JP6191560B2 - 炭素質燃料のガス化方法 - Google Patents
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Description
特許文献1の石炭ガス化設備では、このような構成を有することにより、N2で石炭を搬送する場合と比較して、生成ガスの燃焼熱を高めている。
特許文献1に記載の設備は、ガス化炉で生成した生成ガスの一部を抜出して酸素で燃焼させてCO2とH2Oに変換し、このCO2とH2O混合ガスを石炭の搬送ガスとする。
そのため、搬送ガスとしてガス化炉内に供給されるCO2とH2Oの比率を任意に制御することができない。その結果、下記の式(1)および式(2)の各反応量を制御して、必要とされる燃焼熱の生成ガスを任意に製造することができない。
C+CO2 → 2CO ・・・ 式(1)
C+H2O → CO+H2 ・・・式(2)
そのため、必要とされる燃焼熱の生成ガスを任意に製造することができない問題点を有することは、特許文献1に記載の設備と同じである。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
また、前記炭酸ガスの少なくとも一部を、前記炭素質燃料の搬送ガスとするのが好ましい。
また、前記炭素質燃料が石炭、重質油、廃棄物、バイオマスから選ばれる1種以上であるのが好ましい。
また、前記ガス化炉に供給する炭酸ガスの量が、[CO2/(CO2+O2)]で表す炭酸ガス濃度で3%以上であるのが好ましい。
さらに、必要とする生成ガスの燃焼熱に応じて、前記炭酸ガスの供給量および前記酸化剤の窒素濃度を調節するのが好ましい。
本発明の炭素質燃料のガス化方法は、石炭などの炭素質燃料をガス化するものであって、図1に示すように、ガス化炉10に、空気、酸素富化空気、酸素から選ばれる酸化剤に加え、炭酸ガス(CO2)を流量調節して供給することによって、必要とされる燃焼熱の生成ガスを、任意かつ広範囲に製造することができる。
すなわち、本発明では、炭素質燃料から生成した炭素分と炭酸ガスとが、式(1)
C+CO2 → 2CO ・・・ 式(1)
の反応によってCOを生成することによって増熱する。その結果、後に実施例でも示すが、炭酸ガス供給量あるいはさらに酸化剤中の窒素濃度を調節することによって、広範囲の燃焼熱に応じて、生成ガスの燃焼熱を制御できる。
本発明法において、ガス化炉10には、制約はない。従って、ガス化炉10は、固定床式、流動床式、噴流床式などの各種形式のガス化炉を用いることができる。
また、炭素質燃料の供給方式も、乾式供給および湿式供給に関わらず、本発明で用いることができる。
酸素富化空気については、酸素濃度に制約はない。後の実施例でも示すが、本発明法では、炭酸ガスの供給量と酸化剤中の窒素濃度との組み合わせによって、広範囲の燃焼熱に応じて、必要とする燃焼熱の生成ガスを製造できる。従って、酸素富化空気の酸素濃度は、必要とする生成ガスの燃焼熱、生成ガスの用途、ガス化炉10の種類などに応じて、適宜、選択すればよい。
あるいは、燃焼排ガスや製鉄副生ガスなどからPSA法などの任意の分離手法でCO2を分離した炭酸ガスを用いてもよい。なお、炭素質燃料のガス化炉の下流には、通常、炭素質燃料に含有される硫黄分などの不純物に由来するH2S、COS、NO2などの吸収除去装置が付帯する。そのため、炭酸ガス中に硫黄分などの不純物が混入していても問題になることはない。
ガス化炉10への炭酸ガスの供給位置についても、特に制約は無い。従って、炭酸ガスは、酸化剤による炭素質燃料の部分酸化が主に進行する部分酸化領域に供給しても良く、部分酸化が進行した後の改質反応が主に進行する改質反応領域に供給しても良く、部分酸化領域と改質反応領域との両方に供給しても良い。
炭酸ガスの少なくとも一部を、炭素質燃料の搬送ガスとして供給することにより、搬送ガス中の窒素ガスを低減でき、その結果、生成ガスの窒素量が低減し、生成ガスの燃焼熱が増大する。
この際においては、搬送ガスとして供給する炭酸ガスの割合は、ガス化炉10の種類や構成、炭素質燃料の供給量などに応じて、適宜、設定すればよい。また、供給する炭酸ガスの全量を、炭素質燃料の搬送ガスとして使用してもよい。
炭酸ガスの供給量を、[CO2/(CO2+O2)]で表すCO2濃度で3mol%以上となる量とすることにより、炭酸ガスを供給することの効果を十分に得て、炭酸ガスを供給しない場合に比較して、良好な生成ガスの燃焼熱向上効果を得ることができる。
この点を考慮すると、炭酸ガスの供給量は、[CO2/(CO2+O2)]で表すCO2濃度で5mol%以上となる量であるのがより好ましく、7mol%以上となる量であるのがさらに好ましい。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、炭酸ガスの供給量が、[CO2/(CO2+O2)]で表すCO2濃度で60mol%を超える量になると、ガス化炉10における熱収支が悪化して、外部燃料を燃焼してガス化炉10を加熱しなければならなくなる可能性が生じる。
この点を考慮すると、炭酸ガスの供給量は、[CO2/(CO2+O2)]で表すCO2濃度で60mol%以下となる量にするのが好ましい。
