JP6215127B2 - 繊維含有樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン系樹脂中に微細セルロース繊維が含まれる樹脂組成物を製造する繊維含有樹脂組成物の製造方法に関する。
樹脂においては、その内部に繊維を分散させることにより、機械的物性(引張特性、曲げ特性、衝撃強度)を向上させることがある。樹脂に分散させる繊維としては、ガラス繊維や炭素繊維等を用いることが多いが、近年、植物由来繊維であるセルロース繊維を用いることもある。特に、セルロース繊維を微細化した微細セルロース繊維を用いた場合には、機械的物性の向上効果が高くなることが期待されるため、微細セルロース繊維を含む繊維含有樹脂組成物が検討されている。
ところが、セルロース繊維は親水性が高い繊維である一方で、多くの樹脂は疎水性であるか、親水性が低い。そのため、樹脂とセルロース繊維との親和性は低く、樹脂中にセルロース繊維は分散しにくく、機械的物性の向上効果を充分に発揮しないことがあった。この問題は、樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合に特に顕著であった。
そこで、特許文献1に記載の繊維含有樹脂組成物では、セルロース繊維の分散性を向上させるために、樹脂とセルロース繊維に、多価アルコール、酸変性ポリオレフィンを添加している。
特許文献2に記載の繊維含有樹脂組成物では、セルロース繊維の分散性を向上させるために、樹脂とセルロース繊維に、水酸基価30mgKOH/g以上の分散剤を添加している。
特開2011−219571号公報 特開2012−102324号公報
しかし、特許文献1,2に記載の繊維含有樹脂組成物では、製造時の加熱によって着色することがあった。また、特許文献1,2に記載の繊維含有樹脂組成物では、ポリオレフィン系樹脂への微細セルロース繊維の分散性が充分に高くならず、機械的物性が低くなることがあった。
本発明は、熱による着色を抑制でき、ポリオレフィン系樹脂への微細セルロース繊維の分散性を向上でき、機械的物性に優れた繊維含有樹脂組成物を容易に製造できる繊維含有樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]微細セルロース繊維(A)と、水(B)と、セルロースのヒドロキシ基と反応可能な反応性官能基を有するポリオレフィンからなる極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)と、疎水基及び親水基の両方を各々1つ以上有する低分子化合物(D)と、セルロースのヒドロキシ基と反応可能な反応性官能基及び親水基を有さないポリオレフィン系樹脂(E)とを加熱混練すると共に脱揮する工程を有し、加熱混練の際の加熱温度を100℃以上とする、繊維含有樹脂組成物の製造方法。
[2]低分子化合物(D)における親水基が、ヒドロキシ基、アミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1つである、[1]に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
[3]低分子化合物(D)における疎水基が炭素数1〜300の炭化水素基である、[1]又は[2]に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
[4]極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)における反応性官能基が、酸無水物基及びエポキシ基の少なくともひとつを含む、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
[5]微細セルロース繊維(A)が繊維分散用樹脂(F)に予め混合されてコンポジットとされ、該コンポジットにおける繊維分散用樹脂(F)の含有割合が、微細セルロース繊維(A)100質量部に対して1〜500質量部である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
[6]ポリオレフィン系樹脂(E)の100質量部に対して、微細セルロース繊維(A)を1〜100質量部、水(B)を1〜100質量部、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)を1〜9900質量部、低分子化合物(D)を1〜20質量部配合する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
[7]押出機を用いて加熱混練する、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
本発明の繊維含有樹脂組成物の製造方法によれば、熱による着色を抑制でき、ポリオレフィン系樹脂への微細セルロース繊維の分散性を向上でき、機械的物性に優れた繊維含有樹脂組成物を容易に製造できる。
本発明の繊維含有樹脂組成物の製造方法は、微細セルロース繊維(A)と、水(B)と、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)と、低分子化合物(D)と、ポリオレフィン系樹脂(E)とを加熱混練すると共に脱揮する工程(以下、「加熱混練脱揮工程」という。)を有する。
[微細セルロース繊維(A)]
微細セルロース繊維(A)は、通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに細く且つ短いI型結晶構造のセルロース繊維あるいは棒状粒子である。
