JP7466412B2 - セメント製造方法及びセメント製造システム - Google Patents

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Description

本発明は、セメント製造方法及びセメント製造システムに関し、特に、廃棄物を利用したセメント製造方法及びセメント製造システムに関する。
世界的な気候変動への対策として二酸化炭素の排出抑制や、排出された二酸化炭素の回収に関する技術開発が進んでいる。例えば、排ガス中の二酸化炭素をアミン系二酸化炭素吸収液で選択的に回収する二酸化炭素回収技術や、廃棄物を一酸化炭素やメタン等の可燃性ガスに変換して石炭などの化石燃料の使用を抑制する廃棄物ガス化技術などがある。
更に、セメントの製造方法に関しても、例えば、特許文献1に記載されるように、炭素含有熱エネルギー及びアンモニアを焼成炉に供給する工程を含むセメントクリンカの製造方法などが開発されている。
特開2019-137579号公報
セメント産業は、多種多量の廃棄物を原燃料代替としてリサイクル活用することが期待されている。例えば特許文献1には、炭素含有熱エネルギーとして、廃プラスチック、繊維くず、紙くず、廃油、木くず、ヤシ殻、有機汚泥、食物残渣、動物の糞尿等の使用が挙げられている。特許文献1では、これらの廃棄物は、直接的にセメントキルン内で燃焼されることが想定されている。
しかし、石炭や重油等のセメント産業で通常に用いられる化石燃料に比べて発熱量の小さいアンモニアだけではセメントクリンカの焼成に充分な熱量を与えることができない。このため、アンモニアを使用する際には化石燃料との併用が前提となる。そして、そのような発熱量の小さい燃料を主燃料とする燃料構成においては、熱量の変動要因となってしまう燃料代替廃棄物を十分に活用することは困難となる。
セメント製造プロセスでは、多量の二酸化炭素が発生する。地球温暖化防止の観点から、発生した二酸化炭素をできるだけ回収して大気に放出しないようにするため、セメント製造設備に二酸化炭素回収設備を併設することが検討されている。しかし、従来のセメント製造設備から排出される排ガスの場合、含有される二酸化炭素の濃度が低く、また風量が大きいため、回収の効率が悪いという問題点がある。このために、二酸化炭素回収設備を多数設置することも考えられるが、コストや設置面積の点で困難な場合がある。
本発明は、廃棄物のリサイクル活用をしながら、二酸化炭素の回収を容易化することのできる、セメント製造方法及びセメント製造システムを提供することを目的とする。
本発明に係るセメント製造方法は、
セメント原料を焼成してセメントクリンカを生成する工程(a)と、
前記工程(a)で得られる排ガスに含まれる二酸化炭素を回収する工程(b)と、
少なくとも炭素を含有する第一廃棄物と前記工程(b)で回収された二酸化炭素とを混合して加熱して、前記第一廃棄物から可燃性ガスを生成する工程(c)と、
大気から酸素を分離して酸素ガスを得る工程(d)とを有し、
前記工程(a)は、前記工程(c)で得られた前記可燃性ガス、前記工程(d)で得られた前記酸素ガス、及び当該工程(a)で得られた前記排ガスを使用して前記セメント原料を焼成することを特徴とする。
上記方法によれば、排ガスから回収された二酸化炭素を、廃棄物(第一廃棄物)由来の可燃性ガスの生成に有効に活用できる。そして、かかる可燃性ガスをセメントの焼成の際に燃料として利用することで、燃料に占める化石燃料の割合を低減できる。更に、従来は燃えづらく受け入れが困難であった可燃性廃棄物(第一廃棄物)についても例えば廃棄物ガス化設備において加熱することで、発生したガス及び可燃性の残渣を燃料化することが可能となり、セメントの製造において廃棄物の高度なリサイクル活用を実現できる。
更に、セメント原料の焼成に利用されない残部の排ガスは、二酸化炭素の濃度が高められたものである。このため、この排ガスを回収することで、二酸化炭素の貯蔵及び利用に効果的に適用できる。
本発明に係る製造方法によれば、セメント製造設備から排出される、風量の大きな排ガスは、従来よりも二酸化炭素濃度が著しく高いため、この排ガスをそのまま貯蔵及び利用することで、効率的に二酸化炭素の貯蔵及び利用に寄与することができる。
また、上記方法によれば、セメント原料を焼成する工程(a)で得られた排ガスの一部が、工程(a)に戻されて再利用される。これにより、工程(c)で得られた可燃性ガス、及び工程(d)で得られた酸素ガスの利用だけではセメント原料の焼成に必要な風量の確保が困難な場合にも対応が可能である。なお、工程(a)において再利用される当該工程(a)で得られた排ガスとは、工程(b)に送られない排ガスとしても構わないし、工程(b)の実行後に工程(c)に送られる二酸化炭素ガス以外のガスとしても構わない。
可燃性ガスを生成する第一廃棄物としては、炭素を含有する廃棄物であればよく、より詳細には有機物系の廃棄物である。具体的には、第一廃棄物としては、自動車シュレッダーダスト(ASR:automobile shredder residue)、廃棄される紙、家畜排せつ物、食品廃棄物、建設発生木材、製材工場残材、パルプ工場廃液、下水汚泥、し尿汚泥、稲わら、麦わら、もみ殻、間伐材、被害木等のバイオマス、廃プラスチック、廃タイヤなどが挙げられる。
前記工程(c)の実行時には、酸化剤が吹き込まれるものとしても構わない。第一廃棄物から可燃性ガスを生成する反応(ガス化反応)は吸熱反応であるため、当該反応が連続した場合にはガス化炉内部の温度が低下して廃棄物のガス化反応が継続し難くなる場合がある。これに対し、上記のように酸化剤を吹き込むことで、得られた可燃性ガスの一部が燃焼され、ガス化炉の温度を高温に保持することができる。酸化剤としては、例えば、空気、酸素富化ガス、純酸素を利用できる。
前記セメント製造方法は、前記工程(a)の工程の実行時に発生した廃熱を回収する工程(e)を有し、
