JP6201262B2 - 結晶の凝集制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、食塩等の結晶の凝集を制御する技術に関するものである。
食塩等の工業晶析で得られる製品中には、結晶同士が付着したと思われる結晶が多く見られ、このような凝集現象による結晶成長速度、核化速度の変化等は、晶析装置内での現象を複雑にしている。
非特許文献1では、蒸発式逆円錐型晶析装置において、原料の育晶器における供給位置(高さ)を変動させることにより、粒径分布が変動することを開示している。
正岡ら,化学工学会第43回秋季大会講演要旨集,p.306,H216(2011)
結晶の成長は、主として、個々の結晶自体が成長して大きくなるプロセスと、個々の結晶が凝集して大きな結晶になるプロセスの二通りのプロセスを含む。一般的に、成長の速度が大きくなることにより結晶の生産性は向上するが、個々の結晶の形状がいびつになったり、個々の結晶が壊れやすくなる傾向が生じるため、結晶品質に問題が生じやすい。一方、成長の速度が小さくなることにより個々の結晶の形状が安定し、個々の結晶は壊れにくくなるため結晶品質に問題は生じにくくなるが、結晶の生産性は低下する。
したがって、成長の速度は、生産対象となる結晶の個別事情(品質、生産コストなど)に応じて制御されることが望ましいが、上述した文献では、そのような制御技術は何ら提案されていない。非特許文献1は、原料の供給位置(高さ)を変化させることにより、粒径分布が変化することを示しているが、その原因について解明していない。
本発明は、結晶の個別事情に対応可能であり、工業的に有用な結晶の凝集速度を制御する技術を提供する。
本発明の結晶の凝集制御方法は、晶析の対象となる原料および当該原料を含む母液を育晶器に供給し、当該育晶器内において当該原料の種晶を成長させる分級層型晶析装置において、前記育晶器の底部の付近に前記母液の過飽和の状態である過飽和母液を供給し、前記育晶器の底部からの高さ方向における供給位置を設定して未飽和の状態である前記原料を供給することにより、前記種晶の凝集速度を制御する。
本発明の結晶の凝集制御方法の一態様として、例えば、前記育晶器の下側領域に、前記母液のスラリー層を生成し、前記育晶器の上側領域に、前記母液の液相を生成し、前記底部から、前記スラリー層の高さ方向における所定位置までの間の位置において前記原料を供給することにより、種晶の凝集を促進する。
本発明の結晶の凝集制御方法の一態様として、例えば、前記育晶器の下側領域に、前記母液のスラリー層を生成し、前記育晶器の上側領域に、前記母液の液相を生成し、前記スラリー層の高さ方向における所定位置から前記液相との境界付近までの間の位置において前記原料を供給することにより、種晶の凝集を抑制する。
本発明の結晶の凝集制御方法の一態様として、例えば、前記育晶器は逆円錐型である。
本発明の結晶の凝集制御方法の一態様として、例えば、前記結晶は食塩である。
本発明によれば、生産対象となる結晶の個別事情に応じて凝集速度を制御することが可能となる。
本発明に係る結晶の凝集制御方法を実施する分級層型晶析装置の一実施形態を示すシステム構成図 図1の分級層型晶析装置における育晶器の拡大図 育晶器における原料の供給位置と種晶の個数との関係を示すグラフ 分級層型晶析装置の稼働前後における種晶の個数の変化を示すグラフ 分級層型晶析装置の稼働前における種晶の写真 分級層型晶析装置の稼働後における種晶の写真
図1は、本発明に係る結晶の凝集制御方法を実施する分級層型晶析装置の一実施形態を示す。本実施形態の分級層型晶析装置(晶析装置)100は、例えば原料としての塩化ナトリウム(食塩)の晶析に用いられる装置であり、主要な構成要素として、蒸発器1と、育晶器3と、熱交換器6とを備える。さらに分級層型晶析装置100は、結晶収集器4と、熱媒体源7と、凝縮器11と、ドレンタンク12と、原料タンク14とを備える。さらに分級層型晶析装置100は、循環ポンプ5と、加熱ポンプ10と、真空ポンプ13と、供給ポンプ15とを備える。
