JP6212427B2 - エラストマー含有繊維形状複合体基材およびその成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、高い剛性と制振性、耐候性を兼ね揃え、かつ賦形成形性に優れる繊維強化樹脂複合体基材、およびその成形体に関する。
炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維と樹脂材料からなる繊維強化樹脂複合体は、軽量であり、比強度、比剛性、制振性に優れているため、電気・電子用途、土木・建築用途、スポーツ用品用途、自動車用途、航空機用途などに広く用いられている。これらの用途のうち、特に高い剛性を有する連続繊維強化樹脂複合体においては、制振性が十分でないことが多い。制振性は、例えば電気・電子用途においては、モーターなどの共振による騒音や締結部の緩みの防止、土木・建築用途では地震、強風などによる建物の揺れの抑制など、極めて重要な特性であり、この改善のために様々な検討がなされている。
特許文献1では、スチレン系樹脂、制振性を有する樹脂、ガラス繊維、および鱗片状充填材から構成される、制振性を有する繊維強化樹脂複合体が開示されている。
また、特許文献2においても、メタクリル酸エステル系樹脂、制振性を有する樹脂、および無機充填材から構成される、制振性を有する繊維強化樹脂複合体が開示されている。
特開平10−67901号公報 特開平7−90126号公報
しかしながら、特許文献1および2では、溶融混練により複合体を得るため、無機充填材が成形中に折損すること、無機充填材の比率が低いことなどから、剛性が十分でなく、薄肉・単独での構造体などへの適用は難しかった。
本発明の目的は、剛性、制振性、耐候性を兼ね揃え、かつ賦形成形性に優れる繊維強化樹脂複合体基材(以下、単に「複合基材」と称することがある)、およびその成形体を提供することにある。
本発明者などは、上記課題について鋭意検討した結果、制振性を有するエラストマーを含む樹脂からなる繊維と強化繊維とからなる複合基材を、熱プレス成形することにより、剛性、制振性、耐候性に優れ、複雑な形状を有する成形体が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、強化繊維と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維とを用いた複合基材であり、該エラストマーが、ガラス転移温度が−40〜30℃の範囲にある重合体、またはガラス転移温度が−40〜30℃の範囲にある重合体部分をその分子構造中に有する重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体である複合基材である。
前記エラストマーは、ビニル芳香族化合物からなる数平均分子量2500〜60000の重合体ブロックと、共役ジエン系化合物からなる数平均分子量10000〜200000の重合体ブロックとからなる、数平均分子量が30000〜300000であるブロック共重合体、および/またはその水添物であることが好ましい。
前記複合基材は、(1)強化繊維布帛と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維が含まれる布帛との積層物、(2)強化繊維と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維との交織織物、(3)強化繊維と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維との混繊糸が含まれる織編物、からなる群より選択された少なくとも1つの形態を有することが好ましい。
前記エラストマーを含む樹脂からなる繊維は、前記エラストマー(A成分)と、易溶解性または易分解性熱可塑性樹脂(B成分)とで構成され、繊維断面において、A成分が芯となりB成分が被覆している複合繊維であり、前記複合繊維において、易溶解性または易分解性熱可塑性樹脂を溶脱または分解することを特徴とすることが好ましい。
前記強化繊維は炭素繊維であることが好ましい。
前記複合基材において、強化繊維100質量部に対するエラストマーを含む樹脂からなる繊維の割合が、20〜100質量部であることが好ましい。
また本発明は、前記複合基材を一枚ないしは複数枚積層したものに対し、加熱加圧成形を行って、エラストマーを含む樹脂からなる繊維を一部または全部溶融させることにより得られる繊維強化樹脂複合体である。
本発明によれば、制振性を有するエラストマーを含む樹脂からなる繊維と強化繊維とからなる複合体基材を熱プレス成形することで、剛性、制振性、耐候性に優れ、複雑な形状を有する成形体を提供することが出来、一般産業資材分野、電気・電子分野、土木・建築分野、スポーツ用品分野、航空機・自動車・鉄道・船舶分野、農業資材分野、光学材料分野、医療材料分野などをはじめとして多くの用途に極めて有効に使用することができる。
本発明の複合基材を得るための複合繊維の複合形態を示す断面図。 本発明の複合基材を得るための複合繊維の複合形態を示す他の断面図。 本発明の複合基材を得るための複合繊維の複合形態を示す他の断面図。 本発明の複合基材を得るための複合繊維の複合形態を示す他の断面図。 本発明の複合基材を得るための複合繊維の複合形態を示す他の断面図。 本発明の複合基材を成形して複合体を得るために用いた金型の模式図。
以下、本発明に関し具体的に説明する。
(エラストマーを含む樹脂)
本発明の複合基材を構成するエラストマーは、ガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にある重合体、およびガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にある重合体部分をその分子構造中に有する重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体より構成される。なお、ここでいうガラス転移温度は、示差走査熱分析法(DSC)により測定したときのガラス転移温度をいい、その詳細については以下の実施例の項に記載するとおりである。
