JP6198725B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

この発明は、運転者の操舵力を軽減する電動パワーステアリング装置に係り、特にモータ電流のフィードバック制御技術に関するものである。
従来、電動パワーステアリング装置は、操舵トルク、車速などの情報に基づいてモータを駆動し、運転者の操舵力を軽減している。そのため、モータを駆動制御するためにモータ電流を検出し、目標のモータ電流に追従するようにフィードバック制御をすることが基本となっていた。さらに、モータ電流を供給するためのスイッチング素子の制御にはPWM(Pulse Width Modulation)制御が用いられ、モータ電流の断続供給を行っており、アシスト量を増大させるために、PWM制御におけるオンデューティを上げ、一方要求電流が少ない場合はオンデューティを下げるように制御していた。
また、フィードバック制御においてはゲインを可変することも可能で、ゲインを大きくすれば応答性を向上でき、逆にゲインを下げるとハンチングを抑制できるものであった。(例えば、特許文献1参照)
特開2011−16435号公報
前記特許文献1に開示された技術は、よりよい操舵フィーリング、静粛性向上のためにアシスト勾配が所定値以上の場合は、フィードバック制御に使用されているゲインを低減するものである。特に、低速、停車時の静粛性を確保するためにそれらのゲインを低減することにより、作動音、振動の発生を抑制するものである。しかし、この特許文献1に開示された技術では、アシスト勾配は所定値以上であり、言い換えれば操舵トルクに対するモータ電流値の変化割合が大の場合であって、目標モータ電流の急増時に制御を変更するものである。
制御ゲイン変更の内、ゲイン低下は追従性を鈍らせ、一方、増加はハンチング、騒音、振動を引き起こすこともあり、慎重に判断しなければならない。
以上のように、操舵中は前記のようなモータ電流の急増のみならず、種々の事象が発生し得るものであるので、その状況に応じた対応が必要となり、その条件判断が煩雑となっていた。
この発明は、この問題を解決するためになされたもので、PWM制御におけるデューティに基づいてフィードバックのゲインを変更する電動パワーステアリング装置の提供を目的とするものである。
この発明に係る電動パワーステアリング装置は、ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、ハンドル操舵力をアシストするモータと、前記トルクセンサの情報に基づいて前記モータの電流を制御し、前記モータを駆動させるPWM信号を出力するコントロールユニットと、を備えた電動パワーステアリング装置において、
前記モータは多相巻線を有し、前記コントロールユニットはマイクロコンピュータを備え、前記マイクロコンピュータは、前記トルクセンサの情報に基づいて目標モータ電流値を演算すると共に、前記モータへ供給している電流をモニタし、前記目標モータ電流値と前記モニタにより検出された実モータ電流値との差異に従ってフィードバック制御を行い、制御量を算出する制御量算出手段と、前記制御量から前記多相巻線各相の前記PWM信号のデューティ中の最大デューティが所定値以上であることを検出した場合、前記フィードバック制御に使用されるゲインを変更するゲイン変更手段と、を備え
前記ゲイン変更手段は、前記所定値を値が減少する複数の所定値とし、大きい値の所定値から順次小さい値の所定値に沿って、最大デューティと前記所定値との比較を複数回行い、フィードバックのゲイン低下を次第に増加させることを特徴とする。
この発明による電動パワーステアリング装置は、前記構成により単純に制御ゲインが変更可能となり、その結果、騒音、振動の発生を抑制することができる効果を奏する。また、ゲイン低下を複数回に分けて行うため、制御の連続性を犠牲にすることなく、静粛性の向上、振動の抑制を図ることが可能となる。
この発明の前記以外の目的、特徴、観点及び効果は、図面を参照する以下のこの発明の詳細な説明から、さらに明らかになるであろう。
この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の全体回路を示すブロック図である。 実施の形態1による電動パワーステアリング装置の動作を説明するフローチャートである。
以下、この発明による電動パワーステアリング装置の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による電動パワーステアリング装置の全体回路を示すブロック図である。図1において、電動パワーステアリング装置100は、コントロールユニット(以下、ECUと称する。)1、イグニッションキーなどにより投入される電源2、車速センサ3、ハンドル操舵力を検出するトルクセンサ4、バッテリ5、およびモータ6から主に構成されている。
