JP4794603B2 - ブラシレスモータ制御装置 - Google Patents

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Description

この発明はインバータ回路を電源としてブラシレスモータを駆動するブラシレスモータ制御装置に関するものである。
一般に、電源から電力供給を受けてブラシレスモータを駆動するブラシレスモータ制御装置において、ブラシレスモータに過度な電流を通電した場合には、電源から制御装置に供給される過電流によって電源が過負荷状態となり、発熱に起因して発煙を生じ、さらには発火に至る可能性がある。
このような過度の発熱を回避するために、従来から、ブラシレスモータ制御装置においては、自身に供給される電源電流を検出または算出して、電源電流が過度に大きな値とならないように、ブラシレスモータへの通電量を制限している。
すなわち、従来のブラシレスモータ制御装置は、少なくとも2相の電流と、2相電流に対応した少なくとも2相の端子電圧と、ブラシレスモータの回転角度とを検出し、これらの検出値から算出した2軸(q軸およびd軸)上の電圧と電流とを乗算して電力を求め、電力の算出値を電源電圧の検出値で除算することにより、電源電流を算出している(たとえば、特許文献1参照)。
特開2006−14474号公報
従来のブラシレスモータ制御装置では、上記特許文献1に記載の算出処理の場合、ブラシレスモータの少なくとも2相の端子電圧を検出する電圧検出器が必要となり、コストアップを招くという課題があった。
また、電源電力がブラシレスモータ以外(インバータ回路や制御回路)にも供給されているにもかかわらず、他の供給電力を考慮せずにブラシレスモータへの供給電力のみを求め、ブラシレスモータへの供給電力を電源電圧で除算して電源電流を算出しているので、電源電流の算出値が大きな誤差を含むことになり、ブラシレスモータへの通電制御信頼性が低下するという課題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ブラシレスモータの端子電圧を検出するための電子回路を必要とせずに安価に構成するとともに、検出誤差を含まずに高精度に電源電流を算出することのできるブラシレスモータ制御装置を得ることを目的とする。
この発明によるブラシレスモータ制御装置は、3相コイルを含むブラシレスモータへの通電電流を電源電流に応じて制御するブラシレスモータ制御装置であって、3相コイルを相補PWM駆動するインバータ回路と、3相コイルの各相に流れる相電流を検出する電流検出器と、インバータ回路から生成される電源電圧を検出する電圧検出器と、ブラシレスモータへの通電電流を制御する制御回路とを備え、制御回路は、相補PWM駆動のデッドタイム期間と相電流とに応じて第1の補正値を設定し、相補PWM駆動される3相コイルの各相のデューティ比から第1の補正値を減算することにより、各相のデューティ比に対してデッドタイム期間分の補正を行い、デッドタイム期間分が補正されたデューティ比と、電圧検出器により検出された電源電圧とを乗算して、3相コイルの各相の端子電圧を求め、各相の端子電圧と電流検出器により検出された相電流とを乗算して、3相の相電力を求め、3相の相電力を合計してブラシレスモータへの供給電力を求め、供給電力を電源電圧で除算して電源電流を算出するものである。
この発明によれば、ブラシレスモータの相補PWM駆動のデューティ比からブラシレスモータを駆動する端子電圧を算出するようにしたので、端子電圧を検出するための電圧検出器を必要とせずに安価なブラシレスモータ制御装置を提供できる。
また、ブラシレスモータへの供給電力にインバータ回路および制御回路の損失電力を加えて電源電流を算出するようにしたので電源電流を高い精度で検出できるブラシレスモータ制御装置を提供することができる。
実施の形態1.
