JP6216184B2 - 蓄冷体 - Google Patents
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Description
前記開閉機構が、前記開口部の両端に設けられていてもよい。
前記開閉機構が、前記開口部を開閉可能な弁であってもよい。
前記伸縮可能な熱可塑性樹脂が、スチレンエラストマーであってもよい。
JIS K6251に準拠して測定した前記スチレンエラストマーの伸長率が、10%以上2000%以下であることが好ましい。
前記伸長可能な熱可塑性樹脂が、粘着性を有さないことが好ましい。
前記凝固伝播剤が、水であってもよい。
前記開口部が、貫通孔又は開口したスリット状の溝であってもよい。
前記開口部の口径が、0.1mm以上であることが好ましい。
1 蓄冷体の構成
1−1 蓄冷剤容器
1−2 蓄冷剤
1−3 過冷却解消装置
2 蓄冷体の作用
2−1 蓄冷体の凝固伝播の原理
2−2 開口部の開閉動作及び開閉機構の作用
3 蓄冷体の製造方法
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の好適な実施形態に係る蓄冷体10の構成について説明する。図1は、本発明の好適な実施形態に係る蓄冷体10の外観構成を示す斜視図である。図2は、図1の蓄冷体10を2−2線で切断した断面図である。
蓄冷剤容器11は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン若しくはポリアミド、ポリエステル等のプラスチック容器、アルミニウム等の金属性容器、又は、アルミプレート等がインサートされた樹脂製複合容器、ラミネートフィルムを熱シールした柔軟な袋状容器等である。特に、パリソンを用いてインジェクションブロー成形した中空平板状に製造されたものが多く使用される。蓄冷剤容器11の平面視形状は、矩形その他の多角形等、任意の形状とされるが、この例では略長方形とされている。なお、本実施形態における蓄冷剤容器11の大きさも特に限定はされず、用途に応じて適宜外形寸法を定めればよい。また、蓄冷剤容器11には、側面に蓄冷剤充填口13が形成されている。この蓄冷剤充填口13は、蓄冷剤21及び過冷却解消装置31の収容後、キャップが嵌められ、接着剤、熱融着あるいは高周波融着等により封止される。
蓄冷剤21としては、冷凍食品等の保冷に用いられる公知の蓄冷剤を使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム等の無機塩の水溶液、メタノールやエタノール等のアルコール水溶液、あるいは水溶性高分子にゲル化剤(天然高分子、硫酸カリウムアルミニウム、アンモニウムミョウバン、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)を添加したもの、これらの混合物等が挙げられる。ここで、例えば、冷凍食品は、通常−18℃以下程度の低温に保持する必要があることから、蓄冷体10を冷凍食品の輸送時の保冷等の用途として用いる場合には、蓄冷剤21として、上記低温の凝固点を有する蓄冷剤を使用することが好ましい。また、無機塩の水溶液の濃度を変えることで蓄冷剤21の凝固点を調整することができ、ゲル化剤の種類と濃度を変えることで蓄冷剤21の粘度を調整することができる。
過冷却解消装置31は、上述した蓄冷剤21の過冷却を解消するために、蓄冷剤容器11中に収容されるものである。ここで、図3を参照しながら、過冷却解消装置31の構成を説明する。図3は、本実施形態に係る過冷却解消装置31の構成を示す断面図であり、(a)は開口部35が閉止されている状態を示しており、(b)は開口部35が開放されている状態を示している。
