以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である回転電機60に用いられるロータ10の横断面図である。また、図2は、図1のX−X線における回転電機60の断面図である。また、図3は、冷媒の流れを示す図である。ただし、発明を分かりやすくするために、図2、図3における径方向長さは、図1と同じではなく若干誇張して描いており、また、各電磁鋼板14の厚み等も実際とは異なっている。
本実施形態の回転電機60は、ロータコア12の内部に永久磁石16を埋め込んだ永久磁石同期回転電機である。この回転電機60は、ロータ10およびステータ62を備えている。ステータ62は、その内周に複数のティースが形成された略環状のステータコア64と、各ティースに巻回されたステータコイル66と、から構成される。ロータ10は、このステータ62の内側に、ステータ62と同心に配される。ロータ10の外周面とステータ62の内周面との間には、ほぼ均一な距離のギャップGが存在している。
ロータ10は、ロータコア12および当該ロータコア12に埋め込まれた永久磁石16を備えている。ロータコア12の中心には、回転軸50が挿通されており、当該回転軸50は、ベアリング(図示せず)等を介してケース(図示せず)に対して回転自在に支持されている。ロータ10は、この回転軸50とともに回転自在となっている。
ロータコア12は、複数の電磁鋼板14を軸方向に積層して構成される。各電磁鋼板14は、円盤形状であり、例えば、ケイ素電磁鋼板等である。ロータコア12の外周近傍には、永久磁石16を埋め込むための磁石孔20が複数形成されている。複数の磁石孔20は、ロータコア12の周方向に均等に並んでおり、各磁石孔20は、ロータコア12をロータ軸方向(図1における紙面垂直方向)に貫通している。
各磁石孔20には、磁極18を構成する永久磁石16が埋め込まれている。二つの永久磁石16で一つの磁極18が構成される。一つの磁極18を構成する二つの永久磁石16は、ロータコア12の外周側に向かって略V字状に広がるような姿勢で配置される。本実施形態では、ロータコア12の外周端近傍に、16個の永久磁石16、8個の磁極18が配されている。各永久磁石16は、それぞれ、扁平矩形状の断面を有するとともに、ロータコア12と略同じ軸方向長さを有する板状となっている。なお、ここで説明した永久磁石16や磁極18の数は、一例であり、その数は、適宜変更されてよい。また、本実施形態では、一対の永久磁石16で一つの磁極18を構成しているが、一つの永久磁石16、または、より多数の永久磁石16で一つの磁極18を構成してもよい。
回転軸50およびロータコア12には、ロータ10およびステータ62を冷却するための冷媒が通る冷媒路が形成されている。冷媒路は、回転軸50内に形成された軸内冷媒路52と、ロータコア12内に形成されたコア内冷媒路に大別される。軸内冷媒路52は、回転軸50の軸心を通る穴である。軸内冷媒路52は、回転軸50の端部から軸方向に延びた後、径方向に分岐し、ロータコア12の内周端まで延びる。図2に示すように、本実施形態では、軸内冷媒路52は、回転軸50の両端から延びており、ロータコア12の軸方向両端に冷媒を供給できるようになっている。
コア内冷媒路は、後に詳述するように、軸内冷媒路52から供給された冷媒を、ロータコア12の外周端まで導いて、ギャップGへと放出する冷媒路である。冷媒は、ポンプ等により、回転電機60の外部に設けられた冷媒供給源から軸内冷媒路52に供給される。軸内冷媒路52に供給された冷媒は、続いて、コア内冷媒路を通って、ロータコア12の外周端から、ギャップGへと放出される。この放出された冷媒は、ギャップG内を進んだ後、回転電機60のケース底部に落下する。ケースの底部に落下した冷媒は、適宜、回収され、冷却された後、冷媒供給源に戻される。なお、冷媒は、ロータ10およびステータ62に対して好適な冷却性能を発揮できる液体であれば、特に限定されないが、本実施形態では、冷却油を冷媒として用いている。