以下、添付図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分については、同一符号を付されている。また、以下では、ブラシレスモータが車両用の電動パワーステアリング装置の一部(アシストモータ)を構成している場合を例として説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係るブラシレスモータ制御装置を電動パワーステアリング装置2とともに示す斜視図である。
図1において、ハンドル1の回転をアシストする電動パワーステアリング装置2は、車軸3の近傍に設けられている。
電動パワーステアリング装置2には、ハンドル1の回転をアシストするためのアシスト力を発生するブラシレスモータ4と、ブラシレスモータ4に接続されてブラシレスモータ4への通電電流を制御する制御手段すなわちECU5とが設けられている。
ブラシレスモータ4は、車両のエンジンルーム(図示せず)内に設置されている。
また、車軸3の近傍に設けられたトルクセンサ(図示せず)は、ハンドル1に印加された操舵トルクTsを検出してECU5に入力する。
図2はECU5のモータ電流制御用の機能構成を具体的に示すブロック図である。
図2において、ECU5の3相の出力端子には、ブラシレスモータ4の3相の入力端子が接続されている。
また、ECU5には、車載バッテリからなる電源10の出力端子と、ブラシレスモータ4の回転角度θを検出する角度センサ20の出力端子とが接続されている。
ECU5は、ブラシレスモータ4の駆動電源として機能するインバータ回路30と、インバータ回路30を制御する制御回路40とを備えている。
インバータ回路30は、ブラシレスモータ4を駆動する交流動作部31と、電源10からの給電により交流動作部31に直流電力を供給する直流動作部32とを備えており、電源10から電力の供給を受けて動作してブラシレスモータ4を相補PWM駆動する。
制御回路40は、各種演算を行うCPU41と、インバータ回路30内のFETを駆動するゲートドライバ42と、CPU41に対する各種入力信号の入力インターフェース回路43とを備えており、角度センサ20からの回転角度θを入力情報として、インバータ回路30を介してブラシレスモータ4への通電電流を制御する。
インバータ回路30内の直流動作部32は、チョークコイル33および平滑コンデンサ34により構成されている。
交流動作部31は、ブラシレスモータ4の3相に対応した上下一対(3つのアーム)のFET1〜FET6(電界効果トランジスタ)を主要素子としており、CPU41から出力されるPWM駆動パルスに応動して、スイッチング動作する。
すなわち、交流動作部31において、FET1およびFET2は、ブラシレスモータ4のU相を駆動するアームを構成し、FET3およびFET4は、V相を駆動するアームを構成し、FET5およびFET6は、W相を駆動するアームを構成している。
各アームの上側のFET1、FET3、FET5は、電源(電源電圧Vs)に接続せれ、下側のFET2、FET4、FET6は、GND(0ボルト)に接続されている。
また、下側のFET2、FET4、FET6のソースとGNDとの間には、相電流検出用の抵抗Rsu、Rsv、Rswが挿入されている。
なお、インバータ回路30の駆動周波数は、たとえば20KHzに設定されている。
制御回路40内のCPU41は、目標電流設定部51と、q軸PI制御部52と、d軸PI制御部53と、2軸/3軸変換部54と、3軸/2軸変換部55と、PWMパルス発生部56と、A/D変換部57と、電源電流算出手段58とを備えている。
CPU41内の各構成ブロック51〜58は、ソフトウェアによる処理を示している。
次に、図1および図2を参照しながら、この発明の実施の形態1に係るECU5の動作について説明する。
図2において、目標電流設定部51は、ハンドル1に印加された操舵トルクTs(検出値)と、電源電流算出手段58で算出された電源電流Ib(推定値)とに応じて、2軸(q軸およびd軸)上の目標電流Tiq、Tidを設定する。
インバータ回路30内の抵抗Rsu、Rsv、Rswは、ブラシレスモータ4の3相に流れる相電流Iu、Iv、Iwを検出し、角度センサ20は、ブラシレスモータ4の回転角度θを検出する。