本発明のエラストマーは、該エラストマー自体のガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にあるか、またはガラス転移温度が上記した−40℃〜30℃の範囲にある重合体部分を有していることによって、常温付近で大きな正接損失(以下「tanδ」ということがある)を有しており、それによって、本発明の繊維強化樹脂複合体に高い制振性能を付与する。熱可塑性エラストマー(A成分)の代わりに、ガラス転移温度が−40℃よりも低いかまたは30℃よりも高い重合体、あるいはガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にある重合体部分を分子構造中に持たない重合体を用いて同様の複合基材を製造しても、そのような複合基材から得られる繊維強化樹脂複合体は、その使用温度において制振性能を示さず、本発明の目的を達成することができない。
本発明では、エラストマーとして、ガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にある重合体、および/またはガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にある重合体部分を分子構造中に有している重合体であればいずれも使用できる。ガラス転移温度が−40℃〜30℃の重合体、およびガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にある重合体部としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの共役ジエン系化合物の1種から得られる単独重合体、前記共役ジエン系化合物のうちの2種以上からなるランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体;あるいは前記した重合体または共重合体からなる重合体部分を分子構造中に有する重合体を挙げることができる。
そして、本発明では、エラストマーとして、ガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にある重合体部分を分子構造中に有している重合体が用いられることが重要である。そのうちでも、その分子構造中に、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロック(a)を分子中に有し、かつガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にある重合体ブロック(b)を分子中に有する共重合体(以下、ブロック共重合体(A1)と称することがある)が好ましく用いられる。前記のブロック共重合体(A1)において、重合体ブロック(a)としては、ビニル芳香族化合物単独だけでなく、ビニル芳香族化合物から主としてなる単量体混合物の重合により得られる重合体ブロックもまた挙げることができる。その際のビニル芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどを挙げることができ、スチレンが最も好ましい。また、前記のブロック共重合体(A1)におけるガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にある重合体ブロック(b)としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの共役ジエン系化合物の1種または2種以上を重合して得られる重合体および/または共重合体からなる重合体ブロック(以下、共役ジエン系重合体ブロック(b)と称することがある)が好ましい。
特に、本発明では、ブロック共重合体(A1)が、上記したようなビニル芳香族化合物からなる数平均分子量2500〜60000のビニル芳香族化合物重合体ブロックからなる重合体ブロック(a)と、共役ジエン系化合物からなるガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲でかつ数平均分子量10000〜200000のジエン系重合体ブロックからなる重合体ブロック(b)とを有していて、その数平均分子量が30000〜300000であるブロック共重合体であるのが好ましい。
その際に、上記したブロック共重合体(A1)では、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロック(a)の含有割合が、ブロック共重合体(A1)の質量に基づいて5〜60質量%であるのが好ましい。ブロック共重合体(A1)におけるビニル芳香族化合物からなる重合体ブロック(a)の割合が5質量%未満であるとブロック共重合体(A1)、ひいては該ブロック共重合体(A1)から構成される複合基材を用いて得られた複合体の機械的性質が不十分になる傾向がある。一方、60質量%を超えるとブロック共重合体(A1)の粘度が高くなって強化繊維への含浸が困難になり、また得られる繊維強化樹脂複合体の制振性能の向上効果が十分に発揮されないことがある。
また、上記したブロック共重合体(A1)において、その共役ジエン系重合体ブロック(b)は、イソプレンの単独重合体ブロック、イソプレンとブタジエンとの共重合体ブロック、またはそれらの両方であるのが好ましい。共役ジエン系重合体ブロック(b)が、イソプレンとブタジエンとの共重合体ブロックである場合は、イソプレンとブタジエンの共重合形態はランダム、ブロック、テーパードまたはそれらの2種以上の混在する共重合形態のいずれであってもよい。そして、ブロック共重合体(A1)が上記したビニル芳香族化合物からなる重合体ブロック(a)および共役ジエン系重合体ブロック(b)からなる場合は、ブロック共重合体(A1)の数平均分子量が80000〜250000の範囲にあることが樹脂含浸性などの点からより好ましい。
また、エラストマーが、上記したような重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)とがブロック状に結合しているブロック共重合体である場合は、そのブロック形態は、a(ba)nまたは(ab)n(式中nは1以上の整数、好ましくは1〜10の整数を示す)で表されるブロック形態であるものが好ましく用いられる。そのうちでも、熱可塑性エラストマー(A成分)としては、a−b−aで表されるブロック形態を有するブロック共重合体がより好ましく用いられる。
