JP2019035005A - セルロース繊維含有樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また一方で、樹脂に微細繊維状セルロースを複合化させて、力学強度等の物性を向上させる技術等が近年提案されている。例えば特許文献1には、セルロース繊維とオレフィン系樹脂の組成物の開示がある。
[2] 前記セルロース繊維の平均繊維幅が2〜15,000nmであり、且つ、平均繊維長が0.1〜2.0mmである、[1]に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物。
[3] 前記セルロース繊維の少なくとも一部が、水酸基の少なくとも一部が化学修飾されたセルロース繊維である、[1]又は[2]に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物。
[4] 前記ポリエチレン100質量部(固形分)に対して、前記セルロース繊維が1〜100質量部(固形分)含まれる、[1]〜[3]の何れか一項に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物。
[5] 前記セルロース繊維含有樹脂組成物の総質量(固形分)に対する、前記セルロース繊維の含有量が0.1〜30質量%(固形分)である、[1]〜[4]の何れか一項に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物。
[6] 繊維分散用樹脂中にセルロース繊維が分散してなる成形材料と、JIS K7210に準拠して190℃、荷重10kgfの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.5〜25g/10分であるポリエチレンとを溶融混練する、セルロース繊維含有樹脂組成物の製造方法。
[7] 水酸基の少なくとも一部が化学修飾されているセルロース繊維と、JIS K7210に準拠して190℃、荷重10kgfの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.5〜25g/10分であるポリエチレンとを溶融混練する、セルロース繊維含有樹脂組成物の製造方法。
[8] [1]〜[5]の何れか一項に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物を使用する、成形体の製造方法。
[9] [1]〜[5]の何れか一項に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物を射出成形により成形する、成形体の製造方法。
本発明のセルロース繊維含有樹脂組成物の製造方法によれば、樹脂中のセルロース繊維の分散性を極めて高くすることができる。
本発明の成形体の製造方法においては射出成形を適用できるため、成形体の製造コストを低減できる。
本発明の第一態様のセルロース繊維含有樹脂組成物は、JIS K7210に準拠して190℃、荷重10kgfの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.5〜25g/10分であるポリエチレンと、該ポリエチレン中に分散されたセルロース繊維と、を含む組成物である。当該組成物には、任意成分として前記ポリエチレン以外のポリマー成分や添加剤が含まれていてもよい。
本発明のセルロース繊維含有樹脂組成物は、上記の条件で測定したMFRが0.5〜25g/10分であるポリエチレンを含む。
前記ポリエチレンは、固形分としてセルロース繊維含有樹脂組成物中の全ポリマー成分100質量部のうち、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上を構成する主材樹脂であることが好ましい。前記ポリエチレンが主材樹脂であることにより、本発明にかかる成形体の摺動性と機械的物性をより一層向上させることができる。
前記MFRは、1.0〜20g/10分であることが好ましく、2.0〜20g/10分であることがより好ましく、5.0〜15g/10分であることがさらに好ましい。
上記範囲であると、本発明のセルロース繊維含有樹脂組成物を比較的容易に射出成形することができる。
なお、後述の繊維分散用樹脂由来のポリエチレンを含む場合、当該ポリエチレン単体のMFRは上記範囲よりも大きいことが好ましい。
セルロース繊維の種類は特に限定されず、例えば、木材から製造されたセルロース繊維、草本類から製造されたセルロース繊維等が挙げられる。
セルロース繊維を得る木材系の材料としては、例えば、針葉樹、広葉樹をクラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法などで蒸解した化学パルプ、レファイナー、グラインダーなどの機械力によってパルプ化した機械パルプ、薬品による前処理の後、機械力によってパルプ化したセミケミカルパルプ、或いは古紙パルプなどが挙げられる。
セルロース繊維を得る非木材系の材料としては、例えば、綿、マニラ麻、亜麻、藁、竹、パガス、ケナフなどから上記の方法で得られたパルプが挙げられる。