CPU41内の3軸/2軸変換部55および電源電流算出手段58は、インターフェース回路43およびA/D変換部57を介して、相電流Iu、Iv、Iwおよび回転角度θ(検出値)を読み込む。
3軸/2軸変換部55は、回転角度θに応じて、3相の相電流Iu、Iv、Iwを、2軸(q軸およびd軸)の検出電流Iq、Id(検出値)に変換する。
q軸PI制御部52は、q軸の目標電流Tiqと検出電流Iqとの電流偏差に応じて、電流偏差が「0」となる(検出電流Iqが目標電流Tiqと一致する)ように比例積分制御を行い、q軸の指令電圧Vqを得る。
同様に、d軸PI制御部53は、d軸の目標電流Tidと検出電流Idとの電流偏差に応じて、電流偏差が「0」となる(検出電流Idが目標電流Tidに一致する)ように比例積分制御を行い、d軸の指令電圧Vdを得る。
2軸/3軸変換部54は、回転角度θに応じて、2軸上の指令電圧Vq、Vdを、ブラシレスモータ4の3相に対応した3軸のPWM駆動のデューティ比Du、Dv、Dwに変換する。
PWMパルス発生部56は、デューティ比Du、Dv、Dwに応じて、パルス幅変調されたPWMパルスを生成する。
制御回路40内のゲートドライバ42は、CPU41のPWMパルス発生部56から出力されるPWMパルスを受けて、インバータ回路30のFET1〜FET6を駆動する。
これにより、インバータ回路30は、ブラシレスモータ4を駆動し、ブラシレスモータ4は、操舵トルクTsへのアシストトルクを発生する。
以上のように、ハンドル1に印加された操舵トルクTsに応じたアシストが行われる。
次に、図1および図2とともに、図3のタイミングチャートを参照しながら、インバータ回路30の動作について説明する。
上述した通り、PWMパルスによるFET1〜FET6の駆動状態は、相補駆動となっており、上下のFETのON/OFF(導通/遮断)の状態が、常に互いに逆関係に駆動されている。
図3は1つの相アームの上下FET対の相補駆動状態を示しており、横軸は時間tである。
図3(a)は駆動周期T内の上側FETのON/OFF状態(ON期間T1)を示しており、図3(b)は駆動周期T内の下側FETのON/OFF状態(ON期間T2)を示している。
図3(a)、(b)に示すように、上側FETおよび下側FETのON/OFF状態は、微小なデッドタイム期間Tdを介して、常に逆関係となっている。
図3(c)はアーム出力端子電圧(ブラシレスモータ4の各相に印加される電圧)を示している。アーム出力端子電圧は、上側FETのON期間T1では電源電圧Vsに導通され、下側FETのON期間T2ではGND(0ボルト)に導通される。
図3のような相補PWM駆動の場合、駆動周期Tにおける上側FETのデューティ比(駆動周期Tに対する上側FETのON期間T1の比率)を0%から100%まで変化させることによって、アーム出力端子電圧の平均値Vavを、GND(0ボルト)から電源電圧Vsまでの範囲で調整することができる。
たとえば、デューティ比(アーム出力端子電圧が電源電圧Vsに導通されるON期間T1の比率)が30%であれば、アーム出力端子電圧の平均値Vavは、電源電圧Vs×0.3となる。
また、たとえば、PWMの駆動周波数が20KHzの場合、駆動周期Tは50μsとなるが、一般にブラシレスモータ4のコイルの時定数は駆動周期T(=50μs)と比べて十分に長いので、アーム出力端子電圧がパルス状に変化しても、コイルには平均された電流(ほぼ直流)が流れる。
たとえば、PWM駆動のデューティ比を30%とした場合、ブラシレスモータ4のコイルに流れる電流は、電源電圧Vsの30%の直流電圧(=0.3×Vs)を印加した場合に流れる電流と等しくなる。
ところで、相補PWM駆動において、上下一対のFETのON/OFFを上下同時に切り換えた場合には、たとえばFETのスイッチング動作の遅れなどにより、上下のFETが同時に導通状態となる期間(短時間ではあるが)が生じ得る。
上下FETが同時に導通状態になると、電源(電源電圧Vs)とGND(0ボルト)との間が導通して、過大な電流が上下FETを貫通して流れ、FETが破損に至る可能性がある。
