JP6223255B2 - ガス分離膜 - Google Patents

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Description

本発明は、混合ガスから特定のガス種を選択的に分離することのできるガス分離膜に関する。
石炭ガス化火力発電用途の分離膜の検討が進んでいる。かかる用途においては、水蒸気が含まれる混合ガスから二酸化炭素を選択的に分離することが求められる。
二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を選択的に分離する上では、その選択性(二酸化炭素選択性)を高め、高濃度の二酸化炭素を回収することが課題となる。二酸化炭素選択性に優れた分離膜を得るため、二酸化炭素に対する親和性が高い素材を用いることが提案されており、例えば、架橋剤で架橋された親水性高分子材料をマトリックスとしてその中に特定のアミン化合物を包含させた層を多孔質性支持膜の表面に形成させたガス分離膜が提案されている(特許文献1)。
また、以前に本発明者らはカルボキシル基で特定量変性されたビニルアルコール系重合体とアゼチジニウム基を有する架橋剤の組み合わせにポリアミドアミンデンドリマーを包含させるガス分離膜を提案した(特許文献2)。このガス分離膜は、水蒸気が含まれた環境下でも安定にポリアミドアミンデンドリマーを担持することができ、優れた二酸化炭素の選択性を発現する。
さらに、本発明者らはカルボキシル基で特定量変性されたビニルアルコール系重合体に、ポリアミドアミンデンドリマーと1級アミノ基重合体を併用したガス分離膜を提案した(特許文献3)。このガス分離膜は、特許文献2記載のガス分離膜よりもさらに多くのアミノ基を安定的に包含することができる点から、優れた二酸化炭素の選択性を発現する。
特開2008−68238号公報 国際公開WO2011/102326A1パンフレット 特開2012−192316号公報
特許文献1に開示の分離膜は、高い二酸化炭素選択性を持つだけでなく、一定の圧力差にも耐えることが可能な分離膜と言える。しかしながら、分離対象となる混合ガスに水蒸気が含まれている場合、混合ガスと膜表面との間に親和性が発現するための適度な親水性と、水蒸気雰囲気下において分離膜の構造変化が起こることのない耐水性という相反した性質が要求される。前記の複合膜では、水蒸気雰囲気下において混合ガスが供給されると、包含されていたアミン化合物が経時的に複合膜より流出して、二酸化炭素選択性を維持することが出来ないため、実用に供することが困難である。
特許文献2および特許文献3に開示の分離膜は、水蒸気が含まれた環境下でも安定的にアミノ基の機能を発揮させることができ、優れた二酸化炭素の選択性を発現することに成功した。
しかしながら実用に供せられる分離膜を提供するという観点に立つと、水蒸気の含まれた混合ガスに対し、水蒸気と膜材料の間にさらに高い親和性が発現するための親水性を膜材料に担保させ、二酸化炭素の膜透過速度をより向上させることが望まれる。実用に供せられるだけの二酸化炭素の膜透過速度を得るという点では、前記分離膜よりもさらなる親水性の向上を図ることが望ましい。
例えば、親水性付与の観点から特許文献2のビニルアルコール系重合体のカルボキシル基変性量をさらに上げることが考えられるが、通常5mol%より多くラジカル共重合しようとすると、重合性が悪いため、重合速度が低下したり、重合度が低下するため、所望のビニルアルコール系重合体を得ることが困難であり、その結果分離膜を得ることができない。
以上より、従来よりも高い親水性を膜材料に担保させることで、水蒸気が含まれる混合ガスから二酸化炭素を効率よく分離できる分離膜の開発が切望されている。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、水蒸気が含まれる混合ガスから二酸化炭素を選択的に分離できるガス分離膜を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ビニルアルコール系重合体に対して、イオン性重合体を組み合わせ、さらにこれらに対してアルカリ金属化合物を併用する組み合わせにおいて、驚くべきことに、イオン性重合体の添加が膜の吸水性向上に寄与し、二酸化炭素親和材として添加したアルカリ金属化合物の機能をさらに発揮することが出来るため、これらを含む樹脂組成物から形成されたガス分離膜では、高温下(例えば、70℃以上)で水蒸気が含まれる混合ガスを分離する場合であっても、二酸化炭素の膜透過速度が向上するだけでなく、二酸化炭素選択性を高めることができ、上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、ビニルアルコール系重合体(A)と、カチオンおよび/またはアニオンを含有するイオン性重合体(B)と、アルカリ金属化合物(C)とを含む樹脂組成物で構成されることを特徴とするガス分離膜である。
イオン性重合体(B)は、カチオンとして、第四級アンモニウムカチオンを含んでいてもよく;アニオンとして、カルボキシラートアニオンおよび/もしくはスルホネートアニオンを含んでいてもよく、任意で、前記カチオンは、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンからなる群から選択される少なくとも一種を対イオンとして有していてもよく、前記アニオンはアルカリ金属を対イオンとして有していてもよい。
前記アルカリ金属化合物(C)として、アルカリ金属炭酸塩を含むことが好ましい。
