JP6213868B2 - 信号処理装置、能動騒音制御装置、能動騒音制御方法 - Google Patents

信号処理装置、能動騒音制御装置、能動騒音制御方法 Download PDF

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本発明は、音波を打ち消す打消音を音出力装置から出力させるための打消信号を生成する信号処理装置、この信号処理装置を用いて騒音となる音波の音圧を抑制する能動騒音制御装置、この信号処理装置において打消信号を生成する能動騒音制御方法に関する。
一般に、管路の一端から管路に導入された音波のように音波が伝播する方向が制限されている場合に、管路の他端に伝達される音波を抑制するようにした能動騒音制御装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この種の能動騒音制御装置は、管路に導入された音波を減衰させる打消音(いわゆる、キャンセル音)を管路の内部に出力する。
特許文献1には、ダクト(管路)内に配置されて騒音を検出する騒音検出マイクロホンと、反転音(打消音)をダクト内に放射する消音用スピーカと、騒音と反転音との干渉結果を検出する消音量検出マイクロホンとを備える能動型消音装置が記載されている。
騒音検出マイクロホンが検出した騒音は、係数可変ディジタルフィルタに入力され、消音用スピーカから反転音を放射するための信号を生成する。また、係数可変ディジタルフィルタのフィルタ係数は係数更新部に更新される。係数更新部は、騒音検出マイクロホンが検出した騒音が消音量検出マイクロホンに伝達された場合の音波と、消音量検出マイクロホンが検出した音波とに相当する信号を用いて、係数可変ディジタルフィルタのフィルタ係数を決定している。
特開平7−28475号公報
ところで、特許文献1に記載された構成では、騒音検出マイクロホンおよび消音量検出マイクロホンが検出する音波は、どちらも騒音源から放射された音波と消音用スピーカから放射された音波とである。したがって、反転音は、騒音検出マイクロホンと消音量検出マイクロホンとの間の騒音の伝達特性(伝達関数)と、消音用スピーカと騒音検出マイクロホンとの間および消音用スピーカと消音量検出マクロホンとの間の反転音の伝達特性とを考慮して定められる。つまり、係数可変ディジタルフィルタは、3種類の伝達特性に相当するフィルタ特性を持つ必要がある。
このように、特許文献1に記載された構成では、係数可変ディジタルフィルタにおいて3種類の伝達特性を混合したフィルタ係数が設定されており、しかも、係数更新部は、フィルタ係数を再帰的に演算することによって定めている(特許文献1の数1など)。定常的に生じる騒音に対して再帰的に演算を行によってフィルタ係数は収束するが、3種類の伝達関数を含むことから、フィルタ係数が収束するまでの演算回数が多くなるという問題が生じる。つまり、特許文献1に記載された構成は、騒音の変化に対する追従性が低いという問題を有している。
本発明は、フィルタ係数が収束するまでの時間を従来構成よりも短縮することを可能にし、もって、騒音の変化に対する追従性を高めることを可能にした信号処理装置を提供することを目的とし、さらに、この信号処理装置を用いた能動騒音制御装置と、この信号処理装置を用いる能動騒音制御方法とを提供することを目的とする。
本発明に係る信号処理装置は、音波が伝播する方向において、第1の音入力装置と音出力装置と第2の音入力装置とが所定の位置関係に配置されている変換装置とともに用いられ、前記第2の音入力装置に音波が入力されないように打消音を前記音出力装置から出力させるための打消信号をデジタル信号処理により生成する信号処理装置であって、前記第1の音入力装置から出力された参照信号に基づいて前記打消信号を生成する消音フィルタと、前記第2の音入力装置から出力された誤差信号および前記参照信号を用いて、前記消音フィルタのフィルタ係数を更新する係数決定部とを備え、前記消音フィルタは、前記第1の音入力装置と前記第2の音入力装置との間の伝達関数に相当するフィルタ係数が前記係数決定部により設定される第1のフィルタと、前記音出力装置と前記第2の音入力装置との間の伝達関数の逆関数に相当するフィルタ係数が固定に設定された第2のフィルタとを備え、前記参照信号を前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタに通して前記打消信号を生成するように構成されており、前記第2のフィルタにより信号が遅延する場合に、遅延を回復させるように前記第1のフィルタに入力される信号のタップをシフトさせることにより信号を進めさせる遅延回復部をさらに備えることを特徴とする。
この信号処理装置において、前記第1のフィルタの後段に前記第2のフィルタを備えることが好ましい。
この信号処理装置において、前記遅延回復部は、前記第1のフィルタに入力される信号のタップをシフトさせることにより空いたタップに0を割り当てることが好ましい。
この信号処理装置において、前記第1のフィルタは、前記第2のフィルタにより信号が遅延する場合に、遅延を回復させるように信号を進める機能を有することが好ましい。
本発明に係る能動騒音制御装置は、上述したいずれかの信号処理装置と、前記変換装置とを備えることを特徴とする。
