以下、本発明の一実施の形態に係る測定治具10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いて説明する場合があるものとし、X方向を測定治具10の長手方向とし、X1側は図1において手前側かつ右側、X2側は図1において奥側かつ左側とする。またZ方向を測定治具10の上下方向とし、Z1側は上側、Z2側は下側とする。またY方向はX方向およびY方向に直交する方向とし、Y1側は奥側かつ右側、Y2側はそれとは逆の手前側かつ左側とする。
<測定治具10の構成について>
図1に示すように、測定治具10は、全体を支持する基台20を備えていて、この基台20には、本体接続用コネクタ30と、電極スライド機構40とが取り付けられている。
図1に示すように、基台20には本体接続用コネクタ30が取り付けられている。本体接続用コネクタ30は、図1に示す構成では4つ設けられている。そして、それぞれの本体接続用コネクタ30は、後述する電極板161,162のいずれかと電気的に接続されている。本体接続用コネクタ30には、図示を省略する外部ケーブルの一端側の接続部(図示省略)が連結される。なお、外部ケーブルの他端側の接続部は、測定装置に連結される。
なお、図1に示すように、基台20の正面側の側面(Y2側の側面)には、後述する操作用ノブ120を挿通させる貫通孔21が設けられていて、この貫通孔21を介して操作用ノブ120が外部に延出している。このため、ユーザは操作用ノブ120を把持して、可動側の電極ペア160Aを、基台20の長手方向(X方向)にスライドさせることを可能としている。
<電極スライド機構40について>
続いて、電極スライド機構40について説明する。図1に示すように、電極スライド機構40は基台20に取り付けられるが、その取り付けにおいては、基台20の上面から電極スライド機構40の保持台部50の全体または一部が突出する状態で取り付けられている。それにより、電極スライド機構40の保持台部50以外の部分は、基台20に入り込んで外部から視認できない状態となっている。
図2は、電極スライド機構40の全体を示す斜視図である。図3は、保持台部50の溝部51付近を拡大して示す部分的な斜視図である。図2に示すように、電極スライド機構40は、保持台部50と、支持部60と、リニアガイド70と、付勢バネ80と、可動電極支持体100Aと、固定電極支持体100Bとを有している。
保持台部50は、被測定物をセットして、その被測定物の位置決めおよび保持を行わせるための部分である。図2および図3に示すように、保持台部50は、溝部51を有していて、その溝部51は受け台52によって2つに区切られている。そして、溝部51のうち区切られた一方側(X2側)は可動側溝部51aとなっていて、この可動側溝部51aからは、後述する可動電極支持体100Aの上方側を突出させて、その可動電極支持体100Aをスライドさせることを可能としている。
また、溝部51のうち区切られた他方側(X1側)は固定側溝部51bとなっていて、この固定側溝部51bからは、後述する固定電極支持体100Bを上方側に突出させる。しかしながら、固定側溝部51bは、固定電極支持体100Bのスライドは許容しないものとなっている。また、上述の受け台52は、被測定物を載置する部分であり、サイズの小さな被測定物が溝部51から落下するのを防止するためのものである。
なお、溝部51は、保持台部50を穿設等で切り欠くことによって形成しても良い。しかしながら、保持台部50を2つまたはそれ以上の部材により構成し、一方の部材に凹部を形成し、他方の部材が当該凹部を塞ぐ状態で一方の部材に取り付けることで、溝部51が形成されるようにしても良い。
また、可動側溝部51aは、後述する電極ペア160の電極板161,162が互いに分離する状態で弾性変形しても、その弾性変形に伴う電極板161,162の移動を許容できる程度の幅寸法を有している。可動側溝部51aがこのような幅寸法を有していることにより、被測定物の電極に多少の凹凸がある場合でも、その凹凸を吸収するように電極板161,162が弾性変形する。それにより、被測定物の電極への電極板161,162の電気的な接触が確保される。