本実施形態においては、晶析の対象となる塩化ナトリウムを含み、分級層型晶析装置100内を循環する母液の元となる原料(原料液)は、原料タンク14から供給される。育晶器3内の原料を含む母液は、熱交換器6、蒸発器1に順次供給された後、再び育晶器3に戻り、以降、熱交換器6、蒸発器1、育晶器3内を循環する。
原料タンク14は、塩化ナトリウム水溶液等の原料を蓄積する一般的なタンクにより構成され、原料の出口には供給ポンプ15が接続されている。供給ポンプ15の作用により、原料タンク14の原料は、原料供給管21を通って育晶器3に供給される。
育晶器3は原料の種晶(結晶)を成長させる逆円錐型の育晶器であり、底部3aから上部3b(図2参照)に向かって径が増大している。本実施形態の分級層型晶析装置100は逆円錐型晶析装置ともいえるが、育晶器3の具体的な構成は特に限定はされず、他の型の育晶器を用いても本発明は実施可能である。ただし、逆円錐型の分級層型晶析装置は、結晶の分級性において優れている。
熱交換器6は、中心通路と周辺通路を有する二重構造を有し、循環ポンプ5を介して育晶器3に接続されている。育晶器3から循環ポンプ5の作用により供給される母液が熱交換器6の中心通路を通過する。また、当該中心通路の周りには周辺通路が形成され、熱媒体源7から供給される熱媒体が当該周辺通路を流れる。熱媒体は、加熱タンク7a、ヒーター7b、攪拌器7cを含む熱媒体源7から供給され、安定した温度が保たれた熱媒体が供給される。そして、中心通路を通過する母液と周縁通路を通過する熱媒体の間で熱交換が行われ、母液が加熱される。
熱交換器6と接続される蒸発器1は、凝縮器11、真空ポンプ13に連通している。凝縮器11と真空ポンプ13の作用により、蒸発器1の内部は減圧されるため、熱交換器6から供給された母液の溶媒の一部が蒸発蒸気となり、蒸発器1内の母液が過飽和状態(塩化ナトリウムの過飽和状態)になる。なお、蒸発蒸気は凝縮器11により凝集され、ドレンタンク12に収容される。
蒸発器1内で過飽和の状態となった母液(以下、「過飽和母液」という)は、移送管22を通じて育晶器3の底部3aの付近に再び供給される。逆円錐の頂点に相当する底部3aの付近に供給された母液は上昇して、逆円錐の底面に相当する上部3bに向かうが、底部3aは上部3bに比べて径が小さいため、底部3aにおける母液の上昇速度は高く、上側(上部3b側)へ向かうほど上昇速度は低下する。このため、母液中の塩化ナトリウムの種晶が底部3aの付近に浮遊することになり、当該種晶を捕集することが可能となる。本実施形態では、所定量の塩化ナトリウムの種晶が浮遊し、蓄積した段階でバルブを開くことにより、結晶収集器4内に当該種晶としての結晶を捕集することができる。
母液は熱交換器6、蒸発器1、育晶器3内を循環するが、蒸発器1で生じた過飽和母液が蒸発器1から育晶器3内に導入されると、育晶器3内に存在する結晶が成長し、また、結晶同士が凝集する。
図2は、育晶器3付近の拡大図である。育晶器3の上部3bの平面には蒸発器1に接続した移送管22と、原料タンク14(および供給ポンプ15)に接続した原料供給管21とが設けられ、これらの管は育晶器3の内部に連通している。過飽和母液は、蒸発器1から矢印Aに沿って移送管22内を下降して、育晶器3に導かれる。原料タンク14からの原料は、矢印Bに沿って原料供給管21を通って育晶器3に導かれる。
また、原料供給管21は矢印Cに示すように、育晶器3内への突出長さL、言い換えると育晶器3の底部3aからの高さ(原料の供給高さ)Hを変更可能になっている。詳しくは、原料の供給高さHは、育晶器3の底部3aから原料供給管21の先端の原料供給口21aまでの距離に相当する。移動機構は、作業者が手で原料供給管21を育晶器3に対して動かす構成でもよいし、送りモータ等の移動装置であってもよい。原料供給管21の育晶器3への取り付け位置も、本発明の実施に支障がない限り特に限定はされない。