前記工程(c)は、前記工程(e)で回収された前記廃熱を利用して前記可燃性ガスを生成するものとしても構わない。
これにより、前段の処理で生じた廃熱を有効に活用しながら、第一廃棄物から可燃性ガスを生成できる。
また、前記セメント製造方法は、化石燃料又は燃料代替の第二廃棄物の少なくとも一方を燃焼する工程(f1)と、前記工程(f1)の実行時に得られた燃焼熱を回収する工程(f2)を有し、
前記工程(c)は、前記工程(f2)で回収された前記燃焼熱を利用して前記可燃性ガスを生成するものとしても構わない。
化石燃料としては、例えば石炭や重油が利用可能である。また、燃料代替の第二廃棄物としては、例えば廃プラスチック、廃タイヤ、木質バイオマス等が挙げられる。
仮に、工程(c)において、工程(f)と同様に、化石燃料や廃棄物を燃焼させた場合には、燃焼の際に酸素が利用されることから、可燃性ガスではなく熱ガスが得られやすくなる。この熱ガスをセメント原料の焼成工程(a)に利用しようとすると、ガスの供給中に放散熱に起因した熱ロスが発生する。
これに対し、上記の方法によれば、燃焼ガスではなく燃焼熱が工程(c)に利用されるため、工程(c)では熱ガスではなく可燃性ガスが生成されやすくなる。可燃性ガスは、熱ガスよりも低温で通流できるため、セメント原料の焼成工程(a)が実行される箇所(例えばキルン)に到達するまでの間のエネルギーロスが抑制される。
前記セメント製造方法において、前記工程(b)は、前記工程(f1)で得られる排ガスに含まれる二酸化炭素の回収も行うものとしても構わない。
上記方法によれば、化石燃料等の燃焼工程(f1)で生じる二酸化炭素を回収して、廃棄物のガス化に効率的に利用すると共に、排ガス中の二酸化炭素濃度を更に高めることができる。
前記セメント製造方法は、前記工程(c)の実行時に得られた前記第一廃棄物の処理残渣を回収する工程(g)を有し、
前記工程(a)は、前記工程(g)で得られた前記処理残渣を、前記セメント原料の一部又は焼成用の燃料の一部として利用するものとしても構わない。
例えば、工程(c)で得られた第一廃棄物の処理残渣を回収し、適切な大きさに小径化した後、セメント原料又は焼成用の燃料として活用することができる。これにより、可燃性ガスを生成した後の第一廃棄物の残渣についても、セメント製造用の原料又は燃料として有効に活用できる。
なお、前記工程(f1)において、前記工程(g)で得られた前記処理残渣を焼成用の燃料の一部として利用しても構わない。
前記工程(c)は、前記第一廃棄物を350℃~1200℃で加熱する工程としても構わない。
350℃以上の温度条件とすることで、工程(c)において第一廃棄物の可燃成分を効率的に揮発させることができる。また、1200℃以下の温度条件とすることで、第一廃棄物の溶融が抑制された状態となり、処理残渣が処理炉内に強固に固結することがない。これにより、第一廃棄物の処理残渣を回収した後、セメント原料や燃料に利用する場合において、粉砕や分級といった前処理を軽減又は省略することができる。
また、本発明に係るセメント製造システムは、
セメント原料を焼成してセメントクリンカを生成するセメント製造設備と、
前記セメント製造設備からの排ガスに含まれる二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備と、
少なくとも炭素を含有する第一廃棄物と前記二酸化炭素回収設備で回収された二酸化炭素とを混合して加熱することで、前記第一廃棄物から可燃性ガスを生成する廃棄物ガス化設備と、
大気から酸素を分離する大気分離設備とを備え、
前記セメント製造設備は、前記廃棄物ガス化設備で生成された前記可燃性ガス、前記大気分離設備で分離された酸素ガス、及び、当該セメント製造設備からの前記排ガスを使用して前記セメントクリンカを生成することを特徴とする。
上記システムによれば、既存のセメント製造設備に、二酸化炭素回収設備、廃棄物ガス化設備、及び大気分離設備を付設することによって、当該セメント製造設備からの排ガス中の二酸化炭素濃度を高めて二酸化炭素の回収を容易にすると共に、多種多量の廃棄物を有効活用できる。
前記二酸化炭素回収設備は、アミン系二酸化炭素吸収液を備えるものとしても構わない。
これにより、セメント製造設備から回収された二酸化炭素を高純度なガスとして利用することが可能となり、廃棄物ガス化設備において高効率で可燃性ガスを生成できる。
本発明によれば、廃棄物のリサイクル活用をしながら、二酸化炭素の回収を容易化できる、セメント製造方法が実現される。
本発明に係るセメント製造システムの構成例を模式的に示す機能ブロック図である。 本発明に係るセメント製造方法の処理手順の一部を模式的に示すフローチャートである。 二酸化炭素回収設備の構成例を模式的に示すブロック図である。 熱供給設備の構成例を模式的に示すブロック図である。 廃棄物ガス化設備の構成例を模式的に示すブロック図である。 比較例としての従来のセメント製造システムを模式的に示すブロック図である。
本発明に係るセメント製造方法及びセメント製造システムでは、セメントの製造の際に廃棄物が利用される。この廃棄物は炭素を含有しており、後述する可燃性ガス生成工程S7において、可燃性ガスを生成するために利用される。以下では、可燃性ガスを生成するために利用される廃棄物を「第一廃棄物」と称する。
また、本発明に係るセメント製造方法及びセメント製造システムでは、燃焼熱を得るために廃棄物を利用することも許容される。以下では、このような廃棄物を、可燃性ガス生成に利用される第一廃棄物と区別するために「第二廃棄物」と称する。
以下、本発明についてより具体的に図面を参照しつつ説明される。ただし、本発明は、これら図面と共に説明される態様に限定されるものではない。
図1は、本発明に係るセメント製造システムの構成例を模式的に示す機能ブロック図である。図1において、実線の矢印は燃料や廃棄物などの固体の流れを示しており、破線の矢印は二酸化炭素等の気体の流れを示しており、一点鎖線は熱の流れを示している。