微細セルロース繊維(A)の、X線回折法によって求められる結晶化度は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上である。結晶化度が前記下限値以上であれば、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。
結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求めることができる。
微細セルロース繊維(A)は、電子顕微鏡で観察して求めた平均繊維幅が2〜15000nmのセルロースである。微細セルロース繊維(A)の平均繊維幅は20〜12000nmがより好ましい。微細セルロース繊維(A)の平均繊維幅が前記上限値を超えると、微細セルロース繊維としての特性(高強度や高剛性、高寸法安定性、樹脂と複合化した際の高分散性、透明性)を得ることが困難になる。微細セルロース繊維(A)の平均繊維幅が前記下限値未満であると、セルロース分子として分散媒に溶解してしまうため、微細セルロース繊維としての特性(高強度や高剛性、高寸法安定性)を得ることが困難になる。
微細セルロース繊維(A)の電子顕微鏡観察による平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。微細セルロース繊維含有スラリーを調製し、該スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍、50000倍あるいは100000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の幅(繊維の短径)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維幅を読み取る。このように読み取った繊維幅を平均して平均繊維幅を求める。この平均繊維幅は数平均繊維径と等しい。
微細セルロース繊維(A)の平均繊維長は、0.01〜3.0mmが好ましく、0.05〜1.0mmがより好ましく、0.1〜0.7mmがさらに好ましい。微細セルロース繊維(A)の平均繊維長が前記下限値以上であれば、繊維含有樹脂組成物の機械的物性をより向上させることができる。微細セルロース繊維(A)の平均繊維長が前記上限値以下であれば、ポリオレフィン系樹脂(E)中の微細セルロース繊維(A)の分散性がより高くなる。
平均繊維長は、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS−200形)を用い、長さ加重平均繊維長を測定することにより求めた。
また、微細化を進めていくと、幅が細く、長さが短い繊維は、カヤーニ繊維長測定器では測定できなくなる場合がある。そこで、繊維の長さに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)を適宜選択し、繊維長の観察・測定を行った。繊維長は、得られた写真から20本以上を選択し、測定した。
微細セルロース繊維(A)は、アニオン基を有してもよい。アニオン基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。微細セルロース繊維(A)がアニオン基を有する場合、その含有量は、0.1〜2.0mmol/gであることが好ましく、0.1〜1.5mmol/gであることがより好ましい。
カチオン基の含有量が前記範囲であれば、微細セルロース繊維(A)の水和性が高くなり過ぎず、スラリー化した際の粘度が低くなる。アニオン基の含有量が前記上限値を超えると、水和性が高くなりすぎて微細セルロース繊維(A)が溶解するおそれがある。
なお、セルロースは、カルボキシ基を導入する処理を施さなくても、少量(具体的には0.1mmol/g未満)のカルボキシ基を有している。
アニオン基の含有量は、米国TAPPIの「Test Method T237 cm−08(2008):Carboxyl Content of pulp」の方法に準じて定量することができる。
カチオン基の含有量は、微細セルロース繊維(A)に含まれる特定の元素の量を測定することで定量できる。例えば、アンモニウム塩の構造を有するカチオン基であれば、窒素量を、窒素測定装置を用いて測定することで定量することができる。
微細セルロース繊維(A)は、セルロースを含む繊維原料(例えば、各種パルプ)を解繊処理して微細化することにより得られる。
解繊処理の際に使用する解繊装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができる。
<極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)>
極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)は、セルロースのヒドロキシ基と反応可能な反応性官能基を有するポリオレフィンからなる。
極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の製造方法は、ポリオレフィン樹脂に対し極性基含有モノマーをグラフト変性させる方法、ビニル基を有したポリオレフィン樹脂のビニル基部分を化学修飾する方法、高圧ラジカル重合法プロセスを用いて、エチレンと極性基含有モノマーを共重合せしめる方法、遷移金属触媒の存在下にエチレンと極性基含有モノマーを共重合せしめる方法等が例示され、これらに限定されないものの、例えば、特開昭50−4144号公報、特許第2792982号公報、特開平3−229713号公報、特開2005−97587号公報、特開2005−97588号公報、特開2006−131707号公報、特開2009−155655号公報、特開2009−155656号公報、特開2013−147644号公報等に開示された方法を適宜使用することができる。
