JP6196813B2 - シャフト用構造体、雄型部材、及び、雌型部材 - Google Patents

シャフト用構造体、雄型部材、及び、雌型部材 Download PDF

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Description

本発明は、車両など各種産業機械で用いられるシャフトに組み付けられるシャフト用構造体、該シャフト用構造体を構成する雄型部材及び雌型部材に関する。
従来、例えば車両のステアリングシャフトに組み込まれる車両ステアリング用伸縮軸として、雄スプライン軸と雌スプライン軸とを備えた伸縮軸が公知となっている(特許文献1の図2参照)。この伸縮軸では、雄スプライン軸の外周面、及び、雌スプライン軸の内周面にスプラインが形成されている。さらに、雄スプライン軸の外周面、及び、雌スプライン軸の内周面の何れか一方には、厚さが0.25[mm]程度の合成樹脂(ナイロン等)からなる樹脂被膜が形成されている。
ところが、上記伸縮軸は、雄スプライン軸の外周面、又は、雌スプライン軸の内周面に形成されたスプラインで寸法精度を出すものであるため、雄スプライン軸と雌スプライン軸との間からは、歯打ち音と呼ばれる不快な異音が発生するという問題があった。
一方、雄スプライン軸と雌スプライン軸との隙間の一部に、ニトリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等のゴム材を設けたトルク伝達用継手が公知となっている(特許文献2の図2参照)。この継手では、ゴム材によって雄スプライン軸と雌スプライン軸との間のガタが吸収され、雄スプライン軸と雌スプライン軸との間から発生するガタ音(歯打ち音)の抑制が図られている。
特開2008−120250号公報 特開2009−108892号公報
しかしながら、特許文献2に記載されたトルク伝達用継手では、上記のガタ音を抑制することができても、ゴム材を設けることによって、雄スプライン軸と雌スプライン軸とにおける軸方向の摺動抵抗が増加し、摺動性が悪化するという問題があった。
そこで、本発明は、歯打ち音と呼ばれる不快な異音を抑制しつつ、軸方向の摺動抵抗の低減を可能としたシャフト用構造体、雄型部材、及び、雌型部材を提供することを目的とする。
(1)本発明のシャフト用構造体は、動力を伝達可能なシャフトに組み付けられ、雄型部材及び雌型部材を軸方向に摺動可能に嵌合して構成されるシャフト用構造体であって、前記雄型部材が、複数の雄歯を有する外周部を備え、前記雌型部材が、複数の雌歯を有するとともに前記雄型部材の外周部を挿入可能な内周部を備え、前記雄型部材の前記外周部と、前記雌型部材の前記内周部との間には、ゴムを含浸させた繊維が介在していることを特徴とする。
上記(1)の構成によれば、雄型部材の外周部と雌型部材の内周部との間に、ゴムを含浸させた繊維を設けることで、雄型部材と雌型部材との間から生じる歯打ち音を抑制しつつ、雄型部材と雌型部材とにおける軸方向の摺動抵抗を低減することができる。また、摺動性の向上によって、雄型部材の外周部と雌型部材の内周部との間に潤滑油を供給する必要がなくなり、潤滑油補給等の手間を省くことができる。
(2)本発明の雄型部材は、動力を伝達可能なシャフトに組み付けられ、雌型部材と軸方向に摺動可能に嵌合して構成される雄型部材であって、前記雄型部材が、複数の雄歯を有するとともに前記雌型部材の内周部に挿入可能な外周部を備え、前記雄型部材の外周部には、ゴムを含浸させた繊維が設けられていることを特徴とする。
上記(2)の構成によれば、雄型部材の外周部に、ゴムを含浸させた繊維を設けることで、雄型部材と雌型部材との間から生じる歯打ち音を抑制しつつ、雄型部材と雌型部材とにおける軸方向の摺動抵抗を低減することができる。また、摺動性の向上によって、雄型部材の外周部と雌型部材の内周部との間に潤滑油を供給する必要がなくなり、潤滑油補給等の手間を省くことができる。
(3)本発明の雌型部材は、動力を伝達可能なシャフトに組み付けられ、雄型部材と軸方向に摺動可能に嵌合して構成される雌型部材であって、前記雌型部材が、複数の雌歯を有するとともに前記雄型部材の外周部を挿入可能な内周部を備え、前記雌型部材の前記内周部には、ゴムを含浸させた繊維が設けられていることを特徴とする。
上記(3)の構成によれば、雌型部材の内周部に、ゴムを含浸させた繊維を設けることで、雄型部材と雌型部材との間から生じる歯打ち音を抑制しつつ、雄型部材と雌型部材とにおける軸方向の摺動抵抗を低減することができる。また、摺動性の向上によって、雄型部材の外周部と雌型部材の内周部との間に潤滑油を供給する必要がなくなり、潤滑油補給等の手間を省くことができる。
