JP6222824B2 - 天吊り金物 - Google Patents
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Description
天吊り金物は、その上端部を、天井スラブに固定した吊支用固定金具に取り付けることで、天井スラブに吊支状態に取り付けられる。天吊り形屋内機器は、天井スラブに取り付けた天吊り金物の下端部に取り付けることで、天吊り金物を介して天井スラブからその下方に吊支される。
図14に例示した天吊り金物110は、複数本のL形鋼(山形鋼)を溶接して組み立てたものである。この天吊り金物110は、4本のL形鋼140を溶接して組み立てた一対の四角枠120と、一対の四角枠120を連結して互いに平行に固定する複数本(図示例では4本)のL形鋼130(以下、連結柱材とも言う)とを有する。一対の四角枠120は、それぞれの内側空間の中心軸線を互いに一致させて固定されている。
屋内機器160は、第1四角枠121に機器用取付金具(図示略)を用いて第1四角枠121に固定して取り付ける。天吊り金物110の第1四角枠121への屋内機器160の取り付けは、天吊り金物110の天井スラブへの取り付け(吊支)の前、後のいずれも可能である。屋内機器160は、天井スラブに吊支した天吊り金物110の第1四角枠121に取り付けるか、あるいは該屋内機器160を第1四角枠121に取り付けた天吊り金物110を天井スラブに吊支することで、天吊り金物110を介して天井スラブに吊支される。
図14に例示した天吊り金物110は、空気調和機等の、重量が10〜50kg程度の屋内機器の吊支に多用されている。
現場にて組み立てる場合は、天吊り金物110の構成部材同士の溶接を全て現場にて行なうことも可能であるが、例えば、組み立て済みの一対の四角枠121、122を現場に搬入し、現場にてこれら四角枠121、122と連結柱材130との溶接作業を行なって天吊り金物110全体を組み立てる場合もある。
全体を組み立てた状態で現場に搬入する場合は、建物構造によっては搬入に手間が掛かったり、場合によっては搬入が不可能なケースが生じ得る。これに対して、現場での組み立ては、天吊り金物110の構成部材の現場への搬入を円滑に行える利点がある。
しかしながら、図14に例示した従来例の天吊り金物110は、構成部材同士の固定のための溶接箇所が多数存在する構造であり、その構造上、軽量化に不利であり、軽量化が難しかった。
一側枠用L形鋼140Aの第1板片部141は、そのL形鋼長手方向片端の端面を他側枠用L形鋼140B長手方向端部の第1板片部141の片面に他側枠用L形鋼140Bの第2板片部142とは反対の側から突き当てて、他側枠用L形鋼140Bの第1板片部141にすみ肉溶接(第1溶接部W1)によって固定、一体化されている。一側枠用L形鋼140Aの第2板片部142は、そのL形鋼長手方向片端を他側枠用L形鋼140Bの第2板部142に突き合わせ溶接(第2溶接部W2)して固定、一体化されている。
連結柱材130の長手方向端部は、四角枠120の角部の入り隅側に配置されている。
そして、連結柱材130は、その長手方向端部の一対の柱材板片部131、132を、四角枠120の角部を構成する一対の枠用L形鋼140A、140Bの第1板片部141に重ね合わせて、一対の枠用L形鋼140A、140Bに溶接固定されている。
四角枠120の角部を構成する一対の枠用L形鋼140A、140Bに連結柱材130を固定する溶接は、図15(a)に示すように、連結柱材130の枠用L形鋼140A、140Bの第1板片部141に重ね合わせた部分外周の端面と各枠用L形鋼140A、140Bとの間の境界部に施す(第3溶接部W3)とともに、図15(b)に示すように、連結柱材130と枠用L形鋼140A、140Bの第2板片部142との間の入り隅部にも施す(第4溶接部W4)。
したがって、天吊り金物110全体の組み立てには、総計32箇所の溶接部の形成を必要とする。
図14等に例示した従来例の天吊り金物は、その構成部材同士の連結固定を全て溶接にて行なう構成であり、安全率を考慮した各溶接箇所の必要強度に対応して、必要強度を確保可能な肉厚を有するL形鋼を多数使用する必要がある。このため、従来例の天吊り金物は、溶接箇所以外で、L形鋼の肉厚が強度確保上の必要サイズよりもかなり大きい箇所が多数生じる構造であり、軽量化が容易でなかった。
