[実施例1]
本発明では、負荷に供給される電圧を第2極性の電圧(例:転写電圧)から第1極性の電圧(例:クリーニング電圧)に切り替える際に、第1極性の電圧に関与するコンデンサを予め充電しておくことを特徴としている。これにより、第1極性の電圧を短時間で立ち上げることが可能となる。しかし、第1極性の電圧の立ち上げ時間を短縮しようとすると、アンダーシュートが発生して第1極性の電圧が安定しにくくなる。そこで、実施例1では、第2極性の直流電圧から第1極性の直流電圧へ遷移する期間においてクロック信号が間引かれる。そのため、第1極性の直流電圧が安定的に制御される。
<電圧発生装置の基本構成>
図1を用いて、第1極性の直流電圧または第2極性の直流電圧を選択的に負荷8に供給する電圧発生装置100について説明する。電圧発生装置100は、高圧電源装置200とコントローラ300とを有している。高圧電源装置200は、たとえば、二次転写ローラに高圧電圧を印加する電圧発生装置である。負バイアス回路201は、第1極性の直流電圧を出力する第1電源部の一例であり、ここでは負極性の直流電圧(例:−1kV〜−2kV)をクリーニング電圧として出力する。正バイアス回路202は、第2極性の直流電圧を出力する第2電源部の一例であり、ここでは正極性の直流電圧(例:4kV)を二次転写電圧として出力する。コントローラ300は、負バイアス回路201や正バイアス回路202を制御し、出力端子7から負荷8に対して選択的に電圧を出力させる。コントローラ300は、正バイアス回路202に対して、正の制御信号CNTPと正のクロック信号CLKPを出力する。コントローラ300は、負バイアス回路201に対して、負の制御信号CNTNと負のクロック信号CLKNを供給する。制御信号に頭記される正・負は制御信号の振幅の極性ではなく、単に、正バイアス回路202と負バイアス回路201とのどちらに関与する信号であるかを示しているにすぎない。
正バイアス回路202において、電圧供給部23は、コントローラ300からの正の制御信号CNTPにしたがって電圧変換部21の一次側に基準となる電圧を供給する回路である。スイッチ部24は、正のクロック信号CLKPを用いて電圧変換部21の一次側電圧をスイッチングする回路である。整流部22は、電圧変換部21の二次側電圧を交流から直流に整流する回路である。出力値検知部6は、出力端子7の出力端子電圧VOUTを分圧して電圧供給部23にフィードバックする回路である。これにより、電圧供給部23は、出力端子電圧VOUTを安定制御する。
負バイアス回路201において、電圧供給部13は、コントローラ300からの負の制御信号CNTNにしたがって電圧変換部11の一次側に基準となる電圧を供給する回路である。スイッチ部14は、負のクロック信号CLKNを用いて電圧変換部11の一次側をスイッチングする回路である。整流部12は、電圧変換部11の二次側の出力電圧を交流から直流に整流する回路である。電圧値検知部15は、電圧変換部11の一次側の電圧を分圧して電圧供給部13にフィードバックする回路である。これにより、電圧供給部13は、電圧変換部11の一次側電圧を安定制御する。比較部9は、コントローラ300によって設定される基準電圧VN_REFと出力値検知部6が出力する検知電圧Vsnsとを比較する。合成部16は、比較部9の比較結果に応じて負のクロック信号CLKNを間引く間引き手段として機能する。出力値検知部6は負荷8に供給される出力端子電圧VOUTを検知する電圧検知手段として機能する。実施例1において合成部16は検知電圧Vsnsが基準電圧VN_REFに達すると、クロック信号の間引きを開始する。これにより、出力端子電圧VOUTが安定的に制御される。
図2は、コントローラ300と高圧電源装置200の回路図である。コントローラ300の内部には、演算部301、記憶部302、カウンタ303、PWM生成部304、306、クロック生成部305、307などが含まれている。PWM生成部306は正の制御信号CNTPを生成して正バイアス回路202に供給する回路である。制御信号CNTPの出力開始、出力停止、デューティ比などは演算部301によって指定される。クロック生成部307は正のクロック信号CLKPを生成して正バイアス回路202に供給する回路である。正のクロック信号CLKPの出力開始、出力停止、デューティ比などは演算部301によって指定される。PWM生成部304は負の制御信号CNTNを生成して負バイアス回路201に供給する回路である。負の制御信号CNTNの出力開始、出力停止、デューティ比などは演算部301によって指定される。クロック生成部307は負のクロック信号CLKNを生成して負バイアス回路201に供給する回路である。負のクロック信号CLKNの出力開始、出力停止、デューティ比などは演算部301によって指定される。演算部301は、記憶部302に記憶されている制御データやプログラムに応じてカウンタ303、PWM生成部304、306、クロック生成部305、307を制御する。つまり、演算部301は、コントローラ300における各種の制御主体として機能する。
電圧供給部23において、制御信号CNTPは抵抗R21を介してFET Q21のゲートに供給される。FETは電界効果トランジスタの略称である。FET Q21のドレインは抵抗R22を介して3.3V電源に接続されている。FET Q21のドレインとソースの間にはコンデンサC21が設けられている。コンデンサC21は制御信号CNTPにしたがって充電され、その両端電圧がVc_pである。つまり、Vc_pは、トランスT22の一次側電圧の基準となる電圧である。コンデンサC21の一端は接地されており、他端はオペアンプIC25の非反転入力端子に接続されている。オペアンプIC25の反転入力端子には出力値検知部6からの検知電圧Vs_pが入力される。つまり、Vc_pとVs_pとの比較結果に応じた信号をオペアンプIC25が出力する。オペアンプIC25の反転入力端子と出力端子との間にはコンデンサC26が接続されている。オペアンプIC25の出力端子は、抵抗R23を介してトランジスタQ22のベースに接続されている。トランジスタQ22のコレクタは抵抗R24を介して24V電源に接続されている。トランジスタQ22のソースはコンデンサC22の一端とトランスT22の一次巻線の一端とに接続されている。コンデンサC22の他端は接地されている。つまり、コンデンサC22の両端電圧であるVi_pがトランスT22の一次側電圧として供給される。トランスT22の一次巻線の他端はFET Q23のドレインに接続されている。FET Q23のソースは接地されている。FET Q23のドレインとソースとの間にはコンデンサC23が設けられている。FET Q23は、スイッチ部24の主要素子であり、スイッチング素子である。FET Q23のゲートには、抵抗R25を介してクロック信号CLKPが入力される。
正バイアス回路202においてクロック信号CLKPは電圧変換部21のトランスT22をスイッチング駆動するためのパルス信号であり、たとえば50kHz,デューティ比50%,振幅3.3Vに固定された矩形波が用いられる。クロック信号CLKPがFET Q23のゲートに入力されると、FET Q23は、クロック信号CLKPに応じてオン/オフを繰り返す。このFET Q23をオン/オフすることで、電解コンデンサC22の両端電圧(一次側電圧)は、スイッチングされたパルス状の波形としてトランスT22の一次巻線へ印加される。この電圧はトランスT22により昇圧されて二次側電圧となる。二次側電圧の周期は一次側電圧の周期と同一である。二次側電圧の波形はスイッチングされたパルス状の電圧波形である。
