以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。さらに、本願発明の技術的範囲は、当該実施形態に限定して解するべきではない。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
図1ないし図10は、本発明に係るフローセンサおよびフローセンサの製造方法の一実施形態を示すためのものである。図1は、一実施形態に係るフローセンサの一例を説明する斜視図であり、図2は、図1に示したII−II線矢視方向断面図である。本実施形態に係るフローセンサは、例えば熱式のフローセンサである。図1および図2に示すように、フローセンサ10は、一方の面(図1および図2において上面)にキャビティ(凹部)25が形成された基体20と、基体20の上面の上に配置される薄膜30と、を備える。
薄膜30は、例えば、下部層30aと、上部層30bと、を含んで構成することが可能である。下部層30aおよび上部層30bは、例えば、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ケイ素(SiO2)などの材料で構成可能である。下部層30aおよび上部層30bは、腐食性物質の流体、例えばCl2、BCl3、SOx、NOxなどを含有する気体(ガス)に対して耐食性を有する。
なお、下部層30aおよび上部層30bの材料は、同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
薄膜30において、上部層30bの一方の面(図2において下面)の上には、流体の速度(流速)を検出するためのセンサ回路(図示省略)が設けられる。センサ回路は、検出部31、基体20の一辺側に設けられた周囲温度センサ(抵抗素子)35、電極パッド(図示省略)、およびこれらを電気的に接続する配線(図示省略)などを含んで構成することが可能である。
検出部31は、薄膜30の中央部に設けられており、流体を加熱するヒータ(抵抗素子)32と、このヒータ32を挟んで両側(図1および図2において左側と右側)に配置され、ヒータ22によって生ずる流体の温度差を測定するように構成された一組の温度センサ(抵抗素子)33,34と、を含んで構成される。これにより、流体の温度差から当該流体の速度(流速)を検出可能な熱式のフローセンサを容易に実現(構成)することができる。
下部層30aは、基体20の上面の上に、全面にわたって形成されている。これにより、薄膜30が含む検出部31などを、基体20から電気的に絶縁することが可能になる。
また、下部層30aは、上部層30bの下面に設けられる、ヒータ32、温度センサ(抵抗素子)33,34、および周囲温度センサ35などを覆っている。このように、薄膜30が、検出部31および周囲温度センサ35を覆う下部層30aを含むことにより、外部に対して検出部31および周囲温度センサ35を露出する(さらす)ことなく、保護することが可能になる。
このような構成を備えるフローセンサ10は、例えば図1および図2中にブロック矢印で示すように、測定対象である流体、例えばガスの流れる方向に沿って、温度センサ33、ヒータ32、および温度センサ34が順に並ぶように配置される。この場合、温度センサ33は、ヒータ32よりも上流側(図1および図2において左側)に設けられた上流側温度センサとして機能し、温度センサ34は、ヒータ32よりも下流側(図1および図2において右側)に設けられた下流側温度センサとして機能する。このように、ヒータ32に対して上流側に温度センサ33を配置し、下流側に温度センサ34を配置することにより、ヒータ32に対して上流の流体の温度と下流の流体の温度とをそれぞれ測定することができ、ヒータ32によって生ずる流体の温度差を、容易に測定することができる。
薄膜30において、検出部31が設けられる部分は、後述するように、熱容量が小さく、基体20に対して断熱性を有する(熱的に絶縁されている)ダイアフラムを形成する。周囲温度センサ35は、フローセンサ10が設置される管路(図示省略)を流通する流体の温度を検出する。ヒータ32は、周囲温度センサ35が検出した流体の温度よりもヒータ32の温度が一定温度高くなるように、駆動される。上流側温度センサ33は、ヒータ32よりも上流側の温度を検出するのに用いられ、下流側温度センサ34は、ヒータ32よりも下流側の温度を検出するのに用いられる。