従来例の天吊り金物の図15(a)、(b)に例示した溶接部W3、W4には、吊支する屋内機器の重量が上下方向の剪断力として長期にわたって作用し続ける。溶接部W3、W4には高い安全率を確保する必要がある。従来例の天吊り金物は、溶接部W3、W4にて互いに接合されるL形鋼に、溶接部W3、W4の安全率を確保可能な肉厚を有するものを使用する必要があることが天吊り金物を構成する各L形鋼の肉厚に反映される構造となっている。従来例の天吊り金物は、その構造上、溶接部W3、W4に高い安全率の確保を必要とする点が、天吊り金物を構成する各L形鋼の薄肉化、軽量化の障害になっていた。その結果、従来例の天吊り金物は、溶接箇所以外で、L形鋼の肉厚が強度確保上の必要サイズよりもかなり大きい箇所が多数生じるものとなっていた。
但し、現場にてL形鋼を溶接して組み立てる場合は、電気溶接であれば電源の確保、ガス溶接であればガスボンベの現場搬入が必要であり、電源やガスといった溶接エネルギー源の確保に労力を要することがある。また、現場が火気使用禁止の状況にあるときは、組み立てを行えない。
一方、天吊り金物110全体を組み立てた状態で現場に搬入する場合は、組み立てた天吊り金物110の保管スペース確保や、多数を搬送する場合の搬送コストが問題となる。特に、組み立てた天吊り金物110の多数搬送は、例えば搬送車両の繰り返し往復等により延べ車両数が嵩むため、組み立て前の天吊り金物110の構成部材のみを搬送する場合に比べて十倍以上の搬送コストを要することが多い。このため、天吊り金物110の搬送コストの低減は喫緊の課題となっていた。
第1の発明は、天井スラブ下に屋内機器を吊支するために天井スラブに取り付けられる天吊り金物であって、
前記屋内機器が取り付けられる多角形枠状の端部枠体と、この端部枠体にボルト固定される上下方向連結金具とを有し、前記端部枠体を前記上下方向連結金具を介して前記天井スラブの下方に支持可能に構成され、
前記端部枠体は、帯板状に延在しその延在方向の1又は複数箇所に該延在方向に垂直の稜線を以て屈曲する屈曲部が形成された主板部と、この主板部の幅方向片端から該主板部に垂直に張り出された張り出し片部とを有する屈曲帯板材を用い、複数の前記屈曲帯板材をその端部同士の溶接又は前記端部をそれぞれ溶接した連結用金属部材を介して互いに連結、あるいは1本の屈曲帯板材の両端を直接溶接又は連結用金属部材にそれぞれ溶接して互いに連結、して枠状に形成され、
前記屈曲帯板材及び前記連結用金属部材はそれぞれ金属製一体成形品であり、前記屈曲帯板材はその全体が前記屈曲部が形成された一枚の金属板によって形成され、
前記屈曲帯板材は、前記主板部の前記屈曲部を介して両側に位置する部分から張り出す前記張り出し片部同士を溶接して形成されていることを特徴とする天吊り金物を提供する。
第2の発明は、前記端部枠体は、前記主板部の前記屈曲部及びその近傍から、前記主板部幅方向において前記張り出し片部が張り出す一端とは反対の方向へ延出された連結用突片部を有し、前記連結用突片部には、前記上下方向連結金具を前記端部枠体に固定するボルト挿通用のボルト孔が形成されていることを特徴とする第1の発明の天吊り金物を提供する。
第3の発明は、前記屈曲帯板材の前記主板部の前記屈曲部を介して両側に位置する部分から張り出す前記張り出し片部同士は互いに突き合わせ溶接されていることを特徴とする第1又は2の発明の天吊り金物を提供する。
第4の発明は、一対の前記端部枠体と、両側の端部にそれぞれ取り付けられた前記端部枠体を互いに連結する前記上下方向連結金具とを有し、
前記屋内機器が取り付けられる一方の前記端部枠体は、吊支金具を介して前記天井スラブに取り付けて前記天井スラブの下方に支持した他方の前記端部枠体に前記上下方向連結金具を介して連結して前記他方の端部枠体の下方に配置可能であることを特徴とする第1〜3のいずれか1つの発明の天吊り金物を提供する。
また、この天吊り金物は、組み立て済みの端部枠体に上下方向連結金具をボルト固定するだけで、現場にて溶接無しに短時間で簡単に組み立てることができる。
