JP6197397B2 - ハイブリッド車の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ハイブリッド車の制御装置に関する。
従来、エンジンとモータとを備え、これらの出力を用いて車輪を駆動するハイブリッド車が知られている。
例えば、特許文献1には、エンジンとモータとを備えたパラレル式ハイブリッド車が開示されている。この車両では、エンジンの燃費率が悪い極めて低負荷領域ではモータのみにより車輪を駆動し、この極低負荷領域よりも負荷の高い中負荷領域ではエンジンとモータとを併用して車輪を駆動し、この中負荷領域よりも負荷が高くエンジンの燃費率が良好な高負荷領域ではエンジンのみにより車輪を駆動し、これにより車両の効率を高めている。
特開2013−56619号公報
ハイブリッド車では、駆動源としてエンジンと当該エンジンよりも駆動音の小さいモータとが併用されている。そのため、エンジンのみを駆動源とする車両よりも車両から発せられる音が小さくなり、静粛性を得られる一方、歩行者等に車両の接近を認識させにくいという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑み、車両から発せられる音圧を適切な音圧にすることのできるハイブリッド車の制御装置の提供を目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、ハイブリッド車の制御装置であって、エンジンと、前記ハイブリッド車の駆動力を出力するモータと、前記モータを制御するモータ制御手段と、使用者が操作可能な操作手段とを有し、前記モータは、負荷が最大負荷の10%以上であるとき最高回転数の75%となる回転数において90%以上の効率を有し、前記モータ制御手段は、前記モータの出力が一定に維持されつつ前記モータの音圧および前記モータの効率が変化するように前記モータに発生する磁気エネルギの変化率を変更可能であって、前記操作手段の操作状態に応じて、前記モータの制御モードを、前記モータに発生する磁気エネルギの変化率を所定の変化率とする第1制御モードと、前記モータに発生する磁気エネルギの変化率を前記第1制御モードよりも前記モータの効率が低く且つ前記モータの音圧が小さくなる変化率とする第2制御モードとに切り替えるとともに、前記第2制御モードでは、前記モータに供給する電流である供給電流の最大値を前記第1制御モードよりも大きくする一方前記ロータが前記ステータを通過するときの前記供給電流の低下速度を前記第1制御モードよりも小さくすることで、前記モータの出力を一定に維持しつつ前記第1制御モードよりも前記モータの音圧が小さくなるように前記磁気エネルギの変化率を変更することを特徴とするハイブリッド車の制御装置を提供する。
本装置によれば、使用者が前記操作手段を操作することでモータの出力が変更されることなくモータの音圧およびモータの効率が変更される。そのため、車両の駆動力を維持しつつ車両から発せられる音圧および走行効率を運転状況に応じた適切な値に変更することができる。
具体的には、本装置では、モータに発生する磁気エネルギの変化率が前記第1制御モードの変化率となるように前記操作手段が操作されることで、車両の駆動力ひいては車速を変更することなく車両から発せられる音圧を大きくすることができる。そのため、使用者は、歩行者を発見した場合等に前記磁気エネルギの変化率が前記第1制御モードの変化率となるように前記操作手段を操作することで、歩行者等に車両の接近をより確実に認識させることができる。一方、歩行者等に車両の接近を認識させる必要のない場合等には、使用者は、前記磁気エネルギの変化率が前記第2制御モードの変化率となるように前記操作手段を操作することでモータ音圧を小さく抑えることができ、これにより静粛性を確保することができる。また、静粛性よりも走行効率を重視する場合には、使用者は、前記磁気エネルギの変化率が前記第1制御モードの変化率となるように前記操作手段を操作することで、モータの効率を高めて効率のよい走行を実現することができる。
