以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
実施の形態1.
(保護継電装置の全体構成)
図1は、この発明の実施の形態1による保護継電装置の全体構成図である。
図1を参照して、本実施の形態1による保護継電装置1は、ディジタル保護継電装置であり、電気所(変電所)の所内に設置される。保護継電装置1は、電力系統を構成する送電線5から電流および電圧の情報(系統電気量)を収集し、その収集した系統電気量に基づいて電力系統の保護・制御を行なう。
電気所の所内には、保護継電装置1の他に、計器用変流器(Current Transformer:CT)2、計器用変圧器(Voltage Transformer:VT)3、遮断器(Circuit Breaker:CB)4、および補助変成器10が設置されている。CT2は、送電線5を流れる電流を測定する。計器用変圧器VTは、送電線5に生じる電圧を測定する。CT2およびVT3が測定した電流および電圧の情報(系統電気量)は、補助変成器10を介して保護継電装置1へ入力される。補助変成器10は、CT2およびVT3からの系統電気量を取り込み、より小さな電気量に変換して保護継電装置1へ出力する。
CB4は開閉器の代表例として示される。開閉器には、CB4の他、図示しない断路器LS(Line Switch)等が含まれる。
保護継電装置1は、収集した系統電気量を用いて保護リレー演算などの必要な演算を実行し、系統事故の発生を検出する。そして、保護継電装置1は、送電線5において事故を検出すると、開閉器に対して遮断指令(トリップ信号)を出力する。具体的には、保護継電装置1は、アナログ入力処理部20と、制御部40と、出力部40と、ディジタル入力処理部90と、スイッチ92とを備える。
アナログ入力処理部20は、補助変成器10から出力される系統電気量をアナログデータからディジタルデータに変換する。具体的には、アナログ入力処理部20は、フィルタ21,23と、サンプルホールド(SH)回路24,25と、マルチプレクサ26と、アナログ/ディジタル(Analog to Digital:A/D)変換器27とを含む。フィルタ21,23は、アナログローパスフィルタであり、補助変成器10から出力される電流および電圧の波形信号からノイズ成分を除去する。フィルタ21,23の出力は、SH回路24,25にそれぞれ入力される。
SH回路24,25はそれぞれ、フィルタ21,23から出力される電流および電圧の波形信号を所定のサンプリング周期でサンプリングする。マルチプレクサ26は、制御部30から入力されるタイミング信号に基づいて、SH回路24,25から入力される波形信号を順次切り替えてA/D変換器27に入力する。A/D変換器27は、マルチプレクサ26から入力される波形信号をアナログデータからディジタルデータに変換する。A/D変換器27は、ディジタル変換した波形信号(ディジタルデータ)を制御部30へ出力する。
制御部30は、保護継電装置1の動作を統括制御する。制御部30は、マイクロコンピュータを主体として構成される。具体的には、制御部30は、CPU(Central Processing Unit)32、ROM(Read Only Memory)33およびRAM(Random Access Memory)34などの記憶部と、入出力インターフェイス(I/F)35と、DO(ディジタル出力)回路36と、周辺I/F回路37とを含む。これらはシステムバス31で結合されている。制御部30は、予めROM33に格納されたプログラムをCPU32がRAM34に読出して実行することによって、保護継電装置1の動作を統括制御する。
具体的には、アナログ入力処理部20からのディジタルデータは、システムバス31を介してCPU32に取り込まれる。CPU32は、入力されるディジタルデータを、ROM33に収められているアルゴリズム(保護継電装置1の判定プログラム)により演算する。CPU32は、演算値が整定値を上回っていれば、DO回路36から出力部40にトリップ信号を発生する。出力部40は、DO回路36からのトリップ信号に応答して遮断指令を発生する。
ディジタル入力処理部90は、保護機器のオンオフ情報を示す信号であるディジタル入力信号を受ける。図1には、保護機器のオンオフ情報を示すディジタル入力信号の一例として、CB4の開閉情報を示すディジタル入力信号が示されている。ディジタル入力信号は、H(論理ハイ)レベルとL(論理ロー)レベルとに二値化された信号である。
ディジタル入力処理部90は、CB4から与えられるディジタル入力信号に基づいてCB4の開閉情報を示すオンオフ信号を生成する。ディジタル入力処理部90は、その生成したオンオフ信号を、周辺I/F回路37を介してシステムバス31へ送信する。CPU32は、システムバス31から与えられるオンオフ信号に基づいて保護継電装置1の出力を常時監視することにより、誤動作側の不良を検出する。
(ディジタル入力処理部の構成)
以下、ディジタル入力処理部90の具体的構成について説明する。図2は、図1におけるディジタル入力処理部90の構成を示す回路図である。図2では、簡単のため、ディジタル入力処理部90は、1つの入力チャネルを有しており、この入力チャネルにCB4(図1)からのディジタル入力信号を受けるものとする。また、図2においては、保護継電装置1の構成要素として、ディジタル入力処理部90および制御部30のCPU32のみが示されているが、保護継電装置1には、図1に示したアナログ入力処理部20、制御部30のCPU32以外の他の要素、出力部40およびスイッチ92をさらに具備していることを確認的に記載する。
