JP6203306B2 - エレベータの群管理システム - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、複数台のダブルデッキエレベータを群管理制御するエレベータの群管理システムに関する。
超高層ビル等では、ビルのスペース効率を向上させるために、ビル内の縦の交通手段として、かご室を上下2段に構成した大量輸送が可能なダブルデッキエレベータが用いられる。このダブルデッキエレベータの運転モードとして、「ダブル運転」,「シングル運転」,「セミダブル運転」があり、例えば出勤時、平常時、閑散時などの時間帯に応じて適宜切り替えられる。
特許第5477387号公報
「ダブル運転」の場合、偶数階から偶数階、または、奇数階から奇数階にしか行けない。偶数階から奇数階、または、奇数階から偶数階に行くためには、行先階(目的階)の1階床手前もしくは1階床先の階床で降車し、そこから階段もしくはエスカレータ等を利用することになる。一般の利用者(乗客)であれば、このような方法にて目的階に行くことは特に問題とはならないが、例えば車椅子を利用しているような特定の利用者にとっては、このような乗り換えは非常に不便である。
一方、「セミダブル運転」あるいは「シングル運転」の場合には、利用者がどの階で乗っても目的階にいくことはできるが、運行効率が著しく低下することになる。
本発明が解決しようとする課題は、ダブルデッキエレベータの運行効率と利便性のトレードオフを取り、新規呼びに対し、各号機の中から最適な号機を応答させることのできるエレベータの群管理システムを提供することである。
一実施形態に係るエレベータの群管理システムは、上下に2つの乗りかごが連結された複数号機のダブルデッキエレベータを有し、各階に設置された乗場行先階登録装置によって登録された行先呼びに基づいて上記各号機の運転を制御する。
上記エレベータの群管理システムは、上記各階の乗場行先階登録装置によって登録された所定時間毎の行先呼びの数に基づいて混雑度を推測する混雑度推測手段と、上記2つの乗りかごの一方を奇数階のみに停止させ、他方を偶数階のみ停止させる第1の運転モードと、上記2つの乗りかごを奇数階と偶数階の区別なく停止させる第2の運転モードを有し、上記混雑度推測手段によって推測された混雑度に基づいて上記第1の運転モードの号機群の台数と上記第2の運転モードの号機群の台数の比率を決定し、その決定された比率に従って上記各号機の運転モードを切り替える運転モード切替え手段と、この運転モード切替え手段によって上記各号機の運転モードが切り替えられた状態で、任意の階で新規呼びが発生した際に、上記新規呼びの登録階と行先階との関係に基づいて上記第1の運転モードの号機群または上記第2の運転モードの号機群の中から上記新規呼びに対するサービス時間と未応答呼びに対するサービス時間を考慮した評価式によって求められる最適な号機を割当号機として選出し、上記新規呼びの登録階に応答させる割当制御手段とを具備する。
図1は一実施形態に係るエレベータの乗場の構成を示す図である。 図2は同実施形態におけるエレベータの群管理システムの構成を示すブロック図である。 図3は同実施形態における群管理制御装置に設けられた呼び記憶部の一例を示す図である。 図4は同実施形態における群管理制御装置に設けられた運転モードテーブルの一例を示す図である。 図5は同実施形態におけるダブルデッキエレベータの運転モードを説明するための図である。 図6は同実施形態におけるダブルデッキエレベータの運転モードを説明するための図である。 図7は同実施形態におけるダブルデッキエレベータの運転モードを説明するための図である。 図8は同実施形態におけるエレベータの群管理システムの動作を示すフローチャートである。 図9は同実施形態におけるエレベータの群管理システムの割当制御に関する処理動作を示すフローチャートである。 図10は同実施形態におけるエレベータの群管理システムの割当制御に関する処理動作を示すフローチャートである。 図11は同実施形態における各号機の運転状態の一例を示す図である。 図12は同実施形態における新規呼びによる未応答呼びに対するサービス時間への影響を説明するための図である。 図13は同実施形態における運転モードの切替え時の表示例を示す図である。 図14は同実施形態における行先階の変更時の表示例を示す図である。 図15は同実施形態における行先階の変更時の別の表示例を示す図である。
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