特に、本装置によれば、車両の駆動源であるモータを利用し、このモータの音圧を変更することで車両から発せられる音圧を変更している。そのため、車両から発せられる音圧を変更するための装置を別途設ける必要がなく、構造およびコスト面で有利となる。
しかも、本装置では、負荷が最大負荷の10%以上であるときモータが最高回転数の75%となる回転数において90%以上という高いモータ効率を有しているため、車両から発せられる音圧を適切な音圧としつつ、より高いモータ回転数領域すなわちより広い運転領域において、エンジンに比べて駆動音の小さいモータによる車両の駆動を実現することができ、より広い運転領域において静粛性を確保することができる。
また、電流の波形形状を変更するという簡単な構成で、前記モータの音圧ひいては車両から発せられる音および走行効率を容易に変更できる。
また、本発明において、前記モータは、SRモータであるのが好ましい(請求項2)。
SRモータは、永久磁石を有さずロータとステータとの間で生じる磁気吸引力により回転を行うモータであり、磁気吸引力に伴って比較的大きなトルクリップルが生じ同時に比較的大きな音が発生するという特性を有する。そこで、前記モータとして、SRモータを用いれば、永久磁石を有しないことに伴うコスト低下を実現しつつ、前記特性すなわち前記磁気吸引力に伴って発生する比較的大きな音を有効に利用して車両から発せられる音圧を大きくすることができ歩行者等に車両の接近をより確実に認識させることができる。
また、本発明において、前記第1制御モードを実施するよう前記操作手段が操作されている場合において、前記モータ制御手段は、前記エンジンが稼動している場合よりも当該エンジンが停止している場合の方が前記モータの音圧が小さくなるように、前記モータに発生する磁気エネルギの変化率を変更するのが好ましい(請求項)。
この構成によれば、エンジン停止中の場合は、エンジン音がない上にモータの音圧が小さく抑えられるので静粛性をより高めることができるとともに、エンジン稼動中の場合は、モータ音圧の低下に伴うモータ効率が高められるので高い走行効率を確保することができる。
また、本発明において、前記モータ制御手段は、前記モータ電流周波数が500Hz以上3KHz以下となるように当該モータに電流を供給するのが好ましい(請求項)。
このように、モータの回転周波数を人の耳に心地よい低い周波数とすれば、より快適な走行が実現される。
以上のように、本発明によれば、車両から発せられる音圧および走行効率を適切に制御することができる。
本発明の実施形態に係るハイブリッド車の概略構成図である。 図1に示すモータの内部構造を示す図である。 図2に示すモータの特性を示すグラフである。 図2の一部を拡大した図である。 磁気エネルギのパターンを変化させたときの音圧等を比較して示した図である。 第1マップ、第2マップ、第3マップの磁気エネルギを比較して示した図である。 モータの制御手順を示すフローチャートである。
本発明に係るハイブリッド車の制御装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、前記ハイブリッド車の制御装置1が適用されるハイブリッド車100の概略構成図である。
ハイブリッド車100は、車輪10,10と、車軸12と、エンジン20と、トランスミッション30と、モータ40と、インバータ50と、バッテリ60と、コントローラ70と、各種センサ(クランク角センサ81、アクセル開度センサ83、車速センサ84)と、サイレントスイッチ(操作手段)90とを有している。本実施形態では、前記ハイブリッド車の制御装置1は、少なくともエンジン20と、モータ40と、インバータ50と、コントローラ70のうち後述するモータ制御器73と、サイレントスイッチ(操作手段)90とを含む。
ハイブリッド車100は、いわゆるパラレル式のハイブリッド車である。エンジン20とモータ40とは車両の駆動力を出力する駆動源として機能し、このハイブリッド車100では、運転条件に応じて、エンジン20のみによる走行、エンジン20とモータ40の双方による走行、あるいは、モータ40のみによる走行が実現される。
エンジン20は、トランスミッション30を介して車軸12に連結されている。エンジン20は、例えばガソリンエンジンである。
