JP6202344B2 - アルミニウム膜の製造方法及びアルミニウム箔の製造方法 - Google Patents

アルミニウム膜の製造方法及びアルミニウム箔の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はアルミニウム膜の製造方法及びアルミニウム箔の製造方法に関する。
基材上にアルミニウム膜を形成する方法としては、例えば、(i)真空蒸着法、スパッタリング法もしくはレーザアブレーション法などに代表される気相法(PVD)、(ii)ペースト塗布法、(iii)めっき法などが挙げられる。
(i)気相法
真空蒸着法では、例えば、原料のアルミニウムに電子ビームを照射してアルミニウム合金を溶融・蒸発させ、連通孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウムを付着させることにより、アルミニウム層を形成することができる。スパッタリング法では、例えば、アルミニウムのターゲットにプラズマ照射してアルミニウムを気化させ、連通孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウムを付着させることにより、アルミニウム層を形成することができる。レーザアブレーション法では、例えば、レーザ照射によりアルミニウム合金を溶融・蒸発させ、連通孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウム合金を付着させることにより、アルミニウム層を形成することができる。
(ii)ペースト塗布法
ペースト塗布法では、例えば、アルミニウム粉末、結着剤(バインダー)、及び有機溶剤を混合したアルミニウムペーストを用いる。そして、アルミニウムペーストを樹脂表面に塗布した後、加熱することにより、バインダーと有機溶剤とを消失させると共に、アルミニウムペーストを焼結させる。この焼結は、1回で行っても、複数回に分けて行ってもよい。例えば、アルミニウムペーストの塗布後、低温で加熱して有機溶剤を消失させた後、溶融塩に浸漬した状態で加熱することにより、樹脂体の熱分解と同時にアルミニウムペーストの焼結を行うことも可能である。また、この焼結は、非酸化性雰囲気化で行うことが好ましい。
(iii)めっき法
水溶液中でアルミニウムをめっきすることは、実用上ほとんど不可能であるため、溶融塩中でアルミニウムをめっきする溶融塩電解めっき法により、連通孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウム層を形成することができる。この場合、予め樹脂表面を導電化処理した後、溶融塩中でアルミニウムをめっきすることが好ましい。
溶融塩電解めっきに用いる溶融塩としては、例えば、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化アルミニウム(AlCl)などの塩を使用することができる。また、2成分以上の塩を混合し、共晶溶融塩としてもよい。共晶溶融塩とした場合、溶融温度を低下させることができる点で有利である。この溶融塩には、アルミニウムイオンが含まれている必要がある。
溶融塩電解めっきでは、例えば、AlCl‐XCl(X:アルカリ金属)‐MCl(MはCr、Mn、及び遷移金属元素から選択される添加元素)の多成分系の塩を使用し、この塩を溶融してめっき液とし、この中に基材を浸漬して電解めっきを行うことにより、基材表面にアルミニウムめっきを施す。また、基材が非導電性の材料からなるものであれば、前処理として、予め基材表面に導電化処理を施す。導電化処理としては、ニッケルなどの導電性金属を無電解めっきにより樹脂表面にめっきしたり、アルミニウムの導電性金属を真空蒸着法又はスパッタリング法により基材表面に被膜したり、カーボンなどの導電性粒子を含有する導電性塗料を塗布したりすることが挙げられる。
一方、従来アルミニウム箔はストリップ状のアルミニウムを圧延することによって製造されている。特許文献1にはアルミニウム箔の圧延による製造方法が記載されており、具体的には図3に示すように、巻取・巻戻リール1、2及び3、4に巻き取られているストリップA、Bを、ワークロール6及びバックアップロール7を備えたリバーシブル圧延機5のワークロール6に通して、2パス以上の圧延を行うことによってアルミニウム箔を製造することができる。
