次に、本発明の実施形態に係る炊飯器について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、内釜を加熱する加熱手段として電磁誘導式のものを例に挙げて説明するが、電気ヒータなどの別の加熱手段を適用することもできる。
図1は、本実施形態に係る炊飯器1を示す外観斜視図である。
図1に示すように、炊飯器1は、炊飯ユニット10と加熱ユニット20とを備えて構成されている。
炊飯ユニット10は、本体部11と、この本体部11の上部を覆う蓋体12と、ハンドル13と、を備えて構成されている。本体部11と蓋体12とで構成される外観は、おひつを模した形状を呈している。蓋体12には、本体部11と蓋体12とのロックおよびロック解除を行う操作スイッチ12cが設けられている。
加熱ユニット20は、略円錐台形状を呈する加熱部21を有し、この加熱部21の上面に炊飯ユニット10が載置されるように構成されている。このように加熱部21を略円錐台形状とすることにより、炊飯ユニット10を安定して支持することができる。
また、加熱ユニット20は、加熱部21の正面(前面)に、周面に沿って操作パネル22が設けられている。操作パネル22は、各種設定を行うスイッチ類22a、運転状態などを表示する表示部22bなどを備えている。また、加熱ユニット20は、加熱部21の後方に、略四角箱形状を呈する制御回路収容部23が設けられている。この制御回路収容部23から電源コード24が引き出されている。
図2は、炊飯器1の蓋体12を開けた状態を示す斜視図である。
図2に示すように、炊飯ユニット10の本体部11には、有底円筒状の内釜14(釜)が収容されている。内釜14は、例えば、鉄などの強磁性金属を含む磁性金属と非磁性金属の複合材で形成され、上部開口14aの全周にフランジ部14bを有している。また、内釜14は、内釜収容部32(図9参照)に着脱可能に収容されている。
蓋体12は、内釜14の上部開口14aを開閉するものであり、外蓋12aと内蓋12bとで構成されている。また、蓋体12は、本体部11の後端部において、ヒンジ部12dを介して回動自在に支持されている。ヒンジ部12dは、本体部11の平面視円形状の内側に位置するように配置されている。
外蓋12aは、略円盤形状を呈し、下面に内蓋12bを収容する凹部12a1を有している。また、外蓋12aの前端には、上面から側面にかけてL字状に形成された操作スイッチ12cが取り付けられている。操作スイッチ12cには、後記するロック部材12eと係合してロックする爪部12c1が設けられている。
外蓋12aは、外蓋12aの内面を構成する蓋内面部材12a2と外蓋12aの外観を構成する蓋外観部材12a3で構成されていてもよい(図3参照)。
内蓋12bは、外周縁部の全体にわたってパッキン12b1が取り付けられており、蓋体12を閉じたときに、内釜14の上部開口14aを覆い、内釜14の内部を略密閉状態に保つようになっている。
本体部11は、略円柱形状を呈し、内釜14を収容する内釜収容部32(図9参照)を有している。また、本体部11には、内釜14の外周に沿って延在する略環状の縁部11aが形成されている。この縁部11aの幅は、前端部11a1が最も狭く形成され、左右両側から後端部11a2に向けて徐々に広くなり、後端部11a2が最も広くなるように構成されている。
また、縁部11aの前端部11a1には、操作スイッチ12cと係合してロックするロック部材12eが設けられている。なお、ロック部材12eは、公知の方法によって構成することができる。
ヒンジ部12dは、縁部11aの後端部11a2の幅内に略収まるように構成されている。これにより、蓋体12を閉じたときに、円柱形状を呈する炊飯ユニット10の周面からヒンジ部12dが突出しないようになっている。
図3は、制動機構2が備えられたヒンジ部12d周辺の拡大斜視図である。なお、図3は、蓋体12の蓋外観部材12a3の後部を切り欠いた状態を示している。
図3に示すように、制動機構2はロータリーダンパ50、歯車50a、ラック部51等を含んで構成される。