本発明に係る能動騒音制御方法は、音波が伝播する方向において、第1の音入力装置と音出力装置と第2の音入力装置とが所定の位置関係に配置されている変換装置と、前記第2の音入力装置に音波が入力されないように打消音を前記音出力装置から出力させるための打消信号をデジタル信号処理により生成する信号処理装置とを備える能動騒音制御装置により、騒音を制御する方法であって、前記信号処理装置が、前記第1の音入力装置から出力された参照信号に基づいて前記打消信号を生成する第1の処理と、前記第2の音入力装置から出力された誤差信号および前記参照信号を用いて消音フィルタのフィルタ係数を更新する第2の処理とを行い、前記第1の処理は、前記参照信号を、前記第1の音入力装置と前記第2の音入力装置との間の伝達関数に相当するフィルタ係数が前記第2の処理により設定される第1のフィルタと、前記音出力装置と前記第2の音入力装置との間の伝達関数の逆関数に相当するフィルタ係数が固定に設定された第2のフィルタとに通して前記打消信号を生成し、前記第2のフィルタにより信号が遅延する場合に、遅延を回復させるように前記第1のフィルタに入力される信号のタップをシフトさせることにより信号を進めさせることを特徴とする。
本発明は、消音フィルタが第1のフィルタと第2のフィルタとにより構成されている。第1のフィルタは、フィルタ係数が可変であり、第2のフィルタは、音出力装置と第2の音入力装置との間の伝達関数の逆関数に相当するフィルタ係数が固定に設定されている。この構成により、第1のフィルタは、第1の音入力装置と第2の音入力装置との間の伝達関数に相当するフィルタ係数を持つだけでよいから、フィルタ係数が収束するまでの時間を従来構成よりも短縮することが可能になる。その結果、騒音の変化に対する追従性を高めることが可能になる。
実施形態1を示すブロック図である。 実施形態1における遅延回復と遅延処理との概念を説明する図である。 実施形態1におけるフィルタ係数の固有値を示す概念図である。 実施形態1において誤差のパワーと更新回数との関係を示す図である。 実施形態1の動作例を示す図である。 実施形態1を適用した動作の一例を示す図である。 比較例の動作を示す図である。 実施形態2を示すブロック図である。
(概要)
以下に説明する信号処理装置10は、音波が伝播する方向において、第1の音入力装置21と音出力装置23と第2の音入力装置22とが所定の位置関係に配置されている変換装置20とともに用いられる。そして、信号処理装置10は、第2の音入力装置22に音波が入力されないように打消音を音出力装置23から出力させるための打消信号をデジタル信号処理により生成する。信号処理装置10は、消音フィルタ111と係数決定部117とを備える。消音フィルタ111は、第1の音入力装置21から出力された参照信号に基づいて打消信号を生成する。係数決定部117は、消音フィルタ111と、第2の音入力装置22から出力された誤差信号および参照信号を用いて、消音フィルタ111のフィルタ係数を更新する。
消音フィルタ111は、第1のフィルタ1111と第2のフィルタ1113とを備える。第1のフィルタ1111は、第1の音入力装置21と第2の音入力装置22との間の伝達関数に相当するフィルタ係数が係数決定部117により設定される。第2のフィルタ1113は、音出力装置23と第2の音入力装置22との間の伝達関数の逆関数に相当するフィルタ係数が固定に設定される。消音フィルタ111は、参照信号を第1のフィルタ1111および第2のフィルタ1113に通して打消信号を生成する。信号処理装置10は、第1のフィルタ1111の後段に第2のフィルタ1113を備えることが望ましい。
信号処理装置10は、第2のフィルタ1113により信号が遅延する場合に、遅延を回復させるように第1のフィルタ1111に入力される信号を進めさせる遅延回復部1114を備えることが望ましい。あるいはまた、第1のフィルタ1111は、第2のフィルタ1113により信号が遅延する場合に、遅延を回復させるように信号を進める機能を有することが望ましい。
以下に説明する能動騒音制御装置は、上述した信号処理装置10と、変換装置20とを備える。また、能動騒音制御方法は、変換装置20と信号処理装置10とを備える能動騒音制御装置により、騒音を制御する方法である。変換装置20は、音波が伝播する方向において、第1の音入力装置21と音出力装置23と第2の音入力装置22とが所定の位置関係に配置されている。信号処理装置10は、第2の音入力装置22に音波が入力されないように打消音を音出力装置23から出力させるための打消信号をデジタル信号処理により生成する。
つまり、信号処理装置10が、第1の音入力装置21から出力された参照信号に基づいて打消信号を生成する第1の処理と、第2の音入力装置22から出力された誤差信号および参照信号を用いて消音フィルタ111のフィルタ係数を更新する第2の処理とを行う。第1の処理は、参照信号を、第1のフィルタ(フィルタ1111,1112)と第2のフィルタ1113とに通して打消信号を生成する。第1のフィルタは、第1の音入力装置21と第2の音入力装置22との間の伝達関数に相当するフィルタ係数が第2の処理により設定される。第2のフィルタは、音出力装置23と第2の音入力装置22との間の伝達関数の逆関数に相当するフィルタ係数が固定に設定されている。
(実施形態1)
以下、実施形態について詳述する。能動騒音制御装置は、図1に示すように、音源2から発生した騒音の音圧を低減させる装置であり、信号処理装置10と変換装置20とにより構成される。変換装置20は、音源2から発生した騒音が導入される導音路24を備える。導音路24は、音源2から音波が伝播する方向あるいは範囲を制限する。導音路24は、音波が伝播される方向(軸線に沿う方向)の両端が開放されている。