ビニルアルコール系重合体(A)とイオン性重合体(B)との質量比は、例えば、(A)/(B)=90/10〜10/90であってもよい。また、イオン性重合体(B)とアルカリ金属化合物(C)との質量比は、(B)/(C)=1/99〜50/50であってもよい。
前記ガス分離膜において、前記ビニルアルコール系重合体(A)、前記イオン性重合体(B)、前記アルカリ金属化合物(C)に加え、さらに加えてアミン系化合物(D)を含むことが好ましい。
前記アミン系化合物(D)は、式(1)
Figure 0006223255
[式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、nは0または1の整数を示す。]
で示される基および/または式(2)
Figure 0006223255
[式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、nは0または1の整数を示す。]
で示される基を含有するポリアミドアミンデンドリマー(D1)を含むことが好ましい。
前記アミン系化合物として、前記ポリアミドアミンデンドリマー(D1)と1級アミノ基を含有するアミン系重合体(D2)を含むことが好ましい。
ポリアミドアミンデンドリマー(D1)とアミン系重合体(D2)との質量比は、例えば、(D1)/(D2)=100/0〜60/40であってもよい。
ガス分離膜は、樹脂組成物から形成されている。ガス分離膜は、さらに支持膜を備えていてもよい。その場合、ガス分離膜は、樹脂組成物が、支持膜に担持されていている複合膜であってもよい。
また、本発明は、前記ガス分離膜を用いて、水蒸気を含む40℃以上の混合ガスから炭酸ガスを分離することを特徴とするガス分離方法を包含してもよい。
本発明によれば、膜中に溶解拡散する水蒸気との間に高い親和性を有し、より高い二酸化炭素の膜透過速度および二酸化炭素選択性を発現するガス分離膜を得ることができる。
また、本発明のガス分離膜は、水蒸気が含まれた環境下でも、安定的に、二酸化炭素を透過するための透過能を維持することが可能であることが可能である。
本発明のガス分離膜は、ビニルアルコール系重合体(A)と、カチオンおよび/またはアニオン性を含有するイオン性重合体(B)と、アルカリ金属化合物(C)とを含む樹脂組成物で構成されることを特徴としており、以上の構成によって、特定のガス種の分離性能、さらには膜透過速度を著しく向上させることができる。
(ビニルアルコール系重合体(A))
本発明で用いるビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール単位を主成分とするポリマーであり、通常、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをけん化して製造される。
ビニルアルコール系重合体(A)は、ガス分離膜に対して、水蒸気を含む混合ガスに対する親水性と、二酸化炭素の分離性能を維持できる耐水性とを付与することができる限り、特に限定されるものではないが、けん化度としては50.0〜99.9モル%であることが好ましい。けん化度が低すぎる場合、分離膜の耐水性が低下する恐れがあり、けん化度が高すぎる場合、製膜時の作業性が低下したり、ガス分離膜を作製する際の溶液の粘度安定性が低下する恐れがある。けん化度は、70.0〜99.5モル%がより好ましい。このように、本発明で用いられるビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール単位の他にけん化されていないビニルエステル単位を含有できる。
ビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度(以下、重合度と略記することがある)は200〜5000が好ましく、300〜4000がより好ましい。重合度(P)はJIS−K6726に準じて測定される。すなわち、ビニルアルコール系重合体(A)を再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
重合度が小さすぎる場合には、ガス分離膜のマトリックスを構成する機能が低下してガス分離膜の耐水性が低下するおそれがある。重合度が大きすぎる場合には、ガス分離膜を作製する際の溶液の粘度が高くなりすぎる場合があり、作業性が低下するのみならず均質なガス分離膜が得られないおそれがある。
ビニルアルコール系重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記してきたビニルアルコール単位、ビニルエステル単位以外の単量体単位を含有していても良い。このような単量体単位となる単量体としては、エチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド;N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等の単量体由来の単位が挙げられる。これらの単量体単位の含有率としては10mol%以下が好ましく、5mol%以下がより好ましい。
また、ビニルアルコール系重合体(A)は、実質的に、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位のみで構成されていてもよく、その場合、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位以外の単量体単位の含有率としては、1mol%以下であってもよく、0.5mol%以下であってもよい。
(カチオンおよび/またはアニオンを含有するイオン性重合体)
次に、本発明で用いるカチオンおよび/またはアニオンを含有するイオン性重合体(B)について説明する。
