以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る除菌水吐出装置が、キッチンのシンクに取り付けられた状態を示す図である。除菌水吐出装置WDは、二つのスパウト(メインスパウト100、除菌用スパウト200)を備えており、これらが、シンクSKの上面のうち使用者から見て奥側の部分にそれぞれ立設している。使用者から見て右側に立設しているメインスパウト100は、一般的なスパウトと同様に、水道水(水道管から供給される水)を吐出するものである。メインスパウト100の側面には操作レバー101が配置されている。使用者が操作レバー101を回転させると、その回転角度に応じた流量の水道水が、メインスパウト100の先端からシンクSKに向けて吐出される。
使用者から見て左側に立設している除菌用スパウト200は、除菌水を吐出するものである。除菌水とは、比較的高濃度の次亜塩素酸を含むことによって除菌性能が付与された水のことである。除菌用スパウト200から吐出された除菌水を包丁やまな板等の表面にかけると、当該表面が除菌され、菌の増殖が抑制される。除菌用スパウト200からの除菌水の吐出は、操作部300に対する使用者の操作に基づいて行われる。
操作部300は、シンクSKの上面のうち、メインスパウト100と除菌用スパウト200との間となる位置に配置されている。操作部300は、使用者が操作する操作部としての機能を有するほか、除菌水吐出装置WDの動作状態を使用者に報知する表示部としての機能をも有している。操作部300の具体的な構成や機能については、後に詳しく説明する。
除菌水吐出装置WDは、シンクSKの上面側に配置されたメインスパウト100、除菌用スパウト200、及び操作部300のほかに、除菌用スパウト200から吐出する除菌水を生成するための機構や制御部等を更に備えており、これらがシンクSKの内部に収納されている。
図2は、上記のようにシンクSKの内部に収納されている部分も含めて、除菌水吐出装置WDの全体の構成を模式的に示す図である。図2に示したように、除菌水吐出装置WDは、外部(水道管や給湯機)から供給された水が通る配管として、給水配管110と、給湯配管120と、除菌水用配管130とを備えている。尚、図2においては、一部の配管や切り換え弁の図示を省略している。省略した配管等の構成や機能については、他の図を参照しながら後に説明することとする。
給水配管110は、不図示の水道管とメインスパウト100とを繋ぐ配管である。また、給湯配管120は、不図示の給湯機とメインスパウト100とを繋ぐ配管である。給水配管110を通る水(冷水)と、給湯配管120を通る水(温水)とは、混合水栓であるメインスパウト100にそれぞれ供給され、設定温度となるように混合された後にメインスパウト100から吐出される。既に述べたように、メインスパウト100からの水の吐出は、使用者による操作レバー101の操作に基づいて行われる。
除菌水用配管130は、給水配管110の途中に配置された第一流路切り換え弁410と、除菌用スパウト200とを繋ぐ配管である。第一流路切り換え弁410によって、水道管からの水が給水配管110を通ってメインスパウト100に供給される状態と、水道管からの水が除菌水用配管130を通って除菌用スパウト200に供給される状態とが切り替えられる構成となっている。
除菌水用配管130の途中には、上流側から順に、濃縮槽500と、電解槽600とが配置されている。濃縮槽500及び電解槽600は、いずれも中空の容器であって、除菌水用配管130と共に、除菌用スパウト200に繋がる流路の一部を構成するように配置されている。
濃縮槽500の内部には一対の電極510、511(図2では不図示)が配置されており、これらの間に電圧を印加することが可能となっている。電極510が陽極となるように電圧が印加されると、濃縮槽500の内部の水に含まれる塩化物イオン(Cl-)が電極510に吸着し、収集される。このとき、除菌水用配管130の内部を水が流れていれば、新たな塩化物イオンが濃縮槽500の内部に供給されて電極510に吸着するため、塩化物イオンの吸着量は次第に増加して行く。換言すれば、濃縮槽500の内部(電極510の表面及び近傍)には塩化物イオンが蓄積されて行き、その濃度が高くなって行く。このように、電極510が陽極となるように電圧を印加した状態とし、電極510の表面に塩化物イオンを吸着させて行く処理を、以下では吸着処理と称する。電極510は、本発明のイオン吸着手段に該当するものである。
一方、上記のように塩化物イオンの収集を行った後、電極510が陰極となるように電圧が印加されると、吸着していた塩化物イオンが電極510から次第に離脱して行く。このとき、除菌水用配管130の内部を水が流れていれば、離脱した塩化物イオンは下流側に移動することとなる。すなわち、高濃度の塩化物イオンを含む水が、下流側の電解槽600に供給されることとなる。このように、電極510が陰極となるように電圧を印加した状態とし、電極510の表面から塩化物イオンを離脱させて行く処理を、以下では離脱処理と称する。
電解槽600の内部には、一対の電極(不図示)が配置されており、これらの間に電圧を印加することで、電解槽600の水を電気分解することが可能となっている。水を電気分解すると、陽極側の電極では下記の式(1)の反応が起き、陰極側の電極では式(2)の反応が起きる。式(1)及び式(2)に示したように、陽極からは酸素が発生し、陰極からは水素が発生する。