したがって、上下FETの同時ONを回避するために、図3のように、各FETのONからOFF(または、OFFからON)へのスイッチング時に、上下FETが同時にOFFとなるデッドタイム期間Tdが設けられている。
図3(c)では、デッドタイム期間Tdにおけるアーム出力端子電圧を「斜線」を付して示している。デッドタイム期間Tdにおいては、上下FETがともに遮断状態にあるので、アーム出力端子電圧は、その時点での相電流の大きさおよび向きによって定まる。
以下、電源電流算出手段58による電源電流Ib(推定値)の算出原理について説明する。
図2において、ECU5に実際に印加される電源電圧Vbと、ECU5に実際に流入する電源電流Ibとを考慮すると、ECU5への供給電力Peは、以下の式(1)で表される。
Figure 0004794603
したがって、電源電圧Vbが既知の場合には、式(1)から供給電力Peを算出して、これを電源電圧Vbで除算することにより、ECU5に流入する電源電流Ib(推定値)を算出することができる。
また、ECU5への供給電力Peは、ブラシレスモータ4への供給電力Pmと、インバータ回路30の交流動作部31および直流動作部32での損失電力Pi、Pdと、制御回路40での自己損失電力Pcとの和からなり、以下の式(2)で表される。
Figure 0004794603
したがって、式(2)からECU5への供給電力Peを算出して、これを電源電圧Vb(検出値)で除算することにより、ECU5の電源電流Ibを算出することができる。
図4は電源電流算出手段58の機能構成を具体的に示すブロック図である。
図4において、電源電流算出手段58は、U相供給電力算出部61と、V相供給電力算出部62と、W相供給電力算出部63と、U相交流損失算出部64と、V相交流損失算出部65と、W相交流損失算出部66と、直流損失算出部67と、制御回路損失算出部68と、電源電流算出部69とを備えている。
次に、図2とともに、図4を参照しながら、電源電流算出手段58による上記原理に基づく電源電流Ibの算出処理について説明する。
まず、U〜W相供給電力算出部61〜63は、2軸/3軸変換部54からのデューティ比Du、Dv、Dwと、A/D変換部57を介して読み込まれた電源電圧Vsおよび相電流Iu、Iv、Iwとから、U相〜W相の供給電力(相電力)Pu、Pv、Pwを算出する。
各相の供給電力Pu、Pv、Pwは加算されて、ブラシレスモータ4への供給電力Pmとして算出される。
一方、各相の交流損失算出部64〜66は、各相電流Iu、Iv、Iwから、U相〜W相の損失電力Piu、Piv、Piwを算出する。
各相の損失電力Piu、Piv、Piwは加算されて、インバータ回路30内の交流動作部31の損失電力Piとして算出される。
また、交流動作部31の損失電力Piは、ブラシレスモータ4への供給電力Pmと加算されて、ECU5の交流電力Paとして算出される。
次に、直流損失算出部67は、交流電力Paから、インバータ回路30内の直流動作部32の損失電力Pdを算出し、また、制御回路損失算出部68は、制御回路40の自己損失電力Pcを算出する。
直流動作部32の損失電力Pdおよび制御回路40の自己損失電力Pcは、交流電力Paに加算されて、ECU5への供給電力Peとして算出される。
最後に、電源電流算出部69は、ECU5への供給電力Peを、A/D変換部57を介して読み込まれたECU5の電源電圧Vbで除算して、電源電流Ibとして算出し、目標電流設定部51に入力する。
図5はU〜W相供給電力算出部61〜63内の各相の出力端子電圧算出部60の機能構成を示すブロック図であり、U〜W相供給電力算出部61〜63内の前段側の構成を示している。
図6はブラシレスモータ4に供給される各相の出力端子電圧Vv、Vu、Vwおよび相電流Iv、Iu、Iwを模式的に示す説明図である。
図7はU〜W相供給電力算出部61〜63内の供給電力算出部70の機能構成を示すブロック図であり、出力端子電圧算出部60(図5)に続くU〜W相供給電力算出部61〜63内の後段側の構成を加算部とともに示している。
図5において、各相の出力端子電圧算出部60は、補正値設定部71と、アーム出力端子電圧算出部72と、電圧降下算出部73とを備えている。