反応性官能基としては公知の極性基を制限無く適応できるが、無水マレイン酸基等のジカルボン酸無水物基、カルボキシ基、エポキシ基、アルデヒド基、シラノール基等が例示され、反応性の点から、ジカルボン酸無水物基またはエポキシ基が好ましく、ジカルボン酸無水物の中でも、とりわけ無水マレイン酸が好ましい。
極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の製造方法としてグラフト変性を選択した場合に使用する変性原料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。
極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)を入手の容易さの観点から選定する場合、酸無水物基及びエポキシ基の少なくとも一方からなる反応性官能基を有するポリエチレン又はポリプロピレンが好ましい。
極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)における反応性官能基の含有量は、0.001〜30質量%であることが好ましく、0.01〜20質量%であることがより好ましい。反応性官能基の含有量が前記範囲内にあれば、繊維含有樹脂組成物における微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができ、繊維含有樹脂組成物の機械的物性をより向上させることができる。
極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)のメルトフローレート(MFR)は、0.001〜400g/10minであることが好ましく、0.005〜300g/10minであることがより好ましく、0.01〜100g/10minであるとさらに好適である。極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)のMFRが0.001g/10minを下回る場合、流動性が非常に低くなり、各種の成形方法による賦形が困難となり、400g/10minを上回る場合には、セルロース繊維による機械物性向上効果が得られない。
極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)のMFRは、JIS K7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgfの条件で測定した値である。
<低分子化合物(D)>
低分子化合物(D)は、疎水基及び親水基の両方を各々1つ以上有する、分子量10000以下の低分子化合物である。
化合物(D)における疎水基としては、各種炭化水素基(アルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルケニレン基、アリール基、トシル基、アルアルキル基、シクロアルキル基等)、前記炭化水素基の水素をフッ素に置換したフルオロカーボン基が挙げられる。
炭化水素基としては、アルキル基又はアルキレン基が好ましい。疎水基の炭素数1〜300であることが好ましく、10〜30であることがより好ましい。炭素数が前記上限値以下であれば、低分子化合物(D)がセルロース繊維間に浸透しやすくなって微細セルロース繊維(A)の分散性を向上させる効果がより高くなる。
低分子化合物(D)における親水基は極性基であればよいが、微細セルロース繊維(A)の分散性がより高くなることから、ヒドロキシ基、アミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
低分子化合物(D)の親水基は、0.01〜80質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。低分子化合物(D)の親水基が前記範囲内であれば、ポリオレフィン系樹脂(E)に対する微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができる。
低分子化合物(D)の全炭素数は5〜1000であることが好ましく、10〜30であることがより好ましい。低分子化合物(D)の全炭素数が前記下限値以上であれば、加熱混練時の揮発を抑制でき、前記上限値以下であれば、低分子化合物(D)がポリオレフィン系樹脂(E)に混ざり易くなる。
好ましい低分子化合物(D)の具体例としては下記のものが挙げられる。
ヒドロキシ基を有する化合物としては、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコールといった脂肪族アルコール、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンポリベヘネート、ソルビタンカプリレートといったソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレートといったグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートといったポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレートといったポリオキシエチレン脂肪酸エステルやポリオキシエチレン硬化ひまし油などが挙げられる。
アミド基を有する化合物としてはプロピオン酸アミド、イソ酪酸アミド、ピバル酸アミド、コハク酸アミド、テレフタル酸アミド、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミドといった脂肪酸アミドなどが挙げられる。
低分子化合物(D)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<ポリオレフィン系樹脂(E)>
