図1は、HGF依存性のc−Metリン酸化を阻害する本発明のナノボディを示す。標準化比(実施例1の見出し1.6に記載される)は、ナノボディ又は5D5 Fab(三角)の濃度に対してプロットしている。タグ付ナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)は、黒丸としてプロットした(黒丸)。ナノボディを5D5 Fabと共にアッセイし、グラフでは実線(配列番号7)及び点線(5D5 Fab)でプロットした。
図2は、ナノボディフォーマット04E09−9GS−Alb11(配列番号7)及び06C12−9GS−Alb11(配列番号9)のアゴニスト活性の分析、並びに5D5mAb及びHGFとの比較を示す。標準化比(実施例1の見出し1.6に記載される)は、c−Metをリン酸化する能力を分析した化合物の濃度に対してプロットしている。ポジティブコントロールのHGFはひし形で、5D5mAbは黒丸で、04E09−9GS−Alb11は上三角で、06C12−9GS−Alb11は逆三角でプロットしている。
図3は、本発明のナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)が、BxPC3細胞のHGF依存性増殖を阻害することを示す。細胞増殖を示す「標準化細胞指数」(NCI)を計算するために、各ウェルのインピーダンス値を使用した。このグラフでは、2つの試料のNCIを3日間の成長後に記録している。ナノボディは、黒丸としてプロットした。ナノボディを5D5 Fab(三角)と共にアッセイし、グラフでは点線でプロットした。
図4は、c−Met遮断ナノボディ04E09−9GS−Alb11が、A549細胞のHGF依存性遊走を阻害することを示す。アッセイリードアウト「相対蛍光単位」は、膜からHGF含有下部区画に移動するA549細胞を示す。RFUは、選択したナノボディの濃度に対してプロットしている。ナノボディは、黒丸としてプロットした。ナノボディを5D5 Fab(三角)と共にアッセイし、グラフでは実線(配列番号7)及び点線(5D5 Fab)でプロットした。
HGF依存性U87MG膠芽腫異種移植モデルにおける腫瘍成長に対するA00790035ナノボディ処置(10mg/kg;3回/週間、腹腔内(IP))の効果。テモゾロマイドは、ポジティブコントロール群で参照化合物として使用している。ビヒクル群は、ネガティブコントロール群として含めている。矢印は、異なるA00790035投与を表す。腫瘍容積は、平均腫瘍容積±SE(mm3)として表している。湾曲部の先端にある数字は、異なる時点における1群あたりの残存マウス数を示す。(A00790035又はナノボディ4E09−9GS−Alb11;配列番号7)
HGF依存性KP4膵臓異種移植モデルにおける腫瘍成長に対するA00790035ナノボディ処置(10mg/kg;3回/週間、腹腔内(IP))の効果。ゲムシタビンは、ポジティブコントロール群で参照化合物として使用している。ビヒクル群は、ネガティブコントロール群として含めている。矢印は、異なるA00790035投与を表す。腫瘍容積は、平均腫瘍容積±SE(mm3)として表している。(A00790035又はナノボディ4E09−9GS−Alb11;配列番号7)
一連の用量範囲のA00790171と共にインキュベーションした後のANBL−6 HGF自己分泌ヒト多発性骨髄腫細胞の増殖の完全阻害。(抗c−Metナノボディ、A00790171;配列番号113;cpm avg、カウント毎分平均)。
10nMのA00790171と共にインキュベーションした後のINA−6 HGF傍分泌ヒト多発性骨髄腫細胞のHGF誘導性増殖の完全かつ特異的な阻害。小分子c−Met阻害剤PHA-665752は、ポジティブコントロールとして含めた(40nM)。(抗c−Metナノボディ、A00790171;配列番号113;cpm avg、カウント毎分平均;p=有意な値;NS、非有意)。
1μMのA00790171と共にインキュベーションした後のINA−6 HGF傍分泌ヒト多発性骨髄腫細胞のHGF誘導性遊走の完全かつ特異的な阻害。小分子c−Met阻害剤PHA-665752は、ポジティブコントロールとして含めた(100nM)。遊走促進性サイトカインSDF−1αは、遊走誘導のポジティブコントロールとして含めた。(抗c−Metナノボディ、A00790171;配列番号113;NS、非有意)
KP4異種移植モデルにおけるナノボディ04E09−9GS−Alb11(A00790035、配列番号7)に対する可溶性c−Metの反応。各動物の可溶性c−METレベル、及び両処置群についての平均±平均の標準誤差を示す。04E09−9GS−Alb11ナノボディ(NB)で処置したマウス(0.507ng/ml)では、平均可溶性c−Metレベルは、ビヒクル(PBS、10ml/kg、腹腔内(i.p.))で処置したマウス(5.348ng/ml)と比較して大きく減少していた。
A00790171は、INA−6細胞において200ng/mlのHGFによる刺激後に、c−Metのチロシン残基Tyr1349(A)、Tyr1234/35(B)及びTyr1003(C)のリン酸化を減少させる。PHA-665752は、ポジティブコントロールとして含めた(200nM)。細胞をHGFで5分間処置してから溶解させ、タンパク質ゲル電気泳動のために全溶解物として加工した。
A00790171は、INA−6細胞において150ng/mlのHGFによる刺激後に、Akt(A)及びMAPK(B)のリン酸化を減少させる。細胞をHGFで7分間処置してから溶解させ、タンパク質ゲル電気泳動のために全溶解物として加工した。
A00790171(100nM)は、フィブロネクチンに対するINA−6細胞のHGF誘導性接着を遮断する。BCECF−AM(蛍光色素)と共にプレインキュベーションした後、5x104個の細胞を、サイトカインHGF(150ng/ml)若しくはSDF−1α(75ng/ml)と共に、又はこれらを加えずに1時間インキュベーションした。バーは、3回の独立した実験の代表的な1回からの4個の試料の平均(+SD)を表す。
A00790171は、BMP−2誘導性のALP活性及びhMSCの石灰化に対するHGF(100ng/ml)の阻害効果を無効化する(A)。Alizarin Red-S (ARS)染色によって、処置(5nMのA00790171)21日後のMSCの石灰化を定量(B)又は可視化(C)した。
発明の説明
定義:
a)特に指示又は定義がない限り、使用されるすべての用語は当技術分野におけるその通常の意味を有し、これは、当業者には明らかである。例えば、WO 08/020079の46頁の段落a)で言及されている標準的なハンドブックを参照のこと。
b)特に指示がない限り、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」又は「ISVD」という用語は、限定されないが、抗原結合ドメイン又はフラグメント(例えば、それぞれ、VHHドメイン又はVH若しくはVLドメイン)を含むために一般用語として使用される。抗原結合分子又は抗原結合タンパク質という用語は互換的に使用され、ナノボディという用語も含む。免疫グロブリン単一可変ドメインは、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、VL配列)でもよいし、又は重鎖可変ドメイン配列(例えば、VH配列)でもよい;より具体的には、それらは、従来の四本鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列でもよいし、又は重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列でもよい。したがって、免疫グロブリン単一可変ドメインは、ドメイン抗体若しくはドメイン抗体として使用するのに適切な免疫グロブリン配列、単一ドメイン抗体若しくは単一ドメイン抗体として使用するのに適切な免疫グロブリン配列、「dAb」若しくはdAbとして使用するのに適切な免疫グロブリン配列、又はナノボディ(限定されないが、VHH配列を含む)であり得る。本発明は、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト及びラクダの免疫グロブリン配列を含む様々な起源の免疫グロブリン配列を含む。免疫グロブリン単一可変ドメインは、完全ヒト免疫グロブリン配列、ヒト化免疫グロブリン配列、別の方法で配列最適化された免疫グロブリン配列又はキメラ免疫グロブリン配列を含む。免疫グロブリン単一可変ドメイン及び免疫グロブリン単一可変ドメインの構造は、4つのフレームワーク領域又は「FR」(これらは、当技術分野及び本明細書ではそれぞれ「フレームワーク領域1」又は「FR1」;「フレームワーク領域2」又は「FR2」;「フレームワーク領域3」又は「FR3」;及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」と称される)から構成されると考えることができる(しかしながら、これらに限定されない);これらのフレームワーク領域は、3つの相補性決定領域又は「CDR」(これらは、当技術分野においてはそれぞれ「相補性決定領域1」又は「CDR1」;「相補性決定領域2」又は「CDR2」;及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」と称される)によって分断される。ナノボディ(Nanobody)又はナノボディ(Nanobodies)という用語は、Ablynx N.V.の登録商標であるので、それぞれNanobody(登録商標)又はNanobodies(登録商標)とも称され得ることに留意する。
c)特に指示がない限り、「免疫グロブリン配列」、「配列」、「ヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という用語は、WO 08/020079の46頁の段落b)に記載されているとおりである。
d)特に指示がない限り、詳細に明記されていないすべての方法、工程、技術及び操作は、当業者には明らかであるように、それ自体が公知の方法で実施することができ、実施されたものである。例えば、先と同様に、標準的なハンドブック及び本明細書で言及される一般的な背景、並びに本明細書で引用されるさらなる参考文献;並びに、例えば、以下の総説Presta, Adv. Drug Deliv. Rev. 2006, 58 (5-6): 640-56; Levin and Weiss, Mol. Biosyst. 2006, 2(1): 49-57; Irving et al., J. Immunol. Methods, 2001, 248(1-2), 31-45; Schmitz et al., Placenta, 2000, 21 Suppl. A, S106-12, Gonzales et al., Tumour Biol., 2005, 26(1), 31-43(これらには、タンパク質工学の技術、例えば親和性成熟、並びにタンパク質(例えば、免疫グロブリン)の特異性及び所望の特性を改善するための他の技術が記載されている)を参照のこと。
e)アミノ酸残基は、標準的な3文字又は1文字のアミノ酸コードにしたがって示される。「Immunoglobulin single variable domains directed against IL-6R and polypeptides comprising the same for the treatment of diseases and disorders associated with Il-6 mediated signalling」という標題の、Ablynx N.V.の国際出願WO 08/020079の48頁の表A−2を参照のこと。
f)2つ以上のヌクレオチド配列を比較する目的のために、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間の「配列同一性」のパーセンテージを、WO 08/020079の49頁の段落e)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように計算又は決定することができ、例えば、[第2のヌクレオチド配列中の対応する位置のヌクレオチドと同一の第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの数]を[第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの総数]で割り、[100%]を乗じることによって(この場合、−第1のヌクレオチド配列と比較した−第2のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの各欠失、挿入、置換又は付加を、単一ヌクレオチド(位置)での相違と考える);又は、先と同様にWO 08/020079の49頁の段落e)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように適切なコンピュータアルゴリズム若しくは技術を使用して計算又は決定することができる。
g)2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメイン又は他のアミノ酸配列、例えば本発明のポリペプチドなどを比較する目的のために、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間の「配列同一性」(本明細書では「アミノ酸同一性」とも称れる)のパーセンテージを、WO 08/020079の49頁及び50頁の段落f)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように計算又は決定することができ、例えば、[第2のアミノ酸配列中の対応する位置のアミノ酸残基と同一の第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の数]を[第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の総数]で割り、[100%]を乗じることによって(この場合、−第1のアミノ酸配列と比較した−第2のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の各欠失、挿入、置換又は付加を、単一アミノ酸残基(位置)での相違(すなわち、本明細書で定義される「アミノ酸差異」)と考える);又は、先と同様にWO 08/020079の49頁及び50頁の段落f)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように適切なコンピュータアルゴリズム若しくは技術を使用して計算又は決定することができる。
また、2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン間の配列同一性の程度を決定する際は、WO 08/020079の50頁に記載されているように、当業者は、いわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮することができる。
本明細書に記載されるポリペプチドに適用される任意のアミノ酸置換はまた、Schulz et al., Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, 1978によって開発された、異なる種の相同タンパク質間のアミノ酸変異頻度の分析、Chou and Fasman, Biochemistry 13: 211, 1974及びAdv. Enzymol., 47: 45-149, 1978によって開発された構造形成能の分析、並びにEisenberg et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 81: 140-144, 1984; Kyte & Doolittle; J Molec. Biol. 157: 105-132, 198 1及びGoldman et al., Ann. Rev. Biophys. Chem. 15: 321-353, 1986によって開発されたタンパク質中の疎水性パターンの分析に基づくものでもよい(これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ナノボディの一次、二次及び三次構造についての情報は、本明細書の記載及び上に引用した一般的な背景技術に示されている。また、この目的のために、ラマ由来のVHHドメインの結晶構造が、例えば、Desmyter et al., Nature Structural Biology, Vol. 3, 9, 803 (1996); Spinelli et al., Natural Structural Biology (1996); 3, 752-757;及びDecanniere et al., Structure, Vol. 7, 4, 361 (1999)によって示されている。従来のVHドメインにおいてVH/VLインターフェースを形成するアミノ酸残基のいくつか及びこれら位置のラクダ化置換候補についてのさらなる情報は、上に引用した従来技術において見ることができる。
h)免疫グロブリン単一可変ドメイン及び核酸配列は、それらの全長にわたって100%の配列同一性(本明細書で定義される)を有する場合に、「全く同じものである」と言われる。
i)2つの免疫グロブリン単一可変ドメインを比較する場合、「アミノ酸差異」という用語は、第2の配列と比較した、第1の配列の位置における単一アミノ酸残基の挿入、欠失又は置換を指す;2つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、1個、2個又はそれ以上のこのようなアミノ酸差異を含有することができると理解されている。
j)ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列が、それぞれ別のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を「含む」か、又は別のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列「から本質的になる」と言われる場合、これは、WO 08/020079の51〜52頁の段落i)に示されている意味を有する。
k)「本質的に単離された形態である」という用語は、WO 08/020079の52頁及び53頁の段落j)に示されている意味を有する。
l)「ドメイン」及び「結合ドメイン」という用語は、WO 08/020079の53頁の段落k)に示されている意味を有する。
m)本明細書で互換的に使用することができる「抗原決定基」及び「エピトープ」という用語は、WO 08/020079の53頁の段落l)に示されている意味を有する。
n)WO 08/020079の53頁の段落m)にさらに記載されているように、特定の抗原決定基、エピトープ、抗原又はタンパク質(又は、それらの少なくとも一部、フラグメント又はエピトープ)に(特異的に)結合でき、これらに対する親和性を有し、及び/又はこれらに対する特異性を有するアミノ酸配列(例えば、本発明の抗体、ポリペプチド、又は一般には抗原結合タンパク質若しくはポリペプチド又はそれらのフラグメント)は、前記抗原決定基、エピトープ、抗原又はタンパク質「に対する」又は「に指向性を有する」と言われる。
o)「特異性」という用語は、WO 08/020079の53〜56頁の段落n)に示されている意味を有し、そこで言及されているように、特定の抗原結合分子又は抗原結合タンパク質(例えば、本発明のポリペプチド)分子が結合することができる異なる種類の抗原又は抗原決定基の数を指す。抗原結合タンパク質の特異性は、WO 08/020079の53〜56頁(参照により本明細書に組み込まれる)(これには、抗原結合分子(例えば、本発明のポリペプチド)と関連抗原との間の結合を測定するためのいくつか好ましい技術も記載されている)に記載されているように、親和性及び/又はアビディティに基づいて決定することができる。典型的には、抗原結合タンパク質(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチド)は、10−5〜10−12モル/リットル又はそれ未満、好ましくは10−7〜10−12モル/リットル又はそれ未満、より好ましくは10−8〜10−12モル/リットルの解離定数(KD)(すなわち、105〜1012リットル/モル又はそれ以上、好ましくは107〜1012リットル/モル又はそれ以上、より好ましくは108〜1012リットル/モルの会合定数(KA))で、それらの抗原に結合するであろう。10−4モル/リットルより大きい任意のKD値(又は、104モル/リットルより小さい任意のKA値)は、一般に、非特異的結合を示すと考えられる。好ましくは、本発明の一価免疫グロブリン単一可変ドメインは、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば500pM未満の親和性で、所望の抗原に結合するであろう。抗原又は抗原決定基に対する抗原結合タンパク質の特異的結合は、例えば、スキャッチャード分析及び/又は競合結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)及びサンドウィッチ競合アッセイ、及び当技術分野におけるそれ自体が公知のそれらの様々な変法;並びに、本明細書で言及される他の技術を含むそれ自体が公知の任意の適切な方法で決定することができる。当業者には明らかであるように、及びWO 08/020079の53〜56頁に記載されているように、解離定数は、実際の解離定数でもよいし、又は見掛けの解離定数でもよい。解離定数を決定するための方法は当業者には明らかであり、例えばWO 08/020079の53〜56頁で言及されている技術が挙げられる。
p)本発明のアミノ酸配列、化合物又はポリペプチドの半減期は、一般に、WO 08/020079の57頁の段落o)に記載されているように定義することができ、そこで言及されているように、例えば、自然機構による配列若しくは化合物の分解、及び/又は配列若しくは化合物の排出若しくは隔離により、アミノ酸配列、化合物又はポリペプチドの血清濃度がin vivoで50%減少するのに要する時間を指す。本発明のアミノ酸配列、化合物又はポリペプチドのin vivo半減期は、それ自体が公知の任意の適切な方法、例えば、薬物動態分析によって決定することができる。適切な技術は当業者には明らかであり、例えば、一般に、WO 08/020079の57頁の段落o)に記載されているようなものでもよい。また、WO 08/020079の57頁の段落o)で言及されているように、半減期は、t1/2−α、t1/2−β及び曲線下面積(AUC)などのパラメータを使用して表すことができる。例えば、以下の実験部分、並びに標準的なハンドブック、例えば、Kenneth, A et al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists及びPeters et al, Pharmacokinete analysis: A Practical Approach (1996)を参照のこと。"Pharmacokinetics", M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev. edition (1982)も参照のこと。「半減期の増加」又は「増加した半減期」という用語もWO 08/020079の57頁の段落o)で定義されているとおりであり、t1/2−α及び/若しくはAUC又はその両方の増加の有無にかかわらず、特にt1/2−βの増加を指す。
q)標的又は抗原に関して、標的又は抗原上の「相互作用部位」という用語は、標的又は抗原上のアミノ酸残基の部位、エピトープ、抗原決定基、部分、ドメイン又はストレッチであって、リガンド、レセプター又は他の結合パートナーに結合するための部位、触媒部位、開裂部位、アロステリック相互作用のための部位、標的又は抗原の多量化(例えば、ホモマー化(homomerization)又はヘテロ二量体化)に関与する部位;又は、標的又は抗原上のアミノ酸残基の任意の他の部位、エピトープ、抗原決定基、部分、ドメイン又はストレッチであって標的又は抗原の生物学的作用又は機構に関与するものを意味する。より一般には、「相互作用部位」は、標的又は抗原上のアミノ酸残基の任意の部位、エピトープ、抗原決定基、部分、ドメイン又はストレッチであって、標的又は抗原(及び/又は、標的又は抗原が関与する任意の経路、相互作用、シグナル伝達、生物学的機構又は生物学的効果)が調節(本明細書で定義される)されるように、本発明のアミノ酸配列又はポリペプチドが結合することができるものであり得る。
r)免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドは、前記アミノ酸配列又はポリペプチドが第2の標的又はポリペプチドに結合する親和性と比較して少なくとも10倍、例えば少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、最大10000倍以上良好な(上記の、並びにKD値、KA値、Koff速度及び/又はKon速度として適切に表される)親和性/アビディティで第1の抗原に結合する場合、第2の標的又は抗原と比較して、第1の標的又は抗原「に対して特異的」であると言われる。例えば、第1の抗原は、前記アミノ酸配列又はポリペプチドが第2の標的又はポリペプチドに結合するKDよりも少なくとも10倍小さい、例えば少なくとも100倍小さい、好ましくは少なくとも1000倍小さい、例えば10.000倍小さい又はさらにそれ未満のKD値で、標的又は抗原に結合してもよい。好ましくは、免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドは、第2の標的又は抗原と比較して、第1の標的又は抗原「に対して特異的」である場合、前記第1の標的又は抗原に指向性を有する(本明細書で定義される)が、前記第2の標的又は抗原に指向性を有しない。
s)「交差遮断する」、「交差遮断される」及び「交差遮断」という用語は、免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドが、それぞれ、c−Metに対する天然リガンドHGFの結合、又はEGFRに対する天然リガンドEGFの結合、又はVEGFレセプター(例えば、VEGFR−1R(Flt−1)、VEGFR−2(KDR/Flk−1)及び/又はVEGFR−3(Flt−4))に対する天然リガンドVEGFの結合を妨げる能力を意味するために本明細書で互換的に使用される。本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドが別の化合物(例えば、天然リガンド)のその標的(例えば、c−Met、VEGF又はEGFR)に対する結合を妨げることができる程度、そしてしたがって、これを本発明の交差遮断と言うことができるかは、競合結合アッセイを使用して決定することができる。特に適切な定量的交差遮断アッセイの1つは、標的に対する結合の観点から、ラベルされた(例えば、ヒスタグ付又はビオチン化)本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドと、他の結合剤との間の競合を測定するために、FACS−若しくはELISAベースアプローチ又はアルファスクリーンを使用する。実験部分では、一般に、結合分子が、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドを交差遮断するか、又はこれらを交差遮断することができるを決定するのに適切なFACS、ELISA又はアルファスクリーン置換ベースアッセイを説明する。このアッセイは、本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン又は他の結合剤のいずれかと共に使用することができると認識されよう。したがって、一般に、本発明の交差遮断アミノ酸配列又は他の結合剤は、例えば、上記交差遮断アッセイにおいて、アッセイ中に本発明の第2のアミノ酸配列又は他の結合剤の存在下で、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドの記録された置換が、0.01mM以下の量で存在する試験されるべき交差遮断剤候補(交差遮断剤は、別の従来のモノクローナル抗体、例えばIgG、古典的な一価抗体フラグメント(Fab、scFv)及び人工変異体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディ、VHH、dAb、VH、VL)であり得る)による最大理論置換(例えば、交差遮断されることを必要とするコールド(例えば、ラベルされていない)免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドによる置換)の(例えば、ELISA/アルファスクリーンベースアッセイでは)60%〜100%又は(例えば、FACSベース競合アッセイでは)80%〜100%であるように、標的に結合するものである。
t)例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドなどのアミノ酸配列は、(VHH1コンセンサス配列をクエリ配列として使用し、標準的な設定(すなわち、blosom62スコアリングマトリックス)のblastpアルゴリズムを使用して)VHH1コンセンサス配列(配列番号99:QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLDYYAIGWFRQAPGKEREGVSCISSSDGSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAA)と85%の同一性を有し、場合により(Kabatナンバリングを使用して)システインを50位に有する(すなわち、C50)場合、「VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメイン」又は「VHH1型配列」であると言われる。
u)例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドなどのアミノ酸配列は、2つの異なる抗原又は抗原決定基(例えば、2つの異なる哺乳両方種由来の血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン及びカニクイザル血清アルブミン)に対して特異的(本明細書で定義される)である場合、これら両方の異なる抗原又は抗原決定基に対して「交差反応性」と言われる。
v)WO 08/020079の58頁及び59頁の段落q)(参照により本明細書に組み込まれる)にさらに記載されているように、免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸残基は、Riechmann and Muyldermans, J. Immunol. Methods 2000 Jun 23; 240 (1-2): 185-195の論文でラクダ由来のVHHドメインに適用されているように(例えば、この刊行物の図2を参照のこと)、Kabat et al. ("Sequence of proteins of immunological interest", US Public Health Services, NIH Bethesda, MD, Publication No. 91)によって示されているVHドメインについての一般的なナンバリングにしたがってナンバリングされ、それに応じて、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR1は1位〜30位のアミノ酸残基をを含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR1は31位〜35位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR2は36位〜49位のアミノ酸を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR2は50位〜65位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR3は66位〜94位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR3は95位〜102位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインにFR4は103位〜113位のアミノ酸残基を含む。
w)図面、配列表及び実験部分/実施例は、本発明をさらに例証するために示すものに過ぎず、本明細書で特に明確な指示がない限り、本発明及び/又は添付の特許請求の範囲の範囲を何ら限定すると判断又は解釈されるべきではない。
1.本発明のポリペプチド及びその使用
1.1 抗c−Metビルディングブロック
本発明のポリペプチドは、一般に、HGF、特にヒトHGF(Swiss Protデータベース:P14210)に対するc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の結合を調節、特に阻害及び/又は防止するのに使用することができ、したがって、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)及び/若しくはHGF、特にヒトHGF(Swiss Protデータベース:P14210)によって媒介されるシグナル伝達を調節、特に阻害又は防止するのに使用することができ、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)及び/若しくはHGF、特にヒトHGFが関与する生物学的経路を調節するのに使用することができ、並びに/又はこのようなシグナル伝達又はこれらの経路に関連する生物学的機構、反応及び効果を調節するのに使用することができる。
このようなものとして、本発明のポリペプチド及び組成物は、限定されないが、ガン、例えばガン腫、神経膠腫、中皮腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、腺ガン:乳ガン、卵巣ガン、子宮頸ガン、膠芽腫、多発性骨髄腫(意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症、無症候性骨髄腫及び症候性骨髄腫を含む)、前立腺ガン、及びバーキットリンパ腫、頭頸部ガン、結腸ガン、直腸結腸ガン、非小細胞肺ガン、小細胞肺ガン、食道のガン、胃ガン、膵臓ガン、肝胆道ガン、胆嚢のガン、小腸のガン、直腸ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、前立腺ガン、陰茎ガン、尿道ガン、精巣ガン、膣ガン、子宮ガン、甲状腺ガン、副甲状腺ガン、副腎ガン、膵内分泌ガン、カルチノイドガン、骨ガン、皮膚ガン、網膜芽腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病又はAIDS関連原発性滲出液リンパ腫、神経外胚葉性腫瘍、横紋筋肉腫(例えば、さらなるガンについては、Cancer, Principles and practice (DeVita, V.T. et al. eds 1997)を参照のこと);並びに上記ガンのいずれかの任意の転移、並びに鼻ポリープなどの非ガン兆候;並びに本明細書に記載される他の障害及び疾患を含む本発明の疾患及び障害(本明細書では「本発明の疾患及び障害」とも)を診断、予防及び処置するのに使用することができる。特に、本発明のポリペプチド及び組成物は、c−Met媒介性の転移、ケモタキシス、細胞接着、経内皮遊走、細胞の増殖及び/又は生存、特に非小細胞肺ガン及び多発性骨髄腫を伴う疾患を診断、予防及び処置するのに使用することができる。本発明のポリペプチド及び組成物はまた、多発性骨髄腫を含む骨転移ガンにおける骨疾患を診断、予防及び/又は処置するのに使用することができる。本発明のポリペプチド及び組成物はまた、多発性骨髄腫を含む骨転移ガンにおける溶骨性病変を診断、予防及び/又は処置するのに使用することができる。
一般に、「本発明の疾患及び障害」は、本発明のポリペプチド又は組成物のいずれか(特に、その薬学的活性量)、及び/又はc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対して、若しくはc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)が関与する生物学的な経路若しくは機構に対して活性な公知の活性成分(特に、その薬学的活性量)を、それを必要とする(すなわち、疾患若しくは障害又はそれらの少なくとも1つの症候を有し、及び/又は疾患若しくは障害を誘発又は発症するリスクを有する)被験体に適切に投与することによって、それぞれ診断、予防及び/又は処置することができる疾患及び障害と定義することができる。
特に、本発明のポリペプチドは、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)によって媒介される過剰な及び/若しくは望ましくないHGF、特にヒトHGFシグナル伝達、又はc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)が関与する経路(例えば、HGF/c−Met軸)を特徴とする本発明の疾患及び障害を診断、予防及び処置するのに使用することができる。このような本発明の疾患及び障害の例は、先と同様に、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであろう。
したがって限定されないが、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、例えば、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)媒介性シグナル伝達を調節することができる活性成分で現在診断、予防又は処置されているすべての疾患及び障害、例えば疾患及び上に引用した従来技術で言及されているものを診断、予防及び/又は処置するのに使用することができる。本発明のポリペプチドは、このような活性成分による処置が現在開発されているか、提案されたか、又は将来提案若しくは開発されるであろうすべての疾患及び障害を診断、予防及び/又は処置するのに使用することができることも想定される。加えて、本明細書にさらに記載されるそれらの有利な特性により、本発明のポリペプチドは、これらの公知の活性成分が使用されているか、又は提案若しくは開発されるであろう疾患及び障害以外の他の疾患及び障害を診断、予防及び処置するのに使用してもよいこと;及び/又は、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載される疾患及び障害を処置するための新規の方法及びレジメンを提供し得ることが想定される。
したがって、本発明は、治療における使用のための本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドに関する。
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドの他の用途及び使用は、本明細書のさらなる開示から当業者には明らかになるであろう。
一般に、本発明の目的は、本発明の疾患及び/又は障害を診断、予防及び/又は処置するのに使用することができる、薬理学的に活性な薬剤及びこれを含む組成物を提供すること;並びに、このような薬剤及び組成物を投与及び/又は使用することを含む、このような疾患及び障害を診断、予防及び/又は処置するための方法を提供することである。
特に、本発明の目的は、当技術分野において現在使用されており、及び/又は当技術分野において公知の薬剤、組成物及び/又は方法と比較してある特定の利点を有するこのような薬理学的に活性な薬剤、組成物及び/又は方法を提供することである。これらの利点は、以下のさらなる記載から明らかになるであろう。
より具体的には、本発明の目的は、本発明の疾患及び/又は障害、並びに本明細書で言及されるさらなる疾患及び障害を診断、予防及び/又は処置するために、薬理学的に活性な薬剤及びこれを含む組成物として使用することができる治療用タンパク質を提供すること;並びに、このような治療用タンパク質及び組成物を投与及び/又は使用することを含む、このような疾患及び障害を診断、予防及び/又は処置するための方法を提供することである。
したがって、本発明の具体的な目的は、c−Met、特に温血動物由来のc−Met、より具体的には哺乳動物(例えば、マウスなど)由来のc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインを提供すること;並びに、少なくとも1つのこのような免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか又はこれらから本質的になるタンパク質及びポリペプチドを提供することである。
特に、本発明の具体的な目的は、温血動物、特に哺乳動物、より具体的にヒトにおける予防的使用、治療的使用及び/又は診断的使用に適切であるこのような免疫グロブリン単一可変ドメイン並びにこのようなタンパク質及び/又はポリペプチドを提供することである。
より具体的には、本発明の具体的な目的は、温血動物、特に哺乳動物、より具体的にヒトにおけるc−Metに関連し、及び/又はc−Metによって媒介される1つ以上の疾患、障害又は症状(例えば、本明細書で言及される疾患、障害及び症状)を予防、処置、緩和及び/又は診断するのに使用することができるこのような免疫グロブリン単一可変ドメイン並びにこのようなタンパク質及び/又はポリペプチドを提供することである。
本発明の具体的な目的はまた、温血動物、特に哺乳動物、より具体的にヒトにおけるc−Metに関連し、及び/又はc−Metによって媒介される1つ以上の疾患、障害又は症状(例えば、本明細書で言及される疾患、障害及び症状)を予防及び/又は処置するための医薬組成物又は獣医学的組成物の調製に使用することができるこのような免疫グロブリン単一可変ドメイン並びにこのようなタンパク質及び/又はポリペプチドを提供することでもある。
本発明では、一般に、これらの目的は、本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン、タンパク質、ポリペプチド及び組成物の使用によって達成される。
一般に、本発明は、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し(本明細書で定義される)、及び/又はこれらに特異的に結合する(本明細書で定義される)ことができる免疫グロブリン単一可変ドメイン;並びに、少なくとも1つのこのようなアミノ酸配列を含む化合物及び構築物、特にタンパク質及びポリペプチドを提供する。
より具体的には、本発明は、本明細書で定義される親和性(これは、本明細書にさらに記載されるように、適切に測定され、並びに/又は(実際又は見掛けの)KD値、(実際又は見掛けの)KA値、kon速度及び/若しくはkoff速度、又はあるいはIC50値として表される)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチド;並びに、少なくとも1つのこのようなアミノ酸配列を含む化合物及び構築物、特にタンパク質及びポリペプチドを提供する。
特定の態様では、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドは、以下のようなものである:
−例えば、実験部分に記載されているようにアルファスクリーンアッセイ(実施例2.3.1を参照のこと)において、1.2nM以下、より好ましくは500pM以下、さらにより好ましくは200pM以下、最も好ましくは150pM以下のIC50で、ヒトc−Met(配列番号1)に結合し(この場合、ポリペプチドは、1つのヒトc−Met結合免疫グロブリン単一可変ドメイン単位のみを含み、完全な置換は、(例えば、実施例2.3.1のリガンド置換アッセイにしたがって測定した場合に)約60%〜80%及びそれ以上、好ましくは95%以上の平均HGF置換を意味する);
及び/又は
−例えば、実験部分に記載されているアッセイ(実施例2.3)において、2.5nM以下の平均IC50値、より好ましくは2nM以下の平均IC50値、さらにより好ましくは1.5nM以下の平均IC50値で、ヒトc−Met(配列番号1)からヒトHGFを完全に置換する(この場合、ポリペプチドは、1つのヒトc−Met結合免疫グロブリン単一可変ドメイン単位のみを含み、完全な置換は、(例えば、実施例2.3.2のリガンド置換アッセイにしたがって測定した場合に)約60%〜80%及びそれ以上、好ましくは95%以上の平均HGF置換を意味する);
c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対する本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドの結合、置換、遊走又は他のin vivo及び/若しくはin vitro効力についてのいくつかの好ましい技術的な値は、本明細書のさらなる記載及び実施例から明らかになるであろう。
c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)との結合のために、本発明のアミノ酸配列は、通常、そのアミノ酸配列内に1つ以上のアミノ酸残基又は1つ以上のアミノ酸残基のストレッチを含有し(すなわち、各「ストレッチ」は、すなわちアミノ酸配列の一次構造又は三次構造で互いに隣接しているか、又は互いに密接している2つ以上のアミノ酸残基を含む)、これを介して本発明のアミノ酸配列は、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合することができ、このようにしてこのアミノ酸残基又はアミノ酸残基のストレッチは、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合するための「部位」(本明細書では「抗原結合部位」とも称される)を形成する。
本発明によって提供される免疫グロブリン単一可変ドメインは、好ましくは、本質的に単離された形態(本明細書で定義される)であるか、又は本発明のタンパク質又はポリペプチドであって、1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得るか、又はこれらから本質的になり得、場合により1つ以上のさらなる免疫グロブリン単一可変ドメイン(これらはすべて、場合により1つ以上の適切なリンカーを介して連結されていてもよい)をさらに含み得る本発明のタンパク質又はポリペプチドの一部を形成する(本明細書で定義される)。例えば限定されないが、本発明の好ましい態様は、本発明の二重特異性ポリペプチドを提供するためには、ヒトc−Metに指向性を有する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインと、ヒト血清アルブミンに指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインとがペプチドリンカー(本明細書で定義される)によってそれぞれ連結されたもの、及び/又は本発明のさらなる二重特異性若しくは三重特異性ポリペプチドを提供するためには、ヒトc−Metに指向性を有する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインと、ヒト血清アルブミンに指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインと、及び/又はヒトEGFRに指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインとがペプチドリンカー(本明細書で定義される)によってさらに連結されたものから本質的になるポリペプチドを提供する(すべて本明細書に記載される)。このようなタンパク質又はポリペプチドはまた、本質的に単離された形態(本明細書で定義される)でもよい。
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドそれ自体は、好ましくは、ジスルフィド架橋を介して任意の他のアミノ酸配列又はアミノ酸鎖に連結されていない(しかし、1つ以上の分子内ジスルフィド架橋を含有してもよいし、又は含有しなくてもよい。例えば、本発明の薬剤は、本明細書に記載されるように、CDR3とCDR1又はFR2との間にジスルフィド架橋を場合により含有し得ることが公知である)単一のアミノ酸鎖から本質的になる。しかしながら、1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを(例えば、ジスルフィド架橋を介して)互いに及び/又は他の免疫グロブリン単一可変ドメインに連結して、本発明でも有用であり得るペプチド構築物(例えば、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、ScFv構築物、「ダイアボディ」及び他の多重特異性構築物)を提供してもよいことに留意するべきである。例えば、Holliger and Hudson, Nat Biotechnol. 2005; 23:1126-36(参照により組み込まれる)による総説を参照のこと。
一般に、本発明のアミノ酸配列(又は、これを含む化合物、構築物若しくはポリペプチド)は、(例えば、本明細書に記載される治療目的及び/又は診断目的で)被験体に投与することを目的とするものである場合、好ましくは、前記被験体中に天然に存在しないアミノ酸配列であるか、又は前記被験体中に天然に存在する場合には本質的に単離された形態(本明細書で定義される)である。
薬学的用途の場合、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン(並びに、これを含む化合物、構築物及びポリペプチド)は、好ましくは、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有するのに対して、獣医学目的の場合、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、好ましくは、処置するべき種由来のc−Metに指向性を有するか、又は処置するべき種由来のc−Metと少なくとも交差反応性を有することも当業者には明らかである。