図2を参照して、ディジタル入力処理部90は、保護継電装置1に設けられた外部入力端子51,52を介して、電気所の所内に設置された直流電源Eに接続される。直流電源Eの電源電圧Vdcは、電力系統の電圧階級に応じて異なる電圧値を示す。例えば電源電圧Vdcは、48V,110V,220Vなどの値をとる。直流電源Eの正極は外部入力端子51に接続され、直流電源Eの負極は外部入力端子52に接続される。直流電源Eの負極はさらに接地ノードGNDに接続される。
直流電源Eの正極と外部入力端子51との間には、スイッチSWが設けられる。スイッチSWには、たとえば機械式接点を有するリレーなどが用いられる。スイッチSWは、CB4からのディジタル入力信号に応じて、閉状態(オン状態)または開状態(オフ状態)に制御される。具体的には、ディジタル入力信号は、CB4が閉状態のときにH(論理ハイ)レベルとなり、CB4が開状態のときにL(論理ロー)レベルとなる。スイッチSWは、Hレベルのディジタル入力信号に応答して閉状態(オン状態)となり、Lレベルのディジタル入力信号に応答して開状態(オフ状態)となる。すなわち、CB4がオン状態のときにスイッチSWはオン状態に制御され、CB4がオフ状態のときにスイッチSWはオフ状態に制御される。このようにして、スイッチSWは、CB4の開閉動作に連動して開閉する。
そして、スイッチSWがオン状態に制御されると、直流電源Eの電源電圧Vdcが外部入力端子51を介してディジタル入力処理部90に入力される。ディジタル入力処理部90は、外部入力端子51に入力された入力直流電圧Vinに基づいてCB4の開閉状態を示すオンオフ信号を生成する。
具体的には、ディジタル入力処理部90は、抵抗素子53,54と、比較器55と、閾値設定回路56と、フォトカプラ57と、プルアップ抵抗素子58,59と、定電流回路100とを含む。
抵抗素子53,54は、外部入力端子51と外部入力端子52との間にこの順で直列に接続される。抵抗素子53,54は分圧回路を構成する。分圧回路は、入力直流電圧Vinを抵抗素子53,54で分圧し、分圧電圧Vdivを出力する。入力直流電圧Vinは、スイッチSWのオンオフ状態に応じて、ハイ電圧レベル(電源電圧Vdcに相当)およびロー電圧レベル(接地電圧に相当)の二値をとる。したがって、分圧電圧Vdivも入力直流電圧Vinに応じて二値化された電圧となる。
抵抗素子53および抵抗素子54の接続ノード(分圧回路の出力端子に相当)は、比較器55の非反転入力端子(+端子)に接続される。比較器55の反転入力端子(−端子)には閾値設定回路56で生成された閾値電圧Vthが入力される。
比較器55は、分圧回路から出力された分圧電圧Vdivと、閾値電圧Vthとを比較し、比較結果を出力する。分圧電圧Vdivが閾値電圧Vthを超えているとき、比較器55の出力信号はHレベルとなる。
フォトカプラ57は、比較器55の出力信号に基づいて、CB4の開閉状態を示すオンオフ信号を生成する。具体的には、フォトカプラ57は、フォトダイオード57aと、フォトトランジスタ57bとを含む。フォトダイオード57aのアノード端子はプルアップ抵抗素子58を介して動作電源60に接続される。フォトダイオード57aのカソード端子は比較器55の出力端子に接続される。フォトトランジスタ57bのコレクタ端子はプルアップ抵抗素子59を介して動作電源91に接続され、エミッタ端子は信号接地SGに接続される。フォトカプラ57は、フォトトランジスタ57bのコレクタ端子にオンオフ信号を発生し、その発生したオンオフ信号をCPU32に出力する。なお、動作電源60および動作電源91は、変電所内において直流電源Eの電源電圧Vdcを降圧して生成された電源電圧である。ただし、動作電源91は動作電源60よりも電源電圧が低い。
上記の構成において、比較器55がHレベルの出力信号を出力した場合、すなわち、分圧電圧Vdivが閾値電圧Vthを超えている場合には、フォトダイオード57aおよびフォトトランジスタ57bが非導通状態になるため、フォトカプラ57の出力信号(オンオフ信号)はHレベルとなる。一方、比較器55がLレベルの出力信号を出力した場合、すなわち、分圧電圧Vdivが閾値電圧Vth以下となる場合には、フォトダイオード57aおよびフォトトランジスタ57bが導通状態になるため、フォトカプラ57の出力信号(オンオフ信号)はLレベルとなる。
このように、ディジタル入力処理部90から出力されるオンオフ信号は、分圧電圧Vdivが閾値電圧Vthを超えるときHレベルとなり、分圧電圧Vdivが閾値電圧Vth以下となるときLレベルとなる。すなわち、フォトカプラ57は、比較器55の出力信号を電気的に絶縁しながらCPU32に伝達するための送信部を構成する。
(閾値設定回路56の構成)
分圧電圧Vdivの大きさは、入力直流電圧Vinに応じて変化する。入力直流電圧Vinは、スイッチSWがオン状態(=CB4がオン状態)のとき直流電源Eの電源電圧Vdcとなり、スイッチSWがオフ状態(=CB4がオフ状態)のとき接地電圧となる。すなわち、スイッチSWの開閉状態(=CB4の開閉状態)に応じて入力直流電圧Vinが電源電圧Vdcまたは接地電圧に切り替わることにより、ディジタル入力処理部90から出力されるオンオフ信号はHレベルまたはLレベルに切替わる。よって、CPU32は、オンオフ信号に基づいてCB4の開閉情報を取得することができる。