陽極:2H2O→4H++O2+4e- (1)
陰極:4H2O+4e-→2H2+4OH- (2)
ここで、電解槽600の内部に配置された電極には、触媒として、白金・イリジウム(Pt・IrO2)が塗布されている。このため、陽極側の電極では下記の式(3)の反応が起き、水に含まれる塩化物イオン(Cl-)から塩素が発生する。
陽極:2Cl-→Cl2+2e- (3)
塩素が発生すると、電解槽600の内部では更に下記の式(4)、式(5)の反応が起きて、次亜塩素酸(HClO)及び次亜塩素酸イオン(ClO-)が発生する。これらは殺菌力を有するものである。
Cl2+H2O→HClO+H2+Cl-(4)
HClO→ClO-+H+ (5)
以上のように、電解槽600の内部では、塩化物イオンを含む水を電気分解することによって、殺菌力を有する水、すなわち除菌水が生成される。電解槽600は、本発明の除菌水生成手段に該当するものである。以上の説明で明らかなように、電解槽600に供給された水の塩化物イオンの濃度が高いほど、生成された除菌水に含まれる次亜塩素酸の濃度(除菌水の除菌性能といってもよい)も高くなる。濃縮槽500から高濃度の塩化物イオンを含む水が電解槽600に供給されると、これをもとに高濃度の除菌水が電解槽600において生成されて、下流側の除菌用スパウト200に供給され吐出される。
制御部700は、第一流路切り換え弁410、濃縮槽500、及び電解槽600等、除菌水吐出装置WDを構成する各種機器の動作を制御するものである。制御部700には、操作部300に対して行われた使用者の操作に基づく信号(操作信号)が入力される。制御部700は、当該操作信号に基づいて、第一流路切り換え弁410等の動作を制御する。
また、制御部700には、濃縮槽500内の電極間を流れる電流(電極510、511間に電圧を印加する電源から出力される電流である。以下、「濃縮槽電流」とも称する)の値が入力される。濃縮槽電流の値は、電極510に対する塩化物イオンの吸着速度(又は離脱速度)に対応するものである。すなわち、電極510に対し単位時間あたりに吸着する塩化物イオンの量が大きいほど、濃縮槽電流の値は正側に大きくなる。また、電極510から単位時間あたりに離脱する塩化物イオンの量が大きいほど、濃縮槽電流の値は負側に大きくなる。後に説明するように、制御部700は、入力された濃縮槽電流に基づいて濃縮槽500等の制御を行う。また、濃縮槽電流に基づいて操作部300の表示を切り替える。
操作部300の具体的な構成について、図3を参照しながら説明する。既に述べたように、操作部300はシンクSKの上面に配置されており、使用者が操作する操作部としての機能を有するほか、除菌水吐出装置WDの動作状態を使用者に報知する表示部としての機能をも有するものである。図3に示したように、操作部300は、開始操作部310と、一時停止操作部320と、水量設定操作部330とを有している。また、吐出状態表示部340、予洗い表示部350、除菌水残量表示部360、設定水量表示部370、及び報知音発生部380を更に有している。
開始操作部310は、除菌用スパウト200から除菌水が吐出されるように、使用者が操作するボタンである。後に詳しく説明するが、除菌水吐出装置WDでは、開始操作部310が押されてもその時点では除菌水を吐出せず、まず(次亜塩素酸を含まない)通常の水を除菌用スパウト200から吐出する。その後、使用者によって開始操作部310が再度押されると、次亜塩素酸を含んだ除菌水の吐出を開始する。換言すれば、除菌用スパウト200から吐出される水が通常の水から除菌水へと切り替わる。尚、以下では、上記のようにまず通常の水を吐出する工程を「汚れ落とし工程」と称し、汚れ落とし工程の後に除菌水を吐出する工程を「除菌工程」と称する。
除菌水吐出装置WDでは、除菌水の吐出に先立って通常の水を吐出するため、除菌対象物に付着している汚れを通常の水によってまず洗い落とした後で、除菌対象物に除菌水をかけるような使い方が可能となっている。除菌対象物に付着した汚れによって除菌水の除菌性能が低下してしまうことがなく、除菌対象物における菌の増殖を確実に抑制することができる。
開始操作部310が2度押されて除菌水の吐出を開始した後は、特に使用者による操作を待つことなく、除菌水の吐出を自動的に停止する。自動停止するまでの間に吐出する除菌水の総量は、概ね、使用者が水量設定操作部330を操作することによって予め設定しておくことが可能となっている。水量設定操作部330は、使用者が操作するボタンである。
その設定は、設定水量表示部370に表示されている。設定水量表示部370は「大」、「中」、「小」の3つのLEDからなり、そのうちの一つが点灯した状態となっている。例えば、「大」のLEDが点灯した状態においては、自動停止するまでの間に吐出する除菌水の総量が最も多くなるように設定されている。この状態で、水量設定操作部330が一度押されると、設定水量表示部370においては「中」のLEDが点灯した状態となり、自動停止するまでの間に吐出する除菌水の総量が(大のときよりも)少なくなるように設定される。水量設定操作部330が更にもう一度押されると、設定水量表示部370においては「小」のLEDが点灯した状態となり、自動停止するまでの間に吐出する除菌水の総量が最も少なくなるように設定される。