本発明で用いるイオン性重合体(B)は、イオン性基が含有されていることで吸水機能が発現するため、分離膜の親水性が向上し、結果として二酸化炭素の膜透過速度を向上させることができる。本発明の効果を損なわない限り、特に限定されることなく、あらゆるイオン性重合体を用いても良く、各種イオン性重合体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
例えば、カチオンとしては、塩型の第1級アミノ基(−N)、第2級アミノ基(−NHHR)、第3級アミノ基(−NHRR’)、第四級アンモニウムカチオン(−NRR’R”)(ここで、R、R’、R”は、同一または異なって炭素数1〜5のアルキル基)が挙げられ、アニオンとしては、カルボキシラートアニオン、スルホネートアニオンなどが挙げられる。イオン性重合体(B)は、これらのイオン性基を、単独でまたは二種以上組み合わせて含んでいてもよい。
例えば、カチオンを含有するイオン性重合体(ポリカチオン)としては、例えば、ポリ(4−ビニルピリジン臭化エチル塩)、ポリエチレンイミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリメタクリル酸ジエチルアミノエチル臭化エチル塩、アイオネン、ポリビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩化物などが挙げられる。
また、アニオンを含有するイオン性重合体(ポリアニオン)としては、例えば、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン/マレイン酸共重合体、ポリグルタミン酸、ポリビニルリン酸、アルギン酸などが挙げられる。
また、カチオンおよびアニオンの双方を有する両性高分子電解質としては、例えば、メタクリル酸/メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体、各種タンパク質、ポリヌクレオチドなどが挙げられる。
二酸化炭素の膜透過速度を向上させる観点から、好ましくは、第四級アンモニウムカチオンを含有するイオン性重合体;カルボキシラートアニオン、スルホネートアニオンのうちいずれか1種を含有するイオン性重合体;であり、さらに好ましくは、製膜原液の粘度安定性などの観点から、第四級アンモニウムカチオン、スルホネートアニオンのうちいずれか1種を含有するイオン性重合体である。
第四級アンモニウムカチオンを含有するイオン性重合体は、第四級アンモニウムカチオンを含むモノマーを過酸化物やアゾ系化合物などの重合開始剤とともに水溶液中に添加することで重合し、所望の重合体が得られる。モノマーの具体例としては、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−(メタ)アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなど3−(メタ)アクリルアミド−アルキルトリアルキルアンモニウム塩;ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩;ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどジアリルジアルキルアンモニウム塩;等が例示される。
さらに、カチオンに対イオンが存在することで、解離による浸透圧が生まれ、分離膜の吸水力をより高めることができる。カチオン性基の対イオンは特に限定されず、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。カチオン性基を有するビニルアルコール系共重合体は、1種類のみの対イオンを含有していてもよいし、複数種の対イオンを含有していてもよい。
カルボキシラートアニオンを含有するイオン性重合体は、カルボキシル基を含むモノマーを過酸化物やアゾ系化合物などの重合開始剤とともに水溶液中に添加することで重合し、所望の重合体が得られる。モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、グルタミン酸、アルギン酸等が例示される。また、市販品であるポリアクリル酸等、既にポリマー化されたカルボキシル基含有ポリマーも、該イオン性重合体として用いても良い。
スルホネートアニオンを含有するイオン性重合体は、スルホン酸基又はスルホネート基を有するモノマーを過酸化物やアゾ系化合物などの重合開始剤とともに水溶液中に添加することで重合し、所望の重合体が得られる。モノマーの具体例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩、p−スチレンスルホン酸又はその塩、2−ビニルナフタレンスルホン酸又はその塩、ビニルスルホン酸又はその塩等が例示される。また、市販品であるポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)やポリ(P−スチレンスルホン酸)等、既にポリマー化されたスルホン酸基又はスルホネート基含有ポリマーも、該イオン性重合体として用いても良い。
カルボキシラートアニオンあるいはスルホネートアニオンを含有するイオン性重合体には、アニオンの対イオンが存在することで、解離による浸透圧が生まれ、分離膜の吸水力をより高めることができる。カチオン性基の対イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、ルビジウムイオンなどアルカリ金属イオンが好適なものとして挙げられる。これらのアルカリ金属イオンは、後述するアルカリ金属化合物(C)に由来する金属イオンである。