その一方で、直流電源Eの電源電圧Vdcは電力系統の電圧階級によって異なるため、入力直流電圧Vinからオンオフ信号を生成するためには、電圧階級ごとに閾値設定回路を作り分ける必要があり、製造コストおよび管理コストの増大を招く。
そこで、本実施の形態では、閾値設定回路56で生成される閾値電圧Vthを、電圧階級に応じて切り替え可能とする。これにより、複数の電圧階級の間で閾値設定回路の共通化を実現する。具体的には、閾値設定回路56は、m個(mは2以上の整数)の閾値電圧Vth_1〜Vth_mを生成可能に構成される。m個の閾値電圧Vth_1〜Vth_mは互いに異なる電圧値をとる。閾値設定回路56は、CPU32からの制御信号SIG1〜SIGmに応じて、閾値電圧Vth_1〜Vth_mを切り替えて出力する。
一例として、CPU32は、直流電源Eの電源電圧Vdcと閾値電圧Vthとの関係を予め求めておくとともに、その対応関係を予めマップまたは関係式としてROM33に格納しておく。CPU32は、当該マップまたは関係式を参照して、直流電源Eの電源電圧Vdcに対応する閾値電圧Vthを算出し、その算出した閾値電圧Vthに基づいて、m個の制御信号SIG1〜SIGmの中から1つの制御信号SIGi(iは1以上m以下の整数)を選択してHレベル(活性状態)とする。一方、CPU32は、残りの(m−1)個の制御信号をLレベル(非活性状態)とする。閾値設定回路56は、Hレベルに活性化された制御信号SIGiを受けると、制御信号SIGiに対応する閾値電圧Vth_iを選択し、閾値電圧Vthとして比較器55の反転入力端子に出力する。
(定電流回路100の構成)
以上に示した構成において、スイッチSWがオン状態(=CB4がオフ状態)のときには、直流電源E、スイッチSWおよび、抵抗素子53,54からなる分圧回路の間で閉回路が形成され、直流電源EからスイッチSWを経由して分圧回路に電流が流れる。分圧回路は、直流電源Eから供給される電流を分圧電圧Vdivに変換して出力する「変換回路」として機能し得る。
上記の分圧回路においては、スイッチSWの開閉時にサージ電流のような大きな電流が発生すると、ノイズとなってディジタル入力処理部90の誤動作を引き起こす可能性がある。また、サージ電流の侵入によって比較器55が損傷するおそれがある。このようなサージ電流を抑制するため、および、比較器55の定格入力電圧値まで電源電圧Vdcを降圧する必要があるため、抵抗素子53,54に数kΩ程度の高い抵抗値を有する素子が使用される。これにより、閉回路を流れる電流は数mA程度の微小な電流に制限される。
その一方で、抵抗素子53,54の抵抗値を高くするに従って閉回路を流れる電流が小さくなる。スイッチSWに機械式接点を有するリレーを用いた場合には、スイッチSWの開閉を繰り返すことによってリレーの接点が酸化し、接点の表面に酸化被膜が生じる。上記のように閉回路を流れる電流が小さくなり、接点表面の酸化被膜を溶融することのできる電流値を下回ると、スイッチSWをオンしたときに酸化被膜を破壊することが困難となり、結果として接点の接触不良につながる可能性がある。
スイッチSWに接触不良が生じると、ディジタル入力処理部90は、CB4から送信されるディジタル入力信号を正確に取り込むことができなくなるため、誤ったオンオフ信号を生成するおそれがある。したがって、ディジタル入力処理部90の正常動作を確保するためには、直流電源E、スイッチSWおよび分圧回路からなる閉回路を流れる電流を、スイッチSWの接点表面を覆っている酸化被膜を破壊することが可能な電流値に調整する必要がある。これには、直流電源Eの電源電圧Vdcごとに、すなわち、電力系統の電圧階級ごとに、分圧回路を構成する抵抗素子53,54を、サージ電流を抑制しつつ酸化被膜を溶融することができる適当な抵抗値に設定することが求められる。その結果、上記の閾値設定回路と同様に、電圧階級ごとに分圧回路を作り分けることが必要となる。
本実施の形態においては、図2に示すように、一定の電流を流す定電流回路100が分圧回路の入力端子間に接続されている。言い換えれば、直流電源E、スイッチSWおよび分圧回路から構成される閉回路において、直流電源Eに対して分圧回路と並列に定電流回路100が接続されている。この定電流回路100は、分圧回路からスイッチSWに向かって流れる電流に対して一定の電流を加算する。これにより、接点表面を覆っている酸化被膜を破壊することが可能な電流値を有する電流をスイッチSWに流すことができる。この結果、電力系統の電圧階級ごとに分圧回路の抵抗値を調整することが不要となるため、複数の電圧階級の間で分圧回路を共通化することが可能となる。
以下、定電流回路100の具体的構成について説明する。図2および図3には、定電流回路100の構成の一例が示されている。
定電流回路100は、バリスタ(電圧非直線抵抗体)101と、プルアップ抵抗素子102と、ダイオード103と、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)104と、抵抗素子105とを含む。
