JP6195272B2 - 有機無機ハイブリッド多孔質体の製造方法 - Google Patents
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[1](A)アルコキシシランと、当該アルコキシシラン以下の質量の(B)オルガノポリシロキサンと、酸と、水と、炭素数が2〜5のアルコールとを含む溶液を調製し、当該アルコキシシランを加水分解する加水分解工程、
前工程で得た生成物にアルカリ水溶液を添加して重縮合反応を行う重縮合工程、ならびに
前工程で得た生成物を乾燥して、有機無機ハイブリッド多孔質体を得る工程、
を含む、有機無機ハイブリッド多孔質体の製造方法。
[2]前記[1]に記載の製造方法により得られた有機無機ハイブリッド多孔質体。
[3]前記[1]に記載の有機無機ハイブリッド多孔質体を含む成形体。
[4]前記[3]に記載の有機無機ハイブリッド多孔質体を含む濾過材、触媒担体、カラム、断熱材、または防音材。
1.有機無機ハイブリッド多孔質体の製造方法
本発明の製造方法は、(A)アルコキシシランと、当該アルコキシシラン以下の質量の(B)オルガノポリシロキサンと、酸と、水と、炭素数が2〜5のアルコールとを含む溶液を調製し、当該アルコキシシランを加水分解する加水分解工程、前工程で得た生成物にアルカリ水溶液を添加して重縮合反応を行う重縮合工程、ならびに前工程で得た生成物を乾燥して、有機無機ハイブリッド多孔質体を得る工程、を含む。
(1)アルコキシシラン(成分(A))
本工程では、(A)アルコキシシラン、(B)オルガノポリシロキサン、酸、水、および炭素数が2〜5のアルコールを含む溶液を調製し、当該アルコキシシランを加水分解する。アルコキシシランとは、ケイ素原子にアルコキシル基が結合している化合物である。本発明においては、R1 xSi(OR2)(4−x)で表されるアルコキシシランが好ましい。式中、xは1〜3である。
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル基が挙げられる。中でも、反応性に優れること、および入手が容易であることから、アルキル基としてはメチル基またはエチル基が好ましい。本発明において、例示される基は異性体を含む。例えば、ブチル基は、n−ブチル基、i−ブチル基、またはt−ブチル基である。
エーテル基としては、−R3OR4で表される基が挙げられる。R3は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、3−エチル−ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、−CH2(CH3)CH−、−CH2CH(CH3)CH2−、−(CH2)18−のようなアルキレン基、シクロヘキシレンのようなシクロアルキレン基、フェニレンのようなアリーレン基またはベンジレンのような二価の炭化水素基である。R4は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシルのようなアルキル基、シクロヘキシルのような環状脂肪族基、フェニル、トリル、キシリルのようなアリール基、ベンジル、フェニルエチルのようなアラルキル基、ビニル、アリル、メタリル、ブテニル、ヘキセニル、オクテニル、シクロヘキセニル、スチリルのようなアルケニル基である。
本発明においては、成分(A)として、上記式で表されるアルコキシシランを2種以上組み合せて用いてもよい。
オルガノポリシロキサンとは、シロキサン構造を主鎖に持ち、ケイ素原子に有機基が結合しているポリマーである。本発明においては、式(b1)で表されるオルガノポリシロキサンが好ましい。
(R2R6SiO1/2)v(R2SiO2/2)x(RSiO3/2)y (b1)
R6は、炭素数1〜4のアルキル基または水酸基である。
v、x、yは、v≧0、x≧0、y≧0であるが、v、x、yの総てが0となることはない。
(R2SiO2/2)x(RSiO3/2)y (b2)
式中、R、x及びyは、前記のとおり定義される。Rはメチルが好ましく、重合度であるxは、1〜500が好ましく、10〜200がより好ましく、yは1〜200が好ましく、5〜100がより好ましい。
酸は、成分(A)であるアルコキシシランの加水分解を促進する。好ましい酸としては、グルタル酸、グルコン酸、グリコール酸、ラウリン酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、吉草酸、クエン酸、ステアリン酸、コハク酸、酢酸、シュウ酸、アジピン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、蟻酸、フマル酸、フタル酸、プロピオン酸、ピルビン酸、および酒石酸などが挙げられる。反応促進の観点から、シュウ酸、酢酸、希塩酸などが好ましく、シュウ酸がより好ましい。