ECU1は、制御量の演算を受け持つマイクロコンピュータ(以下、CPUと称する。)10を中心に、電源2からの電力により12V系電源aから5V定電圧bを作る5V電源11、及び車速センサ3、トルクセンサ4からの信号をCPU10が受信できる信号へ変換するインターフェース回路12、13、モータ6へ電流を供給するための制御信号をCPU10からの制御量に応じて出力する駆動回路14、モータ6への電流の供給、遮断を行う複数のスイッチング素子T1〜T6、さらにはモータ6の制御状態を検出するためのモータ端子電圧モニタ回路15、およびモータ電流モニタ回路16を備えている。
CPU10は、車速センサ3、トルクセンサ4の情報からアシストすべき操舵トルクを発生する目標モータ電流を演算し、この制御量をスイッチング素子T1〜T6が制御できるような信号に変換して駆動回路14へ出力する。駆動回路14は、これらの信号に基づき、各スイッチング素子T1〜T6をPWM制御する出力信号を出力する。ここで、モータ6は3相ブラシレスモータが用いられており、各相をu相、v相、w相とする。
モータ端子Mu、Mv、Mwの電圧は、モータ端子電圧モニタ回路15の抵抗R4、R5で分圧されて夫々アナログ−ディジタル変換ポートADMu、ADMv、ADMwへ入力される。また、モータ電流は、モータ電流モニタ回路16を介して夫々アナログ−ディジタル変換ポートADIu、ADIv、ADIwへ入力される。モータ電流モニタ回路16は、スイッチング素子T2、T4、T6のそれぞれのアノードと接地間に接続される抵抗R1、R2、R3の電圧を増幅することにより電流を検出する。そのためモータ電流モニタ回路16には、増幅用のICであるAMP1と増幅率を決定する抵抗R6、R7が夫々挿入されている。
また、モータ6には回転子の回転位置を検出するための回転センサ7が布設され、その信号は回転位置検出回路17を介して、CPU10へ入力されている。回転センサ7としては、ホール素子、レゾルバ等が考えられる。さらにモータ電流の基であるバッテリ5のラインを開閉するメインリレー18がスイッチング素子T1、T3、T5の上流に配置されており、制御不要時、又は故障時の対応のためにCPU10の制御信号基づき駆動回路14がオン、オフ信号を出力する。以上は従来の電動パワーステアリング装置と同様の構成である。
次に制御ゲインの可変について説明する。この一連の動作、処理はすべてCPU10で成し遂げられるので、図2のフローチャートに基づいて説明する。
まず電源2が投入され、CPU10の5Vが供給されると、ステップS1においてRAM、ポート等を初期化する。そして、ステップS2において、各種の入力情報、車速、トルク、モータ端子電圧、モータ電流等々を入力する。
次にステップS3において、現在のCPU10の動作状況とステップS2で入力した情報により、ECU1の各部分に故障が発生していないかをチェックする、いわゆるフェール判定を行う。即ち、トルクセンサモニタ回路として機能するインターフェース回路13、モータ端子電圧モニタ回路15、モータ電流モニタ回路16、回転位置検出回路17等のデータを監視することにより、異常の有無をチェックする。
ステップS4において、車速Vl、トルクTrから目標モータ電流ITを算出する。具体的には、例えば目標モータ電流ITを車速Vl、トルクTrのマップから算出する。そして、ステップS2で入力しておいた実際のモータ電流Irとの差異から、比例項、積分項を有するPIフィードバック制御により、最終の制御量CTLnを算出する。この際に比例項、積分項には夫々ゲインKp、Kiが加味されている。このステップS4が制御量算出手段に相当する。
次に、算出された制御量CTLnを、モータの回転位置検出回路17による回転位置に応じ、3相各々のデューティDu、Dv、Dwに換算する。ここでデューティDu、Dv、Dwは、図1におけるスイッチング素子T1〜T6のモータ端子Mu、Mv、Mwの上流側に配置されたスイッチング素子T1、T3、T5のオンデューティを示すことにする。また、上流側スイッチング素子T1、T3、T5それぞれに対応する下流側スイッチング素子T2、T4、T6では、貫通電流を防止するために上流側スイッチング素子T1、T3、T5のオンデューティを反転したデューティとなる。この上流側スイッチング素子T1、T3、T5のオンデューティが大きい場合、下流側スイッチング素子T2、T4、T6のオンデューティは小さく、つまりオン時間が短時間であり、電流検出用のシャント抵抗R1〜R3が下流側スイッチング素子T2、T4、T6のさらに下流に配置されているため、モータ電流検出が時間的に困難となる。
このような状況下では、3相の内1相のモータ電流は検出不可能である。しかし、3相ブラシレスモータでは各スイッチング素子に流れる電流の総和はゼロという原則があり、これを利用して、検出できる2相から検出できない1相を推定する。この推定値も含んで電流フィードバック制御を行うことができる。そのため検出可能、不可能を判断することが必要となるが、この判断を簡略化するために所定デューティ比以上は検出不可能とする。この所定値は若干の余裕有して実験により予め決定できる。