アルミニウム箔は熱伝導性、防湿性、非通気性、軽量性、遮光性等の特徴を有しているため、種々の物品の包装材として用いられる他、その優れた電気伝導性のために電解コンデンサやリチウムイオン電池の正極集電体の材料として一般的に使用されている。
例えば、リチウムイオン電池においてはアルミニウム箔を正極集電体として用いるに際しては、電池容量を高めるために多数枚のアルミニウム箔を積層して用いたり、巻回して用いたりしている。特許文献2にはリチウム二次電池用負極に関するものではあるが、銅箔に電解めっきして銅箔表面に突起部を設けることが記載されている。
アルミニウム箔と同様に電極材料として用いられる銅箔については、電解めっき法によって基材に銅のめっき膜を形成し、次いで、基材からめっき膜を剥がすことによって銅箔を製造する方法が行われている。例えば、特許文献3には、電解液が供給される電解槽中で回転する陰極ドラム上に銅を電着させ、陰極ドラムを回転させつつ銅箔を陰極ドラムから剥離させてプリント配線板用銅箔を製造する方法が記載されている。
特開平1−138003号公報 特開2011−216193号公報 特開2000−345381号公報
ところで、現在市販されているアルミニウム箔は圧延法によって製造されている。現在市販されている圧延法によるアルミニウム箔は膜厚が15μm程度のものが限度であり、圧延機を用いて膜厚が5μm〜10μmのアルミニウム箔を製造するには、圧延工程の回数が多くなりコスト高になると共に、物理的にも無理がある。
また、表面の荒れたアルミニウム箔を正極集電体として用いると活物質を多く保持することができるので充電容量、電池容量をより高めることができる。しかし圧延法によって製造されたアルミニウム箔では、アルミニウム箔の圧延ローラに接する側の面は鏡面に仕上がるため、これを正極集電体として用いても活物質を多く保持することができない。リチウムイオン電池の電池容量を更に高め、また、小型化するためには、できるだけ膜厚の薄く、好ましく膜厚が10μm以下であり、しかもその表面の粗いアルミニウム箔が必要である。
一方、上記(i)気相法及び(ii)ペースト塗布法では表面の粗いアルミニウム膜や鏡面を有するアルミニウム膜を表面の粗さを制御して形成することは困難である。
そこで、本発明者らは、上記(iii)めっき法を用いると、めっき条件を適切に管理することにより所望の表面粗さを有するアルミニウム膜を得ることができる可能性があることに着目した。基材上に所望の表面粗さを有するアルミニウム膜を形成することができれば、そのアルミニウム膜を基材から分離することにより表面の粗いアルミニウム箔や比較的平滑な表面を有するアルミニウム箔を得ることが出来る。
しかしながら、電解めっき法によってアルミニウム箔を製造することは行われておらず、所望の表面粗さを有するアルミニウム膜を制御して得ることのできる製造方法は確立されていない。例えば、従来の溶融塩電解によって基材上に膜を形成しただけでは、得られる膜の表面粗さを所望の表面粗さにコントロールできないという問題がある。
本発明は上記問題点に鑑みて、電解めっき法によってアルミニウム膜の表面粗さが所望の表面粗さとなるようにアルミニウム膜を製造する方法及びアルミニウム箔を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、溶融塩を電解液とするめっき法によって基材上にアルミニウム膜を形成し、この基材をアルミニウム膜から分離することによってアルミニウム箔を製造する方法について鋭意検討を進め、本発明に至った。
すなわち、本発明は上記課題を解決すべく以下の構成を採用する。
(1)溶融塩を含む電解液が供給される電解槽中で、基材上にアルミニウムを電着させてアルミニウム膜を製造する方法であって、
前記電解液におけるアルミニウムが電析する際の過電圧と前記溶融塩へ添加する添加剤の濃度との所定の関係に基づいて、前記過電圧の測定値が所望の範囲内になるように前記添加剤の濃度を調整するアルミニウム膜の製造方法。
上記本発明(1)によれば、電解めっき法によってアルミニウム膜の表面粗さが所望の表面粗さのアルミニウム膜を製造することができる。
