内部の断片化された繊維長を顕微鏡で観察した。さらに平均破断繊維長laから臨界繊維長lcを、lc(μm)=(4/3)×la(μm)の式により計算した。ストランド引張強度σと炭素繊維単糸の直径dを測定し、炭素繊維と樹脂界面の接着強度の指標である界面せん断強度(IFSS)を、次式で算出した。実施例では、測定数n=5の平均を試験結果とした。
IFSS(MPa)=σ(MPa)×d(μm)/(2×lc)(μm)。
本発明において、IFSSの好ましい範囲は以下の通りとした。
熱可塑性樹脂
・ポリエーテルイミド 40MPa以上
・ポリフェニレンスルフィド 24MPa以上
・ポリプロピレン 15MPa以上。
<開繊性(開繊保持率)の測定方法>
380mmの長さにカットしたサイジング剤塗布炭素繊維束を3本用意し、水平な作業台の上に置いた厚紙(幅300mm、長さ430mm)上に均等に3本並べる。次に、幅方向にはみ出した糸束の両端の上部の1/3をテープで固定する。そして、幅方向にはみ出した糸束の両端の下部の1/3を両手でつまみ、3秒間かけて平行に下部に向かって80mm引っ張り、手を離す。開繊性の良い糸束は糸幅が80mmのままであるが、開繊性の悪い糸束は糸幅が短くなる。これを3本繰り返した後、各糸束の糸幅を測定し、その平均値を求めた。最後に、糸幅の平均値を80mmで割ることで、開繊保持率を計算した。
下記の基準で開繊保持率を3段階で評価し、AとBを合格とした。
A: 開繊保持率が0.95以上
B: 開繊保持率が0.90以上かつ0.95未満
C: 開繊保持率が0.90未満。
<開繊性(未開繊部)の測定方法>
地面と水平になるようにクリールにサイジング剤塗布炭素繊維束が巻かれたボビンをかけ、サイジング剤塗布炭素繊維束をボビンから300mm引き出す。次に、引き出した糸の端をテープで固定する。そして、糸束を10〜20mm弛ませた状態で、風速5〜10m/sの風をサイジング剤塗布炭素繊維束に吹き付け、開繊させる。サイジング剤により単糸が隣接した単糸と付着し、束(未開繊部)となった箇所の数を評価した。このとき、0.5mm幅以上のものを評価対象とし、以下の基準で未開繊部量を上記開繊性(開繊保持率)の結果を踏まえつつ4段階で評価し、A、B、およびCを合格とした。
A: 未開繊部の数:0個かつ、開繊保持率が0.95以上
B: 未開繊部の数:1〜2個かつ、開繊保持率が0.95以上
C: 未開繊部の数:1〜2個かつ、開繊保持率が0.90以上かつ0.95未満
D: 未開繊部の数:3個以上、または開繊保持率が0.90未満。
<開繊性(開繊幅)の測定方法>
糸束幅方向の長さD1のサイジング剤塗布炭素繊維束16cmを1cm弛ませて、2本の円柱状の棒に固定したサイジング剤塗布炭素繊維束が水平になるように保持した状態で、風速5〜30m/sの風をサイジング剤塗布炭素繊維束に30秒吹きつけ、開繊させ、糸幅D2を測定し、開繊幅(D2/D1)を算出した。同試験を3回行い、平均値を開繊幅とした。本発明において、開繊幅の好ましい範囲は3.2以上とした。
<熱可塑性樹脂のガラス転移温度の測定>
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、示差熱走査熱量測定(DSC)を用いて測定した。アルミニウムサンプルパンを用いて、40℃/minの昇温速度で測定した。
各実施例および各比較例で用いた材料と成分は下記の通りである。
(A)成分
A−1:ポリエチレンイミン
(Mw=1300、粘度:6800mPa・s、γ=61mJ/m
(BASFジャパン(株)製 “Lupasol(登録商標)”G20Waterfree)
A−2:ポリエチレンイミン
(Mw=800、粘度:1600mPa・s、γ=62mJ/m
(BASFジャパン(株)製 “Lupasol(登録商標)”FG)
A−3:ポリエチレンイミン
(Mw=2000、粘度:12030mPa・s)
(BASFジャパン(株)製 “Lupasol(登録商標)”PR8515)
A−4:脂肪酸アマイド
(Mw=283.5、γ=48mJ/m
(日本化成(株)製“アマイド(登録商標)”AP−1)。
(B)成分
B−1:PEGジステアリン酸エステル
(式(I)、n=90、R、R=17、HLB=17.0)
(三洋化成工業(株)製“イオネット(登録商標)”DS4000)
B−2:PEGモノステアリン酸エステル
(式(II)、n=22、R=17、HLB=15.7)
(三洋化成工業(株)製“イオネット(登録商標)”MS1000)
B−3:PEGモノオレイン酸エステル
(式(II)、n=13、R=17、HLB=13.7)
(三洋化成工業(株)製“イオネット(登録商標)”MO600)
B−4:PEGジオレイン酸エステル
(式(I)、n=13、R、R=17、HLB=10.4)
(三洋化成工業(株)製“イオネット(登録商標)”DO600)
B−5:PEGジステアリン酸エステル
(式(I)、n=9、R、R=17、HLB=8.5)
(三洋化成工業(株)製“イオネット(登録商標)”DS400)
B−6:PEGジオレイン酸エステル
(式(I)、n=9、R、R=17、HLB=8.4)
(三洋化成工業(株)製“イオネット(登録商標)”DO400)。
(C)成分:熱可塑性樹脂
C−1:ポリエーテルイミド
(ガラス転移温度217℃)
(三菱樹脂(株)製“スペリオ(登録商標)”Eタイプ)
C−2:ポリフェニレンスルフィド
(ガラス転移温度89℃)
(ポリプラスチックス(株)製 “ジュラファイド(登録商標)”PPS W−540)
C−3:ポリプロピレン
(ガラス転移温度−2℃)
(プライムポリマー(株)製 ポリプロピレン J106G)。
その他の成分
ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
(ナガセケムテックス(株)製 “デナコール(登録商標)”Ex−314)
PEG
(三洋化成工業(株)製 PEG600)
実施例、比較例において、PEGは化合物(B)成分として計算する。
(実施例1)
本実施例は、次の第1〜4の工程からなる。