なお、出力端子電圧V*(Vu、Vv、Vw)の算出処理は、3相の各々について同一なので、代表的に図5のみで説明する。ここで、U、V、W相を総称的に表す符号の後には、文字「*」が付されている。
補正値設定部71は、デューティ比D*に対する補正値H*を、データテーブル(または、数式)を用いて、デッドタイム期間Tdおよび相電流I*に応じて設定する。
アーム出力端子電圧算出部72は、デッドタイム期間Tdおよび相電流I*に応じて補正されたデューティ比(=D*−H*)に対して、電源電圧Vsを乗算することにより、アーム出力端子電圧V1*を算出する。
電圧降下算出部73は、相電流I*と配線抵抗値r1とを乗算して電圧降下(=I*×r1)を算出する。
図6において、ブラシレスモータ4は、中点電圧Vcの共通中点とECU5の出力端子との間に挿入された3相のコイル4u、4v、4wを有する。
図7において、供給電力算出部70は、中点電圧算出部74と、U〜W相供給電力算出部61〜63に対応した各相の乗算部75〜77とを備えている。
以下、供給電力Pmおよび各損失電力Pi、Pd、Pcの詳細な算出処理について、順次に説明する。
まず、ブラシレスモータ4への供給電力Pmの算出処理に先だって、図2〜図5を参照しながら、ECU5の出力端子電圧V*(Vu、Vv、Vw)の算出処理について説明する。
ECU5(図2)の出力端子電圧Vu、Vv、Vwは、2軸/3軸変換部54で生成されたPWM駆動のデューティ比Du、Dv、Dwから算出される。
前述のように、PWM駆動のデューティ比Du、Dv、Dwに、インバータ回路30の電源電圧Vsを乗算すれば、アーム出力端子電圧の平均値Vavが求められるが、相補PWM駆動におけるデッドタイム期間Td(図3内の斜線部)中のアーム出力端子電圧は、ブラシレスモータ4の相電流I*に依存している。
したがって、出力端子電圧算出部60において、まず、補正値設定部71は、デッドタイム期間Tdと相電流I*とに応じた補正値H*を設定し、デューティ比D*から補正値H*を減算することにより、デッドタイム期間Td分の補正を行う。
次に、アーム出力端子電圧算出部72は、デッドタイム期間Td分が補正されたデューティ比に電源電圧Vsを乗算してアーム出力端子電圧V1*を算出する。
ただし、アームの出力端子からECU5の出力端子までの間には、配線抵抗R1による電圧降下が生じる。
したがって、電圧降下算出部73は、アーム出力端子電圧V1*に対して電圧降下分を補正するために、電圧降下の値(=相電流I*×配線抵抗値r1)を算出し、アーム出力端子電圧V1*から電圧降下値を減算してECU5の出力端子電圧V*を算出する。
最後に、出力端子電圧算出部60は、アーム出力端子電圧V1*から電圧降下の算出値を減算した出力端子電圧V*(=V1*−(I*×r1))を、最終的な算出値として出力する。
これにより、ブラシレスモータ4の3相を駆動するECU5の出力端子電圧Vu、Vv、Vwが求められる。
次に、図6および図7を参照しながら、出力端子電圧Vu、Vv、Vwを用いた供給電力Pmの算出処理について説明する。
図6において、ブラシレスモータ4内のU相のコイル4uおよび中点電圧Vcに注目すると、コイル4uには、一端に出力端子電圧Vuが印加され、他端に中点電圧Vcが印加されて、相電流Iuが流れる。したがって、U相への供給電力Puは、以下の式(3)で表される。
Figure 0004794603
同様に、V相のコイル4vには、一端に出力端子電圧Vvが印加され、他端に中点電圧Vcが印加されて、相電流Ivが流れるので、V相への供給電力Pvは、以下の式(4)で表される。
Figure 0004794603
また、W相のコイル4wには、一端に端子電圧Vwが印加され、他端に中点電圧Vcが印加されて、相電流Iwが流れるので、W相への供給電力Pwは、以下の式(5)で表される。
Figure 0004794603
また、中点電圧Vcは、図6からも明らかなように、3つの出力端子電圧Vu、Vv、Vwの平均値なので、以下の式(6)で表される。
Figure 0004794603
以上の式(3)〜(6)の演算処理を行うために、図7の供給電力算出部70において、まず、中点電圧算出部74は、式(6)を用いて中点電圧Vcを求める。