モータ40は、車軸12に連結されているとともに、インバータ50を介してバッテリ60に接続されている。モータ40には、バッテリ60の電力がインバータ50にて交流電力に変換された後供給される。モータ40は、電力供給を受けて電動機として機能して、車軸12を回転させる。本実施形態では、モータ40は、発電機としても機能する。具体的には、モータ40は、減速時に回生動作を行い、インバータ50を介してバッテリ60に電力を供給する。モータ40の詳しい構造については後述する。
サイレントスイッチ90は、モータ40の制御モードを後述するノーマルモード(第1制御モード)とサイレントモード(第2制御モード)とに切り替えるスイッチである。サイレントスイッチ90は、使用者(搭乗者)により操作されるスイッチであり、使用者がこのサイレントスイッチ90をON/OFF操作することより前記モードが切り替えられる。具体的には、サイレントスイッチ90がON操作されるとモータ40の制御モードはサイレントモードになり、サイレントスイッチ90がOFF操作されると、モータ40の制御モードはノーマルモードになる。本実施形態では、サイレントスイッチ90は、ハンドルに設けられている。なお、サイレントスイッチ90の取付け位置は、運転者が運転中に操作可能な位置であればよく、例えば、インストゥルメントパネルに取り付けられていてもよい。
コントローラ70は、メイン制御器71と、エンジン20を制御するエンジン制御器72と、モータ40を制御するモータ制御器(モータ制御手段)73とを含んでいる。コントローラ70は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力を行う入出力(I/O)バスとを有している。なお、各制御器71、72、73は、互いに個別のコントローラとして構成されていてもよく、1つのコントローラとして構成されていてもよい。
コントローラ70には、少なくとも、クランク角センサ81、アクセル開度センサ83、および、車速センサ84によりそれぞれ検出された検出信号と、サイレントスイッチ90の操作信号が入力される。
コントローラ70、特に、メイン制御器71は、前記各センサの検出信号に基づいて現在の運転条件を算出し、算出した運転条件に基づいて、エンジン20およびモータ40の駆動/停止を決定する。本実施形態では、負荷の低い低負荷領域では、エンジン20は停止されてモータ40のみが車輪10,10を駆動する。この低負荷領域よりも負荷の高い高負荷領域では、基本的にはモータ40が車輪10,10を駆動するが、急加速時等モータ40の出力のみでは不十分な場合には、エンジン20が駆動されて、モータ40とエンジン20とが車輪10,10を駆動する。メイン制御器71は、エンジンを駆動させる際には、エンジンの駆動指令信号をエンジン制御器72に出力し、モータを駆動させる際には、モータの駆動指令信号をモータ制御器73に出力する。
エンジン制御器72は、運転条件に基づいてスロットル開度、燃料噴射パルス等を算出し、スロットル、インジェクタ等に信号を出力する。
モータ制御器73は、少なくともモータ40が電動機として駆動される運転領域において、後述するように、サイレントスイッチ90の操作状態に基づいてモータ40の制御モードを決定し、決定した制御モードとエンジンの駆動状態とに基づいて、モータ40に発生させる磁気エネルギの変化率を決定する。モータ制御器73は、決定された磁気エネルギの変化率に基づいて、モータ40に供給すべき電流波形を決定し、この電流に対応する信号をインバータ50に出力する。
次に、モータ40の構造の詳細について説明する。
図2は、モータ40の内面構造を示した概略図である。