凝固伝播剤42は、蓄冷剤21よりも高い凝固温度を有する液体である。これにより、蓄冷体10を冷凍させる際に、凝固伝播剤42は、蓄冷剤21よりも先に凝固し、蓄冷剤21がその凝固温度に到達したときに既に凝固している凝固伝播剤42が蓄冷剤21の氷核となるような結晶構造を有している。このような凝固伝播剤42としては、蓄冷剤21よりも凝固温度の高い液体であれば特に制限されるものではないが、凝固温度が低いことから水が好適である。また、凝固伝播剤42として用いられる水は、純水でなくてもよく、例えば、水道水を用いることもできる。さらには、凝固伝播剤42としては、水ではなく、蓄冷剤21よりも濃度の低い無機塩の水溶液等であってもよい。
外殻32は、上述した凝固伝播剤42を収容可能な容器(カプセル)であり、その形状や大きさは、蓄冷剤容器11内に収容可能なものであれば特に制限されるものではなく、適宜定めることができる。また、外殻32の少なくとも一部が伸縮可能な熱可塑性樹脂からなる膜33となっており、残りの部分が外殻本体34となっている。本発明に係る外殻の一例として図3に示した外殻32は、一端が略半球(ドーム)状の形状を有し他端が開口した略円筒状の外殻本体34と、外殻本体34の開口34aを覆うように設けられたシート状の膜33とからなる。なお、外殻32は、蓄冷剤容器11とは物理的に別体の部材として設けられているが、このような形態には限られず、例えば、蓄冷剤容器11の内部を複数の領域に仕切る隔壁(図示せず。)であり、この隔壁で囲まれた領域内に凝固伝播剤42が収容されていてもよい。また、本実施形態では、膜33が外殻32の一部として設けられているが、外殻32全体としての機械的強度を担保でき、後述する開口部35の開閉が可能であれば、外殻本体34を設けずに外殻32全体が膜33で構成されていてもよい。
以上、本実施形態に係る蓄冷体10の構成を詳細に説明したが、続いて、再び図3を参照しながら、上述した蓄冷体10の作用について説明する。
本実施形態に係る蓄冷体10における過冷却解消の原理は以下の通りである。凝固伝播剤42が充填された過冷却解消装置31を、凝固伝播剤42より凝固温度の低い蓄冷剤21とともに蓄冷剤容器11内に入れ、蓄冷体10全体を冷却することにより、蓄冷剤21と凝固伝播剤42との凝固温度の差によって、過冷却解消装置31内の凝固伝播剤42が、蓄冷剤21よりも先に凝固する。この際に、凝固に伴う体積膨張が発生し、これにより膜33が伸長することにより、弁36により開口部35が開放される。その後、過冷却解消装置31内の凝固体(凝固伝播剤42として水を用いた場合には氷)が、開口部35を通して蓄冷剤21側に露出し、この部分が核となり蓄冷剤21の凝固が始まる。このような現象により、蓄冷剤21のみを冷却した場合は過冷却状態が継続する温度でも、過冷却を解消させることが可能となる。
ここで、本実施形態に係る蓄冷体10は、膜33に形成された開口部35の開閉機構として、膜33の伸縮に応じて開口部35を開閉可能な弁36を有する。蓄冷体10は、使用前の常温下では、図3(a)に示すように、過冷却解消装置31の膜33に形成されている開口部35が弁36により略閉止された状態となっており、また、蓄冷剤容器11内の蓄冷剤21及び過冷却解消装置31内の凝固伝播剤42(例えば、水)が液体となっている。蓄冷剤21及び凝固伝播剤42は、開口部35を通ることができず、互いに混ざることなく膜33で分離されている。
次に、上述した構成及び作用を有する本実施形態に係る蓄冷体10の製造方法について説明する。
本実施形態に係る過冷却解消装置31は、開口部35及び弁36を形成した膜33と外殻本体34とを接着することで得られる外殻32内に、凝固伝播剤42を充填することにより製造される。外殻本体34と膜33との接着には、一般に樹脂等の接着に用いられる公知の接着剤(例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等)を用いればよい。なお、外殻32を膜33のみで構成する場合には、上述した伸縮性を有する熱可塑性樹脂を、凝固伝播剤42を収容可能なカプセル状、袋状、箱状等の形状に成形後、この表面の少なくとも一箇所に、開口部35及び弁36を形成すればよい。また、伸縮性を有する熱可塑性樹脂を膜状に成形し、この膜表面の少なくとも一か所に開口部35及び弁36を形成後、この膜を、凝固伝播剤42を収容可能なカプセル状、袋状、箱状等の形状に成形してもよい。