上記のように、除菌水の吐出は自動的に停止するのであるが、使用者が一時停止操作部320を押すことにより、その時点で除菌水の吐出を一時的に停止させることが可能となっている。除菌水の吐出の再開は、使用者が一時停止操作部320を再度押すことによって行われる。
吐出状態表示部340は、除菌用スパウト200から吐出される水の状態(種類等)を、使用者に報知するためのLEDである。除菌用スパウト200から吐出されている水が(除菌水ではなく)通常の水であるときには、吐出状態表示部340は消灯している。除菌用スパウト200から吐出されている水が除菌水であるときには、吐出状態表示部340は点灯している。
予洗い表示部350は3つのLEDからなり、これらの点灯状態によって、除菌水を吐出可能となるタイミングの目安を表示するものである。また、除菌水残量表示部360は3つのLEDからなり、これらの点灯状態によって、除菌水の吐出を自動停止するタイミング(吐出可能な除菌水の残量がなくなるタイミングといってもよい)の目安を表示するものである。報知音発生部380は所謂ブザーであって、発する電子音の回数によって除菌水吐出装置WDの動作状態を報知するものである。吐出状態表示部340、予洗い表示部350、除菌水残量表示部360、及び報知音発生部380による具体的な報知動作(表示の変化や電子音の発生)については、除菌水吐出装置WD全体の具体的な動作と合わせて次に説明する。
図4、5、及び6を参照しながら、除菌水吐出装置WDの具体的な動作について説明する。図4は、除菌水吐出装置WDの動作を示すフローチャートである。図5は、除菌水吐出装置WDにおける水の流れを示す図であって、除菌水吐出装置WDの動作に伴って内部の流路状態が切り替わる様子を示している。
図6は、除菌水吐出装置WDが動作する際における、塩化物イオンの吸着量の変化等をグラフとして示す図である。図6(A)は、電極510に吸着した塩化物イオンの量の時間変化を示している。図6(B)は、電極510、511間に印加された電圧の大きさの時間変化を示している。同図においては、電極510側が陽極となるような電圧の方向を正として示している。図6(C)は、濃縮槽電流の大きさの時間変化を示している。同図においては、電極510側から電極511側に流れるような濃縮槽電流の方向を正として示している。
図4に示した一連の処理は、除菌水吐出装置WDが待機状態(水を吐出していない状態)であるときを含めて、常に、所定時間が経過するごとに制御部700によって繰り返し実行されるものである。
ステップS01では、除菌水を吐出させるための操作が行われたかどうかが判断される。つまり、操作部300の開始操作部310が押されたかどうかが判断される。開始操作部310が押されていなければ、ステップS01の処理が繰り返される。このとき、第一流路切り換え弁410は閉弁した状態となっており、水道管からの水は、メインスパウト100側にも濃縮槽500側にも供給されない。
開始操作部310が押されると、ステップS02に移行し、汚れ落とし工程が開始される。制御部700は、開始操作部310が押されたことによる信号(操作信号)を操作部300から受信すると、水道管からの水が濃縮槽500側に供給されるように第一流路切り換え弁410の状態を切り換える。図5(A)はこのときの状態を示している。同図において矢印で示したように、水道管からの水は、除菌水用配管130の内部を第一流路切り換え弁410、濃縮槽500、電解槽600の順に通った後、除菌用スパウト200からシンクSKへ吐出される。
また、制御部700は、第一流路切り換え弁410の状態を上記のように切り替えるとほぼ同時に、吸着処理を開始する(ステップS03)。すなわち、濃縮槽500に配置された電極510、511に対し、電極510が陽極となるように電圧V1を印加する。その結果、電極510の表面には、除菌水用配管130を通る水に含まれる塩化物イオンが吸着し、図6(A)に示したように(時刻t10までの期間)、その吸着量が時間の経過とともに増加して行く。濃縮槽500の内部(電極510の表面及び近傍)には塩化物イオンが蓄積されて行き、その濃度が高くなって行く。
このとき、電極510における塩化物イオンの吸着量は無限に増加するのではなく、次第にその増加速度は緩やかとなって行く。図6(A)に示したように、吸着量は最終的には一定値(上限値CS2)となりそれ以上増加しなくなる。また、図6(C)に示したように、濃縮槽電流は次第に減少して行き、最終的には0となる(時刻t20)。
尚、汚れ落とし工程においては、電解槽600の内部に配置された電極には電圧は印加されない。電解槽600に到達する塩化物イオンの量は少なく、しかも電気分解が行われないため、電解槽600では次亜塩素酸が発生しない。その結果、除菌用スパウト200からシンクSKへ吐出される水には高濃度の次亜塩素酸が含まれず、通常の水道水と同じ水が吐出されることとなる。正確には、水道水よりも塩化物イオンの濃度が小さい水が吐出される。
ステップS03で吸着処理を開始した後、これに続くステップS04では、電極510に対する塩化物イオンの吸着量が、予め設定された判定値CS1を超えたかどうかが判定される。具体的には、検出された濃縮槽電流の値が所定値(上記の判定値CS1に対応する濃縮槽電流の値である)を下回ったか否かが判定される。