本実施形態では、複数台のダブルデッキエレベータを有する群管理システムを前提としている。なお、ダブルデッキエレベータ1台1台のことを「号機」と呼ぶことがある。
さらに、本実施形態では、群管理システムの制御方式として、乗場にて直接行先階を指定可能な乗場行先階登録装置(HDC:Hall Destination Controller)を用いる行先階制御システム(DCS:Destination Control System)を前提としている。
図1は一実施形態に係るエレベータの乗場の構成を示す図である。
図中の10は任意の階の乗場、11aはA号機の乗場ドア,11bはB号機の乗場ドアである。乗場ドア11aは、A号機の到着時に上かごまたは下かごのドアと連動して開閉動作する。乗場ドア11bは、B号機の到着時に上かごまたは下かごのドアと連動して開閉動作する。
ここで、乗場ドア11aと乗場ドア11bとの間に、利用者が行先階を登録するための乗場行先階登録装置12が設置されている。乗場行先階登録装置12は、行先階を入力操作するための操作部12aと、利用者が乗車する号機等を表示するための表示部12bとを有する。また、乗場行先階登録装置12には、車椅子呼びを登録するための車椅子ボタン12cが備えられている。
なお、行先階の登録方法としては、テンキーの操作によるものが一般的であるが、例えばICカードなどを用いた方法であっても良い。また、乗場行先階登録装置12は、乗場10から離れた場所に設置されていても良い。
乗場ドア11aの上部付近に「インジケータ」と呼ばれる表示器13aが設置されている。表示器13aには、当該乗場に到着したA号機の上かごまたは下かごの行先階や運転方向などが表示される。同様に乗場ドア11bの上部付近に表示器13bが設置されている。表示器13bには、当該乗場に到着したB号機の上かごまたは下かごの行先階や運転方向などが表示される。
本実施形態では、フルDCSを前提としており、各階の乗場に乗場行先階登録装置12に設置されている。したがって、乗りかご内には行先階ボタンが設置されていない構成である。
図2はエレベータの群管理システムの構成を示すブロック図であり、複数台のダブルデッキエレベータが群管理された構成が示されている。なお、図1の例では、A〜D号機の4台だけを示しているが、少なくとも2台以上の号機が群管理された構成であれば良い。各号機はダブルデッキエレベータであり、それぞれに上かごと下かごを有する。
図中の21a〜21dはエレベータ制御装置(号機制御装置あるいはかご制御装置とも言う)である。22a〜22dは上かご、23a〜23dは下かごである。
エレベータ制御装置21aは、A号機の運転制御を行う。具体的には、エレベータ制御装置21aは、A号機の上かご22a,下かご23aを昇降動作させるための図示せぬモータ(巻上機)の制御やドアの開閉制御などを行う。B号機のエレベータ制御装置21b、C号機のエレベータ制御装置21c、D号機のエレベータ制御装置21dも同様である。これらのエレベータ制御装置21a〜21dは、コンピュータによって構成される。
また、エレベータ制御装置21aには、表示器24a,25aが接続されている。表示器24a,25aは、A号機の上かご22a,下かご23aの行先階や運転方向などを含む運行情報を表示する。他のエレベータ制御装置21b〜21dについても同様であり、表示器24b〜24d,25a〜25dがそれぞれ接続されている。表示器24b,25bは、B号機の上かご22b,下かご23bの行先階や運転方向などを含む運行情報を表示する。表示器24c,25cは、C号機の上かご22c,下かご23cの行先階や運転方向などを含む運行情報を表示する。表示器24d,25dは、D号機の上かご22d,下かご23dの行先階や運転方向などを含む運行情報を表示する。
なお、図1の例では、便宜的に各号機に対して2階床分の表示器しか図示していないが、実際には各階のすべてに各号機の表示器が設置されている。
一方、各階の乗場には、乗場行先階登録装置12が少なくとも1台ずつ設置されている。図1で説明したように、乗場行先階登録装置12は、乗場にて利用者が行先階を登録するための装置である。この乗場行先階登録装置12によって行先階が登録されると、行先階と登録階(行先階の登録操作が行われた階)の2つの情報を1つの組としたDCS特有の乗場呼び(以下、行先呼びと称す)が群管理制御装置30に送られる。また、利用者が車椅子ボタン12cを押下すると、利用者の属性として車椅子利用であることを示す車椅子呼びが群管理制御装置30に送られる。
群管理制御装置30では、乗場呼びを受信すると、各号機の中の最適な号機に当該乗場呼び情報を割り当てる。なお、乗場呼び情報が割り当てられた号機のことを「割当号機」と呼ぶ。
