結晶幾何学においては、結晶面の面方位を表わすために(hkl)または(hkil)などの表示(ミラー表示)が用いられる。III族窒化物結晶などの六方晶系の結晶における結晶面の面方位は、(hkil)で表わされる。ここで、h、k、iおよびlはミラー指数と呼ばれる整数であり、i=−(h+k)の関係を有する。この面方位(hkil)の面を(hkil)面という。また、(hkil)面に垂直な方向((hkil)面の法線方向)は、[hkil]方向という。また、{hkil}は(hkil)およびそれに結晶幾何学的に等価な個々の面方位を含む総称的な面方位を意味し、<hkil>は、[hkik]およびそれに結晶幾何学的に等価な個々の方向を含む総称的な方向を意味する。
ここで、III族窒化物結晶は、<0001>方向にIII族元素原子面および窒素原子面が交互に配列するため、<0001>方向に極性を有する。本願においては、III族元素原子面が(0001)面となり、窒素原子面が(000−1)面となるように、結晶軸を設定する。
(実施形態1)
図1〜図4を参照して、本発明の一実施形態であるIII族窒化物結晶の製造方法は、以下の工程を含む。III族窒化物バルク結晶1から、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面10pm,10qmを有する複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qを切り出す(図1〜図4の(A)を参照。基板の切り出し工程ともいう。以下同じ。)。次いで、III族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmが互いに平行で、かつ、III族窒化物結晶基板10p,10qの[0001]方向が同一になるように、横方向にIII族窒化物結晶基板10p,10qを互いに隣接させて配置する(図1〜図4の(B)を参照。基板配置工程ともいう。以下同じ。)。次いで、III族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qm上に、III族窒化物結晶20を成長させる(図1〜図4の(C)を参照。結晶成長工程ともいう。以下同じ。)。
本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法によれば、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面10pm,10qmを有する複数のIII族窒化物結晶基板10p上にIII族窒化物結晶を成長させることにより、{0001}以外の面方位の主面を有する結晶性の高いIII族窒化物結晶を高い結晶成長速度で成長させることができる。
本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法について、図1〜図4を用いて、さらに詳細に説明する。
まず、図1〜図4の(A)を参照して、本実施形態の基板切り出し工程において、III族窒化物バルク結晶1から、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面10pm,10qmを有する複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qが切り出される。ここで、オフ角とは、一つの面方位と他の面方位とのなす角度をいい、X線回折法により測定することができる。
この基板切り出し工程において用いられるIII族窒化物バルク結晶1は、特に制限はなく、通常の方法、すなわち、HVPE法、MOCVD法などの気相法、フラックス法などの液相法により、(0001)の主面を有するサファイア基板または(111)A面の主面を有するGaAs基板などの主面上に結晶成長させることにより製造されるもので足りる。したがって、このIII族窒化物バルク結晶は、特に制限はないが、通常、{0001}の主面を有する。なお、このIII族窒化物バルク結晶1は、転位密度を低減し結晶性を高める観点から、特開2001−102307号公報に開示されるように、結晶が成長する面(結晶成長面)にファセットを形成し、ファセットを埋め込むことなく結晶成長を行なうことを特徴とするファセット成長法により成長させることが好ましい。
また、III族窒化物バルク結晶1から、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面10pm,10qmを有する複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qを切り出す方法には、特に制限はなく、たとえば、図1〜図4の(A)に示すように、III族窒化物バルク結晶1を、<20−21>方向、<20−2−1>方向、<22−41>方向および<22−4−1>方向のいずれかの方向に垂直な所定の間隔を有する複数の面(これらの面の面方位は、それぞれ{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}のいずれかに結晶幾何学的に等価な面方位である。以下同じ。)で切ることができる。
次に、図1〜図4の(B)に示すように、本実施形態の基板配置工程において、切り出された複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qは、それらのIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmが互いに平行で、かつ、それらのIII族窒化物結晶基板10p,10qの[0001]方向が同一になるように、横方向に互いに隣接させて配置される。ここで、図1〜図4の(B)には、複数のIII族窒化物結晶基板のうち2つの隣接するIII族窒化物結晶基板10p,10qについて引用符号を付したが、他の隣接するIII族窒化物結晶基板についても同様である。
複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qは、それらのIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面と結晶軸とのなす角度がそれらの基板の主面内で均一でないと、それらの基板の主面上に成長させるIII族窒化物結晶の化学組成がそれらの基板の主面に平行な面内で不均一となるため、それらのIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmが互いに平行になるように、横方向に配置される。これらのIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmが互いに平行であれば足り、必ずしも同一平面上になくてもよい。しかし、隣接する2つのIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qm間の高低差ΔT(図示せず)は、0.1mm以下が好ましく、0.01mm以下がより好ましい。
また、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qは、それらのIII族窒化物結晶基板10p,10qの結晶方位を同一にしてより均一な結晶成長を図る観点から、それらのIII族窒化物結晶基板10p,10qの[0001]方向が同一になるように、横方向に配置される。また、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qは、基板間に隙間があるとその隙間上に成長する結晶の結晶性が低下するため、互いに隣接させて配置される。
図1〜図4の(A)および(B)を参照して、基板切り出し工程および基板配置工程により、III族窒化物バルク結晶1から、複数のIII族窒化物結晶基板10p、10qの主面10pm,10qmが互いに平行で、かつ、それらのIII族窒化物結晶基板10p、10qの[0001]方向が同一であるように、横方向に配置された、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面10pm,10qmを有する複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qが得られる。
次に、図1〜図4の(C)を参照して、本実施形態の結晶成長工程において、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm、10qm上に、III族窒化物結晶20が成長させられる。ここで、III族窒化物結晶20の成長はエピタキシャル成長となる。
複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmは、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有するため、それらの主面10pm,10qm上にエピタキシャル成長されるIII族窒化物結晶20の主面20mは、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmと同一の面方位(すなわち、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位)を有する。
また、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qm上にIII族窒化物結晶20を成長させるため、それらのIII族窒化物結晶基板10p,10qと成長させるIII族窒化物結晶20との間の熱膨張係数の差は小さいため、結晶成長後の冷却の際に成長させた結晶に亀裂や歪みが生じにくく、結晶性の高いIII族窒化物結晶が得られる。
上記の観点から、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qと成長させるIII族窒化物結晶20とは、同じ化学組成であることが好ましい。このようにして、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面20mを有する結晶性の高いIII族窒化物結晶20を製造することができる。
本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmは、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する。このため、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qm上に、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面20mを有する結晶性の高いIII族窒化物結晶20を安定して高い結晶成長速度で成長させることができる。
また、こうして得られるIII族窒化物結晶20は、結晶の厚さが大きいため、切り出し方向の自由度が大きく、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位の他にそれらの面方位以外の任意の面方位を有するIII族窒化物結晶およびIII族窒化物結晶を基板を形成することもできる。