本実施形態において、ロータリーダンパ50に取り付けられた歯車(ピニオン)50aに噛合するラック部51、51がヒンジ部12dの左右両側に配置される。また、軸受部55、55がラック部51、51のヒンジ部12dとは反対側にそれぞれ配置される。すなわち、炊飯器1の回動軸56に沿って左から右へ軸受部55、ラック部51、ヒンジ部12d、ラック部51、軸受部55の順に構成されている。
図4は、本実施形態に係る制動機構2に含まれるロータリーダンパ50を示す外観斜視図である。
図4に示すように、ロータリーダンパ50は、ロータリーダンパ50のロータ(不図示)に繋がる回転軸50dに取り付けられた歯車50aと、ロータとオイルが収容される本体50bと、本体50bの両側に形成されたフランジ50c、50cとからなる。
ロータリーダンパ50は、トルクの発生方向が一方向である一方向性ロータリーダンパでもよく、トルクの発生方向が両方向である両方向性ロータリーダンパでもよい。ロータリーダンパ50は、少なくとも蓋体12の開時に制動力(トルク)が作用するようになっている。
なお、ロータリーダンパ50は、公知の方法によって構成することができる。
図3に示すように、ラック部51は板状形状であり、長手方向が炊飯器1の上下方向を向き、短手方向が炊飯器1の前後方向を向き、厚さ方向が炊飯器1の左右方向を向いた状態で、本体部11の後端部11a2(図2参照)に設けられる。ラック部51はラック歯51aと、挿通穴51bとを備える(図6参照)。
ラック歯51aは、ラック部51の上部に前後方向に円弧状に形成される。ラック歯51aは、ロータリーダンパ50の歯車50aと噛合する。ラック歯51aと噛合する歯車50aは回転しながら前後方向に移動する。また、挿通穴51bが厚さ方向(炊飯器1の左右方向)に形成され、回動軸56が挿通される(図6参照)。
ラック部51の前方内釜14側および炊飯ユニット10の外周側は上下方向に延びる平坦部51c、51d(図6、図7参照)を有している。
軸受部55は、板状形状であり、ラック部51に沿って、ラック部51の前方に向けて延在する板状部55aと、板状部55aの下部の外側(ラック部51とは反対側)に連設された上方に向けて開口する凹部55bとから構成される。
板状部55aには、回動軸56を固定する軸受穴55cが厚さ方向(炊飯器1の左右方向)に形成される。板状部55aの上部にはロータリーダンパ50の本体50bの外周面の形状に対応した円弧状の切り欠き55dが形成される。
当該切り欠き55dは、ロータリーダンパ50を本体50bの外周面で支持する。凹部55bは、ロータリーダンパ50のフランジ50cが嵌合する開口が形成されている。
図5は、図3のI−I線矢視断面図であり、本実施形態に係るロータリーダンパ50の取り付け状態を示す。
図5に示すように、ロータリーダンパ50は、固定部材52によって固定されている。この固定部材52は、板状部52aと、外嵌部52bと、嵌合部52cと、フランジ部52dとから構成される。
板状部52aは、ロータリーダンパ50の本体50bとフランジ50cとを合わせた同程度の長さを有する。
外嵌部52bは、上部のフランジ50cに嵌合して、ロータリーダンパ50の上部のがたつきを防止する。
嵌合部52cは、下部のフランジ50cに嵌合して、ロータリーダンパ50の下部のがたつきを防止する。
フランジ部52dは、鉛直方向上向きに延びるボス部54に上方からビス53をねじ込むことで固定されている。
これにより、ロータリーダンパ50がフランジ50c、50cを上下に向けた状態で、固定部材52と軸受部55とを用いて蓋体12に固定される。
図3に示すように、回動軸56は、軸受部55、ラック部51、ヒンジ部12d、ラック部51、及び、軸受部55を挿通することにより、蓋体12を開閉自在に軸支する。
弾性部材60は、円筒状に巻回されたコイル部60aと、コイル部60aの一端からコイル部60aに並行した後にコイル部60aの軸方向の中央付近から略直交する方向に延びる端部60bと、コイル部60aの他端から軸方向に対して略直交する方向に延びる端部60cとからなる。