微細セルロース繊維の平均繊維幅は、2〜12,000nmが好ましく、20〜10,000nmがより好ましく、50〜8,000nmがさらに好ましい。
平均繊維幅が2nm以上であれば、セルロース分子として水に溶解することを抑制できるため、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)を容易に発現できる。平均繊維幅が12,000nm以下とすると、通常の製紙用のパルプに含まれる繊維の繊維幅よりも顕著に幅が狭くなり、通常の製紙用パルプとは異なる特性を発揮する。
微細セルロース繊維の平均繊維幅が上記範囲内にある場合、全ての微細セルロース繊維が上記繊維幅の範囲内にある必要はなく、一部の微細セルロース繊維は繊維幅が上限を超えてもよいし、下限未満であってもよい。すなわち、太い繊維や細い繊維が混在してもよい。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、前記直線Xに対し、20本以上のセルロース繊維が交差する。
(2)同じ画像内で前記直線と垂直に交差する直線Yを引き、前記直線Yに対し、20本以上のセルロース繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯するセルロース繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯するセルロース繊維の幅を読み取る。このようにして少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。本発明における繊維幅は、このように読み取った繊維幅の平均値である。
平均繊維長の測定は、長さ加重平均繊維長の測定により求められる。例えば、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS−200形)を用いて測定することができる。なお、平均繊維長の測定は上記の装置に限られず、同等品を使用して測定することもできる。
セルロース繊維の化学修飾の種類は特に限定されず、化学修飾されることにより前記ポリエチレンに対する相溶性が高くなる化学修飾であることが好ましい。例えば、セルロース繊維が有する水酸基の少なくとも一部が、エステル化又はエーテル化されていることが好ましい。これらの化学修飾が施されていると、本発明のセルロース繊維含有樹脂組成物におけるセルロース繊維の分散性が一層向上する場合がある。
セルロース繊維の水酸基をエステル化及びエーテル化する方法は公知であり、例えば、特開2012−214563号公報に記載の方法が挙げられる。
上記範囲の下限値以上であるとポリエチレンに対するセルロース繊維の分散性がより一層高められ、上記範囲の上限値以下であるとセルロース繊維同士が適度に密着して、製造時の取り扱いがより容易になるとともに、セルロース繊維の集合体としてのより優れた強度が得られる。
セルロース誘導体の置換度は、Cellulose Communication 6,73−79(1999)に記載の方法を利用して、1H−NMRにより決定することができる。
本発明のセルロース繊維含有樹脂組成物には、前記ポリエチレン以外のポリマー成分が含まれていてもよい。
前記ポリエチレン以外のポリマー成分として、例えば、セルロース繊維含有樹脂組成物を製造する際に主材樹脂中のセルロース繊維の分散性を高める役割を果たす、繊維分散用樹脂由来のポリマー成分を含むことができる。
繊維分散用樹脂は、主材樹脂であるポリエチレンに対して相溶性を有する樹脂であることが好ましく、例えば、オレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等)、ポリウレタン、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これら繊維分散用樹脂は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
より詳細には、繊維分散用樹脂としては、例えば、国際公開第2013/137449号の段落0018〜0024に記載の繊維分散用樹脂が挙げられる。
セルロース繊維含有樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、填料、顔料、染料、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、公知の製紙用薬品などの添加剤を含んでもよい。
セルロース繊維含有樹脂組成物におけるセルロース繊維の含有量は、固形分として前記ポリエチレン100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、5〜70質量部であることがより好ましく、10〜50質量部であることがさらに好ましい。セルロース繊維の含有量が前記下限値以上であれば、成形体の強度を充分に向上させることができる。前記上限値以下であれば、セルロース繊維含有樹脂組成物を容易に製造できるとともに、成形体の靭性を充分に維持することができる。
本発明の第二態様は、第一態様のセルロース繊維含有樹脂組成物の製造方法である。