整流部22は、高圧ダイオードD21、D22と高圧コンデンサC24、C25を組み合わせた2つの整流回路を有し、二次側電圧を整流平滑する。つまり、高圧コンデンサC25と高圧ダイオードD21で1組の整流回路が構成され、高圧コンデンサC24と高圧ダイオードD22でもう1組の整流回路が構成されている。整流部22は、コッククロフト・ウォルトン回路と呼ばれる倍電圧整流回路であり、整流回路の数に比例した電圧を出力する。たとえば、トランスT22の一次側電圧に相当する電解コンデンサC22の両端電圧が最大電圧となったと仮定する。このとき、トランスT22の一次側巻線と二次側巻線との巻数の比によって、トランスT22の二次側電圧は約+2kVとなる。トランスT22の二次側に発生した電流が高圧ダイオードD21の順方向に流れたときに、高圧コンデンサC24には正の電荷が充電される。これによって、高圧コンデンサC24には4kVの電位差が発生する。接地電位からみた出力端子7の出力端子電圧VOUTは、+4kVの直流電圧となる。つまり、トランスT22の出力可能な電圧である+2kVが2倍になり、+4kVとなる。図2では説明の簡略化のため2段の整流回路を記載したが、トランスT22の仕様や出力電圧範囲などに応じて3段以上の整流回路が用いられてもよい(多段整流回路)。高圧コンデンサC24には並列に抵抗R26が接続されている。
検知抵抗R27は、出力端子7に現れる出力端子電圧VOUTを検知し、それを一定電圧に制御するための電圧検知抵抗である。検知抵抗R27としては、高耐圧でかつ精度の良い(たとえば抵抗値の許容差±1%)抵抗が用いられうる。オペアンプIC25の反転入力端子(−端子)には、出力端子7の出力端子電圧VOUTを抵抗R27,R28,R29で分圧した電圧Vs_pが入力される。電圧Vs_pは出力端子電圧VOUTに比例した電圧であり、出力端子電圧VOUTを示している。オペアンプIC25は、非反転入力端子(+端子)に接続されている出力設定電圧Vc_pと反転入力端子の電圧Vs_pとが等しくなるように、トランジスタQ22のベース電圧を制御する。反転入力端子の電圧Vs_pが出力設定電圧Vc_pよりも大きくなると、オペアンプIC25の反転入力が非反転入力よりも大きくなる。したがって、オペアンプIC25の出力は小さくなり、トランジスタQ22をオフさせ、電解コンデンサC22の両端電圧である一次側電圧Vi_pが低下する。これによりトランスT22の一次巻線に印加される一次側電圧が低下することになるため、二次側電圧も小さくなる。一方、反転入力端子に入力された電圧Vs_pが出力設定電圧Vc_pよりも小さくなると、オペアンプIC25はトランジスタQ22をオンさせる。電解コンデンサC22の両端電圧は上昇し、出力端子電圧VOUTの絶対値が大きくなる。以上のような制御により、出力端子7の出力端子電圧VOUTは一定電圧(たとえば+4kV)にコントロールされる。
画像形成装置において二次転写を良好に実行するためには、十分な転写電流をシートに流すことが重要である。転写電流は、画像形成装置が設置される環境(雰囲気)や、中間転写ベルトの抵抗値、二次転写ローラの抵抗値、シートの種類等に応じて変化するため、それに応じて二次転写電圧の値を変化させる必要がある。そのため、出力設定電圧Vc_pの値は、コントローラ300から供給される制御信号CNTPによって変更可能となっている。この出力設定電圧Vc_pの値を変化させることで、出力端子7の出力端子電圧VOUTを、たとえば、0Vから+4kVまでの範囲で制御することができる。出力設定電圧Vc_pの値を変更する方法としては、たとえば、コントローラ300から出力された信号を整流平滑して出力設定電圧Vc_pとして用いる方法がある。あるいは、コントローラ300から出力されたデジタルデータ信号を、DAコンバータを介してアナログ値へ変換して出力設定電圧Vc_pとする方法が採用されてもよい。図2は前者の回路を示している。
負バイアス回路201おいて、電圧供給部13は、抵抗R11を介して入力される制御信号CNTNに応じてオンオフするFET Q11を有している。FET Q11のドレインは抵抗R12を介して3.3V電源に接続されている。FET Q11のドレインとソースとの間にはコンデンサC11が接続されている。コンデンサC11は、クロック信号CLKNに応じて充電される。コンデンサC11の両端電圧はトランスT11の一次側電圧の基準となる基準電圧Vc_nであり、電圧値検知部15のオペアンプIC15の非反転入力端子に入力される。オペアンプIC15の反転入力端子にはトランスT11の一次側電圧Vi_nを、抵抗R17,R19,R18で分圧して生成された電圧であるVs_nが入力される。電圧Vs_nは、一次側電圧Vi_nに比例しており、一次側電圧Vi_nを示す電圧である。オペアンプIC15の出力端子は、電圧供給部13のトランジスタQ12のベースに接続されている。オペアンプIC15の出力端子と非反転入力端子との間にはコンデンサC16が接続されている。トランジスタQ12のコレクタは抵抗R14を介して24V電源に接続されている。トランジスタQ12のエミッタはコンデンサC12に接続されている。つまり、コンデンサC12は、基準電圧Vc_nとVs_nとの比較結果に応じて充電される。コンデンサC12の両端電圧が一次側電圧Vi_nであり、トランスT11の一次巻線に印加される。
クロック信号CLKNはトランスT11をスイッチング駆動するためのパルス信号である。クロック信号CLKNはとしては、たとえば50kHz,デューティ比50%,振幅3.3Vに固定された矩形波が用いられる。FET Q13は、クロック信号CLKNがFET Q13のゲートに入力されると、クロック信号CLKNに応じてオン/オフを繰り返す。このFET Q13をオン/オフすることで、一次側電圧Vi_nがスイッチングされたパルス状の波形となり、トランスT11の一次巻線へ印加さる。トランスT11は一次側電圧Vi_nを昇圧して二次側電圧を生成する。一次側電圧Vi_nと二次側電圧とでは、それぞれ周期は同一であり、いずれもパルス状の電圧波形となる。二次側電圧は、整流部12の高圧ダイオードD12と高圧コンデンサC14により整流平滑され、直流電圧となる。正バイアス回路202と負バイアス回路201を比較すると、ダイオードD12はダイオードD22に対して逆方向に配置されている。これは負バイアスと正バイアスとを逆極性にするためである。整流部12は片電圧整流回路である。トランスT11の一次側電圧に相当する電解コンデンサC12の両端電圧が最大電圧のときに、たとえば、トランスT11の二次側電圧が+2kVとなるものと仮定する。整流部12では、トランスT11の二次側に発生した電流が高圧ダイオードD12の順方向に流れたときに高圧コンデンサC14に負の電荷が充電される。つまり、高圧コンデンサC14の両端間には2kVの電位差が発生し、出力電圧Vnとして生成される。接地電位からみた出力電圧Vnは、−2kVの直流電圧となる。高圧コンデンサC14には並列に抵抗R16が接続されている。
出力電圧Vnは、高耐圧抵抗R26(一般的に、ブリーダ抵抗と呼ばれる)を介して出力端子7に出力端子電圧VOUTとして出力され、負荷8に供給される。出力電圧Vnは、高耐圧抵抗R26と負荷8のインピーダンスとで分圧される。出力電圧Vnが−2kVであれば、出力端子電圧VOUTはたとえば1.5kVとなる。このように、出力端子電圧VOUTの絶対値は、出力電圧Vnの絶対値よりも低下する。図2では、説明の簡略化のために整流部12として片電圧整流回路を採用した、トランスの仕様や出力電圧範囲などに応じて2段以上の多段整流回路が用いられてもよい。
電圧検知回路についても正バイアス回路202と負バイアス回路201とでは異なっている。正バイアス回路202では、出力端子7の出力端子電圧VOUTが検知抵抗R27により検知され所定電圧に制御される。一方、負バイアス回路201では、電解コンデンサC12の両端電圧である一次側電圧Vi_nが、検知抵抗R17により検知され一定電圧に制御される。負バイアス回路201の検知抵抗R17としては、正バイアス回路202の検知抵抗R27のように高耐圧の抵抗が選定される必要がない。これは、検知抵抗R17の周囲には高電圧のパターンが存在しないためである。検知抵抗R17は一次側電圧Vi_nを検知するため、精度の良い(たとえば抵抗値の許容差±1%)抵抗が用いられてもよい。