ここで、管路内のガスが静止している場合、ヒータ32で加えられた熱は、上流方向及び下流方向へ対称的に拡散する。したがって、上流側温度センサ33および下流側温度センサ34の温度は等しくなり、上流側温度センサ33および下流側温度センサ34の電気抵抗は等しくなる。これに対し、管路内のガスが上流から下流に流れている場合、ヒータ32で加えられた熱は、下流方向に運ばれる。したがって、上流側温度センサ33の温度よりも、下流側温度センサ34の温度が高くなる。
このような温度差は、上流側温度センサ33の電気抵抗と下流側温度センサ34の電気抵抗との間に差を生じさせる。下流側温度センサ34の電気抵抗と上流側温度センサ33の電気抵抗との差は、管路内のガスの速度や流量と相関関係がある。そのため、下流側温度センサ33の電気抵抗と上流側温度センサ34の電気抵抗との差を基に、管路を流れる流体の速度(流速)や流量を算出することができる。ヒータ32、上流側温度センサ33、および下流側温度センサ34の電気抵抗の情報は、後述する導電性部材21を通じて電気信号として取り出すことができる。
図2に示すように、本実施形態では、フローセンサ10の上を流体が流通し、フローセンサ10が流体の速度(流速)を検出(測定)する。よって、フローセンサ10において、薄膜30の他方の面(図2において上面)が検出面(表面)であり、基体20の他方の面(図2において下面)が検出面(表面)とは反対側の面(裏面)となる。
また、薄膜30において、下部層30aおよび上部層30bは、複数のスリット(孔)36を含んでいる。図2に示すように、各スリット(孔)36は、薄膜30の一方の面(図2において上面)から他方の面(図2において下面)まで貫通しており、基体20に形成されたキャビティ(凹部)25に通じている。よって、スリット(孔)36により、フローセンサ10の検出面(表面)側と、基体20に設けられたキャビティ(凹部)25とが連通している。これにより、薄膜30において検出部31を含む部分、すなわち、ダイアフラムを、熱的に絶縁することが可能になるとともに、フローセンサ10において、薄膜30の上面、すなわちフローセンサ10の検出面(表面)側における圧力と、薄膜30の下面、すなわち基体20のキャビティ(凹部)25側における圧力との差(差圧)を小さくすることが可能になる。したがって、流体の圧力に変動が生じても、圧力変動の影響を低減することができる。
図2に示すように、基体20は、一方の面(図2において上面)に、断面形状が一例として舟形であるキャビティ(凹部)25が形成されている。この基体20のキャビティ(凹部)25の上には、薄膜30の検出部31が配置されている。これにより、薄膜30において検出部31を含む部分は、基体20および薄膜30の他の部分と比較して、熱容量の小さいダイアフラムを形成する。
本実施形態では、基体20にキャビティ(凹部)25が形成される例を示したがこれに限定されない。基体20は、有底構造のキャビティ(凹部)25に代えて、底を有さない構造、例えば、貫通孔が形成されていてもよい。この場合、基体20の貫通孔の上に、薄膜30の検出部31が配置され、薄膜30において検出部31を含む部分は、ダイアフラムを形成する。
また、基体20は、導電性部材21を含んでいる。導電性部材21は、薄膜30に含まれるセンサ回路の電極パッドを介して、検出部31に電気的に接続している。また、導電性部材21は、基体20の上面から下面まで貫通している。これにより、フローセンサ10の検出面(表面)とは反対側の面(裏面)から、検出部31の電気信号を取り出すことが可能となる。
導電性部材21は、例えば、銅(Cu)、銅合金、タングステン(W)、タングステン合金などの導電性を有する部材が使用可能である。また、導電性部材21は、例えば、接着剤中に電気の流路を形成する導電性フィラー(充填材)をバインダーに分散した導電性接着剤や、めっきなどを、後述する基体20の貫通孔20aおよび薄膜30の開口部30cに充填して形成してもよい。