膜33は、上述した伸縮性を有する熱可塑性樹脂を、押し出し成形等により所望の形状(例えば、シート状、カプセル状、袋状等)に成形することで得られる。
次に、上述したようにして成形された膜33に開口部35及び弁36を形成する。この開口部35及び弁36は、加熱した線材を膜33に貫通させることにより形成することができる。より具体的には、例えば、ボール盤等に上記線材を取り付け、ヒーター等の加熱手段により線材を目的の温度まで加熱し、目的の温度に達した線材を略垂直に膜33に向かって降下させ、貫通させた後に決められた時間(以下、「加熱保持時間」と記載する。)保持してから引き抜くことにより、膜33に開口部35及び弁36が形成される。
まず、実験例1について説明する。
(蓄冷剤)
蓄冷剤として、凝固点が−10.89℃の塩化ナトリウム水溶液(濃度15重量%)を使用した。
本実験例の膜としてはスチレンエラストマー膜を用いた。このスチレンエラストマーは、伸縮性に優れており、元のサイズの1600%まで伸長させることができる。低温域においても伸縮の能力は維持される一方、熱で融解する性質も有している。膜の厚みは1mm程度とした。スチレンエラストマーは、添加剤(粘着付与樹脂)を付与することにより粘着性を変化させることができる。本実験例では、必要に応じてこの粘着付与樹脂をスチレンエラストマー中に均一に分散させた。粘着付与樹脂を添加すると、そのガラス転移点との関係で、スチレンエラストマーの見掛け上の融点が高温側へとずれる。粘着付与樹脂の添加量により、スチレンエラストマーの見掛け上の融点と粘着性が変化するが、本実験では、膜の粘着性と膜膨張の際の開口部の開き方を調べるため、粘着付与樹脂の添加量は固定し、粘着性を有する膜(粘着性あり)と粘着性を有さない膜(粘着性なし)の2種類の膜を用意した。
膜への開口部及び弁の形成には、垂直に銅線を移動させる目的で、ボール盤の上下運動を利用した。ボール盤の先端に銅の棒を取り付け、その先端にφ0.4mmの銅線が5mm程度突き出るようにした。銅の棒を加熱することで温度調整を行い、銅の棒先端、すなわち銅線の根元で温度測定を行った。有限長さで端面も側面と同じ熱伝達率hで放熱していると仮定すると、下記式(1)により、膜に接する銅線先端の温度を概算することができる。
Θ0:銅線の根元の温度差[K]
λ:熱伝導率[W・m−1・K−1]
m:定数(m2=4h/λd、d:銅線の直径[m])
h:熱伝達率[W・m−2・K−1]
L:銅線の長さ[m]
本実験で用いた過冷却解消装置の概略図を図11に示す。ポリプロピレン製の試験管を底から15mmのところで切断し、中央に開口部及び弁が形成されたスチレンエラストマー膜を試験管の口に接着させることで、過冷却解消装置を作成した。試験管とスチレンエラストマー膜を接着する際には、ポリプライマーH(登録商標、東亜合成株式会社製)で前処理を行い、アロンアルファ(登録商標、東亜合成株式会社製)で接着した。試験管の膜と反対側には、熱電対を通すための穴と空気と水を出し入れする穴を開けた。この穴は、通常はバスボンド(登録商標、コニシ株式会社製)にて閉止されている。
蓄冷体を模した実験装置を図14に示す。過冷却解消装置(カプセル)内は空気を排除し水道水で満たした。蓄冷剤容器を模したビーカーは、透明で中の凝固の様子が観察できるようになっており、ビーカー内には、前述したように、蓄冷剤を見立てた濃度15重量%の塩化ナトリウム水溶液を100ml入れた。本実験においては、過冷却解消装置内の水、過冷却解消装置近傍の水溶液、そして蓄冷剤を周りから冷やすためのブラインの3点の温度を測定した。