さらに、本発明のアミノ酸配列は、場合によりかつc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対して結合するための少なくとも1つの結合部位に加えて、他の抗原、タンパク質又は標的に対して結合するための1つ以上のさらなる結合部位を含有してもよい。
関与する具体的な疾患又は障害に応じて、それ自体が公知の任意の適切なin vitroアッセイ、細胞ベースのアッセイ、in vivoアッセイ及び/又は動物モデル、又はそれらの任意の組み合わせを使用して、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチド、並びにこれらを含む組成物の有効性を試験することができる。適切なアッセイ及び動物モデルは当業者には明らかであり、例えば、リガンド置換アッセイ(Burgess et al., Cancer Res 2006 66:1721-9)、二量体化アッセイ(WO2009/007427A2, Goetsch, 2009)、シグナル伝達アッセイ(Burgess et al., Mol Cancer Ther 9:400-9)、増殖/生存アッセイ(Pacchiana et al., J Biol Chem 2010 Sep M110.134031)、細胞接着アッセイ(Holt et al, Haematologica 2005 90:479-88)及び遊走アッセイ(Kong-Beltran et al, Cancer Cell 6:75-84)、内皮細胞発芽アッセイ(Wang et al, J Immunol. 2009; 183:3204-11)、骨芽細胞分化アッセイ、ALPアッセイ(Standal et al., Blood 2007 Apr 1; 109(7): 3024-30)及びin vivo異種移植モデル(Jin et al, Cancer Res. 2008 68:4360-8)、並びに以下の実験部分、及び本明細書で引用される従来技術で使用されているアッセイ及び動物モデルが挙げられる。
また、本発明によれば、第1の種の温血動物由来のc−Metに指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、1つ以上の他の種の温血動物由来のc−Metと交差反応性を示してもよいし、又は示さなくてもよい。例えば、ヒトc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、1つ以上の他の種の霊長類(例えば限定されないが、マカク属のサル(例えば、特にカニクイザル(Macaca fascicularis)及び/又はアカゲザル(Macaca mulatta))及びヒヒ(Papio ursinus)由来のc−Met、及び/又は疾患のための動物モデル(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ又はイヌ)、特にc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に関連する疾患及び障害のための動物モデルで使用されることが多い1つ以上の種の動物(例えば、本明細書で言及される種及び動物モデル)由来のc−Metと交差反応性を示してもよいし、又は示さなくてもよい。この態様では、このような交差反応性は、存在する場合には、ヒトc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドをこのような疾患モデルで試験することが可能であるので、薬物開発の観点から有利であり得ることは当業者に明らかである。
より一般には、複数種の哺乳動物由来のc−Metと交差反応性を有する本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、通常、同じアミノ酸配列又はポリペプチドを複数種にわたって使用することが可能であるので、獣医学用途に使用するのに有利である。したがって、ある種の動物由来のc−Metに指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチド(例えば、ヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチド)は、その免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドを使用することにより、処置されるべき種において所望の効果が提供される限り、別の種の動物を処置するのに使用することができることも本発明の範囲内に包含される。
本発明はまた、その最も広い意味では、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドが指向性を有するc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の具体的な抗原決定基、エピトープ、部分、ドメイン、サブユニット又はコンフォメーション(適用可能な場合)によって特に限定されず、又はこれらによって定義されない。例えば、免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、HGF/c−Met相互作用部位、c−Metの細胞インターナリゼーション部位、c−Metの排出部位及び/又はc−Met/c−Metホモ二量体化部位に指向性を有してもよいし、又はこれらに指向性を有しなくてもよく、本明細書でさらに定義されるとおりである。
さらに、c−Met及びRON、特にヒトc−Met(配列番号1)及びヒトRON((Ming-Hai Wang et al., Acta Pharmacologica Sinica (2010) 31: 1181-1188)に対する二特異性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインは、本発明の範囲内である。
本明細書にさらに記載されるように、本発明のポリペプチドは、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する2つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを(好ましくはないが)含有してもよい。一般に、このようなポリペプチドは、本発明の単一アミノ酸配列と比較して増加したアビディティで、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合するであろう。このようなポリペプチドは、例えば、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の同じ抗原決定基、エピトープ、部分、ドメイン、サブユニット又はコンフォメーション(適用可能な場合)(これらは、相互作用部位でもよいし、又は相互作用部位ではなくてもよい)に指向性を有する2つの本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでもよいし;又は、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の第1の抗原決定基、エピトープ、部分、ドメイン、サブユニット又はコンフォメーション(適用可能な場合)(これらは、相互作用部位でもよいし、又は相互作用部位ではなくてもよい)に指向性を有する少なくとも1つの「第1の」本発明のアミノ酸配列と;第1のものと異なる第2の抗原決定基、エピトープ、部分、ドメイン、サブユニット又はコンフォメーション(適用可能な場合)(これらは先と同様に、相互作用部位でもよいし、又は相互作用部位ではなくてもよい)に指向性を有する少なくとも1つの「第2の」本発明のアミノ酸配列とを含んでもよい。好ましくは、このような本発明の「二パラトープ性」ポリペプチドでは、少なくとも1つの本発明のアミノ酸配列は、相互作用部位(本明細書で定義される)に指向性を有するが、本発明は、その最も広い意味ではそれに限定されない。例えば、本発明のポリペプチドは、例えば、実験部分で特性決定した様々なエピトープに指向性を有する一価ビルディングブロックを組み合わせるような二パラトープ的な方法でフォーマットされてもよい。
また、標的が結合ペア(例えば、レセプター−リガンド結合ペア)の一部である場合、免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、c−Metに対する結合について同種の結合パートナー(例えば、HGF)と競合するようなもの、及び/又は標的に対する結合パートナーの結合を(完全に又は部分的に)中和するようなものでもよい。
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、一般に、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の天然に存在する又は合成の類似体、変異体、突然変異体、アレル、部分及びフラグメントすべてに;又は少なくとも、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドがc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合する抗原決定基又はエピトープと本質的に同じ1つ以上の抗原決定基又はエピトープを含有する、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の類似体、変異体、突然変異体、アレル、部分及びフラグメントに結合することも期待される。先と同様に、このような場合、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが(野生型)c−Metに結合する親和性及び特異性と同じか、又はこれと異なる(すなわち、これよりも高いか又は低い)親和性及び/又は特異性で、このような類似体、変異体、突然変異体、アレル、部分及びフラグメントに結合してもよい。
c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)は単量体形態及び1つ以上の多量体形態(例えば、ホモ二量体形態)で存在するので、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドが、i)単量体形態のc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)のみに結合するか、ii)多量体/二量体(ホモ二量体及び/又はヘテロ二量体)形態のc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)のみに結合するか、又はiii)単量体形態及び多量体形態の両方に結合することは本発明の範囲内である。本発明の好ましい態様では、本発明のポリペプチドは、ホモ二量体ヒトc−Met複合体の形成を防止する。本発明の別の好ましい態様では、本発明のポリペプチドは、(10nM以下、50nM以下、100nM以下、又は500nM以下などのより高い濃度においても)ホモ二量体ヒトc−Met複合体の形成を誘導しない。先と同様に、このような場合、本発明のポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが多量体形態に結合する親和性及び特異性と同じか、又はこれと異なる(すなわち、これよりも高いか又は低い)親和性及び/又は特異性で、単量体形態に結合してもよい。
また、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)が、他のタンパク質又はポリペプチド(例えば、HGFだけではなく、EGFR、HER3、プレキシン、インテグリン、CD44、RONなどの他のレセプター)と会合して、タンパク質複合体を形成することができる場合、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドが、非会合状態のc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合する(及び例えば、リガンド結合を防止し、及び/又はシグナル伝達を抑制する)か、会合状態のc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合するか、又はその両方(好ましくは、非会合状態のもの)に結合することは本発明の範囲内である。これらすべての場合において、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドが、非会合状態のc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合する親和性及び/又は特異性と同じでもよいし、又はこれと異なってもよい(すなわち、これよりも高いか又は低い)親和性及び/又は特異性で、このような会合しているタンパク質複合体に結合してもよい。
また、当業者には明らかであるように、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含有するタンパク質又はポリペプチド、例えば本発明の「二パラトープ性」ポリペプチドは、対応する単量体アミノ酸配列よりも高いアビディティで、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合してもよい。例えば限定されないが、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の異なるエピトープに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含有するタンパク質又はポリペプチドは、異なる単量体それぞれよりも高いアビディティで結合してもよく(通常結合し)、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含有するタンパク質又はポリペプチドは、より高いアビディティで、c−Metの多量体(例えば、ホモ二量体)、特にヒトc−Met(配列番号1)の多量体(例えば、ホモ二量体)に結合してもよい(通常結合するであろう)。
一般に、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、当業者には明らかであるように、生物学的及び/又は治療的観点から最も関連がある形態のc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)(単量体形態、多量体形態、会合形態、及び様々なコンフォメーション形態を含む)に少なくとも結合するであろう。
本明細書で想定される使用に適切である限り、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドの部分、フラグメント、類似体、突然変異体、変異体、アレル及び/又は誘導体を使用すること、及び/又はこのような部分、フラグメント、類似体、突然変異体、変異体、アレル及び/又は誘導体の1つ以上を含むか、又はこれらから本質的になるタンパク質又はポリペプチドを使用することも本発明の範囲内である。このような部分、フラグメント、類似体、突然変異体、変異体、アレル及び/又は誘導体は、通常、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対して結合するための機能的な抗原結合部位(の少なくとも一部)を含有し、より好ましくは、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができ、さらにより好ましくは、本明細書(例えば、実験部分)にさらに記載されるように、結合、遊走、排除及び/若しくは増殖遮断に関するEC50値、平均Ki、IC50値並びに/又は他の効力尺度(これらは、本明細書で定義されるとおりである)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合することができ、このような部分、フラグメント、類似体、突然変異体、変異体、アレル及び/又は誘導体は、より強力、より安定、より可溶性でもよいし、同じエピトープを有してもよい。このような部分、フラグメント、類似体、突然変異体、変異体、アレル、誘導体、タンパク質及び/又はポリペプチドのいくつかの非限定的な例は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。本発明のさらなるフラグメント又はポリペプチドもまた、本明細書に記載される1つ以上の(より小さい)部分又はフラグメントを適切に組み合わせることによって(すなわち、連結又は遺伝子融合することによって)提供することができる。
免疫グロブリン単一可変ドメインの一般的な説明については、以下のさらなる記載、及び本明細書で引用される従来技術を参照のこと。しかしながら、これに関して、本明細書及び従来技術には、いわゆる「VH3クラス」の免疫グロブリン単一可変ドメイン(すなわち、DP−47、DP−51又はDP−29などのVH3クラスのヒト生殖系列配列と高度の配列相同性を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン)が主に記載されており、これらは本発明の好ましい態様を形成することに留意するべきである。しかしながら、一般に、本発明は、その最も広い意味では、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する任意の種類の免疫グロブリン単一可変ドメインを包含し、例えばWO 07/118670に記載されているように、例えばいわゆる「VH4クラス」に属する免疫グロブリン単一可変ドメイン(すなわち、DP−78などのVH4クラスのヒト生殖細胞配列と高度の配列相同性を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン)も包含することに留意するべきである。
一般に、免疫グロブリン単一可変ドメイン(特に、VHH配列及び配列最適化免疫グロブリン単一可変ドメイン)は、特に、フレームワーク配列(先と同様に、本明細書にさらに記載される)の1つ以上における1つ以上の「ホールマーク残基」(本明細書に記載される)の存在を特徴とすることができる。
したがって、一般に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、(一般)構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜3を指す)を有するアミノ酸配列と定義することができる。
好ましい態様では、本発明は、(一般)構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜3を表し、
i)Kabatナンバリングの11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の少なくとも1つは、以下の表A−1で言及されているホールマーク残基から選択され;そして
ii)前記アミノ酸配列は、WO 2009/138519(WO 2009/138519の配列番号1〜125を参照のこと)に示されている免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つと少なくとも80%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%のアミノ酸同一性を有し(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基(配列中、Xで示される)は無視される);そして
iii)CDR配列は、一般に、本明細書でさらに定義されるとおりである(例えば、表(B−2)に示されている組み合わせのCDR1、CDR2及びCDR3は、CDRの定義がKabatナンバリングシステムにしたがって計算されていることに留意する))を有するアミノ酸配列である免疫グロブリン単一可変ドメインを少なくとも含むポリペプチドを提供する。
先と同様に、このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、任意の適切な形で任意の適切な供給源に由来するものでもよく、例えば、(すなわち、適切な種のラクダ、例えばラマ由来の)天然に存在するVHH配列でもよいし、又は(例えば、ヒト由来の)合成若しくは半合成のVH又はVLでもよい。このような免疫グロブリン単一可変ドメインとしては、「ヒト化」又は別の方法で「配列最適化された」VHH、「ラクダ化」免疫グロブリン配列(特に、ラクダ化重鎖可変ドメイン配列、すなわちラクダ化VH)、並びに本明細書にさらに記載されるように、(例えば、合成、ランダム又は天然に存在する免疫グロブリン配列から開始する)親和性成熟、CDR移植、ベニアリング、異なる免疫グロブリン配列由来のフラグメントの組み合わせ、オーバーラッププライマーを使用したPCRアセンブリ、及び当業者に周知の免疫グロブリン配列を人為操作するための類似技術;又は、上記のいずれかの任意の適切な組み合わせなどの技術によって変化させたヒトVH、ヒトVL、ラクダ化VHHを挙げることができる。
さらに好ましい態様では、本発明は、配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187(実験部分を参照のこと)を有するアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン、及び半減期の増加(以下を参照のこと)を提供する部分からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを提供する。
さらに好ましい態様では、本発明は、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドであって、前記アミノ酸配列のCDR配列が、配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187(実験部分を参照のこと)の免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列(表B−2を参照のこと)と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを提供する。このアミノ酸同一性の程度は、例えば、前記アミノ酸配列と、配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187(実験部分を参照のこと)の配列の1つ以上との間のアミノ酸同一性の程度を(本明細書に記載されるように)決定することによって決定することができる(この場合、フレームワーク領域を形成するアミノ酸残基は無視される)。このような本発明のポリペプチド及び/又は免疫グロブリン単一可変ドメインは、以下のものをさらに提供してもよい:
(i)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し(本明細書で定義される)、配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187(実験部分を参照のこと)の免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、例えば90%又は95%以上の配列同一性を有する少なくとも1つ(好ましくは、1つ)の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド;及び/又は
(ii)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し(本明細書で定義される)、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対する配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187(実験部分を参照のこと)の免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し(本明細書で定義される)、及び/又はc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対する結合について配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187(実験部分を参照のこと)の免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つと競合する少なくとも1つ(好ましくは、1つ)の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド(これの免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書にさらに記載されるようなものでもよい);及び/又は
(iii)このような免疫グロブリン単一可変ドメイン(これは、本明細書にさらに記載されるようなものでもよく、例えば、本明細書に記載される二重特異性(例えば、血清アルブミンにも結合する)及び/又は二パラトープ性のポリペプチドでもよい)の1つ以上(好ましくは、1つ)を含む本発明のポリペプチド、並びにこのような免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドをコードする核酸配列。このような免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドは、あらゆる天然に存在するリガンドを含まない。
本発明のポリペプチドは、少なくとも1つの本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらから本質的になる。本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインの好ましいが非限定的ないくつかの例を、配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187(実験部分を参照のこと)に示す。
1.2 抗EGFRビルディングブロック
EGFRは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内チロシンキナーゼドメインからなる(Yarden et al. 2001, Nature Rev. Mol. Cell Biol. 2:127-137)。EGFR媒介性シグナル伝達の異常活性化は、腫瘍細胞増殖、血管新生、転移、アポトーシスの阻害、及び放射線療又は化学療法に対する耐性を含む腫瘍の成長及び進行に関与する過程に関係している(Grunwald, Hidalgo 2003 J. Natl. Cancer Inst. 95:851-867; and references therein)。EGFRは、NSCLC(非小細胞肺ガン)の>40%、頭頸部ガンの>95%、膵臓ガンの>30%、腎臓ガン腫の>90%、卵巣ガンの>35%、神経膠腫の>40%及び膀胱ガンの>31%を含む多種多様な上皮由来腫瘍で発現している(Salomon et al. 1995. Crit. Review Oncol. Hematol, 19:183-232)。高レベルのEGFR発現は疾患の進行、転移の増加及び予後不良と相関しているので、これは、種々の固形腫瘍を処置するために、有効なEGFRターゲティング抗体を開発することについて強い論理的根拠を提供する。
EGFRを阻害するMAbの同定は、悪性新生物における異常なEGFRシグナル伝達を標的とするために臨床開発で使用されるアプローチである。このようなEGFRターゲティング抗体の例は、IMC-C225 (Erbitux, Imclone)、EMD72000 (Merck Darmstadt)、ABX-EGF (Abgenix)、h-R3 (theraCIM, YM Biosciences)及びHumax-EGFR (Genmab)である。これらの抗体の作用機構は、レセプターに対するリガンド結合を阻害し、続いてリン酸移転反応及び下流のシグナル伝達カスケードを阻害することに依拠する。225由来F(ab’)2フラグメントであるMab 225(Erbituxは、これのキメラ誘導体である)は、EGFRを発現する細胞と共に持続的にインキュベーションした後にのみ、EGFRインターナリゼーション及び適度なレセプター隔離を誘導することができる。しかしながら、一価225由来Fab’フラグメントは、ウサギ抗マウス抗体と共にプレインキュベーションした後に、レセプターのダウンレギュレーションを誘導するに過ぎない(Fan et al 1993 J. Biol. Chem. 268:21073-21079; Fan et al., 1994 J. Biol. Chem. 269:27595-27602)。これらの抗体は、広範なヒト腫瘍異種移植片パネルに対して抗腫瘍活性を示す(Grunwald & Hidalgo 2003 J. Natl. Cancer Inst. 95:851-867で概説されている)。
しかしながら、EGFレセプターに結合する公知の抗体系治療薬は、細胞毒性ではなく細胞増殖抑制性である。実際、これらの抗体又は現在利用可能な小分子薬物はいずれも、ガンの処置に完全に有効ではない。また、一部の患者では、EGFR阻害剤の治療用途は、重度の毒性によって制限されている。
WO 05/044858、WO 04/041867及びWO07/042289には、標準的な抗体よりも改善された特性を有する抗EGFRナノボディ及びポリペプチドが既に記載されている。
しかしながら、本発明のポリペプチドを含む多重特異性構築物は、シグナル伝達の調節において、本発明の個々のポリペプチドの組み合わせよりも改善された有効性を有する。特に、(a)本明細書に記載されるc−Metシグナル伝達を調節する1つ以上のポリペプチド、及び(b)EGFR媒介性シグナル伝達を調節する1つ以上のポリペプチドを含む多重特異性構築物は、上に示した疾患及び障害を診断、予防及び処置するのに並外れて有用である。多重特異性構築物は、ガン、特に非小細胞肺ガンを診断、予防及び処置するのに特に有用である。
WO 05/044858、WO 04/041867及び/又はWO07/042289に記載されているポリペプチド及びナノボディは、本発明の多重特異性構築物中の、EGFR媒介性シグナル伝達を調節するポリペプチドとして特に好ましい。したがって、本発明は、EGFRに対する少なくとも1つのISVD、及びc−Met及び場合によりVEGFに対する少なくとも1つのISVDを含む多重特異性(例えば、二重特異性又は三重特異性など)構築物に関する。このような多重特異性(例えば、二重特異性又は三重特異性)ポリペプチド構築物では、本明細書に記載されるc−Metに対するナノボディ及びポリペプチドは、WO 05/044858、WO 04/041867及びWO07/042289(これらはすべて、その全体が本明細書に具体的に組み込まれる)に記載されている抗EGFRナノボディ及びポリペプチドの1つ以上と組み合わせることができる。
したがって、本発明は、上に示した疾患及び障害、特に非小細胞肺ガンを診断、予防及び処置における使用のための、(a)c−Metシグナル伝達を調節する1つ以上のポリペプチド、及び(b)EGFR媒介性シグナル伝達、特にEGFR媒介性シグナル伝達を調節する1つ以上のポリペプチドを含む多重特異性構築物に関する。
1.3 抗VEGFビルディングブロック
血管系の発生は、多くの生理学的及び病理学的プロセスに基本的な必要事項である。血管新生は、固形腫瘍及び転移を含む様々な障害の病因に関係していることが現在では十分に立証されている。腫瘍成長の場合、血管新生は、過形成から新形成に移行するために、並びに腫瘍の成長及び転移に栄養を提供するために重要であると思われる。Folkman et al., Nature 339:58 (1989)。血管発生のプロセスは厳重にレギュレーションされており、前記プロセスにおいて、血管内皮成長因子(VEGF)は、血管新生の刺激及び血管透過性の誘導に関与する重要な因子として同定されている。Ferrara et al., Endocr. Rev. 18:4-25 (1997)。「VEGF」又は「VEGF−A」という用語は、Leung et al. Science, 246:1306 (1989)及びHouck et al. MoI. Endocrin., 5:1806 (1991)によって記載されているように、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子、並びに関連する121−、189−及び206アミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子と、それらの天然に存在するアレル型及びプロセシング型とを指すのに使用される。「VEGF生物学的活性」としては、任意のVEGFレセプターに対する結合、又は任意のVEGFシグナル伝達活性、例えば正常及び異常な血管新生及び脈管形成の両方のレギュレーションが挙げられる(Ferrara and Davis-Smyth (1997) Endocrine Rev. 18:4-25; Ferrara (1999) J. MoI. Med. 77:527-543)。
ほとんどの臨床経験は、ベバシズマブ(Avastin(登録商標);Genentech, San Francisco, CA)とも称されるA4.6.1を用いて得られたものである。しかしながら、化学療法と組み合わせたAvastinは、副作用(出血、動脈血栓塞栓症、高血圧、胃腸穿孔、創傷治癒の問題、タンパク尿及び鬱血性心不全)によって悩まされており、これらは、抗VEGF活性が腫瘍部位に限定されておらず、長期間にわたって循環血液中で持続するという事実に起因するものである。この結果、末梢内皮細胞の生理学的活性が病態生理学的活性に変化する。しかしながら、慢性疾患を処置するためにリコンビナントヒト化抗VEGF Fab(rhuFab VEGF、ラニビズマブ又はLucentis(商標))を使用する抗VEGF戦略は、眼内炎、硝子体出血及び網膜剥離のリスクがあるので理想的ではない。
WO 08/101985には、標準的な抗体よりも改善された特性を有する抗VEGFナノボディ及びポリペプチドが既に記載されている。
しかしながら、本発明のポリペプチドを含む多重特異性構築物は、シグナル伝達の調節において、本発明の個々のポリペプチドの組み合わせよりも改善された有効性を有する。特に、(a)本明細書に記載されるc−Metシグナル伝達を調節する1つ以上のポリペプチド、及び(b)VEGF媒介性シグナル伝達及び場合によりEGFR媒介性シグナル伝達を調節する1つ以上のポリペプチドを含む多重特異性構築物は、上に示した疾患及び障害を診断、予防及び処置するのに並外れて有用である。多重特異性構築物は、ガン、特に非小細胞肺ガンを診断、予防及び処置するのに特に有用である。
WO 08/101985に記載されているポリペプチド及びナノボディは、本発明の多重特異性構築物中の、VEGF媒介性シグナル伝達を調節するポリペプチドとして特に好ましい。したがって、本発明は、c−Metに対する少なくとも1つのISVD、及びVEGF及び場合によりEGFRに対する少なくとも1つのISVDを含む多重特異性(例えば、二重特異性、三重特異性又は四重特異性など)構築物に関する。このような多重特異性(例えば、二重特異性、三重特異性又は四重特異性)ポリペプチド構築物では、本明細書に記載されるc−Metに対するナノボディ及びポリペプチドは、WO 08/101985(これは、その全体が本明細書に具体的に組み込まれる)に記載されている抗VEGFナノボディ及びポリペプチドの1つ以上と組み合わせることができる。
したがって、本発明は、上に示した疾患及び障害、特に非小細胞肺ガンを診断、予防及び処置における使用のための、(a)c−Metシグナル伝達を調節する1つ以上のポリペプチドと、(b)VEGF媒介性シグナル伝達、特にヒトVEGF媒介性シグナル伝達を調節する1つ以上のポリペプチドと、場合により(c)EGFR媒介性シグナル伝達、特にヒトEGFR媒介性シグナル伝達を調節する1つ以上のポリペプチドとの多重特異性構築物に関する。特定の態様では、本発明は、ガンなどの病的症状を処置するための併用療法であって、c−MetアンタゴニストをVEGFアンタゴニストと組み合わせるか、又はc−MetアンタゴニストをVEGFアンタゴニスト及びEGFRアンタゴニストと組み合わせ、それにより有意な抗腫瘍活性を提供する併用療法を提供する。
1.4 結合価
一般に、免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又は免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になるタンパク質又はポリペプチドは、本明細書では「一価」タンパク質若しくはポリペプチド、又は「一価構築物」と称される。2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、少なくとも2つの本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、又は少なくとも1つの本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び少なくとも1つの他の免疫グロブリン単一可変ドメイン)を含むか、又はこれらから本質的になるタンパク質又はポリペプチドは、本明細書では「多価」タンパク質若しくはポリペプチド、又は「多価構築物」と称され、これらは、対応する本発明の一価免疫グロブリン単一可変ドメインと比較して、一定の利点を提供できる。このような多価構築物のいくつかの非限定的な例は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
例えば、本発明の「二価」ポリペプチドは、場合によりリンカー配列を介して連結された2つのISVDを含み、本発明の「三価」ポリペプチドは、場合により2つリンカー配列を介して連結された3つのISVDを含み、本発明の「四価」ポリペプチドは、場合により3つリンカー配列を介して連結された4つのISVDを含む;など;ポリペプチド又は構築物中に存在するISVDの少なくとも1つ、ポリペプチド又は構築物中に存在する最大ですべてのISVDは、ISVDである。
本発明の多価ポリペプチドでは、2つ以上のISVDが同じものでもよいし異なるものでもよく、同じ抗原又は抗原決定基(例えば、同じ部分若しくはエピトープ又は異なる部分若しくはエピトープ)に指向性を有してもよし、あるいは異なる抗原又は抗原決定基に指向性を有してもよく、又はそれらの任意の適切な組み合わせでもよい。例えば、本発明の二価ポリペプチドは、(a)2つの同一のISVD;(b)タンパク質又は抗原の第1の抗原決定基に指向性を有する第1のISVD、及び前記タンパク質又は抗原の同じ抗原決定基に指向性を有する第2のISVDであって、第1のISVDと異なる第2のISVD;(c)タンパク質又は抗原の第1の抗原決定基に指向性を有する第1のISVD、及び前記タンパク質又は抗原の別の抗原決定基に指向性を有する第2のISVD;又は、(d)第1のタンパク質又は抗原に指向性を有する第1のISVD、及び(すなわち、前記第1の抗原と異なる)第2のタンパク質又は抗原に指向性を有する第2のISVDを含んでもよい。同様に、本発明の三価ポリペプチドは、例えば限定されないが、(a)3つの同一のISVD;(b)抗原の第1の抗原決定基に指向性を有する2つの同一のISVD、及び同じ抗原の異なる抗原決定基に指向性を有する第3のISVD;(c)抗原の第1の抗原決定基に指向性を有する2つの同一のISVD、及び前記第1の抗原と異なる第2の抗原に指向性を有する第3のISVD;(d)第1の抗原の第1の抗原決定基に指向性を有する第1のISVD、前記第1の抗原の第2の抗原決定基に指向性を有する第2のISVD、及び前記第1の抗原と異なる第2の抗原に指向性を有する第3のISVD;又は、(e)第1の抗原に指向性を有する第1のISVD、前記第1の抗原と異なる第2の抗原に指向性を有する第2のISVD、及び前記第1及び第2の抗原と異なる第3の抗原に指向性を有する第3のISVDを含んでもよい。同様に、本発明の四価ポリペプチドは、例えば限定されないが、(a)4つの同一のISVD;(b)第1の抗原の第1の抗原決定基に対する3つの同一のISVD、及び同じ抗原の異なる抗原決定基に指向性を有する1つのISVD;(c)第1の抗原の第1の抗原決定基に対する3つの同一のISVD、及び前記第1の抗原と異なる第2の抗原に指向性を有する1つのISVD;(d)抗原の第1の抗原決定基に対する2つの同一のISVD、及び同じ抗原の異なる抗原決定基に指向性を有する2つのISVD;(e)抗原の第1の抗原決定基に対する2つの同一のISVD、同じ抗原の異なる抗原決定基に指向性を有する1つのISVD、及び前記第1の抗原と異なる第2の抗原に指向性を有する1つのISVD;(f)抗原の第1の抗原決定基に対する2つの同一のISVD、前記第1の抗原と異なる第2の抗原に指向性を有する2つのISVD;(g)抗原の第1の抗原決定基に対する2つの同一のISVD、前記第1の抗原と異なる第2の抗原に指向性を有する1つのISVD、及び前記第1及び第2の抗原と異なる第3の抗原に指向性を有する1つのISVD;(h)第1の抗原の第1の抗原決定基に指向性を有する第1のISVD、前記第1の抗原の第2の抗原決定基に指向性を有する第2のISVD、前記第1の抗原と異なる第2の抗原に指向性を有する第3及び第4のISVD;(i)第1の抗原の第1の抗原決定基に指向性を有する第1のISVD、前記第1の抗原の第2の抗原決定基に指向性を有する第2のISVD、前記第1の抗原と異なる第2の抗原に指向性を有する第3のISVD、及び前記第1の抗原及び前記第2の抗原と異なる第3の抗原に指向性を有する第4のISVD;又は、(j)第1の抗原に指向性を有する第1のISVD、前記第1の抗原と異なる第2の抗原に指向性を有する第2のISVD、前記第1及び第2の抗原と異なる第3の抗原に指向性を有する第3のISVD、及び前記第1、前記第2及び前記第3の抗原と異なる第4の抗原に指向性を有する第4のISVDを含んでもよい。
少なくとも2つのISVDを含有する本発明のポリペプチドであって、少なくとも1つのISVDが第1の抗原(すなわち、c−Met)に指向性を有し、少なくとも1つのISVDが第2の抗原(すなわち、c−Metと異なるもの、例えばEGFR又はVEGF)に指向性を有する本発明のポリペプチドは、本発明の「多重特異性」ポリペプチドと称され、このようなポリペプチド中に存在するISVDは、本明細書では「多価フォーマット」であるとも称される。したがって、例えば、本発明の「二重特異性」ポリペプチドは、第1の抗原(すなわち、c−Met)に指向性を有する少なくとも1つのISVD、及び第2の抗原(すなわち、c−Metと異なるもの、例えばEGFR又はVEGFなど)に指向性を有する少なくとも1つのさらなるISVDを含むポリペプチドであり、本発明の「三重特異性」ポリペプチドは、第1の抗原(すなわち、c−Met)に指向性を有する少なくとも1つのISVD、第2の抗原(すなわち、c−Metと異なるもの、例えばEGFR又はVEGFなど)に指向性を有する少なくとも1つのさらなるISVD、及び第3の抗原(すなわち、c−Met及び第2の抗原の両方と異なるもの、例えばEGFR又はVEGF)に指向性を有する少なくとも1つのさらなるISVDを含むポリペプチドであり、本発明の「四重特異性」ポリペプチドは、第1の抗原(すなわち、c−Met)に指向性を有する少なくとも1つのISVD、第2の抗原(すなわち、c−Metと異なるもの、例えばEGFRなど)に指向性を有する少なくとも1つのさらなるISVD、第3の抗原(すなわち、c−Met及び第2の抗原EGFRの両方と異なるもの、例えばVEGFなど)に指向性を有する少なくとも1つのさらなるISVD、及び第4の抗原(すなわち、抗原c−Met、EGFR及びVEGFと異なるもの、例えば血清アルブミンなど)に指向性を有する少なくとも1つのさらなるISVDを含むポリペプチドである;など。
したがって、その最も単純な形態では、本発明の二重特異性ポリペプチドは、c−Metに指向性を有する第1のISVD、及び第2の抗原(例えば、EGFR又はVEGF)に指向性を有する第2のISVDを含む本発明の二価ポリペプチドであって、前記第1及び第2のISVDが、場合によりリンカー配列(本明細書で定義される)を介して連結されていてもよい本発明の二価ポリペプチド(本明細書で定義される)であり;その最も単純な形態の本発明の三重特異性ポリペプチドは、c−Metに指向性を有する第1のISVD、第2の抗原(例えば、EGFR又はVEGFなど)に指向性を有する第2のISVD、及び第3の抗原(例えば、c−Met及び前記第2の抗原(例えば、EGFR又はVEGF)と異なるもの)に指向性を有する第3のISVDを含む本発明の三価ポリペプチドであって、前記第1、第2及び第3のISVDが、場合により1つ以上、特に1つ、より具体的には2つのリンカー配列を介して連結されていてもよい本発明の三価ポリペプチド(本明細書で定義される)であり;その最も単純な形態の本発明の四重特異性ポリペプチドは、c−Metに指向性を有する第1のISVD、第2の抗原(例えば、EGFRなど)に指向性を有する第2のISVD、第3の抗原(例えば、VEGFなど)に指向性を有する第3のISVD、及びc−Met、EGFR及びVEGFと異なる第4の抗原に指向性を有する第4のISVDを含む本発明の四価ポリペプチドであって、前記第1、第2、第3及び第4のISVDが、場合により1つ以上、特に1つ以上、特に3つのリンカー配列を介して連結されていてもよい本発明の四価ポリペプチド(本明細書で定義される)である。
しかしながら、本説明から明らかであるように、本発明の多重特異性ポリペプチドは、c−Metに対する少なくとも1つのISVD、及びc−Metと異なる1つ以上の抗原に指向性を有する任意の数のISVDをそれぞれ含んでもよいという意味において、本発明はそれらに限定されない。
具体的だが非限定的な実施態様によれば、本明細書に記載されるポリペプチドは、c−Metに対する少なくとも1つのISVD、及びEGFR及び/又はVEGFに対する少なくとも1つのISVDを含み、これらは、場合により1つ以上の適切なリンカーを使用して連結されていてもよい。このような二重特異性ポリペプチド構築物では、本明細書に記載されるc−Metに対するナノボディ及びポリペプチドは、WO 05/044858、WO 04/041867及び/若しくはWO07/042289に記載されている抗EGFRナノボディ及びポリペプチドの1つ以上、並びに/又はWO08/101985に記載されている抗VEGFナノボディ及びポリペプチドの1つ以上と組み合わせることができる。
2つの結合部分(例えば、2つのISVDなど)を含む二重特異性ポリペプチドであって、各結合部分が腫瘍関連抗原(すなわち、腫瘍細胞上で発現している抗原、「腫瘍マーカー」とも称される)に対して特異的である二重特異性ポリペプチドは、腫瘍ターゲティングにおいて非常に有利である。このような二重特異性ポリペプチドは、2つの腫瘍関連抗原を同時に標的として、腫瘍特異性の増強をもたらすことができる。ほとんどの腫瘍マーカーが真に腫瘍特異的ではなく、正常な組織又は細胞上にも(大部分はより低いレベルで)存在していることが公知である。したがって、1つの腫瘍マーカーのみに対する単一特異的な結合部分、ISVD又はポリペプチドは、その正常な組織又は細胞も認識して、非特異的な細胞の停止又は殺傷をもたらすであろう。1つ以上の腫瘍細胞上の2つ以上のマーカーに対して特異的なポリペプチドはより一層腫瘍特異的であり、より良好な特異的結合を提供するであろう。したがって、それらは、複数のレセプターの活性化及び下流のシグナル伝達経路を同時に遮断し、より良好な腫瘍増殖阻害及び腫瘍細胞の停止又は殺傷を提供することができる。
したがって、本発明はまた、少なくとも2つの結合部分(例えば、2つのISVD)を含むか、又はこれらから本質的になる二重特異性又は多重特異性ポリペプチドであって、前記少なくとも2つの結合部分の少なくとも1つがc−Metに指向性を有し、他の結合部分がEGFR又はVEGFに指向性を有する二重特異性又は多重特異性ポリペプチドに関する。特定の実施態様では、前記少なくとも2つの結合部分は、それらの個々の腫瘍関連抗原(例えば、c−Met及びEGFR又はVEGFなど)に対して中程度の又は低い親和性をもつので、腫瘍関連抗原の1つを発現する正常な組織又は細胞上では少し保持されるに過ぎない。しかしながら、それら少なくとも2つの結合部分は、二重特異性又は多重特異性ポリペプチドによって認識される両方の抗原(例えば、c−Met及びEGFR又はVEGFなど)を発現する腫瘍細胞を優先的に標的とする(高いアビディティを有する)。
したがって、本発明はまた、少なくとも3つの結合部分(例えば、3つのISVD)を含むか、又はこれらから本質的になる三重特異性又は多重特異性ポリペプチドであって、前記少なくとも3つの結合部分の少なくとも1つがc−Metに指向性を有し、1つの結合部分がEGFRに指向性を有し、1つの結合部分がVEGFに指向性を有する三重特異性又は多重特異性ポリペプチドに関する。特定の実施態様では、前記少なくとも3つの結合部分の2つは、それらの個々の腫瘍関連抗原(例えば、c−Met及びEGFRなど)に対して中程度の又は低い親和性をもつので、腫瘍関連抗原の1つを発現する正常な組織又は細胞上では少し保持されるに過ぎない。しかしながら、それら少なくとも2つの結合部分は、二重特異性、三重特異性又は多重特異性ポリペプチドによって認識される両方の抗原(例えば、c−Met及びEGFRなど)を発現する腫瘍細胞を優先的に標的とする(高いアビディティを有する)。
EGFRは、例えば、乳ガン、結腸ガン、卵巣ガン、肺ガン及び頭頸部ガンの腫瘍上で過剰発現している。
これらの腫瘍関連抗原の2つ、又はこれらの腫瘍関連抗原の1つの上の異なるエピトープを同時に標的とすることによって、より一層選択的な及び/又は増強された腫瘍ターゲティングが得られる。
したがって、好ましい実施態様では、本発明はまた、c−Metに指向性を有するナノボディ、及びEGFR及び場合によりVEGFに指向性を有するナノボディを含むか、又はこれらから本質的になる二重特異性又は三重特異性ポリペプチドを提供する。本発明のポリペプチドは、c−Metに指向性を有するナノボディ、及びEGFRに指向性を有するナノボディを含み得るか、又はこれらから本質的になり得る。本発明のポリペプチドは、c−Metに指向性を有するナノボディ、及びVEGFに指向性を有するナノボディを含み得るか、又はこれらから本質的になり得る。また、本発明のポリペプチドは、c−Metに指向性を有するナノボディと、EGFRに指向性を有するナノボディ、及びVEGFに指向性を有するナノボディを含み得るか、又はこれらから本質的になり得る。