以上の説明から明らかな通り、本実施形態において、冷媒は、回転軸50の内部からロータコア12の内部、ギャップGを順次通過していく。この通過の過程で、ロータコア12や、永久磁石16、ステータコア64の熱が冷媒に奪われることで、これらの冷却が図られる。本実施形態では、この冷却の効率を上げるとともに、回転電機60の出力性能の悪化を防止するために、コア内冷媒路の構成を特殊な構成としている。これについて、詳説する。
コア内冷媒路は、中央冷媒路22と、内周側冷媒路24と、外周側冷媒路26と、に大別される。中央冷媒路22は、ロータコア12の一端近傍から他端近傍まで、軸方向に延びる冷媒路である。中央冷媒路22は、永久磁石16より内周側位置、かつ、回転電機60のq軸上に設けられている。なお、q軸とは、周知の通り、隣接する磁極18間の中心位置(突極の中心位置)とロータ10の中心とを通る軸である。また、d軸は、一つの磁極18の中心位置とロータ10の中心とを通る軸である。本実施形態の中央冷媒路22は、各q軸上に設けられており、中央冷媒路22の個数は、磁極18の個数と同じとなっている。
中央冷媒路22の径方向外側端部は、軸方向略中央に近づくにつれ、径方向外側に進むような勾配を有している。その一方で、中央冷媒路22の径方向内側端部は、軸方向と平行な方向に延びている。その結果、中央冷媒路22の横断面積は、軸方向中央に近づくにつれ、大きくなっている。こうした中央冷媒路22の横断面積の変化(径方向外側端部の傾斜)は、電磁鋼板14に形成される中央冷媒路22を構成する中央孔22a(図4参照)のサイズを、電磁鋼板14毎に変えることで実現できる。図1では、軸方向略中央における中央冷媒路22の形状を実線で、軸方向端部近傍における中央冷媒路22の形状を破線で描いている。なお、本実施形態では、中央冷媒路22の軸方向両端を閉鎖するために、ロータコア12の軸方向両端に配された電磁鋼板14には、中央冷媒路22を構成する中央孔22aは設けていない。しかし、ロータコア12の軸方向両端に、別途、エンドプレート等を設けるのであれば、軸方向両端の電磁鋼板14にも中央冷媒路22を構成する中央孔22aを形成してもよい。
内周側冷媒路24は、軸内冷媒路52と中央冷媒路22とを連通する冷媒路である。この内周側冷媒路24は、ロータコア12の軸方向両端近傍に設けられている。各内周側冷媒路24は、ロータコア12の内周端から延びる第一冷媒路28と、第一冷媒路28と中央冷媒路22とを連通する第二冷媒路30と、を含む。第一冷媒路28は、d軸上に延びる流路であり、その一端は、軸内冷媒路52に接続し、他端は、永久磁石16よりも内周側位置で停止している。第一冷媒路28の他端は、第二冷媒路30との連通を容易にするために、略楕円状に広がっている。第一冷媒路28は、各d軸上に設けられており、一つの内周側冷媒路24が有する第一冷媒路28の個数は、磁極18との個数と同じである。
第二冷媒路30は、永久磁石16よりも内周側位置において、略周方向に延びる流路である。第二冷媒路30の一端は、第一冷媒路28の他端と重複する位置にある。したがって、図2に示すように、第二冷媒路30が形成された電磁鋼板14を、第一冷媒路28が形成された電磁鋼板14に隣接して積層することで、第二冷媒路30と第一冷媒路28が連通される。第二冷媒路30の他端は、図1に示すように、中央冷媒路22に接続されている。本実施形態では、一つの第一冷媒路28に対して、略周方向に互いに逆方向に延びる二本の第二冷媒路30を接続させている。また、一つの中央冷媒路22には、互いに異なる第一冷媒路28から延びる二本の第二冷媒路30が接続されている。したがって、一つの内周側冷媒路24が有する第二冷媒路30の個数は、第一冷媒路28の個数の2倍であり、磁極18との個数の2倍である。