エラストマーとして好ましく用いられる上記したようなブロック共重合体において、上記した共役ジエン系重合体ブロック(b)では、該ブロック中の炭素−炭素二重結合の一部または全部が水素添加(以下「水添」ということがある)されていてもよい。水添して使用する場合の水添率は、複合繊維およびそれから得られる熱可塑性エラストマー布帛に要求される耐熱性、耐候性に応じて適宜選択することができる。耐熱性および耐候性の点からはその水添率が一般に50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、より高度な耐熱性および耐候性が必要な場合は80%以上の水添率であることがさらに好ましい。エラストマーにおける共役ジエン系重合体ブロック(b)が水添されていると、紡糸する際の加熱や、複合体成形時の加熱に対しての安定性も向上する。
(複合基材)
本発明の複合基材は、前記エラストマーを含む樹脂からなる繊維と、強化繊維とを用いることが重要である。なかでも、(1)強化繊維布帛と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維が含まれる布帛との積層物、(2)強化繊維と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維との交織織物、(3)強化繊維と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維との混繊糸が含まれる織編物、からなる群より選択された少なくとも1つの形態を有することを特徴とすることが好ましい。
本発明の複合基材は、上述したように布帛の積層物や交織織物、織編物などの例が挙げられるが、いずれの形態の場合でも目付けは30〜1000g/mであることが好ましい。目付けが30g/mより小さい場合、地合斑が大きくなり、また工程通過性が悪化するので好ましくない。目付けが1000g/mより大きい場合は、加熱加圧成形時における強化繊維への樹脂の含浸性が悪化するので好ましくない。より好ましくは40〜700g/mであり、さらに好ましくは50〜500g/mである。なお、詳細は後述するが、本発明の複合基材は一枚ないしは複数枚積層したものに対して加熱加圧成形を行うことで、繊維強化樹脂複合体が得られる。該複合基材を複数枚積層した場合の総目付けについては、加熱加圧成形できる限り任意に設定できる。
前記複合基材において、強化繊維100質量部に対するエラストマーを含む樹脂からなる繊維の割合は、20〜100質量部であることが好ましい。20質量部未満では樹脂が不足し、成形体中の空隙の発生、表面が粗くなるなど、成形性に劣り、100質量部を超えた場合には強度・弾性率が不足するため好ましくない。より好ましくは25〜95質量部であり、さらに好ましくは30〜90質量部である。
(エラストマーを含む樹脂からなる繊維)
本発明の複合基材を構成するエラストマーを含む樹脂からなる繊維を得る方法として、エラストマーを含む樹脂(A成分)、および易溶解性熱可塑性樹脂(B成分)とで構成され、繊維断面において、A成分が芯となりB成分が被覆している複合繊維から、易溶解性または易分解性熱可塑性樹脂を溶解または分解する方法が挙げられる。A成分単独の繊維では繊維同士の膠着が激しく、製造された繊維を解舒する際に、パッケージからの糸離れいわゆる解舒性が劣り、毛羽が発生、繊維の切断が生じるといった問題を有することから、本発明の複合基材を得る工程において、工程通過性が悪い。一方で、上記のように複合繊維を用いた場合は、解舒性に優れる樹脂がエラストマーを含む樹脂を覆っているため、複合基材を得る工程において、工程通過性に優れ、かつ任意の工程で鞘成分の樹脂を溶脱することが出来るため、本発明の複合基材を構成する繊維として適している。
本発明の複合繊維のA成分であるエラストマーは、250℃における溶融粘度が700〜3000poiseであることが好ましい。該溶融粘度が3000poiseを超える場合には繊維化時の高速紡糸性が著しく乏しくなる一方で、700poise未満となる場合には紡糸中に断糸しやすく生産性が乏しくなるばかりでなく、得られた繊維の強度も低いものとなるため好ましくない。なお、該溶融粘度は、例えば、東洋精機製作所社製キャピログラフ1C PMD−Cを用いて、250℃、剪断速度1000sec−1の条件で測定することができる。
また、A成分は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤の例としては、成形加工時の流動性を向上させるためのパラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの鉱物油軟化剤;耐熱性、耐候性などの向上または増量などを目的とする炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの無機充填剤;補強のためのガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維または有機繊維;熱安定剤;酸化防止剤;光安定剤;粘着剤;粘着付与剤;可塑剤;帯電防止剤;発泡剤などを挙げることができる。これらの添加剤の中でも、耐熱性、耐候性をさらに良好なものとするために、熱安定剤、酸化防止剤などを添加することが実用上好ましい。
本発明の複合繊維のB成分である易溶解性(または易分解性)熱可塑性樹脂としては、溶融紡糸可能であるとともに、A成分であるエラストマーを含む樹脂と比べ、相対的に溶媒または薬剤に対して溶解または分解しやすいものであれば、どのようなものでも採用できる。このような易溶解性樹脂としては、水(温水を含む)、アルカリ、酸などにより溶解・分解可能な熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましくは、アルカリに対して溶解・分解可能な易溶解性ポリエステル系樹脂、水に対して溶解・分解可能な熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。また、易分解性樹脂として、生分解性である脂肪族ポリエステルやポリ乳酸などを挙げることができる。
