JP6217981B2 - 非水電解液二次電池とその製造方法 - Google Patents
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Description
この種の非水電解液二次電池は、正極と負極とをセパレータを介して備える電極体と、非水電解液と、を電池ケースに収容して構築される。正極および負極には、集電体上に電荷担体(リチウム二次電池の場合は、リチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出し得る活物質を含む活物質層がそれぞれ備えられている。そして、上記構築後の電池は、電池として実際に使用可能な状態に調整するため、適切な条件での初期充電処理が施される。
なお、本明細書において「ナトリウム(Na)成分」とは、ナトリウム単独(典型的にはイオンの状態)で存在する場合と、構成元素としてNaを含む化合物として存在する場合とを包含する。
CNa≧CLiBOBの関係を満たす従来の非水電解液二次電池においては、LiBOB量が少なく、十分なLiBOB由来被膜を形成することができなかった。また、Na成分の影響が広範囲に及んで避けられず、電極抵抗が高くなることを避けられなかった。これに対し、ここに開示される非水電解液二次電池は、上記のCNa<CLiBOBの関係を満たす構成により、領域Aと領域Bとの抵抗のムラが抑制されている。例えば、領域Bに対する領域Aの抵抗の差が、従来よりも、1/5程度に抑制されたものであり得る。したがって、CNa<CLiBOBの関係を有する電池にここに開示される技術を適用することで、上述の本願発明の特長がより明瞭に表れるために好ましい。
このようなオキサラト錯体化合物の還元分解物からなる被膜は、LiBOB由来の被膜と均整のとれたものであり得る。これにより、上記領域Aと領域Bとに、被膜形成量のみならずその特性においてもムラの低減された被膜を構成することができる。
捲回の軸が水平方向となるよう上記電池ケース内に収容された構成の非水電解液二次電池においては、一般に、その製造過程において、非水電解液が捲回電極体の捲回軸方向の両端部から中心部に向けて水平方向に含浸される。したがって、従来は、領域AにLiBOB由来の被膜が形成され難く、領域Aにおいて局所的に抵抗が高いものであり得た。これに対し、ここに開示される非水電解液二次電池は、上記のとおり、上記領域Aと領域Bとでムラが抑制された被膜が備えられるため、本発明の電池を上記構成とした場合にその特長がより明瞭に表れ得るために好ましい。
このように電池を構成することで、負極活物質層の表面に、より確実にムラを抑制して被膜を形成することができ、より耐久性や安全性等に優れた非水電解液二次電池を製造することができる。
このようなオキサラト錯体化合物を被膜形成剤として用いることで、負極活物質層の捲回軸方向の中心を含む領域(領域A)に、LiBOB由来の被膜と均整のとれた被膜を形成することができる。これにより、負極活物質層の表面の全域に、被膜形成量のみならずその特性においてもムラの低減された被膜を構成することができる。
本明細書において「非水電解液二次電池」とは、電解質として非水系の電解液を用いた繰り返し充放電可能な電池一般をいう。典型的には、電解質イオン(電荷担体)としてリチウム(Li)イオンを利用し、正負極間においてこのリチウムイオンの移動に伴い充放電が実現される二次電池が包含される。一般にリチウムイオン電池(若しくはリチウムイオン二次電池)、リチウムポリマー電池等と称される二次電池は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含される典型例である。また、本明細書において「活物質」とは、電荷単体となる化学種(リチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出し得る材料をいう。
まず、捲回型電極体20の用意工程では、正極活物質層34を備える長尺の正極30と、負極活物質層44を備える長尺の負極40とが捲回されてなる捲回型電極体20を用意する。
[正極]