ダイオード103、MOSFET104および抵抗素子105は、この順で外部入力端子51と外部入力端子52との間に直列に接続される。詳細には、ダイオード103のアノードは外部入力端子51に接続され、ダイオード103のカソードはMOSFET104のドレインに接続される。MOSFET104のソースは抵抗素子105を介して外部入力端子52に接続される。MOSFET104のゲートはプルアップ抵抗素子102を介して動作電源60に接続される。バリスタ101は、外部入力端子51とMOSFET104のソースとの間に接続される。
図3は、スイッチSWがオン状態のときに分圧回路および定電流回路を流れる電流を説明するための図である。
図3を参照して、スイッチSWがオン状態のときに抵抗素子53,54からなる分圧回路を流れる電流をI1とし、定電流回路100を流れる電流をI2とする。
分圧回路は、入力直流電圧Vinを分圧比αで分圧した電圧α・Vinを出力する。分圧回路の分圧比αは、抵抗素子53,54の抵抗値R1,R2を用いて表される。分圧比αは、R2/(R1+R2)に等しい。分圧回路を流れる電流I1は、Vin/(R1+R2)で表される。
定電流回路100においては、動作電源60の動作電源電圧からMOSFET104のゲート−ソース間電圧Vgsを差し引いた電圧が、抵抗素子105に印加される。動作電源電圧をVdc1とし、抵抗素子105の抵抗値をR3とすると、抵抗素子105を流れる電流I2は、(Vdc1−Vgs)/R3で表される。
なお、定電流回路100において、ダイオード103は、直流電源Eの逆接続対策として設置されている。また、バリスタ101は、外部入力端子51,52間にインパルス電圧が印加された場合に、MOSFET104をインパルス電圧から保護するために設けられている。
以上のような構成とすることにより、スイッチSWがオン状態のときには、電流I1と電流I2との合計電流(=I1+I2)がスイッチSWに流れる。上記のように、サージ電流を抑制する観点から、ワイドレンジの最低入力電圧に設定した場合において、電流I1は数10μA程度の微小な電流に調整されている。この電流I1よりも十分に大きい数mA程度の電流値に電流I2を調整することにより、スイッチSWには、接点表面を覆っている酸化被膜を溶融することが可能な大きさの電流値の電流を流すことができる。この結果、ディジタル入力処理部90は、CB4から与えられるディジタル入力信号に基づいて、正確なオンオフ信号を生成することができる。
なお、本実施の形態1では、定電流回路100において、抵抗素子105に定電流を駆動するための素子の代表例としてMOSFETを示しているが、当該素子にMOSFET以外の電圧駆動型素子を用いることができる点について確認的に記載する。
(作用効果)
このように、この発明の実施の形態1による保護継電装置によれば、スイッチを経由して直流電源から供給される電流を分圧電圧変換して出力する分圧回路に対して並列に定電流回路を設けることにより、スイッチの開閉時に分圧回路にサージ電流が流れるのを抑制し、かつ、入力電圧Vdcを降圧しつつ、スイッチの接点表面を覆っている酸化被膜を破壊することができる。これにより、ディジタル入力処理部の正常動作を確保することができる。
また、分圧回路からスイッチに向かう電流に対して定電流回路が一定の電流を加算する構成としたことにより、複数の電圧階級の間で分圧回路を共通化することができる。これにより、ディジタル入力処理部は様々な電圧階級に容易に対応することができるため、保護継電装置の製造コストおよび管理コストを低減することができる。
さらに、様々な電圧階級に対応可能なディジタル入力処理部を小型かつ簡素な構成で実現できるため、保護継電装置が大型化するのを防止できる。
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、分圧回路からスイッチSWに向かう電流I1に対して、定電流回路100により一定の電流I2を加算する構成について説明したが、スイッチSWの接点表面を覆っている酸化被膜を破壊することができる反面、酸化被膜の有無にかかわらず定電流回路100が定電流I2を流し続けるために、無駄に電力を消費する可能性がある。言い換えれば、スイッチSWの接点表面の酸化被膜が破壊されていれば、定電流回路100を用いないことが、保護継電装置の運転効率を高める点で有利である。
実施の形態2では、保護継電装置の運転効率の向上が可能なディジタル入力処理部の構成について説明する。なお、この発明の実施の形態2に従う保護継電装置1Aの全体構成は、図1と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。また、ディジタル入力処理部90Aの概略構成についても、定電流回路100Aの回路構成を除いて、図2と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
図4は、この発明の実施の形態2による保護継電装置1Aにおけるディジタル入力処理部90Aの構成を示す回路図である。
図4を参照して、ディジタル入力処理部90Aは、図2に示すディジタル入力処理部90において、定電流回路100に代えて、定電流回路100Aを設けたものである。定電流回路100Aは、図2に示す定電流回路100と基本的に同様の構成を有している。しかし、定電流回路100Aでは、トランジスタ106を含む点で定電流回路100とは異なっている。