本発明のB成分として易溶解性ポリエステル系樹脂を使用する場合、アルカリ溶解速度が速いポリエステルを用いることが好ましく、例えば、極性基含有共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどを採用することができる。
極性基含有共重合ポリエステルとしては、エステル形成スルホン酸金属塩化合物(例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸など)を1〜5モル%と、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリC1−4アルキレングリコール)を5〜30モル%と従来用いられているジオール成分およびジカルボン酸成分とを共重合してなる共重合ポリエステルなどが挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸;ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンアジペート)などの脂肪族ジオールと脂肪族カルボン酸とのポリエステル;ポリ(グリコール酸)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(6−ヒドロキシカプロン酸)などのポリヒドロキシカルボン酸;ポリ(ε−カプロラクトン)やポリ(δ−バレロラクトン)などのポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)などが挙げられる。これらの脂肪族ポリエステルのうち、ポリ乳酸が好ましく、ポリ乳酸は、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸またはそれらの混合物であってもよい。
易溶解性ポリエステル系樹脂としては、例えば、100℃の2%水酸化ナトリウム水溶液に浴比1:30で浸漬した際に、例えば60分以内、好ましくは45分以内、より好ましくは30分以内、特に好ましくは15分以内にほぼ完全に溶解(分解)するようなアルカリ易溶解性ポリエステルがより好ましい。
一方、本発明のB成分として水溶性の熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合、用いるポリビニルアルコール重合体は、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.99モル%(好ましくは、95〜99モル%)、融点が160〜230℃のポリビニルアルコールが好ましく、ホモ樹脂であっても共重合体であってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、エチレン、プロピレンなど炭素数が4以下のα−オレフィンなどで0.1〜20モル%(好ましくは5〜15モル%)変性された共重合ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
水溶性の熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、100℃の熱水に浴比1:30で浸漬した際に、例えば60分以内、好ましくは50分以内、より好ましくは30分以内、特に好ましくは15分以内にほぼ完全に溶解(分解)するような熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
(複合繊維の製造方法)
本発明の複合繊維は、A成分およびB成分の組み合わせさえ決定されれば、複合繊維化については従来公知の複合紡糸装置を用いて繊維化することが可能である。低速、中速で溶融紡糸した後に延伸する方法、高速による直接紡糸延神方法、紡糸後に延伸と仮撚を同時にまたは続いて行う方法などの任意の製糸方法で製造することができる。
本発明の複合繊維において、A成分とB成分の複合比率は、A:Bが90:10〜40:60(質量比)であることが好ましく、さらに好ましくは85:15〜60:40(質量比)である。A成分が90質量%を超える場合には繊維化時の高速紡糸性が著しく乏しくなり、40質量%未満の場合には制振性能が著しく乏しくなるため好ましくない。
本発明の複合繊維の断面において、B成分が繊維表面を覆っていることが好ましい。繊維パッケージからの解舒性が良好な繊維製品を確保するために、B成分がA成分の全周長の80%以上を被覆していることが好ましい。被覆率が80%未満の場合には、パッケージからの糸離れ、すなわち解舒性に劣るため好ましくない。より好ましくは90〜100%であり、さらに好ましくは95〜100%である。
本発明の複合繊維の複合形態は、アルカリ処理、水処理などによってB成分が溶解除去可能であるとともに、A成分にひび割れが生じない範囲であれば、同芯型、偏芯型、多芯型でもよい。図1に示すようなA成分が芯成分、B成分が鞘成分である芯鞘型複合構造、図2に示すようなA成分を島成分として、B成分が被覆する海成分である海島型複合構造、図3に示すようなA成分を芯として、その周囲を断続的にB成分が被覆する複合構造、図4に示すような三角形状のA成分をB成分が被覆する複合構造であってもよい。なお、A成分の繊維断面形状は、円形断面形状であってもよく、三角形、偏平、多葉型などの異形断面形状であってもよい。さらに図5に示すようなA成分の内部に中空部を設けることも可能であり、一孔中空、二孔中空以上の多孔中空などの中空形状など、各種の断面形状としても何ら差し支えない。これらのうち、複合繊維は、A成分が芯成分、B成分が鞘成分である芯鞘型複合構造を有するのが好ましい。
本発明の複合繊維の単繊維繊度は、目的に応じて適宜設定することが可能であり、特に制限されず、例えば、0.3〜50dtex、好ましくは0.3〜40dtexの範囲から選択できる。なお、本発明の複合繊維では、糸切れ性を防止しつつ、6dtex以下の細繊度の繊維を得ることができる。