長尺の正極30は、典型的には、長尺の正極集電体32と、この正極集電体32上に保持された正極活物質層34とを備えている。正極集電体32には、典型的には、正極活物質層34が形成された部位と、正極活物質層34が設けられずに集電体32が露出された正極集電体露出部33とが設けられる。この正極集電体露出部33は、典型的には、長尺の正極集電体32の幅方向の一方の端部に沿って帯状に設けられる。そして、正極活物質層34は、この正極集電体32のうち、正極集電体露出部33を除く表面に設けられる。正極活物質層34は、正極集電体32の両面に設けられてもよいし、いずれか一方の面にのみ設けられてもよい。正極集電体32としては、導電性の良好な金属(例えばアルミニウム、ニッケル等)からなる導電性部材が好適である。この正極活物質層34は、少なくとも正極活物質を含み、非水電解液の含浸が可能なように多孔質構造を有している。
長尺の負極40は、典型的には、長尺の負極集電体42と、負極集電体42上に形成された負極活物質層44とを備えている。負極集電体42には、負極活物質層44が形成される部位と、負極活物質層44が設けられずに集電体42が露出される負極集電体露出部43とが設定される。この負極集電体露出部43は、典型的には、負極集電体42の幅方向の一方の端部に沿って帯状に設けられる。そして、負極活物質層44は、この負極集電体42のうち、負極集電体露出部43を除く表面に設けられる。負極集電体42としては、導電性の良好な金属(例えば銅、ニッケル等)からなる導電性部材が好適である。この負極活物質層44は、少なくとも負極活物質を備えており、非水電解液の含浸が可能なように多孔質構造を有している。
なお、上記非水電解液二次電池においては、正極30と負極40との間にセパレータ50を備えていてもよい。セパレータ50は、正極30と負極40とを絶縁するとともに、電荷担体を保持し、この電荷担体の通過性を可能とする構成材料である。このようなセパレータ50は、各種の材料からなる微多孔質樹脂シートにより好適に構成することができる。特に限定されるものではないが、このセパレータ50は、捲回型電極体20が所定の温度となったときに軟化溶融し、電荷担体の通過を遮断すするシャットダウン機能を備えるように構成してもよい。例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)に代表されるポリオレフィン樹脂からなる微多孔質シートは、シャットダウン温度を80℃〜140℃(典型的には110℃〜140℃、例えば120℃〜135℃)の範囲で好適に設定できるためにセパレータ50として好ましい。
セパレータ50の全体の平均厚みは特に限定されないが、通常、10μm以上、典型的には15μm以上、例えば17μm以上とすることができる。また、上限については、40μm以下、典型的には30μm以下、例えば25μm以下とすることができる。平均厚みが上記範囲内にあることで、電荷担体の透過性を良好に保つことができ、かつ、微小な短絡(漏れ電流)がより生じ難くなる。このため、入出力密度と安全性とを高いレベルで両立することができる。
上記で用意した正極30、負極40およびセパレータ50を用い、図2に示すような捲回型電極体20を構成することができる。すなわち、長尺の正極30と長尺の負極40とを計二枚の長尺のセパレータ50を介在させて積層し、長手方向に捲回する。換言すると、長手方向に直交する幅方向を倦回軸W方向として捲回する。これにより、円柱型(円筒型)の捲回型電極体20を得ることができる。なお、図2の例では、得られた捲回型電極体20を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって、扁平形状の捲回型電極体20を構築している。このような捲回型電極体20の形状は、使用する電池ケース10の形状に合わせて適切に成形することができる。
上記の正極30と負極40とは、電荷担体の受入特性の違い等から、容量比を調整することができる。具体的には、正極容量Cc(mAh)と負極容量Ca(mAh)との比(Ca/Cc)を、1.0〜2.0とすることが適切であり、1.5〜1.9(例えば1.7〜1.9)とすることが好ましい。ここで、正極容量Cc(mAh)は、正極活物質の単位質量当たりの理論容量(mAh/g)と該正極活物質の質量(g)との積として規定される。また、負極容量Ca(mAh)は、負極活物質の単位質量当たりの理論容量(mAh/g)と該負極活物質の質量(g)との積として規定される。上記の通り、対向する正負極の容量比を調整することで、電池容量やエネルギー密度等の電池特性を良好に維持しつつ、全体として正負極間の電荷バランスを整えることができる。
次いで、被膜形成剤を含む非水電解液を用意する。
[非水電解液]
非水電解液としては、典型的には、非水溶媒中に支持塩(例えば、リチウムイオン二次電池ではリチウム塩)を溶解または分散させたものを採用し得る。