弾性部材60は、コイル部60aの内部に回動軸56が挿通される。端部60bは、蓋内面部材12a2と蓋外観部材12a3との間に設けられた固定板61によって抑えられる(図8参照)。固定板61は、例えば上方からビス62、62によってねじ込まれ、蓋内面部材12a2の表面に設けたラッチ12a21(図6参照)に係合することで固定される。端部60cは、図示しない本体部11の後端部11a2に固定される。
弾性部材60は、回動軸56を中心に蓋体12を回動させて開くように付勢している。
ヒンジ部12dは、弾性部材60のコイル部60aの内部に回動軸56が挿通された状態で回動軸56と、弾性部材60とを内部に収容する収容部12d1を有する。この収容部12d1には、蓋体12を開閉したときに端部60bの弾撥運動を確保するため、端部60bとの接触を防止する切り欠き12d2が形成される。
制動機構2を構成する部材のうち、ロータリーダンパ50は蓋体12側に設けられ、ラック部51は縁部11a(図2参照)の後端部11a2(図2参照)、すなわち本体部11に設けられる。固定部材52、ビス53、ボス部54、軸受部55は蓋体12側に設けられる。ヒンジ部12dは本体部11の後端部11a2(図2参照)に設けられる。
ロータリーダンパ50は、両側に設けたフランジ50cが上下を向くように固定部材52で固定される。ロータリーダンパ50は、回転軸50dと同等、または、それ以上の高さに水平なフランジ部52dを設けた固定部材52を用いて固定されるのが好ましい。これにより、回転軸50dに取り付けられた歯車50aの回転が安定し、蓋体12の回動動作が安定する。
なお、図5では、ビス53を用いて固定部材52を固定する方法を示すが、他の方法で固定部材52を固定しても良い。
図3に示すように、歯車50aはラック部51のラック歯51aに噛合するように固定される。
歯車50aの回転軸50d(図4参照)と、蓋体12の回動軸56とは、異なる(同軸上とならない)位置であって、互いに平行となるように設けられる。これにより、回動軸56を中心に、歯車50aはラック歯51aに噛合しつつ回転しながら移動することが可能となる。
また、歯車50aを備えたロータリーダンパ50は、蓋体12が歯車50aとラック歯51aとが噛合した状態を維持して回動する位置に固定される。
本実施形態における歯車50aとラック歯51aとの関係では、歯車50aがラック歯51a上を移動すると歯車50aが略半回転する。
図6、図7を参照しつつ蓋体12の回動について説明する。図6は、図3のII−II線矢視断面図であり、炊飯器1の蓋体12を閉じた状態を示す。
図6に示すように、ロータリーダンパ50は、蓋体12が閉じた状態で歯車50aの回転軸50dが蓋体12を軸支する回動軸56よりも前方(内釜収容部32側となる位置)に固定されている。また、ロータリーダンパ50は、歯車50aがラック部51のラック歯51aの前端と噛合している。
蓋体12を本体部11に固定しているロックが解除されると、弾性部材60の弾撥力により回動軸56を回動中心として蓋体12が開く方向に力が加えられる。このとき、蓋体12に備えられたロータリーダンパ50に取り付けられた歯車50aが蓋体12とは別体の本体部11(の後端部11a2)に設けられたラック部51のラック歯51aに噛合しているため、歯車50aは回転を始める。蓋体12は、歯車50aがラック歯51aに噛合した状態を維持して回動を始める。
歯車50aの回転速度は、蓋体12が開きだした当初はロータリーダンパ50のトルクが小さいため速い。しかし、蓋体12が開きだして歯車50aの回転するに従いロータリーダンパ50のトルクが大きくなる。このため、歯車50aの回転速度は次第に減少する。
蓋体12には歯車50aを備えるロータリーダンパ50が固定されており、蓋体12の回動は歯車50aがラック歯51aに噛合した状態を維持するように制限されているため、歯車50aの回転速度が減少するに従い、蓋体12の回動速度が低下する。
そして、歯車50aは回転しながらラック歯51aの一端(前端)から他端(後端)まで移動する。
図7は、制動機構2を中心とする炊飯器1の蓋体12が開いた状態での断面図である。