ステップS04において濃縮槽電流の値が上記所定値を下回っていない場合(塩化物イオンの吸着量が判定値CS1を超えていない場合)には、ステップS21に移行して、除菌水の吐出を開始するための操作が使用者によってなされたか否かが判定される。つまり、操作部300の開始操作部310が再度押されたかどうかが判断される。しかし、開始操作部310が再度押されていた場合であっても、この時点では電極510に対する塩化物イオンの吸着量が十分ではないため、除菌工程は開始されない。この場合、使用者に対しては、報知音発生部380から電子音を発することにより、引き続き汚れ落とし工程が継続されることが報知される(ステップS22)。但し、開始操作部310が再度押されたことは、制御部700内のメモリに記憶される(ステップS23)。電極510に対する塩化物イオンの吸着量が判定値CS1を超えるまでの間、ステップS04及びステップS21が繰り返し実行される。
ステップS04において、濃縮槽電流の値が上記所定値を下回った(電極510に対する塩化物イオンの吸着量が判定値CS1を超えた)と判定された場合には、ステップS05に移行する。ステップS05では、(それまで消灯していた)吐出状態表示部340を点滅させて、除菌水の吐出が可能となったことを使用者に対して報知する。この時点を、図6では時刻t10として示している。
尚、判定値CS1は、汚れ落とし工程の開始時(ステップS02)において、設定水量表示部370の表示に基づいて設定される。例えば、水量設定操作部330の操作によって設定水量表示部370の「大」のLEDが点灯しているときにおいては、最も大きな値が判定値CS1に設定される。その結果、除菌水の吐出を禁止している状態で多量の塩化物イオンが電極510に吸着し蓄積されることとなる。また、水量設定操作部330の操作によって設定水量表示部370の「小」のLEDが点灯しているときにおいては、最も小さな値が判定値CS1に設定される。その結果、除菌水の吐出を禁止している状態で少量の塩化物イオンが電極510に吸着し蓄積されることとなる。このように、汚れ落とし工程が実行されている間に蓄積される塩化物イオンの量を、使用者が選択することが可能となっている。
ステップS03からステップS07(後述)までの汚れ落とし工程においては、制御部700は、3つのLEDからなる予洗い表示部350の表示を変化させることにより、除菌水を吐出可能となるタイミングの目安を表示する。具体的には、検出された濃縮槽電流の値が減少していくのに伴って、点灯しているLEDの数を次第に増加させて行き、濃縮槽電流の値が所定値を下回った(電極510に対する塩化物イオンの吸着量が判定値CS1を超えた)時点で、予洗い表示部350を構成する全てのLEDを点灯させた状態とする。
ステップS05に続くステップS06では、制御部700により、除菌水の吐出を開始するための操作が使用者によってなされたか否かが判定される。つまり、操作部300の開始操作部310が再度押されたかどうかが判断される。開始操作部310が押されていなければ、ステップS06の処理が繰り返される。ステップS06において開始操作部310が押されていた場合には、ステップS07に移行する。但し、汚れ落とし工程の間において既に開始操作部310が押されたことが、制御部700内のメモリに記憶されていた場合には、ステップS06から直ちにステップS07に移行する。ステップS07に移行した時点を、図6では時刻t20として示している。
ステップS07では、汚れ落とし工程を終了する。具体的には、制御部700が第一流路切り換え弁410を閉弁した状態に戻して、除菌用スパウト200からの水の吐出を停止する。同時に、電極510、511に対して印加されている電圧を0とし、吸着処理を終了する(ステップS08)。その結果、電極510に吸着していた塩化物イオンが徐々に離脱し始める。但し、濃縮槽500の内部では水の流れが停止しているため、離脱した塩化物イオンは濃縮槽500の内部にとどまった状態となっている。濃縮槽500の内部全体では、時刻t20から徐々に塩化物イオンの濃度が上昇して行く。
電解槽600の内部に配置された電極には、依然として電圧は印加されない。このため、電解槽600の内部では電気分解が行われず、次亜塩素酸は発生しない。
続くステップS09では、制御部700においてタイマーによる経過時間の計測が行われる。ステップS07において汚れ落とし工程が終了してから、予め設定された所定期間が経過するまでの間は、ステップS09が繰り返し実行される。すなわち、除菌用スパウト200からの水の吐出が停止している状態が継続される。このような状態を継続する工程を、以下では止水工程とも称する。ステップS07に移行してから所定期間が経過すると、止水工程を終了して、ステップS09からステップS10に移行する。この時点を、図6では時刻t30として示している。
ステップS10では除菌工程が開始される。具体的には、制御部700が、水道管からの水が濃縮槽500側に供給されるように第一流路切り換え弁410の状態を切り換える。その結果、除菌用スパウト200からは水の吐出が再開される。図5(B)はこのときの状態を示している。このとき、第一流路切り換え弁410から濃縮槽500に供給される水の流量は、汚れ落とし工程における水の流量よりも小さくなっている。このような流量の変更は、第一流路切り換え弁410が有する流量調整機構によって行われるが、除菌水用配管130の途中に別途流量調整弁を配置して、当該流量調整弁を制御部700が制御することによって行われてもよい。