より具体的には、石炭としては褐炭、瀝青炭、無煙炭、原料炭などを挙げることができる。重質油としては重油、タール、アスファルトの他、オイルサンドやオイルシェールから回収した重質油などを挙げることができる。廃棄物としては廃プラスチック、廃タイヤ、廃木材などを挙げることができる。バイオマスとしては畜産廃棄物、食品廃材、黒液、下水汚泥、間伐材、植物廃材などを挙げることができる。
炭素質燃料の供給量は、ガス化炉10の大きさや種類、酸化剤の酸素含有量や供給量などに応じて、適宜、選択すればよい。
図3に示す例は、本発明法を、ガス化炉12aをジャケット12b内での燃焼で加熱する外熱式ガス化炉12に利用した例である。
ここで、本例では、ガス化炉12aで生成したチャーを含む生成ガスを、サイクロン14によって精製して、チャーを除去した精製ガスにする。また、生成ガスから除去したチャーを、外熱式ガス化炉12のジャケット12bに供給して、空気で燃焼して、ガス化炉12を加熱する。
なお、ジャケット12bから排出される燃焼排ガスから、PSA法などの任意の分離手法で分離した炭酸ガスを、ガス化炉12に供給してもよいのは、前述のとおりである。
なお、本発明は、以下の実施例に限定されないのは、もちろんである。
乾式供給によって、石炭を1〜3ton/h供給できる噴流床式ガス化試験炉を準備した。なお、本設備は小型の試験炉のため、生成ガスは分析のためのサンプリング以外は、既設の商業ガス化炉のガス精製設備で処理した。
ガス化試験炉には、酸化剤として、空気、種々の酸素濃度の酸素富化空気、あるいは、酸素が供給できるようになっている。また、それとは別に、液化炭酸ガスを気化して炭酸ガスがガス化炉に供給できるようになっている。
本例では石炭供給速度を1.25ton/hとし、空気(O2濃度:21mol%)を酸化剤として用いた。
以上の条件の下、炭酸ガスの供給量を、[CO2/(CO2+O2)]で表すCO2濃度が0〜62.6mol%となる量に変更して、石炭のガス化実験を行った。なお、炭酸ガスは、石炭の搬送ガスには使用しなかった。
生成ガスの組成、および、生成ガスの低位燃焼熱(LHV(Lower Heating Value))を、下記の表1に示す。
石炭供給量を1.74ton/hとし、O2濃度が40mol%の酸素富化空気を酸化剤として用い、炭酸ガスの供給量を[CO2/(CO2+O2)]で表すCO2濃度が0〜66.4mol%となる量に変更した以外は、実施例1と同様にして、石炭のガス化実験を行った。
生成ガスの組成、および、生成ガスのLHVを、下記の表2に示す。
石炭供給量を2.03ton/hとし、O2濃度が60mol%の酸素富化空気を酸化剤として用い、炭酸ガスの供給量を[CO2/(CO2+O2)]で表すCO2濃度が0〜65.8mol%となる量に変更した以外は、実施例1と同様にして、石炭のガス化実験を行った。
生成ガスの組成、および、生成ガスのLHVを、下記の表3に示す。
石炭供給量を2.21ton/hとし、O2濃度が80mol%の酸素富化空気を酸化剤として用い、炭酸ガスの供給量を[CO2/(CO2+O2)]で表すCO2濃度が0〜66.3mol%となる量に変更した以外は、実施例1と同様にして、石炭のガス化実験を行った。
生成ガスの組成、および、生成ガスのLHVを、下記の表4に示す。
石炭供給量を2.34ton/hとし、酸素(O2濃度:100mol%)を酸化剤として用い、炭酸ガスの供給量を[CO2/(CO2+O2)]で表すCO2濃度が0〜66.5mol%となる量に変更し、さらに、炭酸ガスの全量を石炭の搬送ガスとして用いた以外は、実施例1と同様にして、石炭のガス化実験を行った。
生成ガスの組成、および、生成ガスのLHVを、下記の表5に示す。
これに対し、本発明では、炭酸ガスを供給することによって、生成ガスの燃焼熱が1170〜2860kcal/Nm3と、広範囲、かつ、高燃焼熱範囲まで制御できることが明らかである。しかも、酸化剤の酸素含有量が同じであれば、炭酸ガスのCO2濃度の増加に応じて生成ガスのLHVは漸増し、同じく、炭酸ガスのCO2濃度が同じであれば、酸化剤の酸素含有量の増加に応じて生成ガスのLHVは漸増するため、生成ガスの燃焼熱の制御性にも優れる。
すなわち、本発明によれば、酸化剤中の窒素濃度と炭酸ガスの供給量とを調節することによって、生成ガスの燃焼熱を良好な制御性で制御できるので、鉄鋼業や発電業などの用途に応じて、必要とされる燃焼熱の生成ガスを任意に製造できる。
12 外熱式ガス化炉
12b ジャケット
Claims (4)
- 炭素質燃料をガス化するにあたり、ガス化炉に、炭素質燃料と、空気および酸素富化空気から選ばれる酸化剤と、流量を調節した炭酸ガスとを、前記ガス化炉に供給する炭酸ガスの量が[CO2/(CO2+O2)]×100で表す炭酸ガス濃度で3〜60mol%となるように、必要とする生成ガスの燃焼熱に応じて、前記炭酸ガスの供給量および前記酸化剤の窒素濃度を調節して、供給することを特徴とする炭素質燃料のガス化方法。
- 前記ガス化炉で生成したチャーを、外熱式ガス化炉の燃焼炉で燃焼させガス化熱源とする請求項1に記載の炭素質燃料のガス化方法。
- 前記炭酸ガスの少なくとも一部を、前記炭素質燃料の搬送ガスとする請求項1または2に記載の炭素質燃料のガス化方法。
- 前記炭素質燃料が石炭、重質油、廃棄物、バイオマスから選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれか記載の炭素質燃料のガス化方法。
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