トランジスタ106は、NPN型トランジスタであり、コレクタがMOSFET104のゲートに接続され、エミッタが外部入力端子52に接続され、ベースがCPU32に接続される。トランジスタ106のオン/オフは、CPU32からベースに入力される制御信号CNTによって制御される。
具体的には、トランジスタ106は、Hレベルの制御信号CNTに応答してオンされる。これにより、MOSFET104のゲートは、トランジスタ106を介して外部入力端子52(接地電圧)に接続される。この場合、MOSFET104はオフ状態となるため、スイッチSWがオン状態であっても、抵抗素子105に定電流I2が流れない。すなわち、定電流回路100Aは、Hレベルの制御信号CNTに従って、定電流I2を駆動できない「無効」の状態に設定される。
これに対して、トランジスタ106は、Lレベルの制御信号CNTに応答してオフされる。トランジスタ106がオフされることにより、MOSFET104のゲートは外部入力端子52(接地電圧)と電気的に切り離される。したがって、MOSFET104はオン状態となり、スイッチSWがオン状態のときに抵抗素子105に定電流I2が流れる。すなわち、定電流回路100Aは、Lレベルの制御信号CNTに従って、定電流I2を駆動可能な「有効」の状態に設定される。
このように、定電流回路100Aは、CPU32からの制御信号CNTに応じて、有効および無効のいずれかに設定される。すなわち、CPU32は、定電流回路100Aを有効にするか無効にするかを設定する「設定部」を実現する。
本実施の形態では、CPU32は、スイッチSWの開閉状態に応じて、定電流回路100Aを有効にするか無効にするかを設定する。具体的には、CPU32は、ディジタル入力処理部90Aから与えられるオンオフ信号に基づいてスイッチSWの開閉状態を監視している。スイッチSWが正常である場合には、実施の形態1で説明したように、CB4が閉状態のときに(=ディジタル入力信号がHレベルのときに)、スイッチSWは閉状態(オン状態)に制御される。一方、CB4が開状態のとき(=ディジタル入力信号がLレベルのときに)、スイッチSWは開状態(オフ状態)に制御される。ディジタル処理部90Aにより生成されるオンオフ信号は、スイッチSWがオン状態のときにHレベルとなり、スイッチSWがオフ状態のときにLレベルとなる。
CPU32は、ディジタル入力処理部90Aからのオンオフ信号に基づいて、スイッチSWがオン状態かオフ状態かを判定する。スイッチSWがオフ状態であると判定された場合には、CPU32はLレベルの制御信号CNTを生成する。Lレベルの制御信号CNTを受けてトランジスタ106がオフすることにより、定電流回路100Aは有効に設定される。
ここで、スイッチSWがオフ状態となる場合には、ディジタル入力信号がLレベルである場合と、ディジタル入力信号がHレベルであるにもかかわらず、スイッチSWの接点表面が酸化被膜で覆われて接触不良が生じている場合とが想定される。前者の場合には、直流電源Eと分圧回路との間には閉回路が形成されないため、たとえ定電流回路100Aを有効に設定しても電流I1,I2が流れることはない。
一方、後者の場合には、定電流回路100Aを有効に設定することで、スイッチSWには電流I1と電流I2との合計電流が流れる。これにより、スイッチSWの接点の表面を覆う酸化被膜が破壊されて接触不良が解消されるため、スイッチSWをオン状態に戻すことができる。
CPU32は、定電流回路100Aを有効に設定した後、接触不良の解消によってスイッチSWがオフ状態からオン状態に変化すると、制御信号CNTをLレベルからHレベルに切り替える。これにより、定電流回路100Aは無効に設定されるため、スイッチSWには電流I1のみが流れる。スイッチSWがオン状態である場合には、スイッチSWの接点表面が酸化被膜で覆われていない、正常な状態と判断することができる。したがって、このような場合には定電流回路100Aを無効に設定することによって、無駄な電力消費を抑えることができる。
以上のような制御構造に基づくディジタル入力処理部90Aの動作について図5を用いて説明する。
図5を参照して、時刻t1においてCB4が開状態から閉状態に変化した後、時刻t8においてCB4が閉状態から開状態に変化する場合を想定する。
時刻t1においては、CB4が開状態から閉状態に変化したことに応じて、ディジタル入力信号はLレベルからHレベルに変化する。このディジタル入力信号に応答して、スイッチSWはオフ状態からオン状態に切り替わる。
ディジタル入力処理部90Aは、ディジタル入力信号に基づいてオンオフ信号を生成する。生成されたオンオフ信号は、時刻t1においてLレベルからHレベルに変化する。CPU32は、ディジタル入力処理部90Aから出力されるオンオフ信号に基づいてスイッチSWがオン状態かオフ状態かを判定し、その判定結果に基づいて定電流回路100Aを有効にするか無効にするかを設定する。
具体的には、CPU32は、時刻t1以前は、Lレベルのオンオフ信号に基づいてスイッチSWがオフ状態と判定する。CPU32は、スイッチSWがオフ状態のときには、Lレベルの制御信号CNTを生成することにより、定電流回路100Aを有効に設定する。これにより、時刻t1においてスイッチSWがオン状態に切り替わると、定電流回路100Aに定電流I2が流れる。したがって、分圧回路を流れる電流I1と電流I2との合計電流(=I1+I2)がスイッチSWに流れる。