(2)前記電解液が塩化アルミニウム及びアルキルイミダゾリウムクロリドを含むか、又は塩化アルミニウム及びアルキルピリジニウムクロリドを含み、前記アルキルイミダゾリウムクロリド及びアルキルピリジニウムクロリドにおけるアルキル基の炭素原子数が1個〜5個の範囲にある(1)に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記本発明(2)により陰極基材上に効率的にアルミニウム膜を形成することができる。
(3)前記溶融塩へ添加する前記添加剤としてベンゼン、キシレン、ピリジン、ピラジン、ベンゾトリアゾール、ポリスチレン及び1,10−フェナントロリンよりなる群から選ばれる一種以上を添加する(1)又は(2)に記載のアルミニウム膜の製造方法。上記本発明(3)により陰極基材上に均一な粗さを有するアルミニウム膜を形成することができる。
(4)前記溶融塩が塩化アルミニウム−1−エチル−3−アルキルイミダゾリウムクロリドであり、前記添加剤が1,10−フェナントロリンである(1)から(3)のいずれか1項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記本発明(4)により陰極基材上により均一な粗さを有するアルミニウム膜を形成することができる。
(5)前記アルミニウム膜の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.2μm〜0.5μmとなるか、又は十点平均粗さ(Rz)が1μm〜5μmとなる(1)から(4)のいずれか1項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記本発明(5)によって得られた表面粗さを有するアルミニウム膜をアルミニウム箔としてリチウムイオン電池等の正極集電体として用いた場合には活物質を多く保持することができるので充電容量、電池容量をより高めることができる。
(6)前記添加剤として1,10−フェナントロリンを用い、過電圧測定用の参照極及び対極にはアルミニウムを用い、作用極には白金を用いて、前記過電圧を50mV〜120mVに制御する(5)に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記本発明(6)により溶融塩へ添加する添加剤の濃度を適切な濃度に制御することができる。
(7)前記溶融塩に前記添加剤が添加されており、前記アルミニウム膜の表面を鏡面とする(1)から(4)のいずれか1項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記本発明(7)により、電解法によって鏡面を有するアルミニウム膜を製造することができる。なお、本発明でいう鏡面とは表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が1.0nm〜20.0nmである場合をいう。また、本発明(7)では、添加剤は平滑化剤としての役割を有している。
(8)前記アルミニウム膜の厚さが0.5μm以上10μm以下である(7)に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記本発明(8)により、リチウムイオン電池及び電気二重層キャパシタ等の内部から電気を取り出すためのタブリードとして好適に使用できるアルミニウム箔を製造することができる。
(9)前記添加剤として1,10−フェナントロリンを用い、過電圧測定用の参照極及び対極にはアルミニウムを用い、作用極には白金を用いて、前記過電圧を130mV〜170mVに制御する(7)又は(8)に記載のアルミニウム膜の製造方法。
上記本発明(9)により溶融塩へ添加する添加剤の濃度を適切な濃度に制御することができる。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載のアルミニウム膜の製造方法によって得られたアルミニウム膜を基材から分離させるアルミニウム箔の製造方法。
上記本発明(10)により粗面を有するアルミニウム箔や鏡面を有するアルミニウム箔を製造することができる。
(11)前記アルミニウム箔の厚さが10μm以下である(10)に記載のアルミニウム箔の製造方法。