そこでステップS6において、3相各々のデューティDu、Dv、Dwから算出された最大デューティDyが所定値A以上か否かをチェックする。最大デューティDyが所定値A未満であれば、通常のゲインとする。ステップS7において比例項ゲインKp=B、積分項ゲインKi=Cとする。一方、最大デューティDyが所定値A以上の場合、ステップS8において、比例項Kp=D、積分項Ki=Eに変更する。ここで、D<B、E<Cであり、例えば70〜30%のゲイン低下を行う。なお、ステップS6〜S8がゲイン変更手段に相当する。
ステップS9において、算出された3相各々のデューティDu、Dv、Dwに基づき駆動回路14に対して信号を出力する。ステップS10ではCPU10が周期的に各処理を行うために、所定時間が経過するまで待機し、所定時間が経過するとステップS2へ戻って、周期的に同様に処理を続ける。
以上のように、実施の形態1による電動パワーステアリング装置は、電流フィードバックゲインの変更をPWM制御のデューティ比に応じて低下、復帰を行うことになり、非常に簡単な判断で成し遂げられると共に、3相、2相の切替えも同時にできるものである。また、デューティ比が大ではモータトルク最大近傍の制御であるので、作動音、振動も比較的大きな領域である。そのためこのゲイン低下処理は、それらの発生抑制効果も期待できる。なお、ステップS8にてゲイン変更を行ったので、CPU10の次回のステップS4処理においてそのゲイン変更が効果を現すものとなっている。
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2による電動パワーステアリング装置について説明する。実施の形態2による電動パワーステアリング装置の全体の回路は、実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
実施の形態1では、図2のフローチャートのステップS8において、ゲインを低下させるようにゲイン定数を変更したが、CPU10が例えば10msecで各ルーチンを周期的に処理しているとすると、10msec後には一瞬でゲインが急減されることになる。そのため制御の連続性が途切れる可能性もある。さらに制御量も急減し、次回のルーチンでは再度デューティが所定値Aより下回る可能性もある。そのために、ゲインを処理周期の10msec毎に次第に低下させる漸減処理が望ましい。
また、ゲイン値の移動平均を取ることにより大きなステップ状の低下を防ぐことができる。以上のような方法によりゲイン低下を漸減とする場合は、その時定数はモータの電流に対するトルク時定数よりは早い設定とする必要がある。
さらにまた、CPU10の制御周期、PWMの周期、フィードバック制御周期がすべて同一であれば問題はないが、CPU10の動作、ECU1としての動作事情等によりそれら周期が異なる場合が考えられる。この場合、制御性能、音、振動、さらにはCPU10のソフトウエアの構築を考慮して、3者択一することは可能である。
CPU10の制御周期を選択した場合、図2のフローチャートどおりの処理ですむことになり、ソフトウエア構築が簡単である。PWMの周期を選択した場合、デューティ変換時にゲイン低下を加味して変換を行うことになるので、図2とは別のサブルーチンを利用して変換を行うことになる。一方、フィードバック制御周期を選択した場合、制御量演算時にゲイン低下を付加すればよいが、図2とは別のサブルーチン処理となる。いずれにしてもそのシステムに適した選択をすればよい。
このようにゲイン値の漸減により、ノイズの発生防止、制御の連続性確保により、騒音、振動を抑制することができる。
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3による電動パワーステアリング装置について説明する。実施の形態3による電動パワーステアリング装置の全体の回路は、実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
実施の形態1では、図2のステップS6において、最大デューティDyと所定値Aとを比較したが、この比較は1回でなくA1、A2、A3と異なる所定値(A1>A2>A3)で複数回行い、そのたび毎にゲインを低下させてゆく。さらにまた、目標モータ電流ITと実モータ電流Irとの差異が所定値以内であると、さらにゲインを低下させることもできる。実モータ電流Irが目標モータ電流ITに近い場合は、ゲインを低下させても応答性が悪化することも、ハンチングを起こすこともないので、静粛性、振動抑制の両面からもさらにゲイン低下を行うことができる。
このように、ゲイン低下の条件を追加し、ゲイン低下を複数回に分けて行うことで制御の連続性を犠牲にすることなく、静粛性の向上、振動の抑制を図ることが可能となる。