{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対する複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmの面方位のオフ角が5°より大きくなると、主面10pm,10qm上に安定して結晶性の高いIII族窒化物結晶を成長させることが困難となる。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において、結晶性のより高いIII族窒化物結晶20をより安定してより高い結晶成長速度で成長させる観点から、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmは、{20−2−1}および{20−21}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有することが好ましい。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qが互いに隣接する面(隣接面10pt,10qtという、以下同じ)の平均粗さRaは、50nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。隣接面10pt,10qtの平均粗さRaが50nmを超えると、III族窒化物結晶20における隣接面10pt,10qt近傍の上方の領域(以下、基板隣接上方領域20tという)の結晶性が低下する。
ここで、基板隣接上方領域20tは、基板隣接面の10pt,10qtの一端から連続して直上に面方向に伸びる直上伸長面20tcの両側に広がっており、その広がり幅ΔWは、隣接面10pt,10qtの表面の平均粗さRa、III族窒化物結晶の成長条件および結晶性により異なり、10μm以上1000μm以下程度である。基板直上領域20s(複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの直上の領域であって基板隣接上方領域を除いた領域をいう。以下同じ。)および基板隣接上方領域20tの区別は、それらの領域におけるX線回折ピークの半値幅および/または主面の貫通転位密度を対比することにより行うことが可能である。
また、表面の平均粗さRaとは、JIS B 0601に規定する算術平均粗さRaをいい、具体的には、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から粗さ曲線までの距離(偏差の絶対値)を合計し基準長さで平均した値をいう。また、面の平均粗さRaは、AFM(分子間力顕微鏡)などを用いて測定することができる。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において、複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの隣接面10pt,10qtの平均粗さRaを50nm以下とするために、基板切り出し工程後、基板配置工程の前に、隣接面10pt,10qtとなる複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの側面を研削および/または研磨する工程(以下、研削/研磨工程ともいう)を含むことが好ましい。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において、成長させるIII族窒化物結晶の結晶性をさらに高める観点から、基板切り出し工程の後、基板配置工程の前に、III族窒化物結晶をその上に成長させる面である複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmを研削および/または研磨する工程(研削/研磨工程)を含むことが好ましい。かかる研削/研磨工程により、主面10pm,10qmの面粗さは、50nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。
また、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において、III族窒化物結晶20を成長させる方法は、特に制限はなく、通常の方法、すなわち、HVPE法、MOCVD法などの気相法、フラックス法などの液相法が挙げられる。これらの製造方法の中で、結晶成長速度が高い観点から、HVPE法であることが好ましい。
図1〜図4の(C)において、中央部の波線の左側はIII族窒化物結晶20がその結晶成長面20gを平坦に保ちながら成長して平坦な主面20mを形成する場合を示し、中央部の波線の右側はIII族窒化物結晶20がその結晶成長面20gに複数のファセット20gfを形成しながら成長して複数のファセット20mfを有する主面20mを形成する場合を示す。
図1〜図4の(C)の中央部の波線の左側を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法におけるIII族窒化物結晶を成長させる工程において、III族窒化物結晶20を、その結晶成長面20gを平坦に保ちながら、成長させることが好ましい。ここで、結晶成長面20gが平坦とは、結晶成長面20gが実質的に平坦であることをいい、ファセット20gfを形成しないことをいう。
本実施形態のIII族窒化物結晶の成長工程において、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面を有する複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qm上に、III族窒化物結晶20を成長させる。かかるIII族窒化物結晶は、<20−21>方向、<20−2−1>方向、<22−41>方向および<22−4−1>方向のいずれかの方向に成長する。これらの方向に結晶成長するIII族窒化物結晶20は、{0001}面内(ここで、(0001)面内と(000−1)面内とは同一面内であるため、{0001}面内と総称で記載した。以下同じ。)に面欠陥が発生する。
図1〜図4の(C)の中央部の波線の右側を参照して、特に、III族窒化物結晶20の成長速度が大きくなると、結晶成長面20gに複数のファセット20gfが形成され、それに伴って、{0001}面内に発生する面欠陥の密度が増加して、結晶性を低下させる。
このため、III族窒化物結晶20の成長において、その結晶成長面20gに複数のファセット20gfを形成させることなく、その結晶成長面20gを平坦に保つことにより、成長させるIII族窒化物結晶20の{0001}面内に発生する面欠陥の密度を低減することにより、結晶性の高いIII族窒化物結晶が得られる。ここで、III族窒化物結晶の{0001}面内の面欠陥密度は、たとえば、そのIII族窒化物結晶の主面が(0001)面または(000−1)面からオフ(傾斜)している方向に垂直な断面をCL(カソードルミネッセンス)により測定することができる。
III族窒化物結晶20の成長において、III族窒化物結晶20の成長速度を所定の速度未満とすることにより、結晶成長面20gを平坦にすることができる。結晶成長面20gを平坦にする成長速度は、用いられる複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmの面方位によって異なり、以下のとおりである。III族窒化物結晶基板の主面の面方位が{20−21}に対して5°以下のオフ角を有するとき、III族窒化物結晶の成長速度は80μm/hr未満である。III族窒化物結晶基板の主面の面方位が{20−2−1}に対して5°以下のオフ角を有するとき、III族窒化物結晶の成長速度は90μm/hr未満である。III族窒化物結晶基板の主面の面方位が{22−41}に対して5°以下のオフ角を有するとき、III族窒化物結晶の成長速度は60μm/hr未満である。III族窒化物結晶基板の主面の面方位が{22−4−1}に対して5°以下のオフ角を有するとき、III族窒化物結晶の成長速度は80μm/hr未満である。
III族窒化物結晶の成長において、III族窒化物結晶20の成長速度が、上記の所定速度以上である場合は、III族窒化物結晶20の結晶成長面20gに複数のファセット20gfが形成される。複数のファセット20gfは、複数のストライプの形状を有する。ストライプ形状の各ファセット20gfは、結晶成長面20gが(0001)面または(000−1)面に対してオフ(傾斜)している方向と垂直な方向に伸びている。かかる各ファセット20gfのストライプの幅および深さは2μm〜300μm程度である。III族窒化物結晶20の成長の際、かかるファセット20gfが結晶成長面20gに形成されると、III族窒化物結晶20の{0001}面内に面欠陥が発生して、結晶性が低下する。なお、かかる成長によってIII族窒化物結晶20の主面20mに形成される複数のファセット20mfも、結晶成長面20gに形成される複数のファセット20gfと同様の形状、方向、幅および深さを有する。また、かかるIII族窒化物結晶20はその主面20mにおいて複数のファセット20mfにより形成された凹部20vを有する。
また、III族窒化物結晶を成長させる工程において、III族窒化物結晶20における不純物原子濃度について、酸素原子濃度が1×1016cm-3以上4×1019cm-3以下、珪素原子濃度が6×1014cm-3以上5×1018cm-3以下、水素原子濃度が6×1016cm-3以上1×1018cm-3以下および炭素原子濃度が1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下の少なくともいずれかを満たすIII族窒化物結晶を成長させることが好ましい。ここで、III族窒化物結晶における不純物原子である酸素原子、珪素原子、水素原子および炭素原子の濃度は、SIMS(2次イオン質量分析法。以下同じ。)により測定することができる。
成長させるIII族窒化物結晶における酸素原子濃度、珪素原子濃度、水素原子濃度および炭素原子濃度の少なくともいすれかの不純物濃度が、それぞれの上記所定の濃度とすることにより、{0001}面に発生する面欠陥の密度が低減され、結晶性の高いIII族窒化物結晶が得られる。その理由は、III族窒化物結晶が成長すると転位が合体により減少するため、結晶の体積が減少して結晶が反り、面欠陥が増加するが、上記の不純物原子濃度を所定の濃度とすることにより、結晶の体積の減少量が少なくなるため、面欠陥の密度が低減すると考えられる。上記の不純物原子濃度がそれぞれの所定濃度より低いと、結晶の体積の減少が抑制できないため、{0001}面内における面欠陥の発生を抑制することが困難となると考えられる。また、上記の不純物原子濃度がそれぞれの所定濃度より高いと、不純物原子が(0001)面に凝集するため、{0001}面における面欠陥の発生を抑制することが困難となると考えられる。
上記の観点から、酸素原子濃度は、5×1016cm-3以上1×1019cm-3以下がより好ましく、1×1017cm-3以上8×1018cm-3以下がさらに好ましい。また、珪素原子濃度は、1×1015cm-3以上3×1018cm-3以下がより好ましく、1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下がさらに好ましい。また、水素原子濃度は、1×1017cm-3以上9×1017cm-3以下がより好ましく、2×1017cm-3以上7×1017cm-3以下がさらに好ましい。炭素原子濃度は、5×1016cm-3以上9×1017cm-3以下がより好ましく、9×1016cm-3以上7×1017cm-3以下がさらに好ましい。