本実施形態は、騒音を発生する音源2が換気用のファンであり、音源2に対して室内側に導音路24となる換気用のダクトが配置されている構成を想定する。ただし、音源2は、電気機器に設けられる空冷用のファン、空調機器に設けられる送風用のファン、トンネルの換気用のファンなどであってもよい。あるいはまた、自動車のような車両であれば、いわゆるロードノイズを発生させている部位(タイヤなど)が音源2であってもよい。この場合、車室を囲む壁に導音路24を設けるか、導音路24を設けずに車室内という閉塞空間での消音を行う。以下に説明する能動騒音制御装置は、定常的に音波(騒音あるいは雑音)が発生する音源2であれば適用可能である。
(変換装置の構成)
変換装置20は、第1の音入力装置21と第2の音入力装置22と音出力装置23とが、導音路24に配置されている。第1の音入力装置21と第2の音入力装置22と音出力装置23とは、導音路24に対して定位置に配置され、導音路24の中を音波が伝播する向きに配列されている。第1の音入力装置21は音源2にもっとも近い位置に配置され、第2の音入力装置22は音源2からもっとも遠い位置に配置される。また、音出力装置23は、第1の音入力装置21と第2の音入力装置22との間に配置される。
なお、図示例では、第1の音入力装置21および第2の音入力装置22は、導音路24の管壁に配置されているが、導音路24の中を伝播する音波を監視できる位置に配置されていればよく、導音路24の軸線上などに配置されていてもよい。
音源2がファンであり、導音路24がダクト(管路)である場合、導音路24は、ファンに導入される空気を誘導するか、ファンから送られる空気を誘導する経路を兼ねる。第1の音入力装置21および第2の音入力装置22は、それぞれマイクロホンが用いられ、音出力装置23は、スピーカが用いられる。
信号処理装置10は、第1の音入力装置21および第2の音入力装置が監視する音波を電気信号に変換し、この電気信号を入力に用いて音出力装置23に与える電気信号を生成する。以下、第1の音入力装置21が出力する電気信号を「参照信号」、第2の音入力装置22が出力する電気信号を「誤差信号」、音出力装置23に与えられる電気信号を「打消信号」と呼ぶ。
上述のように、変換装置20おいて、第1の音入力装置21と第2の音入力装置22と音出力装置23とは、導音路24に対する位置関係が固定されている。したがって、音出力装置23から第1の音入力装置21に向かって伝播される音波の伝達関数[F]と、音出力装置23から第2の音入力装置22に向かって伝播される音波の伝達関数[C]とはほぼ一定である。さらに、第1の音入力装置21から第2の音入力装置22に向かって音波を伝達させる際の伝達関数[T]もほぼ一定と言える。
信号処理装置10は、第2の音入力装置22に入力される音波の音圧を0に近づけるように、音出力装置23に与える打消信号を生成する。本実施形態において、第2の音入力装置22が配置されている部位を制御点Pzと呼ぶ。
(信号処理装置の構成)
信号処理装置10は、以下に説明する処理を行うDSP(Digital Signal Processor)を用いた処理部11と、第1の音入力装置21と第2の音入力装置22と音出力装置23とを接続するための接続部12とを備える。すなわち、信号処理装置10は、デジタル信号処理を行う。
接続部12は、処理部11が扱うデジタル信号と変換装置20が扱うアナログ信号と変換を行う変換器と、アナログ信号を増幅する増幅器とを備える。すなわち、接続部12は、参照信号を増幅する第1の増幅器121、誤差信号を増幅する第2の増幅器122、打消信号を増幅する第3の増幅器123を備える。第1の増幅器121の出力は第1のA/D変換器124によりデジタル信号に変換され、第2の増幅器122の出力は第2のA/D変換器125によりデジタル信号に変換される。また、第3の増幅器123は、D/A変換器126から出力された打消信号を増幅する。第1のA/D変換器124と第2のA/D変換器125とのサンプリング周波数は、音源2の種類に応じて設定され、換気用のファンを音源2とする場合、たとえば8kHzが選択される。
上述したように、接続部12は、処理部11と変換装置20との間で信号の形式を変換しているが、信号に含まれる情報に実質的な変更を加えていない。したがって、以下では、第1のA/D変換器124から出力されるデジタル信号を「参照信号」、第2のA/D変換器125から出力されるデジタル信号を「誤差信号」、D/A変換器126に入力されるデジタル信号を「打消信号」と呼ぶ。すなわち、とくに区別する必要がない場合、情報が実質的に等価である信号については同じ名称を用いる。
ところで、制御点Pzにおいて音圧を0にするには、第1の音入力装置21で検出された音波が第2の音入力装置22では検出されないようにする必要がある。そのため、音出力装置23は、制御点Pzに伝播する音波の音圧を予測して定められた振幅および位相を有する打消音を出力する。
すなわち、処理部11は、第1の音入力装置21で検出される音波が導音路24を伝達される状態を予測し、制御点Pzにおける音圧が0になるように音出力装置23に打消信号を与える。この打消信号には予測誤差があるから、予測誤差に相当する音波を第2の音入力装置22が検出し、処理部11は、第2の音入力装置22が検出した予測誤差に基づいて打消信号を修正する。
言い換えると、処理部11は、導音路24における上述した各部位の伝達関数[F]、[C]、[T]から求められるフィルタ係数(すなわち、伝達関数)を有する複数のフィルタを組み合わせて用いることによって打消信号を生成する。いま、能動騒音制御装置が動作中である場合、第1の音入力装置21が時刻kにおいて検出した音波がs(k)であるとする。この音波s(k)には、音源2から発生した騒音n(k)の成分と、音出力装置23から出力された打消音z(k)の成分とが含まれる。