上記本発明(11)により、例えばリチウムイオン電池の正極集電体としての使用にも適したアルミニウム箔を、電解めっき法によって得ることができる。
本発明によれば、電解めっき法によってアルミニウム膜の表面粗さが所望の表面粗さとなるようにアルミニウム膜及びアルミニウム箔を製造することができる。
本発明のアルミニウム箔の製造装置の一例を示す図である。 本発明のアルミニウム箔の製造装置の一例を示す図である。 圧延により銅箔を製造する製造装置の例を示す図である。 添加剤として1,10−フェナントロリンを用いた場合の過電圧と添加剤濃度との関係を示す図である。 添加剤として1,10−フェナントロリンを用いた場合の過電圧と添加剤濃度との関係を示す図である。 添加剤としてピラジンを用いた場合の過電圧と添加剤濃度との関係を示す図である。
本発明のアルミニウム膜は基材上に成分を調整した溶融塩を用いて溶融塩電解してアルミニウムを電着することによって得られる。
溶融塩としては、有機溶融塩又は無機溶融塩を用いることができる。有機溶融塩としては、有機系ハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物の共晶塩である有機溶融塩を用いることができ、有機系ハロゲン化物としてはイミダゾリウム塩及びピリジニウム塩(ブチルピリジニウムクロライド(BPC)等)などが使用できる。
中でもイミダゾリウム塩が好ましく、1,3位にアルキル基(炭素数1〜5)を持つイミダゾリウムカチオンを含む塩が好ましく用いられ、特に塩化アルミニウム−1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AlCl−EMIC)系溶融塩が、安定性が高く分解し難いことや電気伝導率が高いことから最も好ましく用いられる。溶融塩浴の温度は10℃〜100℃、好ましくは25℃〜80℃、より好ましくは30℃〜60℃である。高温になる程めっき可能な電流密度範囲が広くなり、100℃以下にすることにより加熱コストが小さくなり、溶融塩の分解を抑制できる。
ピリジニウム塩としてはブチルピリジニウムクロライド(BPC)等が使用できる。
無機溶融塩としてはアルカリ金属のハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物の共晶塩(AlCl−XCl(X:アルカリ金属))を使用することができる。このような無機溶融塩はイミダゾリウム塩浴のような有機塩浴に比べて一般に溶融温度は高いが、水分や酸素など環境条件の制約が少なく、全体に低コストでの実用化が可能とできる。
但し、本発明では後述するように添加剤を溶融塩に添加する場合があるが、無機溶融塩は融点が高いため、めっき液の液温を高くする必要がある。また、高温では添加剤が揮発する可能性や分解する可能性があるため、低温で溶融する有機溶融塩を用いることが好ましい。
アルミニウム膜の表面を、算術平均粗さ(Ra)が0.2μm〜0.5μmであるか、又は十点平均粗さ(Rz)が1μm〜5μmであるような表面粗さとするには、膜厚を薄くする場合にはベンゼン、キシレン、ピリジン、ピラジン、ベンゾトリアゾール、ポリスチレン、1,10−フェナントロリン等の添加剤を溶融塩に添加することが好ましい。
また、膜厚を大きくする場合には、上記の添加剤は必ずしも必要ではないが、上記の添加剤を添加することにより粗さが均一になるという効果が得られる。
溶融塩としてAlCl−EMICを用いる場合には、特に1,10−フェナントロリンが好ましく用いられる。アルミニウム膜の表面を、算術平均粗さ(Ra)が0.2μm〜0.5μmであるか、又は十点平均粗さ(Rz)が1μm〜5μmである表面粗さで、膜厚を薄くする場合には、めっき浴への添加剤の添加量は、0.3g/L以下が好ましい。
アルミニウム膜を鏡面とするには溶融塩に平滑化剤として添加剤を添加する必要がある。
添加剤としてはベンゼン、キシレン、ピリジン、ピラジン、ベンゾトリアゾール、ポリスチレン、1,10−フェナントロリン等を挙げることができ溶融塩の種類によって適宜選択することができる。
溶融塩としてAlCl−EMICを用いる場合には、特に1,10−フェナントロリンが好ましく用いられる。アルミニウム膜を鏡面とする場合、めっき浴への添加剤の添加量は、0.3g/L〜5.0g/Lが好ましい。0.3g/L以上であることにより十分な平滑性が得られ、また5.0g/L以下であることにより十分なめっき効率が得られる。
