JP2016113638A - アルミニウム膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面平滑性に優れるアルミニウム膜を連続的に大量に安価に製造することが可能なアルミニウム膜の製造方法の提供。【解決手段】電解液中で基材表面にアルミニウムを電着させるアルミニウム膜の製造方法であって、前記電解液は、(A)アルミニウムハロゲン化物と、(B)アルキルイミダゾリウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物及び尿素化合物からなる群より選択されるいずれか1種以上の化合物と、(C)1,10−フェナントロリン一水和物と、を成分として含み、前記(A)成分と前記(B)成分との混合比はモル比で1:1〜3:1の範囲にあり、前記電解液における前記1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を0.03g/L以上、7.5g/L以下の範囲になるように制御し、前記電解液に塩化水素ガスを供給する処理操作を含むアルミニウム膜の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明はアルミニウム膜の製造方法に関し、より詳しくは、溶融塩を含む電解液中で表面平滑性に優れたアルミニウム膜を製造する方法に関する。
アルミニウムは導電性、耐腐食性、軽量、無毒性など多くの優れた特徴を有しており、金属製品等へのめっきに広く利用されている。しかしながらアルミニウムは酸素に対する親和力が大きく、酸化還元電位が水素より低いため、水溶液系のめっき浴では電気めっきを行うことが困難である。
このため、アルミニウムを電気めっきする方法としては溶融塩浴を用いる方法が行われている。しかし、従来の溶融塩によるめっき浴は高温にする必要があるため、樹脂製品に対してアルミニウムを電気めっきしようとすると樹脂が溶けてしまい、電気めっきをすることができないという問題があった。
この問題に対して特開2012−144763号公報(特許文献1)では、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)や、1−ブチルピリジニウムクロリド(BPC)などの有機塩化物塩と塩化アルミニウム(AlCl3)とを混合して室温で液体のアルミニウムめっき浴を形成し、このめっき浴を用いて樹脂成形体の表面にアルミニウムを電気めっきすればよいことが記載されている。
特に、特許文献1に記載のEMIC−AlCl3系のめっき液は液の特性が良好であり、アルミニウムめっき液として非常に有用である。また、特許文献1には前記アルミニウムめっき液に1,10−フェナントロリンを濃度が0.25g/L〜7.0g/Lとなるように添加することで、平滑なアルミニウム膜が形成されることが記載されている。
三次元網目構造を有する金属多孔体として、上記特許文献1に記載の方法により製造したアルミニウム多孔体は、例えば、リチウムイオン電池の正極の容量を向上させるものとして非常に有望である。アルミニウムは導電性、耐腐食性、軽量などの優れた特徴があるため、現在では、アルミニウム箔の表面にコバルト酸リチウム等の活物質を塗布したものがリチウムイオン電池の正極として使用されている。この正極をアルミニウムからなる多孔体により形成することで、表面積を大きくし、アルミニウムの内部にも活物質を充填することが可能となる。これにより、電極を厚くしても活物質の利用率が減少することがなくなり、単位面積当たりの活物質の利用率が向上し、正極の容量を向上させることが可能となる。
上記のように三次元網目構造を有するアルミニウム多孔体は非常に有用であり、本発明者等は当該アルミニウム多孔体を連続的に大量に製造することを検討した。その結果、特許文献1に記載の方法により非常に良好なアルミニウム多孔体を得られるものの、連続生産を続けているとアルミニウム膜の平滑性が低下することがあり、めっき液を新しいものに交換する必要がある場合がみられた。
そこで本発明者等は、めっき液中において、めっき膜の平滑性に寄与する有効な状態のフェナントロリンと、めっき膜の平滑性に寄与しない無効な状態のフェナントロリンとが存在することを仮定した。1,10−フェナントロリンには、無水物と一水和物の2種類が存在するが、特許文献1には、特にどちらのものが良いかは記載されていない。しかしながら、めっき液中に含まれる塩化アルミニウム(AlCl3)は水と反応することで劣化してしまうため、一水和物ではなく無水物の1,10−フェナントロリンを使用することが技術常識であった。
上記のように、本発明者等は、有効な状態のフェナントロリンの量を増やすという観点から検討を重ねた。その結果、驚くべきことに、1,10−フェナントロリンの無水物ではなく1,10−フェナントロリン一水和物をめっき液中に添加した場合に、少量でも無水物のものよりめっき膜の平滑性が向上し、平滑性に有効な状態のフェナントロリンが増加することを見出した(特許文献2参照)。
なお、無水物の1,10−フェナントロリンは大気中の水分によっても一部が水和されてしまうため、無水物のみからなる1,10−フェナントロリンを得ることは非常に困難である。すなわち、無水物の1,10−フェナントロリンをめっき液に添加した場合においても、めっき液中には1,10−フェナントロリン一水和物も混入してしまう。従来の方法で連続的にアルミニウム膜を製造し続けた場合に膜表面の平滑性が低下したのは、無水物の1,10−フェナントロリンに含まれていた一水和物が連続操業によって消費されてめっき液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が低下したことが原因であると考えられる。
特許文献2に記載のように、溶融塩アルミニウムめっき液中に1,10−フェナントロリン一水和物を添加することで、少量であっても、アルミニウム膜の平滑性に寄与する有効な状態のフェナントロリンが増加する。しかしながら、1,10−フェナントロリン一水和物をめっき液に補充した場合にも、めっき膜を大量に連続的に生産していると、めっき膜の平滑性に寄与しない無効なフェナントロリンが徐々にではあるが、めっき液中に蓄積されていくことが見出された。
そのため本発明者等は更なる探求を重ねた結果、塩化1,10−フェナントロリニウム一水和物をめっき液中に添加することで、めっき液中にめっき膜の平滑性に寄与しない無効なフェナントロリンを蓄積させずにアルミニウムめっき膜の連続操業が可能となることを見出した。しかしながら塩化1,10−フェナントロリニウム一水和物は1,10−フェナントロリン一水和物から生産されるものであり、非常に高価な試薬である。また、塩化1,10−フェナントロリニウム一水和物は工業用の安価なものが市販されておらず、前述のようにアルミニウムめっき膜を大量に連続生産する際に添加剤として使用するとアルミニウムめっき膜の生産コストが高くなってしまっていた。
そこで、本発明は、表面平滑性に優れるアルミニウム膜を連続的に大量に安価に製造することが可能なアルミニウム膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るアルミニウム膜の製造方法は、
(1)電解液中で基材表面にアルミニウムを電着させるアルミニウム膜の製造方法であって、
前記電解液は、
(A)アルミニウムハロゲン化物と、
(B)アルキルイミダゾリウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物及び尿素化合物からなる群より選択されるいずれか1種以上の化合物と、
(C)1,10−フェナントロリン一水和物と、
を成分として含み、