本発明では、炭素数2〜5のアルコールを用いる。このようなアルコールとしてはエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノールが挙げられる。
酸の量は加水分解反応を進行できる量であれば限定されないが、本発明で使用する水を溶媒とする酸水溶液とした場合に、1〜20mM程度となる量が好ましい。
本工程における反応温度は適宜調整できるが、15〜35℃が好ましい。反応時間も適宜調整できるが、1〜24時間が好ましい。
本工程においては成分(A)であるアルコキシシランのアルコキシル基が加水分解されて、この加水分解物と成分(B)を含むゾルが生成する。前述のとおり、特定のアルコールを用いるので反応系が均一となり均一なゾルが得られる。
本工程では、前工程で得た生成物にアルカリ水溶液を添加して重縮合反応を行う。すなわち、前工程で得たゾルを重縮合してゲル化する。この際、成分(B)であるオルガノシロキサンの官能基(例えば水酸基等)も反応に関与するので、アルコキシシラン(成分(A))由来の成分およびオルガノシロキサン(成分(B))由来の成分を含む共重縮合体ゲルが形成される。
アルカリ水溶液は重縮合反応を促進する機能を担う。しかしながら、アルカリ成分が反応系に溶解しないと反応が均一に進行せず所期の性能を持った多孔質体を得にくくなる。よって、アルカリ水溶液としては、反応系に溶解しやすいアミン水溶液が好ましく、アンモニア水溶液がより好ましい。アルカリ水溶液の濃度は1〜20モル%が好ましい。アルカリ水溶液の使用量は、アルカリの濃度で異なるので一概には言えないが、例えば10Mのアルカリ水溶液を用いた場合、成分(A)と(B)の合計100質量部に対して、10〜100質量部とすることができる。
重縮合反応の反応温度は40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。重縮合反応時間は、適宜選択できるが、8〜96時間が好ましい。
本工程では、重縮合工程で得た生成物を乾燥する。本工程は、まず生成物に含まれる液体成分、すなわち膨潤ゲル中の液体成分を溶媒で置換することが好ましい。この置換には前述の炭素数2〜5のアルコールを用いることができる。中でも2−プロパノールが好ましい。このようなアルコールは原料および低分子生成物を溶解させ易いためである。当該アルコールで置換した後、さらに脂肪族アルカンで当該アルコールを置換してもよい。脂肪族アルカンとしてはヘキサンが好ましい。このことにより乾燥がより容易となる。
溶媒で処理した生成物から当該溶媒を除去して固体成分(ゲル化物)を単離し、この固体成分を乾燥する。乾燥条件は、常圧で20〜80℃が好ましい。
本発明で得られた多孔質体は、可とう性、耐熱性、耐薬品性に優れる。可とう性に優れる理由は必ずしも明らかではないが、アルコキシシランとオルガノポリシロキサンが、前記水溶液中で、適切な配合比の下に共縮合されることで可とう性が発現すると考えられる。
(1)系の均一性(膨潤状態)
重縮合反応を1時間実施した反応系を使用し、以下の基準で系の均一性を評価した。
OK:静置した試料を目視で観察し、系が均一な膨潤ゲル様状態であると確認できる。
NG:静置した試料目視で観察し、系が単に白濁した液状であるなど、均一な膨潤ゲル様状態であると確認できない。
本試験においてOKと判断される試料は、次の乾燥過程を経て固体試料が得られる。しかし、本試験においてNGと判断される試料は次の乾燥過程を経ても液状あるいは粉末状となり固形試料が得られない。即ち、系の均一性が良好であることは加工性が良好であることに対応し、不良な場合は加工性が不良であることに対応する。
乾燥後の試料に関して、以下の基準で評価した。
○(良):試料を上から指で強く押して指を離した後に、試料の変形が回復する。
×(不良):試料を上から指で強く押して指を離した後に、試料が変形したままで、元の状態に回復しない。
乾燥後の試料を、カッターを用いて、厚さ約2mmの薄片に切断し、この薄片を以下の基準で評価した。
○(良):試料薄片を指で折り畳んだ後、指を離すと試料が元の形に完全に回復する。
△(やや良):試料薄片を指で折り畳んだ後、指を離すと試料は破断しないが、元の形に完全には回復しない。
×(不良):試料薄片を指で折り畳むと試料が破断する。
試料表面を金蒸着した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてモルフォロジー観察を行って試料の多孔性を評価した。高倍率で撮影したSEM像において、以下の基準で評価した。
○(良):多くの細孔が観察された。
×(不良):細孔がほとんど観察されない。
ガラス製のスクリュー管中に、以下の材料を仕込み、室温で1時間撹拌した。
5mMシュウ酸水溶液1.2g(シュウ酸は和光純薬工業株式会社製)
2−プロパノール4.0g(和光純薬工業株式会社製)
メチルトリメトキシシラン(MTMS)(東京化成工業株式会社製)1.2g
ポリジメチルシロキサン(PDMS)(Aldrich社製)0.8g