続いて、各相の乗算部75は、式(3)〜(5)を用いて、U相〜W相への供給電力Pu〜Pwを求める。
最後に、加算部は、3相への供給電力Pu、Pv、Pwを合計して、ブラシレスモータ4への供給電力Pmを算出する。
なお、以上の算出処理において、ECU5からブラシレスモータ4までの配線による消費電力は、ブラシレスモータ4への供給電力Pmに含まれているものとする。
次に、図2および図4を参照しながら、インバータ回路30内の交流動作部31の損失電力Piの算出処理について説明する。
損失電力Piの算出処理は、図4内のU〜W相交流損失算出部64〜66によって行われる。
周知のように、図2内の交流動作部31においては、FET1〜FET6のON抵抗による損失電力や、FET1〜FET6のスイッチング動作によるスイッチング損や、電流検出用の抵抗Rsu〜Rswによる損失電力などの電力の損失が生じる。これらはいずれも相電流I*が流れて発生するものであり、損失電力は相電流の2乗に比例する。
ここで、U相の損失電力Piuは、U相の比例係数Ruを用いて、以下の式(7)で表される。
Figure 0004794603
同様に、V相の損失電力Pivは、V相の比例係数Rvを用いて、以下の式(8)で表される。
Figure 0004794603
また、W相の損失電力Piwは、W相の比例係数Rwを用いて、以下の式(9)で表される。
Figure 0004794603
したがって、各相の損失電力算出部64〜66は、式(7)〜(9)を用いて、U相〜W相の損失電力Piu〜Piwを求める。
最後に、加算部は、3相への損失電力Piu、Piv、Piwを合計して、インバータ回路30の交流動作部31の損失電力Piを算出する。
次に、図2および図4を参照しながら、インバータ回路30内の直流動作部32での損失電力Pdの算出処理について説明する。損失電力Pdの算出処理は、図4内の直流損失算出部67によって行われる。
図2内の直流動作部32においては、直流の電流が流れて、チョークコイル33や配線抵抗などによる損失電力Pdが発生し、損失電力Pdは、交流電力Pa(=Pm+Pi)の2乗に比例する。
したがって、直流損失算出部67は、比例係数Kdを用いて、以下の式(10)のように損失電力Pdを算出する。
Figure 0004794603
式(10)から算出された損失電力Pdは、交流電力Paに加算される。
次に、図4内の制御回路損失算出部68による制御回路40の自己損失電力Pcの算出処理について説明する。
制御回路40の自己損失電力Pcは、ブラシレスモータ4の動作状態に依らず、常にほぼ一定値である。
したがって、制御回路損失算出部68は、自己損失電力Pcを所定の定数値として設定し、交流電力Paにさらに加算して、ECU5への供給電力Pe(=Pa+Pd+Pc)を算出する。
最後に、図4内の電源電流算出部69は、上記処理で求められたECU5への供給電力Peを電源電圧Vbの検出値で除算して、電源電流Ib(=Pe/Vb)を算出する。
電源電流Ibは、図2内の電源電流算出手段58からの出力情報として、目標電流設定部51に入力される。
目標電流設定部51は、電源電流Ibの算出値が過大であって、電源10が過負荷(発煙や発火を生じる)となる可能性があると見なされる場合には、目標電流Tiq、Tidの設定値を抑制するための抑制処理を行う。
なお、図4および図5においては、制御回路40内に、直流損失算出部67、制御回路損失算出部68および補正値設定部71を設け、各補正処理後の供給電力Peを、実際のECU5への電源電圧Vbで除算して電源電流Ibを求めたが、上記補正処理を省略して、ECU5の交流電力Pa(=Pm+Pi)を電源電圧Vsで除算して電源電流Ibを求めてもよい。
以上のように、この発明の実施の形態1に係るブラシレスモータ制御装置は、3相のコイル4u、4v、4wを含むブラシレスモータ4への通電電流iu、iv、iwを電源電流Ibに応じて制御するために、コイル4u、4v、4wを相補PWM駆動するインバータ回路30と、コイル4u、4v、4wの各相に流れる相電流Iu、Iv、Iwを検出する電流検出器(抵抗Rsu、Rsv、Rsw)と、インバータ回路30から生成される電源電圧Vb、Vsを検出する電圧検出器と、ブラシレスモータ4への通電電流を制御する制御回路40とを備えている。