上記添加剤はめっき工程中に一部がめっき膜に取り込まれるため、めっきの進行につれて添加剤の濃度が低下する。従って、めっき膜表面の荒れ具合を均一化するには、添加剤の濃度を所定の範囲内に維持する必要がある。
このため、添加剤の濃度をモニタリングする必要があるが、本発明では過電圧を測定し、この測定値に基づいて所定の範囲内の過電圧となるように添加剤を溶融塩に添加する。モニタリングは連続的に行なっても良く、また、インターバルを設けて行ってもよい。
過電圧は、アルミニウムの電着反応が起こる理論電位(平衡電極電位)と、実際にアルミニウムの電着反応が開始するときの電極の電位との電位差の絶対値である。この電位差の絶対値は添加剤の濃度を反映しているので、この過電圧が所定の範囲内となるように添加剤の添加量を調整することにより添加剤の濃度を制御することができる。
図4および図5に、溶融塩としてAlCl−EMICを用い、添加剤として1,10−フェナントロリンを用い、過電圧測定用の参照極及び対極にはアルミニウムを用い、作用極には白金を用いて過電圧を測定した場合の過電圧と添加剤濃度との関係を示す。作用極に白金以外の材料を使用する場合の過電圧と添加剤濃度との関係は、作用極に白金を使用する場合の過電圧と添加剤濃度との関係とは異なる。したがって、電極に使用する材料の種類に応じて、過電圧と添加剤濃度との関係を求めておく必要がある。
溶融塩としてAlCl−EMICを用い、添加剤として1,10−フェナントロリンを用い、過電圧測定用の参照極及び対極にはアルミニウムを用い、作用極には白金を用い、算術平均粗さ(Ra)が0.2μm〜0.5μmであるか、又は十点平均粗さ(Rz)が1μm〜5μmである表面粗さを有するアルミニウム膜を得たい場合には、過電圧が0mV〜120mVとなるような添加剤濃度とすることが好ましい。特に、アルミニウム膜表面でのデンドライト成長を抑制するために、50mV〜120mVであることがより好ましい。但し、過電圧が50mV未満であっても、上記の表面粗さを得ることができる。
溶融塩としてAlCl−EMICを用い、添加剤として1,10−フェナントロリンを用い、過電圧測定の参照極及び対極にはアルミニウムを用い、作用極には白金を用いて、表面が鏡面のアルミニウム膜を得たい場合には、過電圧が130mV以上となるような添加剤濃度とすることが好ましい。但し、過電圧が170mVを超えると、アルミニウム膜の表面が黒くなり始めるので、過電圧値は130mV〜170mVとなるような添加濃度とすることが好ましい。
また、図6に、溶融塩としてAlCl−EMICを用い、添加剤としてピラジンを用いた場合の過電圧と添加剤濃度との関係を示す。溶融塩としてAlCl−EMICを用い、添加剤としてピラジンを用い、過電圧測定用の参照極及び対極にはアルミニウムを用い、作用極には白金を用いて、表面が鏡面のアルミニウム膜を得たい場合には、過電圧値は140mV〜180mVとなるような添加剤濃度とすることが好ましい。
基材上に形成したアルミニウム膜は、基材を除去することによりアルミニウム箔とすることができる。基材としては後の工程でアルミニウム膜と分離することができる材料であればいかなる材料でも使用できる。基材としてアルミニウムを選択すると、通常はアルミニウムの表面には酸化アルミニウムが存在するため、アルミニウム膜との接着性がよくないため、アルミニウム膜を剥離しやすくなる。
基材として導電化処理した樹脂を用いると、めっき後に樹脂を熱分解等で除去することによりアルミニウム箔を得ることができる。基材としてニッケルを選択した場合には、ニッケルを濃硝酸で溶解除去することによりアルミニウム箔を得ることができる。また、基材の形状としてはアルミニウム箔を連続的に製造することができるエンドレスベルト状のものか、ドラム状のものが好ましい。
図1は本発明のアルミニウム箔の製造方法のために使用される製造装置の一例を示すものである。電解槽1中には溶融塩を含む電解液が収容されている。
そして、電解槽1中には、円筒状の陰極ドラム(給電ドラム)2が回転可能に配置されており、この陰極ドラム2に沿ってほぼ一定の距離を保って電解用陽極(アルミニウム板)3が配置されており、この陰極ドラム2と電解用陽極3との間に電解液が供給される。