分離膜における二酸化炭素選択透過性と、造膜性とを両立させる観点から、ビニルアルコール系重合体(A)とイオン性重合体(B)との質量比は、例えば、(A)/(B)=90/10〜10/90であってもよく、好ましくは85/15〜20/80程度であってもよい。
(アルカリ金属化合物)
次に、本発明で用いるアルカリ金属化合物(C)について説明する。本発明で用いるアルカリ金属化合物(C)は、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム)を含む限り特に限定されず、アルカリ金属イオンそのものであってもよく、アルカリ金属を含む化合物であってもよい。
例えば、アルカリ金属イオンは、イオン性重合体(B)の対イオンとして存在してもよい。対イオンとしてアルカリ金属イオンが存在すると、浸透圧が高まり、イオン性重合体の水蒸気への溶解性を大きく高めることが出来る。このようなアルカリ金属イオンは、例えば強塩基性アルカリ金属化合物(例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシドなど)に由来して生じるイオンであってもよい。
また、アルカリ金属を含む化合物は、該分離膜材料の二酸化炭素に対する親和性を高めるために使用されてもよく、その場合二酸化炭素の膜透過速度を向上させることができる。
アルカリ金属化合物としては、強塩基性アルカリ金属化合物[例えば、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム)、アルカリ金属のアルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウム)]、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム)、アルカリ金属重炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなど)、アルカリ金属カルボン酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウムなど)、アルカリ金属硫酸塩(硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウムなど)、アルカリ金属ハロゲン化物塩(塩化セシウム、ヨウ化セシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなど)、アルカリ金属硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウムなど)などが例示される。
中でも、膜内が塩基性を帯びる観点から、解離時に弱酸強塩基の塩として振舞えるアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属炭酸塩。アルカリ金属重炭酸塩が好ましく用いられ、さらに好ましくはアルカリ金属炭酸塩(特に炭酸セシウム)であってもよい。
また、アルカリ金属の炭酸塩や重炭酸塩の場合、補助添加成分として、アルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子や、亜砒酸ナトリウム、炭酸アンヒドラーゼ、ホウ酸等を併用することができる。
アルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子としては、従来公知のもの、例えば:12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−12−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−12−クラウン−4、ジベンゾ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−12−クラウン−4、ジシクロヘキシル−15−クラウン−5、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、n−オクチル−12−クラウン−4、n−オクチル−15−クラウン−5、n−オクチル−18−クラウン−6等の環状ポリエーテル;クリプタンド〔2.1〕、クリプタンド〔2.2〕等の環状ポリエーテルアミン;クリプタンド〔2.1.1〕、クリプタンド〔2.2.2〕、等の双環式ポリエーテルアミンの他、ポルフィリン、フタロシアニン、ポリエチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸等を用いることができる。
前記アルカリ金属化合物の添加量については、一定の造膜性が維持されることを前提とすれば特に限定されず、多量に配合することも可能である。該化合物の添加量は、樹脂組成物(固体分換算)の全量に対して、アルカリ金属換算で、20質量%以上90質量%未満が好ましく、25質量%以上85質量%以下がより好ましく、25質量%以上75質量%以下がさらに好ましい。添加量が少なすぎる場合、アルカリ金属化合物による二酸化炭素膜透過速度向上の効果が見込めない恐れがあり、一方で添加量が多すぎる場合、造膜性が損なわれる恐れがある。
なお、アルカリ金属化合物の含有量は、蛍光X線分析により測定した値であってもよい。
また、分離膜における二酸化炭素透過性と、造膜性とを両立させる観点から、イオン性重合体(B)とアルカリ金属化合物(C)(アルカリ金属換算)との質量比は、例えば、(B)/(C)=1/99〜50/50であってもよく、好ましくは5/95〜40/60程度であってもよい。
(アミン系化合物)