本実施形態では、モータ40として、いわゆるSRモータ(スイッチトリラクタンスモータ)が用いられる。モータ40は、ロータ42と、ロータ42を囲むステータ44とを有する。ロータ42は、径方向外側に向かって突出する磁性体からなるロータ突極部42aを複数有する。本実施形態では、ロータ42は、鉄芯からなり、4つのロータ突極部42aを有する。ステータ44は、ロータ42側に向かって突出するステータ突極部44aを複数有する。各ステータ突極部44aは、それぞれ巻線されて励磁コイルを形成している。本実施形態では、ステータ44は、6つのステータ突極部44aを有し、これらステータ突極部44aは、それぞれ、U、V、W相の三相の励磁コイルLu、Lv、Lwを形成している。このモータ40では、ステータ44の各励磁コイルに順番に通電されて、ステータ突極部44aにロータ突極部42aが磁気吸引されることによりロータ42に回転トルクが発生する。本実施形態では、ステータ突極部44aが形成する三相の励磁コイルLu,Lv、Lwに、インバータ50から電流が順次供給される。
このように構成されたモータ40では、ロータ42やステータ44に永久磁石を用いる必要がない。そのため、このモータ40を用いれば、永久磁石を用いるモータを用いる場合に比べてコスト面で有利になる。さらに、永久磁石を用いていないことによりこのモータ40では逆起電力が発生しない。そのため、このモータ40では、より高回転数領域まで高いモータ効率を維持することができる。図3に、本実施形態に係るモータ40のモータ回転数とトルクとの関係、および、永久磁石が用いられたIPMモータ(Interior Permanent Magnet Syncronous モータ)のモータ回転数とトルクの関係を示す。図3において、実線は本実施形態に係るモータ40を、鎖線はIPMモータを、破線は等出力線を示している。この図3に示されるように、IPMモータでは回転数がS_IPMになるとトルクが急激に低下して等出力線を外れる。これに対して、本実施形態に係るモータ40では、回転数S_IPMを越えてもなお等出力線に沿っているとともに、等出力線から外れた領域においてもそのトルクの低下は緩やかであり、より高い回転数領域まで高いトルクを得ることができる。具体的には、本実施形態に係るモータ40では、負荷が最大負荷の10%以上の条件下において回転数増加等に対する構造上補償可能な最大回転数であるモータ最高回転数S_MAXの75%となる回転数S_75において、モータ効率、すなわち、回転数S_75における理論上の最大出力トルクT0に対するモータ40のトルクT_SRの割合が90%以上確保される。
このように、本実施形態では、モータ40の効率をより高い回転数領域まで高く維持でき、これにより、駆動音がエンジン20に比べて小さいモータ40をより高いより広い運転領域にわたって車両の駆動源として使用することができるため、より広い運転領域において静粛性を確保することができる。
ここで、前記のように構成されたモータ40では、ステータ突極部44aとロータ突極部42aとが磁気吸引しており、ロータ突極部42aには半径方向の力が生じる。具体的には、図4に示すように、ロータ突極部42aには、ステータ突極部44aに向かう方向の磁気吸引力Fφが作用し、この吸引力Fφの一部の力Frが半径方向に作用する。そのため、このモータ40では、回転時において、ロータ突極部42aが半径方向に変位することに伴う音が発生する。具体的には、対向するステータ突極部44aに電流が供給されて磁気吸引力によりロータ突極部42aがステータ44側に変位している状態から前記電流供給が停止されると、ロータ突極部42aが元の位置(吸引力が生じていないときの位置)に復帰し、この復帰に伴って音が発生する。
本発明者らは、鋭意研究の結果、前記のように構成されたモータ40に発生する磁気エネルギの変化率、より詳細には、対向するロータ突極部42aとステータ突極部44aとの間に発生する磁気エネルギの変化率を適切に変えることで、モータの出力を維持しつつ、ロータ突極部42aの復帰に伴う音圧すなわちモータ音圧を変更することができるとの知見を得た。
磁気エネルギの変化率とモータ音圧との関係について、以下に説明する。