ポリオレフィン系樹脂(E)は、反応性官能基及び親水基を有さないポリオレフィンであり、繊維含有樹脂組成物におけるマトリックス樹脂である。
ポリオレフィン系樹脂(E)の具体例としては、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂(E)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン系樹脂(E)のメルトフローレート(MFR)は、0.001〜400g/10minであることが好ましく、0.005〜300g/10minであることがより好ましく、0.01〜200g/10minであるとさらに好適である。ポリオレフィン系樹脂(E)のMFRが0.001g/10minを下回る場合、流動性が非常に低く、各種の成形方法による賦形が困難となり、400g/10minを上回る場合には、セルロース繊維による機械物性向上効果が得られない。
ポリオレフィン系樹脂(E)のMFRは、JIS K7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgfの条件で測定した値である。なお、MFRは分子量の指標となり、MFRが大きい程、分子量が小さいことを意味する。
[繊維分散用樹脂(F)]
微細セルロース繊維(A)は繊維分散用樹脂(F)に予め混合されてコンポジットとされ、該コンポジットの形態で水(B)、化合物(D)、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)及びポリオレフィン系樹脂(E)と混練されてもよい。
繊維分散用樹脂(F)は、繊維含有樹脂組成物を製造する際に、ポリオレフィン系樹脂(E)中の微細セルロース繊維(A)の分散性を高める役割を果たす。
繊維分散用樹脂(F)としては特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物等が挙げられる。これら繊維分散用樹脂(F)は1種単独でもよいし、2種併用でもよい。
繊維分散用樹脂(F)は、ポリオレフィン系樹脂(E)と同一組成の樹脂であってもよいし、異なる組成の樹脂であってもよい。
繊維分散用樹脂(F)の含有割合は、微細セルロース繊維(A)100質量部に対して1〜500質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましく、1〜50質量部であることがさらに好ましい。繊維分散用樹脂(F)の含有割合が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができ、前記上限値以下であれば、微細セルロース繊維(A)の含有量が少なくなることによる機械的物性低下を防止できる。
前記コンポジットの調製方法は、微細セルロース繊維(A)と繊維分散用樹脂(F)とを乾式混合する方法でもよいし、微細セルロース繊維(A)のスラリーと繊維分散用樹脂(F)のエマルション又はスラリーとを混合(湿式混合)する方法でもよい。
<その他の成分>
繊維含有樹脂組成物を製造する際には、微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させるために、アルカリ性化合物(アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を添加してもよい。アルカリ性化合物は、水(B)に溶解させ、水溶液化して添加してもよい。
また、繊維含有樹脂組成物を製造する際には、その機能の主旨を逸脱しない範囲において、他の機能を付加するために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、発泡剤、核剤、難燃剤、充填材などの添加剤を添加してもよい。これら添加剤は、(A)〜(E)成分と同時添加してもよいし、(C)成分及び(E)成分の少なくとも一方に予め混合して添加してもよい。
また、繊維含有樹脂組成物の製造においては、各種の樹脂改質剤を添加してもよいし、添加しなくてもよい。樹脂改質剤としては、ブタジエン系ゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、石油樹脂などが挙げられ、これらは単独でも混合物でもよい。
また、繊維含有樹脂組成物の製造においては、多価アルコール(エチレングリコール、グリセリン等)、多価アミン類(エチレンジアミン等)、ヘテロ原子含有極性有機溶媒(ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等)、イオン液体を添加してもよい。これらを添加すると、微細セルロース繊維(A)同士の間に入り込んで微細セルロース繊維(A)同士の水素結合をより弱め、微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができる。
<各成分の配合割合>
微細セルロース繊維(A)の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂(E)100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましく、10〜40質量部であることがさらに好ましい。微細セルロース繊維(A)の配合割合が前記下限値以上であれば、繊維含有樹脂組成物の機械的物性をより向上させることができ、微細セルロース繊維(A)の配合割合が前記上限値以下であれば、微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができる。