基体20の材料には、ガラス、具体的にはテンパックス(登録商標)、パイレックス(登録商標)、石英ガラスなどの硼珪酸ガラス(ホウケイ酸ガラス)などを用いる。このガラス製の基体20は、腐食性物質の流体、例えばCl2、BCl3、SOx、NOxなどを含有する気体(ガス)に対して耐食性を有する。
一般に、ガラス製の基板は、他の基板、例えば、シリコン製の基板などと比較して、電気伝導度が低いために内部に貫通電極を簡便に形成できる、更に、エッチング法に加えてドリルまたはブラスト法などを用いた微細加工も可能であるため、成形が容易であり、形状設計の自由度が高い、という特徴を有する。よって、基体20がガラス製であることにより、腐食性物質の流体に対して耐食性が高く、薄膜30の温度上昇を抑制することができるフローセンサ10を容易に実現(構成)することができる。
次に、図1および図2に示したフローセンサ10の製造方法の一例を説明する。
図3ないし図10は、一実施形態に係るフローセンサの製造方法の一例を説明する側方断面図である。まず、支持部材の上に薄膜30を形成する。すなわち、図3に示すように、支持部材Sを用意する。
支持部材Sは、薄膜30を安定して形成するための土台となる部材である。支持部材Sの材料には、例えば、シリコン(Si)、シリコン(Si)に二酸化ケイ素(SiO2)をコーティングしたもの、ガラス、などが用いられる。
本実施形態では、支持部材Sとしてシリコン製の基板を用いる。
次に、図4に示すように、支持部材Sの上面の上に、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ケイ素(SiO2)などの上部層30bを全面にわたって形成する。
次に、図5に示すように、上部層30bの上面に、スパッタリング法、MOCVD法、真空蒸着法などの方法により、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などの金属を付着させ、検出部31、周囲温度センサ35、電極パッド、配線など、センサ回路を構成する各要素を形成(パターニング)する。
次に、図6に示すように、検出部31を含むセンサ回路の各要素の上に、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ケイ素(SiO2)などの下部層30aを形成する。下部層30aおよび上部層30bの厚さ、すなわち、薄膜30の厚さは、1ないし2[μm]程度である。
次に、図7に示すように、下部層30aおよび上部層30bにおける所定位置を、マスクなどを用いてエッチングし、支持部材Sの上面に通ずる各スリット(孔)36を形成する。また、下部層30aにおいて、センサ回路の電極パッド(図示省略)に対応する位置を、マスクなどを用いてエッチングし、上部層30bの上面に通ずる開口部30cを形成する。
このようにして、検出部31を含む薄膜30が形成(製造)される。
ここで、図1および図2に示したように、薄膜30は基体20のキャビティ(凹部)25が形成された面の上に配置される。そのため、薄膜30の厚さは、検出部31を含む部分が形成するダイアフラムの厚さ、すなわち、検出部31の感度に影響を及ぼすことになり、薄膜30は、高い精度で所定の厚さに形成することが求められる。
従来のフローセンサでは、例えば、基体20にキャビティ(凹部)25を形成した後、キャビティ(凹部)25を、ワックス、焼結した金属、シリコン(Si)などの充填材で充填し、キャビティ(凹部)25を充填した基体20の上に、薄膜30を形成していた。そのため、充填材にワックスを使用する場合、検出部31を含むセンサ回路の形成の際に使用する半導体装置を汚染するおそれがあり、周辺環境への汚染が懸念される。また、充填材に焼結した金属やシリコン(Si)を使用する場合、基体20のキャビティ(凹部)25に充填し、薄膜30を形成後に除去するまでの工程が非常に煩雑であり、製造コストが高価になってしまう。
これに対し、本実施形態のフローセンサ10では、薄膜30は、支持部材Sの上で形成される。これにより、薄膜30の形成の際に支持部材Sが土台となるので、基体20のキャビティ(凹部)25を充填する充填材を必要とせずに、簡易な方法で薄膜30の厚さを調整して形成することが可能になる