また、III族窒化物結晶の成長の際の{0001}面における面欠陥の発生をさらに抑制するために、上記の不純物原子濃度(すなわち、酸素原子濃度、珪素原子濃度、水素原子濃度および炭素原子濃度)のうち、それぞれの所定濃度を満たすものは、2種類の不純物原子濃度であることがより好ましく、3種類の不純物原子濃度であることがさらに好ましく、4種類の不純物原子濃度であることが最も好ましい。
III族窒化物結晶の成長方法において、成長させるIII族窒化物結晶の不純物原子を添加する方法には、特に制限はなく、以下の方法が採用できる。酸素原子の添加には、O2ガス(酸素ガス)、O2ガスをN2ガス、Arガス、Heガスなどの不活性ガスで希釈したガス、H2Oを含んだキャリアガス(H2ガス、N 2 ガスなど)またはH2Oを含んだ原料ガス(HClガス、NH3ガスなど)などが用いられる。また、結晶成長容器として石英製容器を用いて、反応容器中の石英と原料ガスであるNH3ガスを反応させることにより生成するH2Oガスを用いてもよい。珪素原子の添加には、SiH4ガス、SiH3Clガス、SiH2Cl2ガス、SiHCl3ガス、SiCl4ガス、SiF4などの珪素化合物ガスなどが用いられる。また、結晶成長容器として石英製容器を用いて、反応容器中の石英と原料ガスであるNH3ガスとを反応させることにより生成する珪素含有ガスを用いてもよい。水素原子の添加には、キャリアガスとしてH2ガスと、N2ガス、Arガス、Heガスなどの不活性ガスとの混合ガスが用いられる。炭素原子の添加には、CH4ガスなどの炭素化合物ガスなどが用いられる。また、結晶成長容器内に炭素製材料(たとえばカーボン板)を入れて、炭素製材料中の炭素と、キャリアガスである水素ガスまたは原料ガスであるNH 3 ガスとを反応させることにより生成する炭素含有ガスを用いてもよい。
なお、成長させるIII族窒化物結晶への不純物原子の混入を抑制する方法には、以下の方法がある。酸素原子および珪素原子の混入の抑制には、酸素原子および珪素原子を含有するガスを用いず、また、酸素原子および/または珪素原子を含有する結晶成長容器の内壁にBNなどの酸素原子および珪素原子のいずれもを含まない材料で被覆する方法がある。水素原子の混入の抑制には、水素ガスを含むキャリアガスを用いない方法がある。炭素原子の混入の抑制には、炭素製材料および炭素原子を含有するガスを用いない方法がある。
図1〜図4の(C)および(D)を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法は、上記のようにして成長させたIII族窒化物結晶20から、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面20pmを有するさらなるIII族窒化物結晶基板20pを準備する工程と、さらなるIII族窒化物結晶基板20pの主面20pm上に、さらなるIII族窒化物結晶30を成長させる工程とを備えることができる。かかる工程により、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面30mを有する結晶性の高いさらなるIII族窒化物結晶30を製造することができる。
さらなるIII族窒化物結晶基板20pを準備する工程は、特に制限はなく、成長させたIII族窒化物結晶20から複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qmに平行な面で切り出すことにより行うことができる。こうして切り出されたさらなるIII族窒化物結晶基板20pは、その主面20pm上に結晶性のよいさらなるIII族窒化物結晶30を成長させる観点から、基板の主面20pmの平均粗さRaが50nm以下であることが好ましく5nm以下であることがより好ましい。III族窒化物結晶基板20pの主面20pmの平均粗さRaを50nm以下にするために、III族窒化物結晶基板20pの切り出し後、さらなるIII族窒化物結晶30の成長の前に、III族窒化物結晶基板20pの主面20pmを研削および/または研磨することが好ましい。
本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法において、さらなるIII族窒化物結晶30を成長させる方法は、特に制限はなく、通常の方法、すなわち、HVPE法、MOCVD法などの気相法、フラックス法などの液相法が挙げられる。これらの製造方法の中で、結晶成長速度が高い観点から、HVPE法であることが好ましい。
図1〜図4の(D)において、中央部の波線の左側はIII族窒化物結晶30がその結晶成長面30gを平坦に保ちながら成長して平坦な主面30mを形成する場合を示し、中央部の波線の右側はIII族窒化物結晶30がその結晶成長面30gに複数のファセット30gfを形成しながら成長して複数のファセット30mfを有する主面30mを形成する場合を示す。
図1〜図4の(D)の中央部の波線の左側を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の製造方法におけるさらなるIII族窒化物結晶を成長させる工程において、さらなるIII族窒化物結晶30を、その結晶成長面30gを平坦に保ちながら、成長させることが好ましい。ここで、結晶成長面30gが平坦とは、結晶成長面30gが実質的に平坦であることをいい、ファセット30gfを形成しないことをいう。
本実施形態のさらなるIII族窒化物結晶30の成長においても、<20−21>方向、<20−2−1>方向、<22−41>方向および<22−4−1>方向のいずれかの方向に結晶成長するさらなるIII族窒化物結晶30は、{0001}面内に面欠陥が発生して、結晶性が低下する傾向がある。
図1〜図4の(D)の中央部の波線の右側を参照して、特に、III族窒化物結晶20の成長速度が大きくなると、結晶成長面20gに複数のファセット20gfが形成され、それに伴って、{0001}面内に発生する面欠陥の密度が増加して、結晶性を低下させる。
このため、さらなるIII族窒化物結晶30の成長において、その結晶成長面30gに複数のファセット30gfを形成させることなく、その結晶成長面30gを平坦に保つことにより、成長させるさらなるIII族窒化物結晶30の{0001}面内に発生する面欠陥の密度を低減することにより、結晶性の高いIII族窒化物結晶が得られる。
さらなるIII族窒化物結晶30の成長において、さらなるIII族窒化物結晶30の成長速度を所定の速度未満とすることにより、結晶成長面30gを平坦にすることができる。結晶成長面30gを平坦にする成長速度は、用いられるさらなるIII族窒化物結晶基板20pの主面20pmの面方位によって異なり、以下のとおりである。さらなるIII族窒化物結晶基板の主面の面方位が{20−21}に対して5°以下のオフ角を有するとき、さらなるIII族窒化物結晶の成長速度は140μm/hr未満である。さらなるIII族窒化物結晶基板の主面の面方位が{20−2−1}に対して5°以下のオフ角を有するとき、さらなるIII族窒化物結晶の成長速度は150μm/hr未満である。さらなるIII族窒化物結晶基板の主面の面方位が{22−41}に対して5°以下のオフ角を有するとき、さらなるIII族窒化物結晶の成長速度は120μm/hr未満である。さらなるIII族窒化物結晶基板の主面の面方位が{22−4−1}に対して5°以下のオフ角を有するとき、さらなるIII族窒化物結晶の成長速度は140μm/hr未満である。
結晶成長速度が高くても、III族窒化物結晶20を成長させる場合に比べてさらなるIII族窒化物結晶30を成長させる場合に結晶成長面が平坦に保たれやすいのは、III族窒化物結晶20が互いに隣接する複数のIII族窒化物結晶基板10p,10qの主面10pm,10qm上に成長するのに対しさらなるIII族窒化物結晶30は1つのさらなるIII族窒化物結晶基板20pの主面20pm上に成長するため、基板の全面にわたってより一様な結晶成長が可能となったためと考えられる。
さらなるIII族窒化物結晶の成長において、さらなるIII族窒化物結晶30の成長速度が、上記の所定速度以上である場合は、さらなるIII族窒化物結晶30の結晶成長面30gに複数のファセット30gfが形成される。複数のファセット30gfは、複数のストライプの形状を有する。ストライプ形状の各ファセット30gfは、結晶成長面30gが(0001)面または(000−1)面に対してオフ(傾斜)している方向と垂直な方向に伸びている。かかる各ファセット30gfのストライプの幅および深さは2μm〜300μm程度である。III族窒化物結晶20の成長の際、かかるファセット20gfが結晶成長面20gに形成されると、III族窒化物結晶20の{0001}面内に面欠陥が発生して、結晶性が低下する。なお、かかる成長によってIII族窒化物結晶30の主面30mに形成される複数のファセット30mfも、結晶成長面30gに形成される複数のファセット30gfと同様の形状、方向、幅および深さを有する。また、かかるIII族窒化物結晶30はその主面30mにおいて複数のファセット30mfにより形成された凹部30vを有する。
また、さらなるIII族窒化物結晶30を成長させる工程において、上記のIII族窒化物結晶20の成長の場合と同様の観点から、III族窒化物結晶30における不純物原子濃度について、酸素原子濃度が1×1016cm-3以上4×1019cm-3以下、珪素原子濃度が6×1014cm-3以上5×1018cm-3以下、水素原子濃度が6×1016cm-3以上1×1018cm-3以下および炭素原子濃度が1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下の少なくともいずれかを満たすIII族窒化物結晶を成長させることが好ましい。
ここで、上記の観点から、III族窒化物結晶30における不純物原子濃度について、酸素原子濃度は、5×1016cm-3以上1×1019cm-3以下がより好ましく、1×1017cm-3以上8×1018cm-3以下がさらに好ましい。また、珪素原子濃度は、1×1015cm-3以上3×1018cm-3以下がより好ましく、1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下がさらに好ましい。また、水素原子濃度は、1×1017cm-3以上9×1017cm-3以下がより好ましく、2×1017cm-3以上7×1017cm-3以下がさらに好ましい。炭素原子濃度は、5×1016cm-3以上9×1017cm-3以下がより好ましく、9×1016cm-3以上7×1017cm-3以下がさらに好ましい。また、上記の不純物原子濃度(すなわち、酸素原子濃度、珪素原子濃度、水素原子濃度および炭素原子濃度)のうち、それぞれの所定濃度を満たすものは、2種類の不純物原子濃度であることがより好ましく、3種類の不純物原子濃度であることがさらに好ましく、4種類の不純物原子濃度であることが最も好ましい。
さらなるIII族窒化物結晶の成長方法において、成長させるさらなるIII族窒化物結晶30に不純物原子を添加する方法、およびさらなるIII族窒化物結晶30への不純物原子の混入を抑制する方法は、特に制限はなく、III族窒化物結晶20を成長させる場合と同様の方法を用いることができる。