また、除菌用スパウト200から吐出される除菌水の水流の範囲は、汚れ落とし工程において吐出される水の水流の範囲よりも広範囲となっている。このような水流の範囲の切り替えは、除菌用スパウト200の吐出口近傍に配置された内部機構(不図示)によって行われる。このような構成の他、除菌用スパウト200内に二つの流路及び(それぞれに対応する)二つの吐出口を形成しておき、汚れ落とし工程においては一方の流路及び吐出口から水を吐出し、除菌工程においては他方の流路及び吐出口から水を吐出することとしてもよい。このような構成によっても、汚れ落とし工程と除菌工程とで水流の範囲(太さ)を異ならせることができる。
除菌工程の開始と同時に、制御部700は、濃縮槽500における離脱処理を開始する(ステップS11)。すなわち、図6(B)に示したように、濃縮槽500に配置された電極510、511に対し、電極510が陰極となるように電圧V2を印加する(時刻t30)。その結果、電極510の表面に吸着していた塩化物イオンが、(止水工程における離脱速度よりも速い離脱速度で)電極510から次第に離脱して行く。図6(C)に示したように、離脱処理が開始された時刻t30以降においては、負方向の濃縮槽電流が流れて、その電流値は次第にある一定の値に近づいて行く。これは、図6(A)に示したように電極510に吸着していた塩化物イオンの量が減少していくのに伴って、電極510から単位時間あたりに離脱する塩化物イオンの量(離脱速度)が次第に減少していくことによるものである。
また、ステップS11において上記のように離脱処理が開始されるのと同時に、制御部700は、電解槽600の内部に配置された電極にも電圧を印加して電気分解を開始する。電解槽600の内部では、上記のような離脱処理と除菌水用配管130内の水の流れとによって、高濃度の塩化物イオンを含む水が濃縮槽500から供給される。その結果、電解槽600においては電気分解によって高濃度の次亜塩素酸が生成され、除菌用スパウト200からは十分な除菌性能を有する除菌水が吐出される。
ステップS11に続くステップS12では、制御部700により、除菌水の吐出を一時停止するための操作が使用者によってなされたか否かが判定される。つまり、操作部300の一時停止操作部320が押されたかどうかが判断される。一時停止操作部320が押されていなければ、ステップS13に移行して除菌工程を継続する。
ステップS13では、電極510に対する塩化物イオンの吸着量が、予め設定された判定値CS0を下回ったかどうかが判定される。具体的には、検出された濃縮槽電流の値が所定値(上記の判定値CS0に対応する濃縮槽電流の値である)を上回ったか否かが判定される。
濃縮槽電流の値が上記所定値を上回っていない場合には、ステップS12に戻って除菌工程を継続する。濃縮槽電流の値が上記所定値を上回っている場合(濃縮槽電流の絶対値が減少して0に近づいた場合)には、濃縮槽500に蓄積されていた塩化物イオンがほぼ使い尽されており、十分な除菌性能を有する除菌水をこれ以上吐出することができない状態である。このため、ステップS14に移行して除菌工程を停止する。具体的には、制御部700が第一流路切り換え弁410を閉弁した状態に戻して、除菌用スパウト200からの除菌水の吐出を(使用者の操作に基づくことなく)自動的に停止する。同時に、電極510、511に対して印加されている電圧を0とし、離脱処理を終了する(ステップS15)。この時点を、図6では時刻t60として示している。
ステップS12において一時停止操作部320が押されていた場合には、ステップS31に移行して除菌工程を一時停止する。図6では、時刻t40において一時停止操作部320が押された場合の例を示している。
ステップS31では、制御部700は第一流路切り換え弁410を閉弁した状態に戻して、除菌用スパウト200からの除菌水の吐出を一時的に停止する。同時に、電極510、511に対して印加されている電圧を0とし、離脱処理も一時的に停止する(ステップS32)。
その後、一時停止操作部320が再度押されると除菌工程を再開する。具体的には、制御部700は、水道管からの水が濃縮槽500側に供給されるように第一流路切り換え弁410の状態を切り換える。同時に、電極510、511に電圧を印加して離脱処理を再開する。除菌用スパウト200からは除菌水の吐出が再開され、既に説明したようなステップS12以降の処理が行われる。この時点を、図6では時刻t50として示している。
このように、除菌水の吐出を一時的に停止し、後に再開することができるため、再開時には汚れ落とし工程を経ることなく直ちに除菌水を吐出することが可能となっている。また、除菌水の吐出を一時的に停止している際には離脱処理も停止するため、一時停止中に全ての塩化物イオンが電極510から離脱してしまうことがない。従って、再開時において過剰な濃度の塩化物イオンが電解槽600に供給されることがなく、過剰な濃度の除菌水を除菌用スパウト200から吐出してしまうようなことがない。
尚、ステップS10からステップS14までの除菌工程においては、制御部700は、3つのLEDからなる除菌水残量表示部360の表示を変化させることにより、除菌水の吐出が自動停止されるタイミングの目安を表示する。具体的には、ステップS10における除菌工程の開始時に、3つのLEDを全て点灯させる。その後、検出された濃縮槽電流の絶対値が減少していくのに伴って、点灯しているLEDの数を次第に減少させて行く。濃縮槽電流の絶対値が所定値を下回った時点(電極510に対する塩化物イオンの吸着量が判定値CS0を下回った時点)で、除菌水残量表示部360を構成する全てのLEDを消灯させた状態とする。