本発明の複合基材を前記複合繊維より得る際に必要となる、複合繊維からB成分を取り除く工程は、加熱加圧成形前であれば、任意のタイミングで行って良い。ただし、工程通過性の観点から、加熱加圧成形の直前にB成分を除去することが好ましい。
(強化繊維)
本発明で用いる強化繊維については、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、有機繊維であっても無機繊維であってもよく、また、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、セラミック繊維、玄武岩繊維、各種メタル繊維(例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、チタン、ステンレスなど)を例示することができ、また、有機繊維としては、全芳香族ポリエステル系繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、アラミド繊維、ポリスルフォンアミド繊維、フェノール樹脂繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維などを例示することができる。これらの強化繊維のうち、力学物性、剛性の観点から、炭素繊維が好適に用いられる。
(繊維強化樹脂複合体)
本発明の複合基材を一枚ないしは複数枚積層したものに対し、加熱加圧成形を行って、エラストマーを含む樹脂からなる繊維を一部または全部溶融させることにより繊維強化樹脂複合体を得ることができる。該繊維強化樹脂複合体において、前記エラストマーを含む樹脂からなる繊維は、一部または全部溶融して強化繊維に含浸することによって、マトリックス樹脂の役割を果たす。
加熱加圧成形方法については特に制限はなく、スタンパブル成形や加圧成形、真空圧着成形、GMT成形のような一般的な圧縮成形が好適に用いられる。その時の成形温度は用いるエラストマーを含む樹脂からなる繊維の流動開始温度や分解温度に併せて設定すればよい。
加熱加圧成形する際の圧力も特に制限はないが、通常は0.05N/mm以上の圧力で行われる。加熱加圧成形する際の時間も特に制限はないが、長時間高温に曝すと樹脂が劣化してしまう可能性があるので、通常は30分以内であることが好ましい。また、得られる繊維強化樹脂複合体の形状には特に制限は無く、適宜設定可能である。目的に応じて、仕様の異なる複合基材と複数枚積層したり、あるいはある大きさの金型の中に別々に配置したりして、加熱加圧成形することも可能である。そして、目的に応じて、一度加熱加圧成形して得られた繊維強化樹脂複合体を、再度加熱加圧成形することも可能である。
上記のように得られた繊維強化性樹脂複合体は、24℃での曲げ弾性率が5GPa以上であることが好ましい。曲げ弾性率が5GPaより小さい場合、使用が限られるので好ましくない。好ましくは、曲げ弾性率が6GPa以上であり、さらに好ましくは7GPa以上である。
また、本発明の繊維強化樹脂複合体は、その厚みが0.5mm以上であることが好ましい。0.5mmより薄い場合、得られる耐熱性樹脂複合体の強力が低くなったり、生産コストが高くなったりするため、好ましくない。好ましくは、0.7mm以上、より好ましくは1mm以上である。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例により何等限定されるものではない。なお以下の実施例において、樹脂のガラス転移温度をはじめとする各項目は、下記の方法により測定した。
[ガラス転移温度 ℃]
エラストマーを含む樹脂のガラス転移温度は、重合体のペレットの一部を採取して、示差熱走査型熱量計(メトラー社製「TA−4000」)を使用して昇温速度10℃/分にて測定した。
[制振性能(tanδ)]
制振性能の値は、下記実施例で得た複合体を幅3mm、厚み1.5mm、試料長15mmに切り出し、GABO社製の動的粘弾性装置「EPLEXOR 150N」を用いて、周波数10Hz、昇温速度3℃/minにて、−80℃から弾性率が低下する温度まで測定を行い、25℃でのtanδの値を求めた。この値が大きいほど、常温付近での制振性能の優れることを示す。
[曲げ弾性率 GPa]
繊維強化樹脂複合体に関して、24℃における曲げ弾性率は、JISK7074に準拠して測定した。
[含浸性]
強化繊維基材の含浸性に関する評価は、繊維強化樹脂複合体の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、断面中にボイドが占める面積比率により以下の通り3段階で評価した。
○:ボイドが占める面積が10%未満
△:ボイドが占める面積が10%以上30%未満
×:ボイドが占める面積が30%以上
[賦形成形性]
強化繊維基材の賦形成形性に関し、図6のような金型を用いて成形した際の、成形体の外観を観察することにより、以下の観点から3段階で評価した。
○:外観に皺などが見られず、良好である。
△:一部外観に皺などが見られる。
×:成形体の一部に穴などが見られ、不良である。
〔参考例1〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3000ml、開始剤として濃度10.5質量%のsec−ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液)4.6mlを仕込み、50℃に昇温した後、スチレンを320ml加えて60分間重合した。
その後、温度を40℃に低下させ、THFを25ml加え、イソプレンとブタジエンの50/50(質量比)の混合物を10ml加えて反応させ、3分間おいてから同量のイソプレンとブタジエンの50/50(質量比)の混合物を加えて反応させるという操作を繰り返して行い、最終的にイソプレンとブタジエンの混合物を合計450ml加え、その後さらに150分間反応を追い込んだ後、メタノール0.26mlで重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。上記で得られた重合反応溶液中に、オクチル酸ニッケルおよびトリエチルアルミニウムから形成されるチーグラー系水素添加触媒を水素雰囲気下に添加し、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間の水素添加反応を行ない、ブロック共重合体の水素添加物(1)を得た。