図5に、モータ40の出力を一定にしつつ、モータ40に発生する磁気エネルギ(Wmag)の変化率を2パターン(AパターンとBパターン)に変化させた際の、ロータ突極部42aに生じる径方向の力Frの変化、モータ音圧SPの変化、およびモータ40に供給した電流(供給電流)Iを示す。この図5は、横軸を回転角度θとし、ロータ突極部42aの周方向の中心軸とステータ突極部44aの周方向の中心軸とが一致した角度を0度として示している。なお、この図5は、1つのロータ突極部42aが1つのステータ突極部44aを通過する前後についてのみ示している。また、この図5には、合わせて、ロータ突極部42aとステータ突極部44aとの間のインダクタンスLの変化も示している。
図5において、破線で示したAパターンでは、磁気エネルギWmagは、回転とともに緩やかに上昇していき、回転角度0度より早い角度θpeakで最大値Wmagpeakとなった後、急激に低下する。一方、実線で示したBパターンでは、磁気エネルギWmagは、Aパターンよりも早いタイミングで立ち上がり、急激に上昇した後、Aパターンの磁気エネルギの最大値Wmagpeakよりも低い値で略一定に推移し、その後、Aパターンの磁気エネルギの最大値Wmagpeakからの低下速度よりも遅い速度で回転角度0度近傍に至るまで緩やかに低下していく。なお、ここでは、モータ40に供給する電流Iの波形を変更することで磁気エネルギWmagのパターンを変化させている。具体的には、磁気エネルギWmagと電流IとインダクタンスLとのWmag=1/2×L×I^2なる関係に基づいて、各パターンの磁気エネルギWmagを実現する電流Iを決定、供給している。すなわち、図5に示すように、モータ40に供給する電流波形を略矩形とし、回転角度0度近傍までの所定期間、略一定の電流を供給することでAパターンの磁気エネルギWmagを実現し、Aパターンの電流供給開始よりも早いタイミングから回転角度0度近傍まで電流を供給し、その電流波形を、Aパターンの電流値よりも高い値まで急激に立ち上がった後緩やかに低下する形状とすることで、Bパターンの磁気エネルギWmagを実現している。
図5に示されるように、Aパターンのモータ音圧SPとBパターンのモータ音圧SPとは互いに異なっており、Aパターンの方が高い音圧を発生している。これは、図5に示されるように、ロータ突極部42aに生じる径方向の力Frが磁気エネルギWmagと同様に変化しており、Aパターンの方が、モータ40への電流供給が停止される際における径方向の力Frの値が大きく、かつ、この力Frの低下速度が速く、これにより、Aパターンの方が、ロータ突極部42aがステータ44側により多く変位している状態から急激に元の位置に復帰するためと考えられる。
また、AパターンとBパターンとでは、前記のようにモータ出力は同一に維持されているが、モータ効率は互いに異なっている。具体的には、Aパターンの方が、電流供給が停止されるタイミングにおける磁気エネルギWmagが高くなっており、Aパターンの方がBパターンよりも高いトルクを得ることができる。
ここで、本実施形態では、モータ音圧を小さく抑える際に、モータ40への電流供給が停止される際の磁気エネルギの立ち下がりがより緩やかになり、モータ音圧がより低く抑えられるように、図4に示すように、ロータ突極部42aの周方向両端に面取りが行われており、この周方向両端には、周方向外側に向かうに従って径方向内側に傾斜する傾斜部42bが形成されている。この形状に伴い、本実施形態のモータ40では、図5に示すように、回転角度0度付近と、ロータ突極部42aとステータ突極部44aとの間での電磁誘導の発生が開始する角度、および、この電磁誘導が終了する角度付近とにおいて、インダクタンスLの変化率が小さくなっている。
また、本実施形態では、モータ40の電流周波数が500Hz以上3KHz以下の比較的低く人の耳に心地よい周波数となるように設定されている。そのため、モータ音圧が高い場合であっても、快適な走行が確保される。
本発明者らは、前記知見に基づき、以下に説明するように、モータ40に発生する磁気エネルギの変化率を運転条件等に応じて適切に制御することで、運転条件等に応じた適切なモータ音圧およびモータ効率を実現した。
次に、前記モータ制御器73によるモータ制御の詳細について説明する。
モータ制御器73には、予め設定された車速とアクセル開度とに対するモータ出力のマップが記憶されている。また、モータ制御器73には、各モータ出力に対して、音圧およびモータ効率が互いに異なるように設定された3つの磁気エネルギの変化率のマップ(第1マップ、第2マップ、第3マップ)が記憶されている。