前記(A)成分と前記(B)成分との混合比はモル比で1:1〜3:1の範囲にあり、
前記電解液における前記1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を0.03g/L以上、7.5g/L以下の範囲になるように制御し、
前記電解液に塩化水素ガスを供給する処理操作を含むアルミニウム膜の製造方法、である。
(1)電解液中で基材表面にアルミニウムを電着させるアルミニウム膜の製造方法であって、
前記電解液は、
(A)アルミニウムハロゲン化物と、
(B)アルキルイミダゾリウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物及び尿素化合物からなる群より選択されるいずれか1種以上の化合物と、
(C)1,10−フェナントロリン一水和物と、
を成分として含み、
前記(A)成分と前記(B)成分との混合比はモル比で1:1〜3:1の範囲にあり、
前記電解液における前記1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を0.03g/L以上、7.5g/L以下の範囲になるように制御し、
前記電解液に塩化水素ガスを供給する処理操作を含むアルミニウム膜の製造方法、である。
本発明により、表面平滑性に優れるアルミニウム膜を連続的に大量に安価に製造することが可能なアルミニウム膜の製造方法を提供することができる。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るアルミニウム膜の製造方法は、電解液中で基材表面にアルミニウムを電着させるアルミニウム膜の製造方法であって、
前記電解液は、
(A)アルミニウムハロゲン化物と、
(B)アルキルイミダゾリウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物及び尿素化合物からなる群より選択されるいずれか1種以上の化合物と、
(C)1,10−フェナントロリン一水和物と、
を成分として含み、
前記(A)成分と前記(B)成分との混合比はモル比で1:1〜3:1の範囲にあり、
前記電解液における前記1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を0.03g/L以上、7.5g/L以下の範囲になるように制御し、
前記電解液に塩化水素ガスを供給する処理操作を含むアルミニウム膜の製造方法、である。
上記(1)に記載の発明により、表面平滑性に優れるアルミニウム膜を連続的に大量に安価に製造することが可能なアルミニウム膜の製造方法を提供することができる。
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るアルミニウム膜の製造方法は、電解液中で基材表面にアルミニウムを電着させるアルミニウム膜の製造方法であって、
前記電解液は、
(A)アルミニウムハロゲン化物と、
(B)アルキルイミダゾリウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物及び尿素化合物からなる群より選択されるいずれか1種以上の化合物と、
(C)1,10−フェナントロリン一水和物と、
を成分として含み、
前記(A)成分と前記(B)成分との混合比はモル比で1:1〜3:1の範囲にあり、
前記電解液における前記1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を0.03g/L以上、7.5g/L以下の範囲になるように制御し、
前記電解液に塩化水素ガスを供給する処理操作を含むアルミニウム膜の製造方法、である。
上記(1)に記載の発明により、表面平滑性に優れるアルミニウム膜を連続的に大量に安価に製造することが可能なアルミニウム膜の製造方法を提供することができる。
(2)上記(1)に記載のアルニウム膜の製造方法は、
前記電解液中への前記塩化水素ガスの供給量が、前記電解液1Lに対して、1.0mL/min以上、5.0L/min以下である、ことが好ましい。
上記(2)に記載の発明によれば、アルミニウム膜の平滑性に寄与せずに電解液中に蓄積してしまうフェナントロリンを、アルミニウム膜の平滑性に寄与するフェナントロリンに効率的に変換することができ、これにより、表面が平滑なアルミニウム膜の製造を連続的に行うことができる。
前記電解液中への前記塩化水素ガスの供給量が、前記電解液1Lに対して、1.0mL/min以上、5.0L/min以下である、ことが好ましい。
上記(2)に記載の発明によれば、アルミニウム膜の平滑性に寄与せずに電解液中に蓄積してしまうフェナントロリンを、アルミニウム膜の平滑性に寄与するフェナントロリンに効率的に変換することができ、これにより、表面が平滑なアルミニウム膜の製造を連続的に行うことができる。
(3)上記(1)又は上記(2)に記載のアルミニウム膜の製造方法は、
前記基材が、導電化処理を施した三次元網目状構造の樹脂構造体である、ことが好ましい。
上記(3)に記載の発明によれば、蓄電デバイスの集電体やフィルタ等に好適な、表面が平滑で三次元網目状構造を有するアルミニウム多孔体を連続的に大量に製造することができる。
前記基材が、導電化処理を施した三次元網目状構造の樹脂構造体である、ことが好ましい。
上記(3)に記載の発明によれば、蓄電デバイスの集電体やフィルタ等に好適な、表面が平滑で三次元網目状構造を有するアルミニウム多孔体を連続的に大量に製造することができる。
(4)上記(1)から上記(3)のいずれか一項に記載のアルミニウム膜の製造方法は、
前記(A)成分が塩化アルミニウムであり、前記(B)成分が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(以下、EMICとも記す)である、ことが好ましい。
塩化アルミニウムは前記(A)成分として一般的であり、入手が容易である。また、前記電解液において塩化アルミニウムと共に用いる(B)成分としてはEMICが好適である。このため前記(4)に記載の発明によれば前記電解液を容易かつ安価に作製することができる。
前記(A)成分が塩化アルミニウムであり、前記(B)成分が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(以下、EMICとも記す)である、ことが好ましい。
塩化アルミニウムは前記(A)成分として一般的であり、入手が容易である。また、前記電解液において塩化アルミニウムと共に用いる(B)成分としてはEMICが好適である。このため前記(4)に記載の発明によれば前記電解液を容易かつ安価に作製することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法についての具体例を以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法についての具体例を以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
前述のように、溶融塩からなる電解液(めっき液)を用いて、めっきによってアルミニウム膜を基材表面に電着させる場合に、電解液中に1,10−フェナントロリン一水和物を添加することで、アルミニウム膜の表面を平滑にすることができることが従来知られている。
しかしながら、アルミニウム膜を大量に連続的に製造していると、徐々にではあるが、アルミニウム膜の平滑化に寄与しない無効なフェナントロリンが電解液中に蓄積することを本発明者等は見出した。そこで本発明者等は、電解液中に蓄積してしまう無効なフェナントロリンを、アルミニウム膜の平滑化に寄与する有効なフェナントロリンに変換することができないか鋭意検討を重ねた。