また、図2および図3に示すように、保持台部50には、位置決め段部53が設けられている。位置決め段部53は、保持台部50の上面側において段差状に設けられている部分である。位置決め段部53は、溝部51の奥側(Y1側)の内壁面から連なる段部側面53aを有している。それにより、微小な被測定物の位置決めを段部側面53aを利用して行い、その位置決め後に後述する電極ペア160を用いて微小な被測定物を保持させることが可能となる。
図4は、電極スライド機構40を下方側(Z2側)から見た状態を示す斜視図である。図5は、可動電極支持体100A、固定電極支持体100Bおよびリニアガイド70の位置関係を示す斜視図である。
図4に示すように、支持部60は、保持台部50の下方側に取り付けられている。この支持部60は、リニアガイド70、付勢バネ80の一端側および固定電極支持体100Bを支持する部分である。なお、図4に示すように、支持部60は、長手板部61と短手板部62とが直交するように連続し、それによって支持部60の外観が略L字形状に設けられている。長手板部61は、X方向を長手としているが、その長手板部61の表面(Y2側の面)には、リニアガイド70を取り付けるためのガイド用凹部61aや、付勢バネ80を配置するためのバネ用凹部61bが設けられている。これらガイド用凹部61aおよびバネ用凹部61bは、X方向を長手として設けられている。また、支持部60のうちY方向に沿う短手板部62の端面(長手板部61から離間する側の面;図4においてY2側の端面)には、固定電極支持体100Bが取り付けられている。
リニアガイド70は、可動電極支持体100Aをスライド自在に支持する部分であり、図4および図5に示すように、レール体71と、ブロック体72とを備えている。レール体71は、長手板部61に取り付けられている長尺状の部材である。ブロック体72は凹状部72aを有し、その凹状部72aにレール体71を位置させる状態で配置される。このブロック体72は、レール体71に対して摺動自在に設けられている。そのような摺動を自在とするために、ころや転がり球を有するものであっても良いが、ブロック体72とレール体71とが接触しているもの(例えばすべり軸受)であっても良い。
なお、ブロック体72には、可動電極支持体100Aが取り付けられている。そのため、保持台部50や支持部60等に対して、可動電極支持体100Aをスライドさせることを可能としている。
また、図4に示すように、リニアガイド70よりも下方側には、付勢バネ80が配置されている。この付勢バネ80は、その一端側(X1側)が、長手板部61に取り付けられているバネ用ポスト90の取付孔90aに掛け止めされている。一方、付勢バネ80の他端側(X2側)は、後述する支持プレート110に取り付けられているバネ用ポスト91の取付孔91aに掛け止めされている。そして、この付勢バネ80を介して、可動電極支持体100Aには、固定電極支持体100B側(X1側)に向かう付勢力が与えられる構成となっている。
続いて、可動電極支持体100Aについて説明する。図2、図4および図5に示すように、可動電極支持体100Aは、支持プレート110と、操作用ノブ120と、電極保持ユニット130とを備えている。支持プレート110は、電極保持ユニット130を、その手前側(Y2側)に取り付けている。一方、支持プレート110の奥側(Y1側)は、上述したブロック体72に取り付けられている。
また、操作用ノブ120は、支持プレート110から手前側(Y2側)に向かうように取り付けられている部材である。図2に示すように、操作用ノブ120の先端側は、基台20の貫通孔21を介して外部へと延出している。それにより、ユーザは、操作用ノブ120を把持して、可動電極支持体100Aを基台20の長手方向(X方向)にスライドさせることを可能としている。
図6は、電極保持ユニット130の構成を示す斜視図である。なお、図6においては、可動電極支持体100Aの電極保持ユニット130を示しているが、固定電極支持体100Bの電極保持ユニット130も同様の形状となっている。この図6等に示すように、電極保持ユニット130は、フレーム部材140と、絶縁ホルダ150と、電極ペア160とを有している。