さらなるIII族窒化物結晶の成長において、さらなるIII族窒化物結晶基板20pの基板直上領域20s上にはさらなるIII族窒化物結晶30の基板直上領域30sが形成され、さらなるIII族窒化物結晶基板20pの基板隣接上方領域20t上にはさらなるIII族窒化物結晶30の基板隣接上方領域30tが形成される。
(実施形態2)
図1〜図4を参照して、本発明の他の実施形態であるIII族窒化物結晶は、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位の主面を有するIII族窒化物結晶20,30であって、III族窒化物結晶20,30における不純物原子濃度は、酸素原子濃度が1×1016cm-3以上4×1019cm-3以下、珪素原子濃度が6×1014cm-3以上5×1018cm-3以下、水素原子濃度が6×1016cm-3以上1×1018cm-3以下および炭素原子濃度が1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下の少なくともいずれかを満たす。
本実施形態のIII族窒化物結晶20,30は、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位の主面20m,30mを有しているため、基板としてかかる結晶の主面上にMQW(多重量子井戸)構造の発光層を形成させた発光デバイスは、発光層内における自発分極が抑制されることにより、発光効率の低下が抑制される。また、本実施形態のIII族窒化物結晶における不純物濃度は、酸素原子濃度が1×1016cm-3以上4×1019cm-3以下、珪素原子濃度が6×1014cm-3以上5×1018cm-3以下、水素原子濃度が6×1016cm-3以上1×1018cm-3以下および炭素原子濃度が1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下の少なくともいずれかを満たしている。このため、本実施形態のIII族窒化物結晶は、{0001}面における面欠陥の発生が抑制され、高い結晶性を有する。
本実施形態のIII族窒化物結晶20,30は、その主面20m,30mの面積が、10cm2以上であることが好ましく、18cm2以上であることがより好ましく、40cm2以上であることがさらに好ましい。大口径で結晶性の高いIII族窒化物結晶が得られる。
[III族窒化物バルク結晶の準備]
本願発明にかかるIII族窒化物結晶の製造方法に用いられるIII族窒化物バルク結晶であるGaNバルク結晶を、図5を参照して、以下の方法で作製した。なお、以下の実施例1〜実施例4、実施例14〜実施例18、実施例20、実施例22〜実施例26、実施例29〜実施例33、および実施例42〜実施例47は、それぞれ、参考例1〜参考例4、参考例14〜参考例18、参考例20、参考例22〜参考例26、参考例29〜参考例33、および参考例42〜参考例47と読み替える。
まず、下地基板90としての(111)A面の主面を有する直径50mmで厚さ0.8mmのGaAs基板上に、スパッタ法によりマスク層91として厚さ100nmのSiO2層を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法およびエッチングにより、図5(A)および(B)に示すように直径Dが2μmの窓91wが4μmのピッチPで六方稠密に配置されたパターンを形成した。ここで、各窓91wには、GaAs基板(下地基板90)が露出している。
次に、複数の窓91wを有するマスク層91が形成されたGaAs基板(下地基板90)上に、HVPE法により、III族窒化物バルク結晶であるGaNバルク結晶を成長させた。具体的には、HVPE法により、上記GaAs基板上に、500℃で厚さ80nmのGaN低温層を成長させ、次いで、950℃で厚さ60μmのGaN中間層を成長させた後、1050℃で厚さ5mmのGaNバルク結晶を成長させた。
次に、王水を用いたエッチングにより、上記GaNバルク結晶からGaAs基板を除去して、III族窒化物バルク結晶である直径50mmで厚さ3mmのGaNバルク結晶を得た。
(実施例1)
まず、図1(A)を参照して、GaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶1)の両主面である(0001)面および(000−1)面を、研削および研磨加工して、両主面の平均粗さRaを5nmとした。ここで、表面の平均粗さRaの測定は、AFMにより行なった。
次に、図1(A)を参照して、両主面の平均粗さRaを5nmとしたGaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶1)を<20−21>方向に垂直な複数の面でスライスすることにより、幅Sが3.1mm、長さLが20〜50mmで厚さTが1mmの{20−21}の主面を有する複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)を切り出した。次いで、切り出した各GaN結晶基板の研削および研磨加工されていない4面を研削および研磨加工して、これら4面の平均粗さRaを5nmとした。こうして、{20−21}の主面の平均粗さRaが5nmである複数のGaN結晶基板が得られた。それらのGaN結晶基板の中には、その主面の面方位が{20−21}と完全に一致していないGaN結晶基板もあったが、かかるGaN結晶基板のいずれについても、その主面の面方位は{20−21}に対するオフ角が5°以下であった。ここで、オフ角は、X線回折法により測定した。
次に、図1(B)を参照して、石英製の結晶成長容器内に複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の(20−21)の主面10pm,10qmが互いに平行になるように、かつ、それらのGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の[0001]方向が同一になるように、横方向にそれらのGaN結晶基板を互いに隣接させて配置した。このとき、図1(C)も参照して、複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の隣接面10pt,10qtの平均粗さRaは5nmであった。こうして配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)全体の外周に内接する円の直径が50mmであった。
次に、図1(C)を参照して、石英製の結晶成長容器内に配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の(20−21)の主面10pm,10qmを10体積%の塩化水素ガスと90体積%の窒素ガスの混合ガス雰囲気下、800℃で2時間処理した後、それらの主面10pm,10qm上に、HVPE法により、結晶成長温度1020℃で40時間、GaN結晶(III族窒化物結晶20)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶20)の厚さは、接触式厚さ計(株式会社ミツトヨ製デジマチックインジケータ)により測定したところ、2.4mmであった。すなわち、結晶成長速度は60μm/hrであった。また、図1の(C)の中央部の左側を参照して、このGaN結晶(III族窒化物結晶20)は、基板隣接上方領域20tおよび基板直上領域20sにおいて異常成長はなく、平坦な(20−21)の主面20mを有していた。このGaN結晶(III族窒化物結晶20)の結晶性を、(20−21)面についてのX線ロッキングカーブ測定により評価した。このGaN結晶において、基板直上領域20sでは、先端に分裂がない回折ピークが得られ、その半値幅は100arcsecであった。また、広がり幅ΔWが300μmの基板隣接上方領域20tでは、先端に分裂がある回折ピークが得られ、その半値幅は300arcsecであった。
また、このGaN結晶の(20−21)の主面20mの貫通転位密度は、カソードルミネッセンス(以下、CLという)により測定したところ、基板直上領域20sでは1×107cm-2、基板隣接上方領域20tでは3×107cm-2であった。また、このGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は、GaN結晶の<1−210>方向に垂直な断面をCL(カソードルミネッセンス)により測定したところ、8.3cm-1であった。また、このGaN結晶のキャリア濃度は、ホール測定から算出したところ、5×1018cm-3であった。また、このGaN結晶の主な不純物原子の濃度は、SIMS(2次イオン質量分析法)により測定したところ、酸素原子濃度[O]が5×1018cm-3、珪素原子濃度[Si]が1×1018cm-3、水素原子濃度[H]が4×1016cm-3、および5×1015cm-3であった。結果を表1にまとめた。
なお、実施例1においては、GaN結晶をその上に成長させる面である複数のGaN結晶基板の主面の面方位がすべて(20−21)であったが、少なくとも一部が(−2201)(これは、(20−21)と結晶幾何学的に等価である)となっていても同様の結果が得られた。
(実施例2)
まず、図2(A)を参照して、GaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶1)の両主面である(0001)面および(000−1)面を、研削および研磨加工して、両主面の平均粗さRaを5nmとした。
次に、図2(A)を参照して、両主面の平均粗さRaを5nmとしたGaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶1)を<20−2−1>方向に垂直な複数の面でスライスすることにより、幅Sが3.1mm、長さLが20〜50mmで厚さTが1mmの{20−2−1}の主面を有する複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)を切り出した。次いで、切り出した各GaN結晶基板の研削および研磨加工されていない4面を研削および研磨加工して、これら4面の平均粗さRaを5nmとした。こうして、{20−2−1}の主面の平均粗さRaが5nmである複数のGaN結晶基板が得られた。それらのGaN結晶基板の中には、その主面の面方位が{20−2−1}と完全に一致していないGaN結晶基板もあったが、かかるGaN結晶基板のいずれについても、その主面の面方位は{20−2−1}に対するオフ角が5°以下であった。
次に、図2(B)を参照して、石英製の結晶成長容器内に複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の(20−2−1)の主面10pm,10qmが互いに平行になるように、かつ、それらのGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の[0001]方向が同一になるように、横方向にそれらのGaN結晶基板を互いに隣接させて配置した。このとき、図2(C)も参照して、複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の隣接面10pt,10qtの平均粗さRaは5nmであった。こうして配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)全体の外周に内接する円の直径が50mmであった。