なお、本願においては、アルミニウム膜の平滑化に寄与するフェナントロリンのことを「有効なフェナントロリン」といい、アルミニウム膜の平滑化に寄与せずに電解液中に蓄積してしまうフェナントロリンのことを「無効なフェナントロリン」というものとする。
しかしながら、アルミニウム膜を大量に連続的に製造していると、徐々にではあるが、アルミニウム膜の平滑化に寄与しない無効なフェナントロリンが電解液中に蓄積することを本発明者等は見出した。そこで本発明者等は、電解液中に蓄積してしまう無効なフェナントロリンを、アルミニウム膜の平滑化に寄与する有効なフェナントロリンに変換することができないか鋭意検討を重ねた。
なお、本願においては、アルミニウム膜の平滑化に寄与するフェナントロリンのことを「有効なフェナントロリン」といい、アルミニウム膜の平滑化に寄与せずに電解液中に蓄積してしまうフェナントロリンのことを「無効なフェナントロリン」というものとする。
本発明者等が種々検討を重ねた結果、電解液中に水分が混入すると、無効なフェナントロリンが有効なフェナントロリンに変化することが見出された。これは、電解液中に混入した水分がAl2Cl7 -と反応した際に生じるプロトンが無効なフェナントロリンに付加(プロトネーション)したためと考えられた。しかしながらこの場合には、無効なフェナントロリンが有効なフェナントロリンに変化するものの、Al2Cl7 -が加水分解されてしまうことによって電解液中のAl2Cl7 -の濃度が低下し、電解液が劣化してしまう。
そこで、本発明者等は無効なフェナントロリンが蓄積した電解液にプロトンを供給すべく、塩化水素(HCl)ガスを吹き込んだところ、無効なフェナントロリンが有効なフェナントロリンに変化し、この電解液を用いることで平滑なアルミニウム膜が得られることを見出した。
そこで、本発明者等は無効なフェナントロリンが蓄積した電解液にプロトンを供給すべく、塩化水素(HCl)ガスを吹き込んだところ、無効なフェナントロリンが有効なフェナントロリンに変化し、この電解液を用いることで平滑なアルミニウム膜が得られることを見出した。
<アルミニウム膜の製造方法>
本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法は、電解液中で基材表面にアルミニウムを電着させるアルミニウム膜の製造方法である。そして、前記電解液は、(A)アルミニウムハロゲン化物と、(B)アルキルイミダゾリウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物及び尿素化合物からなる群より選択されるいずれか1種以上の化合物と、(C)1,10−フェナントロリン一水和物と、を成分として含む。前記(A)成分と前記(B)成分との混合比はモル比で1:1〜3:1の範囲にある。また、アルミニウムを基材表面に電着させる過程において、前記電解液における前記1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を0.03g/L以上、7.5g/L以下の範囲になるように制御する。そして、更に、前記電解液に塩化水素ガスを供給する処理操作を含むことで、電解液中の無効なフェナントロリンを有効なフェナントロリンに変化させることができる。
以下に各構成について詳述する。
本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法は、電解液中で基材表面にアルミニウムを電着させるアルミニウム膜の製造方法である。そして、前記電解液は、(A)アルミニウムハロゲン化物と、(B)アルキルイミダゾリウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物及び尿素化合物からなる群より選択されるいずれか1種以上の化合物と、(C)1,10−フェナントロリン一水和物と、を成分として含む。前記(A)成分と前記(B)成分との混合比はモル比で1:1〜3:1の範囲にある。また、アルミニウムを基材表面に電着させる過程において、前記電解液における前記1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を0.03g/L以上、7.5g/L以下の範囲になるように制御する。そして、更に、前記電解液に塩化水素ガスを供給する処理操作を含むことで、電解液中の無効なフェナントロリンを有効なフェナントロリンに変化させることができる。
以下に各構成について詳述する。
(電解液)
前記(A)成分であるアルミニウムハロゲン化物は、前記(B)成分と混合した場合に110℃程度以下で溶融塩を形成するものであれば良好に用いることができる。例えば、塩化アルミニウム(AlCl3)、臭化アルミニウム(AlBr3)、ヨウ化アルミニウム(AlI3)等が挙げられるが、これらの中でも塩化アルミニウムが最も好ましい。
前記(A)成分であるアルミニウムハロゲン化物は、前記(B)成分と混合した場合に110℃程度以下で溶融塩を形成するものであれば良好に用いることができる。例えば、塩化アルミニウム(AlCl3)、臭化アルミニウム(AlBr3)、ヨウ化アルミニウム(AlI3)等が挙げられるが、これらの中でも塩化アルミニウムが最も好ましい。
前記(B)成分のアルキルイミダゾリウムハロゲン化物は、前記(A)成分と混合した場合に110℃程度以下で溶融塩を形成するものを良好に用いることができる。例えば、1,3位にアルキル基(炭素原子数1〜5)を持つイミダゾリウムクロリドや、1,2,3位にアルキル基(炭素原子数1〜5)を持つイミダゾリウムクロリド、1,3位にアルキル基(炭素原子数1〜5)を持つイミダゾリウムヨーシド等が挙げられる。より具体的には、1−エチル−3メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(BMIC)、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムクロリド(MPIC)等が挙げられるが、これらの中でも1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)を最も好ましく用いることができる。
前記(B)成分のアルキルピリジニウムハロゲン化物も、前記(A)成分と混合した場合に110℃程度以下で溶融塩を形成するものを良好に用いることができる。例えば、1−ブチルピリジニウムクロリド(BPC)、1−エチルピリジニウムクロリド(EPC)、1−ブチル−3−メチルピリジニウムクロリド(BMPC)等が挙げられるが、これらの中でも1−ブチルピリジニウムクロリド(BPC)が最も好ましい。
前記(B)成分の尿素化合物は、尿素及びその誘導体を意味するものであり、前記(A)成分と混合した場合に110℃程度以下で溶融塩を形成するものを良好に用いることができる。
例えば、下記式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
例えば、下記式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
前記尿素化合物は上記の中でも、尿素、ジメチル尿素を特に好ましく用いることができる。
前記電解液は、前記(A)成分と前記(B)成分との混合比が、モル比で1:1〜3:1の範囲にあるようにすることで、前記基材表面にアルミニウム膜を電着させるのに適した電解液、すなわちアルミニウムめっき液が得られる。
前記(B)成分を1とした場合の前記(A)成分のモル比が1未満の場合にはアルミニウムの電析反応が生じない。また、前記(B)成分を1とした場合の前記(A)成分のモル比が3を超える場合には、アルミニウムめっき液中に塩化アルミニウムが析出し、アルミニウム膜に取り込まれ、膜の品質が低下する。