ロータリーダンパ50は、蓋体12が全開した状態で歯車50aの回転軸50dが蓋体12を軸支する回動軸56よりも後方(炊飯ユニット10の外周側)に位置するように構成される。
図7に示すように、蓋体12が水平面に対して略90°開くと弾性部材60の弾撥力(復元力)が0(ゼロ)となり、蓋体12が静止する。
歯車50aの歯数に対するラック部51のラック歯51aの歯数の比(ギア比)が大きいほどラック歯51aを一端(前端)から他端(後端)まで歯車50aが噛合しつつ移動するときの歯車50aの回転数が増加する。歯車50aの回転数が増加するほど、ロータリーダンパ50のトルクが増加して、歯車50aの回転速度がより低下する。
すなわち、前記歯数の比(ギア比)が大きいほど蓋体12の開閉速度が減少するため、重心移動が緩やかになる。したがって、蓋体12が開く際の反動を小さく抑えることが可能となる。炊飯器1の転倒も効果的に防止できる。
歯車50aの歯数に対するラック部51のラック歯51aの歯数の比(ギア比)は、0.5より大きいことが好ましく、3より大きいほうがより好ましい。換言すると、歯車50aがラック歯51a上を移動したときに、歯車50aが半回転よりも多く回転することが好ましく、3回転よりも多く回転することが好ましい。
歯車50aを小さくすることにより、また、歯車50aの歯数を減少させることにより、歯車歯数の比(ギア比)を高めることができる。歯車50aの歯およびラック歯51aを小さくすることによっても、歯車歯数の比(ギア比)を高めることができる。
図8は、炊飯器1を示す平面図である。
図8に示すように、制御回路収容部23の外周面23sは、湾曲して形成され、周方向の中央部が、炊飯器1の最も後ろ側に位置する端部23e(最外部)となるように構成されている。
支持板11hは、平面視において三日月状に形成され、支持板11hの先端(後端)にハンドル13の一部が当接することで支持されている。このように構成することにより、支持板11hの本体部11からの突出量を少なくすることができる。
炊飯ユニット10を加熱ユニット20に載置したときには、操作パネル22の操作面が炊飯ユニット10から外側に突出するとともに斜め上向きとなるように構成されている。これにより、炊飯器1が低い場所に置かれ、炊飯器1を見下ろす状態であっても、操作パネル22の操作性および視認性が損なわれることがない。
図9は、炊飯ユニット及び加熱ユニットが分離した状態での断面図である。なお、図9では、一部を簡略化(断面の奥側に見える一部分を省略)して図示している。
図9に示すように、本体部11の下面には、凹部11bが形成されている。この凹部11bは、本体部11の直径よりも短く形成され、凹部11bの周囲に環状の支持部11cが形成されている。
支持部11cの幅は、前記した縁部11aと同様に、前端部が最も狭く形成され、左右両側から後端部11a2に向けて徐々に広くなり、後端部11a2が最も広くなるように構成されている。なお、支持部11cの複数個所には、ゴム製の滑り止め部材が嵌め込まれ、炊飯ユニット10のテーブルに載置したときの滑りを防止している。
また、凹部11bの天井板11eの中心部には、窪み部11sが形成されている。この窪み部11sは、天井板11eを上下方向に貫通する円形の円筒部11fと、この円筒部11fを塞ぐ伝熱板38とを組み合わせて構成されている。なお、窪み部11sの詳細な形状については後記する。
また、凹部11bは、上方に向けて縮径するように、円錐台形状の空間を有している。また、凹部11bの側面(周面)には、径方向外側に向けて凸となる位置決め凹部11gが形成されている。この位置決め凹部11gは、炊飯ユニット10と加熱ユニット20との取付方向を決めるものである。なお、本実施形態では、凹部11bが後方に向けて凸となる場合を例に挙げて説明しているが、後方に限定されるものではなく、前方や側方など他の方向に向けて凸となるように構成してもよい。また、位置決め凹部11gについては、1箇所に限定されるものではなく、複数箇所に設けてもよい。