上述したようにオペアンプIC15の反転入力端子には、電解コンデンサC12の一次側電圧Vi_nを抵抗R17,R18,R19で分圧した電圧Vs_nが入力されている。オペアンプIC15は、非反転入力端子に接続されている出力設定電圧Vc_nと反転入力端子の電圧Vs_nが等しくなるように、トランジスタQ12のベース電圧を制御する。負バイアス回路201は電解コンデンサC12の一次側電圧Vi_nを精度良く一定に保つことはできる。しかし、出力電圧Vnや高耐圧抵抗R26を介して出力端子7に発生する出力端子電圧VOUTはトランスT11の製造上の特性バラツキや、負荷8となる二次転写ローラの抵抗値のバラツキ等に左右される。このため、出力端子電圧VOUTを直接的にコントロールしている正バイアスと比較して、負バイアスの精度は劣りうる。しかし、負バイアスは主に二次転写ローラのクリーニングのために用いられる。このように、画像形成装置では高精度の負バイアスは要求されないため、実使用上の不都合はない。
正バイアスの一次側電圧Vi_pと同様に、負バイアスの一次側電圧Vi_nの値は、コントローラ300によって変更可能となっている。コントローラ300は、制御信号CNTNを介して出力設定電圧Vc_nを変化させることで、電解コンデンサC12の一次側電圧Vi_nを変化させる。一次側電圧Vi_nに対応した出力端子電圧VOUTは、たとえば0Vから−1.5kVまでの範囲で制御される。コントローラ300は、画像形成装置の使用環境等のクリーニング条件に応じて、その条件に適した負バイアスを設定してもよい。
図3が示すように、二次転写が実行される期間t41〜t42、t43〜t44、t45〜では正バイアスが出力され、二次転写ローラのクリーニングシーケンスが実行される期間である紙間時間t42〜t43、t44〜t45では負バイアスが出力される。なお、ここで紙間時間とは先行するシートの後端と後続のシートの先端の時間間隔をいう。近年、紙間時間は非常に短くなっている。よって、紙間時間を余すところなくクリーニングに利用するために、負バイアスを高速に立ち上げる必要がある。
<本実施例の特徴となる部分の説明>
図1において、比較部9と合成部16とが設けられ、さらに、コントローラ300は負の閾値電圧信号である基準電圧VN_REFを出力する。本実施例では、負の基準電圧VN_REFを、たとえば0Vから3.3Vまで可変できるアナログDC信号として説明する。
出力端子電圧VOUTは出力値検知部6によって低電圧に分圧され、正の電圧供給部23にフィードバックされるとともに電圧検知信号(検知電圧Vsns)として比較部9に入力される。比較部9は、検知電圧Vsnsと、コントローラ300から出力される負の基準電圧VN_REFとを比較する。比較部9は、比較結果に応じてチョッピング信号CHPを”H”または”L”のレベルとして出力する。”H”はハイレベルを意味し、”L”はローレベルを意味する。チョッピング信号CHPは、合成部16に入力される。合成部16は、負のクロック信号CLKNとチョッピング信号CHPとを論理合成して新たに合成クロック信号NCLKを生成する。合成クロック信号NCLKは、抵抗R15を介してスイッチ部14のFET Q13のゲートに入力されてトランスT11をスイッチングするためのスイッチング信号として利用される。
実施例1では、正電圧出力状態から負バイアス出力状態に切換える際の負バイアス回路201の動作に特徴がある。正バイアス回路202をオフするのに先立って電圧変換部11の一次側電圧Vi_nが予め第1のターゲット電圧(例:22V)に設定される。つまり、コンデンサC12が予め充電され、高速な負バイアスの立ち上げが実現される。正バイアス回路202をオフすると同時に負バイアス回路201がスイッチングを開始する。コントローラ300は、出力端子電圧VOUTの降下にしたがって1回または段階的にターゲット電圧を変更し(22V→18V)、一次側電圧Vi_nが調整される。これによって、負の出力電圧Vnの降下が緩やかとなり、アンダーシュートが抑制される。出力端子電圧VOUTが目標電圧(例:0kV)に達すると(つまり、VsnsがVN_REFに達すると)、合成部16がクロック信号CLKNのチョッピングを開始する。これにより、負の出力電圧Vnが最終的な目標電圧(例:−1kV)に安定的に制御される。
<回路および動作の説明>
図2が示すように、比較部9はコンパレータIC9により構成されている。コンパレータIC9の+端子に検知電圧Vsnsが入力される。コンパレータIC9の−端子に負の基準電圧VN_REFが入力される。たとえば、VsnsがVN_REFを超えている場合、コンパレータIC9が出力するチョッビング信号CHPは”H”となる。一方、VsnsがVN_REF以下である場合、チョッビング信号CHPは”L”となる。合成部16はAND回路IC14で構成されており、AND回路IC14は負のクロック信号CLKNとチョッピング信号CHPの論理積を求める。AND回路IC14は、論理積として合成クロック信号NCLKを出力する。たとえば、チョッピング信号CHPが”H”であれば、負のクロック信号CLKNがそのまま合成クロック信号NCLKとして出力される。これに対して、チョッピング信号CHPが”L”であれば、負のクロック信号CLKNに依存せずに”L”レベルの電圧が合成クロック信号NCLKとして出力される。すなわち、トランスT11をスイッチングしない状態となるので、トランスT11の二次側電圧である出力電圧Vnの絶対値が低下する。
図4を用いて、正バイアス出力状態から負バイアス出力状態に高速に切換える際の回路動作に関わる各信号および出力端子の電圧波形を説明する。なお、本実施例の説明で使用する具体的な数値は、理解しやすいよう代表的な数値にすぎない。これらの数値が回路および使用条件によっては変わることは言うまでもない。また、本実施例では、出力端子電圧VOUTと検知電圧Vsnsが、図5に示す関係になるような高圧電源装置200に基づいて説明する。
初期状態として、正の制御信号CNTP(波形A1)が周波数13kHz,デューティ比80%,振幅3.3Vで電圧供給部23に入力されている。正のクロック信号CLKP(波形A2)が周波数50kHz,デューティ比50%,振幅3.3V、所定の周波数でスイッチ部24に入力されている。これらの信号の入力が維持されるタイミングt12まで、出力端子電圧VOUT(波形A10)は正の出力電圧+4kVを維持している。
この正電圧出力状態において、タイミングt11で負の制御信号CNTN(波形A3)がコントローラ300から電圧供給部13に供給される。ここで負の制御信号CNTNのパラメータは、周波数13kHz,デューティ比90%,振幅3.3Vである。このとき、負のトランスT11の一次側電圧Vi_n(波形A4)は0Vから所定の時定数を伴って22Vに立ち上がる。一次側電圧Vi_nの立ち上り時定数は、電解コンデンサC12への充電時間などによって決まる。負バイアス回路201を急速に立ち上げるため、負のトランスT11の一次側電圧Vi_nとして、ターゲット値である第2の値(18V)が最初には使用されない。その代わり、より絶対値の高い出力電圧が得られる第1の値(22V)となるように、演算部301はPWM生成部304に対して負の制御信号CNTNを設定する。第2の値(18V)は、最終的な目標電圧(−1kV)に対応しており、第1の値(22V)は、最終的な目標電圧よりも絶対値の大きな電圧(−2kV)に対応している。このように、一次側電圧Vi_nを第2の値よりも大きな第1の値に設定することで、VOUTを高速に変化させることが可能となる。ただし、この場合、アンダーシュートが発生しやすくなるため、途中で、第1の値(22V)から第2の値(18V)に切り替えられる。