前記(B)成分を1とした場合の前記(A)成分のモル比が1未満の場合にはアルミニウムの電析反応が生じない。また、前記(B)成分を1とした場合の前記(A)成分のモル比が3を超える場合には、アルミニウムめっき液中に塩化アルミニウムが析出し、アルミニウム膜に取り込まれ、膜の品質が低下する。
前記(C)成分である1,10−フェナントロリン一水和物が前記電解液中に含まれていることにより、前記基材の表面に形成されるアルミニウム膜の表面を平滑にして鏡面状にすることができる。
なお、本発明においてアルミニウム膜の表面が鏡面状であるとは、レーザー顕微鏡により測定されるアルミニウム膜表面の算術平均粗さRaが0.10μm以下であることをいう。
なお、本発明においてアルミニウム膜の表面が鏡面状であるとは、レーザー顕微鏡により測定されるアルミニウム膜表面の算術平均粗さRaが0.10μm以下であることをいう。
(濃度を制御する方法)
前記電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を0.03g/L以上にすることで、平滑性に優れた鏡面状のアルミニウム膜を得ることができる。しかしながら、平滑性が増すほどアルミニウム膜に残留する応力が大きくなってしまい、アルミニウム膜と基材との密着性が低下したり、あるいはアルミニウム膜にクラックが生じたりしてしまうことがある。このため、前記電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度は0.03g/L以上、7.5g/L以下にすればよい。
上記の観点から、前記電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度は、0.1g/L以上、5.0g/L以下とすることが好ましく、0.3g/L以上、1.5g/L以下とすることがより好ましい。
前記電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を0.03g/L以上にすることで、平滑性に優れた鏡面状のアルミニウム膜を得ることができる。しかしながら、平滑性が増すほどアルミニウム膜に残留する応力が大きくなってしまい、アルミニウム膜と基材との密着性が低下したり、あるいはアルミニウム膜にクラックが生じたりしてしまうことがある。このため、前記電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度は0.03g/L以上、7.5g/L以下にすればよい。
上記の観点から、前記電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度は、0.1g/L以上、5.0g/L以下とすることが好ましく、0.3g/L以上、1.5g/L以下とすることがより好ましい。
前記電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が前記範囲内となるように制御することで、平滑性に優れたアルミニウム膜を製造することができるが、アルミニウム膜を連続的に大量に製造する場合には、アルミニウム膜の平滑性に寄与しない無効なフェナントロリンが電解液中に蓄積してしまう。このため、後述するように、本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法では、電解液中に塩化水素ガスを供給することによって無効なフェナントロリンを有効なフェナントロリンに変化させる。
なお、前記電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度は、基材の種類に応じて最適な濃度範囲を選択することが好ましい。例えば、基材が銅(Cu)板である場合には、前記濃度範囲を0.1g/L以上、2.0g/L以下の範囲にすることが好ましい。また、基材が三次元網目構造を有する樹脂成形体の場合には、前記濃度範囲が0.1g/L以上、2.0g/L以下の範囲にすることで外観および機械特性が良好なアルミニウム膜が得られるが、0.3g/L以上、1.0g/L以下の範囲にすることがより好ましい。
なお、前記電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度は、基材の種類に応じて最適な濃度範囲を選択することが好ましい。例えば、基材が銅(Cu)板である場合には、前記濃度範囲を0.1g/L以上、2.0g/L以下の範囲にすることが好ましい。また、基材が三次元網目構造を有する樹脂成形体の場合には、前記濃度範囲が0.1g/L以上、2.0g/L以下の範囲にすることで外観および機械特性が良好なアルミニウム膜が得られるが、0.3g/L以上、1.0g/L以下の範囲にすることがより好ましい。
1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を前記範囲に制御する方法としては、例えば、定期的にめっき槽から電解液を取り出し、当該電解液中のフェナントロリンの濃度を測定する方法が挙げられる。より具体的には、めっき槽から取り出した電解液に水を添加して電解液中のフェナントロリンを水中に抽出し、そこにFe(II)を添加してフェナントロリンとFe(II)との錯体を紫外可視分光法によって検出することによって定量し、もとの電解液における1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を算出すればよい。
そして、電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が所望の濃度となるように、必要に応じて電解液中に1,10−フェナントロリン一水和物を適当量添加すればよい。
そして、電解液中の1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が所望の濃度となるように、必要に応じて電解液中に1,10−フェナントロリン一水和物を適当量添加すればよい。
なお、前記アルミニウムめっき液は前記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の他にも光沢化剤などの各種添加剤を含んでいても構わない。例えば、導電率を上昇させる目的で、トリメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリドや、光沢化剤として、キシレン、ジフェニルメタンなどを含んでも構わない。
(塩化水素ガスの供給)
本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法においては、上記のようにして電解液中の1,10−フェナントロリンの濃度を制御する。そして、電解液に塩化水素ガスを供給する処理操作を含む。これによりアルミニウム膜を連続的に大量に製造した場合に、徐々に蓄積する電解液中の無効なフェナントロリンを有効なフェナントロリンに変化させて、継続的に平滑なアルミニウム膜を製造することができる。