なお、可動電極支持体100Aの電極保持ユニット130と、後述する固定電極支持体100Bの電極保持ユニット130とは、共通の構成となっている。また、フレーム部材140と、絶縁ホルダ150とは、保持手段に対応する。
フレーム部材140は、上下方向(Z方向)が長手となる長尺状の部材であると共に、絶縁ホルダ150の支持に対応した嵌合溝部141を有している。なお、図5等に示すように、嵌合溝部141は、フレーム部材140のうち固定電極支持体100Bと対向する側(X1側)の端面140aから凹むように設けられている。そのため、電極ペア160が取り付けられている絶縁ホルダ150を嵌合溝部141に取り付けると、電極ペア160は、固定電極支持体100B側の電極ペア160と対向する配置となる。
図6に示すように、フレーム部材140には、絶縁被膜142が設けられている。絶縁被膜142は、絶縁ホルダ150よりも下方側(Z2側)に突出している電極ペア160が嵌合溝部141に接触した場合でも、フレーム部材140と電極板161,162との間の電気的な絶縁性を確保するための部材である。また、絶縁被膜142は、ケーブルとの接合部(接合部はケーブルと一体的または別体的のいずれでも良い)と、フレーム部材140との間の絶縁性を確保するためのものである。ここで、上述のケーブルは、電極板161,162と本体接続用コネクタ30の間で電気的接続を行うためのものである。この絶縁被膜142は、嵌合溝部141のうち絶縁ホルダ150よりも下方側の部位に取り付けられている。より詳細には、絶縁被膜142は、電極ペア160の撓み等によって、電極ペア160を構成する電極板161,162が嵌合溝部141の内壁面に接触する可能性の有る部位に取り付けられている。ただし、絶縁被膜142は、絶縁ホルダ150よりも下方側の部位の全体を覆うように取り付けても良い。
また、絶縁被膜142は、嵌合溝部141の内壁面(符号省略)のうち、X2側に位置する内壁底面(符号省略)と、互いに対向する内壁面(符号省略)とを覆うように設けられ、さらに嵌合溝部141から外れた部位である、フレーム部材140の端面140aも覆うように設けられている。この絶縁被膜142は、塗布、印刷、蒸着等の手法によって形成しても良いが、電気的な絶縁性を有する絶縁シートを貼り付ける等の手法によって形成するようにしても良い。
絶縁ホルダ150も、フレーム部材140と同様に、上下方向(Z方向)が長手となる長尺状の部材であり、上述したように嵌合溝部141に取り付けられる部材である。なお、絶縁ホルダ150は、たとえば接着剤等の固定手段を介して、嵌合溝部141に取り付けられている。絶縁ホルダ150は、電気的な絶縁性を有する材質(たとえば樹脂等)によって形成されていて、電極ペア160を構成する電極板161,162同士が絶縁ホルダ150を介して短絡するのを防いでいる。なお、絶縁ホルダ150のうち固定電極支持体100Bと対向する側(X1側)の端面150a(図6参照)は、フレーム部材140の端面140aと略面一となるように設けられているが、略面一でなくても良い。
この絶縁ホルダ150には、電極用スリット151(図6参照)が設けられている。電極用スリット151は、電極ペア160を取り付けるためのものであり、上下方向(Z方向)に延伸している。また、電極用スリット151は、上述の端面150aからスリット状に窪むように設けられている。この電極用スリット151には、たとえば接着剤等の固定手段を介して、電極ペア160が取り付けられている。
電極用スリット151は、絶縁ホルダ150の上方側の端面および下方側の端面を突っ切る状態に設けられている。そのため、電極ペア160が電極用スリット151に取り付けられると、絶縁ホルダ150の上方側および下方側に向かい、電極ペア160が飛び出すことを可能としている。なお、図2に示すように、可動電極支持体100Aの電極ペア160は、その上方側が可動側溝部51aを挿通しており、さらに可動側溝部51aよりも上方側に向かい、電極ペア160の先端側が突出するように設けられている。