非水溶媒としては、一般的な非水電解液二次電池において電解液として用いられるカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の各種の有機溶媒を特に制限なく用いることができる。例えば、具体的には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が挙げられる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を混合溶媒として用いることができる。
ここで被膜形成剤としては、非水溶媒よりも分解電位が低く、非水溶媒が分解されるに先立って正極または負極(典型的には負極)の表面で分解され、安定な被膜を形成し得る各種の化合物を用いることができる。この被膜形成剤は、電池の製造時において非水電解液中に含まれるものの、典型的には初期充電処理において分解されて、当初の形態を有さないことが殆どである。例えば、初期充電処理後の電池においては、全ての被膜形成剤が分解されて、非水電解液中に含まれない状態となり得る。ここに開示される技術においては、この被膜形成剤として、(1)リチウムビス(オキサラト)ボレート;LiBOBと、(2)このLiBOBよりも分解電位が低く、かつ、ナトリウム成分と反応しないオキサラト錯体化合物と、の少なくとも2種類を含むことを特徴としている。
オキサライト錯体は、典型的には、1つまたは2つまたは3つのシュウ酸イオン(C2O4 2−)が、中心元素(配位原子)に配位結合して形成されるイオン性の錯体である。ここで、上記LiBOBと組み合わせて用いるのに特に好ましいオキサラト錯体化合物は、中心元素をLiBOBと共通のホウ素(B)とするオキサラトボレート系の化合物であり得る。また、中心イオンに配位するイオンとしては、シュウ酸イオンの他、F,Cl,Br等のハロゲン原子を考慮することができる。なお、オキサラト錯体化合物のカチオンとしては、Li、Na、K等のアルカリ金属のカチオンの他、Be、Mg、Ca等のアルカリ土類金属のカチオン、プロトンや、テトラブチルアンモニウムイオン,テトラエチルアンモニウムイオン等のテトラアルキルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオン等のトリアルキルアンモニウムイオン等を考慮することができる。特に好適なオキサラト錯体化合物としては、ホウ素を中心元素とし、1つのシュウ酸イオンと、2つのハロゲン原子が配位したジハロゲン化(オキサラト)ボレート塩およびその誘導体であり、より好ましくはハロゲン原子がフッ素原子(F)であるジフルオロ(オキサラト)ボレート塩である。なお、カチオンとしてはリチウムイオン(Li+)であることが好ましい。したがって、ここに開示される技術において、特に好適なオキサラト錯体化合物としては、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LBFO)が挙げられる。
また、ナトリウム成分との反応性の低いとは、電池の構築に用いる非水電解液が捲回型電極体に浸透した際に、ナトリウム成分と塩を形成しない程度であればよい。
そして、上記で用意した捲回型電極体20および非水電解液を電池ケース10内に収容して組立体を用意する。
電池ケース10は、例えば、アルミニウムおよびその合金、鉄およびその合金などからなる金属製、ポリアミド等の樹脂製、ラミネートフィルム製等の各種のものを好適に用いることができる。図1の例では、アルミニウム合金製の薄い角型の電池ケース10であって、上面が開放された有底の扁平な箱型形状(典型的には直方体形状)のケース本体(外装ケース)12と、該ケース本体12の開口部を塞ぐ封口体14とを備えている。電池ケース10の上面(すなわち封口体14)には、上記捲回電極体20の正極30と電気的に接続する正極端子60と、捲回電極体20の負極40と電気的に接続する負極端子70とが設けられている。また、封口体14には、典型的には、捲回電極体20が収容されたケース本体12内に非水電解液を注入するための注液口84が形成されている。さらに、封口体14には、従来の非水電解液二次電池のケースと同様に、電池異常の際に電池ケース10内部で発生したガスを電池ケース10の外部に排出するための安全弁82が設けられていてもよい。捲回電極体20は、この封口体14に固定した状態でケース本体12内に収容すると、収容位置が安定すると共に、破損等の虞が低減されて好ましい。