上記のように塩化水素ガスは電解液中に蓄積した無効なフェナントロリンを有効なフェナントロリンに変化させるために供給するものであるから、アルミニウム膜を製造する場合において、塩化水素ガスは間欠的に電解液に供給すればよく、連続して供給し続ける必要は特に無い。すなわち、前記のように、定期的に電解液中のフェナントロリンの濃度を測定し、電解液中にフェナントロリンが蓄積されたと判断される場合に塩化水素ガスを供給すればよい。例えば、アルミニウムめっき膜の製造中に1,10−フェナントロリン一水和物を定期的に所定量ずつ電解液中に添加している場合には、有効なフェナントロリンが一定量ずつ消費されていくが、その一方で無効なフェナントロリンが電解液中に蓄積される。このため徐々にではあるが、電解液中のフェナントロリンの濃度が上昇することを確認することができる。このように電解液に無効なフェナントロリンが蓄積されたと判断される場合に塩化水素ガスを電解液に供給すればよい。もちろん、連続的に電解液に塩化水素ガスを供給しても構わない。この場合には、例えば、アルミニウムめっき膜を製造しながら、めっき槽から配管を通じて電解液を引き出し、別の槽において塩化水素ガスを供給し、これにより有効なフェナントロリンの濃度が上昇した電解液をめっき槽に戻すことによって電解液を循環させることもできる。
本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法においては、上記のようにして電解液中の1,10−フェナントロリンの濃度を制御する。そして、電解液に塩化水素ガスを供給する処理操作を含む。これによりアルミニウム膜を連続的に大量に製造した場合に、徐々に蓄積する電解液中の無効なフェナントロリンを有効なフェナントロリンに変化させて、継続的に平滑なアルミニウム膜を製造することができる。
上記のように塩化水素ガスは電解液中に蓄積した無効なフェナントロリンを有効なフェナントロリンに変化させるために供給するものであるから、アルミニウム膜を製造する場合において、塩化水素ガスは間欠的に電解液に供給すればよく、連続して供給し続ける必要は特に無い。すなわち、前記のように、定期的に電解液中のフェナントロリンの濃度を測定し、電解液中にフェナントロリンが蓄積されたと判断される場合に塩化水素ガスを供給すればよい。例えば、アルミニウムめっき膜の製造中に1,10−フェナントロリン一水和物を定期的に所定量ずつ電解液中に添加している場合には、有効なフェナントロリンが一定量ずつ消費されていくが、その一方で無効なフェナントロリンが電解液中に蓄積される。このため徐々にではあるが、電解液中のフェナントロリンの濃度が上昇することを確認することができる。このように電解液に無効なフェナントロリンが蓄積されたと判断される場合に塩化水素ガスを電解液に供給すればよい。もちろん、連続的に電解液に塩化水素ガスを供給しても構わない。この場合には、例えば、アルミニウムめっき膜を製造しながら、めっき槽から配管を通じて電解液を引き出し、別の槽において塩化水素ガスを供給し、これにより有効なフェナントロリンの濃度が上昇した電解液をめっき槽に戻すことによって電解液を循環させることもできる。
前記電解液への塩化水素ガスの供給は、例えば、電解液中へのバブリングによって行うことができる。このときの塩化水素ガスの流量は、電解液1Lあたり、1.0mL/min以上、5.0L/minが好ましい。塩化水素ガスの流量が1.0mL/min以上であることにより、電解液中の無効なフェナントロリンを効率よく有効なフェナントロリンに変換することができる。また、塩化水素ガスの流量が5.0L/min以下であることにより、周囲に液が飛散して汚染することを抑制することができる。前記塩化水素ガスの流量は、2.0mL/min以上、1.0L/min以下であることがより好ましく、5.0mL/min以上、0.5L/min以下であることが更に好ましい。
また、前記電解液中に前記塩化水素ガスをバブリングにより供給する時間は、長いほど充分な効果を得ることができ、5分以上、180分以下であることが好ましく、10分以上、90分以下であることがより好ましく、10分以上、45分以下であることが更に好ましい。
前記電解液に塩化水素を供給する際の温度は特に限定されるものではない。即ち、塩化水素を供給する際の温度を低温にする必要は特になく、寧ろ低温で行うためには冷却のためにエネルギーが必要となり不経済である。また、高温にすると塩化水素ガスが電解液中から脱離しやすくなってしまうため、好ましくない。これらの観点から、前記電解液中に塩化水素を供給する際の温度は、10℃以上、30℃以下程度の常温で構わない。
また、バブリングの方法としては、例えば、電解液を収容した容器中に塩化水素ガスを供給する配管を設け、当該配管の先に数多くの微小孔を設けることで、電解液中に微小な泡として塩化水素ガスを供給することができる。また、電解液を収容した容器の底面に数多くの微小孔を設けた板を設け、当該板と電解液の底面との間に塩化水素ガスを供給するようにしてもよい。
電解液に塩化水素ガスを供給する際に塩化水素ガスの流量を多くすると、非常に大量の塩化水素ガスを必要とすることとなる。この場合には、塩化水素ガスに、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを混合させて供給することもできる。これにより、塩化水素ガスの使用量を抑制することができる。
また、前述のように塩化水素ガスは電解液中から脱離しやすいため、密閉容器内で塩化水素ガスと無効なフェナントロリンとを反応させることも好ましい態様の一つである。即ち、密閉可能な容器中に電解液を収容し、当該容器中に塩化水素ガスを適当量供給した後に容器を密閉することで、あるいは必要に応じてその状態のまま容器を振動させるなどすることで、効率よく塩化水素ガスを反応させることができる。
(基材)
前記基材は表面にアルミニウム膜を形成する用途があるものであれば特に限定されるものではない。例えば、銅板、鋼帯、銅線、鋼線、導電化処理を施した樹脂等を前記基材として利用することができる。前記導電化処理を施した樹脂としては、例えば、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等に導電化処理を施したものを利用することができる。
前記基材は表面にアルミニウム膜を形成する用途があるものであれば特に限定されるものではない。例えば、銅板、鋼帯、銅線、鋼線、導電化処理を施した樹脂等を前記基材として利用することができる。前記導電化処理を施した樹脂としては、例えば、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等に導電化処理を施したものを利用することができる。
また、前記基材としての樹脂の形状はどのようなものでも構わないが、三次元網目状構造を有する樹脂成形体を用いることにより、最終的に、各種フィルタ、触媒担体、電池用電極などの用途に優れた特性を発揮する三次元網目状構造を有するアルミニウム多孔体を作製することができ、好ましい。また、不織布形状を有する樹脂を用いることによっても最終的に多孔質構造を有するアルミニウム多孔体を作製することができ、このようにして作製された不織布形状を有するアルミニウム多孔体も、各種フィルタ、触媒担体、電池用電極などの用途に好ましく用いることができる。
前記三次元網目状構造を有する樹脂成形体としては、例えば、ポリウレタン、メラミン樹脂等を用いて作製された発泡樹脂成形体を利用することができる。なお、発泡樹脂成形体と表記したが、連続した気孔(連通気孔)を有するものであれば任意の形状の樹脂成形体を選択できる。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の繊維状の樹脂を絡めた不織布のような形状を有するものも発泡樹脂成形体に代えて使用可能である。
なお、以下では三次元網目状構造の多孔体を単に「多孔体」と記載することもある。
なお、以下では三次元網目状構造の多孔体を単に「多孔体」と記載することもある。