本発明で用いられる樹脂組成物は、先のビニルアルコール系重合体(A)、イオン性重合体(B)、アルカリ金属化合物(C)に加え、さらにアミン系化合物(D)を含んでいてもよい。アミン系化合物は、実質的に、アミノ基またはイミノ基が塩を形成していない、フリーの状態で用いられる。
該アミン系化合物は、本発明の効果を発揮することが出来る限り特に限定されず、例えば、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、n‐ブチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、n‐ブチルエタノールアミン、ジーn‐ブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等);ポリアミドアミンデンドリマー類;ポリアリルアミン、ポリ−N−1,2−ジメチルプロピルアリルアミン、ポリ−N−メチルアリルアミン、ポリ−N,N−ジメチルアリルアミン、ポリ−2−ビニルピペリジン、ポリ−4−ビニルピペリジン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミンの構造単位を有するアミン系重合体;アミノ酸類(例えば、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、ジメチルアミノグリシン、2,3−ジアミノプロピオン酸等)等の従来公知のものを挙げることができる。これらは、単一成分として用いても良く、複数成分を組み合せて用いても良い。
より高いCO選択性を発現するという観点から、少なくともポリアミドアミンデンドリマーを含むことが好ましく、下記式(1):
Figure 0006223255
[式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、nは0または1の整数を示す。]
で示される基および/または式(2):
Figure 0006223255
[式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、nは0または1の整数を示す。]
で示される基を、例えば、1〜10meq/g含有するポリアミドアミンデンドリマーを含むことがより好ましく、式(1)で示される基を有するポリアミドアミンデンドリマー(D1)を含むことが特に好ましい。
本発明で用いられるポリアミドアミンデンドリマー(D1)に関して、式(1)、式(2)中、A、Aで示される炭素数1〜3の二価有機残基としては、たとえば直鎖状または分枝状の炭素数1〜3のアルキレン基が挙げられる。このようなアルキレン基の具体例としては、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH(CH)−などが挙げられ、−CH−が特に好ましい。また、式(1)または式(2)中、水蒸気が含まれる混合ガスとの親和性が増すことから、n=1であることが好ましい。
本発明で用いられるポリアミドアミンデンドリマー(D1)は、式(1)で示される基および/または上記式(2)で示される基を、例えば、1〜10meq/g含有してもよい。なお「eq/g」はポリアミドアミンデンドリマー内の官能基の含有率、すなわちポリアミドアミンデンドリマー1g中の官能基の当量数(モル数と称される場合もある)を表し、1meq/gは分子1g中に1ミリ当量の官能基を有することを意味する。これにより、高いCO選択性を有するガス分離膜を得ることができる。
本発明で用いられるポリアミドアミンデンドリマー(D1)は、エチレンジアミンによるアミド化反応で分岐構造を形成し、その分岐数を増やしていくことで、分子内の1級アミンの個数を増すことができる。本発明においては、分岐数に制限されることなく、どの世代のポリアミドアミンデンドリマーでも好適に用いることができるが、1級アミンの含有率が高い下記式(3)〜(8)の中から選択される第0世代ポリアミドアミンデンドリマーが特に好適に用いられる。
Figure 0006223255
Figure 0006223255
Figure 0006223255
Figure 0006223255
Figure 0006223255
Figure 0006223255
また、本発明で用いるアミン系化合物(D)は、ポリアミドアミンデンドリマー(D1)に加えて、別のアミン系重合体(D2)を含んでいても良い。アミン系重合体(D2)としては、1級アミノ基を10〜35meq/g含む重合体として、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられ、それら重合体は一部変性されていても構わない。中でも、水蒸気雰囲気下における膜構造の安定性の観点から、ポリアリルアミンが好適である。
水蒸気雰囲気下において二酸化炭素を選択的に分離する観点から、ビニルアルコール系重合体(A)及びイオン性重合体(B)の総量と、アミン系化合物(D)との質量比は、例えば、[(A)+(B)]/(D)=100/0〜5/95であってもよく、好ましくは100/0〜10/90であってもよい
また、ポリアミドアミンデンドリマー(D1)とアミン系重合体(D2)との質量比は、例えば、(D1)/(D2)=100/0〜60/40であってもよく、好ましくは100/0〜70/30であってもよい。
(ガス分離膜)
上記のガス分離膜に用いる各種材料は、水、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)などの有機溶媒、およびこれらの混合物、なかでも好ましくは水に溶解混合されて膜形成原液が調整される。そして、樹脂組成物からなるガス分離膜では、この原液がダイからフィルム状に吐出され、またはノズルから中空糸状に形成され、乾燥されたガス分離膜が形成されてもよい。ガス分離膜の膜厚は、0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜20μmであることがより好ましく、0.1〜10μmであることが特に好ましい。