タイミングt12で、トランスT11の一次側の電解コンデンサC12が十分に充電され、一次側電圧Vi_nが22Vで安定する。タイミングt11からタイミングt12までの時間は、電解コンデンサC12が十分に充電される充電時間以上となるように予め決定されており、記憶部302に記憶されている。演算部301はカウンタ303を用いて各タイミングを管理する。タイミングt12で、コントローラ300は、正バイアス回路202を停止させると同時に、負バイアス回路201に出力を開始させる。まず、正の制御信号CNTPと正のクロック信号CLKPが停止する。それと同時に、負のクロック信号CLKNがコントローラ300から周波数50kHz,デューティ比25%,振幅3.3Vで供給される(波形A5)。負のクロック信号CLKNは、この時点では”H”となっているチョッピング信号CHP(波形A6)とAND回路IC14が合成されて生成される。そのため、合成クロック信号NCLKには負のクロック信号CLKNがそのまま生成され出力される(波形A7)。合成クロック信号NCLKの入力によって、負のトランスT11が動作し、出力端子電圧VOUTは+4kVから降下し始める。出力端子電圧VOUTの降下の時定数は、負の整流部12がもつ時定数や、正の整流部22に含まれる平滑用の高圧コンデンサC24に残った残留電荷や負荷8の容量成分に残った残留電荷などに依存する。これに同期して、検知電圧Vsnsも降下する(波形A8)。なお、この時点で検知電圧Vsnsと、負の基準電圧VN_REF(ここでは0.7Vとする)の関係は、Vsns > VN_REFのままである。
タイミングt13で、コントローラ300は、PWM生成部304を制御し、負の制御信号CNTNのデューティ比を90%から70%に変更する。これにより、一次側電圧Vi_nが22Vからターゲット電圧値である18Vに変更される。これに伴い、出力端子電圧VOUTの降下は緩やかになり、アンダーシュートが抑制される。
タイミングt14で、出力端子電圧VOUTが目標電圧−1kV以下となる。これにより、検知電圧Vsnsと負の基準電圧VN_REF(波形A9)が交差する。つまり、Vsns ≦ VN_REFとなる。このとき、コンパレータIC9から出力されるチョッピング信号CHPのレベルが”H”から”L”に反転する。これにより、AND回路IC14が出力する合成クロック信号NCLKは、”L”レベルとなる。FET Q13が負のトランスT11をスイッチングできなくなり、出力端子電圧VOUTの絶対値が低下する。
タイミングt15で、検知電圧Vsnsと負の基準電圧VN_REFが再度交差して、Vsns > VN_REFの関係になる。チョッピング信号CHPのレベルが再び”L”から”H”に反転するため、合成クロック信号NCLKとして、負のクロック信号CLKNがそのまま出力される。これにより、負のトランスT11が動作し始め、出力端子電圧VOUTの絶対値が上昇する。このように、コンパレータIC9とAND回路IC14の動作が続く限り、出力端子電圧VOUTは−1kVを中心に上昇と低下を繰り返す。
タイミングt16は、負バイアスが立ち上って十分安定したタイミングである。タイミングt16で、コントローラ300は、負の基準電圧VN_REFを0.7Vから0Vに切換える。これにより、Vsns > VN_REF の関係が成立し、チョッピング信号CHPのレベルが”H”に固定される。また、合成クロック信号NCLKとして、負のクロック信号CLKNがそのまま出力され、出力端子電圧VOUTは安定して目標電圧である−1kVを維持する。
図6を用いて、本実施例に関わる別の制御方法について説明する。図6によれば、タイミングt54で、コントローラ300は、基準電圧VN_REFを第2の値よりも高い第1の値(例:1.0V)に設定する。タイミングt55で、コントローラ300は、基準電圧VN_REFを第2の値(例:0.7V)に切り替える。第2の値は、出力端子電圧VOUTを最終的な目標電圧(例:−1kV)に設定するための電圧である。このように、基準電圧VN_REFは2段階で変更されてもよい。第1の値から第2の値の切り替えタイミングは、CNTPを停止してから所定時間後である。所定時間は予め工場出荷時に決定されてもよいし、実施例2で説明するように環境状態等に基づいて動的に決定されてもよい。
図6によれば、出力端子電圧VOUTが目標電圧−1kVに達する前に、検知電圧Vsnsと負の基準電圧VN_REFが交差して、Vsns ≦ VN_REFの関係が成立する。比較部9は、この関係が成立したと判定すると、間引き制御を開始する(t54)。これにより、出力端子電圧VOUT(たとえば0V)が維持される。タイミングt55で、基準電圧VN_REFが低下することにより、Vsns > VN_REFの関係が成立する。これにより、コンパレータIC9の出力であるチョッピング信号CHPのレベルが再び”L”から”H”に反転する。その結果、合成クロック信号NCLKとして、負のクロック信号CLKNがそのまま生成され、負のトランスT11が動作し始める。出力端子電圧VOUTの絶対値は上昇し、目標電圧−1kVに達する。タイミングt56で、電圧検知信号Vsnsと負の基準電圧VN_REFが再び交差して、Vsns ≦ VN_REFの関係が成立する。これにより、チョッピング信号CHPのレベルが再び”H”から”L”に反転し、間引き制御が再開される。タイミングt57で、間引き制御が終了し、出力端子電圧VOUTは目標電圧−1kVに維持される。このように、基準電圧VN_REFを段階的に切換える制御が採用されてもよい。
<実施例1のまとめ>
実施例1によれば、負荷8に供給される電圧を第2極性の電圧(例:転写電圧)から第1極性の電圧(例:クリーニング電圧)に切り替える際に、第1極性の電圧に関与するコンデンサC12を予め充電しておく。演算部301は、負荷8に対して供給される電圧を第2極性の直流電圧から第1極性の直流電圧に切り替えるのに先立って、第1電源部のトランスの一次側に供給される電圧を保持するコンデンサC12の充電を開始する。図4によれば、正電圧出力状態から負バイアス出力状態に切換えるために正バイアス回路202をオフする前に、トランスT11の一次側電圧Vi_nがターゲット電圧(22V)に設定される。そして、正バイアス回路202がオフされると、負バイアス回路201がスイッチング動作を開始する。このように、正バイアス回路202をオフする前に一次側電圧がターゲット電圧に設定されているため、負バイアスを短時間で立ち上げることが可能となる。出力端子電圧VOUTの降下に合わせてトランスT11の一次側電圧をターゲット電圧に近づけてゆく(22V→18V)。一次側電圧のターゲット電圧を高めの第1の電圧(例:22V)から最終的な第2の電圧(例:18V)に変更することで(t13、t53)、出力端子電圧VOUTの変化が緩やかになり、アンダーシュートが抑制される。
さらに、実施例1では、負荷8に対して供給される電圧が正バイアスから負バイアスへ遷移する期間において、クロック信号が間引かれる。たとえば、検知電圧Vsnsが基準電圧VN_REFに達すると、合成部16がクロック信号の間引きを開始する。つまり、合成部16がクロック信号CLKNをチョッピングしてクロック信号が間引かれる。間引かれたクロック信号に応じてFET Q13がトランスT11をスイッチングすることによって負バイアスが目標電圧(0V,−1kV)に維持される。これにより、安定した出力電圧の制御が実現される。なお、合成部16は、クロック信号の間引き量を可変制御してもよい。たとえば、間引き量が徐々に削減されてもよい。なお、間引き量はコントローラ300の演算部301によって合成部16に指示されてもよい。