また、本体部11の背面(後面)には、後方に向けて突出するハンドル支持板11hが設けられている。このハンドル支持板11hは、略三日月板状に形成され、ハンドル13が後ろ向きの水平位置で支持される高さ位置に取り付けられている。なお、ハンドル13は、その両端部が本体部11の左右側面側に回動自在に支持されており、前向きから後向きまでの範囲で回動するように構成されている。
図9に示すように、炊飯ユニット10を上方に持ち上げることで、炊飯ユニット10を加熱ユニット20から取り外すことができるようになっている。このように、本実施形態の炊飯器1では、炊飯後に、炊飯ユニット10のみを取り外してテーブル(食卓)に置くことができるようになっている。
加熱ユニット20は、加熱部21の上面に略円錐台形状の凸部21aを有している。この凸部21aは、前記した凹部11bの空間に沿う形状である。この凸部21aの上面21bの中央には、略円筒形状の突起部21cが形成されている。この突起部21cの円筒の内側には、温度センサ25が挿通され、突起部21cの上部開口21eから温度センサ25の上端部(上端面)が突出している。
また、凸部21aの側面(周面)には、径方向外側に向けて突出する位置決め凸部21dが形成されている。この位置決め凸部21dが、本体部11の位置決め凹部11gと嵌合することにより、炊飯ユニット10と加熱ユニット20との取付方向が決定される。すなわち、ヒンジ部12dが後端(奥側)に位置した状態で炊飯ユニット10が加熱ユニット20上に載置される。なお、位置決め凸部21dについても、前記した位置決め凹部11gと対応するように、前方や側方など他の方向に凸となるように構成してもよい。
また、凸部21aの周囲には、炊飯ユニット10の支持部11cが当接する環状の当接面が形成されている。この当接面についても、支持部11cと同様に、前端部が最も狭く形成され、左右両側から後端部に向けて徐々に広くなり、後端部が最も広くなるように構成されている。
制御回路収容部23は、略四角箱形状を呈し、加熱部21の後方に設けられている。また、制御回路収容部23は、本体部11の曲面(周面)に沿うように湾曲した湾曲面23aを有している。また、制御回路収容部23の上面23bは、加熱部21の上面21bよりも上側に位置している。
制御回路収容部23の上面23bは、支持板11hの下方に位置している。また、上面23bは、支持板11hの下面と若干の隙間を有して配置されている。このように、制御回路収容部23を高くすることで、炊飯ユニット10を加熱ユニット20にセットする際のガイド部材として機能させることができ、炊飯ユニット10を加熱ユニット20にセットすることが容易になる。また、制御回路収容部23を高くすることで、制御回路23cを収容する空間を後方に向けて過度に突出させるのを防止できる。また、ハンドル13が支持板11hによって制御回路収容部23の上方で支持されるので、炊飯ユニット10を加熱ユニット20に載置する際に、ハンドル13が邪魔になることがない。
また、加熱ユニット20の下面には、複数の脚部26が設けられ、これらの脚部26によって加熱ユニット20を支持している。また、加熱ユニット20の側面下部には、図9に図示していないが、吸気口が形成されている。なお、図示省略しているが、吸気口とは左右反対側の加熱ユニット20の側面下部には、排気口が設けられている。
図9に示すように、本体部11は、外郭を構成する有底円筒形状の胴体部31と、内釜14を収容する内釜収容部32と、内釜収容部32の周囲に巻回される断熱材33と、を含んで構成されている。なお、内釜収容部32は、耐熱性を有する合成樹脂などで形成されている。
本体部11の下面側に形成された窪み部11sは、凹部11bの天井板11eに形成された円筒部11fと、円筒部11fを塞ぐ伝熱板38とによって凹状に形成されている。円筒部11fは、内釜収容部32の底部32aを貫通している。
伝熱板38は、アルミニウム合金などの熱伝導性の良好な金属によって断面視凹状に形成され、円筒部11fの開口11f1を覆うようにして閉塞している。また、伝熱板38の上部は、内釜収容部32内に露出している。また、伝熱板38には、径方向外側に突出する抜け止め用のフランジ部38aが形成されている。また、伝熱板38は、上下方向に可動できるように天井板11eと底部32aとの間に空間が形成されている。