また、図2は、本発明に係るセメント製造システムで実行される処理手順の一部、すなわち本発明に係るセメント製造方法における処理手順の一部を、模式的に示すフローチャートである。すなわち、図2においても、図1と同様に、実線の矢印は燃料や廃棄物などの固体の流れを示しており、破線の矢印は二酸化炭素等の気体の流れを示しており、一点鎖線は熱の流れを示している。
図1に示すセメント製造システム1は、セメント製造設備10、二酸化炭素回収設備20、廃棄物ガス化設備30、熱供給設備40、処理残渣回収設備50、及び大気分離設備60を備える。
また、図2に示す本発明に係るセメント製造方法は、セメント原料・燃料供給工程S1、酸素分離工程S2、セメント原料焼成工程S3、クリンカ回収工程S4、二酸化炭素回収工程S5、燃焼熱生成工程S6、可燃性ガス生成工程S7、及び処理残渣回収工程S8を含む。
以下、図2に示す各工程の処理内容について、適宜図1を参照しながら説明する。
(セメント原料・燃料供給工程S1)
この工程S1は、天然の石灰石や粘土といったセメント原料B1、微粉炭などのセメント燃料A1の他、後述する燃焼熱生成工程S6で得られた後の燃焼灰R40や、処理残渣回収工程S8で回収された処理残渣R30を、セメント製造設備10に供給する工程である。燃焼灰R40や処理残渣R30は、セメント原料B1又はセメント燃料A1として利用できる。
(酸素分離工程S2)
この工程S2は、大気から酸素を分離する工程であり、工程(d)に対応する。酸素分離工程S2は、大気分離設備60によって行われる。
大気分離設備60が大気から酸素を分離する方式としては、圧力変動吸着方式(PSA方式)、深冷分離方式など種々の方式を利用できるが、特に深冷分離方式が好ましい。なお、ここでいう「PSA方式」とは広義の意味で用いられており、操作圧力に応じて分類される、狭義のPSA方式、VSA方式、及びPVSA方式、並びに吸着材にペロブスカイト型酸化物を利用して高温で動作させるHT-PSA方式を包含する。
大気分離設備60は、供給される大気GAから酸素を高濃度に含むガス(酸素ガスG60)を抽出し、セメント製造設備10に供給する。より詳細には、この酸素ガスG60は、セメント製造設備10が備えるキルンバーナや仮焼炉バーナに供給される。セメント製造設備10では、この酸素ガスG60を用いて後述するセメント原料焼成工程S3が実行される。酸素ガスG60の酸素濃度はできるだけ高い方が好ましい。
なお、大気分離設備60において、酸素ガスG60が抽出された残部のガスG61は、系外に排出される。このガスG61は主として窒素ガスである。
(セメント原料焼成工程S3)
この工程S3は、セメント燃料A1等の主燃料や必要に応じて補助燃料を用いてセメント原料B1を焼成し、セメントクリンカC1を生成する工程であり、工程(a)に対応する。セメント原料焼成工程S3は、セメント製造設備10によって行われる。
セメント製造設備10は、例えば、キルンバーナが搭載されたキルン、仮焼炉、及びプレヒータを含む。セメント燃料A1は、キルンバーナや仮焼炉バーナに供給される。セメント原料B1は、プレヒータ及び仮焼炉を介して予熱された状態でキルンに供給され、キルン内で焼成される。
セメント製造設備10には、後述するように廃棄物ガス化設備30から排出された可燃性ガスG30が送り込まれる。この可燃性ガスG30は、キルンバーナや仮焼炉バーナに供給され、セメント燃料A1と同様に主燃料として利用される。
更に、セメント製造設備10は、大気分離設備60から排出された酸素ガスG60が送り込まれる。この酸素ガスG60は、キルンバーナや仮焼炉バーナに供給され、セメント燃料A1等の主燃料の燃焼用ガスとして利用される。
セメント原料焼成工程S3において、補助燃料として石炭や重油などの化石燃料を使用しても構わない。この際、可燃性ガスG30と補助燃料の使用割合は、可燃性ガスG30と補助燃料が供給する合計供給熱量100%において、可燃性ガスG30からの供給熱量が50%を超えるようにするのが好適である。
なお、セメント原料B1を焼成して基準性能を満たす良質なセメントクリンカC1を得るためには、キルンに流入されるガスの全風量及びガス中の酸素濃度を所定の条件に保つ必要がある。キルンにおけるセメント原料B1の焼成処理において、可燃性ガスG30と酸素ガスG60を利用するだけでは、全風量が不足する場合がある。このため、セメント製造システム1では、セメント製造設備10からの排ガス(キルン排ガス)G10の一部を、セメント製造システム1に戻している。図1に示すセメント製造システム1では、後述する二酸化炭素回収工程S5において排ガスG10から二酸化炭素ガスG20が分離された後の一部のオフガスG21が、戻りガスとしてセメント製造設備10に戻されている。このオフガスG21(以下、「戻りガスG21」と記載する場合もある。)は、クリンカクーラ側からキルン内に導入するものとして構わない。
なお、二酸化炭素ガスG20が分離された後の一部のオフガスG21ではなく、二酸化炭素回収工程S5に送られる前の排ガス(キルン排ガス)G10の一部を、戻りガスとしてセメント製造設備10に戻すものとしても構わないし、両者を戻りガスとして利用しても構わない。
(クリンカ回収工程S4)
この工程S4は、セメント原料焼成工程S3においてセメント原料B1がセメント燃料A1によって焼成されて得られたセメントクリンカC1を回収する工程である。より詳細には、この工程S4は、キルンで焼成されることで得られたセメントクリンカC1が、セメント製造設備10に付設されたクリンカクーラで冷却された後、クリンカサイロまで搬送される工程に対応する。
なお、この工程S4で得られたセメントクリンカC1は、その後、石こうや混合材を添加した後、粉砕する仕上げ工程へと送られる。仕上げ工程によって、粉末状のセメントが得られる。
(二酸化炭素回収工程S5)