また、この天吊り金物は、現場にて溶接無しに短時間で簡単に組み立てることができることから、使用前には、組み立て済みの端部枠体と上下方向連結金具とを互いに連結していない状態で保管しておけば良く、組み立て済みの天吊り金物を保管する場合に比べて保管スペースを大幅に縮小できる。しかも、組み立て済みの端部枠体と上下方向連結金具とを互いに連結していない状態であれば、組み立て済みの天吊り金物に比べて、多数の天吊り金物に相当する端部枠体及び上下方向連結金具を搬送でき、搬送コストを低減できる。
図1、図2に本実施形態の天吊り金物10を示す。
図1、図2に示すように、この実施形態の天吊り金物10は、四角枠状の一対の端部枠体20と、これら端部枠体20を互いに連結するための上下方向連結金具30とを有する概略構成となっている。
天吊り金物10は、天井スラブSに固定された吊支用固定金具52に天井スラブS下から取り付けることで、天井スラブSに吊支状態に取り付けられる。
天吊り形屋内機器60は、天井スラブSに取り付けた天吊り金物10の下端部に取り付けることで、天吊り金物10を介して天井スラブSに吊支状態に取り付けられる。
図1、図3に示すように、端部枠体20は、平面視コ字形の一対の屈曲帯板材22を互いに接合、一体化して形成されている。
屈曲帯板材22は、図4に示す1枚の金属板21を折曲加工して形成したものである。
この金属板21としては、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板等を好適に用いることができる。また、金属板21の厚み(板厚)は1.5〜3.2mmが好適であるが、これに限定されるものではない。
図4に示す金属板21は細長平板状に形成されている。
この金属板21は、帯板状の帯状板部21aを有する。
この帯状板部21aには、その幅方向一端側の端面21dから幅方向他側へ向かって切り込む切り欠き部21bが形成されている。
この切り欠き部21bは、帯状板部21aのその長手方向に互いに離隔する2箇所に形成されている。
この連結用突片部21cは、帯状板部21aのその長手方向に互いに離隔する2箇所から延出されている。
なお、以下、金属板21について、帯状板部21a長手方向を「長手方向」、帯状板部21a幅方向を「幅方向」として説明する。
また、金属板21からの屈曲帯板材22の形成は、図4に示すように、金属板21を、その長手方向全長にわたって、帯状板部21a幅方向中央部の図4中仮想線BL3(以下、横折り線とも言う)の位置で直角に折曲する(張出部形成工程)。
但し、屈曲部形成工程及び張出部形成工程の実行タイミングはこれに限定されるものではない。屈曲部形成工程及び張出部形成工程は、まず張出部形成工程を実行し、その完了後に屈曲部形成工程を実行しても良い。
また、屈曲部形成工程及び張出部形成工程とは同時に実行しても良い。
上述の屈曲部形成工程では、金属板21を縦折り線BL1、BL2の位置でそれぞれ直角に折曲して、金属板21の長手方向2箇所に、金属板21幅方向に延在する稜線25a(図1、図3参照)を以て屈曲する屈曲部25を形成する。この屈曲部形成工程では、金属板21を、2箇所の屈曲部25形成によってコ字形に成形する。
したがって、この屈曲部形成工程にて、連結用突片部21cはL字板状に屈曲成形される。L字板状に屈曲成形後の連結用突片部21cは、例えば、図1、図3等を参照して把握できる。
図1、図3、図4に示すように、金属板21の3つの部分板部BP(第1部分板部BP1、第2部分板部BP2、第3部分板部BP3)のうち、第2部分板部BP2は、第1部分板部BP1と第3部分板部BP3との間に位置する。
図1、図3、図4において、金属板21の3つの部分板部BP(第1部分板部BP1、第2部分板部BP2、第3部分板部BP3)に対応する部分に該当の符号を付記した。
図4に示す金属板21において、横折り線BL3は、金属板21の長手方向全長に延在している。
張出部形成工程では、既述のように、金属板21を横折り線BL3の位置で垂直に折曲する。その結果、図1、図3等に示すように、金属板21の横折り線BL3から幅方向他端側部分(以下、基板部26とも言う)から垂直に張り出す張り出し片部23を形成する。張り出し片部23は、図4の金属板21の横折り線BL3から幅方向一端側部分(以下、張り出し片形成領域21e)によって形成されている。