育晶器3の側面、特に上部側面には、熱交換器6(および循環ポンプ5)に接続した母液導出管23が設けられ、育晶器3の内部に連通している。上述したように、母液中の種晶(塩化ナトリウムの結晶)は底部3aの付近に浮遊し、母液の大部分は育晶器3の上部3bに向かって上昇する。上昇した母液は、上部側面に設けられた母液導出管23を通じて熱交換器6に送られる。
本実施形態では、移送管22は、上下方向に配置された過飽和母液の生成部としての蒸発器1と育晶器3とを連通するように垂直方向に延びているが、移送管22の設置方向は、任意であり、水平方向、斜め方向等にも設けることが可能である。また、移送管22の構造も母液を移送する空間とそれを保持する外壁を有するパイプ構造のものであれば基本的に任意であり、例えば、長手軸に対して鉛直面による断面が円、楕円、多角形等、長手方向が直線状、曲線状、らせん状等のもの、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。また、移送管22は、その経路の途上にループ(循環路)を有していてもよい。このループは、複数設けることができる。
また、本発明を実施する晶析装置は、蒸発式、冷却式、反応式、あるいはこれらの組み合わせもの等、様々な種類ものが利用可能である。本実施形態の様な蒸発式の晶析装置の場合、過飽和母液の生成部として少なくとも蒸発器1を含む。冷却式の晶析装置の場合、過飽和母液の生成部として少なくとも母液を冷却する熱交換器を含む。反応式の晶析装置の場合、過飽和母液の生成部として少なくとも反応器を含む。
本実施形態の様な蒸発式の晶析装置の場合、母液は高温度に維持されるが、その維持手段として、熱交換器6が利用される。熱交換器6に用いられる熱媒として、廃熱を利用することができる。
また、晶析装置の運転初期の母液は、蒸発式および冷却式の場合、飽和濃度に近い高濃度溶液であることが効率的であるが、具体的な構成について特に限定はされない。
また、一般的に種晶は、系(母液)に晶析装置の運転開始時に添加することが、製品の効率的な回収の観点からは好ましいが、種晶を運転開始時に添加することは必須ではない。種晶は、運転開始時のみでなく、適切なタイミングで補充することができる。回収された結晶は、そのまま出荷しても適宜、更にサイズを分級してもよい。
本実施形態では、対象の結晶として食塩(塩化ナトリウム)を挙げたが、本発明が適用される結晶は、特に限定されず、凝集現象が生じる全ての結晶の生産に有効である。結晶の例としては、上記食塩以外に、カリミョウバン等の複塩(出典:鎌田豊広ほか、化学工学会年会研究発表講演要旨集、59th、Pt1、p230)、カルボキシメチルシステイン(出典:豊倉賢 著、晶析工学の進歩、pp.248−253)、クロロニトロベンゼン(出典:松岡正邦ほか、化学工学会年会研究発表講演要旨集、57th、Pt3、p55)等が挙げられる。
尚、本明細書において、食塩とは、純粋な塩化ナトリウムに限定されず、少なくとも塩化ナトリウムを質量基準で40%以上含む固形物であれば、他の任意の成分(無機乃至有機物質)を包含することを意味する。無機物質としては、海水成分、有機物質としては、グルタミン酸ナトリウム等の旨味成分を挙げることができる。
作業者は、上述の実施形態の分級層型晶析装置100を稼働させ、晶析の実験を行った。特に作業者は、原料供給管21の育晶器3の底部3aからの高さH(育晶器3内への突出長さL)を変更することにより、得られる種晶の変化について注意深く観察した。以下、その内容について説明する。