凝固融解を10回繰り返した後の過冷却解消装置内の水中の塩濃度を図16に示す。図16(a)は平坦な端面を有する銅線を用いて開口部及び弁を形成した場合、図16(b)は尖った端面を有する銅線を用いて開口部及び弁を形成した場合の結果である。どちらの場合も横軸は予備実験で空気を入れることにより得られた開口部の開放の瞬間の最大高さHmaxである。また、図中の×は、凝固が過冷却解消装置内から伝播せずに別なところから過冷却が自然解消したものを指す。図16に示す結果から、最大高さHmaxが高いと凝固が伝播しにくくなることが分かった。これは、開口部がなかなか開放しないためであると考えられる。一方、最大高さHmaxが低いと、凝固融解後の過冷却解消装置内の水中の塩濃度が高くなっていた。これは、開口部の径が大きすぎるからである。300回の凝固融解の繰り返し実験でも過冷度5K以内で伝播させることのできる過冷却解消装置が理想的である。本実験の系によれば、過冷却解消装置内の水道水の凝固時の過冷度が5K程度、蓄冷剤(水溶液)側の凝固点が−10.87℃なので、過冷却解消装置内の水の凝固点が6K程度降下しても許容範囲内であると考えられる。単純計算で10回で0.2K、濃度変化0.32重量%に相当する。Hmaxの大きな範囲においては×印が多い中、Hmaxが大きな範囲でも凝固の伝播が確認でき、しかも凝固融解後の過冷却解消装置内水中の塩濃度が小さな最適なサンプルがいくつか得られた。従って、最大高さHmaxは、平坦な端面を有する銅線を用いた場合はHmaxが2〜3mm、尖った端面を有する銅線を用いた場合はHmaxが2mm程度が最適と思われる。これらは、見かけの条件は同一でも×印のものとは別物と考えられる。なお、図16(a)の○印、Hmax=3mm、濃度変化が0.01wt%の例の開口部の断面形状の写真を図17に示す。図17は、開口部を中心にカッターでスチレンエラストマー膜を約1mm幅にスライスして撮影を行い、焦点距離を移動させた20枚程度の写真の合成を縦に3枚並べたものである。縦方向が膜の厚み方向で、縦に細長い形状のものが映っているのが開口部である。この例では、図17に示すように、開口部の両端に弁(開口部両端の樹脂の塊部分)が形成されていることが観察できた。
以上のように、本実験例1では、開口部及び弁を形成した厚さ1mmのスチレンエラストマー膜を部分的に有する過冷却解消装置を作成し、直径0.4mmの銅線の先端の形状と銅線の加熱温度を変化させて膜に開口部及び弁を形成することにより、蓄冷剤の過冷却を抑制する効果を実験的に検討した。その結果、以下に示す結論を得た。
(1)銅線の加熱温度としては、粘着性のあるスチレンエラストマー膜の場合は140℃程度、粘着性のないスチレンエラストマー膜の場合は110℃程度が、開口部及び弁を形成する際の最適な温度であることが分かった。
(2)銅線の先端の形状は、平坦なものより尖ったものの方が安定した効果が得られることが分かった。
(3)膜内の開口部及びの形状は、スチレンエラストマーが一度融解した後に凝固することで形成されるものであり、その構造は複雑であることが分かった。
(4)凝固融解実験を繰り返し行い、その後の過冷却解消装置内の水中の塩濃度測定を行うことにより、本発明に係る蓄冷体が過冷却解消に有効であることが明らかとなった。
次に、実験例2について説明する。
(過冷却解消装置)
まず、本実験例における過冷却解消装置について説明する。
本実験例2において用いる過冷却解消装置(以降、「装置」と呼ぶ。)は、上述した実験例1と同様の装置を用いた。また、膜は伸びのない状態で試験管に接着してあり、内部の水が凝固した際に膜は2mm程膨らみ、半球形状をしていた。これは伸縮率にして115%程度である。膜に形成した開口部及び弁が開閉するかどうかは、上記実験例1で確かめたように、装置に空気を挿入することにより確認することができる。
スチレンエラストマー膜の開口部及び弁は、膜に対して加熱した銅線を貫通させることにより作成した。使用した銅線は径が0.4mmで、先端をニッパーにより切断し、加熱温度を測定するために熱電対とともにボール盤に取り付けた。ヒーターにより目的の温度に達した銅線を垂直に膜に向かって降下させ、貫通させた後に所定時間保持してから引き抜いた。以降、この貫通状態で保持する時間を加工保持時間と記載する。