張出部形成工程では、図4に示す金属板21の各部分板部BPの張り出し片形成部21fを基板部26に対して垂直に折曲して、3つの張り出し片部23を形成する。
張出部形成工程では、図4に示す金属板21の各部分板部BPの張り出し片形成部21fを基板部26に対して、それぞれ、コ字形の基板部26の内面側へ向かって折曲して3つの張り出し片部23を形成する。
図1、図3に示すように、張出部形成工程を完了後の金属板21において、主板部24は、2箇所の屈曲部25を有してコ字形に延在する帯板状(コ字形板状)に形成されている。
主板部24及び基板部26について、屈曲部25の稜線25a(図1、図3参照。換言すれば縦折り線BL1、BL2)の延在方向に一致する方向を幅方向として説明する。
主板部24及び基板部26の幅方向は、主板部24及び基板部26の延在方向に垂直の向きとなっている。
金属板21の連結用突片部21cは、主板部24の幅方向他端、すなわち主板部24のその幅方向において張り出し片部23とは反対側の端から延出されている。
この実施形態では、張り出し片部溶接工程にて、互いに隣り合う張り出し片部23同士を突き合わせ溶接する。図1、図3に例示した張り出し片溶接部23aは、具体的には、金属板21の互いに隣り合う張り出し片部23同士を突き合わせ溶接した突き合わせ溶接部である。
縦折り線BL1、BL2は、それぞれ、三角形状の切り欠き部21bの頂部を通る。
また、各切り欠き部21bは、金属板21幅方向他端側の端を横折り線BL3に位置合わせして形成されている。
図1、図3に示すように、互いに隣り合う部分板部BPの張り出し片部23は、張出部形成工程にて、図4において隣り合う張り出し片形成部21fの互いに対面する切り欠き側端面21g同士を閉じ合わせるようにして形成される。
図1、図3に示すように、この実施形態に係る端部枠体20は、一対の屈曲帯板材22を、その一方の延在方向両端(第1、第3部分板部BP1、BP3の第2部分板部BP2とは反対側の端)と他方の延在方向両端との突き合わせ溶接によって、接合一体化したものである。
図1、図3の符号22aを付した仮想線は、一対の屈曲帯板材22の一方の延在方向両端と他方の延在方向両端とを互いに突き合わせ溶接した溶接部(突き合わせ溶接部)を示す。この溶接部22a(屈曲帯板材22同士の溶接部)を、以下、帯板材溶接部とも言う。
この実施形態に係る屈曲帯板材22は、各部分板部BP1〜BP3の連結用突片部21cを除く部分の断面外形寸法を互いに同じに揃えて形成されている。また、この屈曲帯板材22は、第1、第3部分板部BP1〜BP3の長さ寸法(第2部分板部BP2からの突出寸法)を互いに同じに揃えて形成されている。
この端部枠体20は、互いに平行に形成された第1延在辺部271及び第3延在辺部273と、第1、第3延在辺部271、273に垂直かつ互いに平行に形成された第2延在辺部272及び第4延在辺部274とによって四角枠状に形成されている。
図1〜図3、図5において、この端部枠体20に図中符号210を付記する。
第1、第3延在辺部271、273の長さ寸法は、第2、第4延在辺部272、274の長さ寸法よりも長く設定されている。
図1、図3に示すように、端部枠体210の第1延在辺部271はその全体が第1屈曲帯板材22Aの第2部分板部BP2、端部枠体210の第3延在辺部273はその全体が第2屈曲帯板材22Aの第2部分板部BP2、によって構成されている。図3に示すように、端部枠体210の第2延在辺部272は、第1屈曲帯板材22Aの第1部分板部BP1と第2屈曲帯板材22Aの第3部分板部BP3とを溶接一体化したもの、第4延在辺部274は、第1屈曲帯板材22Aの第3部分板部BP3と第2屈曲帯板材22Aの第1部分板部BP1とを溶接一体化したもの、である。
第1屈曲帯板材22Aの第1部分板部BP1と第2屈曲帯板材22Aの第3部分板部BP3とを溶接一体化した溶接部、及び第1屈曲帯板材22Aの第3部分板部BP3と第2屈曲帯板材22Aの第1部分板部BP1とを溶接一体化した溶接部は、それぞれ既述の帯板材溶接部22aに該当する。