音出力装置23から第1の音入力装置21への伝達関数[F]は既知であるから、打消音z(k)に伝達関数[F]を適用すると、音出力装置23から出力された打消音z(k)のうち第1の音入力装置21が検出する成分を予測できる。したがって、第1の音入力装置21に入力された音波s(k)のうち、音出力装置23から出力された打消音z(k)の成分を除去することが可能になる。つまり、第1の音入力装置21が検出した音波s(k)のうち音源2から発生した騒音n(k)の成分を抽出することが可能になる。
一方、制御点Pzでの音圧を0にするには、第1の音入力装置21に検出された音波s(k)と、音出力装置23から出力された打消音z(k)とが、それぞれ制御点Pzに到達したときに、互いの振幅が等しく位相が逆になるという条件が要求される。そのため、音波s(k)に伝達関数[T]を適用した波形と、打消音z(k)に伝達関数[C]を適用した波形とが、同振幅で逆位相になるように、打消音z(k)を定めることが要求される。言い換えると、打消音z(k)は、[T]s(k)=−[C]z(k)になるように定めなければならない。すなわち、z(k)=−[C−1][T]s(k)になる。ここに、[A−1]は、伝達関数[A]に対する逆関数を表す。
上述したように、第1の音入力装置21が検出した音波s(k)は、音出力装置23から出力された打消音z(k)の成分と、音源2から発生した騒音n(k)の成分とを含む。すなわち、s(k)=[F]z(k)+n(k)であり、z(k)=−[C−1][T]([F]z(k)+n(k))になる。上述のように、[F]z(k)は除去可能であるから、[F]z(k)=0とすれば、打消音z(k)を発生させる打消信号y(k)は、y(k)=−[C−1][T]n(k)として求められる。
以上の説明では第2の音入力装置22が検出する音波d(k)を考慮していないが、上記説明から、処理部11が音出力装置23に与える打消信号y(k)を生成するには、少なくとも3種類の伝達関数[F]、[T]、[C−1]のフィルタが必要であることがわかる。ここに、導音路24の伝達関数[F]、[T]、[C−1]が既知であれば、伝達関数[F]、[T]、[C−1]を持つフィルタを処理部11に設けることによって、打消信号y(k)を精度よく決定できると考えられる。
伝達関数[F]、[T]、[C−1]は、ほぼ一定ではあるが、温度環境などによって変動する可能性がある。そのため、本実施形態において、処理部11は、伝達関数[F],[C−1]を固定し、伝達関数[T]を可変にすることによって、打消信号y(k)を適正化する構成を採用している。
この種のフィルタは、デジタルフィルタを用いて実現される。ここで、以下の説明で必要になるデジタルフィルタの技術的な事柄について簡単に説明しておく。デジタルフィルタは、FIR(Finite Impulse Response)フィルタであることが望ましい。
いま、サンプリング時刻をkとし、時刻kにおけるフィルタの伝達関数を[U(k)]=[u0(k),u1(k),…,u15(k)]というベクトルで表すものとする。つまり、時刻kにおけるi番目のタップのフィルタ係数はui(k)で表される。なお、角括弧はベクトル(ないし行列)であることを表している。また、この例では、フィルタ長(タップ数)を16にしているが、タップ数は適宜に設定可能である。
このフィルタに対して、時刻kにおいて、[X(k)]=[x(k),x(k−1),…,x(k−15)]というベクトル(入力信号ベクトル)で表される入力信号が与えられたとする。つまり、入力信号ベクトル[X(k)]は、フィルタ長(タップ数)が16であるとすれば、入力信号の16回のサンプリング値を用いて表される。なお、閉じ括弧の右上に添えた「」の文字は行列の転置を表している。したがって、入力信号ベクトルは、ここでは列ベクトルとして表現されている。
フィルタの出力信号v(k)は、フィルタの伝達関数と入力信号との内積として求められる。つまり、v(k)=[U(k)][X(k)]=Σui(k)・x(k−i)=u0(k)・x(k)+u1(k)・x(k−1)+…+u15(k)・x(k−15)になる。
以上のように、フィルタに対して時刻kに入力信号x(k)が入力されると、フィルタは、フィルタ長に等しい個数の成分を持つ入力信号ベクトル[X(k)]に伝達関数[U(k)]を適用することにより、出力信号v(k)を出力する。時刻kにおける入力信号ベクトル[X(k)]は、時刻kからフィルタ長で決まるサンプリング回数だけ遡った期間のサンプリング値(入力信号)を成分に持つベクトルになる。
(処理部の構成)
本実施形態の処理部11は、図1に示すように、消音フィルタ111と、2個のフィルタ112,113とを備える。さらに、処理部11は、3個の減算器114〜116と、消音フィルタ111のフィルタ係数を決定する係数決定部117とを備える。消音フィルタ111は、フィルタ係数が可変である第1のフィルタと,フィルタ係数が固定である第2のフィルタ1113とを備える。第1のフィルタは、2個のフィルタ1111,1112と遅延回復部1114とを備える。
処理部11で扱うデジタル信号は、ビット数を問わず、パラレル信号かシリアル信号かを問わないが、望ましくは16ビット以上のシリアル信号が採用される。第1のフィルタ(フィルタ1111,1112)と、第2のフィルタ1113と、フィルタ112,113とは、それぞれ16タップ(フィルタ長が16)のFIRフィルタであるものとする。