少なくとも2つのナノボディを含むか、又はこれらから本質的になる二重特異性又多重特異性ポリペプチドであって、他のナノボディがその抗原に結合すると、前記少なくとも2つのナノボディの1つが有するその抗原に対する親和性が減少又は増加する二重特異性又多重特異性ポリペプチドも本発明の範囲内に包含される。このような結合は、「条件的な二重特異的又多重特異的結合」と称される。このような二重特異性又多重特異性ポリペプチドは、「本発明の条件的結合二重特異性又多重特異性ポリペプチド」とも称される。
前記少なくとも2つのナノボディの第1のものによる抗原結合は、前記少なくとも2つのナノボディの第2のものによる抗原結合を調節(例えば、増強、減少又は阻害)してもよい。一実施態様では、前記少なくとも2つのナノボディの第1のものによる結合は、前記少なくとも2つのナノボディの第2のものによる結合を刺激する。別の実施態様では、前記少なくとも2つのナノボディの第1のものによる結合は、前記少なくとも2つのナノボディの第2のものによる結合を少なくとも部分的に阻害する。このような実施態様では、本発明のポリペプチドは、例えば、ポリペプチドの半減期を増加させるタンパク質に結合することによって、それがその第2の標的抗原に結合した状態になり、半減期を増加させるタンパク質から解離するような時間まで、in vivoにおいて被験体生物の体内で維持されてもよい。
上記文脈における結合の調節は、ナノボディの抗原結合部位が互いに構造上接近した結果として達成される。このような構造的接近は、2つ以上の抗原結合部位を連結する構造成分の性質によって(例えば、比較的強固な構造を有するリンカーであって、抗原結合部位を極めて接近して保持するリンカーを提供することによって)達成することができる。有利には、2つ以上の抗原結合部位は、一方の部位が、ポリペプチド内の立体障害及び/又はコンフォメーション変化を伴うプロセスによって別の部位における抗原結合を調節するように、互いに物理的に極めて接近している。
1.5 血清アルブミンに結合するビルディングブロック又は半減期を増加させる他のビルディングブロック
別の態様では、本発明は、化合物又は構築物、特にタンパク質又はポリペプチド(本明細書ではそれぞれ「本発明の化合物」又は「本発明のポリペプチド」とも称される)であって、ヒトc−Metに指向性を有する1つ以上(好ましくは、1つ)の免疫グロブリン単一可変ドメイン(又はその適切なフラグメント)を含むか又はこれらから本質的になり、場合により、1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含む化合物又は構築物、特にタンパク質又はポリペプチドに関する。本明細書のさらなる開示から当業者には明らかになるように、このようなさらなる基、残基、部分、結合単位又は免疫グロブリン単一可変ドメインは、本発明のアミノ酸配列(及び/又は、これが存在する化合物又は構築物)にさらなる機能性を提供してもよいし、又は提供しなくてもよく、本発明のアミノ酸配列の特性を改変してもよいし、又は改変しなくてもよい。
上記の及び本明細書のさらなる記載から明らかであるように、このことは、本発明のポリペプチドを形成するために、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを「ビルディングブロック」として使用することができること、すなわち、1分子内に1つ以上の所望の特性又は生物学的機能を組み合わせた本明細書に記載される化合物又は構築物(例えば限定されないが、本明細書に記載される本発明の二パラトープ性、三パラトープ性、四パラトープ性、二価/三価/四価/多価及び二重特異性/三重特異性/四重特異性/多重特異性のポリペプチド)を形成するために、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを他の基、残基、部分又は結合単位と適切に組み合わせることを意味する。
1つ以上のナノボディを含有する多価及び多重特異性ポリペプチド及びそれらの調製の一般的な説明については、Conrath et al., J. Biol. Chem., Vol. 276, 10. 7346-7350, 2001; Muyldermans, Reviews in Molecular Biotechnology 74 (2001), 277-302;及び例えば、WO 98/34103、WO 99/23221、WO 04/041862、WO 2006/122786、WO 2008/020079、WO 2008/142164又はWO 2009/068627も参照のこと。
本発明の化合物又はポリペプチドは、一般に、本発明の化合物又はポリペプチドを提供するように、場合により1つ以上の適切なリンカーを介して、1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインと、1つ以上のさらなる基、残基、部分又は結合単位とを適切に連結する少なくとも1つの工程を含む方法によって調製することができる。本発明のポリペプチドは、一般に、本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供する工程、適切な方法で前記核酸を発現させる工程、及び発現させた本発明のポリペプチドを回収する工程を少なくとも含む方法によって調製することもできる。このような方法は、例えば、本明細書にさらに記載される方法及び技術に基づいて、当業者には明らかなそれ自体が公知の方法で実施することができる。
本発明のアミノ酸配列から開始して本発明の化合物又はポリペプチドを設計/選択、及び/又は調製する方法は、本明細書では前記本発明のアミノ酸配列を「フォーマットする」とも称される;本発明の化合物又はポリペプチドの一部を構成する本発明のアミノ酸は、「フォーマットされた」前記本発明の化合物若しくはポリペプチド、又は前記本発明の化合物若しくはポリペプチド「のフォーマット」であると言われる。本発明のアミノ酸配列をフォーマットすることができる方法の例及びこのようなフォーマットの例は、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであり、このようなフォーマットされた免疫グロブリン単一可変ドメインは、本発明のさらなる態様を形成する。
例えば、このようなさらなる基、残基、部分又は結合単位は、化合物又は構築物が(融合)タンパク質又は(融合)ポリペプチドであるような、1つ以上のさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインでもよい。好ましいが非限定的な態様では、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位は、免疫グロブリン配列である。さらにより好ましくは、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位は、ドメイン抗体、ドメイン抗体として使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)、「dAb」、dAbとして使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン、又はナノボディからなる群より選択される。あるいは、このような基、残基、部分又は結合単位は、例えば、化学基、残基、部分でもよく、これらはそれ自体が生物学的及び/若しくは薬理学的に活性でもよいし、又は生物学的及び/若しくは薬理学的に活性ではなくてもよい。例えば限定されないが、このような基は、本明細書にさらに記載されるように、本発明のアミノ酸配列又はポリペプチドの「誘導体」を提供するために、1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインに連結されていてもよい。
本明細書に記載される1つ以上の誘導体を含むか又はこれらから本質的になり、場合により、1つ以上のリンカーを介して場合により連結された1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含む化合物又は構築物もまた本発明の範囲内である。好ましくは、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位は、免疫グロブリン単一可変ドメインである。上記化合物又は構築物では、1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び1つ以上の基、残基、部分又は結合単位は、互いに直接連結されていてもよいし、及び/又は1つ以上の適切なリンカー若しくはスペーサーを介して連結されていてもよい。例えば、1つ以上の基、残基、部分又は結合単位が免疫グロブリン単一可変ドメインである場合、得られる化合物又は構築物が融合(タンパク質)又は融合(ポリペプチド)になるように、リンカーもまた免疫グロブリン単一可変ドメインでもよい。
本明細書のさらなる記載から明らかである本発明の具体的だが非限定的な態様では、本発明のポリペプチドは、それらが由来する免疫グロブリン単一可変ドメインと比較して増加した血清半減期(本明細書にさらに記載される)を有する。例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、増加した半減期を有する本発明のアミノ酸配列の誘導体を提供するために、半減期を延長する1つ以上の基又は部分(例えば、PEG)に(化学的に又は別の方法で)連結されていてもよい。
本発明の具体的な一態様では、本発明の化合物又は本発明のポリペプチドは、対応する本発明のアミノ酸配列と比較して増加した半減期を有してもよい。このような化合物及びポリペプチドの好ましいが非限定的な例のいくつかは、本明細書のさらなる開示に基づいて当業者には明らかになり、例えば半減期が増加するように(例えば、ペグ化によって)化学的に改変された本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチド;血清タンパク質(例えば、血清アルブミン)に結合するための少なくとも1つのさらなる結合部位を含む本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン;又は、本発明のアミノ酸配列の半減期を増加させる少なくとも1つの部分(特に、少なくとも1つのアミノ酸配列)に連結された少なくとも1つの本発明のアミノ酸配列を含む本発明のポリペプチドを含む。このような半減期を延長する部分又は免疫グロブリン単一可変ドメインを含む本発明のポリペプチドの例は、本明細書のさらなる開示に基づいて当業者には明らかになり、例えば限定されないが、1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが、1つ以上の血清タンパク質若しくはそのフラグメント(例えば、(ヒト)血清アルブミン又はその適切なフラグメント)、又は血清タンパク質に結合することができる1つ以上の結合単位(例えば、ドメイン抗体、ドメイン抗体として使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン、「dAb」、dAbとして使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン、又は血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、血清免疫グロブリン(例えば、IgG)若しくはトランスフェリンなどの血清タンパク質に結合することができるナノボディなど;さらなる記載及び本明細書で言及される参考文献を参照のこと)に適切に連結されたポリペプチド;本発明のアミノ酸配列がFc部分(例えば、ヒトFc)又はその適切な部分若しくはフラグメントに連結されたポリペプチド;又は、1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが、血清タンパク質に結合することができる1つ以上の小タンパク質又はペプチド(例えば限定されないが、WO 91/01743、WO 01/45746、WO 02/076489、WO2008/068280、WO2009/127691及びPCT/EP2011/051559に記載されているタンパク質及びペプチド)に適切に連結されたポリペプチドが挙げられる。
一般に、増加した半減期を有する本発明の化合物又はポリペプチドは、好ましくは、対応する本発明のアミノ酸配列それ自体の半減期よりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍)、例えば少なくとも10倍、又は20倍超長い半減期を有する。例えば、増加した半減期を有する本発明の化合物又はポリペプチドは、対応する本発明のアミノ酸配列それ自体と比較して1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超(例えば、12時間超)、又はさらに24時間、48時間若しくは72時間超増加した(例えば、ヒトにおける)半減期を有してもよい。
本発明の好ましいが非限定的な態様では、このような本発明の化合物又はポリペプチドは、対応する本発明のアミノ酸配列それ自体と比較して1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超(例えば、12時間超)、又はさらに24時間、48時間若しくは72時間超増加した(例えば、ヒトにおける)血清半減期を有する。
本発明の好ましいが非限定的な別の態様では、このような本発明の化合物又はポリペプチドは、少なくとも約12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、さらにより好ましくは少なくとも72時間以上のヒトにおける血清半減期を示す。例えば、本発明の化合物又はポリペプチドは、少なくとも5日(例えば、約5日〜10日)、好ましくは少なくとも9日(例えば、約9日〜14日)、より好ましくは少なくとも約10日(例えば、約10日〜15日)、若しくは少なくとも約11日(例えば、約11日〜16日)、より好ましくは少なくとも約12日(例えば、約12日〜18日又はそれ以上)、又は14日超(例えば、約14日〜19日)の半減期を有してもよい。
別の態様では、本発明は、Alb11(配列番号5)又はAlb23[配列番号101])と、少なくとも1つの他のISVD(例えば、ナノボディ)(例えば、同じものでもよいし又は異なるものでもよい1つ又は2つの他のISVD、例えばナノボディ)であって、好ましくは所望の標的(これは、好ましくは、治療標的である)に指向性を有する少なくとも1つの他のISVD(例えば、ナノボディ)、並びに/又は治療目的、予防目的及び/若しくは診断目的に有用若しくは適切な別のISVD(例えば、ナノボディ)を含むナノボディ構築物などの多重特異性(特に、二重特異性)ISVDに関する。先と同様に、Alb11(配列番号5)又はAlb23[配列番号101]及び他のナノボディは、直接的に、又は場合により1つ以上の適切なリンカー若しくはスペーサーを介して互いに適切に連結されていてもよく、具体的だが非限定的な一態様によれば、他のナノボディの少なくとも1つ(最大ですべて)は、VHH−1クラスのものでもよい。
本発明のいくつかの具体的な多重特異性及び/又は多価ポリペプチドのいくつかの他の例は、本明細書で言及されるAblynx N.V.による出願に見ることができる。特に、半減期を増加させるための血清タンパク質に対する少なくとも1つのナノボディを含む多価及び多重特異性構築物、これをコードする核酸、これを含む組成物、前述のものの調製、並びに前述のものの使用の一般的な説明については、上述の国際出願WO 04/041865及びWO 08/122787(本明細書に記載されるAlb−23[配列番号101]及びAlb−23変異体は、一般に、これらに記載されている半減期延長ナノボディ(例えば、Alb−8)と同様に使用することができる)、並びにWO 04/041862、WO 2006/122786、WO 2008/020079、WO 2008/142164又はWO 2009/068627に示されているこのような構築物の一般的な説明及び具体例を参照のこと。
非限定的な一実施態様では、このようなポリペプチド又はタンパク質構築物中に存在する1つ以上の他のナノボディは、c−Metに指向性を有してもよく、特に、c−Metに指向性を有するI型ナノボディでもよい。
c−Metに対する特に好ましいI型ナノボディであって、このような多価及び/又は多重特異性ポリペプチド中で(Alb−23[配列番号101]又はAlb−23変異体の隣に)存在してもよいc−Metに対する特に好ましいI型ナノボディの1つは、04E09(配列番号26)又はその変異体、例えば04E09様ISVDである。
このような04E09変異体は、一般に、04E09と少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%以上、例えば95%以上の配列同一性を有し、好ましくは、(i)(適切なアッセイ、例えば、実施例7で使用したHGFに代えて04E09を使用する以外は実施例7に記載のアルファスクリーンアッセイで)c−Metに対する結合について04E09と競合し;及び/又は(ii)04E09と同じc−Met上のエピトープに結合し;及び/又は(iii)c−Metに対する04E09の結合を交差遮断(WO 2009/068627で定義されている)するようなものである。このような04E09変異体は、例えば、ヒト化及び/又は配列最適化04E09変異体(本明細書にさらに記載される)でもよい。このようなタンパク質又はポリペプチド中に存在し得る04E09変異体についての好ましいが非限定的ないくつかの例は、以下:04E09(L49S)(配列番号23);04E09(C50S/C100bG)(配列番号24);04E09(C22A/C92S)(配列番号25);A00790067=04E09(Q108L)(配列番号114);A00790068=04E09(A74S、K83R、Q108L)(配列番号115);A00790069=04E09(A74S、K83R、G88A、Q108L)(配列番号116)及びA00790105=04E09(E1D、A74S、K83R、G88A、Q108L)(配列番号102)であり、これらの中では、より後のものが特に好ましい。
したがって、具体的だが非限定的な一態様では、本発明は、c−Metに対する1つ又は2つのナノボディに(直接的に、又は1つ以上の適切なリンカーを介して)適切に連結されたAlb−23[配列番号101](好ましい)又はAlb−23変異体(本明細書に記載される)を含むか、又はこれらから本質的になるポリペプチド又はタンパク質構築物に関する。述べたように、具体的だが非限定的な態様によれば、前記c−Metに対する1つ又は2つのナノボディは、2つのジスルフィド架橋を含む(すなわち、「クラスI」のものである)。
特に、本発明は、c−Metに対する1つ又は2つ(好ましくは、1つのみ)のナノボディであって、04E09(配列番号26)又は04E09変異体(本明細書に記載される)、好ましくはヒト化又は配列最適化04E09変異体、より好ましくはA00790105(配列番号102)であるナノボディに(直接的に、又は1つ以上の適切なリンカーを介して)適切に連結されたAlb−23[配列番号101](好ましい)又はAlb−23変異体(本明細書に記載される)を含むか、又はこれらから本質的になるポリペプチド又はタンパク質構築物に関する。
このようなタンパク質及びポリペプチドの具体的だが非限定的ないくつかの例は、構築物Alb23−9GS−4E09(配列番号103)、4E09−9GS−Alb23(配列番号104)、Alb23−9GS−A00790105(配列番号105)、A00790105−9GS−Alb23(配列番号106)、Alb23−35GS−04E09(配列番号107)、4E09−35GS−Alb23(配列番号108)、Alb23−35GS−A00790105(配列番号109)、A00790105−35GS−Alb23(配列番号110)、A00790105−35GS−A00790105−35GS−Alb23(配列番号111)、及びA00790105−9GS−Alb23−A(配列番号188)である。これらの中で、構築物A00790105−9GS−Alb23(配列番号106)及びA00790105−9GS−Alb23−A(配列番号188)が特に好ましいので、本発明の一態様はまた、配列番号106及び188のポリペプチドと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%以上の配列同一性を有するポリペプチドに関する。
c−Metに対するさらに特に好ましいI型ナノボディであって、多価及び/又は多重特異性ポリペプチド中で(Alb−11[配列番号5]又はAlb−11変異体の隣に)存在してもよいc−Metに対するさらに特に好ましいI型ナノボディは、33H10(配列番号187)又はその変異体、例えば33H10様ISVDであり、これは、全く予想外のことに、異なる宿主で都合良く産生された。このような33H10変異体は、一般に、33H10と少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%以上、例えば95%以上の配列同一性を有し、好ましくは、(i)(適切なアッセイ、例えば、実施例1.5で使用したHGFに代えて33H10を使用する以外は実施例21又は22に記載のアルファスクリーンアッセイで)c−Metに対する結合について33H10と競合し;及び/又は(ii)33H10と同じc−Met上のエピトープに結合し;及び/又は(iii)c−Metに対する33H10の結合を交差遮断(WO 2009/068627で定義されている)するようなものである。このような33H10変異体は、例えば、ヒト化及び/又は配列最適化33H10変異体(本明細書にさらに記載される)でもよい。このようなタンパク質又はポリペプチド中に存在し得る33H10変異体についての好ましいが非限定的ないくつかの例は、以下:クローンA007900184(野生型(wt);配列番号151)、A007900738〜A007900753、A007901245〜A007901253及びA007901255〜A007901263(それぞれ配列番号117〜150)であり、これらの中では、A007901256(配列番号143)、A007901259(配列番号146)及びA007901260(配列番号147)が特に好ましい。
また特に、本発明は、c−Metに対する1つ又は2つ(好ましくは、1つのみ)のナノボディであって、33H10(配列番号187)又は33H10変異体(本明細書に記載される)、好ましくはヒト化又は配列最適化33H10変異体、より好ましくはA007901256(配列番号143)、A007901259(配列番号146)及びA007901260(配列番号147)であるナノボディに(直接的に、又は1つ以上の適切なリンカーを介して)適切に連結されたAlb−11[配列番号5](好ましい)又はAlb−11変異体(本明細書に記載される)を含むか、又はこれらから本質的になるポリペプチド又はタンパク質構築物に関する。
このようなタンパク質及びポリペプチドの具体的だが非限定的ないくつかの例は、構築物A007901255(配列番号142);A007901256(配列番号143);A007901257(配列番号144);A007901258(配列番号145);A007901259(配列番号146);A007901260(配列番号147);A007901261(配列番号148);A007901262(配列番号149);A007901263(配列番号150)である。これらの中で、構築物A007901256(配列番号143)、A007901259(配列番号146)及びA007901260(配列番号147)が特に好ましいので、本発明の一態様はまた、配列番号143、146及び147のポリペプチドと少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%以上の配列同一性を有するポリペプチドに関する。
本発明の特に好ましいが非限定的な態様では、本発明は、i)1つの本明細書に記載されるc−Met結合免疫グロブリン単一可変ドメイン;及びii)1つ以上(好ましくは、1つ)の本明細書に記載される血清アルブミン結合免疫グロブリン単一可変ドメインを含む本発明のポリペプチドを提供する。
さらに好ましい態様では、本発明は、i)1つの本明細書に記載されるc−Met結合免疫グロブリン単一可変ドメイン;及びii)1つ以上(好ましくは、1つ)の配列番号5又は配列番号101の血清アルブミン結合免疫グロブリン単一可変ドメイン(表A−2及びB−1を参照のこと)を含む本発明のポリペプチドを提供する。
さらに好ましい態様では、本発明は、i)1つの本明細書に記載されるc−Met結合免疫グロブリン単一可変ドメイン;及びii)配列番号5又は配列番号101のCDR(Kabatナンバリングにしたがって定義される)を有する1つ以上(好ましくは、1つ)の血清アルブミン結合免疫グロブリン単一可変ドメイン(表A−2及びB−1を参照のこと)を含む本発明のポリペプチドを提供する。
したがって、例えば、特に、実験部分及びWO2008/068280のさらなる記載(ここでは、配列番号5又は配列番号101についてさらに詳述されており、例えば、前記配列を含有する免疫グロブリン単一可変ドメイン構築物のアカゲザルにおける半減期が開示されている)をさらに参照のこと(したがって、参照により組み込まれる)。
これらは、2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば、c−Metに指向性を有する1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン及び血清アルブミンに対する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインから構成され得る。このような多重特異性構築物は、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであろう;このような多重特異性免疫グロブリン単一可変ドメインの好ましいが非限定的ないくつかの例は、配列番号7〜12、103〜111、113、188及び142〜150、好ましくは配列番号7、106、113、188、143、146及び147の構築物である(実験部分を参照のこと)。
具体的だが非限定的な別の態様によれば、本発明のポリペプチドは、少なくとも1つの本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、及び少なくとも1つの他の結合単位(すなわち、別のエピトープ、抗原、標的、タンパク質又はポリペプチドに指向性を有する)(これもまた、好ましくは免疫グロブリン単一可変ドメインである)を含むか、又はこれらから本質的になる。このようなタンパク質又はポリペプチドは、本明細書では「多重特異性」タンパク質若しくはポリペプチド又は「多重特異性構築物」とも称され、これらは、2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば、c−Metに指向性を有する1つの本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び血清アルブミンに対する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得るか、又はこれらから本質的になり得る。このような多重特異性構築物は、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであろう;このような多重特異性免疫グロブリン単一可変ドメインの好ましいが非限定的ないくつかの例は、配列番号7〜12、103〜111、113、188及び142〜150、好ましくは配列番号7、106、113、188、143、146及び147の構築物である(実験部分を参照のこと)。
具体的だが非限定的なさらに別の態様によれば、本発明のポリペプチドは、少なくとも1つの本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、及び場合により1つ以上のさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインと、少なくとも1つの所望の特性を本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は得られる融合タンパク質に付与する少なくとも1つの他のアミノ酸配列(例えば、タンパク質又はポリペプチド)を含むか又はこれらから本質的になる。先と同様に、このような融合タンパク質は、対応する本発明の一価免疫グロブリン単一可変ドメインと比較してある特定の利点を提供してもよく、例えば、増加した半減期を提供してもよい。
上記構築物では、1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は他の免疫グロブリン単一可変ドメインは、互いに直接連結されていてもよいし、及び/又は1つ以上のリンカー配列を介して互いに適切に連結されていてもよい。このようなリンカーの適切だが非限定的ないくつかの例は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
一実施態様では、免疫グロブリン単一可変ドメインを連結するリンカー配列は、配列番号13〜22、好ましくは配列番号15又は22から選択されるか、又は当技術分野において公知のものである。
別の好ましい実施態様では、本発明は、少なくとも3つのISVDを含むか、又はこれらから本質的になる三重特異性又は多重特異性ポリペプチドであって、前記少なくとも3つのISVDの2つが、腫瘍関連抗原(例えば、c−Met及びEGFR又はVEGFなど)に指向性を有し、他の結合部分が、別の標的又は抗原に指向性を有する三重特異性又は多重特異性ポリペプチドに関する。好ましくは、この標的又は抗原は、ポリペプチドのin vivo半減期(本明細書にさらに記載される)を増加させることができる分子、又はエフェクター機能を有する分子(例えば、CD3、Fcレセプター又は補体タンパク質)である。
一実施態様では、本発明は、EGFRに対するナノボディ又はVEGFに対するナノボディ、及びc−Metに対するナノボディと、ヒト血清アルブミンに対するナノボディを含むか、又はこれらから本質的になる三重特異性ポリペプチドを提供する。
別の好ましい実施態様では、本発明は、少なくとも4つのISVDを含むか、又はこれらから本質的になる四重特異性又は多重特異性ポリペプチドであって、前記少なくとも4つのISVDの3つが、腫瘍関連抗原(例えば、c−Met、EGFR及びVEGFなど)に指向性を有し、他の結合部分が、別の標的又は抗原に指向性を有する四重特異性又は多重特異性ポリペプチドに関する。好ましくは、この標的又は抗原は、ポリペプチドのin vivo半減期(本明細書にさらに記載される)を増加させることができる分子、又はエフェクター機能を有する分子(例えば、CD3、Fcレセプター又は補体タンパク質)である。
一実施態様では、本発明は、EGFRに対するナノボディ、及びVEGFに対するナノボディと、c−Metに対するナノボディと、ヒト血清アルブミンに対するナノボディを含むか、又はこれらから本質的になる四重特異性ポリペプチドを提供する。
さらに、本発明のポリペプチド中の種々のナノボディの具体的な順序又は配置が、本発明の最終ポリペプチドの特性(限定されないが、それぞれVEGF、EGFR若しくはc−Met、又は1つ以上の他の抗原に対する親和性、特異性又はアビディティを含む)にいくらかの影響を及ぼし得ることが本発明の範囲内に包含されるが、前記順序又は配置は通常は重要ではなく、当業者であれば、場合により本明細書の開示に基づくいくつかの限定されたルーチン実験後に適切に選択し得る。したがって、本発明の具体的な多重特異性ポリペプチドを参照する場合、特に明確な指示がない限り、これは、関連するナノボディの任意の順序又は配列を包含することに留意するべきである。
具体的だが非限定的なさらに別の態様によれば、本発明のポリペプチドは、例えば、配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び187(実験部分を参照のこと)の免疫グロブリン単一可変ドメインの1つ以上と80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、例えば99%以上の「配列同一性」(本明細書で定義される)を有する免疫グロブリン単一可変ドメインからなる群より選択され得、この場合の該ポリペプチドは、好ましくは、本明細書でさらに定義されるとおりである(すなわち、c−Metに指向性を有する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインと、血清アルブミンに指向性を有する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインとからなる好ましいフォーマットである)。
具体的だが非限定的なさらに別の態様によれば、本発明のポリペプチドは、例えば、配列番号7〜12、103〜111、113、188及び142〜150、好ましくは配列番号7、106、113、188、143、146及び147のポリペプチドの1つ以上と80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、例えば99%以上の「配列同一性」(本明細書で定義される)を有するポリペプチドからなる群より選択され得る。
1.6 本発明の組成物及び医薬組成物
一般に、医薬用途の場合、本発明のポリペプチドは、少なくとも1つの本発明のポリペプチドと、少なくとも1つの薬学的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤及び/又はアジュバントと、並びに場合により1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を含む医薬調製物又は組成物として製剤化してもよい。非限定的な例として、このような製剤は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈、筋肉内又は皮下注射又は静脈輸液による)、局所投与、吸入による投与、スキンパッチ、インプラント、坐剤などに適切な形態でもよく、非経口投与が好ましい。このような適切な投与形態(これは、投与様式に応じて、固体、半固体形又は液体であり得る)並びにその調製における使用のための方法及び担体は当業者には明らかであり、本明細書にさらに記載される。このような医薬調製物又は組成物は、一般に、本明細書では「医薬組成物」と称される。非ヒト生物における使用のための医薬調製物又は組成物は、一般に、本明細書では「獣医学的組成物」と称される。
したがって、さらなる一態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明のアミノ酸、少なくとも1つの本発明のポリペプチド又は少なくとも1つの本発明のポリペプチド、少なくとも1つの適切な担体、希釈剤又は賦形剤(すなわち、医薬用途に適切なもの)、及び場合により1つ以上のさらなる活性物質を含有する医薬組成物に関する。
一般に、本発明のポリペプチドは、それ自体が公知の任意の適切な方法で製剤化及び投与することができる。例えば、上で引用した一般的な背景技術(特に、WO 04/041862、WO 04/041863、WO 04/041865、WO 04/041867及びWO 08/020079)、及び標準的なハンドブック、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Company, USA (1990), Remington, the Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, Lippincott Williams and Wilkins (2005);又はthe Handbook of Therapeutic Antibodies (S. Dubel, Ed.), Wiley, Weinheim, 2007(例えば、252〜255頁を参照のこと)を参照のこと。
本発明のポリペプチドは、従来の抗体及び抗体フラグメント(ScFv及びダイアボディを含む)及び他の薬学的に活性なタンパク質についてのそれ自体が公知の任意の方法で製剤化及び投与してもよい。このような製剤及びこれを調製するための方法は当業者には明らかであり、例えば、非経口投与(例えば、静脈、腹腔内、皮下、筋肉内、腔内、動脈内又は髄腔内投与)又は局所(すなわち、経皮又は皮内)投与に適切な調製物が挙げられる。
非経口投与のための調製物は、例えば、輸液又は注射に適切な滅菌溶液、懸濁液、分散液又はエマルションでもよい。このような調製物のための適切な担体又は希釈剤としては、例えば限定されないが、WO 08/020079の143頁で言及されているものが挙げられる。一実施態様では、調製物は、水性溶液又は水性懸濁液である。
本発明のポリペプチドは、遺伝子治療で公知の送達方法を使用して投与することができる(例えば、米国特許第5,399,346号(これは、その遺伝子治療送達方法について、参照により組み込まれる)を参照のこと)。遺伝子治療送達方法を使用して、本発明のアミノ酸配列、ポリペプチドをコードする遺伝子でトランスフェクションしたプライマリー細胞を、特定の器官、組織、グラフト、腫瘍、又は細胞を標的とする組織特異的プロモーターでさらにトランスフェクションすることもできるし、細胞内局所発現用のシグナル配列及び安定化配列でさらにトランスフェクションすることもできる。
したがって、本発明のポリペプチドは、不活性希釈剤又は同化可能な食用担体などの薬学的に許容しうるビヒクルと組み合わせて、全身投与(例えば、経口投与)してもよい。これらは、ハード又はソフトなシェルゼラチンカプセル内に封入してもよいし、錠剤に圧縮してもよいし、又は患者の食事療法の食品に直接組み込んでもよい。経口療法的投与の場合、本発明のポリペプチドを1つ以上の賦形剤と組み合わせ、消化可能な錠剤、バッカルタブレット、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハーなどの形態で使用してもよい。このような組成物及び調製物は、少なくとも0.1%の本発明のポリペプチドを含有するべきである。当然のことながら、組成物及び調製物中のそのパーセンテージは変化してもよく、有利には、所定の単位剤形の重量の約2〜約60%でもよい。このような治療上有用な組成物中の本発明のポリペプチドの量は、有効投与量レベルが得られるようなものである。
腫瘍切除部位における局所投与の場合、本発明のポリペプチドは、生体分解性ポリマー薬物送達システム、徐放ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)製剤などで使用してもよい(Hart et al., Cochrane Database Syst Rev. 2008 Jul 16; (3): CD007294)。
本発明のさらに好ましい態様では、1つの一価抗ヒトc−Met免疫グロブリン単一可変ドメイン及び1つの一価抗ヒト血清アルブミン免疫グロブリン単一可変ドメインがGSリンカーによって連結されたものから本質的になるポリペプチドなどの本発明のポリペプチドは、例えば、IgGなどの従来の抗体と比較して、固形腫瘍において有益な分布及び動態プロファイルを有してもよい。
錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどは、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤及び甘味料又は香味剤、例えば、WO 08/020079の143〜144頁で言及されているものを含有してもよい。単位剤形がカプセルである場合、これは、上記種類の材料に加えて、液体担体、例えば植物油又はポリエチレングリコールを含有してもよい。種々の他の材料が、コーティングとして存在してもよいし、又は固体単位剤形の物理的形状を別の方法で改変するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤又はカプセルは、ゼラチン、ワックス、シェラック又は糖などでコーティングしてもよい。シロップ又はエリキシル剤は、本発明のポリペプチド、甘味剤としてスクロース又はフルクトース、保存料としてメチル及びプロピルパラベン、染料及び香味剤、例えばチェリー又はオレンジフレーバーを含有してもよい。当然のことながら、任意の単位剤形を調製するのに使用される任意の材料は、薬学的に許容しうるものであり、用いられる量で実質的に非毒性であるべきである。加えて、本発明のポリペプチドは、持続放出調製物及びデバイス中に組み込んでもよい。
経口投与のための調製物及び製剤はまた、本発明の構築物が胃環境に耐え、腸を通過することを可能にする腸溶性コーティング剤と共に提供してもよい。より一般には、経口投与のための調製物及び製剤は、胃腸管の任意の所望の部分に送達するために適切に製剤化してもよい。加えて、適切な坐剤を、胃腸管に送達するのに使用してもよい。
本発明のポリペプチドはまた、輸液又は注射によって静脈内投与又は腹腔内投与してもよい。特定の例は、WO 08/020079の144頁及び145頁又はPCT/EP2010/062975(文書全体)にさらに記載されている。
局所的投与の場合、本発明のポリペプチドは、(すなわち、それらが液体である場合には)純粋な形態で適用してもよい。しかしながら、皮膚科学的に許容しうる担体(これは、固体でもよいし、又は液体でもよい)と組み合わせて、それらを組成物又は製剤として皮膚に投与することが一般には望ましいであろう。特定の例は、WO 08/020079の145頁にさらに記載されているとおりである。
一般に、ローションなどの液体組成物中の本発明のポリペプチドの濃度は、約0.1〜25重量%、好ましくは約0.5〜10重量%であろう。ゲル又は粉末などの半固体又は固体組成物中の濃度は、約0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜2.5重量%であろう。
処置に使用するのに必要な本発明のポリペプチドの量は、選択された特定のポリペプチドだけではなく、投与経路、処置される症状の性質並びに患者の年齢及び症状によっても変化し、最終的には、主治医又は臨床医の判断によるであろう。また、本発明のポリペプチドの投与量は、標的細胞、腫瘍、組織、グラフト又は器官に応じて変化する。
所望の用量は、有利には、単回用量で提示してもよいし、又は適切な間隔で投与される分割用量(例えば、1日あたり2回、3回、4回以上の分割用量)として提示してもよい。分割用量それ自体を、例えば、離散的に散漫に間隔をおいた投与の数に分割してもよい。
投与レジメンは、長期の毎日処置を含んでもよい。「長期」は、少なくとも2週間、好ましくは数週間、数カ月間又は数年間の期間を意味する。当業者であれば、本明細書の教示に示されているルーチン実験のみを使用して、投与量範囲の必要な改変を決定し得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences (Martin, E.W., ed 4), Mack Publishing Co., Easton, PAを参照のこと。投与量はまた、任意の合併症現象では個々の医師によっても調整され得る。
別の態様では、本発明は、少なくとも1つのc−Metに関連する疾患又は障害を予防及び/又は処置するための方法であって、本発明のポリペプチド及び/又はこれを含む医薬組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法に関する。
本発明の文脈では、「予防及び/又は処置」という用語は、疾患を予防及び/又は処置することを含むだけではなく、一般には、疾患の発症を予防すること、疾患の進行を遅延若しくは低減すること、疾患に関連する1つ以上の症候の発症を予防若しくは遅延すること、疾患に関連する1つ以上の症候を軽減及び/若しくは緩和すること、疾患及び/若しくはそれに関連する任意の症候の重症度及び/若しくは持続期間を減少させること、並びに/又は疾患及び/若しくはそれに関連する任意の症候の重症度のさらなる増加を予防すること、疾患によって引き起こされる任意の生理学的損傷を予防、軽減又は低減すること、並びに一般には、処置されている患者に有益な任意の薬理学的作用も含む。
処置されるべき被験体は、任意の温血動物でもよいが、特に哺乳動物、より具体的にはヒトである。当業者には明らかであるように、処置されるべき被験体は、特に、本明細書で言及される疾患及び障害に罹患しているか、又はこれらのリスクを有する者である。
本発明は、c−Met、その生物学的若しくは薬理学的活性、及び/又はc−Metが関与する生物学的経路若しくはシグナル伝達に関連する少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は処置するための方法であって、本発明のアミノ酸配列、本発明のポリペプチド及び/又はこれらを含む医薬組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法に関する。一実施態様では、本発明は、c−Met、その生物学的若しくは薬理学的活性、及び/又はc−Metが関与する生物学的経路若しくはシグナル伝達を調節することによって処置することができる少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は処置するための方法であって、本発明のポリペプチド及び/又はこれを含む医薬組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法に関する。一実施態様では、前記薬学的有効量は、c−Met、その生物学的若しくは薬理学的活性、及び/又はc−Metが関与する生物学的経路若しくはシグナル伝達を調節するのに十分な量;並びに/又は、c−Met、その生物学的若しくは薬理学的活性、及び/又はc−Metが関与する生物学的経路若しくはシグナル伝達を調節するのに十分な循環レベルの本発明のポリペプチドを提供する量でもよい。
一実施態様では、本発明は、本発明のポリペプチド若しくはこれをコードする本発明のヌクレオチド構築物及び/又はこれらを含む医薬組成物を患者に投与することによって予防及び/又は処置することができる少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は処置するための方法に関する。一実施態様では、前記方法は、本発明のポリペプチド若しくはこれをコードする本発明のヌクレオチド構築物及び/又はこれらを含む医薬組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む。
一実施態様では、本発明は、処置されるべき被験体の特定細胞又は特定組織におけるc−Metに対するHGFの結合を阻害することによって(特に、処置されるべき被験体中に存在するガン細胞、腫瘍又は腫瘍微小環境におけるc−Metに対するHGFの結合を阻害することによって)予防及び/又は処置することができる少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は処置するための方法であって、本発明のポリペプチド若しくはこれをコードする本発明のヌクレオチド構築物及び/又はこれらを含む医薬組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法に関する。
一実施態様では、本発明は、本明細書に列挙されている疾患及び障害からなる群より選択される少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は処置するための方法であって、本発明のポリペプチド若しくはこれをコードする本発明のヌクレオチド構築物及び/又はこれらを含む医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法に関する。
一実施態様では、本発明は、本発明のポリペプチド若しくはこれをコードする本発明のヌクレオチド構築物及び/又はこれらを含む医薬組成物の薬学的活性量を、本明細書で言及される疾患及び障害に罹患しているか又はこれらのリスクを有する被験体に投与することを含む免疫治療法(特に、受動免疫治療法)に関する。
上記方法では、本発明のアミノ酸配列、本発明のポリペプチド及び/又はこれらを含む組成物は、使用されるべき具体的な医薬製剤又は組成物に応じて、任意の適切な方法で投与することができる。したがって、本発明のポリペプチド及び/又はこれを含む組成物は、先と同様に、使用されるべき具体的な医薬製剤又は組成物に応じて、例えば、経口投与、腹腔内投与(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、又は胃腸管を回避する任意の他の投与経路による)、鼻腔内投与、経皮投与、局所投与、坐剤投与、吸入投与することができる。臨床医は、予防又は処置されるべき疾患又は障害、及び臨床医に周知の他の要因に応じて、適切な投与経路及びこのような投与に使用されるべき適切な医薬製剤又は組成物を選択することができるであろう。
本発明のポリペプチド及び/又はこれを含む組成物は、予防又は処置されるべき疾患又は障害を予防及び/又は処置するのに適切な処置レジメンにしたがって投与される。臨床医は、一般に、予防又は処置されるべき疾患又は障害、処置されるべき疾患の重症度及び/又はその症候の重症度、使用されるべき本発明のポリペプチド、使用されるべき具体的な投与経路及び医薬製剤又は組成物、患者の年齢、性別、体重、食事療法、一般的状態、並びに臨床医に周知の類似要因などの要因に応じて、適切な処置レジメンを決定することができるであろう。
一般に、処置レジメンは、1つ以上の本発明のポリペプチド又はこれを含む1つ以上の組成物を、1つ以上の薬学的有効量又は用量で投与することを含むであろう。投与されるべき具体的な量又は用量は、先と同様に、上記要因に基づいて、臨床医によって決定され得る。