割当号機が決まると、利用者が操作した乗場行先階登録装置12の表示部12bに号機名が表示される。このとき、当該乗場に設置された表示器24a〜24dあるいは25a〜25dの中の割当号機の上かごまたは下かごに対応した表示器に利用者の行先階が表示される。
群管理制御装置30は、各号機の運転を統括的に制御する装置である。本実施形態において、この群管理制御装置30には、呼び記憶部31、混雑度推測部32、運転モード切替え部33、割当制御部34、通知部35が備えられている。
なお、以下では、エレベータ制御装置21b〜21d、上かご22a〜22d、下かご23a〜23dのそれぞれを代表として、便宜的にエレベータ制御装置21、上かご22、下かご23と表記して説明する。
呼び記憶部31は、各階の乗場行先階登録装置12によって登録された利用者の行先階とその登録階を含む行先呼びを記憶する(図3参照)。混雑度推測部32は、呼び記憶部31を参照して各階の乗場行先階登録装置12によって登録された一定時間毎の行先呼びの数に基づいて混雑度を推測する。
運転モード切替え部33は、混雑度推測部32によって推測された混雑度に基づいて第1の運転モードの号機群の台数と第2の運転モードの号機群の比率を決定し、その決定された比率に従って各号機の運転モードを切り替える。
ここで、本実施形態では、第1の運転モードとしてダブル運転モード、第2の運転モードとしてセミダブル運転モードを想定している。運転モード切替え部33は、現在の各号機の運転モードを記憶しておくための運転モードテーブル33aを有する(図4参照)。なお、ダブルデッキエレベータの運転モードについては、後に図5乃至図7を用いて詳しく説明する。
割当制御部34は、任意の階で新規呼びが発生した際に、新規呼びの登録階と行先階との関係に基づいて第1の運転モードの号機群または第2の運転モードの号機群の中から新規呼びに対するサービス時間と未応答呼びに対するサービス時間のバランスが最適な号機を割当号機として選出し、新規呼びの登録階に応答させる。
通知部35は、各号機の運転モードが切り替えられたときに利用者に通知したり、割当号機の行先階が変更されたときにその旨を利用者に通知するための処理を行う。
図3は呼び記憶部31の一例を示す図である。
各階の乗場行先階登録装置12によって利用者の行先階が登録されると、その登録階と行先階の情報を含んだ行先呼びが群管理制御装置30に送られて、呼び記憶部31に記憶される。図3の例では、1階の乗場で5階と10階を行先階とした行先呼びが登録され、2階の乗場で6階と10階を行先階とした行先呼びが登録された状態が示されている。
これらの行先呼びに対して割当号機が決定されると、その割当号機の情報が当該行先呼びに関連付けられて記憶される。図中の「A号機・下」とはA号機の下かごが割り当てられたことを示す。同様に、「B号機・下」とはB号機の下かご、「A号機・上」とはA号機の上かごが割り当てられたことを示す。なお、呼び記憶部31に記憶された行先呼びと割当号機の情報は当該割当号機が登録階に応答したときに消去される。
図4は運転モードテーブル33aの一例を示す図である。
運転パターンテーブル33aには、現在設定されている各号機の運転モードが記憶される。図4の例では、A号機が第1の運転モード、B号機が第2の運転モード、C号機が第1の運転モードに切り替えられている状態が示されている。上述したように、本実施形態では、第1の運転モードとしてダブル運転モード、第2の運転モードとしてセミダブル運転モードを想定している。
ここで、ダブルデッキエレベータの運転モードについて説明する。
ダブルデッキエレベータの運転モードには、ダブル運転モード、セミダブル運転モード、シングル運転モードがある。
・ダブル運転モードは、図5に示すように、例えば上かごを偶数階(2F,4F,6F…)、下かごを奇数階(1F,3F,5F…)に停止させるように上下かごを1階床おきに停止させる。かごの停止回数が通常のエレベータの半分になり、一周時間が短いため、高輸送能力が得られる。このため、出勤時や昼食時等の交通需要の多い時に特に使われる。しかし、偶数階から偶数階、または、奇数階から奇数階にしか行けない。偶数階から奇数階、または、奇数階から偶数階に行くためには、行先階(目的階)の1階床手前もしくは1階床先の階床で降車し、そこから階段もしくはエスカレータ等を利用することになる。