外周側冷媒路26は、中央冷媒路22の軸方向略中央から径方向外側に延びてギャップGに連通する冷媒路である。外周側冷媒路26は、ロータコア12の外周端から径方向に延び、中央冷媒路22に接続する。ここで、図2から明らかな通り、外周側冷媒路26は、ロータコア12の軸方向略中心にのみ設けられている。換言すれば、冷媒の吐出口(外周側冷媒路26の外周端)は、ロータコア12の軸方向中心にのみ設けられている。また、外周側冷媒路26は、各q軸上に設けられており、外周側冷媒路26の個数は、磁極18の個数と同じである。
以上のようなコア内冷媒路は、ロータコア12を構成する電磁鋼板14に、適宜、スロットや孔を形成することで構成される。また、ロータコア12を構成する電磁鋼板14は、積層される軸方向位置に応じて形状が異なることになる。これについて、図4A〜図4Cを参照して説明する。
ロータコア12を構成する電磁鋼板14の種類は、大きく分けて五つある。一つ目は、複数の磁石孔20のみが形成された電磁鋼板14で、かかる電磁鋼板14は、ロータコア12の軸方向両端に配される。
二つ目は、図4Aに示すように、複数の磁石孔20に加えて、さらに、第一スロット28aおよび中央孔22aが形成された電磁鋼板14である。かかる電磁鋼板14は、ロータコア12の軸方向両端近傍に配される。第一スロット28aは、d軸に沿って、内周側端部から径方向外側に延びるスロットで、第一冷媒路28を構成する。中央孔22aは、磁石孔20より内周側、かつ、q軸上に配される貫通孔で、中央冷媒路22を構成する。
三つ目は、図4Bに示すように、複数の磁石孔20に加えて、さらに、第二スロット30aおよび中央孔22aが形成された電磁鋼板14である。かかる電磁鋼板14は、図4Aの電磁鋼板14に隣接配置される。第二スロット30aは、磁石孔20より内周側位置において略周方向に延びるスロットで、第二冷媒路30を構成する。中央孔22aは、この第二スロット30aと接続している。なお、中央冷媒路22の径方向外側端部に勾配を持たせるために、図4Bの電磁鋼板14に形成された中央孔22aは、図4Aの電磁鋼板14に形成された中央孔22aよりも僅かに大きくなっている。
四つ目は、複数の磁石孔20と中央孔22aと、が形成された電磁鋼板14である。かかる電磁鋼板14は、図4Bの電磁鋼板14と、図4Cの電磁鋼板14との間に配される。ただし、かかる電磁鋼板14に形成される中央孔22aのサイズは一定ではなく、軸方向中央寄りに配される電磁鋼板14ほど、中央孔22aが大きくなっている。
五つ目は、複数の磁石孔20に加えて、さらに、中央孔22aおよび外周側スロット26aが形成された電磁鋼板14である。かかる電磁鋼板14は、ロータコア12の軸方向略中央に配される。外周側スロット26aは、q軸に沿って、外周側端部から径方向内側に延びるスロットで、外周側冷媒路26を構成する。中央孔22aは、この外周側スロット26aと接続している。また、図4Cの電磁鋼板14に形成される中央孔22aは、他の電磁鋼板14に形成される中央孔22aよりも大きくなっている。こうした複数種類の電磁鋼板14を積層していくことで、コア内冷媒路が形成されたロータコア12を構成することができる。
次に、こうしたロータ10を用いた場合のロータ10の冷却性能について、従来技術と比較して説明する。従来でも、ロータコア12の内部に冷媒流路を形成してロータ10およびステータ62を冷却する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、図7に示すように、連続して軸方向に並ぶ複数の電磁鋼板14ごとに、回転電機のq軸上に延びるスロット104,106,108を、その径方向範囲をずらして形成することで、q軸上に延びる冷却油路を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、図8に示すように、d軸上に延びる冷媒路110を、軸方向の複数個所に設けた技術が開示されている。