(支持膜)
本発明のガス分離膜は、ガス分離膜の強度を向上させる観点から、支持膜を用いてもよい。その場合、ガス分離膜は、樹脂組成物が、支持膜に担持されていている複合膜であってもよい。樹脂組成物と支持膜との複合膜の態をなす場合、実用に供することが可能なものとして好適に使用される。
樹脂組成物とともに支持膜を用いる場合、ガス分離膜は、樹脂組成物からなるシートと支持膜とが積層されている膜であってもよいし;樹脂組成物が、支持膜に対して含浸または塗布された膜であってもよい。
また、樹脂組成物が支持膜に対して塗布される場合、例えば、上記の原液が支持膜上に吐出され乾燥されてガス分離膜を形成してもよい。
支持膜を構成する高分子としては特に限定されず、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。
支持膜の形状としては、フィルム、中空糸、多孔質膜など各種の形状であってよい。孔の大きさ、膜厚などは、気体透過量と膜の機械的強度を考慮して適宜選択することができる。
支持膜が多孔質膜である場合、支持膜は、例えば、所定の分画分子量を有する限外ろ過膜であってもよい。その分画分子量としては、例えば、1万〜50万程度であってもよく、好ましくは10万〜40万程度であってもよい。
本発明のガス分離膜は、混合ガスが有する水蒸気や圧力に対して、必要な耐水性あるいは耐圧性を確保するため、架橋剤を適宜配合しても良い。架橋剤としては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂;エポキシ基、アルデヒド基、ハロゲン原子などの官能基を2個以上有する化合物;チタン系架橋剤;ジルコニウム系架橋剤などが好適なものとして挙げられる。
(その他)
本発明のガス分離膜には、これまでに列記した各種化合物の他にも、発明の効果を損なわない限り、その他の添加剤が含有されていても良い。例えば、酸化防止剤、保水剤、紫外線吸収剤、さらには、二酸化炭素の膜透過速度をより向上する観点から、二酸化炭素と水蒸気間の反応速度をより高められる反応触媒を添加剤(例えば、アミンが配位された亜鉛錯体)などが挙げられる。
こうして得られた本発明のガス分離膜は、特定のガス種、特に二酸化炭素を選択的に分離する性能が優れており、火力発電所、製鉄所、セメント工場、天然ガス田等で好適に使用することができる。
特に、本発明のガス分離膜を用いる場合、水蒸気を含む40℃以上(好ましくは60℃以上)の混合ガスから炭酸ガスを効率よく分離することが可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
[透過速度および二酸化炭素選択性の測定]
二酸化炭素の透過速度Q(CO)(m/m・s・Pa)およびヘリウムの透過速度Q(He)(m/m・s・Pa)を以下のようにして測定し、二酸化炭素選択性α(CO/He)を求めた。
組成をCO/He=80/20(ml/min)、温度を85℃、相対湿度を80RH%に設定したガスを実施例および比較例で得られたガス分離膜に供給し、透過側にスウィープガスとしてアルゴンを10ml/min供給した等圧法によって、該分離膜の透過速度を測定した。
Q(CO)=(CO透過流量)/(膜面積)・(CO供給分圧−CO透過分圧)
Q(He)=(He透過流量)/(膜面積)・(He供給分圧−He透過分圧)
α=Q(CO)/Q(He)
(実施例1)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1700、けん化度98.6モル%の重合体、イオン性重合体(B)としてポリアクリル酸(和光純薬社製、分子量5000)、カルボキシラートアニオンの対イオンとして水酸化ナトリウム、アルカリ金属化合物(C)として炭酸セシウムを表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して乾燥させ複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
(実施例2)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1100、けん化度98.6モル%の重合体、イオン性重合体(B)としてポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(シグマアルドリッチジャパン社製、分子量200万、略称:ポリAMPS)、スルホネートアニオンの対イオンとして水酸化ナトリウム、アルカリ金属化合物(C)として炭酸セシウムを表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
(実施例3)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1100、けん化度98.6モル%の重合体、イオン性重合体(B)として3−(メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロライドの高分子重合体(略称:ポリMAPTAC)、アルカリ金属化合物(C)として炭酸カリウム、さらにアミン系化合物(D)として第0世代ポリアミドアミンデンドリマー(シグマアルドリッチジャパン社製、分子量516、式(1)で表される基の含有率:7.75meq/g)を表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