・セミダブル運転モードは、図6に示すように、基準階でのみダブル運転にして偶数階と奇数階をサービスするかごを使い分け、基準階から出発して一度停止した後は偶数階、奇数階の区別なく運転する。偶数階と奇数階間の移動ができて便利であり、通常時間帯等に使われる。しかし、ダブル運転モードより輸送能力は低くなるので、待ち時間が増えるなど、運行効率が下がる。
・シングル運転モードは、図7に示すように、上下かごの一方のかごを未使用にして1つのかごのみで各階を運転する。図7の例では、上かごを未使用にしているが、下かごを未使用にして上かごのみで各階を運転することもできる。上記セミダブル運転モードと同様に偶数階と奇数階間の移動ができて便利であり、輸送能力が求められない閑散時等に使われる。
本実施形態では、上記3つの運転モードの中のダブル運転モード(第1の運転モード)とセミダブル運転モード(第2の運転モード)を併用して群管理制御する構成である。なお、以下では、ダブル運転モードのことを「Dモード」、セミダブル運転モードのことを「Sモード」と略して説明する。
図8はエレベータの群管理システムの動作を示すフローチャートである。このフローチャートで示される処理は、コンピュータである群管理制御装置30によって実行される。
初期状態では、例えばDモードの号機群の台数とSモードの号機群が1:1で運転されているものとする。この状態で、群管理制御装置30の混雑度推測部32は、呼び記憶部31を参照して一定時間T(例えば5分)毎に各階で新規に登録された行先呼びの数をカウントする(ステップS11,S12)。
この一定時間Tの期間におけるカウント値(行先呼びの総数)から各階全体の混雑度(交通需要)を推測でき、混雑度推測部32は、これを次の期間までの混雑度として推測する(ステップS13)。この場合、カウント値(行先呼びの総数)が多いほど、混雑度が高いものと推測される。
運転モード切替え部33は、混雑度推測部32によって推測された混雑度に基づいて、Dモードの号機群の台数とSモードの号機群の台数の比率を決定し、その決定された比率に従って各号機の運転モードを切り替える(ステップS14)。上記比率は、建物の階床数、号機台数、かごサイズ(定格人数)などによっても異なるが、基本的に混雑度が高いほどDモードで運転する台数を増やし、混雑度が低いほどSモードで運転する台数を増やすものとする。
例えば、混雑度を任意の閾値で3つのレベル(L1,L2,L3)に分けた場合に、以下のような比率で各号機の運転モードを切り替えるものとする(L1<L2<L3)。
L1のとき、Dモード:Sモード=1:2
L2のとき、Dモード:Sモード=1:1
L3のとき、Dモード:Sモード=2:1
運転モードを切り替える号機の選出は、残りの未応答呼びの数の少ない号機から順に選出するものとする。
図11は各号機の運転状態の一例を示す図である。A〜Fの6台の号機があり、A号機=Dモード,B号機=Dモード,C号機=Dモード,D号機=Sモード、E号機=Sモード、F号機=Sモードの状態にあったとする。なお、図中の括弧内の数字は現時点で残っている未応答呼びの数を示す。
例えばDモードの号機を1台増やす場合には、現在Sモードで運転中のD号機,E号機,F号機の中で未応答呼びの数の最も少ないD号機が切替え対象として選出される。このとき、切替え対象として選出されたD号機には新規呼びの割当てを禁止しておくものとする。これにより、D号機は現在の呼びのすべてに応答すると、以後、SモードからDモードに切り替えられて運転される。
なお、Dモードの号機を2台増やす場合には、D号機の次にE号機が切替え対象として選出される。ただし、車椅子等を利用した特定の利用者のために、少なくとも1台はSモードにしておくことが好ましい。これは、すべての号機をDモードにすると、奇数階から偶数階あるいは偶数階から奇数階の行先呼びの場合に、行先階(目的階)に直接行けず、階段等を使用することになるためである。
このような運転モードの切替えに伴い、運転モードテーブル33aには切替え後の各号機の運転モードが記憶され、また、通知部35を通じて乗場の利用者に対して運転モードの切替えが通知される(ステップS15)。
図13に具体例を示す。
例えばA号機の運転モードが切り替えられたとすると、A号機の表示器24b,25aに運転モードの切替えと停止階に関するメッセージが一時的に表示される。図13(a)はSモードからDモードに切り替わった場合の表示例、同図(b)はDモードからSモードに切り替わった場合の表示例を示している。
なお、図13(a)では、便宜的に「奇数階(偶数階)に止まります」と表記してあるが、実際にはA号機がDモードに切り替わったときに、例えば上かご23aが偶数階、下かご22bが奇数階に停止する場合であれば、表示器24aに「奇数階に止まります」、表示器25bに「偶数階に止まります」が表示される。