前記多孔体の気孔率は80%以上、98%以下、気孔径は50μm以上、500μm以下とするのが好ましい。発泡ウレタン及び発泡メラミンは気孔率が高く、また気孔の連通性があるとともに熱分解性にも優れているため発泡樹脂成形体として好ましく使用できる。発泡ウレタンは気孔の均一性や入手の容易さ等の点で好ましく、発泡ウレタンは気孔径の小さなものが得られる点で好ましい。なお、発泡ウレタンや発泡メラミン等の発泡樹脂成形体には発泡過程での製泡剤や未反応モノマーなどの残留物があることが多いため、洗浄処理を行っておくことが好ましい。
前記多孔体の気孔率は、次式で定義される。
気孔率=(1−(多孔体の重量[g]/(多孔体の体積[cm3]×素材密度)))×100[%]
また、気孔径は、樹脂成形体表面を顕微鏡写真等で拡大し、1インチ(25.4mm)あたりの気孔数をセル数として計数して、平均孔径=25.4mm/セル数として平均的な値を求める。
気孔率=(1−(多孔体の重量[g]/(多孔体の体積[cm3]×素材密度)))×100[%]
また、気孔径は、樹脂成形体表面を顕微鏡写真等で拡大し、1インチ(25.4mm)あたりの気孔数をセル数として計数して、平均孔径=25.4mm/セル数として平均的な値を求める。
本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法において前記三次元網目状構造を有する樹脂成形体としては導電化処理を施したものを用いる。樹脂表面の導電化処理は既知の方法を含めて選択可能である。無電解めっきや気相法によるニッケル等の金属層の形成や、導電性塗料による金属やカーボン層の形成による方法が利用可能である。
無電解めっきや気相法により樹脂表面に金属層を形成することにより、樹脂表面の導電率を高くすることができる。一方、導電率の観点からは多少劣るが、カーボン塗布による樹脂表面の導電化は、アルミニウム膜形成後のアルミニウム構造体にアルミニウム以外の金属を混入することなくできることから、金属として実質的にアルミニウムのみからなる構造体を製造することが可能となる。また安価に導電化できる利点もある。
無電解めっきや気相法により樹脂表面に金属層を形成することにより、樹脂表面の導電率を高くすることができる。一方、導電率の観点からは多少劣るが、カーボン塗布による樹脂表面の導電化は、アルミニウム膜形成後のアルミニウム構造体にアルミニウム以外の金属を混入することなくできることから、金属として実質的にアルミニウムのみからなる構造体を製造することが可能となる。また安価に導電化できる利点もある。
導電化処理をカーボン塗布により行う場合には、まず導電性塗料としてのカーボン塗料を準備する。カーボン塗料としての懸濁液は、カーボン粒子の他に、粘結剤、分散剤および分散媒を含むことが好ましい。
前記三次元網目状構造を有する樹脂成形体を使用する場合に、多孔体中にカーボン粒子の塗布を均一に行うには、懸濁液が均一な懸濁状態を維持している必要がある。そのためには、懸濁液は20℃〜40℃に維持されていることが好ましい。懸濁液の温度を20℃以上に維持することにより、均一な懸濁状態を保つことができ、多孔体の網目構造をなす骨格の表面に粘結剤のみが集中して層をなすということがなくなり、均一にカーボン粒子の塗布を行うことができる。このようにして均一に塗布されたカーボン粒子の層は剥離し難いため、強固に密着した金属めっきの形成が可能となる。一方、懸濁液の温度が40℃以下であることにより、分散剤の蒸発を抑制することができるため、塗布処理時間の経過とともに懸濁液が濃縮され難くなる。
また、カーボン粒子の粒径は0.01μm以上、5μm以下程度であればよく、0.01μm以上、0.5μm以下程度であることがより好ましい。カーボン粒子の粒径が大き過ぎると多孔体の空孔を詰まらせたり、平滑なめっきを阻害したりする要因となり、逆に小さ過ぎると十分な導電性を確保することが難しくなる。
前記三次元網目状構造を有する樹脂成形体を使用する場合に、多孔体中にカーボン粒子の塗布を均一に行うには、懸濁液が均一な懸濁状態を維持している必要がある。そのためには、懸濁液は20℃〜40℃に維持されていることが好ましい。懸濁液の温度を20℃以上に維持することにより、均一な懸濁状態を保つことができ、多孔体の網目構造をなす骨格の表面に粘結剤のみが集中して層をなすということがなくなり、均一にカーボン粒子の塗布を行うことができる。このようにして均一に塗布されたカーボン粒子の層は剥離し難いため、強固に密着した金属めっきの形成が可能となる。一方、懸濁液の温度が40℃以下であることにより、分散剤の蒸発を抑制することができるため、塗布処理時間の経過とともに懸濁液が濃縮され難くなる。
また、カーボン粒子の粒径は0.01μm以上、5μm以下程度であればよく、0.01μm以上、0.5μm以下程度であることがより好ましい。カーボン粒子の粒径が大き過ぎると多孔体の空孔を詰まらせたり、平滑なめっきを阻害したりする要因となり、逆に小さ過ぎると十分な導電性を確保することが難しくなる。
(アルミニウムを電着させる方法)
本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法において前記電解液中の基材表面にアルミニウムを電着させるには、前記電解液中にアルミニウム電極(陽極)を設けて前記電解液中の基材が陰極となるように電気的に接続し、通電すればよい。
このとき、電流密度が2.0A/dm2以上、10.0A/dm2以下となるようにして基材表面にアルミニウムを電着させることが好ましい。電流密度が前記範囲内にあることにより、より平滑性に優れたアルミニウム膜を得ることができる。前記電流密度は、2.0A/dm2以上、7.0A/dm2以下であることがより好ましく、2.5A/dm2以上、6.0A/dm2以下であることが更に好ましい。
なお、基材表面にアルミニウムを電着させる際において、前記電解液は攪拌しても良いし、攪拌しなくても構わない。
本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法において前記電解液中の基材表面にアルミニウムを電着させるには、前記電解液中にアルミニウム電極(陽極)を設けて前記電解液中の基材が陰極となるように電気的に接続し、通電すればよい。
このとき、電流密度が2.0A/dm2以上、10.0A/dm2以下となるようにして基材表面にアルミニウムを電着させることが好ましい。電流密度が前記範囲内にあることにより、より平滑性に優れたアルミニウム膜を得ることができる。前記電流密度は、2.0A/dm2以上、7.0A/dm2以下であることがより好ましく、2.5A/dm2以上、6.0A/dm2以下であることが更に好ましい。
なお、基材表面にアルミニウムを電着させる際において、前記電解液は攪拌しても良いし、攪拌しなくても構わない。
本発明の実施形態に係るアルミニウム膜の製造方法においては、前記電解液の温度が15℃以上、110℃以下となるように調整しながら基材表面にアルミニウムを電着させることが好ましい。電解液の温度を15℃以上にすることにより、電解液の粘度を充分に低くすることができ、アルミニウムの電着効率を向上させることができる。また、電解液の温度を110℃以下にすることで、アルミニウムハロゲン化物の揮発を抑制することができる。前記電解液の温度は30℃以上、60℃以下であることがより好ましく、40℃以上、50℃以下であることが更に好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は例示であって、本発明のアルミニウム膜の製造方法はこれらに限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の記載によって示され、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
[実施例1]
(電解液)