この工程S5は、セメント原料焼成工程S3で得られる排ガスG10に含まれる二酸化炭素を回収する工程であり、工程(b)に対応する。二酸化炭素回収工程S5は、二酸化炭素回収設備20によって行われる。
図3は、二酸化炭素回収設備20の構成例を模式的に示すブロック図である。図3に示す二酸化炭素回収設備20は、冷却塔21、吸収塔22、及び再生塔23を含んでなり、セメント製造設備10からの排ガスG10(以下、「キルン排ガスG10」と称することがある。)、及び後述する熱供給設備40からの排ガスG40(以下、「ボイラ排ガスG40」と称することがある。)に含まれる二酸化炭素を分離・回収する設備である。すなわち、二酸化炭素回収設備20によって、排ガス(G10,G40)から、高濃度に二酸化炭素を含むガス(二酸化炭素ガスG20)と、残部ガス(オフガスG21,G22)とに分離される。二酸化炭素ガスG20は、後述する廃棄物ガス化設備30に供給される。上述したように、一部のオフガスG21はセメント製造設備10に戻され、残部のオフガスG22は系外に排出される。
冷却塔21は、供給される排ガス(G10,G40)を冷却する設備である。冷却塔21は、後段の吸収塔22で二酸化炭素吸収液(リーン液)22aに排ガス(G10,G40)中の二酸化炭素を吸収しやすくするために、事前に排ガス(G10,G40)の温度を低下させる目的で設置される。冷却塔21によって低下された排ガス(G10,G40)の温度は、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、特に好ましくは40℃以下である。排ガス(G10,G40)の温度が70℃よりも高いと、二酸化炭素吸収液(リーン液)22aによる二酸化炭素の吸収が生じ難くなる。
吸収塔22は、冷却塔21によって冷却された排ガス(G10,G40)に二酸化炭素吸収液(リーン液)22aを接触させて、排ガス(G10,G40)に含まれる二酸化炭素をリーン液22aに吸収させる設備である。二酸化炭素が吸収された後の二酸化炭素吸収液(リッチ液23a)は、再生塔23に送られる。なお、吸収塔22において二酸化炭素が吸収された後の排ガス(G10,G40)の残部のガス(オフガス)は、上述したように、一部のオフガスG21がセメント製造設備10に戻され、残部のオフガスG22が系外に排出される。
二酸化炭素吸収液(リーン液)22aとしては、アミン化合物の水溶液(アミン系二酸化炭素吸収液)が好適に用いられる。より具体的には、リーン液22aとしては、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジグリコールアミン(DGA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、及び、メチルジエタノールアミン(MDEA)が好ましく、中でも二酸化炭素を効率的に回収する観点からモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが特に好ましい。
再生塔23は、吸収塔22から二酸化炭素を多分に吸収した二酸化炭素吸収液(リッチ液)23aが供給されると共に、リッチ液23aを加熱して二酸化炭素を分離させる設備である。リッチ液23aから二酸化炭素が分離された後の二酸化炭素吸収液は、リーン液22aとして再生されて吸収塔22に戻される。吸収塔22と再生塔23の間で、二酸化炭素吸収液(22a,23a)を循環させるために、必要に応じてポンプ25が設けられる。
図3に示す例では、再生塔23がリボイラ26を備えている。リボイラ26は、リッチ液23aを加熱して、溶解している二酸化炭素を放散させるために用いられる。再生塔23における二酸化炭素吸収液(リッチ液)23aの加熱温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、特に好ましくは80℃以上である。加熱温度が60℃よりも低いと、二酸化炭素吸収液(リッチ液)23aからの二酸化炭素の放散が生じ難くなる。
リボイラ26としては、電気ヒータ等の通常の加熱方法が採用できる。また、他の例として、排ガス(G10,G40)の顕熱を利用しても構わない。
再生塔23において、リッチ液23aから分離された二酸化炭素ガスG20は、後述する廃棄物ガス化設備30に送られる。また、二酸化炭素が分離された後の二酸化炭素吸収液(リーン液)22aは、再び吸収塔22に送られる。
再生塔23から吸収塔22に送られるリーン液22aは、上述したように再生塔23で加熱された後の状態であるため高温である。このため、再生塔23から吸収塔22に送られるリーン液22aと、吸収塔22から再生塔23に送られるリッチ液23aとは、熱交換器27を介して熱交換されることで、リーン液22aは高温から低温に変化し、リッチ液23aは低温から高温に変化する。
なお、二酸化炭素回収の妨害成分であるSOxやNOx、更には粒子状物質を事前に除去するために、二酸化炭素回収設備20は、冷却塔21の上流に水スクラバー装置を備えても構わない。水スクラバー装置によって排ガス(G10,G40)の脱硫、脱硝、除塵がなされると同時に、温度を低下することができる。
(燃焼熱生成工程S6)
この工程S6は、化石燃料A2や第二廃棄物W2を燃焼して熱(以下、「熱H40」という。)を生成する工程であり、工程(f1)及び工程(f2)に対応する。この工程S6で得られた熱H40は、後述する可燃性ガス生成工程S7で利用される。工程S6は、熱供給設備40によって行われる。
図4は、熱供給設備40の構成例を模式的に示すブロック図である。図4に示す熱供給設備40は、化石燃料A2の貯槽41、第二廃棄物W2の貯槽42、燃焼室43、及びバーナ44を含む。なお、図4の例では、熱供給設備40に、セメント製造設備10から排出されるキルン排ガスG10の導管15が付設されている。