[第一実施形態]
第一実施形態の製造方法は、繊維分散用樹脂中にセルロース繊維が分散してなる成形材料と、JIS K7210に準拠して190℃、荷重10kgfの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.5〜25g/10分であるポリエチレンとを溶融混練する溶融混練工程を有する。
繊維スラリー調製工程は、セルロース繊維を含有する繊維スラリーを調製する工程である。ここで、繊維スラリーとは、セルロース繊維が分散媒中に分散した液体である。分散媒としては、水や有機溶媒などを用いることができ、水であることが好ましい。
繊維スラリーの固形分濃度は0.1〜10.0質量%であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがより好ましい。繊維スラリーの固形分濃度が前記下限値以上であれば、後述する成形材料作製工程においてセルロース繊維を充分に含む成形材料を容易に製造できる。前記上限値以下であれば、繊維スラリーが凝集塊を形成することを防止できる。
繊維スラリーには、必要に応じて、サイズ剤や紙力増強剤などの公知の製紙用薬品が含まれてもよい。
また、前記化学修飾されたセルロース繊維を得るために、セルロース繊維に化学修飾を行ってもよい。
樹脂エマルション調製工程は、繊維分散用樹脂を含有する樹脂エマルションを調製する工程である。ここで、樹脂エマルションとは、繊維分散用樹脂粒子が分散媒中に分散して乳化した液体である。樹脂エマルションは、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の何れであってもよい。なお、「樹脂エマルション」は「樹脂エマルジョン」と呼ばれることもある。
前記平均粒子径は、体積平均粒子径を元にした粒子径分布において、全粒子量に対する積算粒子量が50%となる粒子径(いわゆるメディアン径)を意味する。前記平均粒子径の測定は、レーザ回折式粒度分布測定装置、たとえば(株)島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2000シリーズを使用して行うことができる。
樹脂エマルションのpHは、JIS Z8802「pH測定方法」に準拠して測定することができる。
混合工程は、上記繊維スラリーと上記樹脂エマルションとを混合して混合分散液を調製する工程である。この工程により、セルロース繊維の一部または全部を繊維分散用樹脂で被覆できると推測される。
混合方法は特に限定されず、例えば、容器に繊維スラリーおよび樹脂エマルションを入れ、ホモミキサー等の撹拌機を用いて撹拌する方法、繊維スラリーおよび樹脂エマルションをラインミキサーに通す方法等が挙げられる。
成形材料作製工程は、混合分散液から、繊維分散用樹脂中にセルロース繊維が均一に分散した成形材料を作製する工程である。
成形材料の形態は特に限定されず、例えば、コンポジットシート、塊状物、ペレット状物等の形態が好ましく、なかでもコンポジットシートであることがより好ましい。
連続抄紙装置としては、例えば、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパートを具備する装置が挙げられる。
粉砕及び細片化の方法は特に限定されず、例えば、アトマイザー、カッターミル、ビーズミル、ボールミル、ジェットミルなどの公知の粉砕機やシュレッダーを使用することができる。コンポジットシートを粉砕して得る成形材料の粉砕物の面積は0.1〜2500mm2であることが好ましく、0.2〜1000mm2であることがより好ましい。
粉砕物の面積が上記範囲であると、後段の溶融混練工程における前記ポリエチレンと成形材料とをより容易に均一に混合することができる。
溶融混練工程は、成形材料と前記ポリエチレンとを混合する工程である。例えば細片化した成形材料と前記ポリエチレンとを各々計量して所定の割合で混合し、溶融混練装置を用いて溶融混練することが好ましい。溶融混練後に得られたセルロース繊維含有樹脂組成物は、ダイから棒状に吐出し、冷却し、裁断して、ペレット状に成形することができる。
成形材料と前記ポリエチレンとの混合に際しては、例えば、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサーなどを使用することができる。また、成形材料と前記ポリエチレンを混合する際に各種添加剤を同時に混合してもよい。
溶融混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられる。これらの中でも、セルロース繊維の分散性がより高くなることから、二軸押出機が好ましい。成形材料または前記ポリエチレンが水分等の揮発分を含む場合には、溶融混練装置に脱揮装置を取り付けることが好ましい。
溶融混練時の温度は、前記ポリエチレンの溶融温度に応じて適宜設定されるが、例えば、90〜300℃の範囲が挙げられる。
セルロース繊維含有樹脂組成物の製造方法の第二実施形態は、水酸基の少なくとも一部が化学修飾されているセルロース繊維と、JIS K7210に準拠して190℃、荷重10kgfの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.5〜25g/10分であるポリエチレンとを溶融混練する溶融混練工程を有する。