(4)上記(3)の雌型部材においては、前記雄型部材を一方側から軸方向に挿入可能な第1の穴部と、棒状の部材を他方側から軸方向に圧入して固定可能な第2の穴部と、
を有しており、前記第1の穴部内には、前記雄型部材が挿入された際に、前記雄型部材の挿入方向の移動を所定位置までで制止する第1の移動制止部が設けられているものでもよい。
(5)別の観点として、上記(3)の雌型部材においては、一方側から前記雄型部材を軸方向に挿入可能な第3の穴部と、他方側から別の雄型部材を軸方向に摺動可能に嵌合可能な第4の穴部と、を有しており、前記第3の穴部内には、前記雄型部材が挿入された際に、前記雄型部材の挿入方向の移動を所定位置までで制止する第2の移動制止部が設けられ、前記第4の穴部内には、前記別の雄型部材が挿入された際に、前記別の雄型部材の挿入方向の移動を所定位置までで制止する第3の移動制止部が設けられているものでもよい。
上記(4)又は(5)の構成によれば、雌型部材は、雄型部材と棒状部材とを連結(カップリング)する部材として用いることができる。特に、移動制止部によって、雌型部材自体を、該雄型部材と該棒状部材との間において位置決めすることができる。
本発明の一実施形態に係るシャフト用構造体を適用した電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図の一例である。 本実施形態に係るシャフト用構造体の斜視図の一例である。 本実施形態に係るシャフト用構造体の要部の分解斜視図であって、(a)が雄型部材の一例、(b)が雌型部材の分解斜視図の一例、(c)が雄型部材と雌型部材との間に介在して設けられる繊維の一例である。 本実施形態の変形例を示す斜視図であって、(a)が雄型部材の外周部に接着剤を用いて繊維が貼り付けられた一例、(b)が雌型部材の内周部に接着剤を用いて繊維が貼り付けられた一例である。 本実施形態に係る雌型部材の変形例1を示す図であって、(a)が側面図、(b)が(a)のA−A矢視図、(c)が(a)のB−B矢視図である。 本実施形態に係る雌型部材の変形例2を示す図であって、(a)が側面図、(b)が(a)のC−C矢視図、(c)が(a)のD−D矢視図である。
以下、図1〜図4を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るシャフト用構造体(スプライン)、このシャフト用構造体を構成する雄型部材(雄スプライン軸)及び雌型部材(雌スプライン軸)について説明する。
(電動パワーステアリング装置の全体構成)
ここでは、電動パワーステアリング装置の動作説明を兼ねて、各部の構成を説明する。図1に示すように、電動パワーステアリング装置(EPS)1は、操舵部材としてのステアリングホイール2に連結しているステアリングシャフト(シャフト)3と、ステアリングシャフト3の先端部に設けられたピニオンギヤ4及びこのピニオンギヤ4に噛み合うラックギヤ5を有して車両の左右方向に延びる操舵軸としてのラック軸6とを有している。
ラック軸6の両端部にはそれぞれタイロッド7が結合されており、各タイロッド7は対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する車輪8に連結されている。ステアリングホイール2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオンギヤ4およびラックギヤ5によって、車両の左右方向に沿ってのラック軸6の直線運動に変換される。これにより、車輪8の転舵が達成される。
ステアリングシャフト3は、ステアリングホイール2に連なる入力軸9と、ピニオンギヤ4に連なる出力軸10とに分割されており、これら入、出力軸9,10はトーションバー11を介して同一の軸線上で互いに連結されている。また、トーションバー11を介する入、出力軸9,10間の相対回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ12が設けられており、このトルクセンサ12のトルク検出結果は制御部13に与えられる。制御部13では、トルク検出結果及び車速検出結果等に基づいて、ドライバ14を介して操舵補助用の電動モータ15への印加電圧を制御する。そして、電動モータ15の回転軸(図示せず)の回転が、減速機構17を介して減速される。減速機構17の出力回転は変換機構18を介してラック軸6の軸方向移動に変換され、操舵が補助される。本電動パワーステアリング装置1はいわゆるラックアシストタイプである。