こうした従来技術によれば、冷媒を、ロータコア12の内部からギャップGへと放出することができるため、ロータ10およびステータ62を冷却できる。しかしながら、特許文献1の技術では、軸方向に延びる冷媒路が無いため、軸方向全体を均等に冷却することができず、軸方向に冷却ムラが生じやすかった。特に、軸方向に長尺な永久磁石を均等に冷却することが難しく、永久磁石の冷却効率が悪かった。
冷媒路を軸方向の複数箇所に設けた特許文献2の技術によれば、こうした問題は、多少は改善される。しかし、特許文献2の技術でも、軸方向に延びる冷媒路は無いため、永久磁石16を均等に冷却するのは難しい。また、特許文献2の技術によれば、ロータコア12の外周面には、冷媒の吐出口が多数、軸方向に並ぶことになる。この場合、図8において矢印で示すように、吐出口からギャップGに放出された冷媒は、ギャップGの両端に進む途中で、他の吐出口から放出された冷媒と干渉する。その結果、冷媒が、ギャップGから迅速に排出されず、ギャップGに滞留し、引き摺り損失の増加を招く恐れがあった。
さらに、特許文献1の技術で、冷媒路は、q軸上に、特許文献2の技術で、冷媒路は、d軸上に延びている。この場合、マグネットトルクおよびリラクタンストルクの一方が低下する恐れがあった。すなわち、周知の通り、IPM回転電機は、永久磁石16によるマグネットトルクとリラクタンストルクの双方を有効に活用することで、出力性能を向上している。マグネットトルクを有効に活用するためには、d軸電流による鎖交磁束の磁路(以下「d軸磁路」という)における磁気抵抗を低くすることが必要となる。また、リラクタンストルクを有効に活用するためには、q軸電流による鎖交磁束の磁路(以下「q軸磁路」という)における磁気抵抗を低くすることが必要となる。
ここで、d軸磁路Ldは、図4において破線で示すように、回転電機60のq軸を横断するような磁路となる。そのため、特許文献1のように、q軸上に冷媒路のためのスロット104,106,108を形成すると、d軸磁路Ld途中に、磁気抵抗の高いスロット104,106,108が位置することになる。この場合、d軸磁路Ldの磁気抵抗が大幅に増加し、マグネットトルクの低下を招く。また、q軸磁路Lqは、図4において二点鎖線で示すように、回転電機60のd軸を横断するような磁路となる。そのため、特許文献2のように、d軸上に冷媒流路のためのスロットを形成すると、q軸磁路Lq途中に、磁気抵抗の高いスロットが位置することになり、q軸磁路Lqの磁気抵抗が大幅に増加し、リラクタンストルクの低下を招く。
一方、本実施形態では、軸方向に延びる中央冷媒路22を設けている。そのため、図3において太線で示すように、冷媒は、ロータコア12の軸方向に沿って流れることができる。結果として、本実施形態によれば、ロータコア12および永久磁石16を、軸方向に略均等に冷却することができる。また、本実施形態では、この中央冷媒路22の径方向外側端部を、軸方向略中央に近づくにつれて、径方向外側に進むように傾斜させている。この傾斜により、外周側冷媒路26(軸方向略中央)に進む冷媒の流速を向上することができ、冷却能力をより向上できる。すなわち、ロータ10が高速で回転すると、遠心力、すなわち、径方向外側に向かう力が発生する。中央冷媒路22に供給された冷媒は、この遠心力を受けて径方向外側端部へと進む。そして、径方向外側端部に到達した冷媒は、さらに、径方向外側端部に沿いつつも径方向外側に向かう方向、すなわち、軸方向略中央側へと移動する。また、この遠心力は、半径(回転中心からの距離)が大きい位置ほど大きくなる。中央冷媒路22の径方向外側端部は、軸方向中央に近づく程、回転中心からの距離が大きくなるため、径方向外側端部に発生する遠心力は、軸方向略中央に近づくにつれ大きくなる。つまり、本実施形態の中央冷媒路22の径方向外側端部には、遠心力差が生じている。この遠心力差があることにより、中央冷媒路22に供給された冷媒は、遠心力のより大きい方向、すなわち、軸方向略中央へと進みやすくなる。結果として、外周側冷媒路26(軸方向略中央)へ向かう冷媒の流速を向上でき、冷却効率をより向上できる。