微細セルロース繊維(A)の配合割合は、微細繊維セルロース繊維(A)と極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)と低分子化合物(D)とポリオレフィン系樹脂(E)と繊維分散用樹脂(F)との合計100質量部に対して、0.1〜60質量部であることが好ましく、0.5〜40質量部であることがより好ましく、1〜30質量部であることがさらに好ましい。微細セルロース繊維(A)の配合割合が前記下限値以上であれば、繊維含有樹脂組成物の機械的物性をより向上させることができ、微細セルロース繊維(A)の配合割合が前記上限値以下であれば、微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができる。
水(B)の配合割合は、微細セルロース繊維(A)100質量部に対して1〜400質量部であることが好ましく、10〜300質量部であることがより好ましく、30〜200質量部であることがさらに好ましい。水(B)の配合割合が前記下限値以上であれば、繊維含有樹脂組成物の熱による着色をより抑制でき、また、繊維含有樹脂組成物における微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができる。水(B)の配合割合が前記上限値以下であれば、多量の水による生産性の低下を防ぐことが出来る。
また、水(B)の配合割合は、微細繊維セルロース繊維(A)と極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)と低分子化合物(D)とポリオレフィン系樹脂(E)と繊維分散用樹脂(F)との合計100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましく、10〜30質量部であることがさらに好ましい。水(B)の配合割合が前記下限値以上であれば、繊維含有樹脂組成物の熱による着色をより抑制でき、また、微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができる。水(B)の配合割合が前記上限値以下であれば、多量の水による生産性の低下を防ぐことが出来る。
極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂(E)100質量部に対して1〜9900質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましく、1〜10質量部であることがさらに好ましい。極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の配合割合が前記下限値以上であれば、繊維含有樹脂組成物における微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができ、繊維含有樹脂組成物の機械的物性をより向上させることができる。極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の配合割合が前記上限値以下であれば、繊維含有樹脂組成物の機械的物性低下を抑制できる。
また、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の配合割合は、微細繊維セルロース繊維(A)と極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)と低分子化合物(D)とポリオレフィン系樹脂(E)と繊維分散用樹脂(F)との合計100質量部に対して、1〜90質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましく、1〜30質量部であることがさらに好ましい。極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の配合割合が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができ、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の配合割合が前記上限値以下であれば、繊維含有樹脂組成物の機械的物性低下を抑制できる。
低分子化合物(D)の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂(E)100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、2〜8質量部であることがさらに好ましい。低分子化合物(D)の配合割合が前記下限値以上であれば、繊維含有樹脂組成物における微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができ、繊維含有樹脂組成物の機械的物性をより向上させることができる。低分子化合物(D)の配合割合が前記上限値以下であれば、機械的物性低下やブリードアウトを抑制できる。
また、化合物(D)の配合割合は、微細繊維セルロース繊維(A)と極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)と低分子化合物(D)とポリオレフィン系樹脂(E)と繊維分散用樹脂(F)との合計100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。化合物(D)の配合割合が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維(A)の分散性をより向上させることができ、化合物(D)の配合割合が前記上限値以下であれば、機械的物性低下やブリードアウトを抑制できる。
<加熱混練脱揮工程>