〔参考例2〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3000ml、開始剤として濃度10.5質量%のsec−ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液)19mlを仕込み、50℃に昇温した後、スチレンを120ml加えて60分間重合した。
その後、イソプレンを750ml加えて2時間重合を行い、さらにスチレン120mLを加えて3時間重合を行った。その後、メタノール1.1mlで重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。上記で得られた重合反応溶液中に、オクチル酸ニッケルおよびトリエチルアルミニウムから形成されるチーグラー系水素添加触媒を水素雰囲気下に添加し、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間の水素添加反応を行ない、ブロック共重合体の水素添加物(2)を得た
また、以下の例において、エラストマーとして使用した樹脂の詳細は表1の通りである。なお、前述したように、重合体ブロック(a)はビニル芳香族化合物重合体ブロックからなる重合体ブロックを表し、重合体ブロック(b)はガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲にある重合体ブロック、すなわち共役ジエン系重合体ブロックを表す。また、分子量とは、GPCを用いてポリスチレン換算により算出した数平均分子量を指す。
Figure 0006212427
[実施例1]
(手順1)A成分として、表1のエラストマー(1)を用い、一方、B成分として、分子量2000のポリエチレングリコール8モル%と5−ナトリウムスルホイソフタル酸を5モル%共重合した固有粘度[η]0.52のポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、A成分とB成分との複合比を75:25の質量比とし、それぞれを別々の押出し機で溶融させ、芯鞘断面で複合繊維を複合紡糸ノズルより吐出させた。
(手順2)ついで紡糸口金より吐出された糸条を、長さ1.0mの横吹付け型冷却風装置により冷却した後、連続して紡糸口金直下から1.3mの位置に設置した長さ1.0m、内径30mmのチューブヒーター(内壁温度:180℃)に導入してチューブヒーター内で延伸した後、チューブヒーターから出てきた繊維に油剤を付与し、引き続いてローラーを介して3000m/分の引取り速度で巻き取って、111dtex/24フィラメントの複合繊維を製造した。
(手順3)得られた複合繊維から、目付け52.4g/m、厚さ0.334mmの織物を得た。この織物に精練を施した後、可性ソーダ20g/L、浴比1:30のアルカリ水溶液(液温100℃)中に30分間浸漬し、B成分であるPETを選択的に溶解除去した。得られたエラストマー(1)のみからなる織物の目付けは39.3g/mであった。
(手順4)強化繊維は炭素繊維織物(東邦テナックス社製「W−3101:3K織物、目付け200g/m」)を用いた。炭素繊維織物の上下両面に、上記で得られたエラストマー(1)からなる織物を2枚ずつ重ね合わせ合わせたものを1セットの複合基材とし、それを6枚積層させた後(総目付け=2143g/m)、220℃で10分間圧縮成形して平板を成形した。成形時における複合基材の設置などの取扱性は良好であった。
(手順5)得られた複合体の外観は良好であり、また複合体断面内のボイドも殆ど観測されなかった。室温での曲げ弾性率は7.1GPaであり、剛性に優れるものであった。また、tanδは0.154と高い値を示し、制振性能に優れていた。
(手順6)手順4と同様の繊維基材を用いて図6に示す金型にて賦形成形を実施した。得られた成形体は目立った皺や基材の目ズレなども起こっておらず、外観は良好であった。成形時の取扱性に関しても良好であった。
[実施例2]
(手順1)実施例1の手順2で得られた複合繊維フィラメントを集束させ、総繊度を190texとし、この複合繊維と、炭素繊維フィラメント(東邦テナックス社製「HTS40:3Kフィラメント、総繊度200tex」)とを用い、経糸、緯糸ともに複合繊維と炭素繊維を交互に配した織物を得た。得られた織物の目付けは390g/mであった。
(手順2)得られた交織織物に精練を施した後、可性ソーダ20g/L、浴比1:30のアルカリ水溶液(液温100℃)中に30分間浸漬し、B成分であるPETを選択的に溶解除去した。得られたエラストマー(1)のみからなる繊維と炭素繊維との交織織物の目付けは342g/mであった。
(手順3)得られた交織織物を複合基材として6枚積層させた後(総目付け=2052g/m)、220℃で10分間圧縮成形して平板を成形した。成形時における強化繊維基材の設置などの取扱性は良好であった。
(手順4)得られた複合体の外観は良好であり、また複合体断面内のボイドも殆ど観測されなかった。室温での曲げ弾性率は7.5GPaであり、剛性に優れるものであった。また、tanδは0.146と高い値を示した。
(手順5)手順3と同様の繊維基材を用いて図6に示す金型にて賦形成形を実施した。得られた成形体は目立った皺や基材の目ズレなども起こっておらず、外観は良好であった。成形時の取扱性に関しても良好であった。
[実施例3]
(手順1)実施例1の手順2で得られた複合繊維フィラメントを集束させ、総繊度を140texとし、この複合繊維と炭素繊維フィラメント(東邦テナックス社製「HTS40:3Kフィラメント、繊度200tex」)とを混繊することで、混繊糸を得た。この混繊糸を用いて、目付け390g/mの織物を得た。
(手順2)得られた織物に精練を施した後、可性ソーダ20g/L、浴比1:30のアルカリ水溶液(液温100℃)中に30分間浸漬し、B成分であるPETを選択的に溶解除去した。得られたエラストマー(1)のみからなる繊維と炭素繊維との混繊糸からなる織物の目付けは342g/mであった。