この陰極ドラム2と電解用陽極3との間には整流器11によって電解液からアルミニウムが電着するような電圧を印加することによって、回転する陰極ドラム2の表面にアルミニウムが電着してアルミニウム膜が形成される。ドラムが回転するにつれてドラム表面に電着したアルミニウム膜は厚くなり、所定の膜厚になったアルミニウム膜はドラムから連続的に剥離されてアルミニウム箔4となり、巻き取りロール5によって巻き取られる。この時、アルミニウム箔4が薄い場合には補助フィルムローラ6から巻き出される補助フィルム7と積層されて巻取ロール5に巻き取ってもよい。
陰極ドラム2および電解用陽極3の間に供給され、電着により添加剤が減少した電解液は、図2に示すように、電解槽1からオーバーフローして連続的に回収電解液槽21に戻され、次いで補給液貯槽22に送液される。回収電解液槽21には添加剤貯槽23が接続されており、過電圧信号に基づいて制御信号を送る制御装置25からの制御信号により供給バルブ24が制御されて添加剤貯槽23から所定量の添加剤が回収電解液槽21に供給されて添加剤濃度が調整される。次いで電解液は補給液貯槽22から濾過機26によって、液中の固形物を除去したのち電解槽1に供給される。また、電解によって液温が上昇するので、冷却装置を設けて電解液を冷却しても良い。このように溶融塩中で電解めっきを行うことによって陰極ドラム2表面に均一な厚さのアルミニウムめっき層を形成することができる。
過電圧の測定は、電解槽1中に参照極、対極、作用極を設け、三極セルの電気化学測定装置を用意する。参照極に対し作用極に電圧を印加してアルミニウムが析出し始める電位、即ち、電流が流れ始める電位を測定する。この電圧を過電圧として求めればよい。なお、前記参照極及び対極にはアルミニウムを使用し、前記作用極には例えば、白金、グラッシーカーボン、金、銀、銅、ニッケル等を使用すればよい。作用極に白金以外の材料を使用する場合の過電圧と添加剤濃度との関係は、作用極に白金を使用する場合の過電圧と添加剤濃度との関係とは異なる。したがって、電極に使用する材料の種類に応じて、過電圧と添加剤濃度との関係を求めておく必要がある。
過電圧の値が設定範囲外の場合は、添加剤の供給バルブ24の開度を調節して補給液貯槽22への添加剤の供給量を制御する。
溶融塩中に水分や酸素が混入すると溶融塩が劣化したり、うまくめっきが行われないという問題が生じるため、電解は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、かつ密閉した環境下で行うことが好ましい。
図1に示す装置においては、電解槽1のめっき浴表面に蓋8をして電解槽1の下方から不活性ガス9をバブリングすることによって電解液を攪拌すると共に電解液中に含まれる水分や酸素を追い出すとともに、電解液の液面上の空間10を窒素ガス雰囲気としている。このようにすることにより、不活性ガス雰囲気に保つ空間10を狭い範囲とすることができ不活性ガスにかかるコストを下げることができる。
また、蓋8の代わりに電解液の液面に遮蔽板を浮遊させて外気をシャットアウトしてもよく、不活性ガスを電解槽1の上方から供給するようにしても良い。
本発明のアルミニウムめっき方法においては、前記めっき浴の温度が10℃〜100℃となるように調整しながら電気めっきを行うことが好ましい。めっき浴の温度が10℃以上にすることによりめっき浴の粘度や液抵抗を充分に低くすることができ、電流密度範囲を広げることができる。また、100℃以下にすることにより塩化アルミニウムの揮発を抑制することができる。前記めっき浴の温度は25℃〜80℃であることがより好ましく、30℃〜60℃であることが更に好ましい。
また、本発明のアルミニウムのめっき方法において使用する陰極ドラム2の材料は特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、銅、鉄等を好ましく用いることができる。
算術平均粗さ(Ra)が0.2μm〜0.5μmであるか、又は十点平均粗さ(Rz)が1μm〜5μmである表面粗さを有するアルミニウム箔は、アルミニウム箔の通常の用途に用いる他に、リチウムイオン電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオンキャパシタの集電体として好適に用いることができる。