作業者は、母液として塩化ナトリウムの飽和水溶液を図1の分級層型晶析装置100に満たし、装置内にさらに塩化ナトリウムの種晶600gを投入した。そのまま分級層型晶析装置100を稼働させ、1時間晶析を実施した。装置の稼働中、育晶器3の液面を一定に維持するように、育晶器3に対し、原料供給管21から原料を供給した。ここで原料の供給に際して、図2に示すように、育晶器3内への突出長さL(育晶器3の底部3aからの高さH)を種々の値に変更し、原料を供給した。図2では供給高さが(A)〜(K)の11段階が示されている。右側の数字(0mL〜2000mL)は、育晶器3の底部3aからの容量に相当する。なお、母液の温度を70℃に維持し、供給した原料の濃度は20質量%または25質量%(未飽和)とした。さらに、原料供給管21を育晶器3に接続せず、母液導出管23のαの位置(図1;一般的な晶析装置における原料の供給位置)に接続し、上述した条件で、位置αから原料を供給し、分級層型晶析装置100を稼働させ晶析を行った。
図2に示すように、分級層型晶析装置100の稼働中においては、育晶器3の供給高さ(F;600mL)付近を境界として下側領域においてはスラリー層が生成し、上側領域においては液相が生成した。上述したように、育晶器3の底部3aに近い下側領域では種晶の個数が多く、上側領域では少ないため、このように母液の相状態が異なっている。
分級層型晶析装置100の稼働終了後、図1で示した三箇所の採取口a、b、cから母液を50mL採取し、140℃にて絶対乾燥した時の減量から濃度を算出するとともに、種晶を回収し、ふるい分け法にて粒径分布を計測した。
図3は、濃度が20質量%の原料を、図2における(A;0mL)、(B;100mL)、(C;200mL)、(D;300mL)、(E;400mL)、(F;600mL)、(J;1000mL)の各位置より供給した場合の、給液位置と種晶の個数との関係を示す。種晶の個数は、種晶の粒径分布と重量の関係から算出した。直線Xは装置稼働前の種晶の個数を示し、点線Yは原料を母液導出管23の位置αから供給した場合の装置稼働後の種晶の個数である。図3に示すように、(F;600mL)の位置を境界として、育晶器3の下側領域に母液のスラリー層が生成され、育晶器3の上側領域に母液の液相が生成された。
育晶器3の内部には様々な粒径の結晶が存在しているが、特定粒径の結晶の存在位置は、当該結晶の終末沈降速度と母液の上昇速度が釣り合う高さであると概ね考えられる。ここで、終末沈降速度とは流動していない液中における結晶の沈む速さのことであり、その値は粒径に依存する(粒径が大きいほど終末沈降速度は高い)。一方、母液の上昇速度は育晶器3の底部3aからの母液の流入速度(m/h)を育晶器の断面積(m)で除した値であり、実施形態の様な逆円錐型の場合は、底部3aに近い位置ほど断面積が小さいため、育晶器3の底部3aに近い位置ほど、母液の上昇速度は大きな値となる。よって、スラリー層内においては、底部3aに近い位置ほど粒径の大きな結晶が滞留している。また、スラリー層と液相との境界の高さは、滞留している結晶の最小粒径に依存すると考えられる。
稼働後における種晶の個数は、何れの給液位置においても稼働前の種晶の個数より減少しており、このことは装置の稼働中に種晶同士が凝集したことを示している。すなわち、種晶の個数の減少が大きいほど、凝集の度合いも大きいということが言える。
更に分析すると、供給位置(A;0mL)および(J;1000mL)における装置稼働後の種晶の個数は、原料を母液導出管23の位置αから供給した場合の装置稼働後の種晶の個数とほぼ同数であった。
また、供給位置(B;100mL)、(C;200mL)、(D;300mL)における装置稼働後の種晶の個数は、原料を母液導出管23の位置αから供給した場合の装置稼働後の種晶の個数よりも減少した。
また、供給位置(E;400mL)、(F;600mL)における装置稼働後の種晶の個数は、原料を母液導出管23の位置αから供給した場合の装置稼働後の種晶の個数よりも増加した。
上記分析より、本実施形態においては、育晶器3の底部3aから高さ方向における原料の供給位置を任意に設定する。特に、スラリー層内における任意の位置(実施形態では供給高さ0mL〜600mL付近)に供給位置を変更することにより、種晶(結晶)の凝集速度のレベルを制御できることが導かれる。