次に、図2(C)を参照して、石英製の結晶成長容器内に配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の(20−2−1)の主面10pm,10qmを実施例1と同様にして処理した後、それらの主面10pm,10qm上に、実施例1と同様の成長方法、成長温度および成長時間でGaN結晶(III族窒化物結晶20)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶20)の厚さは、3.2mmであり、結晶成長速度は80μm/hrであった。また、図2の(C)の中央部の左側を参照して、このGaN結晶(III族窒化物結晶20)は、基板隣接上方領域20tおよび基板直上領域20sにおいて異常成長はなく、平坦な(20−2−1)の主面20mを有していた。このGaN結晶(III族窒化物結晶20)の結晶性は、(20−2−1)面についてのX線ロッキングカーブ測定により評価したところ、基板直上領域20sでは、先端に分裂がない回折ピークが得られ、その半値幅は90arcsecであり、(20−21)面を主面とした場合より結晶性は良好であった。また、広がり幅ΔWが100μmの基板隣接上方領域20tでは、先端に分裂がある回折ピークが得られ、その半値幅は360arcsecであった。
また、このGaN結晶の(20−2−1)の主面20mの貫通転位密度は、基板直上領域20sでは1×107cm-2、基板隣接上方領域20tでは4×107cm-2であった。また、このGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は、GaN結晶の<1−210>方向に垂直な断面をCL(カソードルミネッセンス)により測定したところ、6.1cm-1であった。また、このGaN結晶のキャリア濃度は、ホール測定から算出したところ、1×1018cm-3であった。また、このGaN結晶の主な不純物原子の濃度は、SIMS(2次イオン質量分析法)により測定したところ、酸素原子濃度[O]が9×1017cm-3、珪素原子濃度[Si]が1×1018cm-3、水素原子濃度[H]が4×1016cm-3、および5×1015cm-3であった。結果を表1にまとめた。
なお、実施例2においては、GaN結晶をその上に成長させる面である複数のGaN結晶基板の主面の面方位がすべて(20−2−1)であったが、少なくとも一部が(−202−1)(これは、(20−2−1)と結晶幾何学的に等価である)となっていても同様の結果が得られた。
また、実施例1で得られたGaN結晶に比べて、実施例2で得られたGaN結晶は、クラックの発生量が少なかった。
(実施例3)
まず、図3(A)を参照して、GaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶1)の両主面である(0001)面および(000−1)面を、研削および研磨加工して、両主面の平均粗さRaを5nmとした。
次に、図3(A)を参照して、両主面の平均粗さRaを5nmとしたGaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶1)を<22−41>方向に垂直な複数の面でスライスすることにより、幅Sが3.2mm、長さLが20〜50mmで厚さTが1mmの{22−41}の主面を有する複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)を切り出した。次いで、切り出した各GaN結晶基板の研削および研磨加工されていない4面を研削および研磨加工して、これら4面の平均粗さRaを5nmとした。こうして、{22−41}の主面の平均粗さRaが5nmである複数のGaN結晶基板が得られた。それらのGaN結晶基板の中には、その主面の面方位が{22−41}と完全に一致していないGaN結晶基板もあったが、かかるGaN結晶基板のいずれについても、その主面の面方位は{22−41}に対するオフ角が5°以下であった。
次に、図3(B)を参照して、石英製の結晶成長容器内に複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の(22−41)の主面10pm,10qmが互いに平行になるように、かつ、それらのGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の[0001]方向が同一になるように、横方向にそれらのGaN結晶基板を互いに隣接させて配置した。このとき、図3(C)も参照して、複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の隣接面10pt,10qtの平均粗さRaは5nmであった。こうして配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)全体の外周に内接する円の直径が50mmであった。
次に、図3(C)を参照して、石英製の結晶成長容器内に配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の(22−41)の主面10pm,10qmを実施例1と同様にして処理した後、それらの主面10pm,10qm上に、実施例1と同様の成長方法、成長温度および成長時間でGaN結晶(III族窒化物結晶20)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶20)の厚さは、3.0mmであり、結晶成長速度は75μm/hrであった。また、図3の(C)の中央部の右側を参照して、このGaN結晶(III族窒化物結晶20)は、基板隣接上方領域20tおよび基板直上領域20sに複数のファセット20mfによる凹部20vが形成された(22−41)の主面20mを有していた。このGaN結晶(III族窒化物結晶20)の結晶性は、(22−41)面についてのX線ロッキングカーブ測定により評価したところ、基板直上領域20sでは、先端に分裂がない回折ピークが得られ、その半値幅は120arcsecであった。また、広がり幅ΔWが300μmの基板隣接上方領域20tでは、先端に分裂がある回折ピークが得られ、その半値幅は220arcsecであった。
また、このGaN結晶の(22−41)の主面20mの貫通転位密度は、基板直上領域20sでは3×107cm-2、基板隣接上方領域20tでは7×107cm-2であった。また、このGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は、GaN結晶の<10−10>方向に垂直な断面をCL(カソードルミネッセンス)により測定したところ、8.6cm-1であった。また、このGaN結晶のキャリア濃度は、ホール測定から算出したところ、2×1018cm-3であった。また、このGaN結晶の主な不純物原子の濃度は、SIMS(2次イオン質量分析法)により測定したところ、酸素原子濃度[O]が2×1018cm-3、珪素原子濃度[Si]が9×1017cm-3、水素原子濃度[H]が4×1016cm-3、および5×1015cm-3であった。結果を表1にまとめた。
なお、実施例3においては、GaN結晶をその上に成長させる面である複数のGaN結晶基板の主面の面方位がすべて(22−41)であったが、少なくとも一部が(−4221)(これは、(22−41)と結晶幾何学的に等価である)となっていても同様の結果が得られた。
(実施例4)
まず、図4(A)を参照して、GaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶1)の両主面である(0001)面および(000−1)面を、研削および研磨加工して、両主面の平均粗さRaを5nmとした。
次に、図4(A)を参照して、両主面の平均粗さRaを5nmとしたGaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶1)を<22−4−1>方向に垂直な複数の面でスライスすることにより、幅Sが3.2mm、長さLが20〜50mmで厚さTが1mmの{22−4−1}の主面を有する複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)を切り出した。次いで、切り出した各GaN結晶基板の研削および研磨加工されていない4面を研削および研磨加工して、これら4面の平均粗さRaを5nmとした。こうして、{22−4−1}の主面の平均粗さRaが5nmである複数のGaN結晶基板が得られた。それらのGaN結晶基板の中には、その主面の面方位が{22−4−1}と完全に一致していないGaN結晶基板もあったが、かかるGaN結晶基板のいずれについても、その主面の面方位は{22−4−1}に対するオフ角が5°以下であった。
次に、図4(B)を参照して、石英製の結晶成長容器内に複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の(22−4−1)の主面10pm,10qmが互いに平行になるように、かつ、それらのGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の[0001]方向が同一になるように、横方向にそれらのGaN結晶基板を互いに隣接させて配置した。このとき、図4(C)も参照して、複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の隣接面10pt,10qtの平均粗さRaは5nmであった。こうして配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)全体の外周に内接する円の直径が50mmであった。
次に、図4(C)を参照して、石英製の結晶成長容器内に配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)の(22−4−1)の主面10pm,10qmを実施例1と同様にして処理した後、それらの主面10pm,10qm上に、実施例1と同様の成長方法、成長温度および成長時間でGaN結晶(III族窒化物結晶20)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶20)の厚さは、4.0mmであり、結晶成長速度は100μm/hrであった。また、図4の(C)の中央部の右側を参照して、このGaN結晶(III族窒化物結晶20)は、基板隣接上方領域20tおよび基板直上領域20sに複数のファセット20mfによる凹部20vが形成された(22−4−1)の主面20mを有していた。このGaN結晶(III族窒化物結晶20)の結晶性は、(22−4−1)面についてのX線ロッキングカーブ測定により評価したところ、基板直上領域20sでは、先端に分裂がない回折ピークが得られ、その半値幅は140arcsecであった。また、広がり幅ΔWが500μmの基板隣接上方領域20tでは、先端に分裂がある回折ピークが得られ、その半値幅は200arcsecであった。
また、このGaN結晶の(22−4−1)の主面20mの貫通転位密度は、基板直上領域20sでは3×107cm-2、基板隣接上方領域20tでは7×107cm-2であった。また、このGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は、GaN結晶の<10−10>方向に垂直な断面をCL(カソードルミネッセンス)により測定したところ、7.9cm-1であった。また、このGaN結晶のキャリア濃度は、ホール測定から算出したところ、2×1018cm-3であった。また、このGaN結晶の主な不純物原子の濃度は、SIMS(2次イオン質量分析法)により測定したところ、酸素原子濃度[O]が2×1018cm-3、珪素原子濃度[Si]が9×1017cm-3、水素原子濃度[H]が4×1016cm-3、および5×1015cm-3であった。結果を表1にまとめた。