以下、端部枠体20の主板部24幅方向において、張り出し片部23と繋がっている側の主板部24の端を幅方向一端、主板部24の反対側の端を幅方向他端とも言う。連結用突片部21cは、端部枠体20の主板部24における屈曲部25及びその近傍に位置する部分の幅方向他端から幅方向一端とは反対へ延出されたL字板状の突片である。各連結用突片部21cは、張り出し片部23に対して垂直方向に延在形成されている。
図1、図2に例示した上下方向連結金具30は、真っ直ぐに延在する棒状部材である。
本実施形態の天吊り金物10は、上下方向連結金具30の長手方向(延在方向)両端部にそれぞれボルト41を用いて端部枠体20を固定して組み立てられる。
また、上下方向連結金具30にもボルト41を通すためのボルト孔33が、該上下方向連結金具30を貫通して形成されている。
上下方向連結金具30は、該上下方向連結金具30及び連結用突片部21cのボルト孔33、21hに通したボルト41とナット42(図2参照)とを用いて連結用突片部21cに締め付け固定して端部枠体20に取り付けることができる。
また、連結用突片部21cのボルト孔21hは、L字板状の連結用突片部21cのその角部である屈曲部25を介して両側部分にそれぞれ金属板21の板厚を貫通して形成されている。
一対の端部枠体20は、それぞれの基板部側を互いに対面させた向きで、上下方向連結金具30を介して互いに連結固定される。
図5に示すように、吊支用取付金具51は、天井スラブSに固定された吊支用固定金具52に、天井スラブS下方から取り付け可能である。吊支用固定金具52は、天井スラブS下側に露出させて、吊支用取付金具51を取り付け可能に設けられている。
但し、天井スラブSとしては、例えば、梁上に合板、石膏ボード等を積層して構築した上階床スラブ等であっても良い。
図5に例示した吊支用固定金具52は、天井スラブSに固定した金属製アンカー52aである。以下、金属製アンカーを符号52を付して説明する場合がある。
図5の金属製アンカー52は金属製筒状部材である。この金属製アンカー52は、その軸方向一端側が天井スラブSに挿入されて定着固定された定着部52aとされている。この金属製アンカー52の定着部52a以外の部分は天井スラブSから下方に突出されている。
図5に例示した吊支用取付ボルト51は、ねじ軸部51aの軸方向片端に該ねじ軸部51aよりも太く形成された頭部51bを有する有頭ボルトである。ねじ軸部51aは、その外周にねじ山を有する雄ねじ軸である。
金属製アンカー52の雌ねじ孔52bは、金属製アンカー52の天井スラブSから下方へ突出された部分の突端に開口している。吊支用取付ボルト51は、ねじ軸部51aを、金属製アンカー52突端の雌ねじ孔52b開口部から雌ねじ孔52bにねじ込んで金属製アンカー52に螺着させる(取り付ける)ことができる。
ボルト孔28は、第1端部枠体20Aにも第2端部枠体20Bと同様に形成されている。第1、第2端部枠体20A、20Bの区別のため、以下、第1端部枠体20Aのボルト孔28に符号28a、第2端部枠体20Bのボルト孔28に符号28bを付記して説明する場合がある。
なお、ボルト孔28は、吊支用取付ボルト51の頭部51bが通過できないサイズに形成されている。
吊支用取付ボルト51は、ねじ軸部51aを、端部枠体20Bのボルト孔28bに、第2端部枠体20Bの無端状張出部20aに対する基板部側から刺し通し、頭部51bを無端状張出部20aの基板部側に配置する。そして、吊支用取付ボルト51は、ねじ軸部51aの無端状張出部20aから端部枠体20B側に突出させた部分を金属製アンカー52内側の雌ねじ孔52bにねじ込んで金属製アンカー52に螺着する。
これにより、第2端部枠体20B(具体的には無端状張出部20a)にその基板部側から頭部51bを係合(直接係合、あるいは図示略のワッシャを介した係合)させた吊支用取付ボルト51と金属製アンカー52とを介して、天吊り金物10を天井スラブSに吊支状態に取り付ける。
天井スラブSに吊支した天吊り金物10は、吊支用取付ボルト51を金属製アンカー52から抜き出して吊支用取付ボルト51の金属製アンカー52に対する取り付け状態を解除することで、天井スラブSに対して移動自在となる。
但し、金属製アンカー52は、天井スラブS下方から雌ねじ孔52bへ吊支用取付ボルト51のねじ軸部51aをねじ込み可能とするため、天井スラブS下方から見て雌ねじ孔52bが開口されているアンカー52先端が露出し、吊支用取付ボルト51を挿入していないときに雌ねじ孔52b開口部全体が開口状態を維持できる必要がある。