塩化アルミニウム(AlCl3)と1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)との混合比がモル比で2:1となるように混合して溶融塩1Lを準備した。この溶融塩に1,10−フェナントロリン一水和物を0.5g/Lの濃度となるように添加して電解液1を作製した。
(アルミニウム膜の形成)
上記で用意した電解液1を用いて、基材の表面にアルミニウムを電着させた。基材には銅(Cu)板(20mm×40mm×1mm)を用いた。そして、この基材を整流器の陰極側に接続し、対極のアルミニウム板(純度99.99%)を陽極側に接続した。電解液1の温度が45℃となるようにし、また、電流密度が3.0A/dm2となるように制御した。
そして、定期的にめっき槽から電解液1を適量取り出して水を添加することでフェナントロリンを抽出し、Fe(II)を添加した。そして、紫外可視分光法によってフェナントロリンとFe(II)との錯体を検出することで電解液1におけるフェナントロリンの濃度を算出し、濃度が0.5g/Lとなるように1,10−フェナントロリン一水和物を電解液1に添加した。
また、このとき、電解液1に塩化水素(HCl)ガスを5ml/minで供給し、10分間バブリングした。そして、めっき槽を密閉し1時間保持した。その後、この電解液1を用いて再びアルミニウム膜の製造を行った。基材にはCu板を用い、電解液1の液温を45℃とし、電流密度は3.0A/dm2となるようにした。
その結果、表面の算術平均粗さRaが0.10μm以下で鏡面状態が非常に良好で平滑なアルミニウム膜の製造を継続することができた。
なお、アルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaはレーザー顕微鏡により測定した。
(電解液)
塩化アルミニウム(AlCl3)と1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)との混合比がモル比で2:1となるように混合して溶融塩1Lを準備した。この溶融塩に1,10−フェナントロリン一水和物を0.5g/Lの濃度となるように添加して電解液1を作製した。
(アルミニウム膜の形成)
上記で用意した電解液1を用いて、基材の表面にアルミニウムを電着させた。基材には銅(Cu)板(20mm×40mm×1mm)を用いた。そして、この基材を整流器の陰極側に接続し、対極のアルミニウム板(純度99.99%)を陽極側に接続した。電解液1の温度が45℃となるようにし、また、電流密度が3.0A/dm2となるように制御した。
そして、定期的にめっき槽から電解液1を適量取り出して水を添加することでフェナントロリンを抽出し、Fe(II)を添加した。そして、紫外可視分光法によってフェナントロリンとFe(II)との錯体を検出することで電解液1におけるフェナントロリンの濃度を算出し、濃度が0.5g/Lとなるように1,10−フェナントロリン一水和物を電解液1に添加した。
また、このとき、電解液1に塩化水素(HCl)ガスを5ml/minで供給し、10分間バブリングした。そして、めっき槽を密閉し1時間保持した。その後、この電解液1を用いて再びアルミニウム膜の製造を行った。基材にはCu板を用い、電解液1の液温を45℃とし、電流密度は3.0A/dm2となるようにした。
その結果、表面の算術平均粗さRaが0.10μm以下で鏡面状態が非常に良好で平滑なアルミニウム膜の製造を継続することができた。
なお、アルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaはレーザー顕微鏡により測定した。
[参考例]
実施例1と同様に、1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が0.5g/Lとなるようにして電解液を作製し、Cu板にアルミニウム膜の製造を行った。
そして、1,10−フェナントロリン一水和物を0.05g/A・hrの補給頻度で電解液に補給することでアルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaが0.10μm以下を維持することができた。これを100時間続けた結果、電解液中には2g/Lのフェナントロリンが蓄積していた。
その後、この電解液に1,10−フェナントロリン一水和物を補給せずに通電を続けてアルミニウム膜を製造し続けたところ、電解液中の有効なフェナントロリンが全て消費され、アルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaが0.38μmとなった。このときの電解液のフェナントロリンの濃度は1.8g/Lであった。
この電解液に実施例1と同様にして塩化水素ガスを供給し、1時間後に再びアルミニウム膜の製造を行ったところ、Cu板の表面には算術平均粗さRaが0.08μmのアルミニウム膜を製造することができた。
以上のことから、電解液に塩化水素ガスを供給することで、電解液中に蓄積した無効なフェナントロリンを有効なフェナントロリンに変化させることができ、これにより平滑なアルミニウム膜を製造できることが確認された。
実施例1と同様に、1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が0.5g/Lとなるようにして電解液を作製し、Cu板にアルミニウム膜の製造を行った。
そして、1,10−フェナントロリン一水和物を0.05g/A・hrの補給頻度で電解液に補給することでアルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaが0.10μm以下を維持することができた。これを100時間続けた結果、電解液中には2g/Lのフェナントロリンが蓄積していた。
その後、この電解液に1,10−フェナントロリン一水和物を補給せずに通電を続けてアルミニウム膜を製造し続けたところ、電解液中の有効なフェナントロリンが全て消費され、アルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaが0.38μmとなった。このときの電解液のフェナントロリンの濃度は1.8g/Lであった。
この電解液に実施例1と同様にして塩化水素ガスを供給し、1時間後に再びアルミニウム膜の製造を行ったところ、Cu板の表面には算術平均粗さRaが0.08μmのアルミニウム膜を製造することができた。
以上のことから、電解液に塩化水素ガスを供給することで、電解液中に蓄積した無効なフェナントロリンを有効なフェナントロリンに変化させることができ、これにより平滑なアルミニウム膜を製造できることが確認された。
[実施例2]
塩化水素ガスの供給量を電解液1Lに対して4.5L/minとなるようにした以外は実施例1と同様にしてCu板の表面にアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、実施例1と同様に、算術表面粗さRaが0.1μm以下の鏡面状で平滑なアルミニウム膜の製造を継続することができた。
塩化水素ガスの供給量を電解液1Lに対して4.5L/minとなるようにした以外は実施例1と同様にしてCu板の表面にアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、実施例1と同様に、算術表面粗さRaが0.1μm以下の鏡面状で平滑なアルミニウム膜の製造を継続することができた。
[実施例3]
実施例1において、1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が7.3g/Lとなるようにした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、実施例1と同様に、算術表面粗さRaが0.1μm以下の鏡面状で平滑なアルミニウム膜の製造を継続することができた。