このように、混雑度に応じてDモードの台数とSモードの台数を調整して各号機の運転モードを切り替えることで、Dモードによる運行効率とSモードによる利便性のトレードオフを取ることができる。ただし、Dモードの号機群とSモードの号機群が混在した状態になるため、新規呼び(新たな行先呼び)が発生した際に、各号機の運転モードを考慮して最適な号機(割当号機)を選出する必要がある。
以下に新規呼びの割当制御について説明する。
任意の階で新規呼びが発生すると、割当制御部34は、運転モードテーブル33aを参照して各号機の運転モードを確認し、各号機の運転モードを考慮した割当制御を実行する(ステップS16)。
図9および図10に具体的な処理動作を示す。
すなわち、任意の階で新規呼びが発生すると(ステップS21のYes)、割当制御部34は、新規呼びを各号機の運行スケジュールに仮追加し、各号機のサービス時間Ts、Sモードの最短サービス時間MinTs(S)、Dモードの最短サービス時間のMinTs(D)を計算する(ステップS22)。
・サービス時間Tsは、新規呼びの登録階までの応答時間+登録階から行先階までの移動時間である。Sモードの場合、上かごと下かごの両方についてサービス時間Tsを求める。また、運転モードが切り替えられたときに、未応答の行先呼びはこのまま残り、新規呼び追加時に新運転モードのスケジュールに準じてサービス時間Tsを求めるものとする。
・MinTs(S)は、Sモードの各号機のサービス時間の中の最短のサービス時間である。
・MinTs(D)は、Dモードの各号機のサービス時間の中の最短のサービス時間である。
ここで、新規呼びの登録階と行先階との関係、車椅子呼びありの有無により、(a)奇数階→奇数階あるいは偶数階→偶数階の場合、(b)奇数階→偶数階あるいは偶数階→奇数階の場合、(c)車椅子呼びありの場合に分けられる。なお、説明を簡単にするため、不停止階のない建物を対象とする。
(a)奇数階→奇数階あるいは偶数階→偶数階の場合
新規呼びの登録階と行先階との関係が奇数階→奇数階あるいは偶数階→偶数階であった場合(ステップS23のYes)、割当制御部34は、下記の条件1の下でDモードの号機群を優先し、その号機群の中から割当号機を選出する。
条件1:MinTs(D)<MinTs(S)+ka
kaは利用者が許容できる待ち時間であり、例えば20秒である。
上記条件1を満足する場合、つまり、Dモードの号機群の最短サービス時間MinTs(D)がSモードの号機群の最短サービス時間MinTs(S)に許容待ち時間kaを加えた時間よりも短い場合には(ステップS24のYes)、割当制御部34は、Dモードの号機群を優先し、以下のようにして割当号機を選出する。
すなわち、割当制御部34は、まず、Dモードの各号機に対し、新規呼びの追加によって生じる未応対呼び(未応答の行先呼び)に対するサービス時間の増加分(総和)ΔTを求める(ステップS25)。
ここで、ΔTは、既に登録済みの未応答呼びに対するサービス時間への影響を表している。図12を用いて詳しく説明すると、例えばA号機の上下かご内に既に利用者aと利用者bが乗車しており、それぞれの未応対呼びに対するサービス時間Tsa,Tsbが30秒と25秒であったとする。
いま、任意の階で新規呼びが発生し、その新規呼びをA号機に割り当てた場合のサービス時間Tsxが20秒と求められたとする。新規呼びを登録した利用者xのことだけを考えれば、各号機で求められるサービス時間Tsxだけを基準にして割当号機を決めれば良いが、既に登録済みの未応対呼びが存在する場合には、これらへの影響を考慮しなければならない。
つまり、新規呼びをA号機に割り当てた場合に、未応答呼びのサービス時間Tsaが30秒→35秒、未応答呼びのサービス時間Tsbが25秒→30秒に増加したとすると、ΔT=5+5=10(秒)として求められる。なお、例えば他の階でA号機が待っている利用者cがいた場合には、その利用者cの未応答呼びのサービス時間Tscの増加分も含めてΔTを計算する必要がある。例えば、Tsc=30→37秒に増加した場合には、ΔT=5+5+7=17(秒)として求められる。
このようにして、未応対呼びに対するサービス時間の増加分ΔTが求まると、割当制御部34は、下記のような評価式を用いてDモードの号機群の中から割当号機を選出する。
評価式:α・Ts+β・ΔT(ただし、α+β=1;α,β>0)