すなわち、スラリー層と液相の境界付近(F;600mL付近)における原料供給によれば、最も種晶の数が多く維持され、結晶の凝集が抑制される(凝集速度を抑える)。そして、スラリー層と液相の境界より下の領域(スラリー層)での原料供給によれば、結晶の凝集が促進される(凝集速度を上げる)。特に(B;100mL)〜(D;300mL)の供給位置では、種晶の個数は、原料を母液導出管23の位置αから供給した場合よりも種晶の個数が減少しており、大きい凝集速度が得られる。
尚、液相中においても稼働後における種晶の個数は、稼働前の種晶の個数より減少しているが、スラリー層と液相の境界付近(F;600mL付近)において最も種晶の数が多く維持され、当該境界より上側領域の液相では、より種晶の数は減少していると推定される。よって、液相中における原料の供給は、原料を母液導出管23の位置αから供給した場合と比較して効果として差異は大きくはない。
図4は、分級層型晶析装置100の稼働前後における種晶の個数の変化を示すもので、図3の結果を異なる見方でまとめたものである。これらの図からスラリー層内においてもその場所により結晶の凝集の程度は異なることが理解される。すなわち、スラリー層下部における原料の供給により、結晶の凝集が最も促進され、スラリー層上部おける原料の供給によれば、スラリー層下部の場合に比較して結晶の凝集は抑制される。尚、図4において、「スラリー層下部」は(B;100mL)〜(D;300mL)の位置に対応し、「スラリー層上部」は(E;400mL)〜(F;600mL)の位置に対応する。
すなわち、図3における、供給位置(E;400mL)よりやや下側を、底部3aから、スラリー層の高さ方向における所定位置と定義した場合、1)底部3aから当該所定位置までの間の位置において原料を供給することにより、種晶の凝集を促進する効果が得られ、2)当該所定位置から液相との境界付近までの間の位置において原料を供給することにより、種晶の凝集を抑制する効果が得られる。ここで、「所定位置」は、原料を母液導出管23の位置α、すなわち育晶器3の外部の位置から供給した場合と同等の凝集作用が得られる位置と定義される。また「境界付近」とは、スラリー層内のみならず、液相内であっても種晶の凝集抑制効果が得られている境界からの所定距離内の領域を含む。
上記の様な凝集速度の制御が可能となる要因として、原料の供給位置をスラリー層下部に設定することにより、母液の過飽和度が高まりやすくなること、また、本来凝集が起こりやすいスラリー層上部では濃度が低下することが考えられる。
すなわち、蒸発器1からの過飽和母液が育晶器3の底部3aの付近(すなわちスラリー層下部)に供給されており、スラリー層下部は常に過飽和の状態にあり、種晶の個数も多い環境になっている。そのような環境に原料が供給される場合、原料中の食塩(溶質)が母材(溶媒)に溶け込んでいる状態を維持するのは困難であり、食塩は容易に結晶化しかつ種晶同士は凝集し易い。この結果、凝集速度が大きくなり、種晶の数は減少し易い。
一方、スラリー層上部は過飽和母液が直接供給されるスラリー層下部に比べて母液は過飽和ではなく飽和に近い状態である。よって、供給された原料中の食塩(溶質)が母材(溶媒)に溶け込んでいる状態も容易に維持される。この結果、結晶化した食塩が存在しても、種晶への凝集は起こりにくく凝集速度が抑えられるため、種晶の数は減少しにくい。
すなわち、育晶器3の底部3aから供給される母液の過飽和度は、蒸発器1の出口〜移送管22の内部〜育晶器3の入口にわたる領域において同一であり、母液の過飽和度は、この領域において晶析装置内で最も高くなっている。育晶器3の内部では、母液の過飽和度は結晶の成長や結晶同士の凝集により消費されるため、過飽和度は育晶器3の上部に行くほど低下する。したがって、育晶器3の内部に、ある程度の結晶が存在していると、スラリー層上部、液相、育晶器3の出口の母液は飽和濃度であるとみなすことができる。その上で、原料の供給位置が変わると、母液の状態が変化する。母液の状態の変化のメカニズムとしては、以下の(1)、(2)が存在すると考えられる。