加熱混練脱揮工程では、上記の成分(A)〜(E)及び必要に応じてその他の成分を加熱混練する。加熱によって、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)、化合物(D)及びポリオレフィン系樹脂(E)を溶融させる。微細セルロース繊維(A)が繊維分散用樹脂(F)に混合されている場合には、繊維分散用樹脂(F)も溶融させる。溶融した各成分と微細セルロース繊維(A)とを混練することによって、ポリオレフィン系樹脂(E)等の樹脂中に微細セルロース繊維(A)を分散させることができる。また、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の反応性官能基と微細セルロース繊維(A)のヒドロキシ基とが加熱混練により反応すると考えられる。また、加熱により揮発成分、例えば、水(B)、及び、微細セルロース繊維(A)、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C),化合物(D)及びポリオレフィン系樹脂(E)に不純物として含まれる水分及び有機溶剤を脱揮することができる。
各成分の加熱混練の前には、各成分を混合して混合物を調製してもよい。混合の際には、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサー等の混合装置を用いることができる。
加熱混練の際には、押出機(単軸押出機、二軸押出機)、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いることができ、なかでも、連続的に混練できる点で、押出機が好ましい。さらに、押出機においては、脱揮装置が接続されて脱揮機能を有しているものが好ましい。脱揮装置が接続されている場合、水(B)が微細セルロース繊維(A)同士の間に充分に入り込むようにするために、吐出口近傍に脱揮装置が接続されることが好ましい。
加熱混練脱揮工程により得た繊維含有樹脂組成物は、必要に応じて、ペレタイザを用いてペレット化してもよい。
加熱混練脱揮工程における加熱温度は、100℃以上であり、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。加熱温度が100℃未満では、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)やポリオレフィン系樹脂(E)といった樹脂成分の融点より低い温度で混練することになり、樹脂と微細セルロース繊維(A)との混和性が低くなる。
一方、加熱温度は300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度が前記上限値以下であれば、各成分の熱劣化を抑制できる。
<繊維含有樹脂組成物>
上記の製造方法により得られる繊維含有樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂(E)の中に微細セルロース繊維(A)が分散している。低分子化合物(D)は、主に、微細セルロース繊維(A)とポリオレフィン系樹脂(E)との界面に存在している。また、繊維含有樹脂組成物には、ポリオレフィンにセルロースがグラフトしたグラフト体を含んでいる。
繊維含有樹脂組成物のMFRは、0.01〜200g/10minであることが好ましく、0.05〜100g/10minであることがより好ましい。繊維含有樹脂組成物のMFRが前記下限値以上であれば、繊維含有樹脂組成物が充分な流動性を有し、前記上限値以下であれば、機械的物性の低下を抑制できる。
繊維含有樹脂組成物のMFRは、JIS K7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgfの条件で測定した値である。
繊維含有樹脂組成物の引張弾性率は、ポリオレフィン系樹脂(E)単体での引張弾性率に対して1.2倍以上であることが好ましく、1.4倍以上であることがより好ましい。繊維含有樹脂組成物の引張降伏強度は、ポリオレフィン系樹脂(E)単体での引張降伏強度に対して1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。繊維含有樹脂組成物の引張弾性率及び引張降伏強度が前記範囲にあれば、充分に高い機械的物性となる。
<作用効果>
上記繊維含有樹脂組成物の製造方法では、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)の反応性官能基が微細セルロース繊維(A)のヒドロキシ基と反応することによって、ポリオレフィンの主鎖にセルロースがグラフトしたグラフト体を形成できる。このグラフト体は、ポリオレフィン主鎖がポリオレフィン系樹脂(E)に容易に混ざり、セルロースグラフト鎖が微細セルロース繊維(A)との親和性を有するため、相溶化剤の役割を果たす。そのため、ポリオレフィン系樹脂(E)中に微細セルロース繊維(A)が分散しやすくなる。加えて、微細セルロース繊維(A)とポリオレフィン系樹脂(E)の界面を補強する役割も果たす。
また、上記繊維含有樹脂組成物の製造方法において配合した水(B)は、混練の際に、微細セルロース繊維(A)の間に入り込んで、微細セルロース繊維(A)間の水素結合を弱める。したがって、水(B)は、微細セルロース繊維(A)をほぐれ易くし、ポリオレフィン系樹脂(E)中に分散しやすい状態にする。
さらに、上記繊維含有樹脂組成物の製造方法において配合する化合物(D)は、疎水基と親水基を有するため、親水性が高い微細セルロース繊維(A)と疎水性が高いポリオレフィン系樹脂(E)との界面に存在して、相溶化剤として機能する。したがって、化合物(D)は、ポリオレフィン系樹脂(E)に対する微細セルロース繊維(A)の分散性を向上させる。