セルロース繊維が有する全水酸基のうち上記の化学修飾が施される割合は特に限定されず、前述した好適な置換度(DS)であることが好ましい。
セルロース繊維含有樹脂組成物を用いた成形体を製造する方法は特に制限されず、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形などを適用することができる。
セルロース繊維含有樹脂組成物を用いた成形体の引張破断強度は5.0MPa以上が好ましく、10MPa以上がより好ましく、20MPa以上がさらに好ましい。引張破断強度が前記下限値以上であれば、充分に強度が高いといえる。一方、引張破断強度の上限値は特に限定されず、例えば、一例として、200MPa程度が挙げられるが、この値を超える強度を有していても構わない。
セルロース繊維含有樹脂組成物を用いた成形体の引張破断伸度は10%未満が好ましく、8%以下がより好まし得、7%以下がさらに好ましい。一方、引張破断伸度の下限値は特に限定されず、例えば、一例として、1%程度が挙げられる。
上記の引張破断強度及び引張破断伸度は、後述する方法によって測定された値である。
セルロース繊維含有樹脂組成物を用いた成形体の曲げ強度は40MPa以上が好ましく、45MPa以上がより好ましい。一方、曲げ強度の上限値は特に限定されず、例えば、一例として200MPa程度が挙げられる。
セルロース繊維含有樹脂組成物を用いた成形体の曲げ弾性率は2000MPa以上が好ましく、2500MPa以上がより好ましい。一方、曲げ弾性率の上限値は特に限定されず、例えば、一例として10000MPa程度が挙げられる。
上記の曲げ強度及び曲げ弾性率は、後述する方法によって測定された値である。
セルロース繊維含有樹脂組成物を用いた成形体の熱変形温度(0.45MPa)は90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。一方、上記熱変形温度の上限値は特に限定されず、例えば、一例として300℃程度が挙げられる。
セルロース繊維含有樹脂組成物を用いた成形体の熱変形温度(1.80MPa)は60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。一方、上記熱変形温度の上限値は特に限定されず、例えば、一例として200℃程度が挙げられる。
上記の熱変形温度は、後述する方法によって測定された値である。
・繊維スラリーの調製
針葉樹晒クラフトパルプ(王子製紙社製、水分55質量%、JIS P8121に従って測定されるカナダ標準濾水度(CSF)600mlを、濃度4.0質量%になるように水を加えて分散した後、ダブルディスクリファイナーを用いて連続叩解を行い、変則CSF(平織80メッシュ、パルプ採取量を0.3gとした以外はJIS P8121に準ずる)が200mlの繊維スラリーを得た。尚、この微細セルロース繊維の平均繊維長は0.44mm、平均繊維幅は300nmであった。
繊維分散用樹脂として、日本ポリエチレン株式会社製エチレン−メチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(商品名:レクスパールET、グレード:ET330H)を使用した。この共重合体を構成するエチレン単位は50モル%未満であり、前述したポリエチレンには該当しない。
上記繊維分散用樹脂を同方向回転噛合型二軸スクリュー押出機のホッパーより100部/時間の割合で連続供給した。同押出機のベント部に設けた供給口より、固形分35%のカチオン性高分子界面活性剤の水溶液を28部/時間(固形分としては8.5部/時間)の割合で、ギヤーポンプ(吐出圧力3Kg/cm2G)で加圧して連続的に供給しながら、加熱温度120℃で連続的に押出すことによって、樹脂エマルションを得た。
上記カチオン性高分子界面活性剤及び樹脂エマルションの調製は、特開2007−326913号公報に記載された方法に準拠して実施した。
上記で調製した繊維スラリー80部(固形分換算)と、樹脂エマルション20部(固形分換算)とを混合して、混合分散液を得た。
上記混合分散液を、日本フィルコン社製の二重織りのプラスチックワイヤー上で吸引脱水することにより抄紙して、微細セルロース繊維と樹脂エマルションとで構成された含水ウェブを得た。その含水ウェブを、シリンダーロールを用いて乾燥して、坪量35g/m2のコンポジットシートを得た。
上記コンポジットシートを鋏で裁断し、約2mm角に細分化した。その裁断物6kg(裁断物は水分を50%含むため、固形分として10wt%)と、超高分子量ポリエチレン(三井化学社製、LUBMER(登録商標)、銘柄:L3000)27kgとをブレンドし、二軸混練機(日本プラコン社製 型式MAX46)に投入し、1分間溶融混練し、水冷したストランドを裁断し、ペレットを得た。その際のバレル温度は180℃、スクリュー回転数は200rpmとした。混練中の樹脂温度は260℃であった。