(1)未飽和濃度である原料を図1のαの位置から供給した場合、供給位置(α)から蒸発器1の入口にわたる領域の濃度は未飽和になる(飽和溶液と未飽和溶液の混合による未飽和溶液)。一方、未飽和濃度である原料を育晶器3の内部のスラリー層内へ供給した場合、スラリー層内で過飽和度の消費と未飽和濃度の原料液への結晶の溶解が同時に起こる。したがって、スラリー層上部、液相、育晶器3の出口の母液は飽和濃度となり、その濃度は蒸発器1の入口まで維持される。蒸発器1における蒸発速度が同じであれば、蒸発器1の入口における母液の濃度が高いほど、蒸発器1の出口における過飽和度は高くなるので、スラリー層に供給した場合の方が、育晶器3の底部3aに供給される母液の過飽和度が高くなる。凝集速度は過飽和度が高いほうが高まるので、スラリー層に供給した場合には、凝集速度は高まると考えられる。
(2)ただし、未飽和濃度である原料をスラリー層内に供給した場合、供給地点付近の母液濃度が低下するため、原料の供給は供給位置よりも上部の凝集速度に影響を与える。先述の通り、育晶器3の底部から供給される母液の過飽和度は底部3aに近い位置ほど高いので、スラリー層下部に原料を供給した場合には、高い過飽和度の溶液に原料が混ざるため、トータルとしては過飽和度が低下するが、過飽和状態は維持される。一方、スラリー層上部に原料を供給した場合には、母液の過飽和度は極めて低い、あるいは、飽和濃度まで低下しているため、原料と混ざった瞬間には、過飽和度が低下するだけでなく、未飽和状態になると考えられる。この未飽和状態は、滞留している結晶の溶け込みや既に凝集した結晶を解離させることで直ちに解消され、飽和濃度になる。したがって、スラリー層の上部に供給すればするほど凝集は抑制される。また、図3に示したように、図1のαの位置における原料の供給の場合よりも結晶数が多くなるということは、(1)のメカニズムの効果よりも(2)のメカニズムの効果の方が高い供給位置が存在するということを示している。
上記の事象を利用することにより、生産者は結晶の凝集速度を所望のレベルに容易に制御することが可能となる。したがって、市場の要求に対応し、生産者は迅速かつ容易に最適な凝集速度を設定して結晶を生産し、市場に供給することが可能となる。
例えば、市場が結晶の品質よりも生産性を重視する場合は、上記実施形態の場合、スラリー層下部において母液を育晶器3の内部に供給する。一方、市場が結晶の生産性よりも品質を重視する場合は、スラリー層上部において母液を育晶器3の内部に供給する。このように、生産対象となる結晶の個別事情に応じて凝集速度を制御し、最適な条件を設定することが可能となる。
また、晶析装置に限らずあらゆる工業生産の分野において、システム挙動が不安定になるサイクリング現象の問題が存在するが、本発明を応用することにより、晶析装置を長期連続運転する場合のサイクリング現象を抑制することも可能となる。ここで、長期連続運転とは、装置内の溶液量、結晶滞留量を一定に保持するように、原料液の供給、製品結晶の抜出しをコントロールしながら数週間〜数カ月、装置を停止することなく運転することである。結晶の成長速度には限界があり、この速度よりも早く晶析装置の中で母液の蒸発が進行する場合がある。このような場合において、母液が特定の濃度に達すると、微小の種晶が突如として大量に発生し、平均粒径が極端に低下することが起こり得る。そして当初の種晶の数よりもはるかに大きい種晶の数となり、かつ個々の種晶の成長速度が極端に低下する。このような状態で装置から抜出される製品結晶の平均粒径は著しく小さくなる。