また、円筒部11fの下部(凹部11b側)は、下方に向けて拡径するように構成されているので、突起部21cを窪み部11s内に容易に案内することができ、炊飯ユニット10を加熱ユニット20に載置することが容易になる。
内釜収容部32は、有底円筒形状を呈し、内釜収容部32の底部32aが凹部11bの天井板11eの内面(上面)に固定されている。
内釜14の底部14cは、中央部に上方に隆起した隆起部14dを有している。隆起部14dは、中央部が最も高く、径方向外側に向けてなだらかな曲面となるように構成されている。隆起部14dの中央部の下面には、伝熱板38が接触する。このように伝熱板38によって円筒部11fを塞ぐことにより、内釜14の熱が円筒部11fを通して下方に逃げるのを防止できる。
断熱材33は、真空断熱材で構成され、内釜収容部32の周囲全体を囲むように構成されている。また、断熱材33は、例えば、ガラス繊維を金属箔で挟み込み、内部を真空引きして構成したものである。このような断熱材33を適用することにより、炊飯器1を軽量化でき、炊飯ユニット10を持ち運ぶ際の運搬性を向上できる。また、断熱材33を設けることにより、炊飯後の熱が外部に逃げにくくなり、保温性能を向上できる。なお、断熱材33に替えて真空容器を適用してもよい。
内蓋12bは、内釜14の内部の蒸気の排出を制限して所定圧力に保つ調圧弁12b2を有している。調圧弁12b2を通過した蒸気は、蒸気通路12b3を通って、蓋体12(外蓋12a)に設けられた蒸気口12b4から炊飯器1の外部に排出される。
操作スイッチ12cは、軸12fを支点としてW方向に回動可能であり、操作スイッチ12cをW1方向に付勢する付勢部材12f1が設けられている。蓋体12を開ける場合には、操作スイッチ12cの上面を押圧することにより、操作スイッチ12cが軸12fを支点としてW2方向に回動することで蓋体12のロックが解除される。また、蓋体12を閉める場合には、蓋体12を本体部11側に向けて押し込むことにより、蓋体12がW1方向に回動して本体部11にロックされる。
また、本体部11の内部には、炊飯ユニット10の位置検出用の磁石16が設けられている。この磁石16は、胴体部31の後端の内壁面に固定されている。
加熱部21には、凸部21aの上面21bの下面(内面)に加熱コイル27が設けられている。この加熱コイル27は、例えば、リッツ線を巻回して平面環状に構成されている。また、加熱コイル27は、コイル保持部28上に載置されている。
温度センサ25は、円柱形状を呈し、軸方向(上下方向)の中間部につば部25aが形成されている。つば部25aと、加熱部21内に形成された受け部21gとの間にコイルばね39が介装され、このコイルばね39の付勢力によって、温度センサ25を上方(上部開口21eから突出させる方向)に付勢している。
制御回路収容部23の内部には、制御回路23cが収容されている。この制御回路23cは、基板に加熱コイル27に電力を供給するインバータ制御回路などを備えて構成されている。また、制御回路23cは、温度センサ25が検出した温度情報や制御プログラムに応じて、加熱コイル27へ供給する電力を制御する。
また、制御回路23cには、炊飯ユニット10側の磁石16の磁気を検出する検出部23dが設けられている。この検出部23dは、例えば、ホール素子で構成され、位置決め凹部11gと凸部21dとが嵌まり合う状態で炊飯ユニット10が加熱ユニット20に載置された場合に磁石16と対向するようになっている。この磁石16と検出部23dとが対向することで、炊飯ユニット10が加熱ユニット20の所定位置に載置されていることが制御回路23cによって検知され、このような状態の場合のみ炊飯器1が作動するようになっている。