ボルト固定用ナット53及び枠体固定用ナット54は、吊支用取付ボルト51のねじ軸部51aを第2端部枠体20Bのボルト孔28bに通した後かつ金属製アンカー52の雌ねじ孔52bにねじ込む前に、ねじ軸部51aの第2端部枠体20B背面側に突出させた部分に螺着される。
図5に例示した機器用取付金具61は、ボルト62と、該ボルト62のねじ軸部62aに螺合可能な3つのナット63、64、65とを有する構成となっている。
以下、図中符号63のナットを第1ナット、符号64のナットを第2ナット、符号65のナットを第3ナットとも言う。
ボルト62は、外周にねじ山が形成された雄ねじ軸であるねじ軸部62aの軸方向片端に、ねじ軸部62aに比べて太く形成された頭部62bを有する有頭ボルトである。
このボルト62を、以下、機器用取付ボルトとも言う。
但し、第1端部枠体20Aのボルト孔28aは、機器用取付ボルト62の頭部62bが通過できないサイズに形成されている。
固定用突片60bには、機器用取付ボルト62のねじ軸部62aを挿通可能なボルト孔60cが貫設されている。
機器用取付金具61の3つのナット63、64、65のうち、第1ナット63及び第2ナット64は、機器用取付ボルト61のねじ軸部51aを第1端部枠体20Aのボルト孔28aに通した後かつ屋内機器60の固定用突片60bのボルト孔60cに通す前に、ねじ軸部62aの第1端部枠体20A背面側(図1下側)に突出させた部分に螺着して、第1端部枠体20Aと固定用突片60bとの間に配置する。第3ナット65は、固定用突片60bから第1端部枠体20Aとは反対の側へ突出させたねじ軸部62a先端部に螺着する。
そして、屋内機器60の第1端部枠体20Aへの取り付けは、既述の第2ナット64及び第3ナット65の一方又は両方の回転操作によって、これらナット64、65間に固定用突片60bを締め付け固定する。また、第1ナット63を回転操作して、該第1ナット63とボルト頭部62bとの間に第1端部枠体20A(具体的には無端状張出部20a)を締め付け固定する。
また、機器用取付ボルト62は、第1ナット63とボルト頭部62bとの間での第1端部枠体20Aの締め付け固定によって、第1端部枠体20Aに固定される。
このため、屋内機器60は、第2、第3ナット64、65間での固定用突片60bの締め付け固定と、第1ナット63とボルト頭部62bとの間での第1端部枠体20Aの締め付け固定とが完了すれば、第1端部枠体20Aに固定される。その結果、屋内機器60は、天吊り金具10に取り付けられる。
屋内機器60は、天井スラブSに吊支した組み立て済みの天吊り金物10の第1端部枠体20Aに取り付けるか、あるいは該屋内機器10を第1端部枠体20Aに取り付けた天吊り金物10を天井スラブSに吊支することで、天吊り金物10を介して天井スラブSに吊支状態に取り付けることができる。
したがって、天吊り金物10は、図14、図15(a)、(b)に例示した従来例の天吊り金物110のように四角枠121、122に連結柱材130を溶接固定する構成に比べて、端部枠体20の構成部材及び上下方向連結金具30の薄肉化、軽量化を容易に実現できる。
帯板材溶接部22aが、端部枠体20平面視周方向において、端部枠体20における上下方向連結金具30が固定される部位(図示例では連結用突片部21c)及びボルト孔28から離隔した位置にあることは、第2端部枠体20Bにおいても同様である。第2端部枠体20Bの帯板材溶接部22aも、屋内機器60の荷重が直接的に上下方向の引っ張り力あるいは剪断力として作用するものではない。
また、ボルト孔形成片部23に作用した下方への引っ張り力は、ボルト孔形成片部23bから、該ボルト孔形成片部23bに張り出し片溶接部23aを介して一体化された張り出し片部23、及びボルト孔形成片部23bに帯板材溶接部22aを介して一体化された屈曲帯板材22にも伝達される。
第1端部枠体20Aの張り出し片溶接部23aは、図14、図15(a)、(b)に例示した従来例の天吊り金物110の溶接部W3、W4に比べて、安全率を格段に低く抑えることができ、安全率を考慮した必要強度も低くて済む。したがって、第1端部枠体20Aの張り出し片溶接部23aは、端部枠体20の構成部材の薄肉化に影響を与えない。