なお、MAPTACの高分子量化については、以下に示すとおりに作製した。還流冷却管、攪拌翼を備え付けた四つ口セパラブルフラスコに、水1048g、前記ビニルアルコール系重合体(A)を110g仕込み、攪拌下95℃まで加熱して該ポリビニルアルコールを溶解した後、室温まで冷却した。該水溶液に1/2規定の硫酸を添加してpHを3.0に調製した。別に、MAPTAC178.4gを溶解し、これを先に調製した水溶液に攪拌下添加した後、該水溶液中に窒素をバブリングしつつ70℃まで加温し、さらに70℃で30分間窒素のバブリングを続けることで、窒素置換した。窒素置換後、上記水溶液に過硫酸カリウム(KPS)の2.5%水溶液88.8mLを1.5時間かけて逐次的に添加してMAPTACの重合を開始させ、進行させた後、系内温度を75℃に1時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、固形分濃度20%のビニルアルコール系重合体(A)とポリMAPTACの混合水溶液を得た。
(実施例4)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度3500、けん化度88.0モル%の重合体、イオン性重合体(B)としてポリアクリル酸(和光純薬社製、分子量5000)、カルボキシラートアニオンの対イオンとして水酸化セシウム、アルカリ金属化合物(C)として炭酸セシウムを表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
(実施例5)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1700、けん化度98.6モル%の重合体、イオン性重合体(B)としてポリアクリル酸(和光純薬社製、分子量5000)、カルボキシラートアニオンの対イオンとして水酸化カリウム、アルカリ金属化合物(C)として炭酸カリウム、さらにアミン化合物(D)として第0世代ポリアミドアミンデンドリマー(シグマアルドリッチジャパン社製、分子量516)、及びポリアリルアミン(日東紡社製、銘柄PAA−25)を表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
(実施例6)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1700、けん化度88.0モル%の重合体、イオン性重合体(B)としてポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(シグマアルドリッチジャパン社製、分子量200万、略称:ポリAMPS)、スルホネートアニオンの対イオンとして水酸化カリウム、アルカリ金属化合物(C)として炭酸カリウムを表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
(実施例7)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1700、けん化度98.6モル%の重合体、イオン性重合体(B)としてポリアクリル酸(和光純薬社製、分子量5000)、カルボキシラートアニオンの対イオンとして水酸化セシウム、アルカリ金属化合物(C)として炭酸セシウムを表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
(実施例8)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1700、けん化度98.6モル%の重合体、イオン性重合体(B)として3−(メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド)の高分子重合体(略称:ポリMAPTAC)、アルカリ金属化合物(C)として炭酸セシウムを表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
なお、MAPTACの高分子量化については、前記実施例3と同様に作製した。
(実施例9)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1100、けん化度98.6モル%の重合体、イオン性重合体(B)としてポリアクリル酸(和光純薬社製、分子量5000)、カルボキシラートアニオンの対イオンとして水酸化ナトリウム、アルカリ金属化合物(C)として炭酸ナトリウム、さらにアミン化合物(D)として第0世代ポリアミドアミンデンドリマー(シグマアルドリッチジャパン社製、分子量516)、及びポリアリルアミン(日東紡社製、銘柄PAA−15C、第1級アミンの含有率:17.5meq/g)を表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
(実施例10)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1100、けん化度98.6モル%の重合体、イオン性重合体(B)としてポリ(P−スチレンスルホン酸)(和光純薬社製、20wt%水溶液、略称:ポリPSS)、スルホネートアニオンの対イオンとして水酸化ナトリウム、アルカリ金属化合物(C)として炭酸カリウムを表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
(比較例1)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1100、けん化度98.6モル%の重合体、アルカリ金属化合物(C)として炭酸セシウム、以上2成分のみを表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