一般に、本明細書で言及される疾患及び障害の予防及び/又は処置では、処置されるべき具体的な疾患又は障害、使用されるべき具体的な本発明のポリペプチドの効力、使用される具体的な投与経路及び具体的な医薬製剤又は組成物に応じて、本発明のポリペプチドは、一般に、1グラム〜0.01マイクログラム/体重kg/日、好ましくは0.1グラム〜0.1マイクログラム/体重kg/日、例えば、約1、10、100又は1000マイクログラム/体重kg/日の量で、単回1日用量として連続的に(例えば、輸液によって)、又は複数分割用量として1日にわたって投与されるであろう。臨床医は、一般に、本明細書で言及される要因に応じて、適切な1日用量を決定することができるであろう。特定の場合、臨床医は、例えば上記要因及びその専門的判断に基づいて、これらの量から逸脱することを選択してもよいことも明らかである。一般に、投与されるべき量についてのいくつかの指針は、同じ標的に対する同程度の従来の抗体又は抗体フラグメントの通常の投与量であって、本質的に同じ経路を介して投与される投与量から得ることができるが、しかしながら、親和性/アビディティ、有効性、生体内分布、半減期及び当業者に周知の類似要因の相違について考慮する。
一実施態様では、本発明の単一連続ポリペプチドが使用される。一実施態様では、2つ以上の本発明のポリペプチドを組み合わせて提供する。
本発明のポリペプチドは、1つ以上のさらなる薬学的に活性な化合物又は成分と組み合わせて(すなわち、併用処置レジメンとして)使用してもよく、相乗効果をもたらしてもよいし、又はもたらさなくてもよい。先と同様に、臨床医は、上記要因及びその専門的判断に基づいて、このようなさらなる化合物又は成分、及び適切な併用処置レジメンを選択することができるであろう。
特に、本発明のポリペプチドは、本明細書で引用される疾患及び障害を予防及び/又は処置するのに使用することができる他の薬学的に活性な化合物又は成分と組み合わせて使用してもよく、その結果として、相乗効果が得られてもよいし、又は得られなくてもよい。このような化合物及び成分、並びにこれらを投与するための経路、方法及び医薬製剤又は組成物の例は臨床医には明らかであり、一般に、処置されるべき腫瘍を処置するのに通常適用される細胞増殖抑制性(好ましくは、細胞毒性)の活性成分が挙げられる。
腫瘍学のために本発明のポリペプチドと併用するための具体的に意図される組み合わせとしては、限定されないが、例えばRONアンタゴニスト、CXCR4アンタゴニスト、例えばAMD3100など、他のケモカインレセプターアンタゴニスト、タクソール;ゲムシタビン;シスプラチン;cIAP阻害剤(例えば、cIAP1、cIAP2及び/又はXIAPに対する阻害剤);MEK阻害剤(限定されないが、例えばU0126、PD0325901を含む);bRaf阻害剤(限定されないが、例えばRAF265を含む);及びmTOR阻害剤(限定されないが、例えばRAD001を含む);VEGF阻害剤(限定されないが例えばベバシズマブ、スニチニブ(sutinib)及びソラフェニブを含む);ERBB阻害剤、例えばEGFR阻害剤(限定されないが、特異的小分子キナーゼ阻害剤、例えばエルロチニブ、ゲフィチニブを含む)など;抗体、例えばセツキシマブ、ニモツズマブ、パニツムマブ、ネシツムマブ、IMC−C225(Erbitux, Imclone)、EMD72000(Merck Darmstadt)、ABX−EGF(Abgenix)、h−R3(theraCIM, YM Biosciences)及びHumax−EGFR(Genmab);二重特異性又は多重特異性小分子キナーゼ阻害剤、例えばラパチニブ(EGFR&HER2)、バンデタニブ(EGFR、RET、VEGFR2)、ネラチニブ(EGFR、HER2、HER4)及びPF−299804(EGFR、HER2、HER4)、HER2阻害剤(限定されないが、例えばトラスツズマブ及びラパチニブを含む);HER3阻害剤;HER4阻害剤;PDGFR、FGFR、src、JAK、STAT及び/又はGSK3阻害剤;選択的エストロゲンレセプターモデュレーター(限定されないが、タモキシフェンを含む);エストロゲンレセプターダウンレギュレーター(限定されないが、フルベストラントを含む)が挙げられる。例えば、炎症及び他の症状のために本発明のポリペプチドと併用するための具体的に意図される組み合わせとしては、限定されないが、例えばインターフェロンβ1α及びβ、IFNα2b;ナタリズマブ;TNFαアンタゴニスト(限定されないが、例えばインフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール、エタネルセプトを含む);疾患改変抗リウマチ薬、例えばメトトレキサート(MTX)など;グルココルチコイド(限定されないが、例えばデキサメタゾン、ヒドロコルチゾンを含む);非ステロイド系抗炎症薬(限定されないが、例えばイブプロフェン、スリンダク;IL−6又はIL−6R阻害剤(限定されないが、例えばRoActemra、ALD518を含む)も挙げられる。加えて、腫瘍学適応のために本発明のポリペプチドと併用するための組み合わせとしては、限定されないが、非標的化学療法薬、例えば細胞毒性薬及び/又は細胞増殖抑制薬が挙げられる。本発明はまた、腫瘍の進行若しくは転移に関与する他の成長因子に対して指向性を有する他の抗体及び/若しくは化合物、及び/又は毒素とコンジュゲーションした化合物及び/若しくは抗ガン剤若しくは薬剤と組み合わせて本発明のポリペプチドを含む製品及び/又は組成物、並びに特定のガンを予防及び/又は処置するためのそれらの使用を含む。
2つ以上の物質又は成分が併用処置レジメンの一部として使用されるべき場合、それらは、同じ投与経路又は異なる投与経路を介して、本質的に同じ時間又は異なる時間で(例えば、本質的に同時に、連続的に又は交代するレジメンにしたがって)投与することができる。物質又は成分が同じ投与経路を介して同時に投与されるべき場合、当業者には明らかであるように、それらは、異なる医薬製剤若しくは組成物として、又は複合医薬製剤若しくは組成物の一部として投与してもよい。
また、2つ以上の活性物質又は成分が併用処置レジメンの一部として使用されるべき場合、各物質又は成分は、化合物又は成分をそれ自体で使用する場合に使用される同じレジメンにしたがって同じ量で投与してもよく、このような併用は、相乗効果をもたらしてもよいし、又はもたらさなくてもよい。しかしながら、2つ以上の活性物質又は成分の併用が相乗効果をもたらす場合、所望の治療的作用を依然として達成しながら、1つ以上又はすべての投与されるべき物質又は成分の量を減少させることも可能であり得る。これは、例えば、所望の薬学的又は治療的作用を依然として達成しながら、通常量で使用される場合の1つ以上の物質又は成分の使用に伴う任意の望ましくない副作用を回避、限定又は軽減するのに有用であり得る。
本発明にしたがって使用される処置レジメンの有効性は、臨床医には明らかであるように、関連する疾患又は障害についてのそれ自体が公知である任意の方法で決定及び/又は観察してもよい。臨床医は、適切な場合には個々の事例に応じて、特定の処置レジメンを変更又は改変して、所望の治療効果を達成し、望ましくない副作用を回避、限定若しくは軽減し、及び/又は一方では所望の治療効果を達成し、他方では望ましくない副作用を回避、限定若しくは軽減する適切なバランスを達成することができるであろう。
一般に、処置レジメンは、所望の治療効果が達成されるまで、及び/又は所望の治療効果を維持するべき間にわたって継続されるであろう。先と同様に、これは、臨床医によって決定され得る。
別の態様では、本発明は、少なくとも1つのc−Metに関連する疾患及び障害を予防及び/又は処置するための医薬組成物の調製における;及び/又は本明細書で言及される処置方法の1つ以上における使用のための、本発明のポリペプチドの使用に関する。
処置されるべき被験体は、任意の温血動物でもよいが、特に哺乳動物、より具体的にはヒトである。獣医学的用途では、処置されるべき被験体としては、商業目的で飼育されているか又はペットとして飼われている任意の動物が挙げられる。当業者には明らかであるように、処置されるべき被験体は、特に、本明細書で言及される疾患及び障害に罹患しているか、又はこれらのリスクを有する者である。
本発明は、本発明のポリペプチド若しくはこれをコードするヌクレオチド及び/又はこれらの医薬組成物を患者に投与することによって予防及び/又は処置することができる少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は処置するための医薬組成物の調製における本発明のポリペプチド又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。
より具体的には、本発明は、c−Metに関連する疾患及び障害を予防及び/又は処置するための(特に、本明細書に列挙されている疾患及び障害の1つ以上を予防及び処置するための)医薬組成物の調製における本発明のポリペプチド又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、c−Metに関連する疾患及び障害を予防及び/又は処置するための方法であって、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドを投与する方法に関する。本発明は、c−Metに関連する疾患及び障害の予防及び/又は処置における使用のための本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドに関する。
本発明はまた、多発性骨髄腫に罹患している被験体における骨髄腫細胞の増殖を減少させ、及び/又は阻害するための医薬組成物の調製における本発明のポリペプチド又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、多発性骨髄腫に罹患している被験体における骨髄腫細胞の増殖を減少させ、及び/又は阻害するための方法であって、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドを投与する方法に関する。本発明は、多発性骨髄腫に罹患している被験体における骨髄腫細胞の増殖を減少させ、及び/又は阻害するための本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドに関する。好ましい態様では、骨髄腫細胞の増殖は、30%以上、40%以上、50%以上、好ましくは60%以上、70%以上、又はさらに80%以上、90%以上、最も好ましくは100%減少される。
本発明はまた、多発性骨髄腫に罹患している被験体における骨髄腫細胞の遊走を減少させ、及び/又は阻害するための医薬組成物の調製における本発明のポリペプチド又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、多発性骨髄腫に罹患している被験体における骨髄腫細胞の遊走を減少させ、及び/又は阻害するための方法であって、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドを投与する方法に関する。本発明は、多発性骨髄腫に罹患している被験体における骨髄腫細胞の遊走を減少させ、及び/又は阻害するための本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドに関する。好ましい態様では、骨髄腫細胞の遊走は、30%以上、40%以上、50%以上、好ましくは60%以上、70%以上、又はさらに80%以上、90%以上、最も好ましくは100%減少される。
本発明において、本発明者らは、抗c−Met ISVD(例えば、抗c−Metナノボディ)がHGF誘導性破骨細胞形成を回復することができたことを初めて観察した。したがって、本発明はまた、本発明のポリペプチド及び以前に記載されている抗c−Met ISVD(例えば、WO 2012/042026に記載されているもの)を含む抗c−Met ISVDのこの新規な使用を対象とする。したがって、本発明は、多発性骨髄腫を含む骨転移ガンに罹患している被験体における骨疾患を予防及び/又は処置するための医薬組成物の調製における抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、多発性骨髄腫を含む骨転移ガンに罹患している被験体における骨疾患を予防及び/又は処置するための方法であって、抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)を投与する方法に関する。本発明は、多発性骨髄腫を含む骨転移ガンに罹患している被験体における骨疾患を予防及び/又は処置するための抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)に関する。
本発明はまた、多発性骨髄腫を含む骨転移ガンに罹患している被験体における骨形成に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための医薬組成物の調製における抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、多発性骨髄腫を含む骨転移ガンに罹患している被験体における骨形成に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための方法であって、抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)を投与する方法に関する。本発明は、多発性骨髄腫を含む骨転移ガンに罹患している被験体における骨形成に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)に関する。
本発明はまた、(骨形成タンパク質(BMP)誘導性)骨芽細胞形成に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための医薬組成物の調製における抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、(骨形成タンパク質(BMP)誘導性)骨芽細胞形成に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための方法であって、抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)を投与する方法に関する。本発明は、(例えば、Standal et al., Blood 2007 Apr 1; 109(7): 3024-30に記載されているように、骨芽細胞分化アッセイ又はALPアッセイによって測定した場合に)(骨形成タンパク質(BMP)誘導性)骨芽細胞形成に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)に関する。好ましい態様では、(骨形成タンパク質(BMP)誘導性)骨芽細胞形成に対するHGFの阻害効果は、30%以上、40%以上、50%以上、好ましくは60%以上、70%以上、又はさらに80%以上、90%以上、最も好ましくは100%低減される。
本発明はまた、アルカリホスファターゼ(ALP)(のBMP誘導性発現)に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための医薬組成物の調製における抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、アルカリホスファターゼ(ALP)(のBMP誘導性発現)に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための方法であって、抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)を投与する方法に関する。本発明は、(例えば、Standal et al., Blood 2007 Apr 1; 109(7): 3024-30に記載されているように、ALPアッセイによって測定した場合に)アルカリホスファターゼ(ALP)(のBMP誘導性発現)に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)に関する。好ましい態様では、アルカリホスファターゼ(ALP)(のBMP誘導性発現)に対するHGFの阻害効果は、30%以上、40%以上、50%以上、好ましくは60%以上、70%以上、又はさらに80%以上、90%以上、最も好ましくは100%低減される。
本発明はまた、骨芽細胞の石灰化に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための医薬組成物の調製における抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、骨芽細胞の石灰化に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための方法であって、抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)を投与する方法に関する。本発明は、(例えば、Standal et al., Blood 2007 Apr 1; 109(7): 3024-30に記載されているように、骨芽細胞分化アッセイ、ALPアッセイ、又はAlzarin Red-s (ARS)による定量化+可視化によって測定した場合に)骨芽細胞の石灰化に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)に関する。好ましい態様では、骨芽細胞の石灰化に対するHGFの阻害効果は、30%以上、40%以上、50%以上、好ましくは60%以上、70%以上、又はさらに80%以上、90%以上、最も好ましくは100%低減される。
本発明はまた、骨芽細胞特異的転写因子Runx2及び/又はOsterixの(BMP誘導性)発現に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための医薬組成物の調製における抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、骨芽細胞特異的転写因子Runx2及び/又はOsterixの(BMP誘導性)発現に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための方法であって、抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)を投与する方法に関する。本発明は、(例えば、Standal et al., Blood 2007 Apr 1; 109(7): 3024-30に記載されているように、C2C12細胞におけるRunX又はOsterix mRNAの発現によって測定した場合に)骨芽細胞特異的転写因子Runx2及び/又はOsterixの(BMP誘導性)発現に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)に関する。好ましい態様では、骨芽細胞特異的転写因子Runx2及び/又はOsterixの(BMP誘導性)発現に対するHGFの阻害効果は、30%以上、40%以上、50%以上、好ましくは60%以上、70%以上、又はさらに80%以上、90%以上、最も好ましくは100%低減される。
本発明はまた、レセプター活性化Smadの(BMP誘導性)核移行に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための医薬組成物の調製における抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、レセプター活性化Smadの(BMP誘導性)核移行に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための方法であって、抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)を投与する方法に関する。本発明は、(例えば、Standal et al., Blood 2007 Apr 1; 109(7): 3024-30に記載されているように、共焦点顕微鏡法、又はSmad駆動性BMPレセプター構築物の使用によって測定した場合に)レセプター活性化Smadの(BMP誘導性)核移行に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)に関する。好ましい態様では、レセプター活性化Smadの(BMP誘導性)核移行に対するHGFの阻害効果は、30%以上、40%以上、50%以上、好ましくは60%以上、70%以上、又はさらに80%以上、90%以上、最も好ましくは100%低減される。
本発明はまた、BMP−2シグナル伝達に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための医薬組成物の調製における抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、BMP−2シグナル伝達に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための方法であって、抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)を投与する方法に関する。本発明は、BMP−2シグナル伝達に対するHGFの阻害効果を低減及び/又は完全に無効化するための抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)に関する。
本発明はまた、破骨細胞前駆体又は破骨細胞のHGF誘導性ケモタキシス、増殖及び活性化を阻害するための医薬組成物の調製における抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)又はこれをコードするヌクレオチドの使用に関する。したがって、本発明は、破骨細胞に対するHGFの効果を阻害するための方法であって、抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)を投与する方法に関する。本発明は、(Grano et al. 1996, Proc Natl Acad Sci USA 93(15): 7644-8に記載されているように)破骨細胞に対するHGFの効果を阻害するための抗c−Met ISVD(例えば、本発明のポリペプチドなど)に関する。
先と同様に、このような医薬組成物では、1つ以上の本発明のポリペプチド若しくはこれをコードするヌクレオチド及び/又はこれらを含む医薬組成物はまた、1つ以上の他の活性成分、例えば本明細書で言及されるものと適切に組み合わせてもよい。
本発明はまた、in vitro(例えば、in vitroアッセイ又は細胞アッセイ)又はin vivo(例えば、単細胞又は多細胞生物、特に哺乳動物、より具体的にはヒト、例えば本発明の疾患又は障害のリスクを有するか、又はこれらに罹患しているヒト)のいずれかにおける使用のための組成物(例えば限定されないが、本明細書にさらに記載される医薬組成物又は調製物)に関する。
本発明の文脈では、「調節すること」又は「調節する」は、一般に、適切なin vitroアッセイ、細胞アッセイ又はin vivoアッセイ(例えば、本明細書で言及されるもの)を使用して測定した場合に、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の活性を減少させるか又は阻害することを意味する。特に、適切なin vitroアッセイ、細胞アッセイ、又はin vivoアッセイ(例えば、本明細書で言及されるもの)を使用して測定した場合の、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の活性の減少又は阻害は、本発明のポリペプチドが存在しない以外は同じ条件下での同じアッセイにおけるc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の活性と比較して少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、例えば少なくとも10%若しくは少なくとも25%、例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は90%以上である。
調節は、例えば、c−Metのその基質又はリガンドの1つに対する結合を減少させるか若しくは阻害すること、及び/又は天然のリガンド(HGF)(これは、c−Metに対する結合の基質である)と競合することを含むことができる。あるいは、調節は、c−Metレベルを減少させるためにインターナリゼーションを阻害すること、インターナリゼーションを誘導すること、例えば、c−Metのシグナル伝達、ホモ二量体化を減少させること、及び/又はc−Metの排出を促進することを含んでもよいので、HGF依存性及び/又はHGF非依存性のc−Met活性化を阻害してもよい。
1.7 本発明のポリペプチド及び/又は他の生物学的物質の作製
本発明はさらに、本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、核酸、宿主細胞、生成物及び組成物を調製又は作製するための方法に関する。このような方法の好ましいが非限定的ないくつか例は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
一般に、これらの方法は、
a)免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリを提供する工程;及び
b)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合し、及び/又はこれらに対する親和性を有することができる免疫グロブリン単一可変ドメインについて、前記免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程;及び
c)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合し、及び/又はこれらに対する親和性を有することができるアミノ酸配列を単離する工程
を含んでもよい。
このような方法では、免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリは、任意の適切な免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリでもよい。例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリは、(本明細書に記載される)免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリ(例えば、免疫グロブリン配列のナイーブセット、ナイーブコレクション又はナイーブライブラリ;免疫グロブリン配列の合成又は半合成のセット、コレクション又はライブラリ;及び/又は親和性成熟を受けている免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリ)でもよい。
また、このような方法では、免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリは、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメイン(例えば、VL−、VH−又はVHHドメイン、好ましくはVHHドメイン)のセット、コレクション又はライブラリでもよい。例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリは、ドメイン抗体若しくは単一ドメイン抗体のセット、コレクション若しくはライブラリでもよいし、又はドメイン抗体若しくは単一ドメイン抗体として機能することができる免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション若しくはライブラリでもよい。
この方法の好ましい態様では、免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリは、例えば、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)、又はこれに基づく(例えば、実験部分に記載されているものなど。ヒトc−Met/Fcキメラ(配列番号2)を参照のこと)若しくはこれに由来する適切な抗原決定基、例えばその抗原性の部分、フラグメント、領域、ドメイン、ループ又は他のエピトープで適切に免疫感作した哺乳動物由来の免疫グロブリン配列の免疫セット、免疫コレクション又は免疫ライブラリでもよい。特定の一態様では、前記抗原決定基は、細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ若しくは他の細胞外エピトープでもよい。
上記の方法では、免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリは、スクリーニングを容易にするように、ファージ、ファージミド、リボソーム又は適切な微生物(例えば、酵母)上にディスプレイしてもよい。免疫グロブリン単一可変ドメイン(のセット、コレクション又はライブラリ)をディスプレイ及びスクリーニングするのに適切な方法、技術及び宿主生物は、例えば、本明細書のさらなる開示に基づいて当業者には明らかである。Nature Biotechnology, 23:1105-1116 (2005)のHoogenboomによる総説も参照のこと。
別の態様では、免疫グロブリン単一可変ドメインを作製するための方法は、
a)免疫グロブリン単一可変ドメインを発現する細胞のコレクション又はサンプルを提供する工程;
b)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合し、及び/又はこれらに対する親和性を有することができるアミノ酸配列を発現する細胞について、前記細胞のコレクション又はサンプルをスクリーニングする工程;及び
c)(i)前記アミノ酸配列を単離する工程;又は(ii)前記細胞から、前記アミノ酸配列をコードする核酸配列を単離し、続いて前記アミノ酸配列を発現させる工程
を少なくとも含む。
別の態様では、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有するアミノ酸配列を作製するための方法は、
a)免疫グロブリン単一可変ドメインをコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリを提供する工程;
b)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合することができ、及び/又はこれらに対する親和性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列について、前記核酸配列のセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程;及び
c)前記核酸配列を単離し、続いて前記アミノ酸配列を発現させる工程
を少なくとも含んでもよい。
このような方法では、免疫グロブリン単一可変ドメインをコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリは、例えば、免疫グロブリン配列のナイーブセット、ナイーブコレクション又はナイーブライブラリをコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリ;免疫グロブリン配列の合成又は半合成のセット、コレクション又はライブラリをコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリ;及び/又は親和性成熟を受けている免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリをコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリでもよい。
別の態様では、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有するアミノ酸配列を作製するための方法は、
a)免疫グロブリン単一可変ドメインをコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリを提供する工程;
b)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合することができ、及び/又はこれらに対する親和性を有し、並びに本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチド、例えば配列番号7〜12、103〜111、113、188及び142〜150、好ましくは配列番号7、106、113、188、143、146及び147によって交差遮断されるか、又はこれらを交差遮断するアミノ酸配列をコードする核酸配列について、前記核酸配列のセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程;及び
c)前記核酸配列を単離し、続いて前記アミノ酸配列を発現させる工程
を少なくとも含んでもよい。
好ましい態様では、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有するアミノ酸配列を作製するための方法は、
a)VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリを提供する工程;及び
b)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合し、及び/又はこれらに対する親和性を有することができる免疫グロブリン単一可変ドメインについて、前記VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程;及び
c)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合し、及び/又はこれらに対する親和性を有することができるアミノ酸配列を単離する工程
を少なくとも含んでもよい。
このような方法では、VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリは、任意の適切な免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリでもよい。例えば、VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリは、(本明細書に記載される)免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリ(例えば、免疫グロブリン配列のナイーブセット、ナイーブコレクション又はナイーブライブラリ;免疫グロブリン配列の合成又は半合成のセット、コレクション又はライブラリ;及び/又は親和性成熟を受けているVHH1型免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリ)でもよい。好ましい態様では、VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリは、(本明細書に記載される)免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリ(例えば、VHH1型免疫グロブリン配列の合成のセット、コレクション又はライブラリ)でもよい。上記の方法では、VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリは、スクリーニングを容易にするように、ファージ、ファージミド、リボソーム又は適切な微生物(例えば、酵母)上にディスプレイしてもよい。免疫グロブリン単一可変ドメイン(のセット、コレクション又はライブラリ)をディスプレイ及びスクリーニングするのに適切な方法、技術及び宿主生物は当業者には明らかであり、例えば、Knappik, et al., J. Mol. Biol. 2000 Feb 11, 296:57-86によって記載されている。
VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメイン(のセット、コレクション又はライブラリ)をディスプレイ及びスクリーニングするのに適切な方法、技術及び宿主生物は、例えば、本明細書のさらなる開示に基づいて当業者には明らかである。Nature Biotechnology, 23:1105-1116 (2005)のHoogenboomによる総説も参照のこと。
本発明はまた、上記方法によって、又はあるいは上記方法の1つに加えて少なくとも、前記免疫グロブリン配列のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を決定する工程;及び、それ自体が公知の方法で(例えば、適切な宿主細胞若しくは宿主生物で発現させるか又は化学合成することによって)前記アミノ酸配列を発現させるか又は合成する工程を含む方法によって得られる免疫グロブリン単一可変ドメインに関する。
また、上記工程の後に、1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを適切にヒト化、ラクダ化、又は別の方法で配列最適化(例えば、製造性、安定性及び/又は溶解性について配列最適化)してもよい;及び/又は、本発明のポリペプチドを提供するために、このようにして得られた免疫グロブリン単一可変ドメインを、(場合により1つ以上の適切なリンカーを介して)互いに連結してもよいし、又は1つ以上の他の適切なアミノ酸配列に連結してもよい。また、本発明のアミノ酸配列をコードする核酸配列を適切にヒト化、ラクダ化、又は別の方法で配列最適化(例えば、製造性、安定性及び/又は溶解性について配列最適化)し、適切に発現させてもよい;及び/又は、本発明のアミノ酸配列をコードする1つ以上の核酸配列を(場合により1つ以上の適切なリンカーをコードするヌクレオチド配列を介して)互いに連結してもよいし、又は他の適切な免疫グロブリン単一可変ドメインをコードする1つ以上の核酸配列に連結してもよく、この後、本発明のポリペプチドを提供するために、このようにして得られたヌクレオチド配列を適切に発現させてもよい。
本発明はさらに、本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン、化合物、構築物、ポリペプチド、核酸、宿主細胞、生成物及び組成物の用途及び使用、並びにc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に関連する疾患及び障害を診断、予防及び/又は処置するための方法に関する。好ましいが非限定的ないくつかの用途及び使用は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
本発明はまた、治療における使用のための、本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン、化合物、構築物、ポリペプチド、核酸、宿主細胞、生成物及び組成物に関する。
特に、本発明はまた、本明細書に記載されるアミノ酸配列、化合物、構築物又はポリペプチド(の薬学的有効量)を、それを必要とする被験体に投与することによって予防又は処置することができる疾患又は障害の治療における使用のための、本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン、化合物、構築物、ポリペプチド、核酸、宿主細胞、生成物及び組成物に関する。
より具体例には、本発明は、ガンの治療における使用のための、本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン、化合物、構築物、ポリペプチド、核酸、宿主細胞、生成物及び組成物に関する。
1.8 本発明のポリペプチド及び他の生物学的物質の変異体
効力又は他の所望の特性をさらに改善するために、本発明のポリペプチド及び(本発明のポリペプチドの一部を形成する)免疫グロブリン単一可変ドメインを変化させてもよい。
一般に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、式1
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜3を指す)を有するポリペプチドと定義することができる。
CDR配列についての特に好ましいが非限定的ないくつかの組み合わせ、並びにCDR配列及びフレームワーク配列についての好ましい組み合わせが以下の表B−2又はA−2で言及されされており、多数の好ましい(が非限定的な)本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン中に存在するCDR配列及びフレームワーク配列が列挙されている。当業者には明らかであるように、同じクローン中に存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の組み合わせ(すなわち、表B−2又はA−2の同じ行又は列で言及されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列)が通常好ましいであろう(しかし、本発明は、その最も広い意味ではそれらに限定されず、表B−2又はA−2で言及されているCDR配列の他の適切な組み合わせも含む)。また、同じクローン中に存在するCDR配列及びフレームワーク配列の組み合わせ(すなわち、表B−2又はA−2の同じ行又は列で言及されているCDR配列及びフレームワーク配列)が通常好ましいであろう(しかし、本発明は、その最も広い意味ではそれらに限定されず、表B−2又はA−2で言及されているCDR配列及びフレームワーク配列の他の適切な組み合わせ、並びに例えば本明細書でさらに記載されるこのようなCDR配列及び他の適切なフレームワーク配列の組み合わせも含む)。
また、表B−2で言及されているCDRの組み合わせを含む本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、各CDRを、言及されているCDRと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性(本明細書で定義される)を有する免疫グロブリン単一可変ドメインからなる群より選択されるCDRで置換することができ、この場合:
i)このようなCDRにおける任意のアミノ酸置換は、好ましくは、表B−2で言及されている対応するCDR配列と比較して、保存的アミノ酸置換(本明細書で定義される)であり;及び/又は
ii)任意のこのようなCDR配列は、好ましくは、表B−2で言及されている対応するCDR配列と比較して、アミノ酸置換のみを含有し、アミノ酸欠失又は挿入を含有せず;及び/又は
iii)任意のこのようなCDR配列は、特に、表B−2で言及されている対応するCDR配列から開始して、それ自体が公知の親和性成熟技術によって誘導されるCDRである。
しかしながら、当業者には明らかであるように、表B−2で言及されている、CDR配列(の組み合わせ)、並びにCDR配列及びフレームワーク配列(の組み合わせ)が一般に好ましい。
したがって、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つは、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群より;又は、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の「配列同一性」(本明細書で定義される)を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群より;及び/又は表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つと3個、2個若しくはわずか1個の「アミノ酸差異」(本明細書で定義される)を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群より適切に選択される。
この文脈では、「適切に選択される」は、それぞれ、規定通りに、CDR1配列が適切なCDR1配列(すなわち、本明細書で定義される)から選択され、CDR2配列が適切なCDR2配列(すなわち、本明細書で定義される)から選択され、CDR3配列が適切なCDR3配列(すなわち、本明細書で定義される)から選択されることを意味する。より具体的には、CDR配列は、好ましくは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが、本明細書で定義される親和性(これは、本明細書にさらに記載されるように、種々のin vitro及び/又はin vivo効力アッセイ又は他のアッセイで適切に測定され、及び/又はEC50値あるいはIC50値として表される)でc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合するように選択される。
特に、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、存在するCDR3配列が少なくとも、表B−2に列挙されているCDR3配列からなる群より、又は表B−2に列挙されているCDR3配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR3配列からなる群より;及び/又は表B−2に列挙されているCDR3配列の少なくとも1つと3個、2個若しくはわずか1個のアミノ酸差異を有するCDR3配列からなる群より適切に選択される。
好ましくは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも2つが、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群より、又は表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群より;及び/又は表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つと3個、2個若しくはわずか1個の「アミノ酸差異」を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群より適切に選択される。
特に、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、存在するCDR3配列が少なくとも、表B−2に列挙されているCDR3配列からなる群より、又は表B−2にそれぞれ列挙されているCDR3配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR3配列からなる群より適切に選択され;存在するCDR1配列及びCDR2配列の少なくとも1つが、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列及びCDR2配列からなる群より、又は表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列及びCDR2配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1配列及びCDR2配列それぞれからなる群より;及び/又は表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列及びCDR2配列の少なくとも1つと3個、2個若しくはわずか1個のアミノ酸差異を有するCDR1配列及びCDR2配列それぞれからなる群より適切に選択される。
最も好ましくは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の3つすべてが、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群より、又は表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群より;及び/又は表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つと3個、2個若しくはわずか1個のアミノ酸差異を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群より適切に選択される。
さらにより好ましくは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つが、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群より適切に選択される。好ましくは、この態様では、存在する他の2つのCDR配列の少なくとも1つ、又は好ましくは両方が、表B−2にそれぞれ列挙されている対応するCDR配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列より;及び/又は表B−2にそれぞれ列挙されている対応する配列の少なくとも1つと3個、2個若しくはわずか1個のアミノ酸差異を有するCDR配列からなる群より適切に選択される。
特に、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、存在するCDR3配列が少なくとも、表B−2に列挙されているCDR3からなる群より適切に選択される。好ましくは、この態様では、存在するCDR1配列及びCDR2配列の少なくとも1つ、及び好ましくは両方が、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列及びCDR2配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1配列及びCDR2配列それぞれからなる群より;及び/又は表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列及びCDR2配列の少なくとも1つと3個、2個若しくはわずか1個のアミノ酸差異を有するCDR1配列及びCDR2配列それぞれからなる群より適切に選択される。