図5および図6に示すように、上述の電極用スリット151に取り付けられている電極ペア160は、その上方側の側面(X1側の側面;固定電極支持体100Bに向き合う側の側面)に被測定物を接触させ、当該被測定物の電気的な特性を測定するためのものである。
図7は、電極保持ユニット130のうち絶縁ホルダ150と電極ペア160の構成を示す断面図であり、図6のA−A線に沿って切断した状態を示す図である。図7に示すように、電極ペア160は、互いに対向する一対の電極板161,162と、その2枚の電極板161,162の間に介在する絶縁層163とを有している。なお、電極板161,162は、電極部材に対応する。
一対の電極板161,162は、容易に弾性変形可能な薄板状部材であり、同等の形状の薄板状の電極板161,162がXZ平面で同等の位置に位置するように重ねられている。この電極板161,162の材質は、たとえばバネ性を有するステンレス等を材質としているが、導電性を有しつつ弾性変形可能な材質であれば、どのような材質であっても良い。
また、電極板161,162の間には、電気的な絶縁性を有する絶縁層163が設けられていて、この絶縁層163の存在によって電極板161と電極板162との間の短絡が防止されている。この絶縁層163は、一対の電極板161,162の間で、次のように設けられている。すなわち、電極ペア160のうち絶縁ホルダ150の電極用スリット151への取付側(保持手段への取付側に対応;以下、ホルダ取付側S1(図6参照)とする。)では、絶縁層163は、一対の電極板161,162のそれぞれに強固に固定されるように設けられている。そのため、ホルダ取付側S1では、一対の電極板161,162は互いに分離せず、仮に絶縁ホルダ150から取り外しても、それら一対の電極板161,162が固定された状態が維持される。
一方、電極ペア160のうち絶縁ホルダ150よりも上方側(以下、自由端側S2(図6参照)とする。)では、絶縁層163は、電極板161,162のうちの一方の側(ここでは電極板161とする。)に接着して設けられているものの、他方の側(ここでは電極板162とする。)に対しては絶縁層163は接着していない。このため、自由端側S2では、一対の電極板161,162は、互いに離れる向きに移動可能となっている。すなわち、自由端側S2では、一対の電極板161,162が互いに分離可能となっている。
なお、自由端側S2においては、絶縁層163は、一方の電極板161にのみ接着している構成とはせずに、他方の電極板162にのみ接着していても良く、一方の電極板161と他方の電極板162の両方に接着して設けられ、その絶縁層163の厚み方向の途中で、絶縁層163が分断される構成としても良い。このように構成しても、一対の電極板161,162が互いに分離可能となる。
また、電極ペア160の厚みは、最小サイズの被測定物の電極に対して容易に接触させることができる程度の厚さに設定されている。たとえば、電極ペア160は、現在の最小サイズである、0402と呼ばれる横0.4mm、縦0.2mmの被測定物の電極に対して、一対の電極板161,162を、電気的に容易に接触させることを可能とする程度の厚みに設けられている。一例としては、それぞれの電極板161,162の厚みを80μmとし、絶縁層163の厚みを30μmとするものがある。しかしながら、電極ペア160の厚みは、現在の最小サイズよりも十分に小さい厚みを有するものであっても良い。たとえば、将来的な被測定物の小型化に対応させるべく、電極ペア160の厚みを、0.2mmよりも十分に小さい値としても良い。
ところで、被測定物を四端子法にて測定する場合、電極ペア160の絶縁層163の厚さが薄い(厚さの寸法が小さい)ことが最低限必要である。なぜならば、絶縁層163の厚さの寸法が大きいと、微小サイズの被測定物の電極に、一対の電極板161,162が同時に接触できないからである。そのため、電極板161,162はさほど薄くせずに、絶縁層163の厚みを小さくするように構成しても良い。