貯槽41に蓄えられる化石燃料A2としては、例えば石炭、重油、灯油、LPガス等が利用される。また、貯槽42に蓄えられる第二廃棄物W2としては、廃プラスチック類、自動車シュレッダーダスト(ASR)、建設発生木材、繊維くず、紙くず、廃油、木くず、ヤシ殻、有機汚泥、食物残渣、動物の糞尿等が挙げられる。更に、後述する可燃性ガス生成工程S7で得られる(処理残渣回収工程S8で回収される)処理残渣R30も、第二廃棄物W2の一部として利用することができる。
燃焼室43にはバーナ44が接続され、バーナ44には、化石燃料A2の貯槽41や第二廃棄物W2の貯槽42が接続されている。なお、化石燃料A2と第二廃棄物W2とを単一のバーナ44で燃焼しても構わないし、燃料ごとに異なるバーナ44が設置されていても構わない。単一のバーナ44で異なる種類の燃料を燃焼させる場合には、当該バーナ44は多重管構造であるのが好ましい。なお、バーナ44には酸素含有ガスの供給装置が付設されているものとしても構わない。
燃焼室43は、バーナ44によって化石燃料A2や第二廃棄物W2を燃焼し、熱H40を生成する。この熱H40は、後述する廃棄物ガス化設備30に供給される。熱H40を廃棄物ガス化設備30に供給する方法は任意である。例えば、化石燃料A2や第二廃棄物W2が燃焼されて高温化した排ガス(ボイラ排ガスG40)の熱が廃棄物ガス化設備30で利用されるよう、廃棄物ガス化設備30の外壁に導管が連絡されているものとしても構わないし、廃棄物ガス化設備30と熱供給設備40とが一体化されていても構わない。なお、廃棄物ガス化設備30に熱H40が供給された後、ボイラ排ガスG40は上述した二酸化炭素回収設備20に送られる。
導管15は、セメント製造設備10から排出されるキルン排ガスG10の顕熱H10を熱供給設備40に送るために備えられている。顕熱H10が熱供給設備40に送られた後、キルン排ガスG10は、上述した二酸化炭素回収設備20に送られる。
燃焼室43で化石燃料A2や第二廃棄物W2が燃焼された後に得られる燃焼灰R40は、セメント製造設備10に搬送されて、セメント原料B1又はセメント燃料A1として利用される。搬送方法としては、後述する処理残渣回収工程S8と同様の方法が採用できる。
なお、図1、図2及び図4の説明では、キルン排ガスG10の顕熱H10を熱供給設備40に供給し、熱供給設備40からこの顕熱H10を含んだ熱H40が廃棄物ガス化設備30に供給されるものとした。しかし、キルン排ガスG10の顕熱H10が、直接、廃棄物ガス化設備30に供給されるものとしても構わない。
(可燃性ガス生成工程S7)
この工程S7は、第一廃棄物W1から可燃性ガスG30を生成する工程であり、工程(c)に対応する。この工程S7で得られた可燃性ガスG30は、上述したようにセメント製造設備10に供給され、セメント原料焼成工程S3において主燃料として利用される。可燃性ガス生成工程S7は、廃棄物ガス化設備30によって行われる。
図5は、廃棄物ガス化設備30の構成例を模式的に示すブロック図である。図5に示す廃棄物ガス化設備30は、第一廃棄物W1の貯槽31、炭化機32,及びガス化炉33を含む。
貯槽31に蓄えられる第一廃棄物W1は、炭素を包含し、廃棄物ガス化設備30によって可燃性ガスG30に変換されるものであればよい。具体的に、第一廃棄物W1としては、廃棄される紙、家畜排せつ物、食品廃棄物、建設発生木材、製材工場残材、パルプ工場廃液、下水汚泥、し尿汚泥、稲わら、麦わら、もみ殻、間伐材、被害木等のバイオマス、廃プラスチック、廃タイヤといった有機物系の廃棄物が主として利用可能である。他の第一廃棄物W1の例としては、ASR、廃タイヤ、カーボンファイバー等の炭素を含有するリサイクル処理困難物や、石炭灰等の通常は原料代替として扱われる廃棄物についても、炭素を含有するものであれば用いることができる。
炭化機32は、炭素を含有する第一廃棄物W1を、熱供給設備40から供給された熱H40を用いて乾燥及び炭化する。炭化機32を用いることで、第一廃棄物W1を、炭素を含有する第一廃棄物W1中の水分及び揮発分を含んだ可燃性ガス(以後、「熱分解ガスG32」と称する。)と、固定炭素や灰分を主成分とした炭化物C32とに分離できる。これにより、後段のガス化炉33において、炭化物C32のガス化を効率的に行うことができる。
炭化機32には、炭素を含有する第一廃棄物W1を、酸素濃度が1体積%以下の雰囲気状態下で350℃~1200℃、より好ましくは350℃~600℃に加熱可能な炭化槽が備えられる。当該炭化槽の外側にはジャケットが囲繞されており、ジャケット内の熱媒体が熱供給設備40からの熱H40で加熱されることで、炭化槽が間接的に加熱される。これにより、炭化槽の温度が制御される。炭化機32で分離された熱分解ガスG32は連続的に後段のガス化炉33に向かって排出され、炭化物C32は炭化機32に残留する。
ガス化炉33は、炭化機32から供給される熱分解ガスG32、炭化物C32、二酸化炭素回収設備20から供給される二酸化炭素ガスG20、及び、必要に応じて酸化剤(空気、酸素富化ガス、純酸素)が供給され、これらをガス化反応させることで、一酸化炭素や水素などの可燃性ガスG30を生成する。なお、酸素富化ガスについては酸素濃度に制約はなく、二酸化炭素ガスG20の供給量に応じて、適宜、最適化すればよい。
より詳細には、ガス化炉33は、ガス改質部33aと高温ガス化部33bとを備える。炭化機32から供給される熱分解ガスG32は、ガス改質部33aに供給される。また、炭化機32で分離された炭化物C32と、二酸化炭素回収設備20から供給される二酸化炭素ガスG20は高温ガス化部33bに供給される。
酸化剤(空気、酸素富化ガス、純酸素)は、高温ガス化部33bにおいて、又は高温ガス化部33bとガス改質部33aの両方において、炭化物C32の燃焼反応を起こさせるために用いられる。ガス化炉33に酸化剤を供給する具体的な手段としては、例えば空気を送り込む装置や配管などが挙げられる。