さらにより好ましくは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも2つが、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群より適切に選択される。好ましくは、この態様では、存在する残りのCDR配列が、表B−2に列挙されている対応するCDR配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列からなる群より;及び/又は表B−2に列挙されている対応する配列の少なくとも1つと3個、2個若しくはわずか1個のアミノ酸差異を有するCDR配列からなる群より適切に選択される。
特に、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、CDR3配列が少なくとも、表B−2に列挙されているCDR3配列からなる群より適切に選択され、CDR1配列又はCDR2配列のいずれかが、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列及びCDR2配列からなる群より適切に選択される。好ましくは、この態様では、存在する残りのCDR配列が、表B−2に列挙されている対応するCDR配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列からなる群より;及び/又は表B−2に列挙されている対応するCDR配列と3個、2個若しくはわずか1個のアミノ酸差異を有するCDR配列からなる群より適切に選択される。
さらにより好ましくは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の3つすべてが、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群より適切に選択される。
また、一般に、表B−2に列挙されているCDRの組み合わせ(すなわち、表B−2の同じ行又は列で言及されているもの)が好ましい。したがって、一般に、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインにおけるCDRが、表B−2で言及されているCDR配列であるか、又は表B−2に列挙されているCDR配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列からなる群より;及び/又は表B−2に列挙されているCDR配列と3個、2個若しくはわずか1個のアミノ酸差異を有するCDR配列からなる群より適切に選択される場合、他のCDRの少なくとも1つ、好ましくは両方が、表B−2の同じ組み合わせに属する(すなわち、表B−2の同じ行又は列で言及されている)CDR配列から適切に選択されるか、又は同じ組み合わせに属するCDR配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列からなる群より;及び/又は同じ組み合わせに属するCDR配列と3個、2個若しくはわずか1個のアミノ酸差異を有するCDR配列からなる群より適切に選択されることが好ましい。上記段落で示される他の好ましい実施態様(preferences)はまた、表B−2で言及されている(例えば、表B−2の同じ列で言及されている)CDR配列の組み合わせに適用される。
したがって、非限定的な例によって、本発明のポリペプチドは、例えば、表B−2で言及されているCDR1配列の1つと80%超の配列同一性を有するCDR1配列、表B−2で言及されている(しかし、異なる組み合わせに属する、例えば、表B−2の異なる列で言及されている)CDR2配列の1つと3個、2個若しくは1個のアミノ酸差異を有するCDR2配列、及びCDR3配列を含むことができる。
いくつかの好ましい本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、例えば、(1)表B−2で言及されているCDR1配列の1つと80%超の配列同一性を有するCDR1配列、表B−2で言及されている(しかし、異なる組み合わせに属する、例えば、表B−2の異なる列で言及されている)CDR2配列の1つと3個、2個若しくは1個のアミノ酸差異を有するCDR2配列、及び表B−2で言及されている(しかし、異なる組み合わせに属する、例えば、表B−2の異なる列で言及されている)CDR3配列の1つと80%超の配列同一性を有するCDR3配列を含んでもよいし;又は(2)表B−2で言及されているCDR1配列の1つと80%超の配列同一性を有するCDR1配列と、CDR2配列と、表B−2に列挙されているCDR3配列の1つを含んでもよいし;又は(3)CDR1配列と、表B−2に列挙されているCDR2配列の1つと80%超の配列同一性を有するCDR2配列と、表B−2で言及されておりCDR2配列と同じ組み合わせに属する(例えば、表B−2の同じ列で言及されている)CDR3配列と3個、2個若しくは1個のアミノ酸差異を有するCDR3配列を含んでもよい。
いくつかの特に好ましい本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、例えば、(1)表B−2で言及されているCDR1配列の1つと80%超の配列同一性を有するCDR1配列、表B−2で言及されており同じ組み合わせに属するCDR2配列と3個、2個若しくは1個のアミノ酸差異を有するCDR2配列、及び表B−2で言及されており同じ組み合わせに属するCDR3配列と80%超の配列同一性を有するCDR3配列を含んでもよいし;又は(2)CDR1配列と、表B−2に列挙されているCDR2、及び表B−2に列挙されているCDR3配列を含んでもよい(これらの場合、CDR2配列及びCDR3配列は、異なる組み合わせに属していてもよい)。
いくつかのさらにより好ましい本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、例えば、(1)表B−2で言及されているCDR1配列の1つと80%超の配列同一性を有するCDR1配列、表B−1に列挙されており同じ組み合わせに属するCDR2配列、及び表B−2で言及されており異なる組み合わせに属する(例えば、表B−2の異なる列で言及されている)CDR3配列とを含んでもよいし;又は(2)表B−2で言及されているCDR1配列、表B−2で言及されており同じ組み合わせに属するCDR2配列と3個、2個若しくは1個のアミノ酸差異を有するCDR2配列、及び表B−2に列挙されており同じ若しくは異なる組み合わせに属するCDR3配列と80%超の配列同一性を有するCDR3配列を含んでもよい。
特に好ましい本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、例えば、表B−2で言及されているCDR1配列、表B−2で言及されており同じ組み合わせに属するCDR2配列と80%超の配列同一性を有するCDR2配列、及び表B−2で言及されており同じ組み合わせに属するCDR3配列を含んでもよい。
最も好ましい本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインでは、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列が、表B−2にそれぞれ列挙されているCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の組み合わせの1つから適切に選択される。
本発明の好ましいが非限定的な別の態様によれば、(a)CDR1は、1個〜12個のアミノ酸残基、通常は2個〜9個のアミノ酸残基、例えば5個、6個又は7個のアミノ酸残基の長さを有し、及び/又は(b)CDR2は、13個〜24個のアミノ酸残基、通常は15個〜21個のアミノ酸残基、例えば16個及び17個のアミノ酸残基の長さを有し、及び/又は(c)CDR3は、2個〜35個のアミノ酸残基、通常は3個〜30個のアミノ酸残基、例えば6個〜23個のアミノ酸残基の長さを有する。
好ましいが非限定的な別の態様では、本発明は、免疫グロブリン単一可変ドメインであって、CDR配列(本明細書で定義される)が、配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187の免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、例えば99%以上の配列同一性(本明細書で定義される)を有する免疫グロブリン単一可変ドメインに関する。
本発明の好ましいが非限定的な別の態様は、配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187の免疫グロブリン単一可変ドメインのヒト化変異体であって、対応するネイティブなVHH配列と比較して、少なくとも1つのヒト化置換(本明細書で定義される)、特にそのフレームワーク配列(本明細書で定義される)の少なくとも1つに少なくとも1つのヒト化置換を含むヒト化変異体に関する。
「好ましい」(又は「より好ましい」、「さらにより好ましい」など)と本明細書で言及される免疫グロブリン単一可変ドメインはまた、本明細書に記載されるポリペプチドに使用するのに好ましい(又はより好ましい、又はさらにより好ましいなど)ことは当業者には明らかである。したがって、1つ以上の「好ましい」本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか又はこれらから本質的になるポリペプチドが一般には好ましく、1つ以上の「より好ましい」本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか又はこれらから本質的になるポリペプチドが一般にはより好ましい、など。
1.9 本発明の核酸配列及び宿主細胞
本発明の別の態様は、本発明のアミノ酸配列(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン)又はこれを含む本発明のポリペプチドをコードする核酸に関する。先と同様に、本発明の核酸について本明細書に一般に記載されるように、このような核酸は、本明細書で定義される遺伝子構築物でもよい。本発明のこの態様の具体例な実施態様は、実験部分、配列番号30〜42、好ましくは配列番号30で提供される。
好ましいが非限定的な別の態様では、本発明は、免疫グロブリン単一可変ドメインの核酸配列であって、配列番号30〜42、好ましくは配列番号30の免疫グロブリン単一可変ドメインの核酸配列の少なくとも1つの配列と80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、例えば99%以上の配列同一性(本明細書で定義される)を有する配列(本明細書で定義される)に関する。
別の態様では、本発明は、免疫グロブリン単一可変ドメインの核酸配列を含む核酸配列であって、配列番号30〜42、好ましくは配列番号30の免疫グロブリン単一可変ドメインの核酸配列の少なくとも1つの配列と80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、例えば99%以上の配列同一性(本明細書で定義される)を有する配列(本明細書で定義される)に関する。
別の態様では、本発明は、本発明のアミノ酸配列(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメイン)及び/若しくはこれを含む本発明のポリペプチドを発現するか、若しくはこれらを発現することができ;並びに/又は本発明の核酸を含有する宿主又は宿主細胞に関する。このような宿主又は宿主細胞の好ましいが非限定的ないくつかの例は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
当業者には明らかであるように、本発明のポリペプチドを調製するための特に有用な方法の1つは、一般に、
i)適切な宿主細胞若しくは宿主生物(本明細書では「本発明の宿主」とも称される)又は別の適切な発現系で、前記アミノ酸配列、本発明のポリペプチドをコードする核酸(本明細書では「本発明の核酸」とも称される)を発現させる工程、場合により続いて:
ii)このようにして得られた本発明のポリペプチドを単離及び/又は精製する工程
を含む。
特に、このような方法は、
i)本発明の宿主を、前記本発明の宿主が少なくとも1つの本発明のポリペプチドを発現及び/又は産生するような条件下で培養及び/又は維持する工程;
場合により続いて:
ii)このようにして得られた本発明のポリペプチドを単離及び/又は精製する工程
を含んでもよい。
本発明の核酸は、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNAの形態であり得、好ましくは二本鎖DNAの形態である。例えば、本発明のヌクレオチド配列は、ゲノムDNA、cDNA又は合成DNA(例えば、目的とする宿主細胞又は宿主生物における発現に特異的に適合されたコドン出現頻度を有するDNA)でもよい。
本発明の一態様によれば、本発明の核酸は、本明細書で定義されるように、本質的に単離された形態である。
本発明の核酸はまた、例えば、プラスミド、コスミド又はYACなどのベクターの形態でもよいし、これらの中に存在してもよいし、及び/又はこれの一部でもよく、これらは先と同様に本質的に単離された形態でもよい。
本発明の核酸は、本明細書に示される本発明のポリペプチドの免疫グロブリン単一可変ドメインについての情報に基づいて、それ自体が公知の方法で調製若しくは取得することができ、及び/又は適切な天然資源から単離することができる。類似体を得るために、天然に存在するVHHドメインをコードするヌクレオチド配列を、例えば、部位特異的突然変異誘発に供して、前記類似体をコードする本発明の核酸を提供することができる。また、当業者には明らかであるように、本発明の核酸を調製するために、いくつかのヌクレオチド配列、例えば、本発明のポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列と、例えば1つ以上のリンカーをコードする核酸とを適切な方法で連結することもできる。
本発明の核酸を作製するための技術は当業者には明らかであり、例えば限定されないが、自動DNA合成;部位特異的突然変異誘発;2つ以上の天然に存在する配列及び/又は合成配列(又はそれらの2つ以上の部分)の組み合わせ(combining)、切断発現産物の発現をもたらす突然変異の導入;(例えば、適切な制限酵素を使用して容易に消化及び/又はライゲーションすることができるカセット及び/又は領域を作るための)1つ以上の制限部位の導入、及び/又は例えば、天然に存在する形態のc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)の配列を鋳型として使用し1つ以上の「ミスマッチ」プライマーを使用するPCR反応による突然変異の導入を挙げることができる。これらの及び他の技術は当業者には明らかであり、先と同様に、上述のSambrook et al.及びAusubel et al.などの標準的なハンドブック、並びに以下の実施例を参照のこと。
本発明の核酸はまた、当業者には明らかであるように、及びWO 08/020079(参照により本明細書に組み込まれる)の131〜134頁に記載されているように、遺伝子構築物の形態でもよいし、この中に存在してもよいし、及び/又はこの一部でもよい。このような遺伝子構築物は、一般に、それ自体が公知の遺伝子構築物の1つ以上の要素、例えば、1つ以上の適切なレギュレーション要素(例えば、適切なプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)及び本明細書で言及される遺伝子構築物のさらなる要素などに場合により連結された少なくとも1つの本発明の核酸を含む。少なくとも1つの本発明の核酸を含むこのような遺伝子構築物は、本明細書では「本発明の遺伝子構築物」とも称される。
本発明の遺伝子構築物はDNAでもよいし、又はRNAでもよく、好ましくは二本鎖DNAである。本発明の遺伝子構築物はまた、目的とする宿主細胞又は宿主生物のトランスフォーメーションに適切な形態、目的とする宿主細胞のゲノムDNAに組み込むのに適切な形態、又は目的とする宿主生物における単独での複製、維持及び/又は継代に適切な形態でもよい。例えば、本発明の遺伝子構築物は、例えば、プラスミド、コスミド、YAC、ウイルスベクター又はトランスポゾンなどのベクターの形態でもよい。特に、ベクターは、発現ベクター(すなわち、in vitro及び/又はin vivo(例えば、適切な宿主細胞、宿主生物及び/又は発現系)での発現を提供することができるベクター)でもよい。
好ましいが非限定的な態様では、本発明の遺伝子構築物は、
i)以下のものに機能的に結合された少なくとも1つの本発明の核酸;
ii)1つ以上のレギュレーション要素(例えば、プロモーター)及び適切なターミネーター;及び場合によりさらに
iii)それ自体が公知の遺伝子構築物の1つ以上のさらなる要素
を含み、「機能的に結合された」及び「機能的に連結された」という用語は、WO 08/020079の131〜134頁に示されている意味を有し;「レギュレーション要素」、「プロモーター」、「ターミネーター」及び「さらなる要素」は、WO 08/020079の131〜134頁に記載されているようなものであり;遺伝子構築物はさらに、WO 08/020079の131〜134頁に記載されているようなものでもよい。
本発明の核酸及び/又は本発明の遺伝子構築物は、宿主細胞又は宿主生物をトランスフォーメーションするのに(すなわち、本発明のポリペプチドを発現及び/又は産生させるのに)使用することができる。適切な宿主又は宿主細胞は当業者には明らかであり、例えば、任意の適切な真菌、原核若しくは真核細胞若しくは細胞株、又は任意の適切な真菌、原核若しくは真核生物、例えば、WO 08/020079の134頁及び135頁に記載されているもの、並びに抗体及び抗体フラグメント(限定されないが、(単一)ドメイン抗体及びScFvフラグメン含む)を発現及び生産するためのそれ自体が公知の他の宿主又は宿主細胞すべてでもよく、これらは当業者には明らかであろう。上に引用した一般的な背景技術並びに例えば、WO 94/29457、WO 96/34103及びWO 99/42077も参照のこと。
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドはまた、例えば、トランスジェニック哺乳動物の乳中、例えばウサギ、ウシ、ヤギ又はヒツジの乳中(トランス遺伝子を哺乳動物に導入するための一般的な技術については、例えば、米国特許第6,741,957号、米国特許第6,304,489号及び米国特許第6,849,992号を参照のこと)、植物又は植物の部分中(限定されないが、葉、花、果実、種、根、塊茎を含む)(例えば、タバコ、トウモロコシ、大豆、又はアルファルファ)、又は例えばカイコBombyx moriの蛹中で生産することができる。
さらに、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドはまた、無細胞発現系で発現させ、及び/又は生産することができ、このような系の適切な例は当業者には明らかであろう。好ましいが非限定的ないくつかの例としては、小麦麦芽系;ウサギ網状赤血球溶解物;又はE. coli Zubay系での発現が挙げられる。
上述のように、免疫グロブリン単一可変ドメインを使用する利点の1つは、これに基づくポリペプチドは、適切な細菌系での発現によって調製することができることであり、適切な細菌発現系、ベクター、宿主細胞、レギュレーション要素などは、例えば上に引用した参考文献から当業者には明らかであろう。しかしながら、本発明は、その最も広い意味では細菌系での発現に限定されないことに留意するべきである。
好ましくは、本発明では、本発明のポリペプチドを医薬用途に適切な形態で提供する細菌発現系などの(in vivo又はin vitro)発現系が使用され、先と同様に、このような発現系は当業者には明らかであろう。また当業者には明らかであるように、医薬用途に適切な本発明のポリペプチドは、ペプチド合成技術を使用して調製することができる。
工業規模の生産の場合、免疫グロブリン単一可変ドメイン又は免疫グロブリン単一可変ドメインを含有するタンパク質治療剤を(工業的に)生産するのに好ましい異種宿主としては、大規模な発現/生産/発酵、特に大規模な医薬的(すなわち、GMPグレード)発現/生産/発酵に適切なE. coli、Pichia pastoris、S. cerevisiaeの菌株が挙げられる。このような菌株の適切な例は、当業者には明らかであろう。このような菌株及び生産/発現系はまた、Richter Helm (Hamburg, Germany)又はCMC Biologics (Soeborg, Denmark)などの企業から入手可能である。
あるいは、哺乳動物細胞株、特にチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、大規模な発現/生産/発酵、特に大規模な医薬的発現/生産/発酵に使用することができる。先と同様に、このような発現/生産系はまた、上述の企業のいくつかから入手可能である。
具体的な発現系の選択は、ある特定の翻訳後修飾、より具体的にはグリコシル化の要件に部分的には依存するであろう。グリコシル化が望ましいか又は必要な免疫グロブリン単一可変ドメインを含有するリコンビナントタンパク質の生産は、発現したタンパク質をグリコシル化する能力を有する哺乳動物発現用宿主の使用を必要とする。これに関連して、得られるグリコシル化パターン(すなわち、結合する残基の種類、数、及び位置)が、発現に使用される細胞又は細胞株に依存するであろうことは当業者には明らかであろう。好ましくは、ヒト細胞若しくは細胞株が使用される(すなわち、ヒトのグリコシル化パターンを本質的に有するタンパク質を与える)か、又はヒトのグリコシル化と本質的に及び/若しくは機能的に同一であるか、又はヒトのグリコシル化を少なくとも模倣するグリコシル化パターンを提供することができる別の哺乳動物細胞株が使用される。一般に、E. coliなどの原核生物宿主はタンパク質をグリコシル化する能力を有さず、酵母などの下等真核生物を使用することにより、通常、ヒトのグリコシル化と異なるグリコシル化パターンがもたらされる。それにもかかわらず、上述の宿主細胞及び発現系はすべて、得ようとする所望のポリペプチドに応じて、本発明に使用することができるこ理解するべきである。
したがって、本発明の非限定的な一態様によれば、本発明のポリペプチドは、グリコシル化される。本発明の非限定的な別の態様によれば、本発明のポリペプチドは、グリコシル化されない。
本発明の好ましいが非限定的な一態様によれば、本発明のポリペプチドは、細菌細胞、特に大規模な医薬生産に適切な細菌細胞、例えば、上述の菌株の細胞中で産生される。
本発明の好ましいが非限定的な別の態様によれば、本発明のポリペプチドは、酵母細胞、特に大規模な医薬生産に適切な酵母細胞、例えば、上述の種の細胞中で産生される。
本発明の好ましいが非限定的なさらに別の態様によれば、本発明のポリペプチドは、哺乳動物細胞、特にヒト細胞又はヒト細胞株の細胞、より具体的には大規模な医薬生産に適切なヒト細胞又はヒト細胞株の細胞、例えば、上述の細胞株中で産生される。
WO 08/020079の138頁及び139頁にさらに記載されているように、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドを生産するために、宿主細胞での発現が使用される場合、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及びポリペプチドを細胞内(例えば、細胞質中、ペリプラズム中、又は封入体中)で生産し、次いで宿主細胞から単離し、場合によりさらに精製することもできるし;又は細胞外(例えば、宿主細胞を培養する培地中)で生産し、次いで培養培地から単離し、場合によりさらに精製することもできる。したがって、本発明の非限定的な態様によれば、本発明のポリペプチドは、細胞内で生産され、宿主細胞(特に、細菌細胞又は細菌細胞中の封入体)から単離されたアミノ酸配列、ポリペプチドである。本発明の非限定的な別の態様によれば、本発明のアミノ酸配列又はポリペプチドは、細胞外で生産され、宿主細胞を培養する培地から単離されたアミノ酸配列又はポリペプチドである。
これらの宿主細胞と共に使用するための好ましいが非限定的ないくつかのプロモーターとしては、WO 08/020079の139頁及び140頁で言及されているものが挙げられる。
これらの宿主細胞と共に使用するための好ましいが非限定的ないくつかの分泌配列としては、WO 08/020079の140頁で言及されているものが挙げられる。
本発明の宿主又は宿主細胞をトランスフォーメーションするのに適切な技術は、当業者には明らかであり、目的とする宿主細胞/宿主生物及び使用される遺伝子構築物に依存し得る。先と同様に、上述のハンドブック及び特許出願を参照のこと。
トランスフォーメーション後、本発明のヌクレオチド配列/遺伝子構築物によるトランスフォーメーションが成功した宿主細胞又は宿主生物を検出及び選択するための工程を実施してもよい。これは、例えば、本発明の遺伝子構築物中に存在する選択可能なマーカーに基づく選択工程でもよいし、又は例えば、特異的抗体を使用して本発明のアミノ酸配列を検出するこ含む工程でもよい。
トランスフォーメーションされた宿主細胞(これは、安定細胞株の形態でもよい)又は宿主生物(これは、安定突然変異体株又は菌株の形態でもよい)は、本発明のさらなる態様を形成する。
好ましくは、これらの宿主細胞又は宿主生物は、(宿主生物の場合:その少なくとも1つの細胞、部分、組織又は器官中に)本発明のポリペプチドを発現するか、又は(少なくとも)(例えば、適切な条件下で)発現することができるようなものである。本発明はまた、本発明の宿主細胞又は宿主生物のさらなる世代、後代及び/又は子孫を含み、これらは、例えば、細胞分裂又は有性若しくは無性生殖によって得られるものでもよい。
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを生産する/その発現を得るために、トランスフォーメーションされた宿主細胞又はトランスフォーメーションされた宿主生物は、一般に、(所望の)本発明のアミノ酸配列又はポリペプチドが発現/産生されるような条件下で保持、維持及び/又は培養してもよい。適切な条件は当業者には明らかであり、通常、使用される宿主細胞/宿主生物、及び(関連する)本発明のヌクレオチド配列の発現をコントロールするレギュレーション要素に依存するであろう。先と同様に、本発明の遺伝子構築物についての段落で上述したハンドブック及び特許出願を参照のこと。
一般に、適切な条件は、適切な培地の使用、適切な食料源及び/又は適切な栄養の存在、適切な温度の使用、並びに場合により適切な誘導因子又は化合物の存在(例えば、本発明のヌクレオチド配列が誘導性プロモーターのコントロール下にある場合)を含んでもよい;これらはすべて、当業者によって選択され得る。先と同様に、このような条件下で、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、構成的に発現してもよいし、一時的に発現してもよいし、又は適切に誘導される場合にのみ発現してもよい。
本発明のアミノ酸配列又はポリペプチドは、(最初に)未成熟型(上述)で生成され、次いで、使用される宿主細胞/宿主生物に応じて翻訳後修飾を受けてもよいことも当業者には明らかであろう。また、本発明のアミノ酸配列又はポリペプチドは、先と同様に、使用される宿主細胞/宿主生物に応じてグリコシル化されてもよい。
次いで、(分取)クロマトグラフィ法、及び/又は電気泳動技術、分画沈殿技術、アフィニティー技術(例えば、本発明のアミノ酸配列又はポリペプチドと融合した特定の切断可能なアミノ酸配列を使用する)、及び/又は分取免疫学的技術(すなわち、単離されるべきアミノ酸配列に対する抗体を使用する)などのそれ自体が公知のタンパク質の単離技術及び/又は精製技術を使用して、宿主細胞/宿主生物、及び/又は前記宿主細胞若しくは宿主生物を培養した培地から、本発明のアミノ酸配列又はポリペプチドを単離してもよい。
1.10 治療に対する反応性を評価するための方法及びキット
本発明はさらに、c−Metに関連する疾患又は障害に罹患している患者の所定治療に対する反応性を評価するための方法に関する。本発明者らは、驚くべきことに、治療開始前後に採取した患者試料における可溶性c−Metレベルの定量が、患者の前記治療に対する反応性の指標であるこ見出した。したがって、本発明は、c−Metに関連する疾患又は障害に罹患している患者の治療に対する反応性を評価するためのin vitro方法であって、
a)治療前に前記患者から第1の試料を提供し、前記第1の試料中の可溶性c−Metの量を測定する工程、
b)治療開始後に前記患者から第2の試料を提供し、前記第2の試料中の可溶性c−Metの量を測定する工程、
c)第1の試料中に存在する可溶性c−Metの量を、第2の試料中に見られる可溶性c−Metの量と比較する工程
を含み、
第2の試料中に見られる可溶性c−Metの量が第1の試料中の可溶性c−Metの量と比較して減少していることが、患者が前記治療に対して反応性であるこ示す方法を提供する。
当業者であれば、上記方法における「治療」という用語は、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)媒介性シグナル伝達、例えば、本明細書に記載される疾患及び従来技術で言及されるものを調節することができる任意のc−Metアンタゴニス含み得るこ認識するであろう。好ましくは、c−Metアンタゴニストは、抗c−Met抗体である。より好ましくは、c−Metアンタゴニストは、例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドなどのアミノ酸配列である。特に、c−Metアンタゴニストは、本発明のナノボディ、例えば配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187(表B−3)、又は本発明のポリペプチド若しくは構築物、例えば配列番号7〜12、103〜111、113、188及び142〜150、好ましくは配列番号7、106、113、188、143、146及び/又は147(表B−4を参照のこと)である。
「患者試料」は、可溶性c−Metの量を測定することができる患者由来の細胞、組織又は体液の任意の試料標本を意図する。このような患者試料の例としては、限定されないが、組織生検、血液、血清、血漿、脳脊髄液、気管支肺胞洗浄液、糞便試料及び尿試料が挙げられる。このような試料は、例えば、静脈穿刺を含む様々な技術によって患者から得ることができる。種々の患者試料を採取するための方法は、当技術分野において周知である。本発明の特定の態様では、患者試料は、血漿試料である。
本発明の方法は、治療前又はこのような治療の開始前の第1の患者試料、及びこのような治療の開始後(例えば、前記治療中及び/又は前記治療後)に採取した前記患者由来の第2の試料を評価して、例えば、腫瘍量の減少を評価するのに使用することができる。本発明の方法によって提供されるように、患者の第1及び第2の試料中の可溶性c−Metの量を測定することによって、臨床医は、疾患(例えば、ガン)が、例えば退行したか、及び患者が治療に対して反応性があるかを決定することができるであろう。ガンが治療開始後(例えば、治療中及び/又は治療後)に退縮した患者は、処置前に前記患者が有していた可溶性c−Metの量と比較して減少した量の可溶性c−Metを有するであろう。同様に、ガンが治療中に依然として安定している患者は、治療前に前記患者が有していたのと類似レベルの可溶性c−Metを有し、ガンが進行した患者は、増加した量の可溶性c−Metを有するであろう。臨床医は、患者の状態をモニタリングするために、及び処置を適切に個別化するためにこれらの測定結果をさらに利用して、所望の治療効果を達成し、望ましくない副作用を回避、限定若しくは軽減し、及び/又は一方では所望の治療効果を達成し、他方では望ましくない副作用を回避、限定若しくは軽減する適切なバランスを達成することができる。臨床医には明らかであるように、本発明にしたがって使用される処置レジメンの有効性は、関与する疾患又は障害について、それ自体が公知の任意の方法で決定及び/又は観察してもよい。本発明の方法は、例えば、治療の中止、投与薬物の変更、投与薬物の投与量の変更、又は患者のさらなるモニタリングなどの具体的な処置方針を患者に推奨するこ含むことができる。一般に、処置レジメンは、臨床医が決定したところにより、所望の治療効果が達成されるまで、及び/又は所望の治療効果を維持するべき間にわたって継続されるであろう。
可溶性c−Metを測定又は定量するための当技術分野において利用可能な任意の方法は、本発明の実施するのに使用することができる。本発明の可溶性c−Metの量は、核酸レベル又はタンパク質レベルで検出することができる。このような方法は当技術分野において周知であり、限定されないが、ウエスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロット、免疫アッセイ、例えば酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ、免疫細胞化学、免疫蛍光検査、フローサイトメトリー、化学発光アッセイ、電気化学発光アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション技術、核酸逆転写法、及び核酸増幅法が挙げられる。好ましくは、可溶性c−Metレベルは、例えば、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する抗体を使用して、タンパク質レベルで検出される。代表的な免疫アッセイは、適切にラベルすることができるモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を使用して、前記患者試料中の可溶性c−Metの量を測定するこ伴う。最も好ましくは、可溶性c−Metレベルは、本明細書で説明されるように、Meso Scale Discovery電気化学発光アッセイ又はELISAフォーマットを使用して測定される(実施例23を参照のこと)。
上記のように、本発明は、患者試料中に存在する可溶性c−Metの量を測定するための診断方法を提供する。したがって、本発明はまた、これらの方法を実施するためのキットを提供する。特に、本発明は、c−Metに関連する疾患又は障害に罹患している患者の治療に対する反応性を評価するためのキットであって、患者試料中の可溶性c−Metの量を測定するための1つ以上の試薬(例えば、抗体、核酸プローブなど)を含むキットを提供する。可溶性c−Metに結合する抗体を検出するための化学物質もキットに含めてもよい。ELISA免疫アッセイフォーマットで抗体を使用して可溶性c−Metの量を測定するための他の試薬を、本発明のキットに含めてもよい。
あるいは、又は加えて、キットはまた、本明細書に記載される疾患をモニタリングするのに使用してもよく、少なくとも1つの本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は医薬組成物を含んでもよい。
本発明のさらなる態様では、キットは、少なくとも1つの本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は医薬組成物、及び患者試料中の可溶性c−Metの量を測定するのに必要なすべての手段及び試薬を含んでもよい。本発明のすべてのキットは、所定のアイテム又はアイテムの組み合わせ、及びその包装材料を含んでもよい。キットはまた、使用説明書を含んでもよい。
本出願全体を通して引用されるすべての参考文献(論文の参考文献、発行特許、公開特許及び係属中の特許出願を含む)の全内容は、特に本明細書で参照している教示について、参照により本明細書に組み込まれる。
以下の非限定的な好ましい態様、図面及び実施例によって、本発明をこれからさらに説明する:
好ましい態様:
態様A−1:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し、及び/又はこれらに特異的に結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−2:本質的に単離された形態である、態様A−1に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−3:被験体に投与するための、前記被験体中に天然に存在しない、態様A−1又はA−2に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−4:10−5〜10−12モル/リットル又はそれ未満、好ましくは10−7〜10−12モル/リットル又はそれ未満、より好ましくは10−8〜10−12モル/リットルの解離定数(KD)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン。このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメインでもよい。
態様A−5:102M−1s−1〜約107M−1s−1、好ましくは103M−1s−1〜107M−1s−1、より好ましくは104M−1s−1〜107M−1s−1、例えば105M−1s−1〜107M−1s−1の会合速度(kon速度)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン。このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメインでもよい。
態様A−6:1s−1〜10−6s−1、好ましくは10−2s−1〜10−6s−1、より好ましくは10−3s−1〜10−6s−1、例えば10−4s−1〜10−6s−1の解離速度(koff速度)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン。このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメインでもよい。
態様A−7:500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば500pM未満の親和性で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン。このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメインでもよい。
態様A−8:500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば1nM未満の平均Ki及び50%以上、より好ましくは75%以上、さらにより好ましくは80%以上の平均HGF置換で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)上のHGF、特にヒトHGFを特異的に置換することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン。このような平均Ki及び/又は平均置換の値は、例えば、実験部分に記載されているアッセイで決定してもよい。
態様A−9:20nM未満の平均Ki及び70%以上の平均HGF置換で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)上のHGF、特にヒトHGFを特異的に置換することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン。このような平均Ki及び/又は平均置換の値は、例えば、実験部分に記載されているアッセイで決定してもよい。
態様A−10:4つのフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になる、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−11:免疫グロブリン配列である、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−12:(任意の適切な種由来の)天然に存在する免疫グロブリン配列であるか、又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列である、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−13:ヒト化免疫グロブリン配列、ラクダ化免疫グロブリン配列、又は親和性成熟などの技術によって得られた免疫グロブリン配列である、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−14:軽鎖可変ドメイン配列(例えば、VL配列)又は重鎖可変ドメイン配列(例えば、VH配列)から本質的になる、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−15:従来の四本鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列から本質的になるか、又は重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列から本質的になる、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−16:ドメイン抗体(又はドメイン抗体として使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメインとして使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン)、「dAb」(又はdAbとして使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン)、ナノボディ(限定されないが、VHH配列を含む)、VHH配列(限定されないが、VHH1型配列を含む)、又はVHH1型配列から本質的になる、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−17:ナノボディから本質的になる、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−18:
i)配列番号23〜29、102及び/又は187の免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)
そしてここで、
ii)好ましくは、Kabatナンバリングの11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ以上が、表A−1で言及されているホールマーク残基から選択されるナノボディから本質的になる、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−19:
i)配列番号26の免疫グロブリン単一可変ドメインと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)
そしてここで、
ii)好ましくは、Kabatナンバリングの11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ以上が、表A−1で言及されているホールマーク残基から選択される免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−20:配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187を有する免疫グロブリン単一可変ドメインからなる群より選択される免疫グロブリン単一可変ドメインと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)VHHであるVHHから本質的になる、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−21:ヒト化又は別の方法で配列最適化された免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−22:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対して結合するための少なくとも1つの結合部位に加えて、1つ以上のさらなるアミノ酸配列を含有する、前記態様のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様A−23:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し、及び/又はこれらに特異的に結合することができるVHH。
態様A−24:本質的に単離された形態である、態様A−1に記載のVHH。
態様A−25:被験体に投与するための、前記被験体中に天然に存在しない、態様A−1又はA−2に記載のVHH。
態様A−26:10−5〜10−12モル/リットル又はそれ未満、好ましくは10−7〜10−12モル/リットル又はそれ未満、より好ましくは10−8〜10−12モル/リットルの解離定数(KD)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができるVHH。このようなVHHは、特に、前記態様のいずれかに記載のVHHでもよい。
態様A−27:102M−1s−1〜約107M−1s−1、好ましくは103M−1s−1〜107M−1s−1、より好ましくは104M−1s−1〜107M−1s−1、例えば105M−1s−1〜107M−1s−1の会合速度(kon速度)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができるVHH。このようなVHHは、特に、前記態様のいずれかに記載のVHHでもよい。
態様A−28:1s−1〜10−6s−1、好ましくは10−2s−1〜10−6s−1、より好ましくは10−3s−1〜10−6s−1、例えば10−4s−1〜10−6s−1の解離速度(koff速度)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができるVHH。このようなVHHは、特に、前記態様のいずれかに記載のVHHでもよい。
態様A−29:500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば500pM未満の親和性で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができるVHH。このようなVHHは、特に、前記態様のいずれかに記載のVHHでもよい。
態様A−30:500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば1nM未満の平均Ki及び50%以上、より好ましくは75%以上、さらにより好ましくは80%以上の平均HGF置換で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)上のHGF、特にヒトHGFを特異的に置換することができるVHH。このような平均Ki及び/又は平均置換の値は、例えば、実験部分に記載されているアッセイで決定してもよい。
態様A−31:20nM未満の平均Ki及び70%以上の平均HGF置換で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)上のHGF、特にヒトHGFを特異的に置換することができるVHH。このような平均Ki及び/又は平均置換の値は、例えば、実験部分に記載されているアッセイで決定してもよい。
態様A−32:4つのフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になる、前記態様のいずれかに記載のVHH。
態様A−33:免疫グロブリン配列である、前記態様のいずれかに記載のVHH。
態様A−34:(任意の適切な種由来の)天然に存在する免疫グロブリン配列であるか、又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列である、前記態様のいずれかに記載のVHH。
態様A−35:親和性成熟などの技術によって得られたヒト化VHHである、前記態様のいずれかに記載のVHH。
態様A−36:ナノボディ又はVHH1型配列から本質的になる、前記態様のいずれかに記載のVHH。
態様A−37:VHH1型配列から本質的になる、前記態様のいずれかに記載のVHH。
態様A−38:
i)配列番号23〜29、102及び/又は187のVHHの少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)
そしてここで、
ii)好ましくは、Kabatナンバリングの11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ以上が、表A−1で言及されているホールマーク残基から選択されるVHHから本質的になる、前記態様のいずれかに記載のVHH。
態様A−39:
i)配列番号26及び/又は187と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)
そしてここで、
ii)好ましくは、Kabatナンバリングの11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ以上が、表A−1で言及されているホールマーク残基から選択されるVHHから本質的になる、前記態様のいずれかに記載のVHH。
態様A−40:
i)配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187を有するVHHの群より選択されるVHHと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するVHH(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される);又は
ii)配列番号7を有するVHHと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するVHH(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)
のいずれかであるVHHから本質的になる、前記態様のいずれかに記載のVHH。
態様A−41:ヒト化又は別の方法で配列最適化されたVHHから本質的になる、前記態様のいずれかに記載のVHH。