なお、実施例4においては、GaN結晶をその上に成長させる面である複数のGaN結晶基板の主面の面方位がすべて(22−4−1)であったが、少なくとも一部が(−422−1)(これは、(22−4−1)と結晶幾何学的に等価である)となっていても同様の結果が得られた。
表1から明らかなように、{20−21}、{20−2−1}、{22−41}および{22−4−1}からなる群から選ばれるいずれかの結晶幾何学的に等価な面方位に対するオフ角が5°以下の面方位を有する主面10pm,10qmを有する複数のIII族窒化物結晶基板10p上にIII族窒化物結晶を成長させることにより、{0001}以外の面方位の主面を有する結晶性の高いIII族窒化物結晶を高い結晶成長速度で成長させることができた。
(比較例1)
GaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶)を<1−100>方向に垂直な複数の面でスライスしたこと以外は、実施例1と同様にして、{1−100}の主面の平均粗さRaが5nmである複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)を作製した。これらのGaN結晶基板の中には、その主面の面方位が{1−100}と完全に一致していないGaN結晶基板もあったが、かかるGaN結晶基板のいずれについても、その主面の面方位は{1−100}に対するオフ角が5°以下であった。ここで、オフ角は、X線回折法により測定した。
次に、石英製の結晶成長容器内に複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の(1−100)の主面が互いに平行になるように、かつ、それらのGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の[0001]方向が同一になるように、横方向にそれらのGaN結晶基板を互いに隣接させて配置した。このとき、複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の隣接面の平均粗さRaは5nmであった。こうして配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)全体の外周に内接する円の直径が50mmであった。
次に、石英製の結晶成長容器内に配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の(1−100)の主面を実施例1と同様にして処理した後、それらの主面上に実施例1と同様の成長方法、成長温度および成長時間でGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶)の厚さは、0.8mmであり、結晶成長速度は20μm/hrであった。また、このGaN結晶(III族窒化物結晶)は、基板隣接上方領域20tにおいても異常成長はなく、(1−100)の主面を有していた。このGaN結晶(III族窒化物結晶)の結晶性を、(1−100)面についてのX線ロッキングカーブ測定により評価した。このGaN結晶において、基板直上領域では、先端に分裂がない回折ピークが得られ、その半値幅は100arcsecであった。また、広がり幅が300μmの基板隣接上方領域では、先端に分裂がある回折ピークが得られ、その半値幅は300arcsecであった。
また、このGaN結晶の(1−100)の主面の貫通転位密度は、基板直上領域では1×107cm-2、基板隣接上方領域では3×107cm-2であった。また、このGaN結晶のキャリア濃度は、5×1018cm-3であった。また、このGaN結晶の主な不純物原子は、酸素(O)原子および珪素(Si)原子であった。結果を表2にまとめた。
なお、比較例1においては、GaN結晶をその上に成長させる面である複数のGaN結晶基板の主面の面方位がすべて(1−100)であったが、少なくとも一部が(−1100)(これは、(1−100)と結晶幾何学的に等価である)となっていても同様の結果が得られた。
(比較例2)
GaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶)を<11−20>方向に垂直な複数の面でスライスしたこと以外は、実施例1と同様にして、{11−20}の主面の平均粗さRaが5nmである複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)を作製した。これらのGaN結晶基板の中には、その主面の面方位が{11−20}と完全に一致していないGaN結晶基板もあったが、かかるGaN結晶基板のいずれについても、その主面の面方位は{11−20}に対するオフ角が5°以下であった。ここで、オフ角は、X線回折法により測定した。
次に、石英製の結晶成長容器内に複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の(11−20)の主面が互いに平行になるように、かつ、それらのGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の[0001]方向が同一になるように、横方向にそれらのGaN結晶基板を互いに隣接させて配置した。このとき、複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の隣接面の平均粗さRaは5nmであった。こうして配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)全体の外周に内接する円の直径が50mmであった。
次に、石英製の結晶成長容器内に配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の(11−20)の主面を実施例1と同様にして処理した後、それらの主面上に実施例1と同様の成長方法、成長温度および成長時間でGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶)の厚さは、0.8mmであり、結晶成長速度は20μm/hrであった。また、このGaN結晶(III族窒化物結晶)は、基板隣接上方領域20tにおいても異常成長はなく、(11−20)の主面を有していた。このGaN結晶(III族窒化物結晶)の結晶性を、(11−20)面についてのX線ロッキングカーブ測定により評価した。このGaN結晶において、基板直上領域では、先端に分裂がない回折ピークが得られ、その半値幅は250arcsecであった。また、広がり幅が300μmの基板隣接上方領域では、先端に分裂がある回折ピークが得られ、その半値幅は620arcsecであった。
また、このGaN結晶の(11−20)の主面の貫通転位密度は、基板直上領域では1×107cm-2、基板隣接上方領域では8×107cm-2であった。また、このGaN結晶のキャリア濃度は、5×1018cm-3であった。また、このGaN結晶の主な不純物原子は、酸素(O)原子および珪素(Si)原子であった。結果を表2にまとめた。
なお、比較例2においては、GaN結晶をその上に成長させる面である複数のGaN結晶基板の主面の面方位がすべて(11−20)であったが、少なくとも一部が(−1−120)(これは、(11−20)と結晶幾何学的に等価である)となっていても同様の結果が得られた。
(比較例3)
GaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶)を<1−102>方向に垂直な複数の面でスライスしたこと以外は、実施例1と同様にして、{1−102}の主面の平均粗さRaが5nmである複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)を作製した。これらのGaN結晶基板の中には、その主面の面方位が{1−102}と完全に一致していないGaN結晶基板もあったが、かかるGaN結晶基板のいずれについても、その主面の面方位は{1−102}に対するオフ角が5°以下であった。ここで、オフ角は、X線回折法により測定した。
次に、石英製の結晶成長容器内に複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の(1−102)の主面が互いに平行になるように、かつ、それらのGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の[0001]方向が同一になるように、横方向にそれらのGaN結晶基板を互いに隣接させて配置した。このとき、複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の隣接面の平均粗さRaは5nmであった。こうして配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)全体の外周に内接する円の直径が50mmであった。
次に、石英製の結晶成長容器内に配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の(1−102)の主面を実施例1と同様にして処理した後、それらの主面上に実施例1と同様の成長方法、成長温度および成長時間でGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶)の厚さは、0.8mmであり、結晶成長速度は20μm/hrであった。また、このGaN結晶(III族窒化物結晶)は、基板隣接上方領域20tにおいても異常成長はなく、(1−102)の主面を有していた。このGaN結晶(III族窒化物結晶)の結晶性を、(1−102)面についてのX線ロッキングカーブ測定により評価した。このGaN結晶において、基板直上領域では、先端に分裂がない回折ピークが得られ、その半値幅は120arcsecであった。また、広がり幅が300μmの基板隣接上方領域では、先端に分裂がある回折ピークが得られ、その半値幅は480arcsecであった。
また、このGaN結晶の(1−102)の主面の貫通転位密度は、基板直上領域では1×107cm-2、基板隣接上方領域では6×107cm-2であった。また、このGaN結晶のキャリア濃度は、5×1018cm-3であった。また、このGaN結晶の主な不純物原子は、酸素(O)原子および珪素(Si)原子であった。結果を表2にまとめた。
なお、比較例3においては、GaN結晶をその上に成長させる面である複数のGaN結晶基板の主面の面方位がすべて(1−102)であったが、少なくとも一部が(−1102)(これは、(1−102)と結晶幾何学的に等価である)となっていても同様の結果が得られた。
(比較例4)
GaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶)を<11−22>方向に垂直な複数の面でスライスしたこと以外は、実施例1と同様にして、{11−22}の主面の平均粗さRaが5nmである複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)を作製した。これらのGaN結晶基板の中には、その主面の面方位が{11−22}と完全に一致していないGaN結晶基板もあったが、かかるGaN結晶基板のいずれについても、その主面の面方位は{11−22}に対するオフ角が5°以下であった。ここで、オフ角は、X線回折法により測定した。
次に、石英製の結晶成長容器内に複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の(11−22)の主面が互いに平行になるように、かつ、それらのGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の[0001]方向が同一になるように、横方向にそれらのGaN結晶基板を互いに隣接させて配置した。このとき、複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の隣接面の平均粗さRaは5nmであった。こうして配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)全体の外周に内接する円の直径が50mmであった。
次に、石英製の結晶成長容器内に配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の(11−22)の主面を実施例1と同様にして処理した後、それらの主面上に実施例1と同様の成長方法、成長温度および成長時間でGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶)の厚さは、0.8mmであり、結晶成長速度は20μm/hrであった。また、このGaN結晶(III族窒化物結晶)は、基板隣接上方領域20tにおいても異常成長はなく、(11−22)の主面を有していた。このGaN結晶(III族窒化物結晶)の結晶性を、(11−22)面についてのX線ロッキングカーブ測定により評価した。このGaN結晶において、基板直上領域では、先端に分裂がない回折ピークが得られ、その半値幅は90arcsecであった。また、広がり幅が500μmの基板隣接上方領域では、先端に分裂がある回折ピークが得られ、その半値幅は380arcsecであった。
また、このGaN結晶の(11−22)の主面の貫通転位密度は、基板直上領域では1×107cm-2、基板隣接上方領域では4×107cm-2であった。また、このGaN結晶のキャリア濃度は、5×1018cm-3であった。また、このGaN結晶の主な不純物原子は、酸素(O)原子および珪素(Si)原子であった。結果を表2にまとめた。
なお、比較例4においては、GaN結晶をその上に成長させる面である複数のGaN結晶基板の主面の面方位がすべて(11−22)であったが、少なくとも一部が(−1−122)(これは、(11−22)と結晶幾何学的に等価である)となっていても同様の結果が得られた。
(比較例5)
GaNバルク結晶(III族窒化物バルク結晶)を<12−30>方向に垂直な複数の面でスライスしたこと以外は、実施例1と同様にして、{12−30}の主面の平均粗さRaが5nmである複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)を作製した。これらのGaN結晶基板の中には、その主面の面方位が{12−30}と完全に一致していないGaN結晶基板もあったが、かかるGaN結晶基板のいずれについても、その主面の面方位は{12−30}に対するオフ角が5°以下であった。ここで、オフ角は、X線回折法により測定した。
次に、石英製の結晶成長容器内に複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の(12−30)の主面が互いに平行になるように、かつ、それらのGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の[0001]方向が同一になるように、横方向にそれらのGaN結晶基板を互いに隣接させて配置した。このとき、複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の隣接面の平均粗さRaは5nmであった。こうして配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板10p,10q)全体の外周に内接する円の直径が50mmであった。
次に、石英製の結晶成長容器内に配置した複数のGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の(12−30)の主面を実施例1と同様にして処理した後、それらの主面上に実施例1と同様の成長方法、成長温度および成長時間でGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶)の厚さは、0.8mmであり、結晶成長速度は20μm/hrであった。また、このGaN結晶(III族窒化物結晶)は、基板隣接上方領域20tにおいても異常成長はなく、(12−30)の主面を有していた。このGaN結晶(III族窒化物結晶)の結晶性を、(12−30)面についてのX線ロッキングカーブ測定により評価した。このGaN結晶において、基板直上領域では、先端に分裂がない回折ピークが得られ、その半値幅は280arcsecであった。また、広がり幅が500μmの基板隣接上方領域では、先端に分裂がある回折ピークが得られ、その半値幅は660arcsecであった。
また、このGaN結晶の(12−30)の主面の貫通転位密度は、基板直上領域では1×107cm-2、基板隣接上方領域では7×107cm-2であった。また、このGaN結晶のキャリア濃度は、4×1018cm-3であった。また、このGaN結晶の主な不純物原子は、酸素(O)原子および珪素(Si)原子であった。結果を表2にまとめた。
なお、比較例5においては、GaN結晶をその上に成長させる面である複数のGaN結晶基板の主面の面方位がすべて(12−30)であったが、少なくとも一部が(−1−230)(これは、(12−30)と結晶幾何学的に等価である)となっていても同様の結果が得られた。
表1および表2を参照して、主面の面方位が{1−100}、{11−20}、{1−102}、{11−22}または{12−30}である複数のIII族窒化物結晶基板を用いた場合でも、{0001}以外の面方位の主面を有する結晶性の高いIII族窒化物結晶を得らたが、主面の面方位が{20−21}、{20−2−1}、{22−41}または{22−4−1}である複数のIII族窒化物結晶基板を用いた場合に比べて、結晶成長速度が低かった。
(参考例5〜参考例8)
参考例5は、石英製の結晶成長容器の内壁をBN製板で被覆したこと、結晶成長速度を70μm/hrとしたこと以外は、実施例1と同様にしてGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。参考例6は、結晶成長速度を80μm/hrとしたこと以外は、参考例5と同様にしてGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。参考例7は、O2ガスをN2ガスで希釈したもの、SiCl4ガス、H2ガス、およびCH4ガスを用いて、GaN結晶に酸素原子、珪素原子、水素原子および炭素原子を高濃度に添加したこと以外は、参考例5と同様にしてGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。参考例8は結晶成長速度を80μm/hrとしたこと以外は参考例7と同様にGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。結果を表3にまとめた。
(参考例9〜参考例12)
参考例9は、石英製の結晶成長容器の内壁をBN製板で被覆したこと以外は、実施例2と同様にしてGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。参考例10は、結晶成長速度を90μm/hrとしたこと以外は、参考例9と同様にしてGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。参考例11は、O2ガスをN2ガスで希釈したもの、SiCl4ガス、H2ガス、およびCH4ガスを用いて、GaN結晶に酸素原子、珪素原子、水素原子および炭素原子を高濃度に添加したこと以外は、参考例9と同様にしてGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。参考例12は結晶成長速度を90μm/hrとしたこと以外は参考例11と同様にGaN結晶(III族窒化物結晶)を成長させた。結果を表3にまとめた。
表3を参照して、主面の面方位が{20−21}に対して5°以下のオフ角を有するGaN結晶基板上にGaN結晶を成長させる参考例5〜参考例8から以下のことがわかった。成長させたGaN結晶における酸素原子濃度が1×1016cm-3より低く、珪素原子濃度が6×1014cm-3より低く、水素原子濃度が6×1016cm-3より低く、および炭素原子濃度が1×1016cm-3より低く場合において、結晶成長速度が70μm/hr(80μm/hr未満)であるとGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は8.2と低くなった(参考例5)が、結晶成長速度が80μm/hr(80μm/hr以上)であるとGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は35と高くなった(参考例6)。また、成長させたGaN結晶における酸素原子濃度が4×1019cm-3より高く、珪素原子濃度が5×1018cm-3より高く、水素原子濃度が1×1018cm-3より高く、および炭素原子濃度が1×1018cm-3より高い場合においても、結晶成長速度が70μm/hr(80μm/hr未満)であるとGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は7.2と低くなった(参考例7)が、結晶成長速度が80μm/hr(80μm/hr以上)であるとGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は49と高くなった(参考例8)。
また、主面の面方位が{20−2−1}に対して5°以下のオフ角を有するGaN結晶基板上にGaN結晶を成長させる参考例9〜参考例12から以下のことがわかった。成長させたGaN結晶における酸素原子濃度が1×1016cm-3より低く、珪素原子濃度が6×1014cm-3より低く、水素原子濃度が6×1016cm-3より低く、および炭素原子濃度が1×1016cm-3より低く場合において、結晶成長速度が80μm/hr(90μm/hr未満)であるとGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は7.4と低くなった(参考例9)が、結晶成長速度が90μm/hr(90μm/hr以上)であるとGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は37と高くなった(参考例10)。また、成長させたGaN結晶における酸素原子濃度が4×1019cm-3より高く、珪素原子濃度が5×1018cm-3より高く、水素原子濃度が1×1018cm-3より高く、および炭素原子濃度が1×1018cm-3より高い場合においても、結晶成長速度が80μm/hr(90μm/hr未満)であるとGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は6.5と低くなった(参考例11)が、結晶成長速度が90μm/hr(90μm/hr以上)であるとGaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は51と高くなった(参考例12)。