本実施例では、ターゲット電圧Vc_nを1回切り替える制御を説明したが、ターゲット電圧Vc_nが段階的に複数回にわたって切換えられてもよい。これにより、アンダーシュートの抑制効果が増大しよう。また、コンパレータIC9やAND回路IC14などを1チップ化したり、コントローラ300に搭載されたCPUやASICに同様の機能を持たせたりしてもよい。本実施例では出力端子電圧VOUTの極性を正から負に切換えた後に、負バイアスが目標電圧(0V、−1kV)に到達した段階でクロック信号を間引く制御について説明した。しかし、負バイアスが目標電圧に到達する過程においてクロック信号が間引かれてもよい。本実施例では出力端子電圧VOUTの極性を正から負に切換えた後のタイミングであって負バイアスが安定したタイミングで負のクロック信号CLKNを間引く制御が停止されている(t16、t57)。しかし、負のクロック信号を間引く制御を継続してもよい。本実施例では紙間における負バイアスから正バイアスへの切換えについて説明したが、正負の切り換えを紙間または画像形成終了後に複数回行う場合にも本実施例は適用可能である。本実施例では正のトランスT22および負のトランスT11としてインバータトランスが用いられている。しかし、圧電トランスが用いられても同様の効果を発揮できる。
図6を用いて説明したように演算部301は、正バイアスから負バイアスに切り替わる過程において、間引きタイミングを決定するための基準電圧VN_REFを1回以上にわたって変更してもよい。たとえば、演算部301は、第1の値(例:1.0V)からそれよりも小さな第2の値(例:0.7V)に基準電圧VN_REFを切り替えてもよい。これにより、出力端子電圧VOUTは徐々に負のバイアスの目標電圧(例:−1kV)に近づいてゆくため、アンダーシュートが発生しにくくなる。
[実施例2]
実施例2に従う高圧電源装置200の回路の一例について図7を用いて説明する。図7において、図1、図2と比較して異なる点は、合成部16および比較部9が省略されている一方で、環境センサ400が追加されている。合成部16および比較部9が省略されているため、クロック生成部305が発生する負のクロック信号CLKNは抵抗R15を介して直接的にFET Q13のゲートに入力される。よって、クロック信号CLKNの間引き制御はコントローラ300が実行することになる。
<本実施例の特徴となる部分の説明>
実施例1では、間引き制御の開始タイミングを決定するために、出力検知電圧Vsnsと基準電圧VN_REFを比較していた。つまり、出力検知電圧Vsnsが基準電圧VN_REFを最初に下回ったタイミングが、間引き制御の開始タイミングであった。一方、実施例2では、温湿度などの環境状態や耐久状態に応じて間引き制御の開始タイミングを決定する。たとえば、正バイアスの出力設定電圧Vc_pは、温湿度などの環境状態や耐久状態に応じて可変制御される。出力設定電圧Vc_pが変更されると、出力電圧が負の目標電圧に達するまでに要する時間tpも変化する。そこで、実施例2では、環境状態と時間tpとの関係を予め工場出荷時等に数式化またはテーブル化し、数式またはテーブルをコントローラ300の記憶部302に記憶させておく。なお、時間tpの始期は、たとえば、負の制御信号CNTNの出力開始タイミングである。時間tpの終期は、たとえば、間引き制御の開始タイミングである。なお、負の制御信号CNTNのデューティ比を変更するタイミングについても、間引き制御の開始タイミングと同様に決定される。
以下では、環境センサ400からの検知情報を用いて時間tpを演算部301が決定するが、記憶部302に蓄積された画像形成装置110の耐久情報(例:累積稼働時間や累積画像形成枚数)などが利用されてもよい。これらの情報は時間tpを決定するだけでなく、Vc_pを決定するためにも使用される。これらの情報とVc_pとの関係も予め工場出荷時等に数式化またはテーブル化され、記憶部302に記憶されているものとする。
<本実施例の回路および動作の説明>
図8に示すように、正の出力電圧値の大小に依存して、切替を開始したタイミングから負の出力電圧の目標値に達するタイミングまでの制御時間(降下時間)が変化する。たとえば、出力端子電圧VOUTを+4kVから−1kVに切換えるのに要する制御時間と、出力端子電圧VOUTを+3kVから−1kVに切換えるのに要する制御時間とでは、前者の方が長い。したがって、画像形成装置の使用環境が分かり、かつ、使用環境が安定した状態にあれば、正から負に切換えるのに要する制御時間を予想することが可能となる。
図9に示すように、絶対水分量に応じた出力端子電圧VOUTの関係が予め分かっていれば、正から負に出力端子電圧VOUTを切換えるのに要する制御時間を予想することが可能になる。つまり、環境センサ400によって絶対水分量が測定され、絶対水分量から出力端子電圧VOUTが決定され、出力端子電圧VOUTから制御時間tpが決定される。なお、出力端子電圧VOUTは、正の制御信号CNTPによって決定される。
図10に示すように、記憶部302には、正の制御信号CNTPのデューティ比と制御時間との関係が示されている。T1は、正の制御信号CNTPの出力停止から出力端子電圧VOUTが負の目標電圧に到達するまでに要する制御時間を示している。T2は、負のクロック信号CLKNの出力開始から負の制御信号CNTNのデューティ比の切換えるタイミングまでの制御時間を示している。記憶部302には、T1やT2を表す数式またはテーブルが格納されている。たとえば、正の制御信号CNTPのデューティ比が90%の場合、負のクロック信号CLKNの出力開始から8msec後に、コントローラ300は、負の制御信号CNTNのデューティ比を切換える。出力端子電圧VOUTは、負のクロック信号CLKNの出力開始から10msec後に目標電圧である−1kV到達する。
図11を用いて本実施例の具体的な動作を説明する。初期状態として、正の制御信号CNTP(波形B1)が、たとえば、周波数13kHz,デューティ比80%,振幅3.3Vで電圧供給部23に入力されている。また、正のクロック信号CLKP(波形B2)が、たとえば、周波数50kHz,デューティ比50%,振幅3.3V、所定の周波数でスイッチ部24に入力されている。これにより、出力端子電圧VOUT(波形B6)は正の出力電圧+4kVに維持されている。
タイミングt21で、演算部301は、PWM生成部304を制御し、周波数13kHz,デューティ比90%,振幅3.3Vの制御信号CNTNの出力を開始させる(波形B3)。このとき、演算部301は、カウンタ303の数値を読み込み、カウントアップを開始する。タイミングt21は、二次転写が終了するタイミングt22よりも所定時間前になるように予め決定されているものとする。
演算部301は、環境センサ400によって取得された環境状態(例:絶対水分量)に対応する制御時間を、記憶部302に記憶されている数式またはテーブルを参照して決定する。これにより、負の制御信号CNTNのデューティ比を切換えるタイミングは、負のクロック信号CLKNの出力開始から、たとえば、6msecが経過したタイミングに決定される。同様に、に負のクロック信号CLKNの間引きを開始するタイミングは、負のクロック信号CLKNの出力開始から、たとえば、8msecが経過したタイミングに決定される。
タイミングt22で、演算部301は、正の制御信号CNTPと正のクロック信号CLKPとの出力を停止する。また、演算部301は、クロック生成部305を制御し、周波数50kHz,デューティ比50%,振幅3.3Vの負のクロック信号CLKNの出力を開始させる(波形B5)。このとき、負の制御信号CNTNのデューティ比は90%に設定されている。よって、カウンタ303が6msecまでカウントしたタイミングt23で、演算部301が負の制御信号CNTNのデューティ比を90%から70%に切換える。これにより、負の一次側電圧Vi_nは、22Vからターゲット電圧の18Vに切り替わる。カウンタ303は、タイミングt21にカウントを開始するものとする。