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4による電動パワーステアリング装置について説明する。実施の形態4による電動パワーステアリング装置の全体の回路は、実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
前記において説明した実施の形態1から3では、スイッチング素子T1〜T6を制御する3相各々のデューティDu、Dv、Dwから算出された最大デューティDyの値を所定値Aと比較して判断しているが、実際のデューティDyは制御周期毎に大きく変動する場合もある。そのため、実施の形態2で説明したように、ゲインが所定時間を要して漸減した場合であっても、ゲイン低下の実施、非実施とハンチングを繰り返す可能性がある。そこで、ゲイン低下を実施する所定値Aに対して、非実施の判断を行う所定値Fを異なる値としてヒステリシスを付加する。または、最大デューティDyに対してフィルタを付加してデューティ値の急変動を抑制したデューティDyfを使用し、このDyfと所定値Aと比較するという方法であってもよい。
以上のように、所定値にヒステリシスを付加、又はフィルタ通過デューティを利用することで、前記のようなハンチングを防止することができ、ゲイン低下、復帰においてよりスムーズな過渡制御とすることができる。
以上、この発明の実施の形態1から実施の形態4による電動パワーステアリング装置について説明したが、この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を組み合わせたり。各実施の形態を適宜、変更、省略することが可能である。
1 コントロールユニット(ECU) 2 電源
3 車速センサ 4 トルクセンサ
5 バッテリ 6 モータ
7 回転センサ 10 マイクロコンピュータ(CPU)
11 5V電源 12、13 インターフェース回路
14 駆動回路 15 モータ端子電圧モニタ回路
16 モータ電流モニタ回路 17 回転位置検出回路
18 メインリレー 100 電動パワーステアリング装置

Claims (6)

  1. ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、ハンドル操舵力をアシストするモータと、前記トルクセンサの情報に基づいて前記モータの電流を制御し、前記モータを駆動させるPWM信号を出力するコントロールユニットと、
    を備えた電動パワーステアリング装置において、
    前記モータは多相巻線を有し、
    前記コントロールユニットはマイクロコンピュータを備え、
    前記マイクロコンピュータは、前記トルクセンサの情報に基づいて目標モータ電流値を演算すると共に、前記モータへ供給している電流をモニタし、前記目標モータ電流値と前記モニタにより検出された実モータ電流値との差異に従ってフィードバック制御を行い、制御量を算出する制御量算出手段と、
    前記制御量から前記多相巻線における各相の前記PWM信号のデューティの中の最大デューティが所定値以上であることを検出した場合、前記フィードバック制御に使用されるゲインを変更するゲイン変更手段と、を備え
    前記ゲイン変更手段は、前記所定値を値が減少する複数の所定値とし、大きい値の所定値から順次小さい値の所定値に沿って、最大デューティと前記所定値との比較を複数回行い、フィードバックのゲイン低下を次第に増加させることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記ゲイン変更手段は、前記ゲインを所定時間内に予め決められた値に低下させることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記ゲインを所定時間内に予め決められた値に低下させる場合、制御周期に基づいて前記低下を実行し、前記モータの電流に対するトルク発生の時定数よりも早い時定数で低下させることを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記マイクロコンピュータは前記デューティが所定値以上である場合、一部の巻線におけるモータ電流のモニタを中止し、残った巻線におけるモータ電流のモニタによりフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記ゲイン変更手段は、前記デューティが所定値以上であって、前記目標モータ電流値と前記モニタにより検出された実モータ電流値との差異が所定値以内である場合、前記ゲインをさらに低下させることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  6. 前記ゲインは、前記目標モータ電流値と前記モニタにより検出された実モータ電流値との差異に基づく電流値の比例項、及び積分項の両方とも変更されるものであることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
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