以上のように、本実施形態に係る除菌水吐出装置WDでは、除菌水を吐出させるための操作(開始操作部310を押すこと)が使用者によってなされると、汚れ落とし工程によって塩化物イオンの収集、高濃度化を行った後に、除菌工程によって次亜塩素酸の生成、吐出が行われる。このため、ほぼメンテナンスフリーでありながら、使用者が必要とするタイミングで、十分な除菌性能を有する除菌水を吐出することが可能となっている。
また、除菌水吐出装置WDの制御部700は、除菌工程において、濃縮槽電流の絶対値が所定値(判定値CS0に対応する濃縮槽電流の絶対値)を下回った時に除菌水の吐出を停止する(ステップS13、S14)。ここで、濃縮槽電流の値は、電極510に対する塩化物イオンの吸着速度(又は離脱速度)に対応するものである。また、電極510に対する塩化物イオンの吸着速度(又は離脱速度)は、電極510に吸着している塩化物イオンの量によって変化する。従って、制御部700が行う上記のような制御は、電極510に吸着している塩化物イオンの量が低下し、除菌水に含まれる次亜塩素酸濃度が所定濃度以下に低下する前に、除菌水の吐出を自動的に停止する制御であるということができる。
除菌水の除菌性能が不十分なものとなる前に除菌水の吐出を自動的に停止するため、水や電力が無駄に消費されてしまうことが抑制される。また、汚れ落とし工程において蓄積される塩化物イオンの量が水道水の水質等によって変化した場合であっても、実際に蓄積された塩化物イオンの量に基づいて適切なタイミングで除菌水の吐出を停止する構成となっている。換言すれば、十分な除菌性能を有する除菌水を吐出し得る限りにおいて、できるだけ多くの除菌水を吐出することが可能となっている。
また、除菌水吐出装置WDでは、汚れ落とし工程において除菌用スパウト200から吐出される水の流量が、除菌工程において除菌用スパウト200から吐出される除菌水の流量よりも大きい。汚れ落とし工程においては大きな流量で水が吐出されるため、除菌対象物に付着した汚れを確実に洗い落とすことができることに加え、電極510には短時間で十分な量の塩化物イオンを吸着させる(蓄積する)ことができる。また、除菌工程においては小さな流量で除菌水が吐出されるため、(総量の限られた)除菌水の吐出時間が長くなることに加え、除菌対象物に除菌水を付着(滞留)させて確実な除菌を行うことができる。
続いて、除菌水吐出装置WDが、キッチンで行われる調理作業の合間において使用される態様の一例を、図7を参照しながら説明する。図7では、キッチンで行われる調理作業のうち、まな板の上で肉を切り、その後、同じまな板の上で野菜を切るまでの一連の作業(第一作業KS1、第二作業KS2、第三作業KS3、第四作業KS4)を、上段において模式的に図示している。また、当該作業の進行に応じて、濃縮槽500内の状態及び電解槽600内の状態がどのように遷移するかを、下段において模式的に図示している。
まず、使用者は、まな板KBの上に肉Mを載せた状態で、包丁KNを使って肉Mを切る作業(第一作業KS1)を行う。このとき、肉Mから出た汁等が汚れとしてまな板KB及び包丁KNに付着するほか、肉Mに付着していた菌もまな板KB及び包丁KNに付着する。従って、このままの状態で野菜VGを切る作業を行うと、板KB及び包丁KNを介して汚れや菌が野菜VGに付着してしまうこととなる。そこで、野菜VGを切る作業を行う前に、除菌水吐出装置WDを使用することにより、板KB及び包丁KNの洗浄、除菌を行う。
上記の第一作業KS1が完了した後、使用者は、汚れや菌が付着したまな板KBを除菌用スパウト200の下方に位置させる。この状態で、操作部300の開始操作部310を一度押す。除菌水吐出装置WDでは汚れ落とし工程が開始され、除菌用スパウト200からは通常の水が吐出される。使用者は、吐出された水をまな板KBにかけて、まな板KBに付着した汚れを洗い落とす(第二作業KS2)。同様に、包丁KNに付着した汚れも洗い落とす。
汚れ落とし工程において、まな板KBや包丁KNに付着していた汚れは概ね洗い落とされる。このとき、濃縮槽500の内部では吸着処理が行われており、電極510に塩化物イオンが吸着しその吸着量が増加していく。吸着量が十分な状態になると、それまで消灯していた吐出状態表示部340が点滅し始める。
使用者は、吐出状態表示部340の点滅開始を確認し、且つ、まな板KBや包丁KNに付着していた汚れが十分に洗い落とされたことを確認した後、再度開始操作部310を押す。除菌用スパウト200からの水の吐出は停止して、止水工程が開始される。まな板KB等の表面に残留していた水は、その殆どが止水工程の間にシンクSKに落下する。換言すれば、止水工程の間にまな板KB等の水切りが行われる。