タイミングt24で、カウンタ303のカウント値が10msecになる(図11中の矢印で示した期間)。演算部301は、カウント値が10msecになったことを認識すると、負のクロック信号CLKNの間引きを開始する。たとえば、負のクロック信号CLKNのデューティ比を25%から0%に変更される。これにより、出力端子電圧VOUTは目標値である−1kV付近で一旦降下が止まるが、まだ安定した出力状態ではない。そのため、タイミングt24以降で、演算部301は、クロック生成部305を制御し、負のクロック信号CLKNのデューティ比を0%から25%に徐々に回復していく。この負のクロック信号CLKNのデューティ比の回復シーケンスについても、正バイアスの出力電圧値に応じて予め複数の回復シーケンスが記憶部302に記憶されていてもよい。演算部301は、環境状態または正バイアスの出力電圧値にとって最も適している回復シーケンスを記憶部302から読み出して実行してもよい。これにより高精度の負バイアスの制御が可能になろう。
以上説明したように、実施例2によれば、演算部301は、環境状態(雰囲気の絶対水分量)等に応じて間引きタイミングを決定する。演算部301は、たとえば、環境状態に基づいて決定された正バイアスまたは負バイアスの設定値に応じてクロック信号の間引きを開始するタイミングを決定してもよい。演算部301は、記憶部302に記憶されたテーブルや数式などを用いて間引き開始タイミングを決定し、カウンタ303を用いてタイミングを管理してもよい。つまり、コントローラ300に設けられている記憶部302やカウンタ303を用いるため、コンパレータIC9やAND回路IC14など追加回路が不要となる利点がある。よって、安価かつ簡単に回路を構成することができる。実施例2についてのその他の効果は実施例1の効果と同様である。なお、実施例2において、演算部301は、クロック生成部305を制御することで、クロック信号の間引き量を可変制御してもよい。たとえば、間引き量が徐々に削減されてもよい。
<その他>
実施例2では、正の出力電圧の目標値は可変で、負の出力電圧の目標値は固定と仮定する。しかし、正の出力電圧の目標値が固定で負の出力電圧の目標値が環境状態に応じて可変であってもよい。この場合は、環境状態または負の出力電圧の目標値と制御時間との関係を示す数式または関数が記憶部302に記憶されることになろう。正および負の出力電圧の目標値が両方とも可変であってもよい。この場合、場合は、環境状態と制御時間との関係を示す数式または関数が記憶部302に記憶されることになろう。あるいは、正の出力電圧の目標値と負の出力電圧の目標値との差分と、制御時間との関係を示す数式または関数が記憶部302に記憶されてもよい。このように、制御時間は、環境状態から直接的にまたは間接的に決定されることになる。
演算部301は、カウンタ303のカウントアップを開始するタイミングを、タイミングt22としてもよい。これは、制御信号CNTNの出力開始から制御信号CNTPの出力停止までの時間が一定の時間だからである。
上述した電圧発生装置100は、様々な電子機器に使用可能であり、たとえば、電子写真方式の画像形成装置の電源装置として適用できる。図12は、電子写真方式の多色画像形成装置の一例を示す図である。多色の画像形成装置110は、タンデム式のカラーレーザビームプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーを重ねあわせることで多色画像を出力する。
感光体113は図中矢印の方向に回転し、高圧電源装置200から帯電電圧を印加された帯電ローラ116によって一様な電圧に帯電する。露光装置111によって感光体113の表面に静電潜像が形成される。現像ローラ115には、高圧電源装置200から現像電圧が印加されており、静電潜像を現像する。現像ローラ115は、静電潜像をトナー像に現像する現像手段の一例である。また、高圧電源装置200は、現像ローラ115に現像電圧を印加する印加手段として機能する。一次転写ローラ118には、高圧電源装置200から一次転写電圧が印加されている。これにより、トナー画像が感光体113から中間転写体119に一次転写される。中間転写体119にイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー画像が多重転写される。中間転写体119は像担持体として機能している。
カセット122に格納された記録紙121は給紙ローラ123によって搬送路へ送り出される。記録紙121は、搬送ローラ対125およびレジストローラ対126によって、二次転写ニップ部に搬送される。二次転写ニップ部に設置された二次転写ローラ128には、高圧電源装置200から二次転写電圧(正バイアス)が印加されている。二次転写ローラ128によって、トナー画像が中間転写体119から記録紙121上に転写される。二次転写ローラ128はトナー像を像担持体からシートに転写する転写手段として機能している。また、電圧発生装置100は、二次転写ローラ128に転写電圧またはクリーニング電圧を印加する印加手段として機能している。図3を用いて説明したように、電圧発生装置100は、先行するシートの後端が二次転写ローラ128を通過した後から、後続のシートの先端が二次転写ローラ128に到着する前までの期間に、クリーニング電圧を二次転写ローラ128に印加する。トナー画像は、定着器129で、記録紙121上に熱定着する。
上述した電圧発生装置100を画像形成装置110に採用することで、画像形成装置110のFPOTを短縮できる。FPOTはファーストプリントアウトタイムの略称であり、画像形成装置110を起動してから1枚目の画像を出力するまでに必要となる待ち時間のことである。すなわち、1枚目の画像の形成を開始する前までに二次転写ローラ128のクリーニングを実行する他の画像形成装置と比較して、本実施例の画像形成装置110は、FPOTを短縮できる。本実施例の画像形成装置110は、紙間や画像形成後に二次転写ローラ128のクリーニングを実行するからである。
[実施例3]
実施例3は実施例1を改良したもので、とりわけ、正バイアスと負バイアスとの電位差に応じてトランスの一次側電圧を補正することを特徴としている。もちろん、負荷8の大きさに応じてトランスの一次側電圧を補正してもよいし、電位差と負荷8の大きさとの組み合わせに応じてトランスの一次側電圧を補正してもよい。これにより、オーバーシュートまたはアンダーシュートを抑えつつ正バイアスから負バイアスにまたは負バイアスから正バイアスに高速に切り替えることが可能となる。このように本発明は負バイアスから正バイアスへの切り替えにも適用できるが、ここでは正バイアスから負バイアスの切り替えを中心に説明する。
図13を用いて実施例3について説明する。なお、すでに説明した個所には同一の参照符号を付与することで説明の簡明化を図る。コントローラ300は、高圧電源装置200の制御量を演算する演算部301を有している。命令部320は、演算部301に目標電圧値D300や極性情報D310を提供する。記憶部302は、画像形成枚数や稼働時間などの耐久情報D200を記憶する。さらに、環境センサは、画像形成装置110の周辺温度を測定して温度情報D100や周辺湿度を測定して湿度情報D110を生成し、コントローラ300に渡す。演算部301は電圧検出信号VSNSを入力し、出力端子電圧VOUTを認識する。