すなわち、フィルタ1111,1112、第2のフィルタ1113、フィルタ112,113の特性は、それぞれ16個ずつのタップ係数(タップ重み)により定められる。以下では、タップ係数(タップ重み)をフィルタ係数と呼ぶ。フィルタ1111,1112、第2のフィルタ1113およびフィルタ112,113のフィルタ係数は16個ずつの要素を持つベクトル(タップ係数ベクトル)で表される。このベクトルはフィルタ112,113,1111,1112,1113の伝達関数に相当する。
本実施形態では、消音フィルタ111を構成する第1のフィルタ(フィルタ1111,1112)のうちフィルタ1112はフィルタ係数が可変であって、フィルタ1111のフィルタ係数は、フィルタ係数1112のフィルタ係数に追従して設定される。また、フィルタ1111とフィルタ1112とのフィルタ係数は、制御点Pzでの音圧を0にするように定められる。
フィルタ112は、上述した伝達関数[F]に相当する伝達関数[^F]を持ち、D/A変換器126に入力される打消信号y(k)が入力される。
ここで、空間の伝達関数が[A]である例を用いて符号の意味を説明しておく。伝達関数[^A]は、伝達関数[A]と等価な伝達関数を意味する。[^A]は、図中では括弧内の符号Aの上に記号「^」を付加して表している。つまり、伝達関数[^A]は、空間の伝達関数[A]を電気的に模擬した伝達関数であり、理想的には、[A]=[^A]である。以下では、時刻kにおいて、伝達関数が[^A]のフィルタに入力信号a(k)が入力されたとき、入力信号a(k)に対してフィルタから出力される出力信号を、[^A]a(k)と表す場合がある。また、時刻kにおけるフィルタ係数を[A(k)]と表す場合がある。
時刻kにおいてフィルタ112から出力される信号は減算器114に入力され、減算器114からは参照信号x(k)とフィルタ112から出力される信号[^F]y(k)との差分に相当する参照信号r(k)が出力される。すなわち、参照信号r(k)は、第1の音入力装置21が検出する音波のうち音源2から発生した騒音n(k)の成分に相当する。言い換えると、フィルタ112と減算器114とを用いることにより、音出力装置23から第1の音入力装置21への帰還経路が絶たれ、ハウリングの発生が防止される。
参照信号r(k)は、騒音n(k)の成分に相当するから、参照信号r(k)に基づいて打消信号y(k)を生成するには、y(k)=−[C−1][T]r(k)という変換を行うフィルタが必要である。本実施形態は、消音フィルタ111に、伝達関数が−[^T]であるフィルタ1111と、伝達関数が[^C −1]である第2のフィルタ1113とを設けることによって、参照信号r(k)から打消信号y(k)への変換を行っている。図示例では、フィルタ1111の後段に第2のフィルタ1113を設けている。
伝達関数[^C −1]は、伝達関数[C]に相当する伝達関数[^C]に対する逆関数であり、かつ入力信号に伝達関数[^C−1]が適用されると、信号にDタップ(Dはフィルタのタップ数の範囲の整数値)の遅延が生じることを表している。Dタップの遅延は、図2(a)に示す状態から見た図2(b)に示す状態を意味する。図2(a)および図2(b)において、上段はフィルタのタップを模式的に表し、下段は各タップに与えられた信号値を表す。タップは左から順に第1タップ、第2タップ、…、第Nタップとし、第1タップに与える信号値を最新とする。本実施形態では、N=16である。
いま、フィルタにおいて、入力信号に対して3タップの遅延が生じたとすると、入力信号ベクトルの成分は、図2(b)のように3タップだけ右にシフトすることになる。つまり、図2(a)に示す入力信号ベクトルのうち第2タップの成分は第5タップに遷移し、第7タップの成分は第10タップに遷移する。遷移するタップ数は、システムの構成によって異なる。
ところで、フィルタで遅延が生じると、処理部11の内部で発生する信号の時間調整が必要になる。そのため、信号を遅延させる遅延処理、あるいは信号を進める遅延回復を行うことが必要になる。遅延処理は、たとえば、図2(a)に示す状態を基準として、図2(b)に示す状態に移行する場合のように、信号(データ)を右にシフトさせる処理に相当する。また、遅延回復は、たとえば、図2(b)に示す状態を基準として、図2(a)に示す状態に移行する場合のように、信号(データ)を左にシフトさせる処理に相当する。
遅延処理の際には、入力信号ベクトルのうちの新しいほうの成分(図2(b)では第1タップから第4タップ)は、元の入力信号ベクトルから得られないから、この部位の成分には0を割り当てる。また、遅延回復の際には、入力信号ベクトルのうちの古いほうの成分(図2(a)では第14タップから第16タップ)は、元の入力信号ベクトルから得られないから、この部位の成分には0を割り当てる。
フィルタ1111に後置される第2のフィルタ1113は、上述のようにDタップの遅延が生じる。第2のフィルタ1113で遅延が生じるから、フィルタ1112のフィルタ係数をフィルタ1111に引き渡す際に、遅延回復部1114でDタップの遅延回復を行うことによって、第2のフィルタ1113による遅延の影響を除去している。
消音フィルタ111におけるフィルタ1112のフィルタ係数は、騒音n(k)に相当する参照信号r(k)と誤差信号e(k)とを用いて係数決定部117が決定する。係数決定部117は、消音フィルタ111と併せて適応フィルタを構成しており、消音フィルタ111のフィルタ係数を動的に決定する。消音フィルタ111のフィルタ係数は、第1の音入力装置21が検出した騒音n(k)を打ち消して制御点Pzでの音圧を0にする打消信号y(k)を生成するために、上述したように、−[^T]に相当するように決定される。