第1マップには、前記Aパターンの磁気エネルギの変化率、すなわち、回転角度とともに緩やかに上昇した後回転角度0度近傍のタイミングで急激に立ち下がる形状を有し、モータ音圧およびモータ効率が第1、第2、第3のマップのうち最大となる(モータ出力が同一となる条件下で最大となる)磁気エネルギの波形が格納されている。
第3マップには、前記Bパターンの磁気エネルギの変化率、すなわち、Aパターンよりも早いタイミングで急激に上昇した後、Aパターンの最大値よりも低い値で略一定に推移し、その後、Aパターンの立下りよりも緩やかに立ち下がる形状を有し、モータ音圧およびモータ効率が第1、第2、第3のマップのうち最小となる磁気エネルギの波形が格納されている。
第2マップには、モータ音圧およびモータ効率が、モータ出力が同一となる条件での第1マップのこれらの値と、同条件での第2マップのこれらの値との間になるように設定された磁気エネルギの変化率が格納されている。図6を用いて具体的に説明する。図6は、第1マップ、第2マップ、第3マップの磁気エネルギWmagおよびこれらの磁気エネルギWmagを実現する供給電流Iの波形を比較して示した図である。この図6において、破線が第1マップの値(Aパターン)、実線が第2マップの値、鎖線が第3マップの値(Bパターン)である。この図6に示すように、第2マップの磁気エネルギWmag_2は、第3マップの磁気エネルギWmag_3とほぼ同じタイミングで立ち上がるとともにこの第3マップの磁気エネルギWmag_3と似た変化をする。ただし、第2マップの磁気エネルギWmag_2は、第3マップの磁気エネルギWmag_3よりも緩やかに立ち上がり、第1マップの磁気エネルギWmag_1の最大値よりも低く且つ第3マップの磁気エネルギWmag_3の最大値よりも高い最大値となった後、略一定に推移し、その後、第1マップの磁気エネルギWmag_1の立ち下がりよりも緩やか且つ第3マップの磁気エネルギWmag_3よりも急に立ち下がるように設定されている。
前記第1マップおよび第2マップは、モータ40の制御モードがノーマルモードの場合に使用される。詳細には、第1マップは、モータ40の制御モードがノーマルモードで、かつ、エンジン20が稼動している場合に使用され、第2マップは、モータ40の制御モードがノーマルモードで、かつ、エンジン20が停止している場合に使用される。一方、第3マップは、モータ40の制御モードがサイレントモードの場合に使用される。
図7に示したフローチャートを用いて、モータ制御の手順を説明する。
まず、モータ制御器73は、ステップS1にて、車速とアクセル開度とに基づき前記モータ出力のマップから要求されるモータ出力すなわち要求モータ出力を算出する。
次に、ステップS2にて、モータ制御器73は、前記サイレントスイッチ90の操作状態がONかOFFかを判定する。ステップS2での判定がYESの場合、すなわち、サイレントスイッチ90がON操作されている場合は、ステップS3に進み、モータ40の制御モードをサイレントモードとする。具体的には、ステップS3において、モータ制御器73は、モータ音圧が最小となるように設定された第3マップから、ステップS1で算出した要求モータ出力に応じた磁気エネルギの変化率を抽出する。その後、モータ制御器73は、ステップS7に進む。
一方、ステップS2の判定がNOの場合、すなわち、サイレントスイッチがOFF操作されている場合は、ステップS4に進み、モータ40の制御モードをノーマルモードとする。
モータ制御器73は、ステップS4において、さらに、エンジン20が稼動中かどうかを判定する。具体的には、モータ制御器73は、前記メイン制御器71からエンジン20に出力されているエンジン稼動指令信号に基づき、この信号が出力されている場合はエンジンが稼動中であると判定する。なお、この判定は、クランク角センサ81に基づいて算出されるエンジン回転数が所定回転数以上かどうかにより行っても良い。