鏡面アルミニウム箔はアルミニウム箔の通常の用途に用いる他に、例えばアルミラミネートフィルムを外装に用いたリチウムイオン電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオンキャパシタの内部から電気を取り出すためのタブリードとして好適に使用できる。タブリードは集電体に超音波溶接等で溶接されるが、接触性が良好な方が好ましいため、鏡面アルミニウム箔をタブリードとして用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は例示であって、本発明のアルミニウム膜の製造方法はこれらに限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の範囲によって示され、特許請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
参考例1−1]
図1に示すような電解アルミニウム箔製造装置を使用し、アルミニウム製の直径0.25mの陰極ドラム2を整流器11の陰極側に接続し、対極のアルミニウム板(純度99.99%)を陽極側に接続して、電解槽1底部から窒素を5L/minの流量でバブリングさせながら以下の電解条件でめっきを行い、得られたアルミニウムのめっき膜を陰極ドラム2から連続的に剥離して、厚さ8μmの電解アルミニウム箔を得た。また、過電圧測定用の参照極及び対極にはアルミニウムを用い、作用極には白金を用いた。
電解条件は次の通りである。
溶融塩組成 : 33mol%EMIC−67mol%AlCl
添加剤 : なし
液温 : 45℃
電流密度 : 6A/dm(直流電流)
設定過電圧 : 20mV
得られた電解アルミニウム箔の幅方向中央部と幅方向端部の表面粗さを測定したところ、幅方向端部に比べ、幅方向中央部の表面粗さが大きくなっていた。
参考例1−2]
溶融塩組成 : 33mol%EMIC−67mol%AlCl
添加剤 : なし
液温 : 45℃
電流密度 : 6A/dm(直流電流)
設定過電圧 : 20mV
参考例1−2では、参考例1−1と同様にしてアルミニウム箔を得た。参考例1−2の電解アルミニウム箔の表面粗さについては、測定位置を特定せずに算術平均粗さのみを測定した。
[実施例
電解液組成 : 33mol%EMIC−67mol%AlCl
添加剤 : 1,10−フェナントロリン
液温 : 45℃
電流密度 : 6A/dm(直流電流)
設定過電圧 : 90mV〜120mV
実施例では、添加剤として1,10−フェナントロリンを添加し、添加剤濃度を設定過電圧が90mV〜120mV以上となるようにしたこと以外は、参考例1−1と同様にしてアルミニウム箔を得た。得られた電解アルミニウム箔の幅方向中央部と幅方向端部の表面粗さを測定したところ、幅方向端部、幅方向中央部ともに表面粗さがほぼ同等となっていた
[実施例−1]
電解液組成 : 33mol%EMIC−67mol%AlCl
添加剤 : 1,10−フェナントロリン
液温 : 45℃
電流密度 : 6A/dm(直流電流)
設定過電圧 : 130mV
実施例−1では、添加剤として1,10−フェナントロリンを添加し、添加剤濃度を設定過電圧が120mV以上となるようにしたこと以外は参考例1−1と同様にして電解アルミニウム箔を得た。ここでは設定過電圧は130mVとしている。
[実施例−2]
溶融塩組成 : 33mol%EMIC−67mol%AlCl
添加剤 : 1,10−フェナントロリン
液温 : 45℃
電流密度 : 6A/dm(直流電流)
設定過電圧 : 130mV〜160mV
実施例−2では、添加剤濃度を設定過電圧が130mV〜160mVとなるようにしたこと以外は、実施例−1と同様にしてアルミニウム箔を得た。実施例−2の電解アルミニウム箔の表面粗さについては、測定位置を特定せずに算術平均粗さのみを測定した。
[実施例
電解液組成 : 33mol%EMIC−67mol%AlCl
添加剤 : ピラジン
液温 : 45℃
電流密度 : 6A/dm(直流電流)
設定過電圧 : 140mV〜180mV