・第1の工程:原料となる炭素繊維束を製造する工程
アクリロニトリル共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数12,000本、総繊度800テックス、ストランド引張強度5.1GPa、ストランド引張弾性率240GPaの炭素繊維束を得た。次いで、その炭素繊維束を、炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電気量を炭素繊維束1g当たり80クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維束を続いて水洗し、加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維束を得た。
・第2の工程:サイジング剤を炭素繊維束に付着させる工程
化合物(A)として(A−1)を用い、(A−1)と水を混合して、(A−1)が均一に溶解した約0.2質量%の水溶液を得た。この水溶液をサイジング剤水溶液として用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維束に塗布した後、予備乾燥工程としてホットローラーで120℃の温度で15秒間熱処理をし、続いて、第2乾燥工程として210℃の温度の加熱空気中で90秒間熱処理をして、サイジング剤塗布炭素繊維束を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理されたサイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.09質量部となるように調整した。
このときの炭素繊維束の平均引き裂き可能距離は1000mmであった。
・第3の工程:開繊性試験用サンプルの作製および評価
前記第2工程で得られた炭素繊維束を用いて、開繊性の評価方法に基づいて開繊保持率と未開繊部の数を求めた。その結果、未開繊部を評価したところ、1個存在し、開繊保持率は0.94であり、開繊性が非常に高いことが分かった。
・第4の工程:IFSS測定用試験片の作製および評価
前工程で得られた炭素繊維束と、熱可塑性樹脂(C)として(C−1)を用いて、界面せん断強度の測定方法に基づき、IFSS測定用試験片を作製した。熱プレスの加熱加圧条件は320℃、2.0MPaであった。
続いて、得られたIFSS測定用試験片を用いて、IFSSを測定した。その結果、IFSSが43MPaであり、接着性が十分に高いことがわかった。以上の結果を表1にまとめた。
Figure 0006338029
(実施例2)
第2の工程におけるサイジング剤付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.07質量部となるように調整した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例3)
第2の工程における化合物(A)として(A−2)を用い、サイジング剤付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.08質量部となるように調整した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例4)
第4の工程における熱可塑性樹脂(C)として(C−2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束およびIFSS測定用試験片を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性が非常に高く、開繊性が十分に高いに炭素繊維束が得られた。
(実施例5)
第1の工程において炭素繊維束を得る際に交絡を加えること以外は、実施例2と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性と開繊性が十分に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例6)
第2の工程において第2乾燥工程の乾燥温度を120℃と変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
Figure 0006338029
(実施例7)
第2の工程において第2乾燥工程の乾燥温度を25℃と変更したこと以外は、実施例2と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例8)
第2の工程において(A−1)と(B−1)を用い、溶媒を除いたサイジング剤全量100質量部に対して、化合物(B−1)の割合が15質量部になるよう(A−1)と(B−1)とを水と混合して、均一に溶解した約0.1質量%の水溶液を得た。この水溶液をサイジング剤水溶液として用い第2乾燥温度を80℃と変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例9)
第2の工程において第2乾燥温度を210℃と変更し、サイジング剤付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.06質量部となるように調整した以外は、以外は、実施例8と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例10)
第2の工程において第2乾燥温度を210℃と変更し、サイジング剤付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.09質量部となるように調整した以外は、以外は、実施例8と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、接着性と開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例11)