上下方向連結金具30を端部枠体20にボルト固定するためのボルト孔21hは、屈曲帯板材22の基板部26の屈曲部25付近に形成されている。上下方向連結金具30は、屈曲帯板材22の基板部26の屈曲部25付近にボルト固定される。屈曲帯板材22の基板部26の屈曲部25付近は、上下方向連結金具30を固定するための連結金具固定部として機能する。
屈曲帯板材22の基板部26の屈曲部25付近を連結金具固定部とした構成は、端部枠体20を構成する屈曲帯板材22の薄肉化に有効に寄与する。
この天吊り金物10は、軽量化によりその取り扱いを容易にでき、その結果、天井スラブSにその下方から吊支状態に取り付ける作業の作業性向上を容易に実現できる。
現場にて溶接無しで組み立てできることは、電気溶接のための電源確保、ガス溶接のためのガスボンベの現場搬入等が不要であり、電気、ガスといった溶接エネルギー源の確保のための労力を無くすことができる。また、溶接無しでの現場での組み立ては、溶接を伴う現場での組み立てが火気の使用可否等の現場状況に左右されるのに対し、組み立て、施工のスケジュールを計画通りに進行できるといった利点がある。
また、端部枠体20A、20Bを上下方向連結金具30にボルト固定して組み立てる天吊り金物10の構成は、解体性にも優れているため、天吊り金物10の移設、撤去も楽に行えるといった利点がある。
屈曲帯板材22を用いて構成する端部枠体20は、高い設計自由度を確保できる。
端部枠体20は、平面視正多角形枠状、あるいは正多角形以外の平面視多角形枠状に形成できる。
なお、屈曲帯板材22の形成のための金属板21は、屈曲部25の形成位置のそれぞれに対応させて切り欠き部21bを形成した構成とする。
なお、図6、図7、図11において、図1〜図3に例示した端部枠体210と同様の構成部分には共通の符号を付している。
図7の端部枠体230の2つの屈曲帯板材223a、223bは、それぞれ、その延在方向の2箇所に屈曲部25が形成されたものである。但し、端部枠体230の2つの屈曲帯板材223a、223bは、延在方向2箇所の屈曲部25間の延在部分の長さが互い異なり、また、各屈曲部25の開き角(平面視内角の角度)が互いに異なっている。
同一寸法形状の屈曲帯板材を複数用いて組み立てた端部枠体20としては、屈曲帯板材として、その延在方向中央から両側が非対称な構成のものを用いても良い。
図12に例示した端部枠体280は平面視四角枠状に構成されているが、同一寸法形状の屈曲帯板材としてその延在方向中央から両側が非対称な構成のものを複数用いて組み立てた端部枠体20は平面視多角形枠状であれば良く、の構成を採用可能である。
なお、図8、図10において、図1〜図3に例示した端部枠体210と同様の構成部分には共通の符号を付す。
図8に例示した端部枠体20(図中、符号240を付記する)は、1本の屈曲帯板材224によって平面視長方形枠状に形成されている。屈曲帯板材224は、その延在方向の互いに離隔する4箇所に屈曲部25が形成されたものを用いる。
図10に例示した端部枠体20(図中、符号260を付記する)は、1本の屈曲帯板材226によって平面視三角形枠状に形成されている。屈曲帯板材226は、その延在方向の互いに離隔する3箇所に屈曲部25が形成されたものを用いる。
なお、図9、図13において、図1〜図3に例示した端部枠体210と同様の構成部分には共通の符号を付す。
屈曲帯板材229は、その延在方向の互いに離隔する4箇所に屈曲部25が形成されたものを用いている。
互いに異なる屈曲帯板材の延在方向端部同士、あるいは1本の屈曲帯板材の延在方向端部同士を、これらの間に介挿した連結用金属部材29にそれぞれ溶接して、全体として枠状に組み立てた構成の端部枠体20は、連結用金属部材29を介して両側の屈曲部25間の離隔距離を大きく確保することに有利である。例えば、図9に例示した端部枠体250は、一対の屈曲帯板材225a、225bの一方の延在方向端部と他方の延在方向端部との間に介挿した連結用金属部材29の分、連結用金属部材29を介して両側の屈曲部25間の離隔距離を大きく確保できる。
(1)端部枠体は、平面視多角形枠状であれば良く、その平面視形状は上述の実施形態に例示した形状に限定されない。