ガス化炉33の下部にあたる高温ガス化部33bは、炭化機32から供給された炭化物C32を燃料として、導入された酸化剤を用いた燃焼反応を生じさせる。これによって、高温ガス化部33bから1500℃以上の高温ガスが発生される。高温ガス化部33bの上部に位置するガス改質部33aは、この高温ガスを熱源として、炭化機32から供給された熱分解ガスG32中に含まれるタール分を分解する。
ガス改質部33aでは、ガス改質部33aでの温度が低くなる可能性がある場合に、必要に応じて酸化剤(空気、酸素富化ガス、酸素)が用いられる。具体的には、炭化物C32の単位時間あたりの流量に対して、熱分解ガスG32の単位時間あたりの流量が多い場合、ガス改質部33aの温度が低下してタール分解温度である1100℃よりも低い温度となる場合が考えられる。かかる場合には、酸化剤をガス改質部33a内に導入することで、熱分解ガスG32の一部を燃焼させてガス改質部33aの温度を高温に維持できる。
ガス化炉33内では、炭素を含有する第一廃棄物W1と二酸化炭素回収設備20から供給される二酸化炭素ガスG20とが混合された状態で、熱供給設備40から供給された熱H40によって加熱されることで、下記(1)式のブドアール反応が生じる。更に、ガス化炉33では、下記(2)式及び(3)式の高温ガス化部33bにおけるガス化反応や、下記(4)式のガス改質部33aにおけるシフト反応が平衡しながら生じている。
C+ CO2 → 2CO …(1)
C+ O2 → CO2 …(2)
2C+ O2 → 2CO …(3)
CO+ H2O → CO2 + H2 …(4)
炭素を含有する第一廃棄物W1が加熱されると、炭素数が1~4程度の軽質炭化水素ガスなどの揮発成分と炭素成分(タール等)とが発生する。可燃性ガス生成工程S7において、二酸化炭素は炭素成分を上記(1)式の反応によって一酸化炭素(可燃性ガスG30)に変換させるために用いられる。つまり、この可燃性ガス生成工程S7で用いられる二酸化炭素としては、純度の高い気体であることが好ましい。本実施形態のセメント製造システム1によれば、廃棄物ガス化設備30には、二酸化炭素回収設備20からの純度の高い二酸化炭素ガスG20が供給されるため、可燃性ガスG30を高効率で生成できる。かかる観点から、二酸化炭素回収設備20では、高純度の二酸化炭素ガスG20を生成できる、上述した化学吸収法に基づく回収方法を採用するのが好適である。
上記反応の生成物である一酸化炭素や水素などの可燃性ガスG30は、上述したように、セメント製造設備10のキルンバーナ及び仮焼炉バーナに送られて、セメント原料焼成工程S3において主燃料として利用される。
(処理残渣回収工程S8)
この工程S8は、ガス化炉33内における第一廃棄物W1由来の灰分を処理残渣R30として取り出す工程であり、工程(g)に対応する。具体的には、廃棄物ガス化設備30のガス化炉33の底部から処理残渣R30が取り出されると共に、この取り出された処理残渣R30は、セメント原料B1又はセメント燃料A1としてセメント製造設備10に送られる。なお、この処理残渣R30は、熱供給設備40に送られて燃焼熱生成工程S6において燃料の一部として利用されても構わない。
処理残渣回収工程S8は、処理残渣回収設備50によって実行される。処理残渣回収設備50は、チェーンコンベヤ、スチールベルトコンベア、耐熱ベルトコンベア等の汎用の高温加熱物搬送装置が好適に利用できる。また、処理残渣R30を冷却後に搬送する場合には、処理残渣回収設備50としてベルトコンベア等の通常の搬送装置を用いることができる。
なお、処理残渣回収設備50には、処理残渣R30から異物を除去するための磁選機や、処理残渣R30を小径化するための粉砕機や分級機が、前処理装置として付設されていても構わない。この場合、当該前処理装置において加工された後の処理残渣R30が、セメント燃料A1又はセメント原料B1としてセメント製造設備10に送られる。
この処理残渣R30や、燃焼熱生成工程S6で得られた後の燃焼灰R40が、セメント原料B1やセメント燃料A1として利用されることで、従来のセメント製造方法よりも廃棄物(W1,W2)を多量に活用するにも関わらず、セメントクリンカC1の製造後に生じる廃棄物の量を極めて抑制できる。
[別実施形態]
以下、セメント製造システム1の別実施形態について説明する。
〈1〉上述したセメント製造システム1は、熱供給設備40として図4に示したようなバーナ44が付設された燃焼室43を備えていた。しかし、熱供給設備40は、廃棄物ガス化設備30に対して熱H40を供給する設備であればよく、この熱H40は燃焼熱には限定されない。例えば、熱供給設備40は、セメント製造設備10から排出されるキルン排ガスG10の顕熱H10を、廃棄物ガス化設備30に導くための導管で構成されていても構わない。この場合、上記「燃焼熱生成工程S6」は、「熱供給工程S6」と置き換えられる。
〈2〉熱供給設備40が図4に示したようなバーナ44が付設された燃焼室43を備える場合において、燃焼室43で燃焼される燃料としては、化石燃料A2と第二廃棄物W2のいずれか一方のみであっても構わない。
以下、本発明について更に詳細に説明するために具体的なシミュレーション例を示すが、本発明はシミュレーション例の態様に限定されるものではない。
図6は、比較例としての従来のセメント製造システムを模式的に示すブロック図である。従来のセメント製造システム90は、セメント製造設備10への流入ガスG90を用いてセメント原料を焼成してセメントクリンカを生成し、キルン排ガスG91を排出する。これに対し、実施例としてのセメント製造システム1では、上述したように、キルン排ガスG10に含まれる二酸化炭素ガスG20を二酸化炭素回収設備20において回収し、廃棄物ガス化設備30が、この回収された二酸化炭素ガスG20を用いて第一廃棄物W1から可燃性ガスG30を生成してセメント製造設備10側に供給している点が異なっている。
表1は比較例としてのセメント製造システム90におけるガス分析結果であり、表2は実施例としてのセメント製造システム1におけるガス分析結果である。