一方、基体20の元となる板状の部材として、ガラス製の板状の第2ウエハBを用意し、図8に示すように、第2ウエハBの一方の面(図8において上面)の中央部に、ドリルまたはブラスト法などを用いた機械加工により凹みを形成する。これにより、図1および図2に示した基体20のキャビティ(凹部)25が形成される。また、第2ウエハBにおいて、後述の薄膜30を第2ウエハBの面の上に配置する際に、薄膜30の下部層30aに設けられた開口部30cに対応する位置に、第2ウエハBの一方の面から他方の面(図8において下面)まで貫通する貫通孔20aを形成する。
次に、図7に示す薄膜30を上下逆さまに配置し、図9に示すように、第2ウエハBの一方の面(図9において上面)の上に、薄膜30の他方の面(図9において下面)を配置する。
第2ウエハBの上面に薄膜30を固定するために、第2ウエハBの上面と薄膜30の下面とを接合するようにしてもよい。接合方法としては、例えば、拡散接合や、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを用いたイオンビームを接合する両面に照射して活性化してから接合する表面活性化接合(常温接合)など、第2ウエハBの上面に薄膜30を直接接合する方法、金や銀などのろう材を接合する両面に付けてから接合するろう付け、陽極接合、接着剤を使用した接着などが挙げられる。
なお、本出願における「接合」という用語は、物と物とをつなぎ合わせる広義の接合を意味し、接着やろう付けなどを含む概念である。よって、「接合」という用語は、接着剤を用いる方法を除外する意味ではない。
接着剤を使用する場合、接着剤は、薄膜30をガラス製の第2ウエハB(基体20)に接合可能であればよく、その成分や種類を問わない。なお、接着剤は、例えば、サイトップ(登録商標)など、腐食性物質に対して耐食性を有するものが好ましい。これにより、腐食性物質を含む流体の速度(流速)を検出(測定)する場合に、フローセンサ10を好適に用いることができる。
次に、図9に示す第2ウエハBの貫通孔20aおよび薄膜30の開口部30cに、図10に示すように、導電性部材21を埋め込んで、薄膜30に設けられたセンサ回路の電極パッドに電気的に接続させる。
導電性部材21として導電性接着剤を用いる場合、第2ウエハBの貫通孔20aおよび薄膜30の開口部30cに導電性接着剤を注入して充填し、所定温度で所定時間加熱して導電性接着剤に含まれるバインダーを硬化、収縮させる。
このようにして、一方の面(図10において上面)にキャビティ(凹部)25が形成され、導電性部材21を有するガラス製の基体20が形成(製造)される。
最後に、薄膜30を支持する支持部材Sを、例えばアルカリ溶液で溶解し、薄膜30から支持部材Sを除去する。これにより、フローセンサ10が備えない支持部材Sを、煩雑な工程を経ることなく、容易に取り除くことができる。
このようにして、図1および図2に示したフローセンサ10が製造される。
本実施形態では、フローセンサ10の一例として熱式のフローセンサを示したが、これに限定されず、他の方式のフローセンサであってもよい。
また、本実施形態では、薄膜30が下部層30aおよび上部層30bの2つの層を含む例を示したがこれに限定されず、薄膜30は、1つ、または、3つ以上の層を含んでいてもよい。
また、本実施形態では、基体20が2つの導電性部材21を含む例を示したが、これに限定されず、基体20は、1つ、または、3つ以上の導電性部材21を含んでいてもよい。
さらに、本実施形態では、薄膜30を形成した後に、第2ウエハBにキャビティ(凹部)25および貫通孔20aを形成する例を示したが、これに限定されない。第2ウエハBにおけるキャビティ(凹部)25および貫通孔20aの形成は、例えば、薄膜30を形成する前に行ってよいし、薄膜30の形成と同時に(並行して)行ってもよい。
このように、本実施形態のフローセンサ10によれば、薄膜30が支持部材Sの上で形成される。これにより、薄膜30の形成の際に支持部材Sが土台となるので、基体20のキャビティ(凹部)25を充填する充填材を必要とせずに、簡易な方法で薄膜30の厚さを調整して形成することが可能になる。したがって、検出部31の感度を制御することができ、簡易かつ安価な方法で製造することができ、フローセンサ10の感度を向上させることができる。