その後、上記の組立体に対し初期充電処理を施す。この初期充電処理では、本質的に、上記組立体の正極と負極の端子間に外部電源を接続し、所定の充電レートで、二次電池の駆動電圧領域(例えば、2.7〜4.1V)を含む電圧範囲で充電する。この充電は、1回行うことでもよいし、複数回(典型的には、2〜3回)行うことでもよい。これにより、組立体は電池として実際に使用可能な状態に調整される。そしてここに開示される技術においては、この初期充電処理において、(1)負極電位を、LiBOBの分解電位以下であって、オキサラト錯体化合物の分解電位よりも高い電位(以下、第一電位という。)に保つ第1段階と、(2)第1工程の後、負極電位を、オキサラト錯体化合物の分解電位以下の電位(以下、第二電位という。)に保つ第2段階と、を含むように実施する。これら第1段階および第2段階を行うタイミングは厳密には制限されないものの、典型的には、初回充電(第1回目の充電)時に負極電位が低下することを利用して、実施することができる。
そして第1工程の後、第2工程を行うと、(a5)に示すように、領域Aにおいてオキサラト錯体化合物が還元分解されて、オキサラト錯体化合物由来被膜が形成される。なお、LiBOB由来被膜は電子伝導性を示さないため、LiBOB由来被膜上にオキサラト錯体化合物由来被膜が形成されることはない。これにより、負極活物質層44の表面の領域Aおよび領域Bは、隙間なくかつ被膜形成量のムラが抑制されたLiBOB由来被膜とオキサラト錯体化合物由来被膜とにより覆われ、安定化される。これにより、例えば、捲回軸W方向で負極活物質層44を覆う被膜形成量のムラが抑制された非水電解液二次電池100が提供される。
例えば、図5に示すように、従来の電池においては初期充電処理によってこの領域Aに被膜(例えば、LiBOB由来被膜)が形成されなかった。したがって、その後の電池の使用(充放電サイクル)により領域Aで非水電解液の分解が起り、領域Aの抵抗が局所的に高くなるという現象が見られた。しかしながら、ここに開示される電池100においては、初期充電処理によりこの領域Aにもオキサライト錯体化合物由来の被膜(好ましくは、LBFO由来被膜)が形成されるため、その後の電池の使用によって領域Aの抵抗が局部的に上昇するのを抑制することができる。ここに開示される技術によると、負極活物質層44の抵抗ムラの抑制された非水電解液二次電池100が提供される。
なお、オキサラト錯体化合物として例えばLBFOを用いることで、領域Aと領域Bとにそれぞれ形成されるLiBOB由来被膜とLBFO由来被膜との性状をより一層均質化することができ、負極活物質層44の表面をより良質なSEIで覆うことができる。延いては上記効果がより一層向上された二次電池100が提供され得る。
[評価用リチウムイオン電池の構築]
[正極]
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM、平均粒径6μm、比表面積0.7m2/g)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の質量比がNCM:AB:PVdF=91:6:3となるよう秤量し、固形分濃度(NV)がおよそ50質量%となるようにN−メチルピロリドン(NMP)を加えて混練することで、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体としての厚み15μmの長尺のアルミニウム箔の両面で、長手方向の一方の端部から幅94mmの領域に、片面当たりの目付量が13.5mg/cm2となるよう帯状に塗布し、乾燥(乾燥温度80℃、5分間)することで、正極活物質層を備える正極シートを作製した。なお、正極シートの長手方向の他方の端部には、正極活物質層の形成されていない集電体露出部が設定されている。そして、これを圧延プレスして、正極活物質層の密度が約2.6g/cm3となるよう調整した。なお、圧延プレス後の正極活物質層の厚みは片面当たり約50μm(正極全体で115μm)であった。