(シャフト用構造体の構成)
本実施形態に係るシャフト用構造体は、例えば、上記のステアリングシャフト3に適用されている。なお、以下において、ステアリングシャフト3を単にシャフト3と略記することがある。
本発明に係るシャフト用構造体20は、動力を伝達可能なシャフト3に組み付けられ、該動力を伝達可能な雄型部材及び雌型部材を軸方向に摺動可能に嵌合して構成されるものであって、図2に示すように、金属製の雄型部材21、金属製の雌型部材22、及び、ゴム等で含浸処理された繊維23を有する。
雄型部材21は、図3(a)に示すように、略円柱状の基軸部21aと、該基軸部21aの一端部から凸状に延びる凸状部21bとを有する。この凸状部21bの外周部21cには、例えば8つの雄歯21dが、凸状部21bの周方向に所定の隙間を隔てて形成されている。
雌型部材22は、図3(b)に示すように、略円筒状に形成されており、雄型部材21を挿入可能な内周部22aを有する。すなわち、雌型部材22の内周部22aには、雄型部材21の凸状部21bに形成されている雄歯と同数(本実施形態では8つ)の雌歯22bが、雌型部材22の周方向に所定の隙間を隔てて形成されている。
繊維23は、アラミド繊維、ナイロン、ウレタン、木綿、絹、麻、アセテート、レーヨン、フッ素を含む繊維、及び、ポリエステル等によって形成可能であって、ゴムで含浸処理されている。繊維の形状は、例えば短繊維形状や長繊維形状であってもよく、またシート状の布であってもよい。
ムにより繊維を含浸処理することで、繊維の間にゴム材が入り込み、繊維同士を接着させてまとめあげ、繊維23のように部材(シート体)として機能させることが可能となる。また、繊維にゴムが含浸することにより、繊維同士の擦れによる摩耗が低減されると共に、さらには繊維23と雄型部材21、又は繊維23と雌型部材22との間で発生する繊維23表面の摩耗性のアップを図ることが可能となる。
なお、ゴムは、繊維を含浸処理できるものであればよい。このゴムとしては、例えば、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレン?プロピレンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロヒドリンゴム、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム等を単独で、又はこれらのゴムを各種変性処理したものを使用することができる。これらのゴムは、単独で使用することができるほか、複数種のゴムをブレンドして用いることもできる。また、ゴムには、加硫剤のほか、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、及び、着色剤等の従来からゴムの配合剤として使用していたものを適量配合することができる。これら以外に、繊維23の潤滑性を向上させるために、グラファイト、シリコンオイル、フッ素パウダー、又は二硫化モリブデン等の固体潤滑剤がゴムに含まれていてもよい。さらに、上記ゴムとともに、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、PET樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂、又は熱硬化樹脂を用いることもできる。
上記のゴムによる繊維への含浸処理は、ゴムを溶剤等で溶解し液状とした後、所定の繊維(短繊維、長繊維)をディッピング処理する方法が好適に使用される。実際の使用に際しては、繊維をシート状に形成した布を使用することができる。この布のゴムの含浸処理の方法も上記と同様な方法で行われる。
布を構成するものとしては、繊維を不規則にからめた不織布や、規則的に成形した織布や編布(ニット)等が挙げられる。これらの布は、繊維(短繊維や長繊維)のみから構成されたものと比べ、シート状であることから、ゴム等による含浸処理を行い易く(ハンドリングが容易)、さらに後述するシャフト用構造体の表面にも接着し易いといった特徴を有する。なお、上記織布の織り方については、平織、朱子織、及び綾織等が用いられる。