実施例1で製造したペレットを使用して、射出成形が可能であることを確認した。射出成形機に投入したペレットを200℃で溶融し、射出圧力50MPa(一次圧力)及び45MPa(二次圧力)で、40℃の金型に4秒で射出し、二次圧力を10秒間保持した後、冷却して、金型から成形体を取り出した。
実施例1で使用した裁断物12kg(裁断物は水分を50%含むため、固形分として20wt%)と、超高分子量ポリエチレン(三井化学社製、LUBMER(登録商標)、銘柄:L3000)24kgとをブレンドした以外は、実施例1と同様に行い、ペレット状のセルロース繊維含有樹脂組成物、及び成形体を得た。
実施例1で使用した超高分子量ポリエチレン(三井化学社製、LUBMER(登録商標)、銘柄:L3000)を用いて成形体を得た。
[引張試験]
ISO527−1、2に準拠し、試験片形状をJIS K7162−1A及び引張速度50mm/minとし、引張破断強度、引張破断伸度を求めた。その測定結果を表1に示す。
[曲げ試験]
ISO178に準拠し、試験片形状を80mm(長さ)、10mm(幅)、4mm(厚み)で、スパン間距離64mm、試験速度2mm/minとし、曲げ強度、曲げ弾性率を求めた。その測定結果を表1に示す。
[熱変形試験]
ISO75−1、2に準拠し、試験片形状を80mm(長さ)、10mm(幅)、4mm(厚み)で、荷重0.45MPa、および1.80MPa、昇温速度120℃/hで標準たわみ量0.36mmの熱変形温度を求めた。その測定結果を表1に示す。
[滑り性評価、耐摩耗性評価]
JIS K7218「プラスチックの滑り摩耗試験A法」に準拠して、松原式摩擦摩耗試験機を使用して動摩擦係数および比摩耗量を測定し、滑り性評価および耐摩耗性を評価した。試験条件は、相手材:S45C、速度:50cm/秒、距離:3km、荷重:15kg、測定環境温度:23℃とした。その測定結果を表1に示す。
本発明のセルロース繊維含有樹脂組成物を使用した実施例の成形体は、摺動性とともに機械的物性が優れていた。実施例の成形体の摺動面に露出したセルロース繊維は主材樹脂であるポリエチレンよりも柔軟であり、脱落したセルロース繊維が摺動面を擦っても当該摺動面を削ることは殆ど無かった。
一方、比較例1の成形体は、実施例と同等の優れた摺動性を示していたが、機械的物性が劣っていた。
以上の結果から、実施例で使用したセルロース繊維含有樹脂組成物は、摺動性を維持しながら、従来の超高分子量ポリエチレンを使用した成形品よりも機械的物性に優れた成形品を与えることが明らかである。
Claims (9)
- JIS K7210に準拠して190℃、荷重10kgfの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.5〜25g/10分であるポリエチレンと、該ポリエチレン中に分散されたセルロース繊維と、を含むセルロース繊維含有樹脂組成物。
- 前記セルロース繊維の平均繊維幅が2〜15,000nmであり、且つ、平均繊維長が0.1〜2.0mmである、請求項1に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物。
- 前記セルロース繊維の少なくとも一部が、水酸基の少なくとも一部が化学修飾されたセルロース繊維である、請求項1又は2に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物。
- 前記ポリエチレン100質量部(固形分)に対して、前記セルロース繊維が1〜100質量部(固形分)含まれる、請求項1〜3の何れか一項に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物。
- 前記セルロース繊維含有樹脂組成物の総質量(固形分)に対する、前記セルロース繊維の含有量(固形分)が0.1〜20質量%である請求項1〜4の何れか一項に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物。
- 繊維分散用樹脂中にセルロース繊維が分散してなる成形材料と、JIS K7210に準拠して190℃、荷重10kgfの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.5〜25g/10分であるポリエチレンとを溶融混練する、セルロース繊維含有樹脂組成物の製造方法。
- 水酸基の少なくとも一部が化学修飾されているセルロース繊維と、JIS K7210に準拠して190℃、荷重10kgfの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.5〜25g/10分であるポリエチレンとを溶融混練する、セルロース繊維含有樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜5の何れか一項に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物を使用する、成形体の製造方法。
- 請求項1〜5の何れか一項に記載のセルロース繊維含有樹脂組成物を射出成形により成形する、成形体の製造方法。
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