負極活物質としての黒鉛(C、平均粒径25μm、比表面積2.5m2/g)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これらの質量比がC:SBR:CMC=98:1:1となるように秤量し、イオン交換水を加えて混練することで、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、負極集電体としての厚み10μmの長尺の銅箔の両面で、長手方向の一方の端部から幅100mmの領域に、片面当たりの目付量が7.3mg/cm2となるよう帯状に塗布し、乾燥(乾燥温度100℃、5分間)することにより、負極活物質層を備える負極シートを作製した。なお、負極シートの長手方向の他方の端部には、負極活物質層の形成されていない集電体露出部が設定されている。そして、これを圧延プレスして、負極活物質層の密度が約1.1g/cm3となるように調整した。なお、圧延プレス後の負極活物質層の厚みは片面当たり約60μm(負極全体で130μm)であった。
セパレータとしては、幅が105mmで、総厚みが平均25μmのHTL付きセパレータを用いた。セパレータの基材には、ポリエチレン(PE)の両面をポリプロピレン(PP)で挟んだ形態の3層構造(PP/PE/PP)の長尺の微多孔質シートを用いた。HRLは、ベーマイト微粒子,アクリル系バインダ,CMCを含むHRL形成用水溶液を基材に塗布することで形成したものである。
すなわち、一つ目は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1.0mol/Lの濃度で、また被膜形成剤としてのLiBOBを0.025mol/L、LBFOを0.02mol/Lの割合で、溶解させたものを用意した。そして、上記電池ケースの封口体に設けられた注液口から非水電解液を約45g注入し、例1のリチウムイオン電池(組立体)を構築した。
二つ目は、被膜形成剤としてLiBOBのみを0.025mol/Lの割合で溶解させたものを用意した。そして、上記電池ケースの封口体に設けられた注液口から非水電解液を同様に注入し、例2のリチウムイオン電池(組立体)を構築した。これらの電池の理論容量は、いずれも30Ahである。
(例1)上記のように作製した例1のリチウムイオン電池について、25℃の下、正負極の端子間電圧が4.1Vとなるまで0.1Cの充電レートで充電し、10分間休止した後、0.1Cの放電レートで3.0Vまで定放電させる操作を3回繰り返すコンディショニング処理を施した。なお、充電過程において、負極の電位がLiBOBの分解電位(1.8VvsLi/Li+)以下であって、LBFOの分解電位(1.7VvsLi/Li+)よりも高い1.78VvsLi/Li+にまで下がった時点で、負極の電位を1.78Vに3分間保ったのち、引き続き充電を行うことで、負極電位が1.7VvsLi/Li+を下回ったことを確認した。
なお、1Cとは、正極の理論容量より予測した電池容量(Ah)を1時間で充電できる電流値を意味する。
上記の初期充電処理後のリチウムイオン電池の負極活物質層の表面に形成された被膜の状態を確認するために、負極の捲回軸方向での抵抗分布を調べた。
具体的には、先ず、例1および例2の電池を、開回路電圧が3.0Vとなるまで放電させてからドライ環境のグローブボックス内で解体し、捲回型電極体を取り出した。次に、捲回型電極体の負極の最内周の適切な大きさで切り出し、非水電解液として用いたEMC中に10分程度浸漬して洗浄して、抵抗測定用の試験体とした。そしてこの負極試験体に形成された負極活物質層の表面の反応抵抗を、捲回軸W方向(長尺の負極の幅方向に相当)に沿って、交流インピーダンス法により測定した。交流インピーダンス法による抵抗測定は、特開2014−25850号公報に開示される手法に従って実施した。なお、測定に用いる非水電解液は、上記で用意した非水電解液の被膜形成剤を添加しないもの(すなわち、電解質を非水溶媒に溶解したもの)を用いた。測定点は、捲回軸W方向の寸法が100mmの負極活物質層について、両端から、5mm迄の領域では1mmごとに、次いで7mm,10mm,20mm,30mm,40mmの地点と、40〜50mm(中心)迄の領域は2mmごとに、設定した。このようにして測定した捲回軸W方向での負極抵抗の変化を、図5に示した。
上記実施態様1と同様にして、非水電解液二次電池を構築した。ただし、非水電解液は7通りのものを用意し、例3〜例9の電池を用意した。
(例3)
すなわち、非水電解液としては、上記実施態様1と同様に、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させ、さらに、被膜形成剤として、LiBOBを0.0014mol/L、LBFOを0.001mol/Lの割合で添加したものを用いた。この非水電解液を電池ケースに35ml収容したことから、例3の電池に含まれるLiBOB量は、0.005molであった。