次に、本実験例における実験方法を説明する。
水より凝固点の低い溶液である蓄冷剤としては、通常の保冷材の主成分として使用されている塩化ナトリウム水溶液を用いた。本実験では、蓄冷剤容器に見立てたビーカー内に15重量%の塩化ナトリウム水溶液100mlを入れ蓄冷体サンプルとした。なお、この濃度の塩化ナトリウム水溶液の融点は−10.89℃である。
まず、膜の加工条件の検討のための実験を行った。膜への開口部及び弁の加工条件は、銅線の径0.4mm、先端をニッパーで切断、加工保持時間0秒を共通条件とし、加熱温度を100℃、110℃、120℃の3通りで行った。実験工程は、始めにビーカー内の塩化ナトリウム水溶液と過冷却解消装置の水を0℃の定常状態で1時間維持し、その後ビーカー全体を平均−0.47K/minの冷却速度で1時間冷却し、装置内の水と装置の先端付近の塩化ナトリウム水溶液の温度を測定した。水溶液の凝固伝播確認後、室温で水溶液と装置をともに2時間放置し融解させ、融解後装置内の水の濃度変化を測定した。図19に本実験例における実験装置の概略図を示す。
続いて、上記実験の結果として、加熱温度、加熱保持時間及び膜の接着向きがそれぞれ過冷却解消効果に与える影響について述べる。
加工保持時間0秒で、加熱温度が100℃、110℃、120℃の各条件で開口部及び弁を形成した膜を用いた凝固伝播実験の結果を図20に示す。横軸は実験前に装置に空気を注入したときの膜の膨らみの測定値、縦軸は実験後の装置内の水の濃度変化である。加熱温度100℃で開口部及び弁を作成した装置は、装置内の水の濃度変化は小さかったが、凝固伝播確率が非常に小さく過冷却解消装置としての機能性が低かった。これは、装置内の水が凝固により膨張して膜が伸びても、開口部の大きさ又は弁の形成状態が不十分なために水溶液側に露出する氷がない、または少ないことが原因と考えられる。加熱温度120℃で開口部及び弁を作成した装置では、凝固伝播確率は高いが濃度変化が大きかった。この装置を連続で使用することを考慮すると過冷却解消の機能性は低いといえる。これは、開口部の径が必要以上に大きく、また、弁が有効に機能していないため、装置外部の塩化ナトリウム水溶液が内部に容易に混入(浸入)するためと考えられる。加熱温度110℃で開口部及び弁を作成した装置は、凝固伝播確率が高く、加熱温度120℃の結果と比較して濃度変化も小さかった。以上の結果から、この3種類の加工条件の中では加熱温度110℃で開口部及び弁を作成した膜を有する装置が最適であることが分かった。
次に、表2に、加熱温度110℃、加工保持時間0秒で加工した膜を用いた装置と、加熱温度100℃、加工保持時間1秒で加工した膜を用いた装置の実験結果を示す。5回の連続実験全てにおいて、どちらの装置も過冷度が5℃以内であるため、凝固伝播確率はそれぞれ100%と同じ結果であった。また、実験後の装置内の水の濃度変化も、二つの装置は非常に近い値となった。これは、開口部及び弁の加工条件である加熱温度を低く設定した場合でも、加工保持時間を長くすることで、過冷却解消効果を持つ装置が作成可能であることを示している。
次に、表3及び表4に、加熱温度が100℃で、加工保持時間はそれぞれ1秒、3秒の2種類、さらに膜の接着向きを表と裏に分けて凝固伝播実験を行い得られた結果を示す。
本実験例2では、開口部及び弁を形成したスチレンエラストマー膜を用いて、その特徴を生かしたカプセル型の過冷却解消装置を作成し、塩化ナトリウム水溶液の過冷却を能動的に解消し、かつ連続でその効果を得ることが可能であることが明らかになった。また、開口部及び弁の作成条件において、異なる加熱温度でも加工保持時間を調整することにより、過冷却解消効果のある装置の作成が可能であることが明らかになった。さらに、膜に開口部及び弁を加工する際に定義される膜の表と裏に関しては、本実験例で実験を行った開口部及び弁の加工条件において、装置に膜を取り付ける向きは過冷却解消効果には影響しないことが明らかになった。