制御回路40において、出力端子電圧算出部60は、相補PWM駆動されるコイル4u、4v、4wの各相のデューティ比Du、Dv、Dwと、電圧検出器により検出された電源電圧VsIu、Iv、Iwとを乗算して、各相の端子電圧V1*(V1u、V1v、V1w)を求める。
また、制御回路40内の供給電力算出部70は、乗算部75〜77において、各相の端子電圧V1*と電流検出器により検出された相電流Iu、Iv、Iwとを乗算して、3相の供給電力(相電力)Pu、Pv、Pwを求めるとともに、3相の相電力を合計してブラシレスモータ4への供給電力Pmを求める。
さらに、制御回路40内の電源電流算出手段58は、供給電力Pm(または、供給電力Pe)を電源電圧Vs(または、電源電圧Vb)で除算して電源電流Ibを算出する。
また、制御回路40は、補正値設定部71において、相補PWM駆動のデッドタイム期間Tdと相電流I*とに応じて補正値H*(第1の補正値)を設定し、相補PWM駆動の各相のデューティ比D*から補正値H*を減算することにより、デッドタイム期間Td分の補正を行い、デッドタイム期間Td分が補正されたデューティ比に電源電圧Vsを乗算して、各相の端子電圧V*を求める。
また、制御回路40は、電圧降下算出部73において、相電流I*に比例した電圧降下(第2の補正値)の値(=I*×r1)を設定し、各相の端子電圧V1*から第2の補正値を減算することにより電圧降下分の補正を行い、電圧降下分が補正された各相の端子電圧V*に相電流I*を乗算して、供給電力Pmを求める。
また、制御回路40は、U〜W相交流損失算出部64〜66および加算部において、相電流I*をそれぞれ2乗加算した3相の合計値に比例する交流の損失電力Pi(第3の補正値)を設定し、ブラシレスモータ4への供給電力Pmに損失電力Piを加算することにより、インバータ回路30の交流の損失電力Pi分の補正を行い、交流の損失電力分が補正された供給電力Pa(第1の供給電力)を電源電圧Vs(または、Vb)で除算して、電源電流Ibを算出する。
また、制御回路40は、直流損失算出部67において、供給電力Paの2乗に比例した直流の損失電力Pd(第4の補正値)を設定し、供給電力Paに直流の損失電力Pdを加算することにより、直流の損失電力分の補正を行い、直流の損失電力分が補正された供給電力Pa+Pd(第2の供給電力)を電源電圧Vs(または、Vb)で除算して、電源電流Ibを算出する。
さらに、制御回路40は、制御回路損失算出部68において、制御回路40の自己消費電力分に応じた自己損失電力Pc(第5の補正値)を設定し、供給電力Pa+Pdに自己損失電力Pcを加算することにより、自己消費電力分の補正を行い、自己消費電力分が補正された供給電力Pe(第3の供給電力)を電源電圧Vb(または、Vs)で除算して、電源電流Ibを算出する。
これにより、ECU5内のCPU41の演算処理により、ブラシレスモータ4の相補PWM駆動のデューティ比D*から、ブラシレスモータ駆動用のECU5からの出力端子電圧Vu、Vv、Vwを求めるとともに、電源電流Ibを算出することができる。
したがって、出力端子電圧Vu、Vv、Vwを検出するためのハードウェア(電圧検出器)が不要となり、安価なブラシレスモータ制御装置を実現することができる。
また、相補PWM駆動でのデッドタイム期間Td分の補正を施すとともに、インバータ回路30の電圧降下分の補正を施して、出力端子電圧Vu、Vv、Vwを求めることにより、電源電流Ibを高精度に算出することができる。
さらに、ブラシレスモータ4への供給電力Pmに対して、インバータ回路30での交流および直流の損失電力Pi、Pd分の加算補正を施すとともに、制御回路40での自己損失電力Pc分の加算補正を施した供給電力Peから電源電流Ibを算出することにより、ブラシレスモータ4への供給電力Pmのみならず、他の損失電力をも考慮した高精度の電源電流Ibを算出することができる。