ステップS4での判定がYESの場合、すなわち、エンジン20が稼動中の場合は、モータ制御器73は、ステップS5に進み、モータ音圧およびモータ効率が最大となるようように設定された第1マップから、ステップS1で算出した要求モータ出力に応じた磁気エネルギの変化率を抽出する。その後、モータ制御器73は、ステップS7に進む。
一方、ステップS4での判定がNOの場合、すなわち、エンジン20が停止中の場合は、モータ制御器73は、ステップS6に進み、モータ音圧およびモータ効率が第1マップよりも小さくかつ第3マップよりも大きくなるように設定された第2マップから、ステップS1で算出した要求モータ出力に応じた磁気エネルギの変化率を抽出する。その後、モータ制御器73は、ステップS7に進む。
ステップS7では、モータ制御器73は、ステップS3、S5、S6において抽出された磁気エネルギの変化率に基づいて、モータ40への通電電流を算出する。具体的には、磁気エネルギWmag、インダクタンスLに対して、Wmag=1/2×L×I^2の式に基づいて通電電流値Iを算出する。そして、モータ制御器73は、算出した電流値Iに対応する信号をインバータ50へ出力する。
このようにして、本実施形態にかかるハイブリッド車100では、運転者がサイレントスイッチ90をON操作した場合は、モータ音圧ひいては車両から発せられる音圧は最小音圧とされる。一方、運転者がサイレントスイッチ90をOFF操作している場合であって、エンジン20が稼動している場合は、モータ音圧は最大音圧とされモータ効率は最大効率とされる。また、運転者がサイレントスイッチ90をOFF操作している場合であって、エンジン20が停止している場合は、モータ音圧は、最大音圧と最小音圧の間の中間音圧とされモータ効率は最小効率よりも高い効率とされる。ここで、これらのモータ音圧およびモータ効率の変更は、モータ出力ひいては車輪の駆動力を同一に維持したまま実施される。
このモータ制御が実施されることにより、本実施形態に係るハイブリッド車100では、運転者が静粛性を求める場合には、運転者は、サイレントスイッチ90をON操作するだけで、モータ音圧ひいては車両から発せられる音圧を低く抑えて静粛性を確保することができる。
一方、歩行者等に車両の接近を認識させたい場合には、運転者はサイレントスイッチ90をOFF操作するだけで、車速等を維持したままモータ音圧を高くして車両から発せられる音圧を大きくすることができ、歩行者等に車両の接近をより確実に認識させることができる。また、運転者が効率のよい走行を求める場合にも、運転者は、サイレントスイッチ90をOFF操作するだけで、モータ効率を高くすることができ効率のよい走行を実現することができる。
ここで、エンジン20が停止している場合にはモータ音の静粛性への影響は大きいが、エンジン20が稼動している場合にはエンジン20の駆動音によりモータ音は目立たなくなりモータ音の静粛性への影響は小さくなる。これに対して、本実施形態では、前記のように、サイレントスイッチ90がOFF操作されている場合においてエンジン20が停止している場合にはモータ音圧を最大音圧よりも小さい音圧とする一方、エンジンが稼動している場合にはモータ音圧を最大とし、モータ効率を最大効率としている。そのため、静粛性を確保しつつ効率のよい走行を実現することができる。
以上のように、ハイブリッド車100に本実施形態に係るハイブリッド車の制御装置1を用いれば、モータ出力ひいては車速等の車両の走行状態を変更することなく、モータ音圧ひいては車両から発せられる音圧およびモータ効率ひいては走行効率を、運転状況および運転者の嗜好に合わせて容易に適正な音圧および効率にすることができる。特にこの装置では、車両の駆動源として用いるモータ40を利用して、車両から発せられる音圧が変更されるため、この音圧を変更するための装置を別途設ける必要がなく、構成を簡素化することができるとともにコスト面で有利となる。
ここで、前記実施形態では、サイレントスイッチ90がOFF操作された場合において、エンジン20の稼動状態に応じてモータ音圧およびモータ効率を変更する場合について説明したが、サイレントスイッチ90がOFF操作された場合においてエンジンの稼動状態によらずモータ音圧を最大音圧およびモータ効率を最大効率とする制御を実施してもよい。ただし、前記のように、エンジン20の稼動状態に応じてモータ音圧とモータ効率とを変更すれば、静粛性を確保しつつ効率のよい走行を実現することができる。