Figure 0007466412000001
Figure 0007466412000002
表2において「1周目」と記載されているのは、セメント製造設備10(キルン)から排出されたガスが、セメント製造設備10に戻る前の状態を指している。すなわち、表1に示す比較例の状況と、表2における実施例の1周目の状況は同一である。そして、表2において「濃縮後」と記載されているのは、上述したように、二酸化炭素回収設備20においてキルン排ガスG10に含まれる二酸化炭素が回収(濃縮)されてセメント製造設備10側に戻された後の状況を指している。
実施例では、廃棄物ガス化設備30において可燃性ガスG30を生成する際に利用される第一廃棄物W1として、ASRが想定されている。表3に、シミュレーションの演算の際に利用されたASRの物性値を示す。なお、表3における「CO2-C反応率」とは、可燃性ガス生成工程S7における上記(1)式のブドアール反応の反応率に対応する。より端的にいえば、表3において「CO2-C反応率」が40%であるとは二酸化炭素回収設備20から供給される二酸化炭素ガスG20のうちの40%がASRに含まれる炭素と反応して、可燃性ガスG30を生成することを意味する。従って、このシミュレーションでは、二酸化炭素回収設備20から供給される二酸化炭素ガスG20のうちの60%は、可燃性ガスG30の生成には寄与せずに排出されると仮定された。
つまり、このシミュレーションでは、廃棄物ガス化設備30からセメント製造設備10に供給される可燃性ガスG30には、廃棄物ガス化設備30からの一酸化炭素を含む生成ガス(以下、「ASR排ガス」という。)と、反応に寄与しなかった二酸化炭素ガスとが混合されている。
Figure 0007466412000003
比較例では、ASRが利用されていないため、表1(a)ではASR排ガスが0となっている。また実施例では、ASR排ガスは、キルン排ガスG10に含まれる二酸化炭素が回収(濃縮)された後、廃棄物ガス化設備30において、この回収された二酸化炭素ガスG20を用いて第一廃棄物W1としてのASRから生成されるため(可燃性ガスG30)、表2(a)では、「濃縮後」の箇所にのみ数値が表示されている。
上述したように、セメント原料焼成工程S3においてセメント原料B1を焼成してセメントクリンカC1を生成する際には、キルンに流入されるガスの全風量及びガス中の酸素濃度を所定の条件に保つ必要がある。そこで、表2(a)に示すように、実施例の1周目と濃縮後で、セメント製造設備10に供給される流入ガスの風量と酸素濃度がいずれも同一となる条件下でシミュレーション演算が行われた。
表1(b)と表2(b)を対比すると、比較例の排ガスG91に比べて、実施例の濃縮後に得られる排ガスG10は、同一風量の下での二酸化炭素の濃度が大幅に高められていることが分かる。これにより、この排ガスG10を回収することで、排ガスG10に含まれる二酸化炭素を高効率に回収できる。
また、第一廃棄物W1としてのASRを可燃性ガス生成工程S7で利用できるため、廃棄物を効率的に活用することが可能となる。
なお、表2の数値が導出される根拠となる、実施例1の各箇所におけるガス風量及び成分の内訳を、下記表4に示す。
Figure 0007466412000004
表4において、(a)は二酸化炭素回収設備20から排出されるオフガスの風量及び成分分析を示している。表4(a)における「濃縮後」において、オフガス(G21,G22)には二酸化炭素が多く含まれていることが確認される。
表4において、(b)は二酸化炭素回収設備20から廃棄物ガス化設備30に供給される二酸化炭素ガスG20の風量及び成分分析を示している。表4(b)によれば、1周目及び濃縮後の双方において、二酸化炭素ガスG20がほぼ純粋な二酸化炭素であることが確認される。
表4において、(c)は廃棄物ガス化設備30からセメント製造設備10に対して供給される可燃性ガスG30の風量及び成分分析を示している。上述したように、廃棄物ガス化設備30に供給される二酸化炭素ガスG20の全てが反応に利用されるわけではないため、可燃性ガスG30にはCO2の残部が含まれている。
表4において、(d)は二酸化炭素回収設備20からセメント製造設備10に対して戻されるオフガスG21(戻りガス)の風量及び成分分析を示している。このオフガスG21をセメント製造設備10に戻す意図は、上述したように、実施例の1周目と濃縮後とで、セメント製造設備10に供給される流入ガスの風量を同一にする目的である。当然に、表4(a)の濃縮後と、表4(d)の濃縮後では、風量以外は共通の値である。
表4において、(e)は大気分離設備60からセメント製造設備10に対して供給される酸素ガスG60の風量及び成分分析を示している。酸素ガスG60をセメント製造設備10に戻す意図は、上述したように、実施例の1周目と濃縮後とで、セメント製造設備10に供給される流入ガスの酸素濃度を同一にする目的である。仮に、大気をそのままセメント製造設備10に対して導入した場合には、酸素濃度を共通にしようとすると多量の大気が必要となる結果、実施例の1周目と濃縮後とでセメント製造設備10に供給される流入ガスの風量を共通にすることができない。
表4において、(f)はセメント製造設備10に対して流入される、クーラから流入したガスとキルン及び仮焼炉バーナ一次空気の混合ガスを示しており、詳細には、二酸化炭素回収設備20からの戻りガスG21と、大気分離設備60からの酸素ガスG60との混合ガスに対応する。つまり、表4において、(f)は、(d)及び(e)から導かれたものである。
そして、表2(b)に示す排ガスG10は、表4(f)に示される二酸化炭素回収設備20からの戻りガスG21及び大気分離設備60からの酸素ガスG60の混合ガスと、表4(c)に示される可燃性ガスG30とが混合されたガスに対応する。つまり、表2(b)は、表4の(c)及び(f)から導かれたものである。