この発明の実施の形態1に係るブラシレスモータ制御装置が適用される電動パワーステアリング装置の全体構成を示す斜視図である。 この発明の実施の形態1に係るECUの機能構成を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1に用いられるインバータ回路の動作を示すタイミングチャートである。 この発明の実施の形態1に係る電源電流算出手段の機能構成を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1に係る出力端子電圧算出部の機能構成を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1が適用されるブラシレスモータの各相への供給電圧および相電流を模式的に示す説明図である。 この発明の実施の形態1に係る供給電力算出部の機能構成を示すブロック図である。
符号の説明
4 ブラシレスモータ、4u、4v、4w コイル、5 ECU、10 電源、20 角度センサ、30 インバータ回路、31 交流動作部、32 直流動作部、40 制御回路、41 CPU、42 ゲートドライバ、43 入力インターフェース回路、51 目標電流設定部、58 電源電流算出手段、Ib 電源電流、Vb、Vs 電源電圧。

Claims (5)

  1. 3相コイルを含むブラシレスモータへの通電電流を電源電流に応じて制御するブラシレスモータ制御装置であって、
    前記3相コイルを相補PWM駆動するインバータ回路と、
    前記3相コイルの各相に流れる相電流を検出する電流検出器と、
    前記インバータ回路から生成される電源電圧を検出する電圧検出器と、
    前記ブラシレスモータへの通電電流を制御する制御回路とを備え、
    前記制御回路は、
    相補PWM駆動のデッドタイム期間と前記相電流とに応じて第1の補正値を設定し、
    相補PWM駆動される前記3相コイルの各相のデューティ比から前記第1の補正値を減算することにより、前記各相のデューティ比に対して前記デッドタイム期間分の補正を行い、
    前記デッドタイム期間分が補正されたデューティ比と、前記電圧検出器により検出された前記電源電圧とを乗算して、前記3相コイルの各相の端子電圧を求め、
    前記各相の端子電圧と前記電流検出器により検出された前記相電流とを乗算して、3相の相電力を求め、
    前記3相の相電力を合計して前記ブラシレスモータへの供給電力を求め、
    前記供給電力を前記電源電圧で除算して前記電源電流を算出することを特徴とするブラシレスモータ制御装置。
  2. 前記制御回路は、
    前記相電流に比例した第2の補正値を設定し、
    前記各相の端子電圧から前記第2の補正値を減算することにより電圧降下分の補正を行い、
    前記電圧降下分が補正された各相の端子電圧に前記相電流を乗算して、前記供給電力を求めることを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータ制御装置。
  3. 前記制御回路は、
    前記相電流をそれぞれ2乗加算した3相の合計値に比例する第3の補正値を設定し、
    前記ブラシレスモータへの供給電力に前記第3の補正値を加算することにより、前記インバータ回路の交流の損失電力分の補正を行い、
    前記交流の損失電力分が補正された第1の供給電力を前記電源電圧で除算して、前記電源電流を算出することを特徴とする請求項2に記載のブラシレスモータ制御装置。
  4. 前記制御回路は、
    前記第1の供給電力の2乗に比例した第4の補正値を設定し、
    前記第1の供給電力に前記第4の補正値を加算することにより、直流の損失電力分の補正を行い、
    前記直流の損失電力分が補正された第2の供給電力を前記電源電圧で除算して、前記電源電流を算出することを特徴とする請求項3に記載のブラシレスモータ制御装置。
  5. 前記制御回路は、
    前記制御回路の自己消費電力分に応じた第5の補正値を設定し、
    前記第2の供給電力に前記第5の補正値を加算することにより、前記自己消費電力分の補正を行い、
    前記自己消費電力分が補正された第3の供給電力を前記電源電圧で除算して、前記電源電流を算出することを特徴とする請求項4に記載のブラシレスモータ制御装置。
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