また、本実施形態のフローセンサ10の製造方法によれば、支持部材Sの上に、検出部31を含む薄膜30を形成する工程と、一方の面にキャビティ(凹部)25または貫通孔が形成された基体20の一方の面の上に、薄膜30を配置する工程と、薄膜30から支持部材Sを除去する工程と、を含む。これにより、薄膜30の厚さを容易に調整することが可能になるとともに、フローセンサ10が備えない支持部材Sを、煩雑な工程を経ることなく、容易に取り除くことが可能になる。したがって、高い感度のフローセンサ10を、簡易かつ安価な方法で製造することができる。
(参考例)
図11ないし図19は、本発明に係るフローセンサおよびフローセンサの製造方法の一実施形態の参考例を示すためのものである。なお、特に記載がない限り、上記の一実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、上記の一実施形態と類似する構成部分は類似の符号をもって表し、その詳細な説明を省略する。さらに、図示しない構成部分は、上記の一実施形態と同様とする。
図11は、一実施形態の参考例に係るフローセンサの一例を説明する斜視図であり、図12は、図11に示したIII−III線矢視方向断面図である。図11および図12に示すように、フローセンサ10Aは、一方の面(図11および図12において上面)にキャビティ(凹部)25が形成された基体20と、基体20の上面の上に配置される基板30Aと、を備える。
基板30Aは、一実施形態の薄膜30と同様に、検出部31を含んでいる。すなわち、基板30Aにおいて、一方の面(図11および図12において下面)の上には、流体の速度(流速)を検出するためのセンサ回路(図示省略)が設けられる。センサ回路は、検出部31、基体20の一辺側に設けられた周囲温度センサ(抵抗素子)35、電極パッド(図示省略)、およびこれらを電気的に接続する配線(図示省略)などを含んで構成することが可能である。
基板30Aは、保護膜39を含んでいる。保護膜39は、例えば、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ケイ素(SiO2)などの材料で構成可能である。保護膜39は、例えば、基板30Aの下面の全面にわたって形成されており、ヒータ32、温度センサ(抵抗素子)33,34、および周囲温度センサ35などを覆っている。このように、基板30Aが、検出部31および周囲温度センサ35を覆う保護膜39を含むことにより、外部に対して検出部31および周囲温度センサ35を露出する(さらす)ことなく、保護することが可能となる。
また、基板30Aは、孔37,38を含んでいる。図12に示すように、孔37,38は、基板30Aの上面から保護膜39の下面まで貫通しており、基体20に形成されたキャビティ(凹部)25に通じている。よって、孔37,38により、フローセンサ10Aの検出面(表面)側と、基体20に設けられたキャビティ(凹部)25とが連通している。これにより、基板30Aにおいて検出部31を含む部分、すなわち、ダイアフラムを熱的に絶縁することが可能になるとともに、フローセンサ10Aにおいて、基板30Aの上面、すなわちフローセンサ10Aの検出面(表面)側における圧力と、基板30Aの下面、すなわち基体20のキャビティ(凹部)25側における圧力との差(差圧)を小さくすることが可能になる。したがって、流体の圧力に変動が生じても、圧力変動の影響を低減することができる。
孔37,38は、検出部31を挟んで検出部31の両側(図11および図12において左側と右側)に形成されている。孔37は検出部31に対して上流側(図11および図12において左側)に配置されて上流側孔として機能し、孔38は検出部31に対して下流側(図11および図12において右側)に配置されて下流側孔として機能する。
基板30Aの材料には、基体20と同様に、ガラス、具体的にはテンパックス(登録商標)、パイレックス(登録商標)、石英ガラスなどの硼珪酸ガラス(ホウケイ酸ガラス)などを用いる。このガラス製の基板30Aは、腐食性物質の流体、例えばCl2、BCl3、SOx、NOxなどを含有する気体(ガス)に対して耐食性を有する。これにより、腐食性物質の流体に対して耐食性が高く、基板30Aの温度上昇を抑制することができるフローセンサ10Aを容易に実現(構成)することができる。