係数決定部117は、Filtered-X LMS(LMS:Least Mean Square)アルゴリズムのような周知のアルゴリズムを用い、A/D変換器124,125のサンプリング周期毎に、消音フィルタ111のフィルタ係数を更新する。
ここまで説明した構成では、消音信号y(k)は、第1の音入力装置21が検出した音波s(k)により生成されている。フィルタ112に設定された伝達関数[^F]と第2のフィルタ1113に設定された伝達関数[^C −1]とは予測値であり、また、消音フィルタ111の伝達関数−[^T]は動的に更新されるが、フィルタ112,113と同様に予測値である。したがって、上述した構成による制御を行った場合、制御点Pzにおいては、予測誤差が生じて音圧が0にならない場合がある。
そのため、本実施形態は、第2の音入力装置22を用いて制御点Pzの音波d(k)を検出し、この音波d(k)の音圧を0に近づけるように、消音フィルタ111のフィルタ係数を調整する構成を採用している。第1の音入力装置21が検出する音波s(k)と同様に考えると、音波d(k)は、音源2から発生した騒音n(k)の成分と、音出力装置23が出力した打消音z(k)の成分とを含んでいる。
ただし、第1の音入力装置21が騒音n(k)を検出する場合、第2の音入力装置22が検出する騒音n(k)の成分は[T]n(k)であり、第2の音入力装置22が検出する打消音z(k)の成分は[C]z(k)である。すなわち、d(k)=[T]n(k)+[C]z(k)である。打消音z(k)は、音出力装置23に打消信号y(k)を与えることにより発生する。また、打消信号y(k)は、伝達関数が[^C]であるフィルタ113に与えられ,フィルタ113から[^C]y(k)が出力される。
フィルタ113から出力された信号[^C]y(k)は減算器115に入力される。減算器115は、この信号[^C]y(k)を、音波d(k)に相当する誤差信号e(k)から減算し、e(k)−[^C]y(k)を出力する。この信号e(k)−[^C]y(k)は、さらに減算器116に入力され、消音フィルタ111を構成するフィルタ1112から出力される信号[^T]r(k)が減算される。
結局、減算器116から出力される信号は、e(k)−[^C]y(k)−[^T]r(k)になる。ここで、信号y(k)は、−[^T]r(k)[^C −1]である。すなわち、[^C]y(k)=−[^C][^C −1][^T]r(k)であり、第2のフィルタ1113による遅延が除去されていれば、減算器116から出力される信号には、伝達関数[^C]に関する成分が含まれない。
このように、減算器116から出力される信号に含まれる情報は、制御点Pzの音圧を反映しており、かつ伝達関数[^T]の推定値と真の伝達関数[T]との誤差であると言える。この誤差は、係数決定部117にフィードバックされる。上述したように、減算器116から出力される信号は、伝達関数[^T]で決まるから、係数決定部117は、伝達関数[^T]のフィルタ係数のみを決定すればよい。
係数決定部117は、騒音n(k)に相当する参照信号r(k)だけではなく、減算器116から出力される誤差に相当する信号も用いて消音フィルタ111のフィルタ係数を決定する。Filtered-X LMSアルゴリズムでは、時刻kにおけるフィルタ係数を[W(k)]とするとき、ステップパラメータμと誤差ε(k)と入力信号ベクトル[X(k)]とを用いて、次式で時刻(k+1)のフィルタ係数を定める。
[W(k+1)]=[W(k)]+2με(k)[X(k)]
本実施形態において、誤差ε(k)は、減算器116から出力される信号の大きさの瞬時値が用いられる。つまり、係数決定部117は、伝達関数[T(k)]を決定するから、上式は、以下のように書き換えられる。
[T(k+1)]=[T(k)]+2με(k)[r(k)]
消音フィルタ111のフィルタ係数を定めるために用いる上式は再帰式であり、フィルタ係数は、再帰的に演算を繰り返すことによって収束する。ここに、ステップパラメータμは定数であって、再帰的演算の毎回の繰り返しにおける補正量を制御するパラメータである。
フィルタ1112において伝達関数[T]に相当する伝達関数[^T]が決定されると、この伝達関数[^T]は遅延回復が行われる。つまり、遅延回復部1114はフィルタ1112に設定されたフィルタ係数の左シフトを行う。さらに、遅延回復がなされたフィルタ係数は、フィルタ1111に与えられ、打消信号y(k)の生成に用いられる。
上述したように、本実施形態は、消音フィルタ111において打消信号y(k)を生成するために必要な伝達関数[T]および伝達関数[C−1]のうち、伝達関数[C−1]は固定にして、伝達関数[T]のみを調整する構成を採用している。したがって、係数決定部117は、伝達関数[T]のみを決定すればよいのであって、伝達関数[T]および伝達関数[C]を同時に決定する必要があった従来構成と比較すると、処理負荷の軽減が期待できる。
また、上述したように、係数決定部117ではフィルタ係数を決定するために再帰的な演算を行うから、最適なフィルタ係数に収束するまで、演算を複数回繰り返すことが必要である。フィルタ係数を決定するために用いられるアルゴリズムでは、フィルタ係数が収束するまでの繰り返し回数(収束速度)は、入力相関行列(入力信号ベクトルの期待値を成分とする行列)の固有値に関係していることが知られている。ここに、フィルタ係数を決定するアルゴリズムは、本実施形態では、Filtered-X LMSアルゴリズムを採用しているが、最急降下アルゴリズムなども適用可能である。