第2の工程において第2乾燥温度を260℃と変更し、サイジング剤付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.09質量部となるように調整した以外は、以外は、実施例8と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、接着性が非常に高く、開繊性が十分に高いに炭素繊維束が得られた。
(実施例12)
第2の工程において第2乾燥工程の乾燥温度を260℃と変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表2にまとめた通りであり、接着性が非常に高く、開繊性が十分に高いに炭素繊維束が得られた。
(比較例1)
第2の工程におけるサイジング剤付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.12質量部となるように調整した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性は非常に高いものの、開繊性が低い炭素繊維束が得られた。
(比較例2)
第2の工程における化合物(A)として(A−3)を用い、サイジング剤付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.08質量部となるように調整した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性は非常に高いものの、開繊性が低い炭素繊維束が得られた。
(比較例3)
第2の工程におけるサイジング剤付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.02質量部となるように調整した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性が低く、開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られた。
(比較例4)
第2の工程におけるサイジング剤付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.12質量部となるように調整した以外は、実施例5と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、接着性は非常に高いものの、開繊性が低い炭素繊維束が得られた。
(比較例5)
第2の工程においてサイジング剤を付着しないこと以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表1にまとめた通りであり、開繊性が非常に高い炭素繊維束が得られたが、(B)成分として(B−1)を用いた成形体において低い界面せん断強度しか発現しなかった。
Figure 0006338029
(実施例13)
本実施例では、以下の手順で熱可塑性樹脂成形体を作製した。
まず、実施例2で得られたサイジング剤塗布炭素繊維束を並べ、炭素繊維シートを作製する。続いて、厚み30μmの熱可塑性樹脂(C−1)のフィルム5枚の間に、上記の炭素繊維シート4枚を入れる。370℃に加熱した油圧式真空成形機の中に上記の積層フィルムを入れて、真空条件で4分間予熱する。10MPaで4分間加圧した後、30℃で2分間冷却し、離型することによって、目的の熱可塑性樹脂成形体を得た。
上記の熱可塑性樹脂組成物は、内部にボイドが見られず、含浸性が非常に高いことが確認できた。以上の結果を表3にまとめた。
(比較例7)
比較例1で得られたサイジング剤塗布炭素繊維束を使用したこと以外は、実施例9と同様にして熱可塑性樹脂組成物を作製した。結果は表3にまとめた通りであり、上記の熱可塑性樹脂成形体は、内部にボイドが見られ、含浸性が低いことが確認できた。
(実施例14)
本実施例は、次の第1〜4の工程からなる。
・第1の工程:原料となる炭素繊維束を製造する工程
アクリロニトリル共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数12,000本、総繊度800テックス、ストランド引張強度5.1GPa、ストランド引張弾性率240GPaの炭素繊維束を得た。次いで、その炭素繊維束を、炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電気量を炭素繊維束1g当たり80クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維束を続いて水洗し、加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維束を得た。
・第2の工程:サイジング剤を炭素繊維束に付着させる工程
化合物(A)として(A−1)、化合物(B)として(B−1)を表4の組成で混合し、水を加えて、(A−1)、(B−1)が均一に溶解した約0.8質量%の水溶液を得た。この水溶液をサイジング剤水溶液として用い、浸漬法によりサイジング剤を表面処理された炭素繊維束に塗布した後、ホットローラー、および加熱空気中で乾燥させ、サイジング剤塗布炭素繊維束を得た。サイジング剤の付着量は、表面処理されたサイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、0.3質量部となるように調整した。
・第3の工程:開繊性試験用サンプルの作製および評価
前記第2工程で得られた炭素繊維束を用いて、開繊性の評価方法に基づいて開繊幅を求めた。その結果、開繊幅は5.1であり、開繊性が非常に高いことが分かった。
・第4の工程:IFSS測定用試験片の作製および評価
前工程で得られた炭素繊維束と、熱可塑性樹脂(C)として(C−1)を用いて、界面せん断強度の測定方法に基づき、IFSS測定用試験片を作製した。熱プレスの加熱条件は320℃とした。
続いて、得られたIFSS測定用試験片を用いて、IFSSを測定した。その結果、IFSSが43MPaであり、接着性が十分に高いことがわかった。以上の結果を表4にまとめた。
Figure 0006338029