(手順3)得られた織物を複合基材として6枚積層させた後(総目付け=2052g/m)、220℃で10分間圧縮成形して平板を成形した。成形時における強化繊維基材の設置などの取扱性は良好であった。
(手順4)得られた複合体の外観は良好であり、また複合体断面内のボイドも殆ど観測されなかった。室温での曲げ弾性率は7.6GPaであり、剛性に優れるものであった。また、tanδは0.145と高い値を示した。
(手順5)手順2と同様の繊維基材を用いて図6に示す金型にて賦形成形を実施した。得られた成形体は目立った皺や基材の目ズレなども起こっておらず、外観は良好であった。成形時の取扱性に関しても良好であった。
[実施例4]
(手順1)実施例1の手順2で得られた複合繊維から、目付け59.9g/m、厚さ0.382mmの織物を得た。この織物に精練を施した後、可性ソーダ20g/L、浴比1:30のアルカリ水溶液(液温100℃)中に30分間浸漬し、B成分を選択的に溶解除去した。得られた織物の目付けは44.9g/mであった。
(手順2)強化繊維は炭素繊維織物(東邦テナックス社製「W−3101:3K織物、目付け200g/m」)を用いた。炭素繊維織物の上下両面に、上記で得られたA成分からなる織物を1枚ずつ重ね合わせ合わせたものを1セットとし、それを7枚積層させた後(総目付け=2029g/m)、220℃で10分間圧縮成形して平板を成形した。成形時における強化繊維基材の設置などの取扱性は良好であった。
(手順3)得られた複合体の外観は良好であり、また複合体断面内のボイドも殆ど観測されなかった。室温での曲げ弾性率は9.1GPaであり、剛性に優れるものであった。また、tanδは0.132と高い値を示した。
(手順4)手順2と同様の繊維基材を用いて図6に示す金型にて賦形成形を実施した。得られた成形体は目立った皺や基材の目ズレなども起こっておらず、外観は良好であった。成形時の取扱性に関しても良好であった。
[実施例5]
(手順1)実施例1の手順2で得られた複合繊維から、目付け44.4g/m、厚さ0.283mmの織物を得た。この織物に精練を施した後、可性ソーダ20g/L、浴比1:30のアルカリ水溶液(液温100℃)中に30分間浸漬し、B成分を選択的に溶解除去した。得られた織物の目付けは33.3g/mであった。
(手順2)強化繊維は炭素繊維織物(東邦テナックス社製「W−3101:3K織物、目付け200g/m」)を用いた。炭素繊維織物の上下両面に、上記で得られたA成分からなる織物を1枚ずつ重ね合わせ合わせたものを1セットとし、それを8枚積層させた後(総目付け=2133g/m)、220℃で10分間圧縮成形して平板を成形した。成形時における強化繊維基材の設置などの取扱性は良好であった。
(手順3)得られた複合体の外観は良好であり、また複合体断面内のボイドも殆ど観測されなかった。室温での曲げ弾性率は11.5GPaであり、剛性に優れるものであった。また、tanδは0.115と高い値を示した。
(手順4)手順2と同様の繊維基材を用いて図6に示す金型にて賦形成形を実施した。得られた成形体は目立った皺や基材の目ズレなども起こっておらず、外観は良好であった。成形時の取扱性に関しても良好であった。
[比較例1]
(手順1)表1のエラストマー(1)を用いて、加熱加圧成形により目付け85.2g/mの繊維でないフィルムのシートを作製した。
(手順2)強化繊維は炭素繊維織物(東邦テナックス社製「W−3101:3K織物、目付け200g/m」)を用いた。炭素繊維織物の上下両面に、上記で得られたエラストマー(1)からなるシートを1枚ずつ重ね合わせ合わせたものを1セットとし、それを6枚積層させた後(総目付け=2222g/m)、220℃で10分間圧縮成形して平板を成形した。成形時における強化繊維基材の設置などの取扱性は良好であった。
(手順3)得られた複合体の外観は良好であったが、複合体断面内のボイドが観測され、含浸性に劣る結果であった。また、室温での曲げ弾性率は6.3GPaであり、剛性にやや劣るものであった。また、tanδは0.159と高い値を示した。
(手順4)手順4と同様の繊維基材を用いて図6に示す金型にて賦形成形を実施した。得られた成形体はやや皺や基材の目ズレなどが起こり、外観不良が発生し、賦形成形性に劣るものであった。成形時の取扱性に関しては良好であった。
[比較例2]
(手順1)表1のエラストマー(1)の樹脂を予め粉砕し、パウダーとした。
(手順2)強化繊維は炭素繊維織物(東邦テナックス社製「W−3101:3K織物、目付け200g/m」)を用いた。炭素繊維織物に、上記で得られた(1)からなるパウダーを塗し、220℃、5分間加熱加圧成形することで、目付け340g/mの強化繊維基材を得た。それを6枚積層させた後(総目付け=2040g/m)、220℃で10分間圧縮成形して平板を成形した。成形時における強化繊維基材の設置などの取扱性は良好であった。
(手順3)得られた複合体の外観は、樹脂量にムラがあり劣るものであった。複合体断面内のボイドは殆ど観測されなかった。室温での曲げ弾性率は6.2GPaであり、剛性に劣るものであった。また、tanδは0.149と高い値を示した。
(手順4)手順1と同様の繊維基材を用いて図6に示す金型にて賦形成形を実施した。得られた成形体は樹脂ムラに加えて、やや皺や基材の目ズレなどが起こり、外観不良が発生し、賦形成形性に劣るものであった。成形時の取扱性に関しては良好であった。
[比較例3]
(手順1)繊維のA成分を表1のエラストマー(2)を用いる以外は実施例1と同様にして、繊維化並びに織物の作成、加熱加圧成形を行った。
(手順2)得られた複合体の外観は良好であり、また複合体断面内のボイドも殆ど観測されなかった。室温での曲げ弾性率は2.7GPaであり、剛性に劣るものであった。また、tanδは0.058と、実施例に比べて制振性能に劣るものであった。
(手順3)手順1と同様の繊維基材を用いて図6に示す金型にて賦形成形を実施した。得られた成形体は目立った皺や基材の目ズレなども起こっておらず、外観は良好であった。成形時の取扱性に関しても良好であった。
[比較例4]