はじめに、実施例3の特徴の1つである、正バイアス出力時に予め充電されるコンデンサC12の電圧(一次側電圧Vi_n)の初期値の決定方法について、図14を用いて説明する。なお、出力端子電圧VOUTから負バイアスVnを出力するものとする。負荷8(二次転写ローラ128の抵抗値)が一定の状態で、かつ、負バイアスのスイッチング波形CLKNが一定と仮定する。Table1が示すように、負バイアスVnは一次側電圧Vi_nに対応した電圧値となる。このように、負バイアスVnと一次側電圧Vi_nとの対応関係がTable1によって保持されており、Table1は記憶部302に記憶されている。演算部301は、命令部によって指定された出力端子電圧VOUTとTable1とから一次側電圧Vi_nを決定し、PWM生成部304に一次側電圧Vi_nを設定する。たとえば、出力端子電圧VOUTを−1kVに設定する場合、演算部301は、Table1を参照して一次側電圧Vi_nを+6.67Vに設定する。実施例3では、演算部301は、一次側電圧Vi_nの初期値を補正するためにTable2も参照する。Table2は、Table1により決定された一次側電圧Vi_nに対して追加される電圧値(補正電圧)を表している。Table2に示すように、実施例3では、演算部301が「正バイアスと負バイアスの電位差」と「負荷の大きさ」に依存して一次側電圧Vi_nを可変制御する。たとえば、「正バイアスと負バイアスの電位差が中レベル」で、「負荷が大レベル」であれば、補正電圧は、+7Vである。つまり、演算部301は、負バイアスVnが−1kVで正バイアスVpが1kVであれば電位差(絶対値)を中レベルと判定する。また、演算部301は、環境情報(温度情報D100や湿度情報D110)や耐久情報(画像形成枚数や稼働時間)から負荷8のレベルを決定する。さらに、演算部301は、Table2を参照し、電位差レベルと負荷レベルに対応した補正電圧を決定する。たとえば、負バイアスVnが−1kVであれば、補正後の一次側電圧Vi_nは、6.67V + 7V = 13.67Vとなる。
これまで、正バイアスから負バイアスに切り換える場合について説明したが、負バイアスから正バイアスに切り換える場合についてもコントローラ300は同様の動作を行う。具体的には、正バイアス回路202の一次側電圧Vi_pと出力端子電圧VOUTとの関係がTable3として記憶部302に記憶されている。図14が示すように、正バイアス回路202におけるTable3の内容は、極性を除き、負バイアス回路201におけるTable1の内容と同等であってもよい。また、「正バイアスと負バイアスの電位差」と「負荷の大きさ」とに依存して一次側電圧Vi_pの補正電圧もTable2から決定される。なお、Table2に代えて、一次側電圧Vi_p用に個別にTable4が記憶部302に記憶されていてもよい。ここでは、正バイアスと負バイアスとについて共通にTable2が使用されるものとする。
図15はコントローラ300の演算部301が実行する動作を示している。ここでは、正バイアスまたは負バイアスが安定して出力されている状態を仮定している。S1501で、演算部301は命令部320から送られてくる極性情報D310を取得する。SS1502で、演算部301は現在の極性と極性情報D310が示す極性とを比較し、極性が変化したかどうかを判定する。極性が変化した場合、S1503に進む。
S1503で、演算部301は環境センサ400から環境情報(温度情報D100、湿度情報D110)を取得する。環境センサ400は、負荷の環境状態を検出する検出手段の一例である。S1504で、記憶部302から耐久情報D200(画像形成枚数や稼働時間など)を取得する。S1505で、演算部301は取得した環境情報と耐久情報D200とに基づいて負荷8の大きさ(抵抗値)を求める。負荷8の抵抗値が変動する理由は、環境状態(温度や湿度)や耐久状態(画像形成枚数や稼働時間)に依存した二次転写ローラ128の抵抗値が変動することである。たとえば、環境温度が上昇すると負荷8の抵抗値が増加し、環境温度が低下すると負荷8の抵抗値が減少する。また、環境湿度が上昇すると負荷8の抵抗値が減少し、環境湿度が低下すると負荷8の抵抗値が増加する。さらに、負荷8の耐久が進むと、負荷8の抵抗値が増加する。たとえば、負荷8の抵抗値をRとすると、R=c1・T + c2・H + c3・Nと表現できる。c1、c2、c3は負荷8である二次転写ローラ128の素材等によって定まる係数である。Tは環境温度である。Hは環境湿度である。Nは二次転写ローラ128が新品のときからカウントされた画像形成枚数である。Nは二次転写ローラ128が新品に交換されるとゼロにリセットされる。なお、Rの算術式は一例にすぎない。たとえば、環境温度と、環境湿度と、負荷8の耐久状態との組み合わせのうち1つが使用されればよい。つまり、R=c1・Tであってもよいし、R=c2・H であってもよいし、R=c3・Nであってもよい。さらに、R=c1・T + c2・H であってもよいし、R=c1・T+ c3・Nであってもよいし、R=c2・H + c3・Nであってもよい。このように演算部301は環境センサ400が検出した環境状態に基づき負荷8の大きさを決定する負荷決定手段として機能する。また、演算部301は、負荷8の耐久状態に基づき負荷の大きさを決定する負荷決定手段として機能してもよい。さらに、演算部301は、環境センサ400が検出した環境状態と負荷8の耐久状態とに基づき負荷8の大きさを決定する負荷決定手段であってもよい。
S1506で、演算部301は命令部320が提供する目標電圧値D300を取得する。S1507で、演算部301は、電圧検出信号VSNSを取得し、出力端子電圧VOUTを演算する。電圧検出信号VSNSが示す電圧値と出力端子電圧VOUTとは線形比例しているため、簡単な計算により、出力端子電圧VOUTが算出される。S1508で、演算部301は、目標電圧値D300(正バイアス/負バイアス)と出力端子電圧VOUT(負バイアス/正バイアス)の電位差を計算する。S1509で、演算部301は、現在の極性と極性情報D310が示す極性とを比較し、極性が「正から負」に変化したかどうかを判定する。極性が「正から負」に変化した場合は、S1510に進む。
S1510で、演算部301はTable1を参照し、出力端子電圧VOUTの目標電圧値に対応した一次側電圧Vi_nを決定する。このように、演算部301は、負荷8に供給する電圧を第2極性の直流電圧から第1極性の直流電圧に切り替える際に、第1電源部のトランスの一次側に供給される電圧である一次側電圧を第1極性の直流電圧の目標値に応じて決定する電圧決定手段として機能する。ここでは第2極性の直流電圧は正バイアスであり、第1極性の直流電圧は負バイアスに相当する。
S1511で、演算部301はTable2を参照し、負荷8の大きさと電位差との組み合わせに対応した補正電圧を決定する。このように、演算部301は、少なくとも第2極性の直流電圧と第1極性の直流電圧との電位差に応じて一次側電圧の補正値を決定する補正値決定手段として機能する。また、演算部301は、第2極性の直流電圧と第1極性の直流電圧との間の電位差と負荷8の大きさとの組み合わせに応じて一次側電圧の補正値を決定してもよい。また、演算部301は、記憶部302やTable2は、少なくとも電位差と補正値との対応関係を示す情報を記憶する記憶手段として機能している。上述したように、演算部301は、記憶部302に記憶されているTable2を参照し、少なくとも電位差に対応した補正値を決定してもよい。とりわけ、Table2は、負荷8の大きさおよび電位差の組み合わせと、一次側電圧の補正値との対応関係を示す情報の一例である。この場合、演算部301は、Table2を参照し、組み合わせに対応した補正値を決定する。