(実施例15〜20)
第2の工程におけるサイジング剤の組成を表4に示す通りに変更した以外は、実施例14と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得て、各種評価を行った。結果は表4にまとめた通りであり、接着性と開繊性が十分に高い炭素繊維束が得られた。
(比較例8、9)
第2の工程におけるサイジング剤の組成を表4に示す通りに変更した以外は、実施例14と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得て、各種評価を行った。結果は表4にまとめた通りであり、開繊性が不十分であった。
(実施例21〜24)
第2の工程におけるサイジング剤の組成を表5に示す通りに変更した以外は、実施例14と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得て、各種評価を行った。結果は表5にまとめた通りであり、接着性と開繊性が十分に高い炭素繊維束が得られた。
Figure 0006338029
Figure 0006338029
(比較例10、11)
第2の工程におけるサイジング剤の組成を表5に変更した以外は、実施例14と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得て、各種評価を行った。結果は表5にまとめた通りであり、接着性が不十分であった。
(比較例12〜14)
第2の工程におけるサイジング剤の組成を表5に示す通りに変更した以外は、実施例14と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得て、各種評価を行った。結果は表5にまとめた通りであり、開繊性が不十分であった。
(実施例25〜27)
第2の工程におけるサイジング剤付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、表5に示すように変更した以外は、実施例14と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表5にまとめた通りであり、接着性と開繊性が十分に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例28〜29)
第2の工程におけるサイジング剤の組成を表5に示す通りに変更し、付着量を、サイジング剤塗布炭素繊維束全量100質量部に対して、表5に示すように変更した以外は、実施例14と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得、各種評価を行った。結果は表5にまとめた通りであり、接着性と開繊性が十分に高い炭素繊維束が得られた。
(実施例30)
第4の工程における熱可塑性樹脂(C)として(C−2)を用いた以外は、実施例14と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束およびIFSS測定用試験片を得て、各種評価を行った。結果は表6にまとめた通りであり、接着性が十分に高く、開繊性が十分に高い炭素繊維束が得られた。
Figure 0006338029
(比較例15、16)
第2の工程におけるサイジング剤の成分を表6に示す通りに変更した以外は、実施例23と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得て、各種評価を行った。結果は表6にまとめた通りであり、接着性または開繊性が不十分であった。
(実施例31)
第4の工程における熱可塑性樹脂(C)として(C−3)を用い、熱プレスの加熱条件を220℃に変更した以外は、実施例14と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束およびIFSS測定用試験片を得て、各種評価を行った。結果は表6にまとめた通りであり、接着性が十分に高く、開繊性が十分に高い炭素繊維束が得られた。
(比較例17、18)
第2の工程におけるサイジング剤の成分を表6に示す通りに変更した以外は、実施例31と同様にしてサイジング剤塗布炭素繊維束を得て、各種評価を行った。結果は表6にまとめた通りであり、接着性または開繊性が不十分であった。
(実施例32)
本実施例では、以下の手順で成形体を作製した。
まず、実施例14で得られたサイジング剤塗布炭素繊維束を並べ、炭素繊維シートを作製する。続いて、厚み30μmの熱可塑性樹脂(C−1)のフィルム5枚の間に、上記の炭素繊維シート4枚を入れる。370℃に加熱した油圧式真空成形機の中に上記の積層フィルムを入れて、真空条件で4分間予熱する。10MPaで4分間加圧した後、30℃で2分間冷却し、離型することによって、目的の成形体を得た。
上記の成形体は、内部にボイドが見られず、含浸性が十分に高いことが確認できた。以上の結果を表7にまとめた。
Figure 0006338029
(比較例19)
比較例13で得られたサイジング剤塗布炭素繊維束を使用したこと以外は、実施例32と同様にして成形体を作製した。結果は表7にまとめた通りであり、上記の成形体は、内部にボイドが見られ、含浸性が低いことが確認できた。
1:繊維束
2:固定点A
3:固定点B
4:固定点C
5:交絡点
6:引き裂き可能距離
本発明によれば、熱可塑性樹脂に対し高いレベルでの接着性を示す場合であっても、サイジング剤塗布炭素繊維の開繊工程において良好な開繊性を示すサイジング剤塗布炭素繊維束を提供することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、軽量でありながら強度に優れることから、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に好適に用いることができる。

Claims (19)

  1. アミノ基またはアミド基を含む化合物(A)を含むサイジング剤が炭素繊維に塗布されたサイジング剤塗布炭素繊維束であって、下記(i)または(ii)を満たすことを特徴とするサイジング剤塗布炭素繊維束。