また、上記の布には、ある程度の伸縮性があるものがよい。布を雌歯22b、若しくは雄歯21dの形状に沿った形へ成型する場合、又は雄型部材21の外周部21c表面や雌型部材22の内周部22aの表面に接着する場合、いずれも表面が凹凸形状になっていることから、布に伸縮性があることで、布表面が凹凸形状に追従して馴染みやすく、出来上がった繊維23の表面にシワ等が発生しにくく、表面が均一に仕上がるといった利点がある。その結果、雄型部材21と雌型部材22との勘合を滑らかなものとすることができる。さらに、雄型部材21又は雌型部材22と繊維23との間で発生する摺動抵抗を低減することができる。特に、布の伸縮性を示す方向は、少なくとも円筒状の繊維23の周方向と一致するように繊維23を製造することで、上記のシワ等の発生をより一層抑えることが可能となる。
含浸処理された繊維23は、図2に示すように、雄型部材21の外周部21cと、雌型部材22の内周部22a(図3b参照)との間に介在して設けられている。含浸処理された繊維23は、図3(c)に示すように、雄型部材21の外周部21c(図3(a)参照)と略同形状の内周面23aと、雌型部材22の内周部22a(図3(b)参照)と略同形状の外周面23bとを有している。本実施形態では、図4(a)に示すように、雄型部材21の外周部21cに、含浸処理された繊維23が接着されている。ここで使用される接着剤は、アクリル樹脂系接着剤、オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレンー酢酸ビニル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコン系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ホットメルト接着剤、フェノール樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、及びレゾルシノール系接着剤等があり、接着剤を加熱融解した状態にして流動性を付与した上で塗布し冷却することにより硬化・接着する方法や、接着剤を加熱することで硬化・接着させる方法等がある。
本実施形態において、含浸処理された繊維23は、雄型部材21の外周部21cの全周にわたって設けられており、例えば図2に示すように、繊維23が接着された雄型部材21は、雌型部材22の端部から軸方向に突き出た先端部分を有している。雄型部材21の先端部分には、シャフト用構造体20の使用状況に応じて適宜加工が施される。
ここで、シャフト用構造体20の製法の一例としては、金属材料(図示せず)から図3(a),(b)にそれぞれ示された形状を有する雄型部材21及び雌型部材22を切り出す工程、繊維23をゴム等で含浸処理する工程、雄型部材21の外周部21cと雌型部材22の内周部22aとの間に含浸処理された繊維23を介在して設ける工程、を順次行うことによる製法を挙げることができる。
また、繊維23の製法としては、以下のような製法を適宜選択することができる。例えば、図3(c)の繊維23を成型する場合、まず内周面23a及び外周面23bをそれぞれ成型することができる内型及び外型を用意する。当然のことながら、内型の外周面及び外型の内周面には、それぞれ、内周面23a及び外周面23bに沿った凹凸形状を備えている。そして、この2つの型の間にゴムで含浸処理された繊維(短繊維や長繊維、又は布(シート状))を充填したのち、内型や外型から充填された繊維に圧力及び温度を与え、その後、型から繊維を取り外し、内周面23a及び外周面23bが成型された繊維23を得ることができる。
また、繊維23の製法としては、内型と外型との間に充填する布を、内型の外形に沿う様な円筒形に仕上げ、その布を内型の外形に沿わせた状態で内型に被せ、その後、上記と同様に圧力及び温度を与え、繊維23を成型する方法もある。この場合、布が伸縮性を保有することで、一層、内型及び外型の凹凸形状に沿って繊維23の成型が可能となる。その結果、繊維23の内周面23aや外周面23bにシワ等が発生することなく、表面均一な状態の成型品を製造することができる。このような表面均一な繊維23がシャフト用構造体20の雄型部材21と雌型部材22との間に介在することで、軸方向の摺動抵抗を一層低減することが可能となる。尚、布の伸縮性を示す方向が、少なくとも円筒状の繊維23の周方向と一致するように布を円筒形に仕上げることで、より一層上記のシワ等の発生を抑えることができる。