態様A−42:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対して結合するための少なくとも1つの結合部位に加えて、例えば、EGFRシグナル伝達を調節するポリペプチド及び/又はVEGFシグナル伝達を調節するポリペプチドなどの1つ以上のさらなるアミノ酸配列を含有する、前記態様のいずれかに記載のVHH。
CDRに基づく態様
態様B−1:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し、及び/又はこれらに特異的に結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメインであって、そして
a)配列番号51〜57及び158〜161、好ましくは配列番号51、160;
b)配列番号51〜57及び158〜161、好ましくは配列番号51、160と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
c)配列番号51〜57及び158〜161、好ましくは配列番号51、160と3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド;
d)配列番号67〜73及び168〜171、好ましくは配列番号67、170;
e)配列番号67〜73及び168〜171、好ましくは配列番号67、170と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
f)配列番号67〜73及び168〜171、好ましくは配列番号67、170と3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド;
g)配列番号83〜89及び178〜181、好ましくは配列番号83、180;
h)配列番号83〜89及び178〜181、好ましくは配列番号83、180と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
i)配列番号83〜89及び178〜181、好ましくは配列番号83、180と3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド;
からなる群より選択される1つ以上(好ましくは、1つ)のアミノ酸残基のストレッチ
又はそれらの任意の適切な組み合わせを含む、免疫グロブリン単一可変ドメイン。
このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、VHH(VHH1型配列を含む)又は配列最適化VHH、例えばヒト化、安定化及び/又は可溶化VHHでもよい。
態様B−2:前記アミノ酸残基のストレッチの少なくとも1つが、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対して結合するための抗原結合部位の一部を形成する、態様B−1に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様B−3:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し、及び/又はこれらに特異的に結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメインであって、そして
(i)第1のアミノ酸残基のストレッチがa)、b)又はc)のポリペプチドの1つに対応する場合、第2のアミノ酸残基のストレッチはd)、e)、f)、g)、h)又はi)のポリペプチドの1つに対応し;(ii)第1のアミノ酸残基のストレッチがd)、e)又はf)のポリペプチドの1つに対応する場合、第2のアミノ酸残基のストレッチはa)、b)、c)、g)、h)又はi)のポリペプチドの1つに対応し;(iii)第1のアミノ酸残基のストレッチがg)、h)又はi)のポリペプチドの1つに対応する場合、第2のアミノ酸残基のストレッチはa)、b)、c)、d)、e)又はf)のポリペプチドの1つに対応するように、
a)配列番号51〜57及び158〜161、好ましくは配列番号51、160;
b)配列番号51〜57及び158〜161、好ましくは配列番号51、160と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
c)配列番号51〜57及び158〜161、好ましくは配列番号51、160と3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド;
d)配列番号67〜73及び168〜171、好ましくは配列番号67、170;
e)配列番号67〜73及び168〜171、好ましくは配列番号67、170と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
f)配列番号67〜73及び168〜171、好ましくは配列番号67、170と3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド;
g)配列番号83〜89及び178〜181、好ましくは配列番号83、180;
h)配列番号83〜89及び178〜181、好ましくは配列番号83、180と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
i)配列番号83〜89及び178〜181、好ましくは配列番号83、180と3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド;
からなる群より選択される2つ以上のアミノ酸残基のストレッチを含む、免疫グロブリン単一可変ドメイン。
このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、VHH(VHH1型配列を含む)又は配列最適化VHH、例えばヒト化、安定化及び/又は可溶化VHHでもよい。
態様B−4:少なくとも2つのアミノ酸残基のストレッチが、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対して結合するための抗原結合部位の一部を形成する、態様B−3に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様B−5:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し、及び/又はこれらに特異的に結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメインであって、そして3つ以上のアミノ酸残基のストレッチを含み、第1のアミノ酸残基のストレッチが、
a)配列番号51〜57及び158〜161、好ましくは配列番号51、160のポリペプチド;
b)配列番号51〜57及び158〜161、好ましくは配列番号51、160のポリペプチドの少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
c)配列番号51〜57及び158〜161、好ましくは配列番号51、160のポリペプチドの少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド
からなる群より選択され;
第2のアミノ酸残基のストレッチが、
d)配列番号67〜73及び168〜171、好ましくは配列番号67、170のポリペプチド;
e)配列番号67〜73及び168〜171、好ましくは配列番号67、170のポリペプチドの少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
f)配列番号67〜73及び168〜171、好ましくは配列番号67、170のポリペプチドの少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド
からなる群より選択され;そして
第3のアミノ酸残基のストレッチが、
g)配列番号83〜89及び178〜181、好ましくは配列番号83、180のポリペプチド;
h)配列番号83〜89及び178〜181、好ましくは配列番号83、180のポリペプチドの少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
i)配列番号83〜89及び178〜181、好ましくは配列番号83、180のポリペプチドの少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド
からなる群より選択される、免疫グロブリン単一可変ドメイン。
このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、VHH(VHH1型配列を含む)又は配列最適化VHH、例えばヒト化、安定化及び/又は可溶化VHHでもよい。
態様B−6:少なくとも3つのアミノ酸残基のストレッチが、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に対して結合するための抗原結合部位の一部を形成する、態様B−5に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様B−7:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し、及び/又はこれらに特異的に結合することができる免疫グロブリン単一可変ドメインであって、前記免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR配列が、配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187の免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有する、免疫グロブリン単一可変ドメイン。
このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、VHH(VHH1型配列を含む)又は配列最適化VHH、例えばヒト化、安定化及び/又は可溶化VHHでもよい。
交差遮断又は交差遮断変異体
態様C−1:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し、そしてc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)への、配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187の免疫グロブリン単一可変ドメイン、又は配列番号7〜12、103〜111、113、188及び142〜150、好ましくは配列番号7、106、113、188、143、146及び/又は147のポリペプチドの結合を交差遮断する、免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチド。このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、態様A−1〜A−22及び/又は態様B−1〜B−7のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメインでもよい。また、好ましくは、このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができる。
態様C−2:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有し、そしてi)配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187の免疫グロブリン単一可変ドメイン、又はii)配列番号7〜12、103〜111、113、188及び142〜150、好ましくは配列番号7、106、113、188、143、146及び/又は147のポリペプチドの少なくとも1つによって、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)への結合を交差遮断される、免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチド。このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、態様A−1〜A−22及び/又は態様B−1〜B−7のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメインでもよい。また、好ましくは、このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができる。
態様C−3:前記免疫グロブリン単一可変ドメインが交差遮断する能力又は交差遮断される能力が、(例えば、以下の実施例部分に記載されている)置換アッセイで検出される、態様C−1又はC−2のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチド。
態様C−4:前記免疫グロブリン単一可変ドメインが交差遮断する能力又は交差遮断される能力が、実施例部分に示されているELISAアッセイ及び/又はアルファスクリーンアッセイで検出される、態様C−1〜C−3のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチド。
態様D−1:本質的に単離された形態である、態様B−1〜B−7又はC−1〜C−4のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様D−2:被験体に投与するための、前記被験体中に天然に存在しない、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、及び/又はD−1のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様D−3:10−5〜10−12モル/リットル又はそれ未満、好ましくは10−7〜10−12モル/リットル又はそれ未満、より好ましくは10−8〜10−12モル/リットルの解離定数(KD)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、及び/又はD−1〜D−2のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様D−4:102M1s1〜約107M−1s−1、好ましくは103M−1s−1〜107M−1s−1、より好ましくは104M−1s−1〜107M−1s−1、例えば105M−1s−1〜107M1s1の会合速度(kon速度)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、及び/又はD−1〜D−3のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様D−5:1s−1〜10−6s−1、好ましくは10−2s−1〜10−6s−1、より好ましくは10−3s−1〜10−6s−1、例えば10−4s−1〜10−6s−1の解離速度(koff速度)で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、及び/又はD−1〜D−4のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様D−6:500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば500pM未満の親和性で、c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に特異的に結合することができる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、及び/又はD−1〜D−5のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様D−1〜D−6に記載の免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、態様A−1〜A−22のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメインでもよい。
態様E−1:(任意の適切な種由来の)天然に存在する免疫グロブリン単一可変ドメインであるか、又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン単一可変ドメインである、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4及び/又はD−1〜D−6のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−2:配列最適化されている、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−3:可溶化されている、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D1〜D−6、及び/又はE−1又はE−2のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−4:(任意の適切な種由来の)天然に存在する免疫グロブリン配列であるか、又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列である、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−3のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−5:ヒト化免疫グロブリン配列、ラクダ化免疫グロブリン配列、又は親和性成熟などの技術によって得られた免疫グロブリン配列である、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−4のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−6:軽鎖可変ドメイン配列(例えば、VL配列)又は重鎖可変ドメイン配列(例えば、VH配列)から本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D1〜D−6、及び/又はE−1〜E−5のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−7:従来の四本鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列から本質的になるか、又は重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列から本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−6のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−8:ドメイン抗体(又はドメイン抗体として使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメインとして使用するのに適切なもの)、「dAb」(又はdAbとして使用するのに適切な免疫グロブリン単一可変ドメイン)、又はナノボディ(限定されないが、VHH配列又はVHH1型配列を含む)から本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−7のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−9:ナノボディ(限定されないが、VHH配列又はVHH1型配列を含む)から本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−8のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−10:
i)本明細書に記載される免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)
そしてここで、
ii)好ましくは、Kabatナンバリングの11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ以上が、表A−1で言及されているホールマーク残基から選択される免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−9のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−11:
i)配列番号23〜29、102及び/又は187、好ましくは配列番号26及び/又は187の免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)
そしてここで、
ii)好ましくは、Kabatナンバリングの11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ以上が、表A−1で言及されているホールマーク残基から選択される免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−10のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−12:ヒト化免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−11のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−13:CDR配列によって形成される、結合のための少なくとも1つの結合部位に加えて、他の抗原、タンパク質又は標的に対して結合するための1つ以上のさらなる結合部位を含有する、態様B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−11のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
態様E−1〜E−13に記載の免疫グロブリン単一可変ドメインは、特に、態様A−1〜A−22のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメインでもよい。
ポリペプチド
態様K−1:1つ以上(好ましくは、1つ)の態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−13に記載の免疫グロブリン単一可変ドメインを含み、場合により1つ以上のペプチドリンカーをさらに含む、ポリペプチド。
態様K−2:血清アルブミンに指向性を有する1つ以上(好ましくは、1つ)の免疫グロブリン単一可変ドメインをさらに含む、態様K−1に記載のポリペプチド。
態様K−3:血清アルブミンに指向性を有する前記免疫グロブリン単一可変ドメインが、ヒト血清アルブミンに指向性を有する、態様K−1又はK−2のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−4:血清アルブミンに指向性を有する前記1つ以上(好ましくは、1つ)の免疫グロブリン単一可変ドメインが、配列番号5又は101を有する免疫グロブリン単一可変ドメインである、態様K−1〜K−3のいずれかに記載のポリペプチド。
核酸
態様M−1:態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、核酸又はヌクレオチド配列。
態様M−2:配列番号30〜42、好ましくは配列番号30(表B−6)を有する、核酸又はヌクレオチド配列。
宿主細胞
態様N−1:態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチドを発現するか若しくは適切な環境下で発現することができ;及び/又は態様M−1又はM−2に記載の核酸又はヌクレオチド配列を含む、宿主又は宿主細胞。
組成物
態様O−1:少なくとも1つの態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、又は少なくとも1つの態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチド、又は態様M−1又はM−2に記載の核酸又はヌクレオチド配列を含む、組成物。
態様O−2:医薬組成物である、態様O−1に記載の組成物。
態様O−3:少なくとも1つの薬学的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤及び/又はアジュバントをさらに含み、場合により1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を含む医薬組成物である、態様O−2に記載の組成物。
本発明の薬剤及び/又は組成物の作製
態様P−1:態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチドを生産するための方法であって、該方法が、少なくとも
a)適切な宿主細胞若しくは宿主生物又は別の適切な発現系で、態様M−1、又は態様M−2に記載の核酸又はヌクレオチド配列を発現させる工程;
場合により続いて:
b)態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチドを単離及び/又は精製する工程
を含む、方法。
態様P−2:態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチドを生産するための方法であって、該方法が、少なくとも
a)態様N−1に記載の宿主又は宿主細胞を、前記宿主又は宿主細胞が、少なくとも1つの態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチドを発現及び/又は産生するような条件下で培養及び/又は維持する工程;
場合により続いて:
b)態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチドを単離及び/又は精製する工程
を含む、方法。
スクリーニング方法
態様Q−1:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインをスクリーニングするための方法であって、
a)免疫グロブリン単一可変ドメインをコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリを提供する工程;及び
b)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合することができ、及び/又はこれらに対する親和性を有し、並びに本発明のナノボディ、例えば配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187(表B−3)、又は本発明のポリペプチド若しくは構築物、例えば配列番号7〜12、103〜111、113、188及び142〜150、好ましくは配列番号7、106、113、188、143、146及び/又は147(表B−4を参照のこと)によって交差遮断されるか、又はこれらを交差遮断する免疫グロブリン単一可変ドメインをコードする核酸配列について、前記核酸配列のセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程;及び
c)前記核酸配列を単離し、続いて前記免疫グロブリン単一可変ドメインを発現させる工程
を少なくとも含む、方法。
態様Q−2:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインをスクリーニングするための方法であって、
a)免疫グロブリン単一可変ドメインをコードするアミノ酸配列のセット、コレクション又はライブラリを提供する工程;及び
b)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合することができ、及び/又はこれらに対する親和性を有し、並びに本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば配列番号23〜29、102及び187、好ましくは配列番号26及び/又は187(表B−3)、又は本発明のポリペプチド若しくは構築物、例えば配列番号7〜12、103〜111、113、188及び142〜150、好ましくは配列番号7、106、113、188、143、146及び/又は147(表B−4を参照のこと)によって交差遮断されるか、又はこれらを交差遮断する前記免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程;及び
c)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合し、及び/又はこれらに対する親和性を有することができる前記アミノ酸配列を単離する工程
を少なくとも含む、方法。
態様Q−3:c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインをスクリーニングするための方法であって、
a)VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリを提供する工程;及び
b)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合し、及び/又はこれらに対する親和性を有することができる免疫グロブリン単一可変ドメインについて、前記VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程;及び
c)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合し、及び/又はこれらに対する親和性を有することができるアミノ酸配列を単離する工程
を少なくとも含む、方法。
本発明の薬剤の使用
態様R−1:ガン及び/又は炎症性疾患(例えば、本明細書で言及されるものなど)を予防及び/又は処置するための方法であって、該方法が、少なくとも1つの態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチド;又は態様O−2又はO−3に記載の組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
態様R−2:その生物学的若しくは薬理学活性により、及び/又はc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)が関与する生物学的経路若しくはシグナル伝達によりc−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に関連する少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は処置するための方法であって、該方法が、少なくとも1つの態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチド;又は態様O−2又はO−3に記載の組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
態様R−3:態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチド;又は態様O−2又はO−3に記載の組成物の少なくとも1つを、それを必要とする被験体に投与することによって予防及び/又は処置することができる少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は処置するための方法であって、該方法が、少なくとも1つの少なくとも1つの態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチド;又は態様O−2又はO−3に記載の組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
態様R−4:免疫治療のための方法であって、該方法が、少なくとも1つの態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチド;又は態様O−2又はO−3に記載の組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
態様R−5:多発性骨髄腫を含む骨転移ガンに罹患している被験体における骨疾患及び/又は溶骨性病変を予防及び/又は処置するための方法であって、該方法が、少なくとも1つの態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチド;又は態様O−2又はO−3に記載の組成物の薬学的活性量を、該被験体に投与することを含む、方法。
態様R−6:態様R−1〜R−3に記載の方法の1つ以上における使用のための、態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチド;又は態様O−2又はO−3に記載の医薬組成物。
態様R−7:ガンを診断、予防及び/又は処置するための、態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチド。
態様R−8:多発性骨髄腫を含む骨転移ガンにおける骨疾患及び/又は溶骨性病変を診断、予防及び/又は処置するための、c−Metに対するISVD及び/又は態様K−1〜K−4のいずれかに記載のポリペプチド。
態様S−1 態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれか1つに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、及びVEGFシグナル伝達を調節するポリペプチドを含む、多重特異性構築物。
態様S−2 態様A−23〜A−44のいずれか1つに記載のVHH、及びVEGFシグナル伝達を調節するポリペプチドを含む、多重特異性構築物。
態様S−3 前記VEGFシグナル伝達を調節するポリペプチドが、免疫グロブリン単一可変ドメイン、好ましくはドメイン抗体、より好ましくはdAbである、態様S−1又はS−2に記載の多重特異性構築物。
態様S−4 前記VEGFシグナル伝達を調節するポリペプチドが、VHH、さらにより好ましくはナノボディである、態様S−1又はS−2に記載の多重特異性構築物。
態様S−5 前記VEGFシグナル伝達を調節するポリペプチドが、WO 08/101985に記載されているポリペプチド、特に配列番号441〜677のいずれか1つである、態様S−3又はS−4に記載の多重特異性構築物。
態様S−6 1つ以上のペプチドリンカーをさらに含む、態様S−1〜S−5のいずれかに記載の多重特異性構築物。
態様S−7 血清アルブミンに指向性を有する1つ以上(好ましくは、1つ)の免疫グロブリン単一可変ドメインをさらに含む、態様S−1〜S−6のいずれかに記載の多重特異性構築物。
態様S−8 前記血清アルブミンに指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインが、ヒト血清アルブミンに指向性を有する、態様S−7に記載の多重特異性構築物。
態様S−9 前記血清アルブミンに指向性を有する1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインが、配列番号5又は101を有する免疫グロブリン単一可変ドメインである、態様S−7〜S−8のいずれかに記載の多重特異性構築物。
態様S−10 ガン、好ましくは多発性骨髄腫又は非小細胞肺ガンの診断、予防又は処置における使用のための、態様S−1〜S−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物。
態様S−11 態様S−1〜S−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物をコードする、核酸又はヌクレオチド配列。
態様S−12 態様S−1〜S−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物を発現する、宿主細胞。
態様S−13 態様S−1〜S−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物を含む、組成物、好ましくは医薬組成物。
態様S−14 態様S−11に記載の核酸又はヌクレオチド配列を含む、組成物、好ましくは医薬組成物。
態様S−15 態様S−12に記載の宿主細胞を含む、組成物、好ましくは医薬組成物。
態様S−16 本明細書に記載されるガン、好ましくは多発性骨髄腫又は非小細胞肺ガンを診断、処置及び/又は予防するための方法であって、態様S−1〜S−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物を使用することを必須工程として含む、方法。
態様X−1 態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれか1つに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、及びEGFRシグナル伝達を調節するポリペプチドを含む、多重特異性構築物。
態様X−2 態様A−23〜A−44のいずれか1つに記載のVHH、及びEGFRシグナル伝達を調節するポリペプチドを含む、多重特異性構築物。
態様X−3 前記EGFRシグナル伝達を調節するポリペプチドが、免疫グロブリン単一可変ドメイン、好ましくはドメイン抗体、より好ましくはdAbである、態様X−1又はX−2に記載の多重特異性構築物。
態様X−4 前記EGFRシグナル伝達を調節するポリペプチドが、VHH、さらにより好ましくはナノボディである、態様X−1又はX−2に記載の多重特異性構築物。
態様X−5 前記EGFRシグナル伝達を調節するポリペプチドが、WO 04/041867に記載されているポリペプチド、特に配列番号23〜44、WO 05/044858に記載されているポリペプチド、特に配列番号1〜56及び62〜71、及び/又はWO 07/042289に記載されているポリペプチド、特に配列番号80〜93及び110〜143である、態様X−3又はX−4に記載の多重特異性構築物。
態様X−6 1つ以上のペプチドリンカーをさらに含む、態様X−1〜X−5のいずれかに記載の多重特異性構築物。
態様X−7 血清アルブミンに指向性を有する1つ以上(好ましくは、1つ)の免疫グロブリン単一可変ドメインをさらに含む、態様X−1〜X−6のいずれかに記載の多重特異性構築物。
態様X−8 前記血清アルブミンに指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインが、ヒト血清アルブミンに指向性を有する、態様X−7に記載の多重特異性構築物。
態様X−9 前記血清アルブミンに指向性を有する1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインが、配列番号5又は101を有する免疫グロブリン単一可変ドメインである、態様X−7〜X−8のいずれかに記載の多重特異性構築物。
態様X−10 ガン、好ましくは多発性骨髄腫又は非小細胞肺ガンの診断、予防又は処置における使用のための、態様X−1〜X−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物。
態様X−11 態様X−1〜X−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物をコードする、核酸又はヌクレオチド配列。
態様X−12 態様X−1〜X−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物を発現する、宿主細胞。
態様X−13 態様X−1〜X−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物を含む、組成物、好ましくは医薬組成物。
態様X−14 態様X−11に記載の核酸又はヌクレオチド配列を含む、組成物、好ましくは医薬組成物。
態様X−15 態様X−12に記載の宿主細胞を含む、組成物、好ましくは医薬組成物。
態様X−16 本明細書に記載されるガン、好ましくは多発性骨髄腫又は非小細胞肺ガンを診断、処置及び/又は予防するための方法であって、態様X−1〜X−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物を使用することを必須工程として含む、方法。
態様Y−1 態様A−1〜A−22、B−1〜B−7、C−1〜C−4、D−1〜D−6、E−1〜E−13のいずれか1つに記載の免疫グロブリン単一可変ドメインと、VEGFシグナル伝達を調節するポリペプチド、及びEGFRシグナル伝達を調節するポリペプチドを含む、多重特異性構築物。
態様Y−2 態様A−23〜A−44のいずれか1つに記載のVHHと、VEGFシグナル伝達を調節するポリペプチド、及びEGFRシグナル伝達を調節するポリペプチドを含む、多重特異性構築物。
態様Y−3 前記VEGFシグナル伝達を調節するポリペプチドが、免疫グロブリン単一可変ドメイン、好ましくはドメイン抗体、より好ましくはdAbであり、前記EGFRシグナル伝達を調節するポリペプチドが、免疫グロブリン単一可変ドメイン、好ましくはドメイン抗体、より好ましくはdAbである、態様Y−1又はY−2に記載の多重特異性構築物。
態様Y−4 前記VEGFシグナル伝達を調節するポリペプチドが、VHH、さらにより好ましくはナノボディであり、前記EGFRシグナル伝達を調節するポリペプチドが、VHH、さらにより好ましくはナノボディである、態様Y−1又はY−2に記載の多重特異性構築物。
態様Y−5 前記VEGFシグナル伝達を調節するポリペプチドが、WO 08/101985に記載されているポリペプチド、特に配列番号441〜677のいずれか1つであり、前記EGFRシグナル伝達を調節するポリペプチドが、WO 04/041867に記載されているポリペプチド、特に配列番号23〜44のいずれか1つ、WO 05/044858に記載されているポリペプチド、特に配列番号1〜56及び62〜71のいずれか1つ、及び/又はWO 07/042289に記載されているポリペプチド、特に配列番号80〜93及び110〜143のいずれか1つである、態様Y−3又はY−4に記載の多重特異性構築物。
態様Y−6 1つ、2つ又はそれ以上のペプチドリンカーをさらに含む、態様Y−1〜Y−5のいずれかに記載の多重特異性構築物。
態様Y−7 血清アルブミンに指向性を有する1つ以上(好ましくは、1つ)の免疫グロブリン単一可変ドメインをさらに含む、態様Y−1〜Y−6のいずれかに記載の多重特異性構築物。
態様Y−8 前記血清アルブミンに指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインが、ヒト血清アルブミンに指向性を有する、態様Y−7に記載の多重特異性構築物。
態様Y−9 前記血清アルブミンに指向性を有する1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインが、配列番号5又は101を有する免疫グロブリン単一可変ドメインである、態様Y−7〜Y−8のいずれかに記載の多重特異性構築物。
態様Y−10 ガン、好ましくは多発性骨髄腫又は非小細胞肺ガンの診断、予防又は処置における使用のための、態様Y−1〜Y−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物。
態様Y−11 態様Y−1〜Y−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物をコードする、核酸又はヌクレオチド配列。
態様Y−12 態様Y−1〜Y−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物を発現する、宿主細胞。
態様Y−13 態様Y−1〜Y−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物を含む、組成物、好ましくは医薬組成物。
態様Y−14 態様Y−11に記載の核酸又はヌクレオチド配列を含む、組成物、好ましくは医薬組成物。
態様Y−15 態様Y−12に記載の宿主細胞を含む、組成物、好ましくは医薬組成物。
態様Y−16 本明細書に記載されるガン、好ましくは多発性骨髄腫又は非小細胞肺ガンを診断、処置及び/又は予防するための方法であって、態様Y−1〜Y−9のいずれか1つに記載の多重特異性構築物を使用することを必須工程として含む、方法。
さらなる態様:
1.(例えば、実施例部分で概説した条件下において)10nM未満、より好ましくは5nM未満、より好ましくは1nM未満、さらにより好ましくは500pM未満、最も好ましくは100pM未満のIC50及び60%〜80%又はそれ以上、より好ましくは90%以上の平均HGF置換で、ヒトc−Met(配列番号1)からHGFを特異的に置換することができる免疫グロブリン単一可変ドメイン。
2.式1
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4(1);
(式中、FR1〜FR4は、フレームワーク領域1〜4を指し、免疫グロブリン単一可変ドメインのフレームワーク領域であり;そして
ここでCDR1は、
a)配列番号160及び51、
b)配列番号160及び51と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド、
c)配列番号160及び51と3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド
からなる群より選択され、そして
ここでCDR2は、
d)配列番号170及び67;
e)配列番号170及び67と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
f)配列番号170及び67と3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド
からなる群より選択され;そして
ここでCDR3は、
g)配列番号180及び83;
h)配列番号180及び83と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
i)配列番号180及び83と3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するポリペプチド
からなる群より選択される)を有するアミノ酸配列を含む、態様1に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
3.フレームワーク領域(FR)が、配列番号189、59、190及び/又は185のFRと80%超(より好ましくは85%、さらにより好ましくは90%、最も好ましくは95%)の配列同一性を有する、態様1〜2のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
4.式1
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4(1);
(式中、FR1〜FR4は、フレームワーク領域1〜4を指し、免疫グロブリン単一可変ドメインのフレームワーク領域であり;ここでCDR1は、配列番号160又は51であり、CDR2は、配列番号170又は67であり;そしてCDR3は、配列番号180又は83である)を有するアミノ酸配列を含む、態様1に記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン。
5.態様1〜4のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、ポリペプチド。
6.配列番号23〜29、102又は187と80%超(より好ましくは85%、さらにより好ましくは90%、最も好ましくは95%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドからなる群より選択される、態様5に記載のポリペプチド。
7.配列番号26又は187と80%超(より好ましくは85%、さらにより好ましくは90%、最も好ましくは95%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドからなる群より選択される、態様5又は6のいずれかに記載のポリペプチド。
8.例えば、Alb11(配列番号5)、又はAlb23(配列番号101)などのヒト血清アルブミンに結合する免疫グロブリン単一可変ドメインをさらに含む、態様5〜7のいずれかに記載のポリペプチド。
9.配列番号7〜12、103〜111、113、188又は142〜150と80%超(より好ましくは85%、さらにより好ましくは90%、最も好ましくは95%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドからなる群より選択される、態様5〜8のいずれかに記載のポリペプチド。
10.配列番号7、106、113、188、143、146又は147と80%超(より好ましくは85%、さらにより好ましくは90%、最も好ましくは95%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドからなる群より選択される、態様5〜9のいずれかに記載のポリペプチド。
11.(例えば、実施例2.3.1の)アルファスクリーンアッセイにおけるIC50が1.2nM以下である、態様1〜4のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、又は態様5〜10のいずれかに記載のポリペプチド。
12.(例えば、実施例2.3.1の)アルファスクリーンアッセイにおけるIC50が500pM以下である、態様1〜4のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン、又は態様5〜10のいずれかに記載のポリペプチド。
13.i)態様1〜4、11、又は12のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン;又はii)態様5〜10のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、核酸配列。