実施例1において、1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が7.3g/Lとなるようにした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、実施例1と同様に、算術表面粗さRaが0.1μm以下の鏡面状で平滑なアルミニウム膜の製造を継続することができた。
[実施例4]
実施例1において、1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が0.05g/Lとなるようにした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、実施例1と同様に、算術表面粗さRaが0.1μm以下の鏡面状で平滑なアルミニウム膜の製造を継続することができた。
実施例1において、1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が0.05g/Lとなるようにした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、実施例1と同様に、算術表面粗さRaが0.1μm以下の鏡面状で平滑なアルミニウム膜の製造を継続することができた。
[実施例5]
塩化アルミニウム(AlCl3)とジメチル尿素との混合比がモル比で1.5:1となるように混合して溶融塩を作製し、この溶融塩に1,10−フェナントロリン一水和物を0.5g/Lの濃度となるように添加した電解液2を用いた以外は実施例1と同様にしてアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、実施例1と同様に、算術表面粗さRaが0.1μm以下の鏡面状で平滑なアルミニウム膜の製造を継続することができた。
塩化アルミニウム(AlCl3)とジメチル尿素との混合比がモル比で1.5:1となるように混合して溶融塩を作製し、この溶融塩に1,10−フェナントロリン一水和物を0.5g/Lの濃度となるように添加した電解液2を用いた以外は実施例1と同様にしてアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、実施例1と同様に、算術表面粗さRaが0.1μm以下の鏡面状で平滑なアルミニウム膜の製造を継続することができた。
[実施例6]
基材として、導電化処理をした三次元網目構造を有する樹脂成形体を用いた点および電流密度を6.0A/dm2とした点以外は実施例1と同様にしてアルミニウム膜の製造を行った。
樹脂成形体には、厚み1mm、気孔率95%、1インチ当たりの気孔数(セル数)約50個の発泡ウレタン(100mm×30mm角)を用いた。導電化処理は発泡ウレタンをカーボン懸濁液に浸漬して乾燥させることにより行った。カーボン懸濁液の成分は、黒鉛とカーボンブラックを25%含み、樹脂バインダー、浸透剤、消泡剤を含むものとした。カーボンブラックの粒径は0.5μmとした。
その結果、表面が鏡面状で平滑性に優れたアルミニウム膜の製造を継続することができた。
基材として、導電化処理をした三次元網目構造を有する樹脂成形体を用いた点および電流密度を6.0A/dm2とした点以外は実施例1と同様にしてアルミニウム膜の製造を行った。
樹脂成形体には、厚み1mm、気孔率95%、1インチ当たりの気孔数(セル数)約50個の発泡ウレタン(100mm×30mm角)を用いた。導電化処理は発泡ウレタンをカーボン懸濁液に浸漬して乾燥させることにより行った。カーボン懸濁液の成分は、黒鉛とカーボンブラックを25%含み、樹脂バインダー、浸透剤、消泡剤を含むものとした。カーボンブラックの粒径は0.5μmとした。
その結果、表面が鏡面状で平滑性に優れたアルミニウム膜の製造を継続することができた。
[比較例1]
1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が0.01g/Lとなるようにした以外は実施例1と同様にして電解液Aを作製し、これを用いてアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、Cu板の表面に形成されたアルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaは0.21μmと、表面平滑性に優れていないことが確認された。
1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が0.01g/Lとなるようにした以外は実施例1と同様にして電解液Aを作製し、これを用いてアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、Cu板の表面に形成されたアルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaは0.21μmと、表面平滑性に優れていないことが確認された。
[比較例2]
1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が7.8g/Lとなるようにした以外は実施例1と同様にして電解液Bを作製し、これを用いてアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、Cu板の表面に形成されたアルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaは0.15μmと、表面平滑性に優れていないことが確認された。
1,10−フェナントロリン一水和物の濃度が7.8g/Lとなるようにした以外は実施例1と同様にして電解液Bを作製し、これを用いてアルミニウム膜の製造を行った。
その結果、Cu板の表面に形成されたアルミニウム膜の表面の算術平均粗さRaは0.15μmと、表面平滑性に優れていないことが確認された。
Claims (4)
- 電解液中で基材表面にアルミニウムを電着させるアルミニウム膜の製造方法であって、
前記電解液は、
(A)アルミニウムハロゲン化物と、
(B)アルキルイミダゾリウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物及び尿素化合物からなる群より選択されるいずれか1種以上の化合物と、
(C)1,10−フェナントロリン一水和物と、
を成分として含み、
前記(A)成分と前記(B)成分との混合比はモル比で1:1〜3:1の範囲にあり、
前記電解液における前記1,10−フェナントロリン一水和物の濃度を0.03g/L以上、7.5g/L以下の範囲になるように制御し、
前記電解液に塩化水素ガスを供給する処理操作を含むアルミニウム膜の製造方法。 - 前記電解液中への前記塩化水素ガスの供給量が、前記電解液1Lに対して、1.0mL/min以上、5.0L/min以下である請求項1に記載のアルミニウム膜の製造方法。
- 前記基材が、導電化処理を施した三次元網目状構造の樹脂構造体である請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム膜の製造方法。
- 前記(A)成分が塩化アルミニウムであり、前記(B)成分が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウム膜の製造方法。
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