また、前記実施形態では、モータ40に供給する電流波形を変更することでモータ40に発生する磁気エネルギの変化率を変更する場合について説明したが、モータ40のインダクタンスを変化させてもよい。ただし、供給電流の波形はインバータ50により容易に変更することができるため、この電流波形を変更する構成をとれば、容易に磁気エネルギの変化率を変更することができる。
また、前記実施形態では、モータ40としてSRモータを用いた場合について説明したが、磁気エネルギの変化率を変更することでモータ音圧を変更可能なモータであれば、これに限らない。ただし、SRモータは、前述の通り、永久磁石を用いる必要がないため、コスト面で有利になるとともに、逆起電力の発生を回避してより広い運転領域においてモータを駆動源としてより広い運転領域において静粛性を確保することができる。また、SRモータの有する磁気吸引力の発生に伴って比較的大きな音が発生するという特性を利用して、車両から発せられる音圧を大きくして歩行者等に車両の接近をより確実に認識させることができる。
1 ハイブリッド車の制御装置
20 エンジン
40 モータ
73 モータ制御器(モータ制御手段)
90 サイレントスイッチ(操作手段)

Claims (4)

  1. ハイブリッド車の制御装置であって、
    エンジンと、
    ロータとステータとを備え前記ハイブリッド車の駆動力を出力するモータと、
    前記モータを制御するモータ制御手段と、
    使用者が操作可能な操作手段とを有し、
    前記モータは、負荷が最大負荷の10%以上であるとき最高回転数の75%となる回転数において90%以上の効率を有し、
    前記モータ制御手段は、前記モータの出力が一定に維持されつつ前記モータの音圧および前記モータの効率が変化するように前記モータに発生する磁気エネルギの変化率を変更可能であって、前記操作手段の操作状態に応じて、前記モータの制御モードを、前記モータに発生する磁気エネルギの変化率を所定の変化率とする第1制御モードと、前記モータに発生する磁気エネルギの変化率を前記第1制御モードよりも前記モータの音圧が小さくなる変化率とする第2制御モードとに切り替えるとともに、
    前記第2制御モードでは、前記モータに供給する電流である供給電流の最大値を前記第1制御モードよりも大きくする一方前記ロータが前記ステータを通過するときの前記供給電流の低下速度を前記第1制御モードよりも小さくすることで、前記モータの出力を一定に維持しつつ前記第1制御モードよりも前記モータの音圧が小さくなるように前記磁気エネルギの変化率を変更することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
  2. 請求項1に記載のハイブリッド車の制御装置において、
    前記モータは、SRモータであることを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
  3. 請求項1または2に記載のハイブリッド車の制御装置において、
    前記第1制御モードを実施するよう前記操作手段が操作されている場合において、前記モータ制御手段は、前記エンジンが稼動している場合よりも当該エンジンが停止している場合の方が前記モータの音圧が小さくなるように、前記モータに発生する磁気エネルギの変化率を変更することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のハイブリッド車の制御装置において、
    前記モータ制御手段は、前記モータ電流周波数が500Hz以上3KHz以下となるように当該モータに電流を供給することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
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