なお、基体20および基板30Aの材料は、同一種類のガラスであってもよいし、異なる種類のガラスであってもよい。
次に、図11および図12に示したフローセンサ10Aの製造方法の一例を説明する。
図13ないし図19は、一実施形態の参考例に係るフローセンサの製造方法の一例を説明する側方断面図である。まず、支持部材の上に基板30Aを形成する。すなわち、図13に示すように、基板30Aの元となる板状の部材として、ガラス製の第1ウエハAを用意し、支持部材Sの一方の面(図13において上面)の上に第1ウエハAを配置する。第1ウエハAは、例えば、500[μm]程度の厚さを有している。
支持部材Sは、第1ウエハAを固定して支持しており、基板30を安定して形成するための土台となる部材である。支持部材Sの材料には、例えば、シリコン(Si)、シリコン(Si)に二酸化ケイ素(SiO2)をコーティングしたもの、ガラス、などが用いられる。
本参考例では、支持部材Sの材料としてガラスを用いる。ガラス製の支持部材Sの一方の面(図13において上面)と、ガラス製の第1ウエハA(基板30A)の一方の面(図13において下面)とは、金(Au)Kを介して共晶接合されている。このように、基板30Aの元となる第1ウエハAとガラス製の支持部材Sとを金(Au)Kを介して共晶接合することにより、第1ウエハAおよび支持部材Sのガラスの種類を問わずに接合することが可能になる。したがって、支持部材Sは、基板30Aの元となる第1ウエハAを安定して支持することができる。
次に、図14に示すように、第1ウエハAの他方の面(図14において上面)を研磨して、図14において破線で示す部分を削り、第1ウエハAを所定の厚さに調整する。調整後の第1ウエハAの厚さは、例えば、1ないし2[μm]程度である。
次に、図15に示すように、第1ウエハAの他方の面(図15において上面)に、スパッタリング法、MOCVD法、真空蒸着法などの方法により、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などの金属を付着させ、検出部31、周囲温度センサ35、電極パッド、配線など、センサ回路を構成する各要素を形成(パターニング)する。
次に、図16に示すように、検出部31を含むセンサ回路の各要素の上に、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ケイ素(SiO2)などの保護膜39を形成する。
次に、図17に示すように、保護膜39および第1ウエハAにおける所定位置を、マスクなどを用いてエッチングし、金Kの上面に通ずる孔37および孔38を形成する。また、保護膜39において、センサ回路の電極パッド(図示省略)に対応する位置を、マスクなどを用いてエッチングし、第1ウエハAの上面に通ずる開口部39aを形成する。
このようにして、検出部31を含むガラス製の基板30Aが形成(製造)される。
ここで、図11および図12に示したように、基板30Aは基体20のキャビティ(凹部)25が形成された面の上に配置される。そのため、基板30Aの厚さは、検出部31を含む部分が形成するダイアフラムの厚さ、すなわち、検出部31の感度、さらには、ダイアフラムの強度に影響を及ぼすことになり、基板30Aは、高い精度で所定の厚さに形成することが求められる。
本参考例のフローセンサ10Aでは、基板30Aは、支持部材Sの上で形成される。これにより、基板30Aの形成の際に支持部材Sが土台となるので、基体20のキャビティ(凹部)25を充填する充填材を必要とせずに、例えば、支持部材Sの上で基板30Aの元となる第1ウエハAを研磨することで、簡易な方法で薄膜30Aの厚さを調整して形成することが可能になる。
一方、上記した一実施形態のフローセンサの製造方法において、図8を用いて説明した工程を行い、第2ウエハBの一方の面(図8において上面)の中央部にキャビティ(凹部)25を形成し、第2ウエハBにおいて、後述の基板30Aを第2ウエハBの面の上に配置する際に、基板30Aの保護膜39に設けられた開口部39aに対応する位置に、貫通孔20aを形成する。