(比較例2)
ビニルアルコール系重合体(A)として重合度1700、けん化度98.6モル%の重合体、アルカリ金属化合物(C)として炭酸カリウム、以上2成分のみを表1に示すとおりの割合で配合し、イオン交換水を加えて固形分濃度7.5質量%の製膜原液を作製した。この溶液を分画分子量30万、ポリエーテルスルホンを素材とした限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名バイオマックス)上に流延して複合膜を作製し、二酸化炭素の膜透過速度Q(CO)、及び二酸化炭素選択性αを求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
Figure 0006223255
表1に示すように、比較例1および2では、ビニルアルコール系重合体とイオン性重合体とアルカリ金属化合物が共存していないため、分離対象となる混合ガスに水蒸気が含まれている場合、二酸化炭素膜透過速度Q(CO)が小さく、また二酸化炭素選択性αも十分ではない。
一方、実施例1〜10では、分離対象となる混合ガスに水蒸気が含まれている場合であっても、いずれも二酸化炭素膜透過速度Q(CO)が大きく、さらに70%以上もの二酸化炭素選択性αを示している。
アミン系化合物を含む実施例では、その二酸化炭素膜透過速度Q(CO)を高め、特に二酸化炭素選択性αを90%以上に向上することができる。
本発明に係るガス分離膜は、混合ガス、特に水蒸気の含まれる混合ガスから、二酸化炭素を選択的に分離する性能が優れており、石炭ガス化火力発電より産生される水性シフトガスからの二酸化炭素の分離、天然ガス田より産生される天然ガスからの二酸化炭素の分離、石炭火力発電より排出される排ガスからの二酸化炭素の分離などにおいて有用である。
以上、本発明の好ましい実施態様を例示的に説明したが、当業者であれば、特許請求の範囲に開示した本発明の範囲および精神から逸脱することなく多様な修正、付加および置換ができることが理解可能であろう。

Claims (10)

  1. ビニルアルコール系重合体(A)と、カチオンおよび/またはアニオンを含有するイオン性重合体(B)と、アルカリ金属化合物(C)とを含む樹脂組成物で構成されるガス分離膜であって、
    前記ビニルアルコール系重合体(A)はビニルアルコール単位およびビニルエステル単位、ならびに1mol%以下のその他の単量体単位のみで構成され、前記ビニルアルコール系重合体(A)と前記イオン性重合体(B)との質量比が、(A)/(B)=90/10〜10/90であり、且つ前記イオン性重合体(B)と前記アルカリ金属化合物(C)(アルカリ金属換算)との質量比が(B)/(C)=1/99〜50/50である、ガス分離膜。
  2. イオン性重合体(B)が、カチオンとして、第四級アンモニウムカチオンを含み;および/またはアニオンとして、カルボキシラートアニオンおよび/もしくはスルホネートアニオンを含ことを特徴とする請求項1記載のガス分離膜。
  3. 前記カチオンの対イオンは、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンからなる群から選択される少なくとも一種であり、前記アニオンの対イオンは、アルカリ金属イオンである請求項2記載のガス分離膜。
  4. アルカリ金属化合物(C)が、アルカリ金属炭酸塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス分離膜。
  5. 樹脂組成物が、前記ビニルアルコール系重合体(A)、前記イオン性重合体(B)、前記アルカリ金属化合物(C)に加え、さらにアミン系化合物(D)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス分離膜。
  6. 前記アミン系化合物(D)が、式(1):
    Figure 0006223255
    [式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、nは0または1の整数を示す。]
    で示される基および/または式(2):
    Figure 0006223255
    [式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、nは0または1の整数を示す。]
    で示される基を含有するポリアミドアミンデンドリマー(D1)を含むことを特徴とする請求項5記載のガス分離膜。
  7. 前記アミン系化合物(D)が、前記ポリアミドアミンデンドリマー(D1)に加えて、1級アミノ基を含有するアミン系重合体(D2)を含むことを特徴とする請求項5または6に記載のガス分離膜。
  8. ポリアミドアミンデンドリマー(D1)とアミン系重合体(D2)との質量比が、(D1)/(D2)=100/0〜60/40であることを特徴とする請求項7に記載のガス分離膜。
  9. さらに支持膜を備え、前記樹脂組成物が、支持膜に担持されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のガス分離膜。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のガス分離膜を用いて、水蒸気を含む40℃以上の混合ガスから炭酸ガスを分離することを特徴とするガス分離方法。
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