(例4)
上記例1の非水電解液において、被膜形成剤として、LiBOBを0.0029mol/L、LBFOを0.001mol/Lの割合で添加したものを用いた。この非水電解液を電池ケースに35ml収容したことから、例4の電池に含まれるLiBOB量は、0.010molであった。
(例5)
上記例1の非水電解液において、被膜形成剤として、LiBOBを0.0043mol/L、LBFOを0.001mol/Lの割合で添加したものを用いた。この非水電解液を電池ケースに35ml収容したことから、例5の電池に含まれるLiBOB量は、0.015molであった。
上記例1の非水電解液において、被膜形成剤として、LiBOBを0.0057mol/L、LBFOを0.001mol/Lの割合で添加したものを用いた。この非水電解液を電池ケースに35ml収容したことから、例6の電池に含まれるLiBOB量は、0.020molであった。
(例7)
上記例1の非水電解液において、被膜形成剤として、LiBOBを0.0071mol/L、LBFOを0.001mol/Lの割合で添加したものを用いた。この非水電解液を電池ケースに35ml収容したことから、例7の電池に含まれるLiBOB量は、0.025molであった。
上記例1の非水電解液において、被膜形成剤として、LiBOBを0.0086mol/L、LBFOを0.001mol/Lの割合で添加したものを用いた。この非水電解液を電池ケースに35ml収容したことから、例8の電池に含まれるLiBOB量は、0.030molであった。
(例9)
上記例1の非水電解液において、被膜形成剤として、LiBOBを0.01mol/L、LBFOを0.001mol/Lの割合で添加したものを用いた。この非水電解液を電池ケースに35ml収容したことから、例9の電池に含まれるLiBOB量は、0.035molであった。
例3〜9の電池の電池構成部材のNaの有無をデータシート等を基に調べたところ、下記の表1に示すように、正極,負極およびセパレータのそれぞれにNaが含まれていることがわかった。そこで、以下の手順により、これらの構成部材に含まれるNa量を測定した。具体的には、捲回型電極体を構成する正極,負極およびセパレータをそれぞれ所定の寸法(本実施形態では、5.4cm×30cm,セパレータは2倍長)に切り出し、各々3mLの非水電解液に浸漬させて2日間保存し、保存後の非水電解液に含まれるNa量を誘導結合プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:ICP−MS)装置にて測定した。用いた非水電解液は、上の電池の構築に用いた非水電解液であって、被膜形成剤としてLiBOBおよびLBFOを添加しないものを用いた。なお、各構成部材に含まれるNa量は、負極、正極およびセパレータの順に多く、上記で得たNa測定量から各構成部材に含まれるNa量を算出し、合計することで、電池ケース内に含まれるNa量とした。本実施形態において、このようにして求めた電池ケース内に含まれるNa量は、0.175molであった。
上記で用意した例3〜9のリチウムイオン電池について、25℃の下、正負極の端子間電圧が4.1Vとなるまで0.1Cの充電レートで充電し、10分間休止した後、0.1Cの放電レートで3.0Vまで定放電させる操作を3回繰り返すコンディショニング処理を施した。なお、充電過程において、負極の電位がLiBOBの分解電位(1.8VvsLi/Li+)以下であって、LBFOの分解電位(1.7VvsLi/Li+)よりも高い1.78VvsLi/Li+にまで下がった時点で、負極の電位を1.78Vに3分間保ったのち、引き続き充電を行うことで、負極電位が1.7VvsLi/Li+を下回ったことを確認した。
初期充電処理後の例3〜9の電池に対し、下記のサイクル試験を行ったときの容量維持率を算出し、サイクル特性を評価した。すなわち、例1〜7の電池を、温度を25℃の環境下でSOC(充電深度)80%に調整した。そしてこれらの電池に対し、100Aで100秒間充電した後放電する矩形波充放電を1000サイクル行った。
そして、サイクル前後の容量を測定することで、容量維持率を算出した。なお、容量維持率は、1サイクル目の放電容量に対する、1000サイクル後の放電容量の割合を、次式:容量維持率(%)=(1000サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100;に基づき算出した。このようにして求めた容量維持率と、被膜形成剤としてのLiBOBの添加量との関係を、図6に示した。