    (i)アミノ基またはアミド基を含む化合物(A)をサイジング剤全量100質量部に対して50質量部以上含む、長さ10cm以上のサイジング剤塗布炭素繊維束であって、化合物(A)の重量平均分子量Mwが2500以下、化合物(A)の25℃における粘度が200〜10000mPa・sであり、かつ、下記式(a)で示されるサイジング剤付着量Xが0.03質量%以上0.1質量%未満である。
    X=(W0−W1)/W0 ×100 (%)・・・(a)
    W0=炭素繊維及びサイジング剤の総質量
    W1=炭素繊維のみの質量
    (ii)アミノ基またはアミド基を含む化合物(A)、および下記式(I)および/または(II)で表される化合物(B)の総量が、サイジング剤全量100質量部に対して50質量部以上であり、かつ、(A)の質量WAと(B)の質量WBが式(III)を満たすサイジング剤が炭素繊維に塗布されたサイジング剤塗布炭素繊維束であって、化合物(A)と化合物(B)のSP値の差が0.5〜4.0(J/cm)0.5である。
    −COO−(CHCHO)−CO−R・・・式(I)
    −COO−(CHCHO)−H・・・式(II)
    (式中、R、R、Rは炭素数1以上の炭化水素基を表す。)
    0.1≦WB/(WA+WB)<0.6 ・・・式(III)
  2. 化合物(A)が脂肪族アミンである、請求項1に記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  3. 化合物(A)が1分子内に含まれる官能基量が2以上の化合物である、請求項1または2に記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  4. 化合物(A)がポリアルキレンイミンである、請求項1〜3のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  5. 上記(i)を満たす場合であって、サイジング付着量Xが、0.05質量%以上0.08質量%未満である、請求項1〜4のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  6. 上記(i)を満たす場合であって、平均引き裂き可能距離が700mm以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維。
  7. 上記(ii)を満たす場合であって、化合物(B)のHLBが10以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  8. 上記(ii)を満たす場合であって、化合物(B)のnが12以上である、請求項1〜4、7のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  9. 上記(ii)を満たす場合であって、化合物(B)の融点が20℃以上である、請求項1〜4、7、8のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  10. 上記(ii)を満たす場合であって、化合物(A)の表面自由エネルギーが45mJ/m以上である、請求項1〜4、7〜9のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  11. 上記(ii)を満たす場合であって、サイジング剤がエポキシ基を有する化合物を実質的に含まない、請求項1〜4、7〜10のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  12. 上記(ii)を満たす場合であって、繊維間摩擦係数が0.30以下である、請求項1〜4、7〜11のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  13. 上記(ii)を満たす場合であって、サイジング剤の付着量が、サイジング剤塗布炭素繊維100質量部に対して、0.01質量部以上1.0質量部である、請求項1〜4、7〜12のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束、および、熱可塑性樹脂(C)を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。
  15. 熱可塑性樹脂(C)のガラス転移温度が200℃以上である、請求項14に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  16. 請求項14または15に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体であって、該成形体がプリプレグまたはUDテープの形態の成形材料として用いられるものである、成形体。
  17. 請求項1〜6のいずれかに記載のサイジング剤塗布炭素繊維束の製造方法であって、前記サイジング剤を水系溶媒で前記炭素繊維に塗布する工程を有する、サイジング剤塗布炭素繊維束の製造方法。
  18. 前記サイジング剤を水系溶媒で前記炭素繊維に塗布する工程を経た後に、接触式乾燥手段によってサイジング剤を塗布した炭素繊維束を乾燥させる予備乾燥工程、および、接触式または非接触式乾燥手段によってサイジング剤を塗布した炭素繊維束を乾燥させる第2乾燥工程を有し、第2乾燥工程の乾燥温度が20〜250℃である、請求項17に記載のサイジング剤塗布炭素繊維束の製造方法。
  19. 請求項17または18に記載のサイジング剤塗布炭素繊維束の製造方法で得られるサイジング剤塗布炭素繊維束、および、熱可塑性樹脂(B)を用いて、熱可塑性樹脂組成物を得た後に得る成形体の製造方法であって、前記熱可塑性樹脂組成物を300℃以上に加熱する工程を有する、成形体の製造方法。
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