次に、図17に示す基板30Aを上下逆さまに配置し、図18に示すように、第2ウエハBの一方の面(図18において上面)の上に、基板30Aの他方の面(図18において下面)を配置する。
第2ウエハBの上面に基板30Aを固定するために、第2ウエハBの上面と基板30の下面とを接合するようにしてもよい。接合方法としては、例えば、拡散接合や、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを用いたイオンビームを接合する両面に照射して活性化してから接合する表面活性化接合(常温接合)など、第2ウエハBの上面に基板30Aを直接接合する方法、金や銀などのろう材を接合する両面に付けてから接合するろう付け、陽極接合、接着剤を使用した接着などが挙げられる。
接着剤を使用する場合、接着剤は、基板30Aをガラス製の第2ウエハB(基体20)に接合可能であればよく、その成分や種類を問わない。なお、接着剤は、例えば、サイトップ(登録商標)など、腐食性物質に対して耐食性を有するものが好ましい。これにより、腐食性物質を含む流体の速度(流速)を検出(測定)する場合に、フローセンサ10Aを好適に用いることができる。
次に、図18に示す第2ウエハBの貫通孔20aおよび基板30Aの開口部39aに、図19に示すように、導電性部材21を埋め込んで、基板30Aに設けられたセンサ回路の電極パッドに電気的に接続させる。
導電性部材21として導電性接着剤を用いる場合、第2ウエハBの貫通孔20aおよび基板30Aの開口部39aに導電性接着剤を注入して充填し、所定温度で所定時間加熱して導電性接着剤に含まれるバインダーを硬化、収縮させる。
このようにして、一方の面(図19において上面)にキャビティ(凹部)25が形成され、導電性部材21を含むガラス製の基体20が形成(製造)される。
最後に、基板30Aと支持部材Sとを接合する金Kを、例えばヨウ素(I)などのエッチング液で溶解し、基板30Aから支持部材Sを除去する。これにより、フローセンサ10Aが備えない支持部材Sを、煩雑な工程を経ることなく、容易に取り除くことができる。
このようにして、図11および図12に示したフローセンサ10Aが製造される。
本参考例では、基板30Aを形成した後に、第2ウエハBにキャビティ(凹部)25および貫通孔20aを形成する例を示したが、これに限定されない。第2ウエハBにおけるキャビティ(凹部)25および貫通孔20aの形成は、例えば、基板30Aを形成する前に行ってよいし、基板30Aの形成と同時に(並行して)行ってもよい。
このように、本参考例のフローセンサ10Aによれば、基板30Aが支持部材Sの上で形成される。これにより、基板30Aの形成の際に支持部材Sが土台となるので、基体20のキャビティ(凹部)25を充填する充填材を必要とせずに、例えば、支持部材Sの上で基板30Aの元となる第1ウエハAを研磨することで、簡易な方法で薄膜30Aの厚さを調整して形成することが可能になる。したがって、検出部31の感度および強度の両方を制御することができ、簡易かつ安価な方法で製造することができ、フローセンサ10Aの感度を向上させることができる。
また、本参考例のフローセンサ10Aの製造方法によれば、支持部材Sの上に、検出部31を含むガラス製の基板30Aを形成する工程と、一方の面にキャビティ(凹部)25または貫通孔が形成された基体20の一方の面の上に、基板30Aを配置する工程と、基板30Aから支持部材Sを除去する工程と、を含む。これにより、基板30Aの厚さを容易に調整することが可能になるとともに、フローセンサ10Aが備えない支持部材Sを、煩雑な工程を経ることなく、容易に取り除くことが可能になる。したがって、高い感度のフローセンサ10Aを、簡易かつ安価な方法で製造することができる。
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。
また、上記発明の実施形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、または変更もしくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせまたは変更もしくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。