14.i)態様1〜4、11、又は12のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン;又はii)態様5〜10のいずれかに記載のポリペプチド、及び場合により薬学的に許容しうる賦形剤を含む、医薬組成物。
15.ガンにおける使用のための、態様1〜4、11、又は12のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン;又はii)態様5〜10のいずれかに記載のポリペプチド。
16.態様1〜4、11、又は12のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン;又はii)態様5〜10のいずれかに記載のポリペプチドを生産するための方法であって、該方法が、
a)適切な宿主細胞若しくは宿主生物又は別の適切な発現系で、態様13に記載の核酸又はヌクレオチド配列を発現させる工程;
場合により続いて:
b)前記免疫グロブリン単一可変ドメイン又は前記ポリペプチドを単離及び/又は精製する工程
を少なくとも含む、方法。
17.c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に指向性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインをスクリーニングするための方法であって、
a)VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリを提供する工程;及び
b)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合し、及び/又はこれらに対する親和性を有することができる免疫グロブリン単一可変ドメインについて、前記VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインのセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程;及び
c)c−Met、特にヒトc−Met(配列番号1)に結合し、及び/又はこれらに対する親和性を有することができるアミノ酸配列を単離する工程
を少なくとも含む、方法。
18.c−Metに関連する疾患又は障害に罹患している患者の治療に対する反応性を評価するためのin vitro方法であって、
a)治療前に前記患者から第1の試料を提供し、前記第1の試料中の可溶性c−Metの量を測定する工程、
b)治療開始後に前記患者から第2の試料を提供し、前記第2の試料中の可溶性c−Metの量を測定する工程、
c)第1の試料中に存在する可溶性c−Metの量を、第2の試料中に見られる可溶性c−Metの量と比較する工程
を含み、
第2の試料中に見られる可溶性c−Metの量が第1の試料中の可溶性c−Metの量と比較して減少していることが、患者が前記治療に対して反応性であることを示す、方法。
19.前記試料が、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、糞便試料、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液又は組織生検である、態様18に記載の方法。
20.免疫アッセイ、化学発光アッセイ又は電気化学発光アッセイを使用して可溶性c−Metの量を測定する、態様18に記載の方法。
21.治療が、i)態様1〜4、11、又は12のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン;ii)態様5〜10のいずれかに記載のポリペプチド;又はiii)態様14に記載の医薬組成物を投与することを含む、態様18に記載の方法。
22.少なくとも1つのc−Metに関連する疾患又は障害を処置するための方法であって、態様14に記載の医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
23.c−Metに関連する疾患又は障害に罹患している患者の治療に対する反応性を評価するためのキットであって、態様18に記載の方法にしたがって、患者における可溶性c−Metの量を測定するための1つ以上の試薬を含む、キット。
24.i)態様1〜4、11、又は12のいずれかに記載の免疫グロブリン単一可変ドメイン;又はii)態様5〜10のいずれかに記載のポリペプチド;又はiii)態様14に記載の医薬組成物をさらに含む、態様22に記載のキット。
実施例1:c−Met遮断ナノボディの同定
免疫グロブリン単一可変ドメイン/ドメイン(domains/domain)は、実験部分では主にナノボディ/ナノボディ(Nanobodies/Nanobody)と称される。
1.1 免疫感作
標準的なプロトコールにしたがって、完全フロイントアジュバント(0日目)又は不完全フロイントアジュバント(免疫感作後)(Difco, BD Biosciences, San Jose, CA, USA)で製剤化したヒト(h;hu)c−Met/Fc(hc−Met/Fc又はhu c−Met/Fc;c−Met細胞外ドメインをヒトFcに遺伝子融合し、NS0マウス骨髄腫細胞で発現させたもの;R&D Systems, Catalogue number 358-MT/CF, Minneapolis, MN, USA、配列番号2も参照のこと)を頸部に4回筋肉内注射(2週間間隔で100又は50μg/用量)することによって、3匹のラマ(No.450、451及び452、llama glama)を免疫感作した。
0日目及び35日目に、hu c−Metに対する抗体力価をELISAによって定義するために、リコンビナントタンパク質で免疫感作したラマから血清を採取した。96-well Maxisorp plates (Nunc, Wiesbaden, Germany)をhu c−Met/Fc又は無関係なFcでコーティングした。ブロッキングし、血清試料の連続希釈物を追加した後、マウス抗ラマIgG1、2及び3モノクローナル抗体(Daley et al., Clin Diagn Lab Immunol. 2005 Mar;12(3):380-6.)、続いてHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)コンジュゲーションウサギ抗マウスIgG(Dako, Glostrup, Denmark)を使用し、続いて基質TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(tetramentylbenzidine))(Promega, Madison, WI, USA)の存在下で酵素反応を行って、ラマ抗hu c−Met抗体の存在を実証した。
0日目及び50日目に、c−Metを発現するA549肺腫瘍細胞(ATCCナンバーCCL−185)又はc−MetネガティブコントロールCHO K1(ATCCナンバーCCL−61)細胞に対する抗体力価をFACSによって定義するために、リコンビナントタンパク質で免疫感作したラマから血清を採取した。RPMI 1640+10%ウシ胎仔血清+1%ペニシリン/ストレプトマイシンで、細胞を培養した。希釈した血清試料に細胞を再懸濁した。洗浄後、ヤギ抗ラマIgG(Bethyl Laboratories, Montgomery, TX, USA)及びPEコンジュゲーションロバ抗ヤギIgG(Jackson Immuno Research, West Grove, PA, USA)を使用して、FACSArray(商標)(BD Biosciences)で、細胞表面に結合した抗c−Metラマ抗体の存在を検出した。
ELISAでは、3匹のラマすべてが、hc−Metに対するIgG1、IgG2及びIgG3免疫グロブリンクラスで、優れた特異的反応を示した。FACSでは、c−Metを発現するA549腫瘍細胞に対する血清反応は、3匹のラマすべてで明らかに検出可能であった。細胞ではなくリコンビナントタンパク質でラマを免疫感作したので、観察されたシグナルは、c−Metに対して特異的であると考えることができる。
1.2 ライブラリの構築
免疫感作したラマ由来の血液試料を46日目及び50日目に採取し、製造業者の説明書にしたがってFicoll-Paque Plus (GE Healthcare, Uppsala, Sweden)を使用して、末梢血単核細胞を調製した。製造業者の説明書にしたがってRneasy Midi Kit (Qiagen, Venlo, The Netherlands)を使用して、末梢血単核細胞から全RNAを抽出した。RT−PCRの出発材料として全RNA試料を使用して、ナノボディをコードする遺伝子フラグメントを増幅した。ヘルパーファージによる感染後に、ナノボディを遺伝子III融合タンパク質としてファージ粒子表面上にディスプレイするリコンビナントファージ粒子の生産を可能にする自作のファージミドベクター(pAX50)に、これらのフラグメントをクローニングした。標準的な方法にしたがってファージを調製し、滅菌ろ過した後、20%グリセロール中に−80℃で保存した。
1.3 選択
ラマ450、451及び452から得られたファージライブラリを異なる選択戦略に使用した。
選択戦略1:1回目の選択ラウンド(又は、細胞での選択後の2回目のラウンド)では、1又は100nMのビオチン化ヒトc−Met/Fc(R&D Systems;製造業者の説明書にしたがってSulfo-NHS-LC-Biotin(Pierce, Rockford, IL, USA)を使用して、in houseでビオチン化したもの)を、ファージライブラリと共にインキュベーションし、続いてStreptavidin Dynabeads (Invitrogen)で捕捉した。広範囲に洗浄した後、ビーズに結合したファージを1mg/mLのトリプシンで溶出させた。
選択戦略2:1回目の選択ラウンド(又は、リコンビナント抗原での選択後の2回目のラウンド)では、c−Metを内因的に発現する細胞106個/mLのヒトA549細胞を、ファージライブラリと共にインキュベーションした。広範囲に細胞を洗浄した後、細胞に結合したファージを1mg/mLのトリプシンで溶出させた。
異なる戦略の選択からのファージアウトプットをE. coli TG1細胞でレスキューした。コロニーを剥がし、96ディープウェルプレート(容量1mL/ウェル)で成長させた。IPTGを成長培地に追加することによって、C末端にc−myc及びHis6がタグ付けされた可溶性ナノボディの発現を誘導した。標準的な方法(WO 94/04678)にしたがって、ペリプラズム抽出物(容量:約100μl)を調製した。
1.4 フローサイトメトリーアッセイにおけるc−Met結合ナノボディのスクリーニング
c−Metを発現するA549腫瘍細胞(ATCC No.CCL−185)を使用してFACSアッセイで、細胞によって発現されたc−Metの結合について、ペリプラズム抽出物をスクリーニングした。1:10希釈したペリプラズム抽出物中で2×105個のA549細胞を4℃で30分間インキュベーションし、次いで十分に洗浄した。次に、細胞を、2μg/mlの抗c−myc抗体と共に4℃で30分間インキュベーションし、再度洗浄し、ヤギ抗マウスPEラベル抗体(1:100)と共に4℃で30分間インキュベーションした。試料を洗浄し、5nMのTOPRO3 (Molecular Probes cat# T3605)を補充したFACS緩衝液(10%FBS(Sigma製)及び0.05%アジ化ナトリウム(Merck製)を含むD−PBS(Gibco製))に再懸濁した。次いで、細胞懸濁液をFACS Cantoで分析した。前方散乱/側方散乱及びTOPRO3チャネル蛍光パラメータを使用して、ゲーティングをインタクトな生細胞に設定した。生細胞のPEチャネル手段のチャネル蛍光値が、コントロール実験(ナノボディ染色を省略するか、又は無関係な特異的結合ナノボディを含む)で得られたものよりも高いことは、クローンが細胞株に結合したことを示す。
1.5 アルファスクリーンアッセイにおけるHGF遮断ナノボディのスクリーニング
ナノボディのリガンド遮断能を評価するために、ペリプラズム抽出物をアルファスクリーンアッセイでスクリーニングした。このアッセイは、生体分子にコンジュゲーションすることができるドナービーズ及びアクセプタービーズの使用に依拠する。分子間の生物学的な相互作用がビーズを接近させると、680nmのレーザー励起によりドナービーズ中の光感作物質によって生成された励起一重項酸素分子が拡散して、アクセプタービーズ中の化学発光物質と反応し、これが、520〜620nmで発光するフルオロフォアをさらに活性化する。ナノボディがc−Met/Fcに対するHGFの結合を阻害する場合、蛍光シグナルが減少するであろう。
製造業者の説明書にしたがって、アクセプタービーズ(Perkin Elmer, Waltham, MA, USA)を抗ヒトFcナノボディ(in houseで調製したもの)とコンジュゲーションした。ペリプラズム抽出物を0.26nMのビオチン化HGFと共に室温で15分間プレインキュベーションした。次に、抗ヒトFcコンジュゲーションアクセプタービーズ及びc−Met/Fc(最終濃度0.26nM)を追加し、室温で1時間インキュベーションした。第2に、ストレプトアビジンドナービーズ(Perkin Elmer)を追加し、さらに1時間インキュベーションした。励起波長680nm及び発光波長520nmを使用してEnVision Multilabel Plate Reader (Perkin Elmer)でプレートを読み取ることによって、蛍光を測定した。シグナルの減少は、c−Metに対するビオチン化HGFの結合が、ペリプラズム抽出物中で発現しているナノボディによって遮断されることを示す。
ナノボディがc−MetとHGFとの相互作用を遮断するか否かを分類するために、任意50%カットオフを選択した。
フローサイトメトリースクリーニング又はアルファスクリーンアッセイのいずれかでポジティブとスコア化したナノボディを配列決定した。それらのCDR3配列に基づいて、クローンを配列ファミリーにクラスタ化した。46種の異なるファミリーのc−Metバインダー及び/又はHGFブロッカーを同定した。
1.6 HGF誘導性のc−Metリン酸化を遮断するナノボディのスクリーニング
フローサイトメトリーアッセイ又はアルファスクリーンアッセイのいずれかでポジティブであったナノボディのペリプラズム抽出物を、リン酸化アッセイでさらにスクリーニングした。このアッセイにより、HGF駆動性のc−Metリン酸化及び下流のシグナル伝達を阻害するナノボディを同定することが可能になる。c−Metに対するHGFの結合を阻害することによって、又はc−Metの二量体化を阻害することによって、c−Metリン酸化の阻害が起こり得る。Mesoscale Discovery kit (MSD, Cat # K15126A-3, Mesoscale Discovery, Gaithersburg, MD)を使用して、リン酸化c−Met(Tyr 1349)を検出した。このキットにより、単一のウェルで、全c−Met及びTyr 1349リン酸化c−Metの両方を検出することが可能になる。
A549腫瘍細胞(ATCC No.CCL−185)を、1ウェルあたり細胞20.000個の密度で播種した。2日後、細胞培養培地を無血清培地に交換し、細胞を一晩血清飢餓させた。翌日、細胞を、ペリプラズム抽出物の1/5希釈物(全容量100μl中、20μl)と共に30分間インキュベーションしてから、1nMのHGF(Peprotech)を追加し、37℃でさらに15分間インキュベーションした。次いで、細胞を洗浄し、RIPA緩衝液(10xRIPA緩衝液、Cell Signaling Technology)に溶解させた。溶解物をc−Met MSDアッセイプレートに移した。未結合の溶解材料を洗い流した後、スルホタグ付抗体をで結合リン酸化c−Met及び全c−Metを検出し、Sector Imager 2400 (Meso Scale Discovery)でプレートを読み取った。ポジティブコントロールとして、抗c−Met抗体h224G11(Pierre-Fabre Institute)(WO 2009/007427、図65及び図72)のいくつかの複製物を、各アッセイプレートの無関係なペリプラズム抽出物(最終1/5希釈)にスパイクした。
次いで、以下の式:
にしたがって推奨標準化比(NR)として、試料中のリン酸化タンパク質の割合を計算した。
最大シグナル(1nMのHGF+無関係なペリプラズム材料(1/5希釈)とした場合のいくつかの複製物の平均)及びネガティブコントロール(HGF刺激なし+無関係なペリプラズム材料(1/5希釈)とした場合のいくつかの複製物の平均)に関して、阻害率を以下のように計算する:
スクリーニングしたクローン196個のうちの88個は、A549細胞におけるHGF誘導性のc−Metリン酸化を>30%阻害する能力について、少なくともh224G11と同程度に有効であった。
1.7 本発明のナノボディのフォーマット又は突然変異
Pichia pastorisにおける発現及び培養培地中への分泌を可能にするin−house構築プラスミドに、ナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)、06B08−9GS−Alb11(配列番号8)、06C12−9GS−Alb11(配列番号9)、及び06F10−9GS−Alb11(配列番号10)をクローニングした。前記ナノボディ[04E09−9GS−Alb11(配列番号7)、06B08−9GS−Alb11(配列番号8)、06C12−9GS−Alb11(配列番号9)、及び06F10−9GS−Alb11(配列番号10)]が翻訳時にそれらのC末端において、9GSリンカー(アミノ酸配列GGGGSGGGS)で隔てられて抗ヒト血清アルブミン(HSA)結合ナノボディ(Alb11とも表記されるALB11)に融合されるように、クローニングを行った。構築物は、さらなるC末端3×FLAG及びHis6−タグ(配列番号6)を有していた。
同じ発現プラスミドに、ナノボディAlb11−35GS−04E09(配列番号11)及びAlb11−35GS−04E09(配列番号12)をクローニングし、同じALB11ナノボディに融合したが、c−Met結合ナノボディが翻訳時にそれらのN末端において、35GSリンカー(配列番号22)又は9GSリンカー(配列番号15)で隔てられてALB11に融合されるようにした。上記のように、これらの構築物は、C末端3×FLAG及びHis6−タグ(配列番号6)を有していた。
このプラスミドに、ナノボディ04E09−L49S(配列番号23)、04E09−C50S/C100bG(配列番号24)及び04E09−C22A/C92S(配列番号25)もクローニングした。ナノボディ04E09のKabat位置Leu49をSerに突然変異させるか(L49S)、Kabat位置Cys50をSerに及びKabat位置Cys100bをGlyに突然変異させるか(C50S/C100bG)、又はKabat位置Cys22をAlaに及びKabat位置Cys92をSerに突然変異させ(C22A/C92S)、そのC末端で3×FLAG及びHis6−タグ(配列番号6)に融合した。
実施例2:増殖アッセイ、ケモタキシスアッセイ、2種のHGF競合アッセイ及びフローサイトメトリーアッセイにおけるc−Met遮断ナノボディの特性決定
2.1 ナノボディの発現及び精製
1.7に記載したようにナノボディ(配列番号7〜10)をクローニングし、培地容量250mLでP. pastorisにおいて発現させた。メタノールを追加することによってナノボディの発現を誘導し、30℃で48時間維持した。HisTrap(商標) column (GE Healthcare)を使用する固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)の出発材料として、上澄みを使用した。イミダゾールの段階的勾配20mM〜250mMを使用して、カラムからナノボディを溶出させた。次の段階では、HiPrep(商標)26/10脱塩カラム(GE Healthcare)を使用して、ナノボディをD−PBS(Invitrogen)に緩衝液交換した。
2.2 MET遮断ベンチマーク分子
2.2.1 抗c−Met抗体5D5
10%FCS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM+Glutamax-I (Gibco)で、マウスハイブリドーマ細胞株5D5.11.6(ATCC HB-11895; lot no 3996831, LGC Standards, UK)を成長させた。抗体産生のために、6mMのL−グルタミン及び1×コレステロールを補充したCD Hybridoma (Lonza)に培養培地を交換した。約1週間後に馴化培地を回収し、遠心分離し、0.22μm Express PLUS membrane (Millipore)を備えるStericup systemを使用してろ過してから、HiTrap ProteinG column (GE Healthcare)にロードした。0.1Mのグリシン−HCl(pH2.7)でカラムを溶出し、0.2容量の1MのTris−HCl(pH9)で溶出物を直ぐに中和した。次いで、PD-10脱塩カラム(GE Healthcare)で、抗体溶液をD−PBSに緩衝液交換した。
2.2.2.mAb由来の抗c−Met抗体フラグメント5D5 Fab
Pierce Mouse IgG1 Fab and F(ab´)2 Micro Preparation Kit (Cat # 44980, Thermo Scientific)を使用して、マウスIgGをフィシン消化することによって、抗c−Met抗体5D5のFabフラグメントを調製した。簡潔に言えば、25mMのシステインを補充した消化緩衝液中で、IgGを、アガロース固定化フィシンと共に37℃で4時間インキュベーションした。抗マウスFcアガロース(Europa Bioproducts; Cat # EU-AMIgGFc-AGA-1)と共に1時間インキュベーションすることによって、未消化IgG及びFcフラグメントを除去した。ビーズを含まない上清を膜ろ過濃縮装置(20,000 MWCO, CAT # 87750, Pierce - Thermo Scientific)で容量1mL未満に濃縮した。調製物をサイズ分離し、Superdex 75 10/300GL column (GE Healthcare)でゲルろ過することによって、緩衝液交換した。溶出画分を同じ膜ろ過濃縮装置で再度濃縮した。
2.2.3 5D5 Fab v2の作製
5D5 Fab v2の配列は、Dennis et al.(米国特許出願公開第2007/0092520号)で公開された。5D5 Fab v2は、ヒト化及び親和性成熟されている点で、親マウスハイブリドーマモノクローナル抗体5D5と異なっていた。可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメイン(合成で作製したもの、Geneart)の配列を、それぞれヒトIgG1 CH1(血球凝集素タグ及びヘキサヒスチジンタグでタグ付けしたもの)、及びヒトκCLヒトに遺伝子融合した。in−house作製E. coli発現プラスミドからこの構築物を発現させた。2L発酵槽中、0.5%グルコース及びカナマイシンを補充したLB培地でE. coli TG1細胞を成長させ、1mMのIPTGで発現を誘導した。遠心分離(3600×g、20分間)によって細胞を回収し、ペリプラズム抽出物を生産した。Ni-NTA column (HisTrap, GE Healthcare)で5D5 Fab v2を捕捉し、250mMのイミダゾールで溶出させた。抗ヒトκアフィニティーカラム(KappaSelect, GE Healthcare)で、溶出物をさらに精製した:100mMのグリシン(pH2.5)で5D5 Fab v2を溶出させ、0.2容量の1MのTRIS(pH7.5)を追加することによって直ぐに中和した。
2.3 ナノボディは、アルファスクリーンアッセイ及びフローサイトメトリーアッセイで、c−MetリガンドHGFの結合を遮断する
2.3.1ナノボディは、アルファスクリーンアッセイで、c−MetリガンドHGFの結合を遮断する
遮断効力及び有効性を評価し、これを5D5 Fabと比較するために、HGF/c−Met競合アルファスクリーンアッセイで、精製ナノボディを特性決定した。抗c−Metナノボディ及び5D5 Fabの連続希釈物(250nMから0.9pMまで)を100pMのビオチン化hHGF(ヒトHGF)と共に室温で15分間インキュベーションした。次に、抗ヒトFcコンジュゲーションアクセプタービーズ及びc−Met/Fc(最終濃度100pM)を追加し、この混合物を室温でさらに2時間インキュベーションした。次いで、ストレプトアビジンドナービーズを追加し、この混合物をさらに1時間インキュベーションした。励起波長680nm及び発光波長520nmを使用してEnVision Multilabel Plate Readerでプレートを読み取ることによって、蛍光を測定した。
選択したナノボディは、c−Metレセプターに対するHGFの結合を用量依存的に有効に阻害する。計算したIC50値及び阻害率を表1に示す。阻害率は、コールド(非ビオチン化)リガンドの最大濃度と比較した特定化合物の連続希釈物の最大阻害度を反映している(基準点を100%として設定)。例えば、ナノボディ06B08−9GS−Alb11は、HGF/c−Met相互作用を最大65%遮断するのに対して、他のナノボディ及び5D5 Fabは、約100%阻害することができた。
5μMのヒト血清アルブミン(HSA)の存在下又は非存在下で、精製ナノボディを評価した。
表2は、HSAの存在下又は非存在下におけるナノボディの効力(IC50値)を要約したものである。どのナノボディについても、効力の有意な変化は、HSAの存在下で観察されなかった。
2.3.2ナノボディは、フローサイトメトリーアッセイで、c−METリガンドHGFの結合を遮断する
遮断効力及び有効性を評価し、これ5D5mAbと比較するために、フローサイトメトリー測定ベースのHGF/c−Met競合アッセイで、精製ナノボディを特性決定した。A549細胞を洗浄し、2×106/mLで再懸濁した。抗c−Metナノボディ及び5D5mAbの連続希釈物(1μMから5.6pMまで)を1nMのビオチン化hHGFと共にプレインキュベーションした。次に、A549細胞及びナノボディ/HGF混合物を4℃で2時間インキュベーションした。洗浄後、ストレプトアビジン/PE(BD Bioscience)を用いて、細胞を4℃で30分間染色した。次いで、細胞を再度洗浄し、2.5nMのTOPRO3 (Invitrogen)で染色し、FACSArray機器(BD Bioscience)で分析した。
データにより、ナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)、06C12−9GS−Alb11(配列番号9)及び06F10−9GS−Alb11(配列番号10)は、HGFとの完全な競合を示すことが示された。ナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)及び06C12−9GS−Alb11(配列番号9)は、5D5mAbのものよりも有意に低いIC50値を有していた。このアッセイでは、5D5 FabフラグメントのIC50値は11.3nMであると決定した。
2.3.3 アルファスクリーンアッセイにおけるc−MET−リガンドHGFの結合
遮断効力及び有効性を評価し、これをベンチマーク抗体フラグメント(5D5 Fab v2)と比較するために、HGF/c−MET競合アルファスクリーンアッセイで、抗c−MET/抗血清アルブミンナノボディ構築物を特性決定した。抗c−METナノボディ及びベンチマーク5D5 Fab v2の連続希釈物(250nMから0.9pMまで)を100pMのビオチン化hHGFと共に室温(RT)で15分間プレインキュベーションした。抗ヒトFcコンジュゲーションアクセプタービーズ及びc−MET/Fc(最終濃度100pM)をこの混合物に追加し、室温(RT)で2時間インキュベーションした。次に、ストレプトアビジンドナービーズを追加し、この混合物をさらに1時間インキュベーションした。励起波長680nm及び発光波長520nmを使用してEnVision Multilabel Plate Readerでプレートを読み取ることによって、蛍光を測定した。
2つの構築物は、c−METレセプターに対するHGFの結合を用量依存的に有効に阻害する。計算したIC50値及び対応する95%信頼区間を表3Aに示す。A007900171及び2バッチのA007901219は、類似のIC50値を有する;それらの95%CIはオーバーラップしており、これは、差が統計的に有意ではないことを示唆している。これらのナノボディは、ベンチマーク5D5 Fab v2と比較して>5倍向上した効力を示した。
結論としては、これらのナノボディ構築物は、特定の抗血清アルブミン部分に関係なく、ベンチマークよりも優れた性能である。
2.4 ナノボディは、A549ガン細胞株におけるHGF誘導性のc−Metリン酸化を遮断する
実施例1.6に概説したように、HGF依存性リン酸化アッセイで、精製ナノボディを特性決定した。
2.4.1ナノボディは、A549ガン細胞株におけるHGF誘導性のc−Metリン酸化を遮断する
第1の一連の実験では、フォーマットした抗c−Metナノボディ又は5D5 Fabの連続希釈物(1μMから0.23nMまで)を、A549細胞において1nMのHGFと共に37℃で15分間コインキュベーションした。次いで、細胞溶解物の1/3をMSDリン酸化c−Metアッセイプレートにアプライした。測定前に、複製物試料由来の溶解物をプールした。未結合の溶解物を洗い流した後、リン酸化c−Met及び非リン酸化c−Metの両方を検出するスルホタグ付抗体を追加し、Sector Imager 2400 (MSD)を使用してプレートを読み取った。
精製ナノボディは、HGF依存性のc−Metリン酸化を事実上完全に遮断することが示された。結果を表4に要約する;図1も参照のこと。
結論としては、タグ付(配列番号6)ナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)は、5D5 Fabベンチマークよりも優れた性能である。ナノボディ06B08−9GS−Alb11(配列番号8)及び06C12−9GS−Alb11(配列番号9)は、(95%信頼区間内では)同程度のIC50を有するのに対して、06F10−9GS−Alb11(配列番号10)は効力が低い。
A549細胞におけるc−Metリン酸化アッセイの結果に基づいて、ナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)を最も強力なナノボディとして同定した。
2.4.2 Alb23由来ナノボディは、A549ガン細胞株におけるHGF誘導性のc−Metリン酸化を遮断する
第2の一連の実験では、HGF依存性リン酸化アッセイで、精製抗c−MET/抗血清アルブミンAlb11及びAlb23ナノボディ構築物を特性決定した。抗cMET構築物又は抗cMETベンチマーク5D5 Fab v2の連続希釈物(1μMから0.23nMまで)を、A549細胞において1nMのHGFと共に37℃で15分間コインキュベーションした。次いで、溶解細胞溶液の1/3をリンc−MET MSDアッセイプレートにアプライした。細胞培養レベルの2つの複製物をMSDレベルでプールした。未結合の材料を洗い流した後、スルホタグ付検出c−Met抗体により、リン酸化レセプター及び非リン酸化レセプターの両方を検出した。sector imager 2400を用いて、読み出しを実施した。
2つの抗c−MET/抗血清アルブミンナノボディ構築物は、HGF依存性のc−METレセプターリン酸化を用量依存的に有効に阻害する。計算したIC50値及び対応する95%信頼区間を表4Aに示す。A007900171(配列番号113)及び2バッチのA007901219(配列番号106)は、類似のIC50値を有する;それらの95%CIはオーバーラップしており、これは、差が統計的に有意ではないことを示唆している。これらのナノボディは、ベンチマーク5D5 Fab v2と比較して2倍向上した効力を示した。加えて、95%信頼区間内では、ヒト血清アルブミンを刺激細胞に追加しても、試験したナノボディのIC50値は変化しなかった。
結論としては、これらのナノボディ構築物は、特定の抗血清アルブミン部分に関係なく、ベンチマークよりも優れた性能である。
2.5 ナノボディは、BxPC−3細胞のHGF誘導性増殖を遮断する
BxPC3細胞(膵臓ガン細胞、ATCC No CRL−1687)のHGF誘導性増殖を遮断する能力について、ナノボディを評価した。このアッセイでは、1ウェルあたり1×104個の細胞をE-plates (ACEA/Roche Applied Science)に播種し、Xcelligence RTCA Analyser (Roche Applied Science)を使用して、各ウェルのインピーダンス値を測定し、計算「標準化細胞指数」(NCI)を提供することによって、それらの動態をモニタリングする。一晩インキュベーションし、4時間血清飢餓させた後、フォーマットした抗c−Metナノボディ又は抗c−Met 5D5 Fabベンチマークの連続希釈物(0.8μMから0.05nMまで)をBxPC3細胞に追加した。NCI値を3日間記録した。
3日後、すべてのナノボディは、HGF媒介性のNCI増加をほぼ完全に遮断することができたが、これは、それらが、HGF誘導性の細胞増殖を効率的に遮断することを示している(表5)。タグ付(配列番号6)ナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)は、5D5 Fabのものよりも優れた効力を有していた(図3を参照のこと)。他のナノボディは、5D5 Fabと同程度のIC50値を有していた(データは示さない)。
2.6 ナノボディは、A549細胞のHGF依存性ケモタキシスを遮断する
抗c−Metナノボディが、HGF濃度勾配に対するA549細胞の遊走を遮断する能力をケモタキシスアッセイで試験した。
このアッセイは、蛍光遮断微多孔質PET(ポリエチレンテレフタレート)メンブレンインサート(孔径8μm)を備えるブラックマルチウェルインサートプレートをトランスペアレント96ウェルレシーバープレートにマウントしたものからなるFluoroBlok(商標)プレート(BD Falcon(商標))に基づくものであった。サブコンフルエントなA549細胞を一晩血清飢餓させ、蛍光色素DiIC12 (BD Biosciences)で染色した。次に、1ウェルあたり細胞75.000個をメンブレンインサート上に播種し、抗c−Metナノボディ又は抗c−Metマウス5D5 Fabの連続希釈物(0.4μMから0.01nMまで)と共にインキュベーションした。同じ濃度のナノボディ/抗体も、2.5nMのHGFと同様に下部区画に追加した。24時間後、ボトムリーディング蛍光プレートリーダー(Envision, Perkin Elmer)で、ボトムプレートに遊走した細胞の量を定量した。
試験したナノボディはすべて、ケモタキシスアッセイで、5D5 Fabベンチマーク(完全に遮断)と同程度に、A549細胞のHGF駆動性遊走を阻害することができた。ナノボディ06B08−9GS−Alb11(配列番号8)は、遊走をバックグラウンドレベルよりもさらに下に減少させると思われた。このアッセイでは、ナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)及び06C12−9GS−Alb11(配列番号9)は、5D5 Fabよりも強力であった。結果を表6に要約する。図4も参照のこと。
2.7 A007901222は、c−METに対するHGFの結合を阻害する
発酵槽中、2Lスケール、複合培地(pH6.0)、誘導後95時間(95hai)(hours after induction))及び30℃で、抗c−MetナノボディA007901222(配列番号188)をP. pastoris菌株X33で生産した。最初に、高速遠心分離工程(7000rpm、4℃、20分間、Sigma 8K10 rotor)によって培養ブロスをクラリファイし、次いで、TFFを使用して精密ろ過することによって上清をパーティクルフリーにした。続いて、この材料をMEP HyperCel column (PALL)にロードした。酢酸ナトリウム(pH3.5)でナノボディを溶出させ、1/10v/v1M TRIS(pH8.8)で溶出物を中和した。Sephadex G25で、ナノボディをポリッシュ工程緩衝液にさらに緩衝液交換し、続いて、Poros50 HQの陰イオン交換クロマトグラフィーポリッシュ工程によって精製した。LPS除去のためにOGP処理した後、Superdex 75で、この材料をD−PBSに緩衝液交換した。
3つの異なるアッセイで精製ナノボディを試験し、5D5 Fab v2ベンチマークと比較した:(i)HGF競合アルファスクリーンにおけるin vitro効力分析、(ii)細胞ベースのc−Metリン酸化アッセイ、(iii)細胞ベースの増殖アッセイ。
HGF競合アルファスクリーンは、実施例2(2.3.1)に記載したよう実施した。細胞ベースのc−Metリン酸化アッセイは、実施例1.6に概説したよう実施した。細胞ベースの増殖アッセイは、実施例2.5に概説したよう実施した。
計算したIC50値及び対応する95%信頼区間を表7に示す。
実施例3:c−Met遮断ナノボディの結合特異性
3.1 c−Met遮断ナノボディは、細胞膜で発現しているヒト及びカニクイザルc−Metに特異的に結合する
ヒト細胞膜で発現している内因性c−Metの供給源として、A549細胞(ATCC No.CCL−185、LGC Standards, UK)を使用した。膜結合全長タンパク質として、カニクイザルc−MetをBAF3細胞で発現させた。発現プラスミドDNAでBAF3細胞(ABL157, DMSZ, Germany)をトランスフェクションし、FACSソーティング(FACSAria, BD Biosciences)によって、高いc−Met発現レベルを有する集団を単離した。細胞表面で内因的かつ異所的に発現しているヒト及びカニクイザルc−Metそれぞれに対するナノボディの結合を、下記のようにFACS分析によって評価した。
抗c−Metナノボディの連続希釈物(1μMから0.5pMまで)を、105個のA549細胞、BAF3細胞、又はカニクイザルc−MetトランスフェクションBAF3細胞と共に4℃で30分間インキュベーションした。細胞を洗浄した後、マウス抗FLAG及びPEコンジュゲーションヤギ抗マウスIgGを使用してFACS Array(商標)で、細胞表面に結合したナノボディを検出した。
すべてのナノボディは、細胞で発現しているヒトc−Met及びカニクイザルc−Metの両方に対して同程度の用量依存的な結合を示した。BAF3細胞に対する結合は観察されなかったが、これは、トランスフェクションBAF3細胞に対する結合が、カニクイザル(cyno)c−Metトランス遺伝子に対して特異的であったことを示している。ヒトc−Metに対する結合のEC50値と、カニクイザルc−Metに対する結合のEC50値との比は、すべて2.5倍以内であった。
3.2 c−Met遮断ナノボディは、リコンビナントヒト及びカニクイザルc−Met/Fcキメラに結合する
3.2.1 カニクイザルc−Met/Fcの生産
肝臓組織由来のプリメイドcDNA(BioChain Institute Inc., Cat # C1534149-CY及びZyagen, Cat # KD-314の両社から購入したもの)に対するPCRによって、カニクイザル(M. fascicularis)c−Metの配列を決定した。公的に利用可能なアカゲザル(M. mulatta)c−Metの配列(NCBI ref NM_001168629.1)に基づいて、プライマーを設計した。配列産物をアカゲザルの配列とアライメントすることにより、アミノ酸レベルで偏差がないことが明らかになった。
c−Met細胞外ドメイン及びFc部分に挟まれたXa因子切断部位、及びC末端His6タグ(配列番号4)を含むヒトFc(IgG1サブタイプ)に、カニクイザルc−Metの細胞外ドメイン(成熟タンパク質のE25からT932まで)を融合した。in−houseで構築したエピソーム複製哺乳動物発現ベクターに3点ライゲーションすることによって、両フラグメントをクローニングした。4mMのグルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び0.25mg/mLのジェネテシンを補充したPro293a培地(Lonza, Cat # 12-764Q)で、エプスタイン・バー核抗原(HEK293-EBNA; LGC Standards, UK)を含有するヒト胎児腎臓細胞を成長させた。製造業者の説明書にしたがってFuGene HDトランスフェクション試薬(Roche, Cat # 04 709 713 001)及びPro293a培地を使用して、カニクイザルc−Met/Fcを発現するプラスミドでHEK293−EBNA細胞を一過性トランスフェクションした。加湿CO2インキュベーター(Binder, Cat # 9140-0012 CB150)中、37℃でインキュベーションしながら、馴化培地を2〜3日毎に5回回収した。培地を遠心分離し、0.22μm Express PLUS membrane (Millipore)を備えるStericup systemでろ過し、POROS MabCaptureA matrix column (Applied Biosystems, Cat # 4374730)で上清を精製し、50mMのクエン酸Na3(pH3.0)で溶出させ、0.2×容量の1M TRIS−HCl(pH9)で直ぐに中和した。D−PBSで連続希釈することによってこのタンパク質溶液をD−PBSに緩衝液交換し、膜ろ過濃縮装置(Vivaspin2, 50,000 MWCO, Sartorius Stedium Cat # VS2031)を使用して濃縮した。
3.2.2 競合ELISAによる交差反応性試験
カニクイザルc−Met/Fcに対する抗c−Metナノボディの結合を競合ELISAで試験した。
ヒトリコンビナントc−Met/Fc(R&D Systems)を濃度2μg/mLでMaxisorp plate上にコーティングした。一定濃度0.17nMのナノボディ(コーティングしたヒトリコンビナントc−Met/Fcに対するEC50濃度(結合ELISAで決定した場合のもの)に対応する)を、可溶性ヒトc−Met/Fcの連続希釈物(120倍モル過剰から開始)、カニクイザルc−Met/Fcの連続希釈物(120倍モル過剰から開始)又はヒトCTLA−4/Fc(コントロールとして)と共に室温で1時間プレインキュベーションしてから、c−Met/FcをコーティングしたELISAプレートにそれらを追加した。マウス抗FLAGモノクローナル抗体(Sigma-Aldrich)及びHRPコンジュゲーションウサギ抗マウスIgG(Dako)を使用して、固定化したヒトc−Met/Fcに対するナノボディの結合を検出した。TMB One solution (Promega)を使用して、検出を行った。2N H2SO4を用いて反応を停止させ、吸光度を450nmで決定し、620nmで補正した。
直接コーティングしたヒトc−Met/Fcに対するナノボディの結合はヒトc−Met/Fcによって阻害されたが、CTLA−4/Fcによっては阻害されなかった。選択したナノボディリードすべてについて、結合は、外因的に追加したカニクイザルc−Met/Fcによって同様に阻害されたが、これは、親和性がヒトc−Met/Fcと同程度であることを示している。
さらなる実験では、同じ競合ELISA設定を使用して、マウスc−Met/Fc(R&D Systems)及びイヌc−Met(R&D Systems)に対する種交差反応性も試験した。先と同様に、一定濃度0.17nMのナノボディを、連続濃度のマウスc−Met/Fc(120倍モル過剰)、又はイヌデコイc−Met(240倍モル過剰)と共に室温で1時間プレインキュベーションした。ナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)、06C12−9GS−Alb11(配列番号9)及び06F10−9GS−Alb11(配列番号10)についてのみ、非常に高濃度のマウスc−Met/Fcで、又は(さらにより少ない程度だが)イヌc−Metで、いくらかの阻害を観察することができた。ヒトc−Metとマウス又はイヌc−Metとの間で定量比較を行うことはできないが、マウス及びイヌc−Metとの交差反応性が非常に低いことは明らかである。
3.3 c−Met遮断ナノボディは、c−MetのSEMAドメインに結合する
3.3.1 リコンビナントヒトSEMA/Fcの生産
ナノボディのサブドメイン結合を決定するために、C末端His6タグ、並びにSEMA及びFc(配列番号100)に挟まれたXa因子切断部位を含むヒトFc(IgG1サブタイプ)に、SEMAドメイン(成熟タンパク質のE25からG519まで;Uniprot ref P08581(MET_HUMAN))を融合した。エクステンションPCRによってこのキメラを作製し、in−houseで構築したエピソーム複製哺乳動物発現ベクターにサブクローニングした。
HEK−EBNA細胞のトランスフェクション、並びにリコンビナントタンパク質の生産及び精製は、3.2.1に記載したように行った。
3.3.2 競合ELISAによるエピトープマッピング
細胞外SEMAサブドメインに対する抗c−Metナノボディの結合を競合ELISAで試験した。
ヒトリコンビナントc−Met/Fc(R&D Systems)を濃度2μg/mLでMaxisorp plate上にコーティングした。一定濃度0.17nMのc−Metナノボディ(固定化したヒトリコンビナントc−Met/Fcに対するEC50濃度(結合ELISAで決定した場合のもの)に対応する)を、一定濃度のヒトc−Met/Fc(120倍モル過剰)、ヒトSEMA/Fc(180倍モル過剰)又はヒトCTLA−4/Fc(コントロールとして)と共に室温で1時間プレインキュベーションしてから、c−Met/FcをコーティングしたELISAプレートに追加した。マウス抗FLAGモノクローナル抗体(Sigma-Aldrich)及びHRPコンジュゲーションウサギ抗マウスIgG(Dako)を用いて、プレートに固定化したヒトc−Met/Fcに対するナノボディの結合を検出した。TMB One solution (Promega)を使用して、検出を行った。2N H2SO4を用いて反応を停止させ、吸光度を450nmで決定し、620nmで補正した。
直接コーティングしたヒトc−Met/Fcに対するナノボディの結合はヒトc−Met/Fcによって阻害され、CTLA−4/Fcによっては阻害されなかった。選択したナノボディリードについて、c−Met/Fcに対する結合は、外因的に追加したSEMA/Fcによって阻害されたが、これは、それらがc−MetのSEMAドメインに結合することを示している。
3.4 c−Met遮断ナノボディは、c−MetヒトホモログRON又はプレキシンD1に結合しない
2つの近縁c−Metホモログに対するタグ付(配列番号6)抗c−Metナノボディ(配列番号7〜10)の交差反応性を競合ELISAでで試験した。RON(MSP−R、GenBank:X70040.1)は、c−Metの細胞外ドメインと29%のアミノ酸配列同一性を共有し、プレキシンD1(GenBank:AY116661.1)は、16%の同一性を共有する。
ヒトリコンビナントc−Met/Fc(R&D Systems)を濃度2μg/mLでMaxisorp plate上にコーティングした。一定濃度0.17nMのc−Metナノボディ(コーティングしたヒトリコンビナントc−Met/Fcに対するEC50濃度(結合ELISAで決定した場合のもの)に対応する)を、ヒトc−Met/Fcの連続希釈物(230倍モル過剰から開始)、RONの連続希釈物(990倍モル過剰から開始)又はプレキシンD1の連続希釈物(440倍モル過剰から開始)と共に室温で1時間プレインキュベーションしてから、c−Met/FcをコーティングしたELISAプレートにそれらを追加した。マウス抗FLAGモノクローナル抗体(Sigma-Aldrich)及びHRPコンジュゲーションウサギ抗マウスIgG(Dako)を用いて、固定化したヒトc−Met/Fcに対するナノボディの結合を検出した。TMB One solution (Promega)を使用して、検出を行った。2N H2SO4を用いて反応を停止させ、吸光度を450nmで決定し、620nmで補正した。
抗c−Metナノボディでは、RON又はプレキシンD1に対する交差反応性は検出されなかった。
実施例4:c−Metリン酸化アッセイにおけるc−Met遮断ナノボディのアゴニスト活性
実施例1.6に概説したリン酸化アッセイで、2つの精製タグ付(配列番号6)ナノボディ(04E09−9GS−Alb−11(配列番号7)及び06C12−9GS−Alb11(配列番号9))のHGF依存性c−Met活性化能を特性決定した。抗c−Metナノボディ又は5D5モノクローナル抗体の連続希釈物(1μMから0.23nMまで)をA549細胞に37℃で30分間アプライした。細胞溶解物の1/3をMSDリン酸化c−Metアッセイプレートにアプライした。複製物試料由来の溶解物をプールした。未結合の材料を洗い流した後、スルホタグ付c−Met検出抗体を追加し、Sector Imager 2400 (MSD)を使用してプレートを読み取った。
04E09−9GS−Alb−11(配列番号7)及び06C12−9GS−Alb11(配列番号9)はいずれも、濃度1μMに至るまでいかなるアゴニスト活性も示さなかったことが図2から分かる。対照的に、5D5mAbは、最大約37nMでc−Metリン酸化を誘導した。予想どおり、HGFは、2nM〜6nMの最大効率でc−Metリン酸化を誘導した。
実施例5:表面プラズモン共鳴を使用する親和性決定