加熱ユニット20は、制御回路収容部23内の空間R1と加熱部21内の空間R2とが互いに連通して、冷却風路を構成している。この空間R1と空間R2とにまたがるように冷却ファン40が配置されている。炊飯時に冷却ファン40が作動すると、図9に図示していないが、吸気口から吸気された空気が、白抜き矢印で示す方向に流れることで、制御回路23cおよび加熱コイル27が冷却されるようになっている。冷却後の空気は、加熱ユニット20に設けられた図示しない排気口から外部に排出される。
なお、本実施形態では、制御回路収容部23には、空間R1と連通する孔が形成されていないので、仮に加熱部21や制御回路収容部23に対して上方から水などの液体が降りかかったとしても、制御回路23cに不具合を生じさせることがない。なお、突起部21cの上面開口21eについては、加熱部21の空間内において加熱コイル27側の空間と遮断されている。
炊飯ユニット10を加熱ユニット20に載置すると、加熱部21の凸部21aが本体部11の凹部11bと嵌合することで、炊飯ユニット10が傾くことなく、加熱ユニット20に載置される。また、凹部11bの周囲の支持部11cが凸部21aの周囲の当接面に当接することで、炊飯ユニット10が加熱ユニット20に支持される。このとき、温度センサ25が突起部21cの上面開口21eから突出するように、コイルばね39によって付勢されているので、温度センサ25の先端上面を伝熱板38の下面に密着させることができる。また、伝熱板38は、内釜14に密着するので、温度センサ25によって、内釜14の温度、換言するとご飯の温度を精度よく検出することができる。
また、本体部11の凹部11bの空間と加熱部21の凸部21aとが略円錐台形状に形成されているので、凸部21aを凹部11bに挿入し易くなり、炊飯ユニット10を加熱ユニット20に載置し易くなる。
断熱材33は、内釜14の周囲に円形に配置されている。また、断熱材33の中心は、内釜14の中心に対して後方に偏心して配置されている。すなわち、前端における内釜14と断熱材33との間隔が最も狭く、後端における内釜14と断熱材33との間隔が最も広く、前端から後端に向けて徐々に間隔が広くなっている。このように後ろ側が広くなっているのは、ヒンジ部12dが設けられていることによる。よって、断熱材33を後ろ側の幅に合わせて全体を間隔で配置するよりも、断熱材33を内釜14に対して偏心して配置することで、炊飯ユニット10の外形を小さくすることができ、炊飯器1の小型化を図ることができる。
ところで、本実施形態では、偏心させることで内釜14の前方の隙間が狭くなり、また前端にロック部材12eが配置されているので、断熱材33を単に筒状に巻くだけでは、断熱材33がロック部材12eと干渉して、内釜14の周囲に断熱材33を巻くことができない。そこで、本実施形態では、帯状に形成された断熱材33の両端の対応する角部を予め斜めに切り欠くことで、断熱材33を筒状に曲げて両端を重ねたときに、三角形状の切欠部が形成される。この切欠部をロック部材12eの位置に合わせて巻くことにより、断熱材33を内釜14の周囲にロック部材12eと干渉せずに筒状(リング状)に巻くことができる。
以上説明したように、本実施形態の炊飯器1では、制動機構2がロータリーダンパ50を備えるため、弾性部材60の弾撥力による回動軸56を中心とした蓋体12の開閉運動に制動力を加えることが可能となる。これによれば、蓋体12の開閉速度を調節して重心移動を緩やかにすることにより、蓋体12が開く際の反動を小さく抑えることが可能となる。また、炊飯ユニット10が加熱ユニット20から外れて、炊飯ユニット10が転倒することを防止できる。
また、本実施形態では、ロータリーダンパ50を蓋体12側に設けたことで、蓋体12の回動軸56周り(制動機構2、弾性部材60)を小さいスペースで構成することができるので、制動機構2が炊飯器1の外周面から出っ張ることを防止でき、小型の炊飯器1に適用することが可能になる。
また、本実施形態では、ロータリーダンパ50を含んで構成される制動機構2をヒンジ部12dの左右両側に設けることにより、弾性部材60の弾撥力による回動軸56を中心とした蓋体12の開閉運動に左右均等に制動力を加えることが可能となる。これによれば、蓋体12の開閉の際の重心移動を左右均等にすることにより、蓋体12が開く際の反動を小さく抑えることが可能となる。また、炊飯器1が転倒することを防止できる。