いま、フィルタ1112の伝達関数[^T(k)]の成分を、[tn(k)]=[t1(k),t2(k),…,t16(k)]とし、伝達関数[^T(k)]の固有値を、t1−t2平面に射影すると、図3のようになる。すなわち、係数決定部117がフィルタ係数を求めるたびに、固有値は、図3に示すような楕円の中心に向かって収束していく。楕円の長軸は最小固有値軸、楕円の短軸は最大固有値軸を表す。
図4に誤差信号e(k)のパワー(誤差パワー)と、フィルタ係数を定める演算の更新回数(繰り返し回数)との関係を示す。図4では、フィルタ係数の収束する限界値を特性(1)で表し、特性(2)は最大固有値、特性(3)は最小固有値を表している。図4は後述する比較例の特性であるが、固有値の関係を示すために用いている。、
図5は、音源2からホワイトノイズとみなせる音波(上側に示す特性)が出力されている場合に、フィルタ係数の更新回数が増加するに従って、制御点Pzの音圧(下側に示す特性)が低下する動作を示している。図5(a)〜(e)は、それぞれ更新回数が10回、20回、40回、80回、160回の場合を示している。図5によれば、更新回数の増加とともに制御点Pzの音圧が低下すること、および音圧の低下が低周波領域から始まり、高周波領域は収束が遅いことがわかる。言い換えると、高周波領域の収束の速度を高めることによって、音源2から発生する騒音に追従して制御点Pzにおける音圧を低減できると言える。
上述したように、本実施形態は、消音フィルタ111に必要である伝達関数[^T]と伝達関数[^C −1]とのうち、伝達関数[^T]のみを可変にする構成を採用した。このことにより、音源2から発生する騒音の周波数範囲が広帯域に及んでいる場合でも、フィルタ係数を短時間で収束させることが可能になる効果が得られた。また、音源2から発生する騒音の特性にもよるが、本実施形態の構成を採用することによって、フィルタ係数の収束に必要な時間は、従来構成と比較して5分の1程度に短縮されるという結果が得られた。なお、本実施形態の構成において、伝達関数[^F]、伝達関数[^C]、伝達関数[^C −1]は、伝達関数[F]、伝達関数[C]の実測値に基づいて別途に定められる。
図6に本実施形態の構成を採用した場合の動作例を示し、図7に従来の構成を採用した場合の動作を比較例として示す。図6、図7において、(a)は伝達関数の関係を模式的に表した図であり、(b)は更新回数を160回とした場合の周波数特性を表した図であり、(c)は誤差パワーと更新回数との関係を示す図である。
図7に示す比較例では、可変であるフィルタ係数[W]が、−[^T][^C]で表され、伝達関数−[^T]と伝達関数[^C]との両方が混在して調節されている(図7(a)参照)。図7(b)は、更新回数が160回の場合の例であって、この構成を採用した場合(図7(b)の下側の特性)、制御点Pzでの音圧は、装置を動作させない場合(図7(b)の上側の特性)と比較すると、音圧はおおむね30dB程度低下する。また、図7(b)からわかるように、音圧が低下する程度には周波数依存性があり、図示例では4000Hz付近での音圧の抑制効果が低いことがわかる。
図4に示したように、装置を動作させると、最小固有値および最大固有値は、更新回数の増加に伴って限界値に収束することになる。図7(a)に示す構成を採用した場合、図7(c)のように、最大固有値はただちに限界値に収束するが、最小固有値は限界値に収束するまでに時間を要することになる。そのため、図7(c)において一番上に示されている収束特性は、比較的緩やかに限界値に向かうことになる。なお、図7(c)において、ステップパラメータμは、0.5425に設定した。
一方、本実施形態の構成では、可変であるフィルタ係数[W]が、−[^T]で表されている。つまり、伝達関数−[^T]が単独で調節される(図6(a)参照)。図6(b)は、更新回数が160回の場合の例であって、この構成を採用した場合(図6(b)の下側の特性)、制御点Pzでの音圧は、装置を動作させない場合(図6(b)の上側の特性)と比較すると、音圧はおおむね250dB程度低下する。しかも、図7に示した構成例よりも周波数依存性が大幅に低減されていることがわかる。
図6(a)に示す構成を採用した場合、最小固有値はただちに限界値に収束し、図6(c)のように、最大固有値(左側の特性)も比較例と同様に迅速に限界値に収束する。そのため、図6(c)において右側に示されている収束特性は、急速に限界値に収束することになる。なお、図6(c)において、ステップパラメータμは2.7566に設定した。本実施形態の構成では、ステップパラメータμを比較的大きく設定することが可能になり、このことも収束を速める一因になっている。
(実施形態2)
実施形態1の構成では、消音フィルタ111は、第1のフィルタ(フィルタ1111,フィルタ1112)と第2のフィルタ1113とを備え、第2のフィルタ1113で生じる遅延を回復させるために、遅延回復部1114を備えている。これに対して、本実施形態は、図8に示す構成の消音フィルタ111を採用している。実施形態1において説明したように、遅延回復部1114は信号(データ)を左にシフトし、特別な演算を伴わない単純な処理を行う。
本実施形態における消音フィルタ111は、伝達関数−[^T]のフィルタ係数が可変である第1のフィルタ1115を備え、第1のフィルタ1115に遅延回復の機能が付加されている。第1のフィルタ1115の出力は、第2のフィルタ1113に入力されて消音信号y(k)の生成に用いられるだけではなく遅延処理部118を通して減算器116にも入力される。遅延処理部118を設けているのは、第1のフィルタ1115の出力は、実施形態1に示したフィルタ1112の出力に比べると、遅延回復を行っている分だけ信号(データ)が進んでいるからである。