CPU32は、スイッチSWがオン状態に変化してから所定期間T1(第1の期間)が経過した時刻t2において、制御信号CNTをLレベルからHレベルに切り替える。この期間T1は、スイッチSWの接点表面を覆う酸化被膜を溶融するのに十分な長さに設定される。制御信号CNTがHレベルになったことに応答して、定電流回路100Aは無効に設定される。そのため、時刻t2以降、スイッチSWを流れる電流は、分圧回路を流れる電流I1のみとなる。
ここで、時刻t2よりも後の時刻t3において、スイッチSWの接点表面を覆っている酸化被膜によって接触不良が発生した場合を想定する。この場合、スイッチSWはオフ状態に変化するため、スイッチSWを流れる電流は0となる。スイッチSWがオフ状態になると、ディジタル入力処理部90Aにより生成されるオンオフ信号はHレベルからLレベルに変化する。
CPU32は、このオンオフ信号の変化に基づいて、CB4が開状態になったと誤って判定するおそれがある。これにより、保護継電装置1Aの誤動作を発生させる可能性がある。このような不具合を回避するため、時刻t3においてスイッチSWがオフ状態に変化すると、CPU32は、制御信号CNTをHレベルからLレベルに切り替える。時刻t3よりも後の時刻t4において、Hレベルの制御信号CNTに応答して定電流回路100Aは有効に設定される。これにより、スイッチSWを流れる電流は0から電流I1および電流I2の合計電流(=I1+I2)まで増加する。この電流の増加によって接点表面の酸化被膜が破壊されることにより、時刻t5においてスイッチSWはオン状態に戻る。
なお、スイッチSWがオフ状態になった時刻t3から定電流回路100Aが有効に設定される時刻t4までの期間T2(第2の期間)は、上記の期間T1よりも十分に短い期間である。上記のように接点表面の酸化被膜に起因してスイッチSWがオフ状態に変化した場合においては、スイッチSWがオフされた後直ちに定電流回路100Aを有効に設定することで、短時間で酸化被膜を破壊してスイッチSWをオン状態に戻すことができる。
CPU32は、定電流回路100Aを有効に設定した時刻t4から所定期間T3(第3の期間)が経過する時刻t6までの間、スイッチSWのオンオフの判定結果を無効とする。すなわち、CPU32は、期間T3の間はCB4が開状態か閉状態かの判断を行なわないこととする。この期間T3は、スイッチSWの接点表面の酸化被膜を破壊するのに要する時間よりも長い時間に設定される。
上記のように、接触不良によってスイッチSWがオフ状態に変化した場合には、定電流回路100Aを有効に設定した後にスイッチSWがオン状態に戻る。しかしながら、スイッチSWがオフ状態に変化した直後は、スイッチSWの接触不良が生じているのか、ディジタル入力信号がLレベルに変化したのかを区別することができない。そのため、ディジタル入力処理部90Aから出力されるオンオフ信号と実際のCB4の開閉状態との間に不一致が生じてしまい、保護継電装置の誤動作を引き起こす可能性がある。そこで、CPU32は、定電流回路100Aを有効に設定した後、スイッチSWがオン状態に戻るのに要する時間を待ってから、オンオフ信号に基づいてCB4が開状態か閉状態かを判断する。これにより、保護継電装置の誤動作を防止することができる。
CPU32は、スイッチSWがオン状態に変化した時刻t5から期間T1(第1の期間)が経過した時刻t7において、制御信号CNTをLレベルからHレベルに切り替える。制御信号CNTがHレベルになったことに応答して、定電流回路100Aは再び無効に設定される。スイッチSWが正常な状態に戻った後は定電流回路100Aを無効に設定することで、無駄な電力消費を抑えることができる。
時刻t8においてディジタル入力信号がHレベルからLレベルに変化すると、スイッチSWはオン状態からオフ状態に切り替わる。CPU32が制御信号CNTをHレベルからLレベルに切り替えることにより、時刻t9において定電流回路100Aは有効に設定される。この場合、直流電源Eと分圧回路との間には閉回路が形成されないため、スイッチSWに電流が流れることはない。CPU32は、上記のように、定電流回路100Aを有効に設定してから期間T3(第3の期間)が経過するまでの間、スイッチSWのオンオフの判定結果を無効とする。したがって、CPU32は、定電流回路100Aを有効に設定した時刻t9から時間T3が経過した時刻t10において、CB4が開状態であると判断する。
(作用効果)
このように、この発明の実施の形態2による保護継電装置によれば、スイッチが開状態となったときに定電流回路を有効に設定することにより、接点表面を覆っている酸化被膜を溶融することのできる電流値の電流をスイッチに流すことができる。さらに、定電流回路を有効に設定した後にスイッチが閉状態に変化したときには、定電流回路を無効に設定することで、定電流回路で電力が消費されるのを抑止することができる。このようにして、定電流回路は、スイッチの接点表面の酸化被膜を破壊するために効果的に用いられるため、常時定電流回路に定電流を流させるよりも、無駄な電力消費を抑えることができる。この結果、保護継電装置の運転効率を向上させることができる。
実施の形態3.