また、図4(a)に示すように、雄型部材21の外周部21cに、含浸処理された繊維23が接着されている場合の製造方法は、上記製造方法の内型をそのまま雄型部材21に置き換え、さらに雄型部材21の金属表面に接着剤を塗ったあと、この雄型部材21と外型との間にゴムで含浸処理された繊維(短繊維や長繊維、または布(シート状))を充填したのち、外型から圧力及び温度を与え、その後、外型を取り外し、雄型部材21の外周部21cに繊維23が接着された図4(a)の部材を得る。また、上記製造方法と同様に布を雄型部材21の外形に沿う様な円筒形に仕上げ、その布を雄型部材21の外径に沿わせた状態で被せてから、圧力を与え、図4(a)の部材を得てもよい。この場合、布が伸縮性を有することで、雄型部材21の外周部21cに接着された繊維23の表面にシワ等が発生しづらく、表面均一な状態の雄型部材21を製造することができることから、シャフト用構造体20の雄型部材21と雌型部材22との軸方向の摺動抵抗を一層低減することが可能となる。尚、布の伸縮性を示す方向が、少なくとも雄型部材21の周方向と一致するように布を円筒形に仕上げることで、より一層上記のシワ等の発生が抑えられることは上述した通りである。
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。ここでは、JIS(日本工業規格)に規定されている材料試験によって本実施形態に係る繊維23(図2参照)の緩衝部材としての有用性を検討した結果について説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。より具体的に、本発明者は、ニトリルゴムからなるゴム材料単体(硬度:70 JIS K 6253 タイプA デュロメータ)と、ナイロン66をニトリルゴムで含浸処理した繊維材料との比較により、ピコ摩耗試験(JIS.K 6264−2)、及び、ヘイドン式の摩擦係数測定試験(JIS.K 7125)を行った。
下記の表1,2は、各試験結果を示している。表1は、上記ピコ摩耗試験の結果である。表2は、上記摩擦係数測定試験の結果である。ここで、表1,2中の「ゴム含浸」とは、本実施形態に係る繊維23を構成する材料であって、ナイロン66をニトリルゴムで含浸処理した繊維材料を意味している。「ゴム単独」とは、本実施形態に係る繊維23を構成する材料の比較対象であって、ニトリルゴムからなるゴム材料単体を意味している。

表1を見ると、ニトリルゴムからなるゴム材料単体の摩耗量[mg]は、9.9[mg]であったのに対して、ナイロン66をニトリルゴムで含浸処理した繊維材料の摩耗量[mg]は、2.2[mg]であった。すなわち、ナイロン66をニトリルゴムで含浸処理した繊維では、比較対象であるゴム材料単体と比べて、摩耗量[mg]を約1/5に低減できることが分かった。
表2を見ると、ニトリルゴムからなるゴム材料単体の摩擦係数は、1.48であったのに対して、ナイロン66をニトリルゴムで含浸処理した繊維の摩擦係数は、0.54であった。すなわち、ナイロン66をニトリルゴムで含浸処理した繊維では、比較対象であるゴム材料単体と比べて、摩擦係数を約1/3に低減できることが分かった。
上記の結果から、ナイロン66をニトリルゴムで含浸処理した繊維が緩衝部材として優れていることが分かった。より具体的には、ゴム材料単体を雄型部材21の外周部21cに形成すると、雄型部材21と雌型部材22との間から発生する歯打ち音を抑制できても、摺動抵抗が大きくなる(摩擦係数が大きくなる)ことが分かった。また、ナイロン66をニトリルゴムで含浸処理した繊維材料を用いた繊維23を雄型部材21の外周部21cに形成すると、摺動抵抗を下げることができる(ゴム材料単体を雄型部材21の外周部21cに形成した場合よりも摩擦係数が小さくなる)とともに、耐久性も向上する(ゴム材料単体を雄型部材21の外周部21cに形成した場合よりも摩耗量を少なくできる)ことが分かった。
(本実施形態に係るシャフト用構造体の特徴)
上記構成によれば、雄型部材21の外周部21cと雌型部材22の内周部22aとの間に、ゴム等を含浸させた繊維23を設けることで、雄型部材21の外周部21cと雌型部材22の内周部22aとの間から発生する歯打ち音といった不快音の抑制、及び、雄型部材と雌型部材とにおける軸方向の摺動抵抗の低減といった、互いにトレードオフの関係にある両課題を同時に解決することができる。また、雄型部材と雌型部材とにおける軸方向の摺動性が向上することによって、雄型部材21の外周部21cと雌型部材22の内周部22aとの間に潤滑油を供給する必要がなくなり、潤滑油補給等の手間を省くことができる。さらに、繊維23をゴムで含浸処理したことで、繊維23と雄型部材21の外周部21cとの間、または繊維23と雌型部材22の内周部22aとの間で発生する繊維23表面の摩耗性を向上させることができる。