なお、被測定物のサイズが将来的に小さくなり、一対の電極板161,162が共に被測定物の電極に接触しているのかが判別し難くなることも考えられる。そのため、被測定物の電極に対して、一対の電極板161,162が共に接触した際に、たとえばランプを点灯または消灯させたり、音や振動の変化を与えるようにしても良い。このようにすると、ユーザは、一対の電極板161,162が共に被測定物の電極に接触したことを容易に把握することができる。
ここで、一対の電極板161,162の間隔が大きく広がるのを防ぐために、図8に示すような押さえ用部品170を設けるようにしても良い。なお、図8は、押さえ用部品170と電極ペア160の構成を示す平面断面図である。この図8に示すように、一方の電極板161に、上方側から見た外観がC字形状(コ字形状)となる押さえ用部品170を設け、その押さえ用部品170が備える凹部171に電極ペア160を位置させる。このとき、凹部171の幅である間隔L1が、電極ペア160の幅寸法L2よりは大きいが、その間隔L1が、電極ペア160の広がりの上限値に収まるように設定すれば、一対の電極板161,162が大きく広がるのを防ぐことが可能となる。なお、押さえ用部品170の設置位置としては、電極板161,162の先端側(Z1側)あるいは先端側(Z1側)に近い位置であること、図5において電極ペア160A,160B同士の対向する位置であること、の少なくとも一方を満たすようにすることが好ましい。
図2および図3に示すように、一対の電極板161,162のうち、溝部51を介して保持台部50よりも上方側に突出している部分においては、被測定物に接触する面(側面161s、162s;図7参照)が、保持台部50の上面に対して略垂直をなす状態で突出している。そのため、この側面161s、162sが被測定物に接触しても、当該被測定物を上下方向に移動させる力を与えないように設けられている。また、電極ペア160は、被測定物の電気的な測定を行うのに十分な高さだけ、可動側溝部51aよりも上方側に突出するように設けられている。それにより、種々のサイズの被測定物の電極に対して、側面161s、162sを接触させることを可能としている。
次に、固定電極支持体100Bについて説明する。固定電極支持体100Bは、基本的には、可動電極支持体100Aが備えるのと同様の電極保持ユニット130を有している。以下の説明では、必要に応じて、可動電極支持体100Aの電極保持ユニット130を電極保持ユニット130Aとし、固定電極支持体100Bの電極保持ユニット130を電極保持ユニット130Bとして説明する。
また、電極保持ユニット130Aの電極ペア160および電極板161,162についても、必要に応じて、電極ペア160Aおよび電極板161A,162Aとし、電極保持ユニット130Bの電極ペア160および電極板161,162についても、必要に応じて、電極ペア160Bおよび電極板161B,162Bとして説明する。なお、電極ペア160Aは可動側の電極ペアに対応し、電極ペア160Bは固定側の電極ペアに対応する。
ところで、可動電極支持体100Aに対する固定電極支持体100Bの相違点としては、次のようなものがある。すなわち、図2、図4および図5に示すように、固定電極支持体100Bでは、電極保持ユニット130B以外に、シールド部材180が設けられている。なお、シールド部材180については後述する。
また、図2および図3に示すように、固定電極支持体100Bの電極保持ユニット130Bでは、その電極ペア160Bは、可動側溝部51aではなく、固定側溝部51bを挿通し、さらに電極ペア160Bの先端側が、固定側溝部51bよりも上方に向かい突出するように設けられている。なお、電極保持ユニット130Bは、支持部60のうち短手板部62の端面に取り付けられているので、固定側溝部51bを挿通する電極ペア160Bは、この固定側溝部51bの内部を移動しない状態となっている。
また、電極板161B,162Bの側面161s,162sは、上述の電極板161A,162Aの側面161s,162sに向き合うように設けられている。それにより、電極板161A,162Aの側面161s,162sと電極板161B,162Bの側面161s、162sとは、それぞれ被測定物の電極に電気的に接触して、四端子法にて被測定物の電気的な特性の測定を行うことを可能としている。