ProteOn (BioRad)で表面プラズモン共鳴を使用して、抗c−Metナノボディ−Alb11融合構築物04E09−9GS−Alb−11(配列番号7)の動態分析を実施した。この実験は、ProteOn PBS/Tween緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、0.005%Tween 20、cat. 176-2720, BioRad)中、25℃で実施した。約5300RU及び2700RUの密度で2つのリガンドレーンでアミンカップリングすることによって、抗ヒトIgG(Fc)抗体(GE Healthcare)をProteOn GLC Sensorchip (BioRad)上に固定化した。動態分析では、50nMのリコンビナントヒトc−Met/Fcキメラ(R&D Systems)及び150nMのリコンビナントヒトCTLA4/Fcキメラ(R&D Systems)を、別々の2レーンに25μl/分で3分間注入し、続いて、04E09−9GS−Alb−11(配列番号7)を45μl/分で2分間注入た。100nM、25nM、6.25nM、1.56nM及び0.39nMのナノボディ濃度を動態分析に使用した。3M塩化マグネシウム(キットBR-1008-39のコンポーネント、GE Healthcare)を25μl/分で80秒間注入することによって、表面の再構成を実施した。
ナノボディ04E09−9GS−Alb−11(配列番号7)は、13.5pMのKDでc−Met/Fcに結合した。リコンビナントヒトCTLA4/Fcコントロールキメラに対する結合は観察されなかった。表8では、4E9−9GS−Alb11の結合の速度定数を、親和性成熟された5D5 Fab v2の公開されている親和性と比較する。
実施例6:04E09−9GS−Alb11と同様のエピトープに結合するナノボディの同定
04E09−9GS−Alb11と同様のエピトープに結合するナノボディのレパートリを増やすために、新たな選択セットを実施した。
実施例1.3に記載したように、ラマ450、451及び452から得られたファージライブラリを、細胞(カニクイザルc−Metを過剰発現するA549細胞及びBAF3細胞)での2回の選択ラウンドに使用したが、結合したファージの溶出は、トリプシンに代えて1μMの04E09ナノボディ(配列番号26)を用いて実施した点を改変した。04E09エピトープに結合するファージが、c−Met抗原上の他の(オーバーラップしていない)エピトープに結合するファージよりも特異的に濃縮されるように、この溶出方法を設計した。
この選択からのアウトプットをE. coli TG1細胞でレスキューした。コロニーを剥がし、96ディープウェルプレート(容量1mL)で成長させた。IPTGを追加することによって、ナノボディ産生を誘導した。ナノボディは、C末端にc−myc及びHis6を含有していた。標準的な方法にしたがって、ペリプラズム抽出物(容量:約100μl)を調製した。
これらのナノボディがc−Met/Fcに対するナノボディ04E09の結合を阻害するかを決定するために、ペリプラズム抽出物をアルファスクリーンアッセイでスクリーニングした。このアッセイは、基本的には実施例1.5に記載したように実施したが、ビオチン化HGFをビオチン化04E09ナノボディ(in−houseで生産、精製及びビオチン化したもの)に替えた。
ヒトc−Metに対するナノボディ04E09の結合を阻害する363個のクローンを同定した。配列決定した後、これらのクローンを26種の異なるファミリーにクラスタ化することができたところ、これらのうちの14種は、これまでに同定されていないものであった。したがって、トリプシン又は04E09のいずれかを溶出に使用して、c−Metに結合するファミリーを合計60種同定した。
c−Met/Fcに対するHGFの結合を阻害する能力についても、363個のクローンをアルファスクリーンアッセイ(実施例1.5を参照のこと)でスクリーニングした。このスクリーニングにより、ナノボディ04E09のものと同様のエピトープに結合するナノボディはすべて、c−Met/Fcに対するHGFの結合も阻害することができることが確認された。
04E09のエピトープに結合する26種のナノボディファミリーのうち、25種(96%)は、VHH1生殖系列由来であった。トリプシンによる溶出を使用して同定した34種のファミリーであって、04E09とオーバーラップしているエピトープに結合すると判明しなかったファミリーのうち、VHH1型のものはわずか3種(9%)であった。これは、ナノボディ04E09によって標的とされるエピトープ領域に対する結合が、VHH1型ナノボディ又はVHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインに特に適していることを示している。
実施例7:様々な04E09変異体の評価
Leu49をあまり大きくないSer残基で置換したナノボディ04E09の突然変異体を構築した(L49S、配列番号23)。加えて、効力に対するVHH1特異的ジスルフィド架橋(C50S/C100bG、配列番号24)及び通常のジスルフィド架橋(C22A/C92S、配列番号25)の重要性を調べるために、クローン04E09の変異体を2つ構築した。実施例1.7に記載したように、配列番号23〜25のナノボディを生産した。
7.1 競合FACS
配列番号23〜25のタグ付(配列番号6)抗c−Metナノボディの連続希釈物(1μMから0.5pMまで)を0.5nMビオチン化HGFと混合し、カニクイザルc−Metで安定トランスフェクションした2×105個のBAF3細胞(実施例3.1を参照のこと)と共に4℃で2時間インキュベーションした。広範囲に細胞を洗浄した後、細胞表面で発現しているc−Metに結合したビオチン化HGFをストレプトアビジン−PEによって検出した。先の実施例に記載したように、FACSarrayフローサイトメーターで細胞を分析した。
配列番号23及び配列番号25は、親ナノボディ配列番号7(=04E09−9GS−Alb11)と類似のIC50を有していた。これは、Kabat位置Leu49のSerへの突然変異(L49S、配列番号23)又はKabat位置Cys22のAlaへの突然変異及びKabat位置Cys92のSerへの突然変異(C22A/C92S、配列番号25)が、リガンド結合遮断効力に影響を及ぼさなかったことを示している。しかしながら、Kabat位置Cys50のSerへの突然変異及びKabat位置Cys100bのGlyへの突然変異(配列番号24)は、効力を約35倍減少させる。
7.2 リン酸化アッセイ
実施例1.6に概説したHGF依存性リン酸化アッセイで、配列番号23〜25の精製タグ付(配列番号6)抗c−Metナノボディを特性決定した。抗c−Metナノボディの連続希釈物(1μMから0.23nMまで)を、A549細胞において1nMのHGFと共に37℃で15分間コインキュベーションした。次いで、溶解細胞物の1/3をMSDリン酸化c−Metアッセイプレートにアプライした。複製物試料由来の溶解物をプールした。未結合の材料を洗い流した後、スルホタグ付c−Met検出抗体を追加し、Sector Imager 2400 (MSD)を使用してプレートを読み取った。
Kabat位置Leu49のSerへの突然変異(L49S、配列番号23)又はKabat位置Cys22のAlaへの突然変異及びKabat位置Cys92のSerへの突然変異(C22A/C92S、配列番号25)は、ナノボディ04E09の効力に影響を与えなかった。Kabat位置Cys50のSerへの突然変異及びKabat位置Cys100bのGlyへの突然変異(配列番号24)は効力を減少させたが、いくらかの阻害効果がわずかに残っていた(表10)。
7.3 表面プラズモン共鳴を使用する04E09突然変異体の親和性決定
ProteOn (BioRad)で表面プラズモン共鳴を使用して、04E09突然変異体の04E09(C50S/C100bG、配列番号24)及び04E09(C22A/C92S、配列番号25)の動態分析を実施した。この実験は、実施例5に記載したように実施した。
リコンビナントヒトc−Met/Fcに対するナノボディ04E09−9GS−Alb11(配列番号7)及び04E09(C22A/C92S、配列番号25)の親和性(on速度及びoff速度)は、同程度であった。04E09(C50S/C100bG、配列番号24)は10倍低いon速度及びoff速度を有していたところ、これが、04E09−9GS−Alb11(配列番号7)又は04E09(C22A/C92S、配列番号25)よりも有意に低い、リコンビナントヒトc−Met/Fcに対する親和性をもたらす。いずれの分析でも、コントロールのリコンビナントヒトCTLA4/Fcキメラに対する結合は示されなかった(表11を参照のこと)。
実施例8:抗c−Metナノボディの配列最適化
一般に、Nanobody(登録商標)の配列最適化では、ヒトVH3−JH生殖系列コンセンサス配列とより同一のNanobody(登録商標)の配列を得るために、親の野生型Nanobody(登録商標)の配列を突然変異させる。フレームワーク領域の特定のアミノ酸であって、Nanobody(登録商標)とヒトVH3−JH生殖系列コンセンサスとの間で異なるアミノ酸を、タンパク質の構造、活性及び安定性がインタクトに維持されるような方法で、ヒトカウンターパートに変化させる。これを調査するために、3つの異なるアッセイで、すべての配列最適化変異体を親ナノボディと比較した:(i)サーマルシフトアッセイ(TSA)における融解温度(Tm)の決定、(ii)HGF競合アルファスクリーンにおけるin vitro効力の分析、(iii)c−Metリン酸化アッセイにおけるin vitro効力の分析、及び(iv)分析的サイズ排除(SEC)分析。
TSAアッセイでは、ナノボディを濃度0.2mg/mlに希釈し、検出用のLightcycler (Roche)を使用して、Sypro Orange(これは、タンパク質がアンフォールディングされると曝露されるTrp残基に結合する色素である)の存在下で、温度を段階的に増加させることによって、融解温度(Tm)を様々なpHで決定した。HGF競合アルファスクリーンは、実施例2(2.3.1)に記載したように実施した。c−Metリン酸化アッセイは、実施例2(2.4)に記載したように実施した。SEC分析では、マルチマー又は凝集体を検出することができるように、Phenomenex matrixでナノボディを分析した。
8.1 04E09の配列最適化
配列最適化のために、以下の突然変異を調査した:E1D、A74S、K83R及びG88A。再クローニングにおいて、効力又はTmに影響を及ぼさない1個のさらなる突然変異を導入した:Q108L。表12に示されているように、3個の個々の突然変異体を作製した:
すべての構築物をE. coli発現ベクターにクローニングし、培地容量0.5L〜1.5LのTB培地で、(実施例1.7に記載したように)3×FLAG−His6タグ付タンパク質としてE. coliで発現させた。1mMのIPTGを追加することによって発現を誘導し、37℃及び250rpmで4時間維持した。細胞をプレートし、凍結解凍することによってペリプラズム抽出物を調製し、dPBSに再懸濁した。Histrap FF crude columns (GE healthcare)を使用する固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)の出発材料として、これらの抽出物を使用した。250mMのイミダゾールを用いてカラムからナノボディを溶出させ、続いてdPBSで脱塩した。抗His6及び抗VHHによる検出を使用して還元SDS−PAGE及びウエスタンブロットによって、ナノボディの精製及び完全性を確認した。
表13に要約されているように、A74S、K83R及びQ108L突然変異は、効力又は熱安定性に対して明らかな影響を及ぼさなかった。G88A突然変異はTmの約1℃の低下をもたらしたが、効力はむしろ変化しないままであった。同様に、さらなる突然変異E1Dは、Tmにも効力にも影響を与えなかった。
さらに、Phenomenex matrixでの分析的SECにおけるA00790068(配列番号115を参照のこと)及びA00790069(配列番号116を参照のこと)の挙動は、A00790067(配列番号114を参照のこと)のものに類似していた。これらのナノボディは予想分子量で溶出し、有意な凝集は観察されなかった。A00790105(配列番号102を参照のこと)は小さなポストピークを示したが、これは、分解度が低いことを示している可能性がある。
結論としては、Nanobody(登録商標)の配列最適化は、タンパク質の構造、活性及び安定性が野生型クローンのタンパク質の構造、活性及び安定性に対して同様に維持されたナノボディをもたらした。
実施例9:U87MG異種移植モデルにおけるナノボディ04E09−9GS−Alb11のin vivo有効性
ヒトU87MG(HTB-14, American Type Culture Collection)膠芽腫腫瘍を異種移植した免疫不全マウスモデルにおいて、04E09−9GS−Alb11ナノボディ(配列番号7)の抗腫瘍効果を評価した。U87MGは、c−Met及びリガンドHGFを発現する(自己分泌ループ)。腫瘍成長を誘導するために、雌性スイスヌードマウスの右脇腹に1000万(107)個のU87MG細胞を皮下注射した。平均腫瘍容積195mm3に達したら、表14に概説されているように、マウスを無作為に3つの処置群に分け、処置を開始した。マウスを合計3週間処置した後に処置を中止し、腫瘍再発についてマウスをもう5週間さらにモニタリングした。研究期間中は、体重及び腫瘍容積(mm3)(=(長さx幅2)/2)をモニタリングし、1週間に2回記録した。研究終了時に、又は腫瘍容積が2000mm3よりも大きくなった場合にはより早期に、すべてのマウスを安楽死させた。
図5に示されているように、04E09−9GS−Alb11ナノボディ(図では、A00790035と示されている)は、HGF依存性U87MG異種移植モデルにおいて腫瘍成長阻害を示した。この腫瘍阻害には、処置群とビヒクル群との間で有意差があることが示された(縦モード解析の腫瘍容積、LSは、最終処置日における差を意味する;p<0.0001)。腫瘍成長阻害の尺度であり、処置群対ビヒクル処置群の平均腫瘍容積比と定義されるT(処置)/C(コントロール)%を分析した。処置終了時(19日目)において、A00790035ナノボディ及び参照化合物テモゾロマイドの%T/C比は、それぞれ7.3%及び15.2%であった。テモゾロマイドは膠芽腫治療の基準であり、前述のU87MG異種移植モデルを検証するためのポジティブコントロールとして使用した。
結論としては、ナノボディは、HGF依存性腫瘍、特に膠芽腫の阻害において、テモゾロマイドよりも有効である。
実施例10:KP4異種移植モデルにおけるナノボディ04E09−9GS−Alb11のin vivo有効性
第2のHGF−及びc−Met依存性異種移植モデル(ここでは、雌性nu/nuマウスに、1000万(107)個のKP4膵臓腫瘍細胞(RCB1005, Riken Biosource Center Cell Bank)を皮下接種した)において、04E09−9GS−Alb11ナノボディ(配列番号7)のin vivo有効性をさらに評価した。KP4細胞もまた、HGF及びc−Metの自己分泌ループを有する。平均腫瘍容積125mm3に達した後、表15に概説されているように、マウスを無作為に3つの処置群に分け、全15日間の期間で処置を開始した。研究期間中は、体重及び腫瘍容積(mm3)(=(長さx幅2)/2)をモニタリングし、1週間に3回記録した。すべてのマウスが、研究終了まで生存し続けた。
図6は、この異種移植モデルにおいて、04E09−9GS−Alb11ナノボディ(図では、A00790035と示されている)が腫瘍成長を阻害し、腫瘍退縮を引き起こすことができることを実証している。最終投与の1日後、04E09−9GS−Alb11及びゲムシタビン処置マウスでは、それぞれ6.3%及び23.7%のT/C比が達成された。ゲムシタビンは膵臓腫瘍治療の基準であり、前述のKP4異種移植モデルを検証するためのポジティブコントロールとして使用した。
結論としては、ナノボディは、HGF依存性腫瘍、特に膵臓腫瘍の阻害において、ゲムシタビンよりも有効である。また、ナノボディは、腫瘍退縮を促進する。
実施例11:ナノボディA00790171のin vivo有効性
実施例10で提供した結果を考慮して、A00790105に基づいて、04E09−9GS−Alb11ナノボディ(配列番号7)の配列最適化変異体を構築した(表12を参照のこと)。この配列最適化変異体の名称は、A00790171(A00790105−9GS−Alb11;配列番号113)とした。
2つの他のHGF自己分泌異種移植研究において、配列最適化変異体A00790171のin vivo有効性をさらに評価した。
ヒトHGFトランスジェニックC3H−SCIDマウスに、ヒト非小細胞肺ガン(NSCLC)を皮下接種する。A00790171ナノボディを10mg/kgの高用量で投与する。ガンの発症後、マウスを無作為に3つの処置群に分ける:(i)ビヒクル;(ii)A00790171;及び(iii)ポジティブコントロール。全15日間の期間で処置を開始する。研究期間中は、体重及び腫瘍進行をモニタリングし、1週間に3回記録する。すべてのマウスが、研究終了まで生存し続けている。
A00790171の有効用量を決定するために、実施例10に詳述したように、KP4膵臓異種移植モデルにおいて、PK/PD研究を実施する。0.1〜100mg/kgの範囲の用量で実験を開始して、有効用量を決定する。
実施例12:多発性骨髄腫細胞株におけるHGF駆動性の増殖及び遊走に対するA00790171のin vitro有効性
c−Met陽性ヒト多発性骨髄腫細胞において、HGF誘導性の増殖及び遊走に対するA00790171のin vitro有効性を評価した。HGF自己分泌(ANBL−6)及び傍分泌(INA−6及びOH−2)多発性骨髄腫細胞株を使用して、Hov et al. (Hov et al. 2004; Clin Cancer Res 10, 6686-6694; and Hov et al., 2009; Eur J Haematology 82, 277-287)にしたがって、増殖実験を実施した。簡潔に言えば、細胞を培養し(10%ウシ胎仔血清(ANBL−6及びINA−6)又は10%ヒト血清(OH−2)、2mmol/LのL−グルタミン及び40μg/mlのゲンタマイシン;維持因子として2ng/mlのIL−6を含むRPMI1640)、96ウェル細胞培養プレートに播種した(細胞10.000〜30.000個/ウェル)。IL−6を含まない培地で細胞を洗浄した後、細胞を、一連の用量範囲又は一定濃度のA00790171ナノボディ又はPHA-665752(ポジティブコントロールとして)と共に30分間インキュベーションしてから、HGF(200ng/ml)を追加した(HGF傍分泌細胞の場合のみ)。PHA-665752 (Tocris Bioscience)は、c−Met及び他の関連ファミリーメンバーの小分子阻害剤である。48時間後、Matrix 96 beta counter (Packard)でβ線照射を測定するために、1ウェルあたり1マイクロCiのメチル−[3H]チミジンで細胞をパルスし、18時間後に回収した。図7に示されているように、A00790171(図では、抗c−Metナノボディと示されている)で処置すると完全な増殖阻害が観察され、IC50値は約3nMのA00790171であり、完全阻害は約1μMのA00790171であった。また、HGF傍分泌細胞株INA−6では、10nMのA00790171で細胞を処置すると、HGF誘導性増殖がベースラインレベルまで特異的かつ完全に阻害されることが観察された(図8)。A00790171はHGF誘導性増殖に対して特異的であり、使用した最大濃度(1μM)で非特異的阻害効果を示さなかった。HGF傍分泌OH−2細胞株における同様の実験でも、より穏やかなHGF誘導性増殖の阻害がもたらされた(データは示さない)。
INA−6細胞を使用して、Holt et al. (2008; Haematologica 93, 619-622)にしたがって、遊走実験を実施した。簡潔に言えば、INA−6細胞をポリカーボネート膜Transwell(Corning;孔径)の上部区画に播種(4x105個の細胞)し、1μMのA00790171(図では、抗c−Metナノボディと示されている)又は200nMのPHA-665752(小分子c−Met阻害剤PHA-665752)と共にインキュベーションした。30分後、150ng/mLのHGF又は75ng/mLのSDF−1α(ポジティブコントロールの遊走促進性サイトカインとして)を追加した。37℃及び5%CO2で22〜24時間インキュベーションした後、Coulter Counter Z1 (Beckman Coulter, Fullerton, CA)によって、膜を通って下部区画に遊走した細胞数を決定した。図9に示されているように、A00790171は、INA−6細胞のHGF誘導性遊走を完全に遮断した。INA−6細胞のSDF−1α誘導性遊走は阻害されなかったことから、この効果はHGF特異的である。
結論としては、A00790171は、in vitroにおいて、ヒトHGF自己分泌及び傍分泌多発性骨髄腫細胞の増殖及び遊走を遮断することができた。
実施例13:PI3Kシグナル伝達に対する二重特異性c−Met/EGFRナノボディの有効性の分析
c−Met及びEGFRは、細胞分裂シグナルを変換するPI3K経路を介してシグナル伝達することができる。AKTによるEGFR及びc−Metレセプターリン酸化の同時ターゲティングを実証するために、PI3K経路の下流標的をモニタリングすることができる。この目的のために、基本的には実施例1.6にしたがって、非刺激細胞、EGF若しくはHGFで処置した細胞、又は両サイトカインで処置した細胞を、非特異性親コントロール又は二重特異性ナノボディと共に同時にインキュベーションする。あるいは、EGFRを過剰発現し、及び/又はc−Metシグナル伝達を活性化する自己分泌HGFループを有する細胞を評価することもできる。AKTは、PI3K経路の主な下流シグナル伝達コンポーネントであり、このタンパク質のリン酸化は、この経路を介したシグナル伝達の重要な指標である。
実施例14:MAPKシグナル伝達に対する二重特異性c−Met/EGFRナノボディの有効性の分析
EGFR及びc−Metレセプターは、MAPK経路を介してシグナル伝達することができる。ERK1/2によるEGFR及びc−Metレセプターリン酸化のターゲティングを実証するために、MAPK経路の主な下流標的をモニタリングすることができる。この目的のために、基本的には実施例1.6にしたがって、非刺激細胞、EGF若しくはHGFで処置した細胞、又は両サイトカインで処置した細胞を、非特異性、単一特異性又は二重特異性ナノボディと共に同時にインキュベーションする。あるいは、EGFRを過剰発現し、及び/又はc−Metシグナル伝達を活性化する自己分泌HGFループを有する細胞を評価することもできる。
実施例15:増殖阻害に対する二重特異性c−Met/EGFRナノボディの有効性の分析
他の研究で独立して確認されたように、A431細胞は、細胞表面で高レベルのEGFR及び細胞表面で中高発現のc−Metをディスプレイする。
二重特異性c−Met/EGFRナノボディによるA431増殖の阻害は、48時間後のCellTiterGlow(商標)アッセイで、又は基本的には実施例2.6に記載したように測定することができる。
実施例16:二重特異性ナノボディによる処置後の細胞遊走のin vitro分析。
活性c−Metシグナル伝達は、細胞の遊走及び浸潤に関与する。HGF誘導性遊走の阻害を測定することによって、二重特異性ナノボディの有効性を決定することができる。この目的のために、基本的には実施例2.6に記載したように、二重特異性ナノボディ、c−Metに対する単一特異性ナノボディ及びEGFR阻害剤の存在下又は非存在下で、HGF誘導性細胞株A549をHGFで処置する。あるいは、リードアウトとしてCIMプレートを使用してAcea Real Time analyzerで、細胞が8μmの細孔を通って遊走するのを時間依存的に測定する。
実施例17:KP4膵臓異種移植腫瘍モデルにおける二重特異性c−Met/VEGFナノボディの有効性の分析。
RPMI1640培地(Invitrogen)、2mMのL−グルタミン、及び10%ウシ胎仔血清からなる成長培地で、KP4細胞を培養する。マウス導入用の細胞を調製するために、細胞をトリプシン処理し、続いて、10ミリリットルの滅菌IXリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。トリパンブルー排除によって細胞のサブセットをカウントし、残りの細胞を100μlの滅菌IXPBSに再懸濁して、1ミリリットルあたり細胞5x107個の濃度にする。マウスの右肩甲下部に5x106個のKP4細胞を皮下接種する。腫瘍が平均容積230mmに達するまでそれらをモニタリングする。
マウスを無作為に5群(それぞれマウス10匹)に分け、処置を開始する。第1群のマウスを単一特異性c−Metナノボディで処置する。第2群のマウスを単一特異性VEGFナノボディで処置する。第3群のマウスを二重特異性c−Met/VEGFナノボディで処置する。第4群のマウスを単一特異性VEGFナノボディ及び単一特異性c−Metナノボディで処置する。第5群のマウスをネガティブコントロール(無関係なナノボディ)で処置する。腫瘍容積を1週間に2回測定し、動物を25日間モニタリングする。
実施例18:NSCLC異種移植腫瘍モデルにおける二重特異性c−Met/VEGFナノボディの有効性の分析。
RPMI1640培地(Invitrogen)、2mMのL−グルタミン、及び10%ウシ胎仔血清からなる成長培地で、ヒトNSCLC細胞(A549, DSMZ, Braunschweig, Germany)培養する。マウス導入用の細胞を調製するために、細胞をトリプシン処理し、続いて、10ミリリットルの滅菌IXリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。トリパンブルー排除によって細胞のサブセットをカウントし、残りの細胞を100μlの滅菌IXPBSに再懸濁して、1ミリリットルあたり細胞5x107個の濃度にする。マウスの右肩甲下部に5x106個のヒトA549細胞を皮下接種する。腫瘍が平均容積200mmに達するまでそれらをモニタリングする。
マウスを無作為に5群(それぞれマウス10匹)に分け、処置を開始する。第1群のマウスを単一特異性c−Metナノボディで処置する。第2群のマウスを単一特異性VEGFナノボディで処置する。第3群のマウスを二重特異性c−Met/VEGFナノボディで処置する。第4群のマウスを単一特異性VEGFナノボディ及び単一特異性c−Metナノボディで処置する。第5群のマウスをネガティブコントロール(無関係なナノボディ)で処置する。腫瘍容積を1週間に2回測定し、動物を25日間モニタリングする。
実施例19:NSCLC異種移植腫瘍モデルにおける三重特異性c−Met/VEGF/EGFRナノボディの有効性の分析。
RPMI1640培地(Invitrogen)、2mMのL−グルタミン、及び10%ウシ胎仔血清からなる成長培地で、ヒトNSCLC細胞(A549, DSMZ, Braunschweig, Germany)培養する。マウス導入用の細胞を調製するために、細胞をトリプシン処理し、続いて、10ミリリットルの滅菌IXリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。トリパンブルー排除によって細胞のサブセットをカウントし、残りの細胞を100μlの滅菌IXPBSに再懸濁して、1ミリリットルあたり細胞5x107個の濃度にする。マウスの右肩甲下部に5x106個のヒトA549細胞を皮下接種する。腫瘍が平均容積200mmに達するまでそれらをモニタリングする。
マウスを無作為に6群(それぞれマウス10匹)に分け、処置を開始する。第1群のマウスを単一特異性c−Metナノボディで処置する。第2群のマウスを単一特異性VEGFナノボディで処置する。第3群のマウスを単一特異性EGFRナノボディで処置する。第4群のマウスを単一特異性VEGFナノボディ、単一特異性EGFRナノボディ及び単一特異性c−Metナノボディで処置する。第5群のマウスを三重特異性c−Met/VEGF/EGFRナノボディで処置する。第6群のマウスをネガティブコントロール(無関係なナノボディ)で処置する。腫瘍容積を1週間に2回測定し、動物を25日間モニタリングする。
実施例20:選択したVHHの親和性成熟
20.1 33H10を2サイクルの親和性成熟に供する。
1回目のサイクルでは、エラープローンPCR法を使用して、フレームワーク(FW)及び相補性決定領域(CDR)の両方に、アミノ酸置換を無作為に導入した。1ngの33H10 cDNA鋳型を使用する2ラウンドPCRベースアプローチ(Stratagene, La Jolla, CA, USAから入手したGenemorph II Random Mutagenesis kit)、続いて、ラウンド1の産物0.1ngを使用する2回目のエラープローンPCRで、突然変異誘発を実施した。ポリッシュ工程の後、VHHライブラリのファージディスプレイを容易にするように設計されたベクターに、固有の制限部位を介してPCR産物を挿入した。漸減濃度のビオチン化リコンビナントカニクイザルcMet(biot−rcycMet)及びトリプシンによる溶出を使用して、連続ラウンドのin−solution選択を実施した。3回目及び4回目のラウンドでは、コールドカニクイザルcMet(rcycMet)(ビオチン化cMet(biot−rcycMet)よりも少なくとも100倍過剰)を使用して、親和性駆動型の選択も実施した。LacZプロモーター、アンピシリン耐性遺伝子、マルチクローニング部位及びompAリーダー配列を含有するpUC19由来の発現ベクター(pAX50)を使用して、個々の突然変異体をリコンビナントタンパク質として生産した。発現ベクターライブラリでE. coli TG1細胞をトランスフォーメーションし、寒天プレート(LB+Amp+2%グルコース)上にプレートした。寒天プレートから単一コロニーを剥がし、1mL 96ディープウェルプレートで成長させた。IPTG(1mM)を追加することによって、VHH発現を誘導した。標準的な方法にしたがってペリプラズム抽出物(容量約80μL)を調製し、ナノボディ競合アルファスクリーンアッセイ(2.3.1で概説した)及びProteOn (BioRad, Hercules, CA, USA)off速度アッセイで、リコンビナントヒトcMet/Fcに対する結合についてスクリーニングした。簡潔に言えば、一方の「リガンドチャネル」上では、リコンビナントヒトcMet/FcでGLC ProteOnセンサーチップをコーティングした(別の「リガンドチャネル」を参照チャネルとする)。親和性成熟クローンのペリプラズム抽出物を1/10希釈し、「分析物チャネル」A1−A6に注入した。プレートに存在する親クローンの平均off速度を計算し、off速度の改善を計算するために参照として用いた。
2回目のサイクルでは、1回目のサイクルで同定した感受性位置を同時に無作為化することによって、コンビナトリアルライブラリを作った。このために、無作為化位置で変性したオリゴヌクレオチド(NNS)を使用してオーバーラップPCRによって、完全長の33H10 cDNAを合成し、レスキューPCRを実施した。上記特異的制限部位を使用して、無作為化VHH遺伝子をファージディスプレイベクター(pAX212)に挿入した。個々のVHHクローンのペリプラズム抽出物の調製は、前記のように実施した。
TSAアッセイでは、ナノボディを濃度0.2mg/mlに希釈し、検出用のLightcycler (Roche)を使用して、Sypro Orange(これは、タンパク質がアンフォールディングされると曝露されるTrp残基に結合する色素である)の存在下で、温度を段階的に増加させることによって、融解温度(Tm)を様々なpHで決定した。HGF競合アルファスクリーンは、実施例2(2.3.1)に記載したように実施した。SEC分析では、マルチマー又は凝集体を検出することができるように、Phenomenex matrixでナノボディを分析した。
実施例21:33H10の配列最適化
配列最適化のために、以下の突然変異を調査した:E1D、A14P、E43K、S71R、S72D、A74S、N82bS、及びQ108L。表16に記載されているように、16個の個々の突然変異体を作製した(配列番号117〜132)。
すべての構築物をE. coli発現ベクターにクローニングし、培地容量0.5L〜1.5LのTB培地で、3×FLAG−His6タグ付タンパク質としてE. coliで発現させた。1mMのIPTGを追加することによって発現を誘導し、37℃及び250rpmで4時間維持した。細胞をプレートし、凍結解凍することによってペリプラズム抽出物を調製し、dPBSに再懸濁した。Histrap FF crude columns (GE healthcare)を使用する固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)の出発材料として、これらの抽出物を使用した。250mMのイミダゾールを用いてカラムからナノボディを溶出させ、続いてD−PBSで脱塩した。抗His6及び抗VHHによる検出を使用して還元SDS−PAGE及びウエスタンブロットによって、ナノボディの精製及び完全性を確認した。
3つの異なるアッセイで、精製ナノボディを試験した:(i)サーマルシフトアッセイ(TSA)における融解温度(Tm)の決定、(ii)HGF競合アルファスクリーンにおけるin vitro効力の分析、及び(iii)分析的サイズ排除(SEC)分析。
TSAアッセイでは、ナノボディを濃度0.2mg/mlに希釈し、検出用のLightcycler (Roche)を使用して、Sypro Orange(これは、タンパク質がアンフォールディングされると曝露されるTrp残基に結合する色素である)の存在下で、温度を段階的に増加させることによって、融解温度(Tm)を様々なpHで決定した。HGF競合アルファスクリーンは、実施例2(2.3.1)に記載したように実施した。SEC分析では、マルチマー又は凝集体を検出することができるように、Phenomenex matrixでナノボディを分析した。
表17に要約されているように、S71R突然変異は効力に対して悪影響を及ぼしたので、最終的な配列最適化クローンから排除する;Tmは、わずかに約0.5℃増加した。E43K突然変異は、効力に対してわずかに悪影響を及ぼした;Tmは、3〜4℃増加したが、これは、クローンの安定性の増加を示している;この突然変異は、親和性成熟突然変異と組み合わせて再試験する。すべての他の突然変異は効力に影響を与えなかったので、配列最適化に含める。
さらに、Phenomenex matrixでの分析的SECにおけるクローンA007900738〜A007900753の移動度は、親クローンA007900184のものと同様であった。これらのナノボディは予想分子量で溶出し、有意な凝集は観察されなかった。
結論としては、Nanobody(登録商標)の配列最適化は、タンパク質の構造、活性及び安定性が野生型クローンのタンパク質の構造、活性及び安定性に対して同様に維持されたナノボディをもたらした。
実施例22:配列最適化及び親和性成熟突然変異の組み合わせ
表18に要約されているように、実施例20及び21で同定した突然変異を、9個の個々のクローンのセットで組み合わせた。
構築物A007901245〜A007901253(配列番号133〜141)をE. coli発現ベクターにクローニングし、培地容量0.5L〜1.5LのTB培地で、3×FLAG−His6タグ付タンパク質としてE. coliで発現させた。1mMのIPTGを追加することによって発現を誘導し、37℃及び250rpmで4時間維持した。細胞をプレートし、凍結解凍することによってペリプラズム抽出物を調製し、dPBSに再懸濁した。Histrap FF crude columns (GE healthcare)を使用する固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)の出発材料として、これらの抽出物を使用した。250mMのイミダゾールを用いてカラムからナノボディを溶出させ、続いてD−PBSで脱塩した。抗His6及び抗VHHによる検出を使用して還元SDS−PAGE及びウエスタンブロットによって、ナノボディの精製及び完全性を確認した。
3つの異なるアッセイで、精製ナノボディを試験した:(i)サーマルシフトアッセイ(TSA)における融解温度(Tm)の決定、(ii)HGF競合アルファスクリーンにおけるin vitro効力の分析、(iii)細胞ベースのcMetリン酸化アッセイ、(iv)細胞ベースの増殖アッセイ、及び(v)分析的サイズ排除(SEC)分析。
TSAアッセイは、上に概説したように実施した。HGF競合アルファスクリーンは、実施例2(2.3.1)に記載したように実施した。細胞ベースのcMetリン酸化アッセイは、実施例1.6に概説したように実施した。細胞ベースの増殖アッセイは、実施例2.5に概説したように実施した。SEC分析では、マルチマー又は凝集体を検出することができるように、Phenomenex matrixでナノボディを分析した。
サブ選択のナノボディをそれらのC末端において、9GSリンカーで隔てて抗ヒト血清アルブミン(HSA)結合ナノボディ(ALB11)に融合した。構築物は、さらなるC末端アラニン残基を有していた。
ナノボディを培地容量5mLでP. pastorisにおいて発現させた。メタノールを追加することによってナノボディの発現を誘導し、30℃で48時間維持した。プロテインAアフィニティクロマトグラフィー(MabCap A POROS, Applied Biosystems)による精製の出発材料として、上澄みを使用した。
サーマルシフトアッセイ、分析的サイズ及びHGF競合アルファスクリーンで、ナノボディを試験した;ビオチン化HGFの濃度を0.1nMから0.4nMに増加させ、cMet/Fcの濃度を0.1nMから0.016nMに減少させることによって、後者を(最初に記載した設定と比較して)より高感度に改変した(表20を参照のこと)。
Phenomenex matrixでの分析的SECにおけるクローンA007901255〜A007901260の移動度は同様であった:これらのナノボディは予想分子量で溶出し、有意な凝集は観察されなかった。
実施例23:KP4異種移植モデルにおけるナノボディ04E09−9GS−Alb11に対する可溶性c−Metの反応
HGF−及びc−Met依存性異種移植モデル(ここでは、雌性nu/nuマウスに、1000万(107)個のKP4膵臓腫瘍細胞(RCB1005, Riken Biosource Center Cell Bank)を皮下接種した)において、04E09−9GS−Alb11ナノボディ(クローンA00790035、配列番号7)による処置に対する可溶性c−Metの反応をさらに評価した。KP4細胞もまた、HGF及びc−Metの自己分泌ループを有する。平均腫瘍容積125mm3に達した後、04E09−9GS−Alb11ナノボディ(10mg/kg、腹腔内(i.p.)、1日2回を3日間(Q2Dx3))又はビヒクル(PBS、10ml/kg、腹腔内(i.p.))でマウスを無作為に処置した。マウスを15日間処置した。最終投与の24時間後(すなわち、腫瘍移植後22日目)に、血液採取のために、A00790035又はビヒクルで処置したマウスすべてを、二酸化炭素への過剰曝露により安楽死させた。末端心穿刺によって、全血を採取した。血液及びEDTAを完全に混合するために、EDTA Microtainer(登録商標)チューブを数回反転させた。次いで、試料を4℃で5分間遠心分離(9300rcf)して血漿を作った。血漿を取り出し、ラベルした微小遠心管に入れた。すべての血漿試料を凍結し、分析まで−80℃で保存した。目的に合った市販のELISAキット(R&D systems)を使用して、可溶性c−Metレベルについて、試料を分析した。各動物の可溶性c−Metレベル、及び両処置群についての平均±平均の標準誤差を示す。
図10に示されているように、04E09−9GS−Alb11ナノボディで処置したマウス(0.507ng/ml)では、平均可溶性c−Metレベルは、ビヒクルで処置したマウス(5.348ng/ml)と比較して大きく減少していた。
要約すると、ナノボディは、平均可溶性c−Metレベルを減少させるのに有効である。さらに、試料中に存在する可溶性c−Metの量は、全体的な腫瘍量の明確な指標を提供するものであり、疾患状態をモニタリングするためにこのバイオマーカーを使用すること、及び投与療法の有効性を強調していると結論付けることができる。
実施例24:A00790171は、INA−6多発性骨髄腫細胞株において、HGF媒介性のc−Metリン酸化並びにMAPK及びAktの下流シグナルを遮断する
HGFがそのレセプターc−Metを介して媒介するシグナル伝達を抗c−MetナノボディA00790171が阻害する能力を研究するために、HGF誘導性INA−6多発性骨髄腫細胞株において、c−Met上のc−MetチロシンエピトープTyr1234/1235、Tyr1346及びTyr1003のリン酸化レベルを調査した。また、下流タンパク質p44/42MARK及びAkt(Ser473)のリン酸化を評価した。平行して、全c−MET、全Akt及びGADPHのレベルを決定した。c−Metチロシンキナーゼ阻害剤PHA-665752(200nM)をポジティブコントロールとして使用した(Hov et al. .2004; Clin Cancer Res 10, 6686-6694)。簡潔に言えば、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)で4回洗浄することによって、ヒト血清及びIL−6についてINA−6細胞を枯渇させ、続いて無血清環境で3時間飢餓させ、24ウェルプレートに播種した(0,1%BSAを含む1000μLのRPMIに1,0x106個の細胞)。細胞をA00790171(c−Met Tyrリン酸化実験では0.1、0.25、0.5、1及び1.5及び50nM;MARK及びAktリン酸化実験では0.5、1及び1nM)又はPHA-665752(200nM)と共にプレインキュベーションし、続いて、150〜200ng/mLのHGFで又はこれを加えずに5〜7分間処置した。回収してペレット化した後、細胞を溶解緩衝液(1%NP40、150mmol/LのNaCl、50mmol/LのTrisHCl 7,5、10%グリセロール、1mmol/LのNaF、2mmol/LのNa3VO4及びプロテアーゼ−ホスファターゼ阻害剤の混合物(Complete mini tablets, Roche, Basel, Switzerland))に再懸濁した。氷上で30分後、12,000xg、4℃で20分間遠心分離することによって、核をペレット化した。10mmol/Lのジチオトレイトールを含むドデシル硫酸リチウム試料緩衝液(Invitrogen, Carslbad, CA)と試料を混合し、98℃で2分間加熱し、4〜12%又は10%Bis−trisゲル(Invitrogen)上で分離した。次いで、タンパク質をiBlot(登録商標)dry blotting system (Invitrogen)のニトロセルロース膜に転写した。0,05%Tween 20を含む5%BSA又は5%スキムミルクのTris緩衝生理食塩水で膜をブロッキングし、リン酸化タンパク質に対する抗体と共に4℃で一晩インキュベーションした。西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲーション抗体(DAKO Cytomation, Copenhagen, Denmark)及びSupersignal(登録商標)West Femto Maxiumum Sensitivity Substrate (Thermo scientific, Rockford, IL, USA)を用いて、検出を実施した。62,5mmol/LのTris−HCl(pH6.6)、2%SDS、及び10mmol/Lの2−メルカプトエタノールを含有するストリップ緩衝液中で穏やかに回転させながら、膜を60℃で30分間ストリップし、次いで、0,05%Tween 20を含むTris緩衝生理食塩水で洗浄し、0,05%Tween 20を含む5%スキムミルク又はBSAのTris緩衝生理食塩水でブロッキングし、非リン酸化エピトープに対する抗体でプローブした。リン酸化p44/42MAPK、全p44/42、リン酸化Akt、全Akt、リン酸化c−Met(Tyr1234/1235)、リン酸化c−Met(Tyr1349)及び全c−Metに対する抗体は、Cell Signaling Technology (Beverly, MA)製であった。リン酸化c−Met(Tyr1003)を認識する抗体は、Invitrogen (Camarillo, CA)製であった。GAPDHに対する抗体は、Abeam (Cambridge, United Kingdom)製であった。
図11に見られるように、A00790171を追加することにより、INA−6細胞のHGF刺激(200ng/ml)後に、Tyr 1349(A)、Tyr1234/1235(B)及びTyr1003(C)におけるc−Metのリン酸化が用量依存的(0.1〜1nM)に減少した。ナノボディ濃度を1nMよりも高くすると、c−Metのリン酸化が完全に遮断された。c−Metに対するHGFの結合は、p44/42MAPK及びAktのリン酸化を媒介することが公知である。図12に示されているように、A00790171は、HGF(150ng/ml)媒介性のp44/42MAPK(図12A)及びAkt(図12B)リン酸化を遮断することができた。結論としては、A00790171は、c−Metのチロシン残基Tyr1349、Tyr1234/1235及びTyr1003のリン酸化、並びに下流タンパク質p44/42MAPK及びAkt(Ser473)のリン酸化を遮断する。
実施例25:抗c−MetナノボディA00790171は、フィブロネクチンに対するヒト骨髄腫細胞株INA−6のHGF媒介性接着を遮断する
骨髄における多発性骨髄腫細胞の接着は、骨髄腫細胞の成長及び生存に重要である。骨髄マトリックスタンパク質に対する骨髄腫細胞の接着は、薬物耐性を促進することが示されている(Daiton WS, Cancer Treat Rev 2003; 29 Suppl 1:11-9.)。HGFは、フィブロネクチンに対する骨髄腫細胞の接着を刺激することが過去に示された(Holt RU et al., 2005, Haematologica, 90(4):479-88)。本目的は、フィブロネクチンに対するINA−6細胞のHGF媒介性接着に対するA00790171の効果が何であるかを調査することであった。簡潔に言えば、ヒト血漿フィブロネクチン(20μg/mLのPBS溶液、80μL/ウェル)を用いて、96ウェル丸底マイクロプレート(Sarstedt, Newston, NC)を4℃で一晩コーティングし、BSA(1mg/mL、100μL/ウェル)を用いて室温で1時間ブロッキングし、最後にHBSSで3回洗浄した。INA−6細胞をHBSSで3回洗浄し、0,1%BSAを含む5mLのRPMIに再懸濁し、時々撹拌しながら1μg/mLのアセトキシメチルエステル−2’,7ビス−(2−カルボキシエチル)−5−(及び6)−カルボキシフルオセイン(BCECF−AM)(蛍光色素)と共に37℃で1時間インキュベーションした。HBSSで3回洗浄した後、3〜5x104個の細胞(細胞アベイラビリティに応じて)を1ウェルあたり総容量100μLで播種し、5%CO2、37℃で2時間インキュベーションした。細胞をBSA(コントロールとして)又はHGF(150ng/ml)若しくはSDF−1α(75ng/ml)(ポジティブコントロールの遊走促進性サイトカインとして)のいずれかと共にインキュベーションした。c−Metチロシンキナーゼ阻害剤PHA-665752をポジティブコントロールとして使用した。続いて、プレートをHBSSで十分に4回洗浄して、非接着細胞を除去した。残った細胞を50μL/ウェルの1%Triton X−100で可溶化した。VICTOR (PerkinElmer, Waltham, MA)蛍光リーダーを用いて、538nmの蛍光レベルを決定した。INA−6細胞を100nMのA00790171と共にプレインキュベーションすると、フィブロネクチンに対するHGF(150ng/ml)誘導性接着は無効化された(図13)。フィブロネクチンに対するSDF−1α誘導性接着は、このナノボディによって有意な影響を受けないが、これは、このナノボディの効果がc−Met特異的であることを示唆している。結論としては、A00790171は、フィブロネクチンに対するINA−6細胞のHGF誘導性接着を遮断する。
実施例26:A00790171は、HGFの骨芽細胞形成阻害を無効化する
骨芽細胞及び破骨細胞は、骨の形成及び再吸収に関わる特別な細胞である。骨髄腫骨疾患では、骨恒常性の異常調節、破骨細胞形成の誘導、及び骨形成の阻害がある。骨特異的アルカリホスファターゼ(bALP)は、骨芽細胞によって産生される。bALPの産生は骨形成中に多いことから、bALPは、全体的な骨形成活性の良い指標である(van Straalen JP et al., 1991 Clin Chim Acta; 201(1-2):27-33)。組織形態学的研究により、bALPと骨形成の動的パラメータとの間の有意な相関関係が示されている(Abildgaard et al,, 2000, Eur J Haematol 2000;64(2):121-9)。HGFは、in vitroで骨芽細胞形成に対する阻害効果を有することが公知である。早期の骨芽細胞分化のマーカーとして使用されることが多いbALP活性は、HGFの追加によって阻害される(Standal et al., 2007 Blood ;109(7):3024-30)。また、HGFは、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のin vitro石灰化に対する阻害効果を有することが公知である。hMSCの石灰化は、Alizarin Red-S (ARS)染色によって定量及び可視化することができる。この実験では、Standal et al., 2007 (Blood ;109(7):3024-30)に記載されている手順にしたがって、bALP活性及びhMSCの石灰化に対するA00790171の効果を評価した。
抗c−MetナノボディA00790171は、BMP_2誘導性bALP活性に対するHGF(100ng/ml)の阻害効果を用量依存的に無効化し、20nM以上の濃度では、bALP活性に対するHGFの阻害効果は、完全に無効化された(図14A)。処置の21日後に定量又は可視化したところ、A00790171(5nM)は、hMSCの石灰化に対するHGF(100ng/ml)の阻害効果を完全に低減した(図14B〜C)。これは、過去の知見を裏付けている。結論としては、A00790171は、HGFの骨芽細胞形成阻害を無効化する。