止水工程に続いて、除菌工程が自動的に開始され、除菌用スパウト200からは除菌水が吐出され始める。使用者は、吐出された除菌水をまな板KB等にかけて、まな板KB等の除菌を行う(第三作業KS3)。このとき、濃縮槽500の内部では離脱処理が行われており、電極510の表面に吸着していた塩化物イオンが次第に離脱して行く。また、電解槽600の内部では電気分解が行われており、濃縮槽500から供給された高濃度の塩化物イオンから、高濃度の次亜塩素酸が生成される。電極510の表面に吸着していた塩化物イオンは次第に減少して行き、これに伴って、除菌水の次亜塩素酸濃度も次第に低下していく。次亜塩素酸濃度が所定濃度以下となる前に、除菌水の吐出が自動的に停止される。
除菌工程が完了した後、使用者は、まな板KBの上に野菜VGを載せた状態で、包丁KNを使って野菜VGを切る作業(第四作業KS4)を行う。まな板KB及び包丁KNは十分に除菌された状態となっているため、肉Mからの菌が野菜VGに付着してしまうことがない。このように、除菌水吐出装置WDによれば、調理の合間においてまな板KBや包丁KN等を短時間で且つ頻繁に除菌することができるため、食中毒の予防のために極めて有効である。
また、開始操作部310が最初に押されてから除菌水の吐出が開始されるまでの期間は、塩化物イオンの収集、高濃度化を行うための期間として利用される一方で、除菌水の性能が十分に発揮されるよう、まな板KBや包丁KNの汚れを洗い落としておくための期間としても利用される。このように、除菌水吐出装置WDでは、開始操作部310が押されてから除菌水の吐出が開始されるまでの期間を、無駄な待ち時間とするのではなく有効に利用している。
続いて、メインスパウト100から水を吐出する際、すなわち、除菌水吐出装置WDが通常の水栓装置として使用される際における、除菌水吐出装置WDの動作について説明する。除菌水吐出装置WDの制御部700は、操作レバー101になされた操作に基づいて除菌水を除菌用スパウト200から吐出させる制御(除菌水吐出制御)の他、電解槽600における電気分解がなされていない水をメインスパウト100から吐出させる制御(通常水吐出制御)も行うように構成されている。
図8は、図2や図5と同様に、除菌水吐出装置WDの構成を模式的に示す図であるが、図2や図5では図示を省略していた一部の配管等(バイパス配管140、第二流路切り換え弁420)を、省略せずに描いたものである。
第二流路切り換え弁420は、第一流路切り換え弁410と同様に構成された切り換え弁であって、除菌水用配管130のうち、濃縮槽500と電解槽600との間となる位置に配置されている。バイパス配管140は、上記の第二流路切り換え弁420と、給水配管110のうち第一流路切り換え弁410よりも下流側の部分とを繋ぐ配管である。第二流路切り換え弁420を制御部700が制御することによって、濃縮槽500から下流側に流出した水が電解槽600に供給される状態と、濃縮槽500から下流側に流出した水がメインスパウト100に供給される状態とが切り替えられる構成となっている。
既に説明したように、メインスパウト100からの水の吐出は、操作レバー101に対する使用者の操作に基づいて行われる。図9は、操作レバー101が操作されてメインスパウト100から水を吐出する際における、除菌水吐出装置WDの動作を示すフローチャートである。図9に示した一連の処理は、除菌水吐出装置WDが待機状態(水を吐出していない状態)であるときを含めて、常に、所定時間が経過するごとに制御部700によって繰り返し実行されるものである。
使用者が操作レバー101を回転させると(ステップS101)、制御部700はまず吸着処理を実行する(ステップS102)。具体的には、電極510が陽極となるように電圧を印加した状態とする。濃縮槽500の内部の水に含まれる塩化物イオン(Cl-)が電極510に吸着し、収集される。制御部700には、濃縮槽500内の電極間を流れる濃縮槽電流の値が入力される。
このとき、吸着処理の開始時点において、電極510に吸着している塩化物イオンの量が少なければ、濃縮槽電流の値は大きくなる。逆に、電極510に既に多量の塩化物イオンが吸着していれば、濃縮槽電流の値は小さくなる。このため、制御部700は、入力された濃縮槽電流の値に基づいて、電極510に吸着している塩化物イオンの量を推定することができる。
ステップS102に続くステップS103では、電極510に対する塩化物イオンの吸着量が、予め設定された判定値よりも小さいかどうかが判定される。具体的には、検出された濃縮槽電流の値が所定値(上記の判定値に対応する濃縮槽電流の値である)を上回ったか否かが判定される。
ステップS103において濃縮槽電流の値が上記所定値を上回っていた場合(塩化物イオンの吸着量が判定値よりも小さい場合)には、吸着処理を実行している状態のまま、ステップS104に移行する。ステップS104では、制御部700は、水道管からの水が濃縮槽500側に供給されるように第一流路切り換え弁410の状態を切り換える。更に、濃縮槽500からの水が給水配管110側に供給されるように第二流路切り換え弁420の状態を切り換える。
図8(A)はこのときの状態を示している。同図において矢印で示したように、水道管からの水は、除菌水用配管130の内部を第一流路切り換え弁410、濃縮槽500、第二流路切り換え弁420の順に通った後、給水配管110を通り、メインスパウト100からシンクSKへ吐出される。濃縮槽500においては、吸着処理が実行された状態のままで水道水が供給されるため、電極510に吸着している塩化物イオンの量は次第に増加して行く。また、濃縮槽電流の値は次第に小さくなっていく。