S1512で、演算部301は、一次側電圧Vi_nに補正電圧を加算して一次側電圧Vi_nを補正する。S1513で、演算部301は、補正後の一次側電圧Vi_n(またはそれに対応した電圧Vc_n)をPWM生成部304に設定し、補正後の一次側電圧Vi_nに対応したCNTNを生成させる。これにより、極性の切替前に、コンデンサC12の両端電圧が一次側電圧Vi_nとなるようにコンデンサC12が充電される。S1514で、演算部301はクロック生成部307を制御し、CLKPの出力を停止させる。S1515で、演算部301はクロック生成部305を制御し、CLKNの出力を開始させる。このようにして正バイアスから負バイアスに切り替わる。このように、ここでは第1電源部として機能している負バイアス回路201は、補正により補正された一次側電圧をトランスT11の一次側に印加して第1極性の直流電圧である負バイアスを生成する。
S1509で、演算部301が、極性が「負から正」に変化したと判定した場合は、S1520に進む。S1520で、演算部301はTable3を参照し、出力端子電圧VOUTの目標電圧値に対応した一次側電圧Vi_pを決定する。このように、演算部301は、負荷8に供給する電圧を第2極性の直流電圧から第1極性の直流電圧に切り替える際に、第1電源部のトランスの一次側に供給される電圧である一次側電圧を第1極性の直流電圧の目標値に応じて決定する電圧決定手段として機能する。ここでは第2極性の直流電圧は負バイアスであり、第1極性の直流電圧は正バイアスに相当する。
S1521で、演算部301はTable2を参照し、負荷8の大きさと電位差との組み合わせに対応した補正電圧を決定する。このように、演算部301は、少なくとも第2極性の直流電圧と第1極性の直流電圧との電位差に応じて一次側電圧の補正値を決定する補正値決定手段として機能する。
S1522で、演算部301は、一次側電圧Vi_pに補正電圧を加算して一次側電圧Vi_pを補正する。S1523で、演算部301は、補正後の一次側電圧Vi_pをPWM生成部306に設定し、補正後の一次側電圧Vi_pに対応したCNTPを生成させる。これにより、極性の切替前に、コンデンサC22の両端電圧が一次側電圧Vi_pとなるようにコンデンサC22が充電される。S1524で、演算部301はクロック生成部305を制御し、CLKNの出力を停止させる。S1525で、演算部301はクロック生成部307を制御し、CLKPの出力を開始させる。このようにして負バイアスから正バイアスに切り替わる。このように、ここでは第1電源部として機能している正バイアス回路202は、補正により補正された一次側電圧をトランスT22の一次側に印加して第1極性の直流電圧である正バイアスを生成する。
<実施例3による効果の説明>
ここで、実施例3の効果について図16を用いて説明する。横軸は時間を示し、縦軸は出力端子電圧VOUTを示している。tswは正バイアスから負バイアスへの切り替えタイミングである。tiは所望の切り替え完了タイミングである。なお、以降の説明で用いる電圧値などの値は一例であり、実際には回路定数によって変わる。以降、Table2における二次転写負荷は「中」レベルであると仮定して説明する。
初めに、出力端子電圧VOUTを+3kVから−1kVに切り換える場合(電位差レベル“大”に相当する)について説明する。波形W11は、Table1だけで一次側電圧Vi_nを6.67Vに決めたときの出力端子電圧VOUTの変化を示す波形である。図16からわかるように、W11では所望の切り換え完了タイミングに間に合わない。一方、W12は、Table2を用いて補正された一次側電圧Vi_n(13.67)を用いたときの出力端子電圧VOUTの変化を示す波形である。W12では、所望の切り換え完了タイミングまでに、オーバーシュートすることなく出力端子電圧VOUTが目標電圧値である−1kVに制御されている。
W13は、出力端子電圧VOUTを+1kVから−1kVに切り替えて出力する場合(電位差レベル“中”に相当する)の出力端子電圧VOUTの変化を示す波形である。なお、W13では、Table2を用いて補正された一次側電圧Vi_nである11.67V(=6.67V+5V)が使用されている。W13が示すように、所望の切り換え完了タイミングまでにオーバーシュートすることなく出力端子電圧VOUTが目標電圧値である−1kVに制御されている。なお、負バイアスから正バイアスに切り換える場合にも、同様の方法でオーバーシュートを抑えつつ、所望の切り換え完了タイミングに間に合うように、切り替えを高速化できる。
正バイアスと負バイアスの電位差によって、一次側電圧Vi_nの適切値が異なる理由は、2つある。1つ目の理由は、正バイアス回路202の平滑コンデンサC24に充電される電荷量が正バイアスに依存して変化することである。2つ目の理由は、負バイアス回路201の平滑コンデンサC14に充電される電荷量が負バイアスに依存して変化することである。正バイアス回路202の平滑コンデンサC24については、所望の切り換え完了タイミングまでに出力端子電圧VOUTを立ち下げるためには平滑コンデンサC24の電荷を急速に引き抜く必要がある。たとえば、平滑コンデンサC24の電荷量が多い場合、すなわち正バイアスの値が大きい場合には、一次側電圧Vi_pを大きくすることで平滑コンデンサC24の電荷を急速に引き抜く必要がある。一方で、平滑コンデンサC24の電荷量が少ない場合、すなわち正バイアスの値が小さい場合には、アンダーシュートに注意が必要である。平滑コンデンサC24の電荷を引き抜く力が大き過ぎると、アンダーシュートが発生しやすくなる。よって、正バイアスの値が小さい場合には、一次側電圧Vi_nを小さくする必要がある。一方、負バイアス回路201の平滑コンデンサC14については、負バイアスの絶対値が大きい場合には、一次側電圧Vi_nを大きくする必要がある。また、負バイアスの値が小さい場合には、一次側電圧Vi_nを小さくする必要がある。このように、正バイアス回路202と負バイアス回路201が直列接続されている回路構成では平滑コンデンサC14、C24の電荷量を考慮することで、アンダーシュートやオーバーシュートを抑制しつつ、切替を高速化できるようになる。
このように実施例3によれば、負荷8に供給する電圧を第2極性の直流電圧から第1極性の直流電圧に切り替える際に少なくとも第2極性の直流電圧と第1極性の直流電圧との電位差に応じて一次側電圧の補正値が決定される。その結果、図16が例示するように、アンダーシュートやオーバーシュートを抑制しつつ、切替を高速化できる。なお、本発明は、正バイアスから負バイアスに切り替えるときだけでなく、負バイアスから正バイアスに切り替えるときに適用されてもよい。
Table2は、負荷8の大きさおよび電位差の組み合わせと、一次側電圧の補正値との対応関係を保持している。しかし、Table2は、電位差と一次側電圧の補正値との対応関係を保持していてもよい。同様に、Table2は、負荷8の大きさと一次側電圧の補正値との対応関係を保持していてもよい。つまり、一次側電圧Vi_n、Vi_pの補正電圧は、電位差だけから決定されてもよいし、負荷8の大きさだけから決定されてもよいし、両者の組み合わせから決定されてもよい。とりわけ、負荷8の大きさおよび電位差の組み合わせから補正電圧を決定することで、より精度よくアンダーシュートやオーバーシュートを抑制しつつ、切替を高速化できるようになる。
負荷8は、環境状態だけから求められてもよいし、耐久状態だけから求められてもよいし、環境状態および耐久状態の組み合わせから求められてもよい。環境状態を考慮することで、様々な環境下においても適切に負荷8を決定できるようになる。また、耐久状態を考慮することで、様々な耐久状態においても適切に負荷8を決定できるようになる。負荷8の精度が高まれば、一次側電圧Vi_n、Vi_pの補正電圧の精度も高まる。よって、アンダーシュートやオーバーシュートを抑制しやすくなろう。
なお、実施例3についても実施例1や実施例2で説明した技術を適用できる。たとえば、クロック信号の間引や、第2極性の直流電圧から第1極性の直流電圧に切り替えるのに先立って、第1電源部のトランスの一次側に供給される電圧を保持するコンデンサの充電を開始することは有効であろう。