また、本実施形態では、中央冷媒路22を通過した冷媒を、外周側冷媒路26からギャップGに放出している。外周側冷媒路26は、軸方向略中央にのみ設けている。そのため、冷媒の吐出口は、軸方向略中央にのみ存在することになる。その結果、図3に示す通り、軸方向略中央から放出された冷媒は、ギャップGの軸方向両端に進む過程で他の吐出口から放出された冷媒と干渉することがなく、迅速にギャップGの外部に放出される。結果として、冷媒の滞留に起因する引き摺り損失を効果的に防止できる。
また、本実施形態によれば、冷媒は、永久磁石16より内周側にある中央冷媒路22と、永久磁石16より外周側にあるギャップGと、の両方に流れる。その結果、永久磁石16は、内周側および外周側の両方から冷却されることになり、永久磁石16をより効果的に冷却できる。そして、これにより、熱による永久磁石16の性能低下や減磁を防止できる。
また、本実施形態では、第一冷媒路28、第二冷媒路30、外周側冷媒路26を、互いに異なる軸方向位置(電磁鋼板14)に形成している。そのため、本実施形態によれば、d軸磁路Ldおよびq軸磁路Lqの双方が冷媒路により分断されないため、マグネットトルクおよびリラクタンストルクの双方を有効に活用でき、ひいては、回転電機60の出力性能の悪化を防止できる。
すなわち、図4A〜図4Cにおいて破線で示すように、d軸磁路Ldは、一つの磁極18の中心を通るように、ロータコア12内に進んだ後、q軸を横断して、隣接する他の磁極18の中心を通るようにしてロータコア12外に出る。また、図4A〜図4Cにおいて二点鎖線で示すように、q軸磁路Lqは、磁極18間に形成される突極からロータコア12内に進んだ後、d軸磁路Ldを横断して、隣接する他の突極を通るようにしてロータコア12の外部に出る。こうしたd軸磁路Ldおよびq軸磁路Lqの経路途中にスロット等が存在すると、マグネットトルクおよびリラクタンストルクが低下する。
本実施形態では、d軸磁路Ldを阻害しないように、周方向に延びる第二冷媒路30とq軸上に延びる外周側冷媒路26を別の電磁鋼板14に形成するとともに、第一冷媒路28を、電磁鋼板14の径方向半ばまでしか延ばしていない。そのため、d軸磁路Ldが、冷媒路で分断されず、d軸磁路Ldの磁気抵抗を低く抑えることができる。また、本実施形態では、q軸磁路Lqを阻害しないように、q軸上に延びる外周側冷媒路26を、永久磁石16よりも内周側位置までしか延ばしていない。そのため、q軸磁路Lqも冷媒路で分断されず、磁気抵抗を小さく抑えることができる。
なお、これまで説明した構成は、一例であり、コア内冷媒路が、軸方向に延びる中央冷媒路22と、軸内冷媒路52と中央冷媒路22とを連通する内周側冷媒路24と、軸方向略中央において中央冷媒路22とギャップGとを連通する外周側冷媒路26と、を有し、中央冷媒路22の径方向外側端部が、軸方向略中央に近づくにつれ径方向外側に進むような勾配を有しているのであれば、その他の構成は、変更されてもよい。
例えば、中央冷媒路22の径方向外側端部の勾配は、図2、図3に示すような滑らかな傾斜で達成してもよいが、図6に示すように、段差で達成してもよい。かかる構成とすれば、一つの段差から次の段差までの間に存在する複数(図示例では3枚)の電磁鋼板14に形成される中央孔22aの位置および形は、同じにできる。その結果、電磁鋼板14の種類数を低減できる。