(参考例13、実施例14〜実施例18、参考例19、および実施例20)
参考例13、実施例14〜実施例18、および参考例19は、成長させるGaN結晶(III族窒化物結晶)に添加する酸素原子の濃度を調節したこと以外は、参考例12と同様にしてGaN結晶を成長させた。実施例20は、結晶成長速度を250μm/hrとしたこと以外は、実施例16と同様にしてGaN結晶を成長させた。結果を表4にまとめた。
表4を参照して、主面の面方位が{20−2−1}に対して5°以下のオフ角を有するGaN結晶基板上にGaN結晶を成長させる場合、結晶成長速度を90μm/hr(90μm/hr以上)としても、GaN結晶における不純物原子のひとつである酸素原子の濃度を、好ましくは1×1016cm-3以上4×1019cm-3以下(実施例14〜実施例18)、より好ましくは5×1016cm-3以上1×1019以下(実施例15〜実施例17)、さらに好ましくは1×1017cm-3以上8×1018cm-3以下(実施例16)とすることにより、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は低減した。また、GaN結晶に含まれる酸素原子濃度が1×1017cm-3以上8×1018cm-3以下であると、結晶成長速度を250μm/hrと高くしても、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は低かった。
(参考例21、実施例22〜実施例26、および参考例27)
参考例21、実施例22〜実施例26、および参考例27は、成長させるGaN結晶(III族窒化物結晶)に添加する珪素原子の濃度を調節したこと以外は、参考例12と同様にしてGaN結晶を成長させた。結果を表5にまとめた。
表5を参照して、主面の面方位が{20−2−1}に対して5°以下のオフ角を有するGaN結晶基板上にGaN結晶を成長させる場合、結晶成長速度を90μm/hr(90μm/hr以上)としても、GaN結晶における不純物原子のひとつである珪素原子の濃度を、好ましくは6×1014cm-3以上5×1018cm-3以下(実施例22〜実施例26)、より好ましくは1×1015cm-3以上3×1018以下(実施例23〜実施例25)、さらに好ましくは1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下(実施例24)とすることにより、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は低減した。
(参考例28、実施例29〜実施例33、および参考例34)
参考例28、実施例29〜実施例33、および参考例34は、成長させるGaN結晶(III族窒化物結晶)に添加する水素原子の濃度を調節したこと以外は、参考例12と同様にしてGaN結晶を成長させた。結果を表6にまとめた。
表6を参照して、主面の面方位が{20−2−1}に対して5°以下のオフ角を有するGaN結晶基板上にGaN結晶を成長させる場合、結晶成長速度を90μm/hr(90μm/hr以上)としても、GaN結晶における不純物原子のひとつである水素原子の濃度を、好ましくは6×1016cm-3以上1×1018cm-3以下(実施例29〜実施例33)、より好ましくは1×1017cm-3以上9×1017以下(実施例30〜実施例32)、さらに好ましくは2×1017cm-3以上7×1017cm-3以下(実施例31)とすることにより、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は低減した。
(参考例35、実施例36〜実施例40、および参考例41)
参考例35、実施例36〜実施例40、および参考例41は、成長させるGaN結晶(III族窒化物結晶)に添加する炭素原子の濃度を調節したこと以外は、参考例12と同様にしてGaN結晶を成長させた。結果を表7にまとめた。
表7を参照して、主面の面方位が{20−2−1}に対して5°以下のオフ角を有するGaN結晶基板上にGaN結晶を成長させる場合、結晶成長速度を90μm/hr(90μm/hr以上)としても、GaN結晶における不純物原子のひとつである炭素原子の濃度を、好ましくは1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下(実施例36〜実施例40)、より好ましくは5×1016cm-3以上9×1017以下(実施例37〜実施例39)、さらに好ましくは9×1016cm-3以上7×1017cm-3以下(実施例38)とすることにより、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は低減した。
(実施例42〜実施例47)
実施例42〜実施例47は、成長させるGaN結晶(III族窒化物結晶)に添加する不純物原子濃度を調節して、酸素原子濃度が1×1016cm-3以上4×1019cm-3以下、珪素原子濃度が6×1014cm-3以上5×1018cm-3以下、水素原子濃度が6×1016cm-3以上1×1018cm-3以下および炭素原子濃度が1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下のうちいずれか2つを満たすようにしたこと以外は、実施例12と同様にしてGaN結晶を成長させた。結果を表8にまとめた。
表8を参照して、主面の面方位が{20−2−1}に対して5°以下のオフ角を有するGaN結晶基板上にGaN結晶を成長させる場合、結晶成長速度を90μm/hr(90μm/hr以上)としても、GaN結晶における不純物原子濃度である酸素原子濃度、珪素原子濃度、水素原子濃度および炭素原子濃度のいずれか2つを上記所定の範囲内(実施例42〜実施例47)とすることにより、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度が大きく低減した。
(実施例48〜実施例51)
実施例48〜実施例51は、成長させるGaN結晶(III族窒化物結晶)に添加する不純物原子濃度を調節して、酸素原子濃度が1×1016cm-3以上4×1019cm-3以下、珪素原子濃度が6×1014cm-3以上5×1018cm-3以下、水素原子濃度が6×1016cm-3以上1×1018cm-3以下および炭素原子濃度が1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下のうちいずれか3つを満たすようにしたこと以外は、実施例12と同様にしてGaN結晶を成長させた。結果を表9にまとめた。
(実施例52、実施例53)
実施例52は、成長させるGaN結晶(III族窒化物結晶)に添加する不純物原子濃度を調節して、酸素原子濃度が1×1016cm-3以上4×1019cm-3以下、珪素原子濃度が6×1014cm-3以上5×1018cm-3以下、水素原子濃度が6×1016cm-3以上1×1018cm-3以下および炭素原子濃度が1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下のうちのすべて(4つ)を満たすようにしたこと以外は、実施例12と同様にしてGaN結晶を成長させた。実施例53は、結晶成長速度を250μm/hrとしたこと以外は、実施例52と同様にしてGaN結晶を成長させた。結果を表9にまとめた。
表9を参照して、主面の面方位が{20−2−1}に対して5°以下のオフ角を有するGaN結晶基板上にGaN結晶を成長させる場合、結晶成長速度を90μm/hr(90μm/hr以上)としても、GaN結晶における不純物原子濃度である酸素原子濃度、珪素原子濃度、水素原子濃度および炭素原子濃度のいずれか3つを上記所定の範囲内(実施例48〜実施例51)とすることにより、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度がより大きく低減した。さらに、GaN結晶における不純物原子濃度である酸素原子濃度、珪素原子濃度、水素原子濃度および炭素原子濃度のすべて(4つ)を上記所定の範囲内(実施例52)とすることにより、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度がさらに大きく低減した。また、GaN結晶における不純物原子濃度である酸素原子濃度、珪素原子濃度、水素原子濃度および炭素原子濃度のすべて(4つ)を上記所定の範囲内とすることにより、結晶成長速度を250μm/hrと高くしても、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度は極めて低かった。
(参考例54、実施例55)
参考例54は、実施例52で得られたGaN結晶(III族窒化物結晶)からGaN結晶基板(III族窒化物基板)の主面に平行な面でスライスして、それらの主面を研削および研磨加工して、厚さ1mmで主面の平均粗さRaが5nmである複数のさらなるGaN結晶基板(さらなるIII族窒化物結晶基板)を作製し、これらのさらなるGaN結晶基板の内下から2枚目のさらなるGaN結晶基板の(20−21)の主面上に結晶成長させたこと、および結晶成長速度を140μm/hrとしたこと以外は、参考例12と同様にしてGaN結晶を成長させた。実施例55は、実施例52で得られたGaN結晶(III族窒化物結晶)からGaN結晶基板(III族窒化物基板)の主面に平行な面でスライスして、それらの主面を研削および研磨加工して、厚さ1mmで主面の平均粗さRaが5nmである複数のさらなるGaN結晶基板(さらなるIII族窒化物結晶基板)を作製し、これらのさらなるGaN結晶基板の内下から2枚目のさらなるGaN結晶基板の(20−21)の主面上に結晶成長させたこと、および結晶成長速度を150μm/hrとしたこと以外は実施例52と同様にしてGaN結晶を成長させた。結果を表10にまとめた。
表10を参照して、GaN結晶(III族窒化物結晶)から作製したさらなるGaN結晶基板(さらなるIII族窒化物結晶)を用いて、さらなるGaN結晶(さらなるIII族窒化物結晶)を成長させる場合は、GaN結晶を成長させる場合に比べて、より高い結晶成長速度(150μm/hr未満)まで結晶成長面を平坦にして、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度を極めて大きく低減できた(参考例54)。また、結晶成長面にファセットが形成される結晶成長速度であっても、GaN結晶における不純物原子濃度である酸素原子濃度、珪素原子濃度、水素原子濃度および炭素原子濃度のすべて(4つ)を上記所定の範囲内とすることにより、GaN結晶の{0001}面内の面欠陥密度が極めて大きく低減できた。
今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。