実施例では、添加剤としてピラジンを添加し、添加剤濃度を設定過電圧が140mV〜180mVとなるようにしたこと以外は、参考例1−1と同様にしてアルミニウム箔を得た。実施例の電解アルミニウム箔の表面粗さについては、測定位置を特定せずに算術平均粗さのみを測定した。
[評価]
参考例1−1、参考例1−2、実施例1〜実施例において得られたアルミニウム箔の表面粗さを表1に示す。
Figure 0006202344
(図1、2)
1 電解槽
2 陰極ドラム
3 電解用陽極
4 アルミニウム箔
5 巻取ロール
6 補助フィルムローラ
7 補助フィルム
8 蓋
9 不活性ガス
10 空間
11 整流器
21 回収電解液槽
22 補給液貯槽
23 添加剤貯槽
24 供給バルブ
25 制御装置
26 濾過機
(図3)
1〜4 巻取・巻戻リール
5 リバーシブル圧延機
6 ワークロール
7 バックアップロール
11、12、17、18 デフレクタロール
A、B ストリップ

Claims (9)

  1. 溶融塩を含む電解液が供給される電解槽中で、基材上にアルミニウムを電着させてアルミニウム膜を製造する方法であって、
    前記電解液におけるアルミニウムが電析する際の過電圧と前記溶融塩へ添加する添加剤の濃度との所定の関係に基づいて、前記過電圧の測定値が所望の範囲内になるように前記添加剤の濃度を調整し、
    前記添加剤は、1,10−フェナントロリン又はピラジンであり、
    前記アルミニウム膜の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.2μm〜0.5μmとなるか、又は十点平均粗さ(Rz)が1μm〜5μmとなる、アルミニウム膜の製造方法。
  2. 前記添加剤として1,10−フェナントロリンを用い、過電圧測定用の参照極及び対極にはアルミニウムを用い、作用極には白金を用いて、前記過電圧を50mV〜120mVに制御する請求項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
  3. 溶融塩を含む電解液が供給される電解槽中で、基材上にアルミニウムを電着させてアルミニウム膜を製造する方法であって、
    前記電解液におけるアルミニウムが電析する際の過電圧と前記溶融塩へ添加する添加剤の濃度との所定の関係に基づいて、前記過電圧の測定値が所望の範囲内になるように前記添加剤の濃度を調整し、
    前記添加剤は、1,10−フェナントロリン又はピラジンであり、
    前記アルミニウム膜の表面を鏡面とする、アルミニウム膜の製造方法。
  4. 前記アルミニウム膜の厚さが0.5μm以上10μm以下である請求項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
  5. 前記添加剤として1,10−フェナントロリンを用い、過電圧測定用の参照極及び対極にはアルミニウムを用い、作用極には白金を用いて、前記過電圧を130mV〜170mVに制御する請求項又は請求項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
  6. 前記電解液が塩化アルミニウム及びアルキルイミダゾリウムクロリドを含むか、又は塩化アルミニウム及びアルキルピリジニウムクロリドを含み、前記アルキルイミダゾリウムクロリド及びアルキルピリジニウムクロリドにおけるアルキル基の炭素原子数が1個〜5個の範囲にある請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
  7. 前記溶融塩が塩化アルミニウム−1−エチル−3−アルキルイミダゾリウムクロリドであり、前記添加剤が1,10−フェナントロリンである請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
  8. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載のアルミニウム膜の製造方法によって得られたアルミニウム膜を前記基材から分離させるアルミニウム箔の製造方法。
  9. 前記アルミニウム箔の厚さが10μm以下である請求項に記載のアルミニウム箔の製造方法。
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