上記の極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)由来のグラフト体のみでは、微細セルロース繊維(A)の分散性を充分に向上させることは困難であり、化合物(D)のみでも、微細セルロース繊維(A)の分散性および微細セルロース繊維(A)とポリオレフィン系樹脂(E)の界面補強効果を充分に向上させることは困難である。しかし、本製造方法では、微細セルロース繊維(A)及びポリオレフィン系樹脂(E)に対して、水(B)、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)及び化合物(D)を配合することによって、微細セルロース繊維(A)の分散性および微細セルロース繊維(A)とポリオレフィン系樹脂(E)の界面補強効果を充分に高めることができる。微細セルロース繊維(A)の分散性が充分に向上したことで、機械的物性が向上すると共に、繊維含有樹脂組成物を成形した成形品の外観が良好になる。
また、繊維含有樹脂組成物の製造方法において配合した水(B)を脱揮することで、水(B)を蒸発させ、その際の水(B)の蒸発潜熱によって樹脂温度の過度の上昇を抑制できる。そのため、製造時の加熱によるポリオレフィン系樹脂(E)の熱劣化を防ぎ、着色を抑制できる。
表1,2に示す配合割合において、成分(A)〜(E)を混合した後、二軸押出機に投入し、表1,2に示す製造条件(スクリューの回転数、混練温度、押出機へのパス回数)で溶融混練し、ペレット化して、繊維含有樹脂組成物を得た。
・微細繊維セルロースコンポジット粉末(成分(A)と成分(F)):
針葉樹晒クラフトパルプ(王子エフテックス社製、水分50質量%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)に、濃度4質量%になるように水を加えた。次いで、ダブルディスクリファイナーを用いて変則CSF(平織り80メッシュ、パルプ採取量を0.3gとした以外はJIS P8121に準ずる)が250ml、平均繊維長が0.68mmになるまで叩解して、パルプスラリーを得た。
このパルプスラリーをさらにリファイナーで微細化処理して、上記変則CSFが325ml、平均繊維長が0.66mmの微細セルロース繊維を含む微細セルロース繊維スラリーを得た。
上記微細セルロース繊維スラリーとポリエチレンエマルション(成分(F):商品名MC−M1118、エチレン−メチルメタクリレート−無水マレイン酸共重合体、中央理化社製)とを混抄して、微細セルロース繊維コンポジットシート(セルロース80質量部、ポリエチレン20質量部)を得た。上記コンポジットシートを約1mm角に裁断して、成分(A)と成分(F)を含む微細セルロース繊維コンポジット粉末を得た。
・(成分(B)):水
・ 極性基含有ポリオレフィン(成分(C)):
(C−1)無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン
市販の低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン製ノバテックLL、グレード:US370GN)を100質量部、無水マレイン酸を0.6質量部、2,5−ジ(t−ブチルパ−オキシ)ヘキサンを0.015質量部加え、ヘンシェルミキサーで充分混合した。その後、モダンマシナリー株式会社製50mm単軸押出機を用い、スクリュー回転数50rpm、樹脂温度280℃の条件で溶融混練してグラフト変性を行い、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(C−1)を得た。得られた極性基含有ポリオレフィン樹脂の無水マレイン酸含有量は0.40質量%であった。
(C−2)エポキシ基含有ポリエチレン(住友化学製ボンドファーストE、エポキシ含有量:12質量%)
(C−3)無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン
無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(C−1)の変性原料を低密度ポリエチレン樹脂(US370GN)から高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン製ノバテックHD、グレード:HS560P)に変更した以外は同様の方法でグラフト変性し、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(C−3)を得た。得られた極性基含有ポリオレフィン樹脂の無水マレイン酸含有量は0.42質量%であった。
・分散剤(成分(D)):
(D−1)ステアリン酸アミド
(D−2)ソルビタンモノステアレート
・ポリオレフィン系樹脂(成分(E)):
(E−1)直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLL、グレード:US370GN)
(E−2)直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLL、グレード:US890G)
(E−3)高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックHD、グレード:HS560P)
Figure 0006215127
Figure 0006215127
(評価)
得られた繊維含有樹脂組成物において、微細セルロース繊維の分散性、色、MFR、引張降伏強度及び引張弾性率、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、引張衝撃強度を、下記の方法により測定した。測定結果を表1,2に示す。
[微細セルロース繊維の分散性]