しかしながら、電池ケース内のLiBOB量がNa量よりも多い例6〜9の電池については、容量維持率が例えば98%以上に急激に高められることがわかった。LiBOB量が相対的に増えることで、LiBOBに由来する被膜の形成量は徐々に増えていくものと考えられる。しかしながら、LiBOB量がNa量よりも多くなったことで、例えば負極活物質層の捲回軸方向の中央付近に濃縮されたNaイオンをNaBOB塩の形態で良好にトラップし、LiBOB由来被膜が形成されない部分でのLBFO被膜の良好な形成に寄与したものと考えられる。その結果、負極活物質層の表面に、より安定したLiBOB由来被膜が十分に形成されると共に、このLiBOB由来の被膜が形成されない部分においてLBFO由来の被膜が品質よく形成され、負極活物質層の表面の全体が極めて良質な被膜により均質に被覆され、容量維持率の急激な上昇につながったと考えられる。
12 ケース本体
14 封口体
20 捲回型電極体
30 正極(正極シート)
32 正極集電体
33 正極集電体露出部
34 正極活物質層
40 負極(負極シート)
42 負極集電体
43 負極集電体露出部
44 負極活物質層
50 セパレータ
60 正極端子
70 負極端子
80 電流遮断機構(CID)
82 安全弁
84 注液口
100 電池
Claims (7)
- 正極活物質層を備える長尺の正極と、負極活物質層を備える長尺の負極とが捲回されてなる捲回型電極体と、非水電解液と、前記捲回型電極体および前記非水電解液を収容した電池ケースとを備え、
前記負極活物質層は、前記捲回の軸方向の中心に帯状に配置される領域Aと、前記領域Aを除く領域Bとを含み、
前記領域Bの表面には、リチウムビス(オキサラト)ボレートに由来する被膜が備えられ、
前記領域Aの表面には、前記リチウムビス(オキサラト)ボレートよりも分解電位が低く、かつ、ナトリウム成分と反応しないオキサラト錯体化合物に由来する被膜が備えられている、非水電解液二次電池。 - 前記電池ケース内に含まれる、
ナトリウム量をCNaとし、
前記リチウムビス(オキサラト)ボレートに由来する成分量をCLiBOBとしたとき、
前記CNaと前記CLiBOBとは、CNa<CLiBOBの関係を満たす、請求項1に記載の非水電解液二次電池。 - 前記オキサラト錯体化合物は、ジフルオロ(オキサラト)ボレート塩である、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
- 前記電池ケースは、前記捲回型電極体を収容するための開口を備えるケース本体と、前記ケース本体の前記開口を封止している封口体と、を備え、
前記捲回電極体は、前記封口体が上方となるように前記電池ケースを水平面に置いたとき、前記捲回の軸が水平方向となるよう前記電池ケース内に収容されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。 - 正極活物質層を備える長尺の正極と、負極活物質層を備える長尺の負極とが捲回されてなる捲回型電極体を用意すること;
被膜形成剤を含む非水電解液を用意すること、ここで前記被膜形成剤は、少なくとも、リチウムビス(オキサラト)ボレートと、前記リチウムビス(オキサラト)ボレートよりも分解電位が低く、かつ、ナトリウム成分と反応しないオキサラト錯体化合物とを含む;
前記捲回型電極体および前記非水電解液を電池ケース内に収容して組立体を用意すること;および、
前記組立体に対し初期充電処理を施すこと、ここで前記初期充電処理は、
前記負極電位を、前記リチウムビス(オキサラト)ボレートの分解電位以下であって、前記オキサラト錯体化合物の分解電位よりも高い電位に保つ第1段階と、
前記第1工程の後、前記負極電位を、前記オキサラト錯体化合物の分解電位以下の電位に保つ第2段階と、を含む;
を包含する、非水電解液二次電池の製造方法。 - 前記電池ケース内に含まれる、ナトリウム量をCNa、前記リチウムビス(オキサラト)ボレート量をCLiBOBとしたとき、
前記CNaと前記CLiBOBとが、CNa<CLiBOBの関係を満たすように電池組立体を構築する、請求項5に記載の製造方法。 - 前記オキサラト錯体化合物は、ジフルオロ(オキサラト)ボレート塩である、請求項5または6に記載の製造方法。
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