上記評価式は、新規呼びに対するサービス時間Tsと未応答呼びに対するサービス時間の増加分ΔTの両方を評価するための式である。α,βは重み係数であり、新規呼びに対するサービス時間Tsを重視する場合にはαの値を大きくし、未応答呼びに対するサービス時間の増加分ΔTを重視する場合にはβの値を大きしておけば良い。
上記評価式の値が小さいほど、新規呼びに対するサービス時間と未応答呼びに対するサービス時間のバランスが取れた号機であることを意味する。そこで、割当制御部34は、Dモードの各号機について上記評価式の値を求め、その中で最小の値を有する号機を最適な号機(割当号機)として選出し、当該号機に新規呼びを割り当てて登録階に応答させる(ステップS26)。
一方、上記ステップS24において、上記条件1を満足しない場合、つまり、Dモードの号機群の最短サービス時間MinTs(D)がSモードの号機群の最短サービス時間MinTs(S)に許容待ち時間kaを加えた時間以上であった場合には、割当制御部34は、Sモードの号機群の中から割当号機を選出する。
すなわち、割当制御部34は、まず、Sモードの各号機に対し、新規呼びの追加によって生じる未応対呼び(未応答の行先呼び)に対するサービス時間の増加分(総和)ΔTを求める(ステップS27)。続いて、割当制御部34は、Sモードの各号機について上記評価式(α・Ts+β・ΔT)の値を求め、最小の値を有する号機を最適な号機として選出し、その号機に新規呼びを割り当てて登録階に応答させる(ステップS28)。
なお、Sモードでは、奇数階と偶数階の区別なく運転できるので、Sモードの各号機のいずれかに当該新規呼びを割り当てたとしても、利用者の行先階(目的階)に停止することができる。
(b)奇数階→偶数階あるいは偶数階→奇数階の場合
新規呼びの登録階と行先階との関係が奇数階→偶数階あるいは偶数階→奇数階の場合(ステップS23のNo)、車椅子呼びの有無によって処理が分岐される。新規呼び登録時に車椅子呼びが登録されていなければ(ステップS29のNo)、割当制御部34は、下記の条件2の下でSモードの号機群を優先し、その号機群の中から割当号機を選出する。
条件2:MinTs(S)<MinTs(D)+kb
kbは利用者が許容できる待ち時間であり、例えば20秒である。
なお、kbの値は、条件1のkaの値と変えても良い。後述するように、条件2を満足しない場合にDモードの号機となり、利用者に階段等を使わせることになる。したがって、ka<kbとして、利用者が許容できる待ち時間を上記(a)の場合よりも長目に設定しておくことが好ましい。
上記条件2を満足する場合、つまり、Sモードの号機群の最短サービス時間MinTs(S)がDモードの号機群の最短サービス時間MinTs(D)に許容待ち時間kbを加えた時間よりも短い場合には(ステップS30のYes)、割当制御部34は、Sモードの号機群を優先し、以下のようにして割当号機を選出する。
すなわち、割当制御部34は、まず、Sモードの各号機に対し、新規呼びの追加によって生じる未応対呼び(未応答の行先呼び)に対するサービス時間の増加分(総和)ΔTを求める(ステップS31)。続いて、割当制御部34は、Sモードの各号機について上記評価式(α・Ts+β・ΔT)の値を求め、最小の値を有する号機を最適な号機として選出し、その号機に新規呼びを割り当てて登録階に応答させる(ステップS32)。
一方、上記条件2を満足しない場合、つまり、Sモードの号機群の最短サービス時間MinTs(S)がDモードの号機群の最短サービス時間MinTs(D)に許容待ち時間kbを加えた時間以上であった場合には(ステップS30のNo)、割当制御部34は、Dモードの号機群の中から割当号機を選出する。
すなわち、割当制御部34は、まず、Dモードの各号機に対し、新規呼びの追加によって生じる未応対呼び(未応答の行先呼び)に対するサービス時間の増加分(総和)ΔTを求める(ステップS33)。続いて、割当制御部34は、Dモードの各号機について上記評価式(α・Ts+β・ΔT)の値を求め、最小の値を有する号機を最適な号機として選出し、その号機に新規呼びを割り当てて登録階に応答させる(ステップS34)。
ただし、奇数階→偶数階あるいは偶数階→奇数階の場合、Dモードの号機では利用者の行先階に直接行くことはできないので、行先階を1つ上の階あるいは1つ下の階に変更する必要がある。
具体的に説明すると、例えば新規呼びが1階→6階であり、その新規呼びに対してDモードの運転中のA号機が割当号機として選出され、下かご23aが1階に応答するものとする。このような場合に、割当制御部34は、新規呼びの行先階を当該行先階の前後で利用者を降車させることのできる5階または7階に変更し、行先階の変更を当該新規呼びの登録者である利用者に通知する(ステップS35)。