次に、系内に10Mのアンモニア水溶液(アンモニアは和光純薬工業株式会社製)を1.2g滴下した後、撹拌を停止した。スクリュー管を湯浴中に置き、60℃で2時間保持した。
この重縮合反応開始1時間後に系の均一性試験を行い、均一な膨潤ゲル様状態を確認したので、OKと判断した。
当該固体試料について、弾性試験、折り曲げ試験を行った結果、いずれも良との評価を得た。すなわち、弾性で折り曲げ性が良好で可とう性のある多孔質体が得られた。
メチルトリメトキシシラン(MTMS)とポリジメチルシロキサン(PDMS)の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様に試料を作製し評価した。評価結果を表1に示す。SEM像を図2に示す。構成単位と思われる径が2〜4μm程度の球状粒子が連続して網目構造を形成しており、実施例1同様の多孔性を確認した。
メチルトリメトキシシラン(MTMS)とポリジメチルシロキサン(PDMS)の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様に試料を作製し評価した。評価結果を表1に示す。SEM像を図3に示す。構成単位と思われる径が〜1μm程度の球状粒子が連続して網目構造を形成しており、実施例1同様の多孔性を確認した。
メチルトリメトキシシラン(MTMS)を2.0g使用し、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いなかった以外は実施例1と同様に試料を作製して評価した。評価結果を表1に示す。試料は折り曲げ試験で容易に破損し、良好な可とう性は得られなかった。
ガラス製のスクリュー管中に表1の配合で原材料を仕込み、室温で1時間撹拌した。次に、系内に10Mのアンモニア水溶液を1.2g滴下した後、撹拌を停止した。スクリュー管を湯浴中に置き、60℃で20時間保持した。実施例と同様に系の均一性試験を行った結果、反応系は単に白濁した液体であり、均一な膨潤ゲル様状態が確認できなかったのでNGと判断した。
実施例1と同様にして、系の均一性試験結果がNGである試料を2−プロパノールで置換し、さらにヘキサンで置換した後、常圧で、60℃で24時間乾燥した。その結果、スラリー状あるいは粉末状の試料が得られ、実施例1〜3におけるようなケーキ状の固体は得られなかった。このため、さらなる評価は実施不可能であった。
2−プロパノールの代わりにメタノールおよび水をそれぞれ配合した以外は実施例3と同様にして、表1の配合で試料を作製した。しかし、加水分解反応後に系の均一性評価を実施したところ、NGであった。
Claims (12)
- (A)アルコキシシランと、当該アルコキシシラン以下の質量の(B)オルガノポリシロキサンと、酸と、水と、炭素数が2〜5のアルコールとを含む溶液を調製し、当該アルコキシシランを加水分解する加水分解工程、
前工程で得た生成物にアルカリ水溶液を添加して重縮合反応を行う重縮合工程、ならび
に
前工程で得た生成物を乾燥して、有機無機ハイブリッド多孔質体を得る工程、
を含む、有機無機ハイブリッド多孔質体の製造方法。 - 前記重縮合工程において均一な膨潤ゲル様物を形成する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記成分(B)のオルガノポリシロキサンが、末端に水酸基を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記成分(B)のオルガノポリシロキサンがポリジメチルシロキサンである、請求項3に記載の製造方法。
- 前記成分(A)のアルコキシシランが
R1 xSi(OR2)(4−x)
[式中、R1はメチル基またはエチル基であり、R2はメチル基またはエチル基であり、xは1〜3である]である、
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。 - 前記アルコールがプロパノールである、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 前記酸がシュウ酸である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 前記アルカリ水溶液がアンモニア水溶液である、請求項1〜7のいずれかに記載の製造
方法。 - 前記成分(A)と成分(B)の質量比が、1〜2.5:1である、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項9に記載の製造方法により得られた有機無機ハイブリッド多孔質体。
- 請求項10に記載の有機無機ハイブリッド多孔質体を含む成形体。
- 請求項10に記載の有機無機ハイブリッド多孔質体を含む濾過材、触媒担体、カラム、
断熱材、または防音材。
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