また、本実施形態では、中央冷媒路22の径方向外側端部にのみ勾配を持たせたが、図5、図6に示すように、径方向内側端部にも勾配を持たせてもよい。この場合、中央孔22aの断面積は、軸方向位置に関わらず、同じとなる。換言すれば、軸方向中央近傍でも、中央孔22aを小さく抑えることができるため、中央孔22aに起因する強度低下を低減できる。ただし、ロータコア12の強度が保てるのであれば、図2、図3に示すように、中央孔22aは、軸方向中央に近づくにつれ、大きくなるほうが望ましい。これは、中央孔22aが大きい程、冷媒とロータコア12との接触面積が増加し、冷却効率が向上するためである。軸方向中央は、軸方向端部に比べて、冷媒の流れの下流側に位置しており、比較的、温度上昇した冷媒が流れる位置である。かかる、軸方向中央においては、中央孔22aを大きくして、ロータコア12と冷媒との接触面積増加を図ることが望ましい。
なお、こうした中央冷媒路22の勾配やサイズは、必要とされる冷却能力や、ロータコア12のサイズ等に応じて、適宜変更されればよい。例えば、冷却効率は、冷媒の流速が高いほど高くなる。そして、冷媒の流速を高めるためであれば、勾配は、大きいほうが望ましい。一方で、勾配が大きいと、軸方向両端近傍における中央冷媒路22と永久磁石16との距離が大きくなり、軸方向両端における永久磁石16の冷却効率が低下する。中央冷媒路22の勾配は、こうした必要とされる冷媒の流速や、中央冷媒路22と永久磁石16との距離等に応じて決定すればよい。また、中央冷媒路22の断面積は、大きい程、ロータコア12と冷媒との接触面積が広がるため、冷却効率が上がる。しかし、中央冷媒路22の断面積が過度に大きいと、ロータコア12の強度が低下したり、d軸磁路Ldやq軸磁路Lqが狭くなったりする。したがって、中央冷媒路22の断面積は、こうした事情を考慮して決定することが望ましい。
また、本実施形態では、図4Bに示すように、第二スロット30aと中央孔22aとを同じ電磁鋼板14に形成している。しかし、図6に示すように、中央冷媒路22を、第二スロット30aが形成される電磁鋼板14と隣接する電磁鋼板14から延ばし、第二スロット30aと中央孔22aとを互いに異なる電磁鋼板14に形成してもよい。この場合、図4Bの場合に比べて、d軸磁路Ldを広く確保することができる。
また、本実施形態では、第一冷媒路28、第二冷媒路30、外周側冷媒路26を、電磁鋼板14を貫通するスロットで構成したが、スロットに代えて電磁鋼板14を貫通しない溝で、これら冷媒路を構成してもよい。また、第一冷媒路28、第二冷媒路30、外周側冷媒路26は、一枚の電磁鋼板14ではなく、複数の電磁鋼板14で構成されてもよい。例えば、図6に示すように、外周側スロット26aが形成された電磁鋼板14を3枚積層するようにしてもよい。この場合、外周側冷媒路26の厚み(軸方向距離)は、3枚の電磁鋼板14の厚み相当となり、外周側冷媒路26の断面積を広げることができる。また、本実施形態では、電磁鋼板14を積層した積層鋼板からなるロータコア12のみを例示したが、例えば、強度的特性および磁気的特性を保てるのであれば、ロータコア12を、積層鋼板以外、例えば、圧粉磁心等から構成してもよい。
さらに、本実施形態では、第一冷媒路28を、d軸上に配置しているが、第一冷媒路28は、q軸に対して周方向にずれた位置に形成されるのであれば、d軸上に限らず、他の箇所に設けられてもよい。また、各種冷媒路の個数は、適宜変更されてもよい。例えば、中央冷媒路22は、2磁極おきに形成されてもよい。それに伴い、第一冷媒路28、第二冷媒路30、外周側冷媒路26の数も調整されてもよい。
また、これまでの説明では、永久磁石16をV字形に配したロータ10のみを例示したが、ロータコア12内に永久磁石16を埋め込んだロータ10であれば、永久磁石16の形状は、矩形でもよいし、馬蹄形でもよい。