また、本実施形態では、歯車50aの歯数に対するラック歯51aの歯数の比(ギア比)を大きくすることにより、蓋体12の開閉速度を減少させることが可能となる。これによれば、蓋体12の開閉速度を調節して重心移動をより緩やかにすることにより、蓋体12が開く際の反動を小さく抑えることが可能となる。また、炊飯器1が転倒することを防止できる。
また、本実施形態では、ロータリーダンパ50、軸受部55等が蓋体12に備えられていて、ロータリーダンパ50の回転軸と、蓋体12の回動軸56の位置が一致しないため、蓋体12と本体部11とを単独で組み立てる(分解する)ことが可能となる。したがって、作業効率が向上する。
また、本実施形態では、ロータリーダンパ50を固定部材52で上方から押さえた後、ビス53で同一の方向である上方から固定することにより蓋体12に固定できるため、作業効率が向上する。
また、本実施形態では、回動軸56よりも高い位置にラック歯51aを有し、ラック部51の前方内釜14側は上下方向に延びる平坦部51cを有している。したがって、蓋体12を開いたときに、ごはん等がラック歯51aに噛み込むのを防止できて、蓋体12の回動動作を円滑にできる(図2参照)。また、ラック部51の炊飯ユニット10の外周側は上下方向に延びる平坦部51dを有しているため、蓋体12を閉じた状態において異物が外部からラック歯51aに侵入することを防止できるため、蓋体12の回動動作を円滑にできる(図6参照)。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。なお、本実施形態では、制動機構2がロータリーダンパ50、ラック部51等を備える場合を例に挙げて説明したが、ロータリーダンパ50、ラック部51等に変えて、蓋体12に(ロータリーではない)ダンパを備え、回転機構を介して本体部11に連結する構成であってもよい。
また、本実施形態では、ヒンジ部12dの両側に備えるラック部51は同一とする構成を例に挙げて説明したが、必要な制動力を得ることができる構成であれば、ヒンジ部12dの左右でラック歯の歯数が異なる構成でもよい。ヒンジ部12dの左右で異なる構成とすることにより、蓋体12の開閉時の制動力を調節してもよい。
また、本実施形態では、制動機構2のロータリーダンパ50の歯車50aは同一とする構成を例に挙げて説明したが、必要な制動力を得ることができる構成であれば、歯車50aが異なる構成でもよい。歯車50aの直径または歯数が異なる構成とすることにより、蓋体12の開閉時の制動力を調節してもよい。
また、本実施形態では、ヒンジ部12dの両側に制動機構2(ロータリーダンパ50、ラック部51等)を備える場合を例に挙げて説明したが、ヒンジ部12dの両側に配置する制動機構2のロータリーダンパ50は左右でトルク等性能が異なる構成であってもよい。ロータリーダンパ50の性能を左右で変えることにより、制動時間または制動力を調節してもよい。
また、ヒンジ部12dの両側に制動機構2(ロータリーダンパ50、ラック部51等)を備える場合を例に挙げて説明したが、必要な制動力を得ることができる構成であれば、ロータリーダンパ50、ラック部51等蓋体12の制動に関係する部材を片側のみに備える構成であってもよい。
また、ラック部51とヒンジ部12dとが別体である構成を例に挙げて説明したが、ヒンジ部の両端にラック歯を設けて、ラック部51を省略してもよい。
また、軸受部55が回動軸56の軸受機能を有する場合を例に挙げて説明したが、軸受部55の背面部を蓋体12の外周面近くに延長することにより、軸受部55が蓋体12の必要以上の回動を制止する機能を備えてもよい。
以上で説明した本実施形態では、炊飯ユニット10と加熱ユニット20に分かれる炊飯器1を例に説明したが、これらが一体となった炊飯器に図6等で示した制動機構を備えたヒンジ部を用いても良い。このような一体型の炊飯器であっても、本実施例と同様に、ヒンジ部を小型化でき、蓋体の薄型、軽量化を実現でき、また、デザインの自由度を高めることができる。