図2、図4および図5に示すように、電極保持ユニット130Bのフレーム部材140には、シールド部材180が取り付けられているが、このシールド部材180は、フレーム部材140の手前側(Y2側)の面に取り付けられている。また、シールド部材180は、そのX2側の縁部から奥側(Y1側)に向かって折れ曲がっていて(以下、この折れ曲がっている部分を曲片部181とする。)、その曲片部181は、電極ペア160Aと電極ペア160Bの対向部位に位置している。このシールド部材180は、電極ペア160Aと電極ペア160Bの間の電磁・静電結合による影響を軽減する目的で取り付けられている。
図4および図5に示すように、曲片部181の表側および裏側の面には、それぞれ絶縁シールド190が設けられている。絶縁シールド190は、電気的な絶縁性を有する部分である。そして、この絶縁シールド190が、電極ペア160Aと電極ペア160Bとの対向部位に配置されることにより、これら電極ペア160Aと電極ペア160Bとが、互いに接触して短絡を生じさせるのを防止している。
なお、絶縁シールド190は、シート状の部材を曲片部181に取り付ける構成であっても良く、曲片部181に対しての塗布、印刷、蒸着等の手法によって形成される層状部分であっても良い。
<動作について>
以上のような構成を有する測定治具10の動作について、以下に説明する。
まず、ユーザは、操作用ノブ120を把持し、付勢バネ80のバネ力に抗しながら、可動電極支持体100AをX2側にスライドさせる。それにより、可動電極支持体100Aの電極ペア160Aと、固定電極支持体100Bの電極ペア160Bとの間の間隔が大きく広がる。そして、ユーザは、被測定物を保持台部50の上方にセットする。このとき、被測定物の奥側(Y2側)の面が、位置決め段部53の段部側面53aに接触する状態とすると共に、被測定物の電極が固定電極支持体100Bの電極板161B,162Bと向き合うように配置する。それにより、被測定物の位置決めが確実になされる。
その後に、ユーザは、操作用ノブ120を把持した状態を維持しつつ、付勢バネ80のバネ力によって急激に可動電極支持体100AをX1側に移動させないように、付勢バネ80のバネ力に抗しながら、可動電極支持体100AをX1側に向けてスライドさせる。そして、電極板161A,162Aの側面161s,162sに被測定物の電極を接触させて、操作用ノブ120の把持を解除する。
すると、付勢バネ80のバネ力により、電極板161A,162Aの側面161s,162sと、電極板161B,162Bの側面161s,162sとは、被測定物の電極に対して付勢力を及ぼした状態で押し付けられる。それにより、被測定物に対して、四端子法にて電気的な特性の測定が可能となる。
ところで、被測定物の電極に僅かな凹凸が存在する場合もあり、さらには電極板161,162の側面161s,162sのX方向における位置が、それぞれの電極板161,162で僅かに異なる場合もある。このような場合において、被測定物の電極に対して、電極板161,162の側面161s,162sが付勢力を及ぼされた状態で押し付けられると、一対の電極板161,162は、上述の凹凸や電極板161,162間の位置(X方向の位置)の相違を吸収するために弾性変形する。
このとき、一対の電極板161,162のうちの一方の電極板(ここでは、電極板161とする。)は捻じれるように弾性変形(捻じれ変形)するが、その捻じれ変形は、次に述べるようなものである。
すなわち、一方の電極板161は、電極ペア160の自由端側S2のうち下方側(Z2側)を基点として、上方に向かうにつれて他方の電極板(ここでは、電極板162とする。)から離れていく。加えて、電極ペア160Aと電極ペア160Bとが対向する側では、一方の電極板161と他方の電極板162の間の間隔が広がるものの、被測定物から離れるにつれて、一方の電極板161と他方の電極板162の間の間隔が狭まっていく。以上のように、一方の電極板161が捻じれ変形することで、上述の凹凸や電極板161,162間の位置(X方向の位置)の相違を吸収可能となる。