上記の実施の形態2では、スイッチSWの開閉状態に応じて定電流回路を有効にするか無効にするかを設定する構成について説明したが、定電流回路を有効に設定する期間と、定電流回路を無効に設定する期間とを周期的に設けることで、実質的に、定電流回路の電力消費を抑えるようにしてもよい。この発明の実施の形態3では、定電流回路をデューティ制御する構成について説明する。
なお、この発明の実施の形態3に従う保護継電装置の全体構成は、図1と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。また、ディジタル入力処理部および定電流回路の回路構成は、図4のディジタル入力処理部90Aおよび定電流回路100Aとそれぞれ同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
図6は、この発明の実施の形態3によるディジタル入力処理部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図6を参照して、定電流回路100A(図4)は、CPU32からの制御信号CNTに応じて、有効および無効のいずれかに設定される。具体的には、定電流回路100Aは、Hレベルの制御信号CNTに従って有効に設定され、Lレベルの制御信号CNTに従って無効に設定される。
CPU32は、定電流回路100Aを有効に設定する期間と、定電流回路100Aを無効に設定する期間とを周期的に設ける。図中の期間tonは、Lレベルの制御信号CNTに従って定電流回路100Aを有効に設定する期間を示す。図中の期間toffは、Hレベルの制御信号CNTに従って定電流回路100Aを無効に設定する期間を示す。なお、定電流回路100Aの制御周期に対する期間tonの時間比であるデューティ比は、ton/(ton+toff)で表わされる。
本実施の形態では、定電流回路100Aを有効にするか無効にするかを、予め設定されたデューティ比に従って設定する。これにより、ディジタル入力信号がHレベルである場合には、期間tonにおいて電流I1と電流I2との合計電流(=I1+I2)がスイッチSWに流れる。一方、期間toffにおいて電流I1のみがスイッチSWに流れる。
定電流回路100Aを有効に設定する期間tonは、たとえば、電流I1と電流I2との合計電流によってスイッチSWの接点表面を覆っている酸化被膜を溶融することが可能な長さに設定される。これにより、スイッチSWの接点表面に生じる酸化被膜が定期的に破壊されるため、接点の接触不良が発生するのを回避することができる。また、スイッチSWの接点表面の酸化被膜を破壊した後は、定電流回路100Aは無効に設定されるため、無駄な電力消費を抑えることができる。
さらに、定電流回路100Aが定電流を流し続ける構成とした場合には、定電流回路100A内部のMOSFET104の発熱が生じ得る。MOSFET104の温度が許容温度を上回ると、MOSFET104およびその周辺部品の劣化や損傷につながる可能性がある。本実施の形態によれば、定電流回路100Aは、デューティ比に従って定期的に定電流を流すように制御されるため、MOSFET104の発熱を抑制することができる。
(作用効果)
このように、この発明の実施の形態3による保護継電装置によれば、定電流回路を定期的に有効に設定することにより、スイッチの接点表面に生じる酸化被膜を定期的に破壊することができる。このような構成とすることにより、常時定電流を流し続けるように構成された定電流回路と比較して、スイッチの接触不良が発生するのを防止しながら、無駄な電力消費を抑えることができる。この結果、保護継電装置の運転効率を向上させることができる。
なお、本実施の形態において、定電流回路を有効に設定する期間tonおよび定電流回路を無効に設定する期間toffの長さ、並びにデューティ比(=ton/(ton+toff))は、保護継電装置が設置される環境、電力系統の電圧階級、およびスイッチSWの構造などを考慮して可変に設定することが可能である。たとえば、スイッチSWの接点表面に酸化被膜が形成される速度に基づいて、これらの値を設定するようにしてもよい。
実施の形態4.