ステップS103において濃縮槽電流の値が上記所定値を上回っていなかった場合(塩化物イオンの吸着量が判定値以上であった場合)には、吸着処理を停止し(ステップS201)、ステップS202に移行する。ステップS202では、制御部700は、水道管からの水がメインスパウト100側に供給されるように第一流路切り換え弁410の状態を切り換える。更に、第二流路切り換え弁420を閉弁状態とする。
図8(B)はこのときの状態を示している。同図において矢印で示したように、水道管からの水は、除菌水用配管130の内部を通ることなく、第一流路切り換え弁410から給水配管110に供給されて、メインスパウト100からシンクSKへ吐出される。このとき、吸着処理の実行が停止されているが、濃縮槽500においては既に十分な量の塩化物イオンが蓄積されている。水道管からの水は濃縮槽500を通らないため、濃縮槽500に蓄積されている塩化物イオンは、減少することなくそのまま保持される。
ステップS104又はステップS202に続いて行われるステップS105では、制御部700によって操作レバー101の状態が確認される。使用者によって操作レバー101が元の状態(水が吐出されない状態)に戻されていれば、第一流路切り換え弁410を閉弁状態に戻して(ステップS106)一連の処理を終了する。操作レバー101が元の状態に戻されていなければ、ステップS103に戻る。
以上の説明で明らかなように、除菌水吐出装置WDでは、操作レバー101になされた操作に基づいてメインスパウト100から水を吐出する際においても、濃縮槽500において吸着処理を実行し、塩化物イオンの収集を行うように構成されている。つまり、開始操作部310が押された際に実行される汚れ落とし工程においてだけではなく、操作レバー101が操作されて通常の水道水を吐出する際においても、吸着処理による塩化物イオンの収集、高濃度化が行われるように構成されている。
このような構成により、開始操作部310が押された時点で、既にある程度の塩化物イオンが濃縮槽500内に蓄積された状態となっているため、除菌工程を開始するまでに要する時間(汚れ落とし工程の実行時間)を短くすることが可能となっている。また、汚れ落とし工程の完了時までにより多くの塩化物イオンを蓄積することとし、除菌工程においては多量の除菌水を吐出するような制御を行うように設定することも可能である。
ここで、上記のような構成においては、除菌水が除菌用スパウト200から吐出されるよう、開始操作部310が押された時点において、既に十分な量の塩化物イオンが濃縮槽500内に蓄積されている(電極510に吸着している)ことがあり、このような場合には、汚れ落とし工程を省略してもよいように思われる。しかしながら、除菌水吐出装置WDでは、開始操作部310が押された時点において、濃縮槽電流に基づいて検出(推定)された塩化物イオンの吸着量が既に十分な場合であっても、必ず汚れ落とし工程を実行するように構成されている。換言すれば、塩化物イオンの収集をこれ以上行う必要がない状態であっても、除菌水を吐出する前において、汚れ落とし工程を省略することなく敢えて実行するように構成されている。
汚れ落とし工程が実行されるか否かが毎回変化してしまうと、使用者にとっては除菌水吐出装置WDの動作を予測することができなくなるため、使い勝手の観点からは望ましくない。そこで、除菌水吐出装置WDでは、上記のように必ず汚れ落とし工程を実行するような制御を行い、使用者の予測可能性を高めることとしている。
また、汚れ落とし工程を必ず実行することにより、除菌対象物に付着した汚れを予め洗い落としておくような使い方が常に可能となるため、除菌水の除菌性能を十分に発揮させることができる。
また、除菌水吐出装置WDの制御部700は、除菌水が除菌用スパウト200から吐出されるよう、開始操作部310が押された時点において、濃縮槽電流に基づいて検出(推定)された塩化物イオンの吸着量が既に十分な場合であっても、汚れ落とし工程においては必ず吸着処理を実行するような制御を行う。
すなわち、除菌水を吐出する前には、濃縮槽500における塩化物イオンの蓄積量に拘わらず、吸着処理を必ず実行するように構成されている。このため、常に十分な量の除菌水を吐出することが可能となっている。
また、除菌水吐出装置WDでは、メインスパウト100から水を吐出する際にも上記のように吸着処理を行うのであるが、濃縮槽電流に基づいて検出(推定)された塩化物イオンの吸着量が十分な場合には、ステップS102で開始された吸着処理をステップS201で停止するように構成されている。このため、電極の劣化を抑制することができる。
また、濃縮槽電流に基づいて検出(推定)された塩化物イオンの吸着量が十分な場合には、供給された水道水が電解槽600を通ることなくメインスパウト100に到達し吐出されるように、内部の流路状態を切り換えるよう構成されている。このような構成により、蓄積された塩化物イオンが、電解槽600から流出してしまうことを防止している。
尚、本実施形態に係る除菌水吐出装置WDでは、メインスパウト100とは別に除菌用スパウト200を備えた構成となっているが、これらを共通化してもよい。すなわち、除菌水吐出装置WDのように二つのスパウトを備えるのではなく、スパウトを一つだけ備えた構成とした上で、当該スパウトから通常の水道水及び除菌水を吐出するような構成としてもよい。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。