なお、捻じれ変形は、一方の電極板161に生じる場合には限られず、他方の電極板162に生じても良く、一方の電極板161と他方の電極板162の双方に同時に生じても良い。
<効果>
以上のような構成の測定治具10によると、電極ペア160は、一対の電極板161,162を備え、これら一対の電極板161,162の間には、電気的な絶縁性を有する絶縁層163が設けられている。このため、被測定物の電極に接触させる電極ペア160の構成は、簡易なものとなり、その製作が容易となる。
また、電極ペア160の構成が簡易なものとなるため、2つの(一対の)電極板161,162の間の位置決めや保持を行うために大掛かりな構成を必要としない。そのため、電極ペア160を用いた電極保持ユニット130や測定治具10の制作に要するコストを低減可能となる。加えて、電極ペア160を有する電極保持ユニット130の構成も簡易なものとなるため、当該電極保持ユニット130や測定治具10に故障を生じさせ難くすることが可能となる。
また、本実施の形態においては、電極ペア160は、一対の電極板161,162の間に絶縁層163を介在させる構成を採用している。このため、これら一対の電極板161,162の間の間隔が微小でありながらも、それらの間の短絡が防止可能となり、一対の電極板161,162の間の絶縁性が確保可能となる。また、このような絶縁性が確保された状態で、一対の電極板161,162を同時に被測定物の電極に電気的に接触させることが可能となり、被測定物の四端子法での測定が容易に実現可能となる。
また、本実施の形態では、1つの電極スライド機構40を用いながらも、種々の大きさの被測定物の電極に、電極板161,162を接触させることが可能となる。
また、本実施の形態では、可動電極支持体100Aの電極ペア160Aを、保持台部50の被測定物の載置箇所に移動させることにより、可動電極支持体100Aの電極ペア160Aと、固定電極支持体100Bの電極ペア160Bの間で、被測定物を挟み込むことが可能となる。このため、電極板161A,162Aと電極板161B,162Bとが、被測定物の電極に対して滑ってしまい(横滑りしてしまい)、被測定物の電極からずれた位置にプローブの先端が位置してしまうのを防止可能となる。また、電極ペア160Aと電極ペア160Bとの間で、被測定物を挟み込むことにより、これらの間で被測定物を確実に保持することが可能となる。
さらに、本実施の形態では、保持台部50には溝部51が設けられていて、この溝部51には、可動側溝部51aと固定側溝部51bとが存在している。このため、可動側溝部51aでは、その可動側溝部51aに沿って電極ペア160Aをスライドさせることが可能となる。一方、電極ペア160Bは、固定側溝部51bを介して上方に突出しているが、この電極ペア160Bは保持台部50に対してスライドしない。このため、固定的な電極ペア160Bに対して、電極ペア160Aをスライドさせることで、一対の電極ペア160A,160B間で被測定物を確実に保持可能となり、被測定物の電極に対して、電極板161A,162Aと電極板161B,162Bとを容易に接触させることが可能となる。
また、本実施の形態では、可動電極支持体100Aの支持プレート110には、付勢バネ80が連結されていて、この付勢バネ80によって、電極ペア160Aには、固定電極支持体100Bの電極ペア160Bに向かう付勢力が与えられている。このため、一度、被測定物を電極ペア160A,160bの間で挟み込む状態で保持させると、付勢バネ80の付勢力によって、被測定物の保持状態を維持可能となる。また、測定治具10に対して外部から何らかの衝撃が加わっても、被測定物の保持状態を解除させずに、そのまま維持させることも可能となる。
さらに、本実施の形態では、電極ペア160には、薄板状の一対の電極板161,162が設けられていて、かかる一対の電極板161,162は、ホルダ取付側S1においては、共に絶縁層163に接着されている。しかしながら、自由端側S2では、一対の電極板161,162を構成する少なくとも一方の電極板(ここでは、電極板161とする。)は、互いの間隔が広がる向きに移動可能に設けられている。このため、電極板161と電極板162とは、特に側面161sと側面162sの位置が異なるように弾性変形(捻じれ変形)をさせることが可能となり、被測定物の電極に存在する凹凸や電極板161,162間の位置の相違を吸収可能となる。