上述の実施の形態1〜3では、1チャネル入力のディジタル入力処理部の構成について説明したが、複数の入力チャネルを有するディジタル入力処理部の場合には、複数の入力直流電圧のそれぞれに対応する複数の定電流回路、比較器および閾値電圧が必要になる。この発明の実施の形態4では、複数の入力チャネルを有するディジタル入力処理部の構成について説明する。
この発明の実施の形態4による保護継電装置1Bは、n個(nは2以上の自然数)の外部入力端子51_1〜51_nと、外部入力端子51_1〜51_nからの直流入力電圧Vin1〜Vinnを受けるディジタル入力処理部90Bとを備える。保護継電装置1Bの全体構成は、ディジタル入力処理部90Bを除いて図1と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
図7は、この発明の実施の形態4による保護継電装置1Bにおけるディジタル入力処理部90Bの構成を示す回路図である。
図7を参照して、ディジタル入力処理部90Bは、保護継電装置1Bに設けられたn個の外部入力端子51_1〜51_nおよび外部入力端子52を介して、電気所の所内に設置された直流電源Eに接続される。直流電源Eの正極はn個の外部入力端子51_1〜51_nに共通に接続され、直流電源Eの負極は外部入力端子52に接続される。直流電源Eの負極はさらに接地電圧に接続されている。直流電源Eの電源電圧Vdcは、電力系統の電圧階級に応じて異なる電圧値を示す。
直流電源Eの正極とn個の外部入力端子51_1〜51_nとの間には、n個のスイッチSW1〜SWnがそれぞれ設けられる。n個のスイッチSW1〜SWnはそれぞれ、対応する保護機器から入力されるディジタル入力信号1〜nに応じて、閉状態(オン状態)または開状態(オフ状態)に制御される。すなわち、n個のスイッチSW1〜SWnの各々は、図2のスイッチSWと同様に、対応する保護機器のオンオフ状態に連動して開閉する。そして、スイッチSW1〜SWnがオン状態に制御されると、直流電源Eの電源電圧Vdcが外部入力端子51_1〜51_nを介してディジタル入力処理部90Bに入力される。
ディジタル入力処理部90Bは、n個のDI部90_1〜90_nと、閾値設定回路56とを含む。DI部90_1〜90_nの各々は、図4に示すディジタル入力処理部90Aと同じ回路構成を有する。ただし、閾値設定回路56は、n個のDI部90_1〜90_nに共通に設けられる。したがって、閾値設定回路56で生成された閾値電圧Vthは、DI部90_1〜90_nの各々に含まれる比較器55の反転入力端子(−端子)に入力される。
DI部90_j(jは1以上n以下の整数)は、対応する外部入力端子51_jに入力される入力直流電圧Vinjを抵抗素子53,54で分圧し、分圧電圧Vdivjを比較器55の非反転入力端子(+端子)に出力する。比較器55は、分圧回路から出力された分圧電圧Vdivjと、閾値電圧Vthとを比較し、分圧電圧Vdivjが閾値電圧Vthを超えているときにHレベルの信号を出力する。フォトカプラ57は、比較器55の出力信号に基づいて、対応する保護機器のオンオフ状態を示すオンオフ信号を生成し、生成したオンオフ信号をCPU32へ出力する。
閾値設定回路56は、電圧値が互いに異なるm個の閾値電圧Vth_1〜Vth_mを切り替えて出力可能に構成されている。閾値設定回路56は、CPU32からの制御信号SIG1〜SIGmに応じて、m個の閾値電圧Vth_1〜Vth_mのうちの1つを選択して、閾値電圧VthとしてDI部90_1〜90_nの各々に含まれる比較器55の反転入力端子に入力する。
DI部90_1〜90_nの各々には定電流回路100Aが設けられている。定電流回路100Aは、図4の定電流回路100Aと同一の回路構成を有しており、CPU32からの制御信号CNTに応じて有効または無効に設定される。
CPU32は、上記の実施の形態2で説明した方法と同様の方法により、スイッチSW1〜SWnの開閉状態に応じて、定電流回路100Aを有効にするか無効にするかを設定することができる。具体的には、CPU32は、DI部90_1〜90_nの各々から出力されるオンオフ信号に基づいて、スイッチSW1〜SWnの各々がオン状態かオフ状態かを判定する。スイッチSW1〜SWnのうちのスイッチSWjがオフ状態であると判定された場合には、CPU32はLレベルの制御信号を生成して、対応するDI部90_jの定電流回路100Aに出力する。これにより、DI部90_jの定電流回路100Aは有効に設定される。
CPU32は、DI部90_jの定電流回路100Aを有効に設定した後、スイッチSWjがオフ状態からオン状態に変化すると、制御信号CNTをLレベルからHレベルに切り替える。これにより、定電流回路100Aは無効に設定される。
このように、CPU32は、対応するスイッチSWの開閉状態に応じてn個の定電流回路100Aを個別に有効または無効に設定することができる。これにより、ディジタル入力処理部90B全体での電力消費を抑えることができるため、保護継電装置1Bの運転効率を向上させることができる。
あるいは、CPU32は、上記の実施の形態3で説明した方法と同様の方法により、n個の定電流回路100Aをデューティ制御することができる。具体的には、CPU32は、予め設定されたデューティ比に従って、n個の定電流回路100Aを一括して有効または無効に設定する。これによれば、より簡易な制御によって、ディジタル入力処理部90B全体での電力消費を抑えることができる。
(作用効果)
このように、この発明の実施の形態4に従う保護継電装置によれば、複数の電圧階級に容易に対応可能な複数チャネル入力のディジタル入力処理部を、小型化および簡素化された構成によって実現できる。
なお、上記の実施の形態1〜4では、比較器55の出力信号を電気的に絶縁しながらCPU32に伝達するための送信部にフォトカプラを用いる構成について説明したが、CPU32からの制御信号SIG1〜SIGmを電気的に絶縁しながら閾値設定回路56に伝達するための受信部についてもフォトカプラを用いる構成としてもよい。これによれば、動作電源電圧に大きな差があるディジタル入力処理部90(または90B)とCPU32との間の電気的絶縁を確実にすることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。