1 :セメント製造システム
10 :セメント製造設備
15 :導管
20 :二酸化炭素回収設備
21 :冷却塔
22 :吸収塔
22a :リーン液
23 :再生塔
23a :リッチ液
25 :ポンプ
26 :リボイラ
27 :熱交換器
30 :廃棄物ガス化設備
31 :第一廃棄物の貯槽
32 :炭化機
33 :ガス化炉
33a :ガス改質部
33b :高温ガス化部
40 :熱供給設備
41 :化石燃料の貯槽
42 :第二廃棄物の貯槽
43 :燃焼室
44 :バーナ
50 :処理残渣回収設備
60 :大気分離設備
90 :従来のセメント製造システム
A1 :セメント燃料
A2 :化石燃料
B1 :セメント原料
C1 :セメントクリンカ
C32 :炭化物
G10 :排ガス(キルン排ガス)
G20 :二酸化炭素ガス
G21 :オフガス(戻りガス)
G22 :オフガス
G30 :可燃性ガス
G32 :熱分解ガス
G40 :排ガス(ボイラ排ガス)
G60 :酸素ガス
G61 :窒素ガス
G90 :キルン流入ガス
G91 :排ガス(キルン排ガス)
GA :大気
H10 :キルン排ガスの顕熱
H40 :熱供給設備から供給される熱
R30 :処理残渣
R40 :燃焼灰
W1 :第一廃棄物
W2 :第二廃棄物

Claims (12)

  1. セメント原料を焼成してセメントクリンカを生成する工程(a)と、
    前記工程(a)で得られる排ガスに含まれる二酸化炭素を回収する工程(b)と、
    少なくとも炭素を含有する第一廃棄物を炭化することで得られた炭化物と前記工程(b)で回収された二酸化炭素とを混合して加熱して、前記炭化物から可燃性ガスを生成する工程(c)と、
    大気から酸素を分離して酸素ガスを得る工程(d)とを有し、
    前記工程(a)は、前記工程(c)で得られた前記可燃性ガス、前記工程(d)で得られた前記酸素ガス、及び、当該工程(a)で得られた前記排ガスを使用して前記セメント原料を焼成することを特徴とする、セメント製造方法。
  2. 前記工程(a)の実行時に発生した廃熱を回収する工程(e)を有し、
    前記工程(c)は、前記工程(e)で回収された前記廃熱を利用して前記可燃性ガスを生成することを特徴とする、請求項1に記載のセメント製造方法。
  3. 化石燃料又は燃料代替の第二廃棄物の少なくとも一方を燃焼する工程(f1)と、
    前記工程(f1)の実行時に得られた燃焼熱を回収する工程(f2)を有し、
    前記工程(c)は、前記工程(f2)で回収された前記燃焼熱を利用して前記可燃性ガスを生成することを特徴とする、請求項1又は2に記載のセメント製造方法。
  4. 前記工程(b)は、前記工程(f1)で得られる排ガスに含まれる二酸化炭素の回収も行うことを特徴とする、請求項3に記載のセメント製造方法。
  5. 前記工程(c)の実行時に得られた前記第一廃棄物の処理残渣を回収する工程(g)を有し、
    前記工程(a)は、前記工程(g)で得られた前記処理残渣を、前記セメント原料の一部又は焼成用の燃料の一部として利用することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のセメント製造方法。
  6. 前記工程(c)の実行時に得られた前記第一廃棄物の処理残渣を回収する工程(g)を有し、
    前記工程(f1)は、前記工程(g)で得られた前記処理残渣を焼成用の燃料の一部として利用することを特徴とする、請求項3又は4に記載のセメント製造方法。
  7. 前記工程(c)は、前記第一廃棄物を350℃~1200℃で加熱する工程であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のセメント製造方法。
  8. セメント原料を焼成してセメントクリンカを生成するセメント製造設備と、
    前記セメント製造設備からの排ガスに含まれる二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備と、
    少なくとも炭素を含有する第一廃棄物を炭化する炭化機、前記炭化機から回収された炭化物と前記二酸化炭素回収設備で回収された二酸化炭素とを供給して加熱することで、前記炭化物から可燃性ガスを生成するガス化炉とを含む廃棄物ガス化設備と、
    大気から酸素を分離する大気分離設備とを備え、
    前記セメント製造設備は、前記廃棄物ガス化設備で生成された前記可燃性ガス、前記大気分離設備で分離された酸素ガス、及び当該セメント製造設備からの前記排ガスを使用して前記セメントクリンカを生成することを特徴とする、セメント製造システム。
  9. 前記廃棄物ガス化設備は、前記セメント製造設備又は前記二酸化炭素回収設備の少なくとも一方の廃熱を供給して、前記第一廃棄物から前記可燃性ガスを生成することを特徴とする、請求項8に記載のセメント製造システム。
  10. 化石燃料又は燃料代替の第二廃棄物の少なくとも一方を燃焼すると共に、当該燃焼熱を前記廃棄物ガス化設備に供給する熱供給設備を備え、
    前記廃棄物ガス化設備は、前記熱供給設備から前記燃焼熱を供給して、前記第一廃棄物から前記可燃性ガスを生成することを特徴とする、請求項8又は9に記載のセメント製造システム。
  11. 前記廃棄物ガス化設備から排出される前記第一廃棄物の処理残渣を回収する、処理残渣回収設備を備え、
    前記処理残渣回収設備は、前記処理残渣を前記セメント原料の一部又は焼成用の燃料の一部として前記セメント製造設備に供給することを特徴とする、請求項8~10のいずれか1項に記載のセメント製造システム。
  12. 前記二酸化炭素回収設備がアミン系二酸化炭素吸収液を備えることを特徴とする、請求項8~11のいずれか1項に記載のセメント製造システム。
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