なお、雄型部材21の外周部21cと雌型部材22の内周部22aとの間に、ゴムを含浸させた繊維23を設ける手法としては、ゴムを含浸させた繊維23が雄型部材21の外周部21cに接着されるようにした図4(a)に示すものに限られず、図4(b)に示すように、ゴムを含浸させた繊維23が雌型部材22の内周部22aに接着されるようにしたものであってもよい。すなわち、ゴムを含浸させた繊維23と金属とが摺動するように構成されていれば、上記手法のうちいずれの手法であっても、上述した作用効果を奏することができる。ここで、ゴムを含浸させた繊維23を、雄型部材21の外周部21c又は雌型部材22の内周部22aに接着させる手法としては、例えば、ゴムを含浸させた繊維23の裏面(雄型部材21の外周部21c又は雌型部材22の内周部22aに接着される側の面)に繊維23と一体化されたゴム層を設け、このゴム層と金属面(雄型部材21の外周部21cの面又は雌型部材22の内周部22aの面)とを接着剤によって接着させるようにしてもよい。これにより、金属面と繊維23との接着強度を向上することができる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。例えば、下記変形例1、2が挙げられる。
<変形例1>
上記実施形態における雌型部材22の代わりに、図5((a)は側面図、(b)は(a)のA−A矢視図、(c)は(a)のB−B矢視図)に示した雌型部材32を用いてもよい。以下、雌型部材32について具体的に説明する。ここで、図5(a)においては、説明の便宜上、符号32a1、32a2の部分のみ一点鎖線で透過図として示す。
雌型部材32は、第1の穴部32aと、第2の穴部32bと、移動制止部32c(第1の移動制止部)とを有している。第1の穴部32aにおいては、以下のように形成されている。すなわち、第1の穴部32aに上記実施形態における雄型部材21と同様の雄型部材が挿入された場合、第1の穴部32aにおける内周部(例えば、符号32a1、32a2の部分など)に沿って該雄型部材が摺動しつつ嵌合するとともに、移動制止部32cによって移動が所定位置(ここでは、第1の穴部32aの底部)までで制止されるように、第1の穴部32aは形成されている。なお、該雄型部材と第1の穴部32aとの間に、上記実施形態における繊維23と同様の繊維を設ける。第2の穴部32bは、所定の径を有した棒状部材(図示せず)を圧入して固定することが可能となるように、円筒状に形成されている。
上記構成により、雌型部材32は、雄型部材21と同様の雄型部材と棒状部材とを連結(カップリング)する部材として用いることができる。特に、移動制止部32cによって、雌型部材32自体を、該雄型部材と該棒状部材との間において位置決めすることができる。
<変形例2>
上記実施形態における雌型部材22の代わりに、図6((a)は側面図、(b)は(a)のC−C矢視図、(c)は(a)のD−D矢視図)に示した雌型部材42を用いてもよい。以下、雌型部材42について具体的に説明する。ここで、図6(a)においては、説明の便宜上、符号42a1、42a2、42b1、42b2の部分のみ一点鎖線で透過図として示す。
雌型部材42は、第3の穴部42aと、第4の穴部42bと、移動制止部42c(第2の移動制止部)、移動制止部42d(第3の移動制止部)とを有している。第3の穴部42aにおいては、以下のように形成されている。すなわち、第3の穴部42aに上記実施形態における雄型部材21と同様の雄型部材が挿入された場合、第3の穴部42aにおける内周部(例えば、符号42a1、42a2の部分など)に沿って該雄型部材が摺動しつつ嵌合するとともに、移動制止部42cによって移動が所定位置(ここでは、第3の穴部42aの底部)までで制止されるように、第3の穴部42aは形成されている。なお、該雄型部材と第3の穴部42aとの間に、上記実施形態における繊維23と同様の繊維を設ける。第4の穴部42bにおいては、以下のように形成されている。すなわち、第4の穴部42bに上記実施形態における雄型部材21と同形状の別の雄型部材(図示せず)が挿入された場合、第4の穴部42bにおける内周部(例えば、符号42b1、42b2の部分など)に沿って該雄型部材が摺動しつつ嵌合するとともに、移動制止部42dによって移動が所定位置(ここでは、第4の穴部42bの底部)までで制止されるように、第4の穴部42bは形成されている。なお、該雄型部材と第4の穴部42bとの間に、上記実施形態における繊維23と同様の繊維を設ける。
上記構成により、雌型部材42は、雄型部材21と同様の雄型部材と、別の雄型部材とを連結(カップリング)する部材として用いることができる。特に、移動制止部42c、42dによって、雌型部材42自体を、雄型部材21と同様の雄型部材と上記別の雄型部材との間において位置決めすることができる。