この場合、行先階を1つ上の階あるいは1つ下の階に変更するのかは、当該号機に割り当てられている他の未応答呼びとの関係で、例えば行先階の1つ上の階あるいは1つ下の階で降車する他の利用者の有無や、乗場で待っている利用者の有無などを考慮して決めても良い。また、利用者が階段を使うことを想定すると、行先階を1つ上の階に変更した方が好ましい。
行先階が変更されると、通知部35を通じてその旨が利用者に通知される。具体的には、図14に示すように、利用者が新規呼びを登録操作した乗場行先階登録装置12の表示部12bに割当号機の表示と共に、行先階の変更に関するメッセージを表示する。
図14の例では、割当号機として「A号機」が表示され、行先階の変更に関して、「行先階が7Fに変更になります。7Fから階段をご利用下さい。」といったメッセージが表示されている。利用者がこの表示を見て、階段利用になることを承知の上でA号機に乗車することになる。
なお、表示部12bにメッセージを表示するスペースがなければ、図15に示すように、例えば「6F→7F」といったように簡易な表示で行先階の変更を利用者に知らせるようにしても良い。
(c)車椅子呼びありの場合
新規呼びの登録階と行先階との関係が奇数階→偶数階あるいは偶数階→奇数階の場合において(ステップS23のNo)、車椅子ボタン12cの押下により車椅子呼びが登録されていた場合には(ステップS29のYes)、割当制御部34は、Sモードの号機群を割当対象とし、以下のようにして割当号機を選出する。
すなわち、割当制御部34は、まず、Sモードの各号機に対し、新規呼びの追加によって生じる未応対呼び(未応答の行先呼び)に対するサービス時間の増加分(総和)ΔTを求める(ステップS36)。続いて、割当制御部34は、Sモードの各号機について上記評価式(α・Ts+β・ΔT)の値を求め、最小の値を有する号機を最適な号機として選出し、その号機に新規呼びを割り当てて登録階に応答させる(ステップS37)
このように、車椅子呼びが登録された場合には、Sモードの号機群を割当対象とすることで、利用者が乗ったかごを行先階(目的階)で停止させることができるので、利用者に階段等の利用を促す必要がなくなる。
なお、上記(a)で説明した奇数階→奇数階あるいは偶数階→偶数階の場合には、Sモードの号機であっても、Dモードの号機であっても、利用者が乗ったかごを行先階(目的階)で停止させることができるので、車椅子呼びの有無を考慮する必要はない。
このように、DモードとSモードが混在した状態であっても、新規呼びが発生した際に、その新規呼びに対するサービス時間と未応答呼びに対するサービス時間のバランスが最適な号機を割当号機として選出して応答させることができる。さらに、車椅子呼びを登録した利用者に対しては、どのような行先呼びであっても、必ず利用者の行先階で停止できる号機を応答させることができる。
なお、上記実施形態では、第2の運転モードとしてセミダブル運転モードを想定して説明したが、シングル運転であっても良い。
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、ダブルデッキエレベータの運行効率と利便性のトレードオフを取り、新規呼びに対し、各号機の中から最適な号機を応答させることのできるエレベータの群管理システムを提供することができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…乗場、11a,11b…乗場ドア、12…乗場行先階登録装置、12a…操作部、12b…表示部、12c…車椅子ボタン、13a,13b,13c,13d…表示器、21a,21b,21c,21d…エレベータ制御装置、22a,22b,22c,22d…上かご、23a,23b,23c,23d…下かご、24a,24b…表示器、30…群管理制御装置、31…呼び記憶部、32…混雑度推測部、33…運転モード切替え部、33a…運転モードテーブル、34…運転制御部、35…通知部。

Claims (9)

  1. 上下に2つの乗りかごが連結された複数号機のダブルデッキエレベータを有し、各階に設置された乗場行先階登録装置によって登録された行先呼びに基づいて上記各号機の運転を制御するエレベータの群管理システムにおいて、
    上記各階の乗場行先階登録装置によって登録された所定時間毎の行先呼びの数に基づいて混雑度を推測する混雑度推測手段と、