(手順1)繊維強化樹脂複合体のマトリックス樹脂として、エラストマーの代わりにポリエーテルイミド(PEI)を用いるために、サービックイノベイティブプラスチックス社製「ULTEM(登録商標)9011」(ガラス転移温度:217℃)の樹脂ペレットを150℃で12時間真空乾燥した。
(手順2)上記樹脂ペレットを紡糸ヘッド温度390℃、紡糸速度1500m/分、吐出量50g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、2640dtex/1200fのPEI繊維マルチフィラメントを得た。次いで、得られた繊維を10mmにカットした。
(手順3)得られた繊維の外観は毛羽などなく良好で、単繊維の平均繊度は2.2dtex、平均カット長は10.1mmであった。
(手順4)(手順3)で得られたPEI繊維を97wt%、バインダーとしてポリビニルアルコール繊維を3wt%、とからなるスラリーを用いて湿式抄紙し、目付け72.4g/mの紙を得た。
(手順5)強化繊維基材は炭素繊維織物(東邦テナックス社製「W−3101:3K織物、目付け200g/m」)を用いた。炭素繊維織物の上下両面に、(手順4)で得られた紙を2枚ずつ重ね合わせ合わせたものを1セットとし、それを6枚積層させた後(総目付け=2069g/m)、360℃で10分間圧縮成形して平板を成形した。成形時における強化繊維基材の設置などの取扱性は良好であった。
(手順5)得られた複合体の外観は良好であり、また複合体断面内のボイドも殆ど観測されなかった。室温での曲げ弾性率は43.2GPaであり、剛性に優れるものであった。しかし、tanδは0.080と、実施例に比べて制振性に劣る結果であった。
(手順6)手順4と同様の繊維基材を用いて図6に示す金型にて賦形成形を実施した。得られた成形体は目立った皺や基材の目ズレなども起こっておらず、外観は良好であった。成形時の取扱性に関しても良好であった。
表2の結果から明らかなように、実施例の繊維強化樹脂複合体は、剛性と制振性に優れることが分かった。
Figure 0006212427
本発明によれば、制振性を有するエラストマーを含む樹脂からなる繊維と強化繊維とからなる複合体基材を熱プレス成形することで、剛性、制振性、耐候性に優れ、複雑な形状を有する成形体を提供することが出来る。そのため、本発明の複合体は、上記した特性を活かして、高い制振性能が必要とされる、例えばプロペラファン、シロッコファン、クロスフローファン、ローラー、プーリー、ギヤ、カムなどの回転部品や、そのハウジング部材に極めて好ましく用いられる。
また、本発明の繊維強化樹脂複合体は、上記した部材以外にも、例えば各種の事務機器、音響機器、家庭用電気製品、自動車用の内装材、エンジンやモーター周りの部品などの製造にも有効に用いることができ、特に複写機、プリンターなどの事務機器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機などの機器に用いると、こられの機器が発生する騒音や振動を低減させて、環境の静粛化をもたらすことができる。
さらに、本発明の複合体は、自転車のフレーム、ハンドル、サドルなどの部材や、ゴルフのシャフト、テニスラケットなど、スポーツ用品の部材にも好ましく用いられる。
以上の通り、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
1:複合繊維のA成分
2:複合繊維のB成分
3:複合繊維の中空部
4:金型の型枠
5:金型の上蓋

Claims (7)

  1. 強化繊維と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維とを用いた複合基材であり、該エラストマーが、ガラス転移温度が−40〜30℃の範囲にある重合体、またはガラス転移温度が−40〜30℃の範囲にある重合体部分をその分子構造中に有する重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体である複合基材。
  2. 前記エラストマーが、ビニル芳香族化合物からなる数平均分子量2500〜60000の重合体ブロックと、共役ジエン系化合物からなる数平均分子量10000〜200000の重合体ブロックとからなる、数平均分子量が30000〜300000であるブロック共重合体、および/またはその水添物である請求項1に記載の複合基材。
  3. 前記複合基材が、(1)強化繊維布帛と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維が含まれる布帛との積層物、(2)強化繊維と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維との交織織物、(3)強化繊維と、エラストマーを含む樹脂からなる繊維との混繊糸が含まれる織編物、からなる群より選択された少なくとも1つの形態を有する請求項1または請求項2に記載の複合基材。
  4. 前記エラストマーを含む樹脂からなる繊維が、前記エラストマー(A成分)と、易溶解性熱可塑性樹脂(B成分)とで構成され、繊維断面において、A成分が芯となりB成分が被覆している複合繊維であり、前記複合繊維において、易溶解性熱可塑性樹脂を溶脱することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合基材。
  5. 前記強化繊維が炭素繊維である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合基材。
  6. 前記複合基材において、強化繊維100質量部に対するエラストマーを含む樹脂からなる繊維の割合が、20〜100質量部である請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合基材。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合基材を一枚ないしは複数枚積層したものに対し、加熱加圧成形し、エラストマーを含む樹脂からなる繊維を一部または全部溶融させることにより得られる繊維強化樹脂複合体。
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