次に、比較実験例について説明する。本実験例では、凝固が伝播しない条件を確認すべく、以下の比較例1〜比較例3の比較実験を行った。
比較例1では、過冷却解消装置を用いなかったこと以外は、上述した実験例1及び2で用いた蓄冷体を模した実験装置と同様の装置を用いて、過冷度ΔTを確認する実験を行った。蓄冷剤として用いる水溶液としては、実験例1及び2と同様の15重量%の塩化ナトリウム水溶液を使用した。実験工程は、始めにビーカー内の塩化ナトリウム水溶液と過冷却解消装置の水を0℃の定常状態で1時間維持し、その後ブラインを0.47K/minの冷却速度で1時間冷却し、塩化ナトリウム水溶液の温度を測定した。その結果を図28に示す。
比較例2では、上記実験例2で加熱温度100℃、加熱保持時間0秒の条件で膜に開口部及び弁を形成した装置を用いて、凝固伝播実験を行った。実験工程は以下の通りである。全体の温度を0℃に保ち、定常を確認し初期条件とした。その後、ブラインを0.47K/minの一定速度で冷却し、水溶液の周囲を循環させた。その結果の一例を図29に示す。
比較例3では、膜を200%に伸長させ(膜の伸び率は2倍)、穴の開いた2枚のアクリル板で膜を挟持した状態で、ボール盤に取り付けた直径0.15mmの先端が平坦な銅線を用いて膜に開口部を形成した。このとき、銅線は徐々に加熱し、開口部が形成された時点で銅線の加熱を中止した。このようにして開口部を形成した膜を有する過冷却解消装置を用いて、凝固伝播実験を行った。膜としては、粘着性ありの膜と粘着性なしの膜の双方を用いた。実験工程は以下の通りである。全体の温度を0℃に保ち、定常を確認し初期条件とした。その後、ブラインを0.47K/minの一定速度で冷却し、水溶液の周囲を循環させた。
11 蓄冷剤容器
21 蓄冷剤
31 過冷却解消装置
32 外殻
33 膜
34 外殻本体
35 開口部
36 弁
42 凝固伝播剤
Claims (8)
- 蓄冷剤容器内に、蓄冷剤と、該蓄冷剤の過冷却を解消する過冷却解消装置とが収容された蓄冷体であって、
前記過冷却解消装置は、外殻内に、前記蓄冷剤よりも高い凝固温度を有する液体の凝固伝播剤を収容するとともに、前記外殻の少なくとも一部として伸縮可能な熱可塑性樹脂からなる膜を有し、
前記膜は、該膜を貫通する開口部と、該開口部を開閉可能な少なくとも1つの開閉機構とを有し、
前記開閉機構が、前記開口部の、前記膜の厚み方向における両端に設けられており、
前記開閉機構は、前記凝固伝播剤が凝固する際の体積増加による前記膜の伸長により略閉止されている前記開口部を開放し、前記凝固伝播剤が融解する際の体積減少による前記膜の収縮により開放されている前記開口部を略閉止することを特徴とする、蓄冷体。 - 前記開閉機構が、前記開口部を開閉可能な弁である、請求項1に記載の蓄冷体。
- 前記伸縮可能な熱可塑性樹脂が、スチレンエラストマーである、請求項1又は2に記載の蓄冷体。
- JIS K6251に準拠して測定した前記スチレンエラストマーの伸長率が、10%以上2000%以下である、請求項3に記載の蓄冷体。
- 前記伸長可能な熱可塑性樹脂が、粘着性を有さない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄冷体。
- 前記凝固伝播剤が、水である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄冷体。
- 前記開口部が、貫通孔又は開口したスリット状の溝である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄冷体。
- 前記開口部の口径が、0.1mm以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄冷体。
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