    上記2つの乗りかごの一方を奇数階のみに停止させ、他方を偶数階のみ停止させる第1の運転モードと、上記2つの乗りかごを奇数階と偶数階の区別なく停止させる第2の運転モードを有し、上記混雑度推測手段によって推測された混雑度に基づいて上記第1の運転モードの号機群の台数と上記第2の運転モードの号機群の台数の比率を決定し、その決定された比率に従って上記各号機の運転モードを切り替える運転モード切替え手段と、
    この運転モード切替え手段によって上記各号機の運転モードが切り替えられた状態で、任意の階で新規呼びが発生した際に、上記新規呼びの登録階と行先階との関係に基づいて上記第1の運転モードの号機群または上記第2の運転モードの号機群の中から上記新規呼びに対するサービス時間と未応答呼びに対するサービス時間を考慮した評価式によって求められる最適な号機を割当号機として選出し、上記新規呼びの登録階に応答させる割当制御手段と
    を具備したことを特徴とするエレベータの群管理システム。
  2. 上記割当制御手段は、
    上記新規呼びの登録階と行先階との関係が奇数階と奇数階あるいは偶数階と偶数階であった場合に、上記第1の運転モードの号機群を優先し、その号機群の中から割当号機を選出し、その号機群の中から割当号機を選出し、
    上記新規呼びの登録階と行先階との関係が奇数階と偶数階あるいは偶数階と奇数階であった場合に、上記第2の運転モードの号機群を優先し、その号機群の中から割当号機を選出し、その号機群の中から割当号機を選出することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
  3. 上記割当制御手段は、
    上記新規呼びの登録階と行先階との関係が奇数階と奇数階あるいは偶数階と偶数階であった場合に、上記新規呼びに対する上記第1の運転モードの号機群の最短サービス時間と上記第2の運転モードの号機群の最短サービス時間を求め、
    上記第1の運転モードの号機群の最短サービス時間が上記第2の運転モードの号機群の最短サービス時間に予め設定された第1の許容待ち時間を加えた時間よりも短い場合に、上記第1の運転モードの号機群の中から割当号機を選出することを特徴とする請求項2記載のエレベータの群管理システム。
  4. 上記割当制御手段は、
    上記第1の運転モードの号機群の最短サービス時間が上記第2の運転モードの号機群の最短サービス時間に上記第1の許容待ち時間を加えた時間以上の場合には、上記第2の運転モードの号機群の中から割当号機を選出することを特徴とする請求項3記載のエレベータの群管理システム。
  5. 上記割当制御手段は、
    上記新規呼びの登録階と行先階との関係が奇数階と偶数階あるいは偶数階と奇数階であった場合に、
    上記新規呼びに対する上記第1の運転モードの号機群の最短サービス時間と上記第2の運転モードの号機群の最短サービス時間を求め、
    上記第2の運転モードの号機群の最短サービス時間が上記第1の運転モードの号機群の最短サービス時間に予め設定された第2の許容待ち時間を加えた時間よりも短い場合に、上記第2の運転モードの号機群の中から割当号機を選出することを特徴とする請求項2記載のエレベータの群管理システム。
  6. 上記割当制御手段は、
    上記第1の運転モードの号機群の最短サービス時間が上記第2の運転モードの号機群の最短サービス時間に上記第2の許容待ち時間を加えた時間以上の場合には、上記第1の運転モードの号機群の中から割当号機を選出し、
    上記新規呼びの行先階を当該行先階の前後で利用者を降車させることのできる階に変更することを特徴とする請求項5記載のエレベータの群管理システム。
  7. 上記割当制御手段は、
    上記新規呼びの行先階を当該行先階の1つ上の階に変更することを特徴とする請求項6記載のエレベータの群管理システム。
  8. 上記新規呼びを登録した利用者に対して行先階の変更を通知する通知手段をさらに具備したことを特徴とする請求項6または7記載のエレベータの群管理システム。
  9. 車椅子呼びを登録するための車椅子呼び登録手段を備え、
    上記割当制御手段は、
    上記新規呼びの登録階と行先階との関係が奇数階と偶数階あるいは偶数階と奇数階であった場合に、上記車椅子呼び登録手段によって車椅子呼びが登録されていれば、上記第2の運転モードの号機群の中から上記新規呼びに対するサービス時間と未応答呼びに対するサービス時間を考慮した評価式によって求められる最適な号機を割当号機として選出して上記新規呼びの登録階に応答させることを特徴とする請求項2記載のエレベータの群管理システム。
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