また、本実施の形態においては、薄板状の電極板161,162と絶縁層163から電極ペア160が構成されているため、一対の電極板161,162の厚みと、絶縁層163の厚みの合計まで、電極ペア160の厚みを薄くすることができる。そのため、一対の電極板161,162間が平行である限り、狭間隔な電極ペア160を製作することが可能となる。
また、本実施の形態では、電極板161,162を用いている。ここで、電極の大きさによって導通可能な電流量は決まってしまうが、本実施の形態では、極小径のプローブ等に比較して面積の大きな電極板161,162を用いているため、1桁以上大きな電流量を導通させることが可能となる。
また、本実施の形態では、電極ペア160の自由端側S2に、押さえ用部品170を設けるように構成しても良い。このように構成する場合には、一対の電極板161,162の間の間隔の広がりを規制することが可能となる。すなわち、一対の電極板161,162が大きく広がるのを防ぐことが可能となる。
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態においては、電極部材の一例として、薄板状の電極板161,162について説明している。しかしながら、電極部材は、電極板161,162には限られない。たとえば、導電性を有すると共にある程度の厚みのあるブロック体を電極部材として用いても良い。また、プローブ等のような針状のものを電極部材として用いても良い。電極部材がこのようなものであっても、それら一対の間に絶縁層を介在させることで、被測定物の電極に一対の電極部材を接触させることが可能となる。
また、上述の実施の形態では、一対の電極板161,162の間に絶縁層163が存在しているが、この絶縁層163をシリコーンゴムのような弾性を備えるものとしても良い。このように構成する場合には、絶縁層163の弾性変形によって、被測定物の電極に存在する凹凸や電極板161,162間の位置の相違を吸収可能となる。また、このように構成する場合には、電極板161,162がバネ性を備えない材質から形成することも可能となる。
また、上述の実施の形態では、可動電極支持体100Aは支持プレート110を有していて、この支持プレート110を介して電極保持ユニット130がリニアガイド70に取り付けられている。しかしながら、支持プレート110を設けずに、電極保持ユニット130を直接リニアガイド70に取り付ける構成を採用しても良い。このときに、付勢バネ80の他端側を、フレーム部材140に取り付ける構成を採用しても良い。
また、上述の各実施の形態では、一対の電極板161,162の厚みは、共に同じものとしている。しかしながら、電極板161の厚みを電極板162の厚みよりも大きくしたり、その逆に小さくするようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、電極ペア160は、一対設けられるものとしている。しかしながら、電極ペア160は一対設けられる構成には限られず、1つのみ設けられていても良く、3つ以上設けられていても良い。電極ペア160が1つのみ設けられる場合には、別途、固定的な電極が他に存在するものとしても良い。また、上述の実施の形態では、可動電極支持体100Aの電極ペア160のみを被測定物に対して移動させる構成としているが、一対の電極ペア160を共に被測定物に対して移動させる構成としても良い。
また、上述の実施の形態では、可動電極支持体100Aおよび固定電極支持体100Bは、それぞれ一対の電極板161,162を具備していて、これらの電極板161,162によって、四端子法にて被測定物の電気的特性の測定を行うようにしている。しかしながら、被測定物の電気的特性の測定は四端子法には限られない。たとえば、二端子法にて被測定物の電気的特性の測定を行うようにしても良い。この場合、たとえば一対の電極板161,162のいずれかの電極板をダミーの電極板とするようにしても良い。