また、屈曲帯板材を複数用いて構成される端部枠体の周方向における、屈曲帯板材の延在方向端部間の連結用金属部材の介挿の有無は、屈曲帯板材の延在方向端部間のそれぞれについて適宜選択可能である。
端部枠体の周方向における屈曲部間に位置する延在部分(延在辺部)は、屈曲部間にて真っ直ぐに延在することが好適である。但し、延在辺部としては、例えば平面視して緩やかに湾曲するアーチ形のものも採用可能である。
(2)端部枠体としては、その周方向において互いに隣り合う張り出し片部に互いに重なり合う部分が存在し、この重なり合った部分同士を溶接一体化した張り出し片溶接部を有する構成も採用可能である。張り出し片部の互いに重なり合った部分同士の溶接には例えばスポット溶接を採用できるが、重なり合った部分同士の溶接には特には限定は無い。
(3)天吊り金物としては、第1、第2の端部枠体を有する構成に限定されず、例えば、天井スラブへの取り付け時に第1端部枠体の上方に配置される第2端部枠体を省略した構成も採用可能である。この場合は、上下方向連結金物の第1端部枠体に取り付け(ボルト固定)た端部とは反対側の端部を、吊支用固定金具に固定する構成を採用する。
第2端部枠体を省略した構成の天吊り金物は、図14等に例示した従来例の天吊り金物について第2四角枠122を省略した構成との対比で、軽量化、溶接無しでの現場組み立てが可能、といった効果が得られる。
(4)端部枠体としては、連結用突片部を省略した構成のものも採用可能である。この場合は、上下方向連結金具の端部枠体に対するボルト固定のためのボルト孔21hを、主板部の屈曲部付近に形成し、主板部の屈曲部付近を連結金具固定部として機能させる。
Claims (4)
- 天井スラブ下に屋内機器を吊支するために天井スラブに取り付けられる天吊り金物であって、
前記屋内機器が取り付けられる多角形枠状の端部枠体と、この端部枠体にボルト固定される上下方向連結金具とを有し、前記端部枠体を前記上下方向連結金具を介して前記天井スラブの下方に支持可能に構成され、
前記端部枠体は、帯板状に延在しその延在方向の1又は複数箇所に該延在方向に垂直の稜線を以て屈曲する屈曲部が形成された主板部と、この主板部の幅方向片端から該主板部に垂直に張り出された張り出し片部とを有する屈曲帯板材を用い、複数の前記屈曲帯板材をその端部同士の溶接又は前記端部をそれぞれ溶接した連結用金属部材を介して互いに連結、あるいは1本の屈曲帯板材の両端を直接溶接又は連結用金属部材にそれぞれ溶接して互いに連結、して枠状に形成され、
前記屈曲帯板材及び前記連結用金属部材はそれぞれ金属製一体成形品であり、前記屈曲帯板材はその全体が前記屈曲部が形成された一枚の金属板によって形成され、
前記屈曲帯板材は、前記主板部の前記屈曲部を介して両側に位置する部分から張り出す前記張り出し片部同士を溶接して形成されていることを特徴とする天吊り金物。 - 前記端部枠体は、前記主板部の前記屈曲部及びその近傍から、前記主板部幅方向において前記張り出し片部が張り出す一端とは反対の方向へ延出された連結用突片部を有し、前記連結用突片部には、前記上下方向連結金具を前記端部枠体に固定するボルト挿通用のボルト孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の天吊り金物。
- 前記屈曲帯板材の前記主板部の前記屈曲部を介して両側に位置する部分から張り出す前記張り出し片部同士は互いに突き合わせ溶接されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の天吊り金物。
- 一対の前記端部枠体と、両側の端部にそれぞれ取り付けられた前記端部枠体を互いに連結する前記上下方向連結金具とを有し、
前記屋内機器が取り付けられる一方の前記端部枠体は、吊支金具を介して前記天井スラブに取り付けて前記天井スラブの下方に支持した他方の前記端部枠体に前記上下方向連結金具を介して連結して前記他方の端部枠体の下方に配置可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の天吊り金物。
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