また、他の変形例としては、例えば、上記実施形態及び上記変形例1,2では、本実施形態及び上記変形例1,2に係るシャフト用構造体を車両用のステアリングシャフトに適用する例について述べたが、本発明はこれに限定されず、各種産業機械で用いられるシャフトに適用できる。
また、上記実施形態及び上記変形例1,2では、繊維をゴム等で含浸処理して用いる例について述べたが、本発明はこれに限定されず、ゴム等で含浸処理することができるとともに金属面との間での摺動抵抗が低い繊維であれば良く、また繊維をシート状に形成した布でも良い。例えば、ゴム等で含浸処理された帆布、ベルベット、デニム、織布、編布を採用することができる。また、縦横一方に伸縮する、または縦横両方に伸縮する繊維を採用しても良い。
また、上記変形例1,2においては、各移動制止部を各穴部の底部に設けたが、これらに限られず、雄型部材の移動の制止を各穴部内の所定位置(任意で決めた位置)までで制止しつつ、雌型部材の位置決めを行うことができるものであれば、各移動制止部を各穴部内のいずれに設けてもよい。
1 電動パワーステアリング装置
2 ステアリングホイール
3 ステアリングシャフト(シャフト)
4 ピニオンギヤ
5 ラックギヤ
6 ラック軸
7 タイロッド
8 車輪
9 入力軸
10 出力軸
11 トーションバー
12 トルクセンサ
13 制御部
14 ドライバ
15 電動モータ
17 減速機構
18 変換機構
20 シャフト用構造体
21、121 雄型部材
21a 基軸部
21b 凸状部
21c、121c 外周部
21d 雄歯
22、32、42、222 雌型部材
22a、222a 内周部
22b 雌歯
32a 第1の穴部
32b 第2の穴部
42a 第3の穴部
42b 第4の穴部
32c 移動制止部(第1の移動制止部)
42c 移動制止部(第2の移動制止部)
42d 移動制止部(第3の移動制止部)
23、123、223 織布(繊維)
23a 内周面
23b 外周面

Claims (5)

  1. 動力を伝達可能なシャフトに組み付けられ、雄型部材及び雌型部材を軸方向に摺動可能に嵌合して構成されるシャフト用構造体であって、
    前記雄型部材が、複数の雄歯を有する外周部を備え、
    前記雌型部材が、複数の雌歯を有するとともに前記雄型部材の外周部を挿入可能な内周部を備え、
    前記雄型部材の前記外周部と、前記雌型部材の前記内周部との間には、ゴムを含浸させた繊維が介在している
    ことを特徴とするシャフト用構造体。
  2. 動力を伝達可能なシャフトに組み付けられ、雌型部材と軸方向に摺動可能に嵌合して構成される雄型部材であって、
    前記雄型部材が、複数の雄歯を有するとともに前記雌型部材の内周部に挿入可能な外周部を備え、
    前記雄型部材の前記外周部には、ゴムを含浸させた繊維が設けられていることを特徴とする雄型部材。
  3. 動力を伝達可能なシャフトに組み付けられ、雄型部材と軸方向に摺動可能に嵌合して構成される雌型部材であって、
    前記雌型部材が、複数の雌歯を有するとともに前記雄型部材の外周部を挿入可能な内周部を備え、
    前記雌型部材の前記内周部には、ゴムを含浸させた繊維が設けられていることを特徴とする雌型部材。
  4. 前記雄型部材を一方側から軸方向に挿入可能な第1の穴部と、
    棒状の部材を他方側から軸方向に圧入して固定可能な第2の穴部と、
    を有しており、
    前記第1の穴部内には、前記雄型部材が挿入された際に、前記雄型部材の挿入方向の移動を所定位置までで制止する第1の移動制止部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の雌型部材。
  5. 一方側から前記雄型部材を軸方向に挿入可能な第3の穴部と、
    他方側から別の雄型部材を軸方向に摺動可能に嵌合可能な第4の穴部と、
    を有しており、
    前記第3の穴部内には、前記雄型部材が挿入された際に、前記雄型部材の挿入方向の移動を所定位置までで制止する第2の移動制止部が設けられ、
    前記第4の穴部内には、前記別の雄型部材が挿入された際に、前記別の雄型部材の挿入方向の移動を所定位置までで制止する第3の移動制止部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の雌型部材。
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