本実施形態において、第1のフィルタ1115は、第2のフィルタ1113でのDタップの遅延に対して遅延回復を行うから、遅延処理部118はDタップの遅延を行うように構成される。すなわち、遅延処理部118が設けられていることにより、減算器116には実施形態1と同様の信号が与えられることになる。
遅延処理部118が設けられているのと同様の理由で、係数決定部117の前段にDタップの遅延を行う遅延処理部119が設けられる。すなわち、係数決定部117に入力される一方の信号は遅延処理部118でDタップの遅延が生じるから、係数決定部117に入力される他方の信号についても同様にDタップの遅延を生じさせるために、遅延処理部119を設けている。したがって、係数決定部117では、同時刻の信号を用いて第1のフィルタ1115のフィルタ係数[W]を定めることが可能になる。
本実施形態の他の構成および動作は実施形態1と同様であるから説明を省略する。
上述した実施形態は本発明の一例であって、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
たとえば、上記構成例では、伝達関数[^C −1]の第2のフィルタ1113が、消音のためにフィルタ係数が調節される第1のフィルタの後段に設けられているが、前段に設けることも可能である。すなわち、実施形態1であれば、フィルタ1111の前段に第2のフィルタ1113が設けられ、実施形態2であれば、第1のフィルタ1115の前段に第2のフィルタ1113が設けられる構成を採用することが可能である。また、実施形態2の構成において、第1のフィルタ1115において遅延回復の処理を行っているが、遅延回復の処理を第1のフィルタ1115から分離することも可能である。
10 信号処理装置
20 変換装置
21 第1の音入力装置
22 第2の音入力装置
23 音出力装置
111 消音フィルタ
117 係数決定部
1111 第1のフィルタ
1113 第2のフィルタ
1114 遅延回復部

Claims (6)

  1. 音波が伝播する方向において、第1の音入力装置と音出力装置と第2の音入力装置とが所定の位置関係に配置されている変換装置とともに用いられ、前記第2の音入力装置に音波が入力されないように打消音を前記音出力装置から出力させるための打消信号をデジタル信号処理により生成する信号処理装置であって、
    前記第1の音入力装置から出力された参照信号に基づいて前記打消信号を生成する消音フィルタと、
    前記第2の音入力装置から出力された誤差信号および前記参照信号を用いて、前記消音フィルタのフィルタ係数を更新する係数決定部とを備え、
    前記消音フィルタは、
    前記第1の音入力装置と前記第2の音入力装置との間の伝達関数に相当するフィルタ係数が前記係数決定部により設定される第1のフィルタと、
    前記音出力装置と前記第2の音入力装置との間の伝達関数の逆関数に相当するフィルタ係数が固定に設定された第2のフィルタとを備え、
    前記参照信号を前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタに通して前記打消信号を生成するように構成されており、
    前記第2のフィルタにより信号が遅延する場合に、遅延を回復させるように前記第1のフィルタに入力される信号のタップをシフトさせることにより信号を進めさせる遅延回復部をさらに備える
    ことを特徴とする信号処理装置。
  2. 前記第1のフィルタの後段に前記第2のフィルタを備える
    請求項1記載の信号処理装置。
  3. 前記遅延回復部は、前記第1のフィルタに入力される信号のタップをシフトさせることにより空いたタップに0を割り当てる
    請求項1又は2記載の信号処理装置。
  4. 前記第1のフィルタは、前記第2のフィルタにより信号が遅延する場合に、遅延を回復させるように信号を進める機能を有する
    請求項1又は2記載の信号処理装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の信号処理装置と、前記変換装置とを備えることを特徴とする能動騒音制御装置。
  6. 音波が伝播する方向において、第1の音入力装置と音出力装置と第2の音入力装置とが所定の位置関係に配置されている変換装置と、前記第2の音入力装置に音波が入力されないように打消音を前記音出力装置から出力させるための打消信号をデジタル信号処理により生成する信号処理装置とを備える能動騒音制御装置により、騒音を制御する方法であって、
    前記信号処理装置が、
    前記第1の音入力装置から出力された参照信号に基づいて前記打消信号を生成する第1の処理と、
    前記第2の音入力装置から出力された誤差信号および前記参照信号を用いて消音フィルタのフィルタ係数を更新する第2の処理とを行い、
    前記第1の処理は、
    前記参照信号を、前記第1の音入力装置と前記第2の音入力装置との間の伝達関数に相当するフィルタ係数が前記第2の処理により設定される第1のフィルタと、前記音出力装置と前記第2の音入力装置との間の伝達関数の逆関数に相当するフィルタ係数が固定に設定された第2のフィルタとに通して前記打消信号を生成し、
    前記第2のフィルタにより信号が遅延する場合に、遅延を回復させるように前記第1のフィルタに入力される信号のタップをシフトさせることにより信号を進めさせる
    ことを特徴とする能動騒音制御方法。
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