繊維含有樹脂組成物のペレットを熱プレスしてフィルムにし、そのフィルムを目視観察することにより、下記の基準で微細セルロース繊維の分散性を評価した。
○:長さ0.1mm以上の分散不良部が視認されない。
△:長さ0.1〜0.5mmの分散不良部が視認される。
×:長さ0.5mm以上の分散不良部が視認される。
[色]
繊維含有樹脂組成物のペレットの色を目視により観察した。通常の繊維含有樹脂組成物の色は淡黄色であり、これより濃い色になった場合は着色したと判断する。
[MFR]
繊維含有樹脂組成物のメルトフローレイト(MFR)は、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2.16kgf荷重の条件下に測定した。
[引張降伏強度および引張弾性率]
試験材料をJISK7152−1:1999に準拠し、JISK7139:2009記載の多目的試験片タイプA1形状の引張試験片に成形した。この時の成形温度は190℃とした。得られた引張試験片を、JISK7161:1994に準拠して引張降伏強度および引張弾性率を測定した。引張降伏強度の試験速度は、50mm/minとし、引張弾性率の試験速度は1mm/minとした。
[曲げ弾性率]
試験材料をJISK7152−1:1999に準拠し、JISK7139:2009記載の多目的試験片タイプA1形状に成形した。このときの成形温度は190℃とした。得られた多目的試験片の中央部分からJISK7171:2008記載の推奨試験片の寸法となるように切出し、曲げ弾性率測定用試験片とした。曲げ弾性率の測定はJISK7171:2008に準拠し、試験速度2mm/minの条件で測定した。
[シャルピー衝撃強度]
JISK7111−1:2006に準拠し、23℃環境下におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定し、シャルピー衝撃強度とした。試験片は以下の方法で作製した。試験材料をJISK7152−1:1999に準拠し、JISK7139:2009記載の多目的試験片タイプA1形状に成形した。このときの成形温度は190℃とした。得られた多目的試験片の中央部分からシャルピーエッジワイズ衝撃(e)シングルノッチ試験片を機械加工することで作製した。なお、ノッチ形状はタイプAである。
[引張衝撃強度]
JISK7160:1996に準拠し、23℃環境下における引張衝撃強さを測定し、引張衝撃強度とした。試験片は以下の方法で作製した。試験材料をJISK7152−1:1999に準拠し、JISK7139:2009記載の多目的試験片タイプA1形状に成形した。このときの成形温度は190℃とした。得られた多目的試験片の中央部分からJISK7160:1996記載の1形試験片を機械加工することで作製した。
成分(A)〜(E)を配合し、溶融混練して得た各実施例の繊維含有樹脂組成物は、着色が抑制されており、微細セルロース繊維の分散性が高く、高い機械的強度及び衝撃強度を有していた。
成分(B)及び成分(D)を含まない比較例1は、茶褐色に着色し、微細セルロース繊維の分散性が低かった。
成分(C)を含まない比較例2,4,6は、衝撃強度が低かった。
成分(E)のみからなる比較例3,5,7は、引張特性及び曲げ特性が低かった。

Claims (7)

  1. セルロースを含む繊維原料を湿式粉砕により微細化して微細セルロース繊維(A)を得る工程と、
    前記微細セルロース繊維(A)と、水(B)と、セルロースのヒドロキシ基と反応可能な反応性官能基を有するポリオレフィンからなる極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)と、疎水基及び親水基の両方を各々1つ以上有する低分子化合物(D)と、セルロースのヒドロキシ基と反応可能な反応性官能基及び親水基を有さないポリオレフィン系樹脂(E)とを加熱混練すると共に脱揮する工程を有し、加熱混練の際の加熱温度を100℃以上とする、繊維含有樹脂組成物の製造方法。
  2. 低分子化合物(D)における親水基が、ヒドロキシ基、アミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
  3. 低分子化合物(D)における疎水基が炭素数1〜300の炭化水素基である、請求項1又は2に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
  4. 極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)における反応性官能基が、酸無水物基及びエポキシ基の少なくとも一方である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
  5. 微細セルロース繊維(A)が繊維分散用樹脂(F)に予め混合されてコンポジットとされ、該コンポジットにおける繊維分散用樹脂(F)の含有割合が、微細セルロース繊維(A)100質量部に対して1〜500質量部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
  6. ポリオレフィン系樹脂(E)の100質量部に対して、微細セルロース繊維(A)を1〜100質量部、水(B)を1〜100質量部、極性基含有ポリオレフィン系樹脂(C)を1〜9900質量部、低分子化合物(D)を1〜20質量部配合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
  7. 押出機を用いて加熱混練する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維含有樹脂組成物の製造方法。
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