その後、長時間経過すると、結晶同士の凝集が発生し、凝集した結晶はそのまま成長してあたかも始めから一つの結晶であったかのように成長を続ける。すなわち、装置内に滞留する結晶の個数は次第に減少し、結晶の成長速度が増加してくる。このような状態で装置から抜出される製品結晶の平均粒径は著しく大きくなる。さらに時間が経過して、結晶の成長速度が限界を超えると、再び微小の種晶が突如として大量に発生する。その後は上述した現象が再び繰り替えされ、種晶の粒径と成長速度が全く安定せず、工業的には好ましくない現象が発生する。このような現象が、本分野で一般的にサイクリング現象と呼ばれるものである。
本実施形態においては、結晶の凝集を制御することが可能であり、当初の種晶の数から大きく数が変動しないように原料を供給することにより、サイクリング現象を抑制することが可能となる。種晶の数の変動を抑制できる供給位置としては、図3の結果からは、例えば、上述したスラリー層と液相との境界付近の位置が挙げられる(F;600mL付近)。この位置では、最も高い凝集抑制効果が得られており、種晶の数の変動も小さいと考えられるからである。したがって、このような二つの相の境界位置において原料を導入するよう原料供給管21の位置を調整することにより、サイクリング現象を抑制し、結晶の凝集を安定化させることが可能となる。この結果、種晶の粒径と成長速度が安定し、工業的に好ましい操業状態を達成することが可能となる。
図5および図6は、本実施形態の分級層型晶析装置100の稼働前後における種晶の写真であり、図5は稼働前の種晶の写真であり、図6は稼働後の種晶の写真である。図6から明らかなように、稼働後では結晶同士の凝集が発生していることがわかる。
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
1 蒸発器
3 育晶器
4 結晶収集器
5 循環ポンプ
6 熱交換器
7 熱媒体源
10 加熱ポンプ
11 凝縮器
12 ドレンタンク
13 真空ポンプ
14 原料タンク
15 供給ポンプ
21 原料供給管
22 移送管
23 母液導出管
100 分級層型晶析装置(晶析装置)

Claims (5)

  1. 晶析の対象となる原料および当該原料を含む母液を育晶器に供給し、当該育晶器内において当該原料の種晶を成長させる分級層型晶析装置において、
    前記育晶器の底部の付近に前記母液の過飽和の状態である過飽和母液を供給し、
    前記育晶器の底部からの高さ方向における供給位置を設定して前記原料を供給することにより、前記種晶の凝集速度および前記種晶の個数を制御する、結晶の凝集制御方法。
  2. 請求項1に記載の結晶の凝集制御方法であって、
    前記育晶器の下側領域に、前記母液のスラリー層を生成し、
    前記育晶器の上側領域に、前記母液の液相を生成し、
    前記底部から、前記スラリー層の高さ方向における所定位置までの間の位置において前記原料を供給することにより、種晶の凝集を促進する結晶の凝集制御方法。
  3. 請求項1に記載の結晶の凝集制御方法であって、
    前記育晶器の下側領域に、前記母液のスラリー層を生成し、
    前記育晶器の上側領域に、前記母液の液相を生成し、
    前記スラリー層の高さ方向における所定位置から前記液相との境界付近までの間の位置において前記原料を供給することにより、種晶の凝集を抑制する結晶の凝集制御方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の結晶の凝集制御方法であって、
    前記育晶器は逆円錐型である、結晶の凝集制御方法。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の結晶の凝集制御方法であって、
    前記結晶は食塩である、結晶の凝集制御方法。
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